説明

金属溶解炉

【課題】中小規模の事業者にとって、現有の金属溶解炉の材料供給タワー部の上方部分の改修をなし、且つ、排熱を有効利用し、安価に効率の良い溶解炉の提供。
【解決手段】内部に煙道4を有する材料供給タワー3と、溶解室30および保持室40を備えた従来の金属溶解炉において、前記材料供給タワー3の垂直部を上方部分と下方部分とに切断し、分割された上方部分の代わりに、開閉可能な開閉蓋9を備えた材料投入口8と排煙筒部13とを含む予熱室5を設けた上方部分と、前記分割された下方部分とを、連接してなる金属溶解炉1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムやマグネシウム等の原材料を溶解する金属溶解炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来のタワー型金属溶解炉の第1の例を示す縦断面図である。図3において、従来のタワー型金属溶解炉100として、被溶解材料101の投入口121をその上部に備えた材料供給タワー103と、その垂直下方に位置し、上記材料供給タワー103から降下してくる被溶解材料101を加熱溶解するための溶解加熱バーナー107を備えた溶解室105と、この溶解室105に隣接し、溶解した溶湯111を貯留し均熱保持するための保持用加熱バーナー113を備えた保持室109と、この保持室109で所定温度に保持された溶湯111を流入させて外部に汲み出す溶湯汲み出し室115とから構成されている。このようなタワー型金属溶解炉100については特許文献1が挙げられる。この例のタワー型金属溶解炉100において、溶解加熱バーナー107や保持用加熱バーナー113の、高温の燃焼排ガスの熱エネルギーの有効な熱回収が施されて居らず外気に排出されていた。
【0003】
図4は、従来のタワー型金属溶解炉の第2の例を示す縦断面図である。図4において、材料供給タワー103と、溶解室(加熱室)105および保持室109を有するタワー型金属溶解炉100において、溶解室105から溶け出た溶湯111を保持室109の貯留部112に昇温誘導するための昇温樋125を保持室109内に設け、この昇温樋125から流下する溶湯111を保持室109の貯留部112に貯留するようにしたことを特徴とするタワー型金属溶解炉100である。この例として、下記の特許文献2が挙げられる。このタワー型金属溶解炉100においては、熱回収をある程度目指しているが不十分であった。
【0004】
その他に、図5は、従来のタワー型金属溶解炉の第3の例を示す縦断面図である。上部に被溶解材料投入口121および煙道127に設けられた溶解材料保持部材104を有し、下部に溶湯(溶解物)111が保持室(溶湯保持部)109に流下する炉床部129を有する溶解室105や、外部に汲み出す溶湯汲み出し室115等を備えた溶解炉100であって、前記炉床部129下部に溶解加熱バーナー132を備えた燃焼室130が形成されており、前記燃焼室130上部の炉床部129には熱伝導率のよい耐熱板よりなる加熱板129aが配置されているとともに、前記溶解室105の側壁には前記燃焼室130からの排ガスの流出路134を燃焼室130内から材料供給タワー103内へ連通させて、前記溶解材料保持部材104の外周面から排ガスを吹き付けて予熱溶解させる構成を用いたタワー型金属溶解炉100である。この例として下記の特許文献3が挙げられる。この例のタワー型金属溶解炉100の外形の大きさを、従来の炉の大きさと同等にすると、炉の構造上、溶解室105内に突出して排ガスの流出路134を設ける必要があると共に、溶解室105内に溶解材料保持部材104を設けるために、炉内の材料保持スペースを縮小させ、材料の供給量が減少させられてしまい、不便である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−126770公報
【特許文献2】特開2002−310571公報
【特許文献3】特開2006−71266公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、金属溶解炉の排熱の有効利用を図るために、中小規模の事業者にとって、特に上述した従来の特許文献1、2,3のタワー型溶解炉において、現有の金属溶解炉の本体というべき保持室の大規模な改修が必要となり、改造期間も長期にわたり、且つ、大きな設備投資が必要であり、大きな負担となり経営を圧迫しかねない。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、中小規模の事業者にとって、図3に示す従来の(現有の)タワー型溶解炉において、図中のY−Y部分にて金属溶解炉の材料供給タワー部の垂直部を上方部分と下方部分とに切断し、上方部分の改修をなし、且つ、排熱を有効利用し、安価に効率の良い溶解炉の提供をすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、請求項1の本発明は、内部に煙道を有する材料供給タワーと、溶解室および保持室を備えた従来の金属溶解炉において、前記材料供給タワーの垂直部を上方部分と下方部分とに切断し、分割された上方部分の代わりに、開閉可能な開閉蓋を備えた材料投入口と排煙筒部とを含む予熱室を設けた上方部分と、前記分割された下方部分とを、連接してなるこを特徴とする金属溶解炉である。
請求項2の本発明は、内部に煙道を有する材料供給タワーと、溶解室および保持室を備えた従来の金属溶解炉において、前記材料供給タワーの垂直部を上方部分と下方部分とに切断し、分割された上方部分の代わりに、開閉可能な開閉蓋を備えた材料投入口と排煙筒部とを含む予熱室を設けた上方部分と、前記分割された下方部分とを、接続部材からなる接続部により、連接されてなることを特徴とする金属溶解炉である。
請求項3の本発明は、被溶解材料が各々載置される前記予熱室を構成する傾斜面底部と、前記溶解室を構成する傾斜面底部とは、前記被溶解材料が十分に加熱され、流動化して自重により自然落下するような傾斜面角度に設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の金属溶解炉である。
請求項4の本発明は、前記予熱室にて予熱された被溶解材料は、押出部材により強制的に前記溶解室に投入され得ることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の金属溶解炉である。
請求項5の本発明は、前記被溶解材料が載置される前記予熱室を構成する前記傾斜面底部の表面は、前記被溶解材料間に燃焼排ガスが通過可能となる複数の案内突部を有し、この案内突部が耐摩耗性の硬質材又は耐摩耗性のコーティングを施してあることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の金属溶解炉である。
請求項6の本発明は、内部に垂直方向の煙道を有する前記材料供給タワー上端部内側の炉壁に角の丸み部を備えた天井壁部を設け、この天井壁部に連接する天井壁部を有する前記予熱室を前記材料供給タワー上端部近傍の側部に設け、上昇気流の燃焼排ガスが、前記角の丸み部を備えた前記天井壁部に衝突して案内され、流れる方向を変えて前記予熱室内に導入されることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の金属溶解炉である。
請求項7の本発明は、前記材料供給タワー上端部内側の炉壁に設けられた角の丸み部が案内突部を具備し、上昇気流の前記燃焼排ガスが旋回流となって前記予熱室内に流入することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の金属溶解炉である。
請求項8の発明は、内部に垂直方向の煙道を有する前記材料供給タワー上端部内側の炉壁に角の丸み部を備えた天井壁部を設け、この天井壁部に連接する天井壁部を有する前記予熱室を前記材料供給タワー上端部近傍の側部に設け、前記予熱室の側面に前記排煙筒部を設け、上昇気流の燃焼排ガスが、角の丸み部を備えた前記天井壁部に衝突して流れる方向を変えて前記予熱室内に進入し、通過して、前記排煙筒部に導かれることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の金属溶解炉である。
請求項9の発明は、表面にディンプル加工を施した被溶解材料を前記予熱室に投入して予熱し、前記被溶解材料を容易に流動化し得ることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の金属溶解炉である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1および2の金属溶解炉は、中小規模の事業者にとって、従来の(現有の)金属溶解炉の材料供給タワー部の上方部分の改修をなし、且つ、排熱を有効利用し、安価に効率の良い溶解炉の提供を可能とするものであり、省エネルギーが図れて便利である。そして、請求項1では、既設の金属熔解炉の設置現場の状況に合わせた形で改修作業をなし得るので便利であり、また、請求項2の金属溶解炉は、材料供給タワーの中間部に、接続部材からなる接続部を具備しているために、請求項1に比べて製造原価がその分、高価になるが、予熱室を有する材料供給タワー部の上方部分を、予め用意しておけば工期が短縮出来て便利である。その他の作用効果は請求項1,2共に同じと言える。
請求項3の発明では、上記の本発明の効果に加えて、傾斜面底部が、傾斜面角度を有しており、被溶解材料が、前記被溶解材料が所定の昇温設定温度に到達した時点で、十分熱せられて流動化し自重で自然落下し、従来の押圧部材78を必要としないために、次工程に滑らかに移送できて便利である。
請求項4の発明は、上記の本発明の効果に加えて、押圧部材の作用により予熱室にて、所定温度に十分加熱された被溶解材料が、効率よく速やかに溶解室に移送可能となる。
請求項5の発明は、上記の本発明の効果に加えて、予熱室の傾斜面底部には、傾斜方向に平行に複数の案内突部が設けられており、投入された被溶解材料の下側面と傾斜面底部の複数の案内突部間の凹部との空間内に、煙道から上昇してくる燃焼排ガスが容易に進入して、被溶解材料を効率よく速やかに、そして、十分に加熱することが出来て便利である。
請求項6の発明は、上記の本発明の効果に加えて、煙道から上昇してくる燃焼排ガスが、角の丸み部に案内されるために、常に流動損失を低減して、予熱室に進入して、被溶解材料を速やかに効率よく、十分に加熱することが出来て便利である。
請求項7発明は、上記の本発明の効果に加えて、煙道から上昇してくる燃焼排ガスが、案内突部を具備する角の丸み部に案内されて、常に、旋回流となって予熱室に進入して、被溶解材料を速やかに効率よく、十分に加熱することが出来て便利である。
請求項8の発明は、上記の本発明の効果に加えて、煙道から上昇してくる燃焼排ガスが、角の丸み部に案内されるために、常に流動損失を低減して、予熱室に進入し、通過して、排煙筒部に導かれるために、被溶解材料を速やかに効率よく、十分に加熱することが出来て便利である。
請求項9の発明は、上記の本発明の効果に加えて、表面にディンプル加工を施した被溶解材料を前記予熱室に投入して予熱されることにより、燃焼排ガスとの接触面積拡大のために、予熱効果がより大きく促進され、排熱の回収が図られるから、省エネルギーとなり便利である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る第1の実施例を示すタワー型金属溶解炉の縦断面図である。
【図2】図2(a)は、本発明に係る第2の実施例を示すタワー型金属溶解炉の縦断面図であり、図2(b)は、図2(a)のX−X矢視断面図であり、図2(c)は、図2(a)における接続部の詳細図である。
【図3】従来のタワー型金属溶解炉の第1の例を示す縦断面図である。
【図4】従来のタワー型金属溶解炉の第2の例を示す縦断面図である。
【図5】従来のタワー型金属溶解炉の第3の例を示す縦断面図である。
【図6】本発明に係る第3の実施例を示すタワー型金属溶解炉の縦断面図である。
【図7】本発明に係る第4の実施例を示すタワー型金属溶解炉の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面に従って詳細に説明する。
【実施例】
【0012】
図1の金属溶解炉は、図3に示す従来の(現有の)タワー型溶解炉100において、図中のY−Y部分にて金属溶解炉100の材料供給タワー部の垂直部を上方部分と下方部分とに切断し、上方部分の改修をなし、且つ、排熱を有効利用し、安価に効率の良い溶解炉の提供をすることを目的としたものであり、本発明に係る第1の実施例のタワー型金属溶解炉の概略を示す縦断面図である。図1を参照して、第1のタワー型金属溶解炉1は、予熱室5と煙道4を経由して溶解室30に接続することを含む材料供給タワー3と、保持室40と、溶湯汲み出し室50を有する。尚、図1における下方部分の構成において、図3に示す部材番号で示す溶解室105,保持室109,溶湯汲み出し室115等は、図1に示す部材番号と異なるが、同一のものである。この第1のタワー型金属溶解炉1において、材料供給タワー3は、耐火煉瓦等からなる炉壁2により形成された煙道4の、中間部を上下に分割可能に接続部材21により構成した接続部20(接続部20は、後述する。)を有している。そして、煙道4の上端部の炉壁2の内側に、角の丸み部7aを設けて予熱室5の予熱室天井壁部7に続けている(図1参照)。予熱室天井壁部7に開閉蓋9を備えた材料投入口8を有し、更に、予熱室天井壁部7と向き合うようにした傾斜面底部10を有する予熱室5が設けられている。この予熱室5の右方端開口は煙道4の垂直下方に形成される溶解室30に連接している。そして、上昇気流の燃焼排ガスが、前記角の丸み部7aを備えた前記天井壁部7に衝突して案内され、常に流動損失を低減して、流れる方向を変えて前記予熱室5内に導入される。更に、前記材料供給タワー3の上端部内側の炉壁7に設けられた角の丸み部7aが案内突部を具備すれば、上昇気流の前記燃焼排ガスが旋回流となって前記予熱室5内に流入することも可能である。予熱室5の左方端部壁には排煙筒部13が設けられている。排煙筒部13は排煙道13aにて枝分かれして、一方に排煙筒本体14と排煙口14aが形成接続され、他方には開閉蓋16を有する監視口15を備えており予熱室5内を監視可能となっている。そして、傾斜面底部10の傾斜角は、材料投入口8から、投入された被溶解材料35が載置され、煙道4から上昇してくる燃焼排ガスにより、十分加熱されて被溶解材料35が軟らかくなり流動性を帯びた状態となり、被溶解材料35が自重で傾斜面底部10を流下し、溶解室30へ移動出来る傾斜となっている。
【0013】
自動開閉機構(図示せず)により、自動的に(矢印A方向で開き、矢印B方向で閉じる。)開閉可能な開閉蓋9を開動作させて材料投入口8から、被溶解材料35を予熱室5内に投入させると、傾斜面底部10上に被溶解材料35が堆積する。そして、後述する溶解バーナー33と保持バーナー43との燃焼排ガスが、保持室40、溶解室30からの空間を移動し、材料供給タワー3内の煙道4を通り、上昇気流となって予熱室5に到着し、この予熱室5の被溶解材料35を十分加熱させる。この被溶解材料35が十分加熱され、被溶解材料35が軟らかくなり流動性を帯びた状態となり、傾斜面底部10を経て、煙道4の垂直下方に形成される溶解室30に流入することになる。
【0014】
材料供給タワー3は、前記予熱室5の右方端開口が、煙動4の垂直下方の接続部20を経て、更に、煙道4の下方に連接して溶解室30が設けられている。溶解室30は、傾斜面底部31と、この傾斜面底部31の途中に設けられたプール部31aと、天井炉壁部42に設けられた溶解バーナー33とから構成されている。この溶解バーナー33は、溶解室30の被溶解材料35を加熱溶解し、溶湯37として保持室40内に移送する役割を果たす。そして、溶解室30の傾斜面底部31の傾斜角は、予熱室5から自重で流下した被溶解材料35が留まり、溶解バーナー33により、十分加熱されて被溶解材料35が、所定の昇温設定温度に加熱され、溶湯37となり、滑らかに傾斜面底部31を流下し、保持室40へ移動出来る傾斜となっている。即ち、被溶解材料35が、良好な溶湯37品質を確保するために、自然に次工程に滑らかに移送できて便利である。
【0015】
予熱室5内に投入され、燃焼排ガスにより十分加熱された被溶解材料35が自重で傾斜面底部10上を流下して、その垂直下方の溶解室30の傾斜面底部31上に堆積した被溶解材料35を、溶解バーナー33により溶解し、傾斜面底部31上を溶湯37となって炉床38に沿って流下して、溶解室30に連接した保持室40内に流入する。保持室40は、炉床38の凹部41と、天井炉壁部42と、溶解室30と保持室40との境界壁42aと仕切壁45とに囲まれている空間である。天井炉壁部42に設けられた保持バーナ43により、保持室40内に流入した溶湯37を所定の温度に均熱加熱して、仕切壁45の下部に設けられた連通口46により、仕切壁45に隣接して設けられた溶湯汲み出し室50に溶湯37を供給し、外部に汲み出すことが可能となる。
【0016】
図2(a)は、本発明に係る第2の実施例を示すタワー型金属溶解炉の縦断面図であり、図2(b)は、図2(a)のX−X矢視断面図であり、図2(c)は、図2(a)における接続部の詳細図である。第2のタワー型金属溶解炉61もまた、図3に示す従来の(現有の)タワー型溶解炉100において、図中のY−Y部分にて金属溶解炉100の材料供給タワー部の垂直部を上方部分と下方部分とに切断し、上方部分の改修をなし、且つ、排熱を有効利用し、安価に効率の良い溶解炉の提供をすることを目的としたものである。第1の実施例と同一の機能を果たす部材等は、同一の部材名と部材番号を使用して説明する。図2(a)、図2(b)、図2(c)を参照して、第2のタワー型金属溶解炉61は、予熱室65と溶解室30とを含む材料供給タワー63と、保持室40と、溶湯汲み出し室50を有する。この第2のタワー型金属溶解炉61において、材料供給タワー63は、耐火煉瓦等からなる炉壁62により形成された煙道64の、中間部を上下に分割可能に接続部材21により構成した接続部20(接続部20は、後述する。)を有している。そして、煙道64の上端部の炉壁62の内側に、角の丸み部67aを設けて予熱室67の予熱室天井壁部67に続けている(図2(a)、図2(c)参照)。予熱室天井壁部67に開閉蓋69を備えた材料投入口68を有し、更に、予熱室天井壁部67と向き合うようにした傾斜面底部70を有する予熱室65が設けられている。この予熱室65の右方端開口は煙道64の垂直下方に形成される溶解室30に連接している。そして、上昇気流の燃焼排ガスが、前記角の丸み部67aを備えた前記天井壁部67に衝突して案内され、常に流動損失を低減して、流れる方向を変えて前記予熱室65内に導入される。更に、前記材料供給タワー63の上端部内側の炉壁67に設けられた角の丸み部67aが案内突部を具備すれば、上昇気流の前記燃焼排ガスが旋回流となって前記予熱室65内に流入することも可能である。予熱室65の左方端部には開閉蓋72を有する傾斜面開口部71が設けられている。そして、予熱室65の耐火煉瓦等からなる炉壁62により形成された煙道64の後部の炉壁62に、排煙筒部73が設けられている(図2(b)参照)。排煙筒部73は排煙道73aにて枝分かれして一方に排煙筒本体74と排煙口74aが形成接続され、他方には開閉蓋76を有する監視口75を備えており予熱室65内を監視可能となっている。予熱室65の傾斜面底部70には、傾斜方向に平行に複数の案内突部70aが設けられており(図2(b)、図2(c)を参照)、投入された被溶解材料35の下側面と、傾斜面底部70の複数の案内突部70aの間の凹部との空間に、煙道64から上昇してくる燃焼排ガスが進入して、十分に速やかに効率よく被溶解材料35を加熱することが出来る。この複数の案内突部70aは、耐摩耗性の硬質材又は耐摩耗性のコーティングを施してあり、材料投入口68から、落下してくる被溶解材料35と衝突しても耐摩耗性や耐衝撃性を有しており、耐久性がありメンテナンス費用が安価で便利である。
【0017】
自動開閉機構(図示せず)により自動的に(矢印A方向で開き、矢印B方向で閉じる。)開閉可能な開閉蓋69を動作させて材料投入口68から、被溶解材料35を予熱室65内に投入し、傾斜面底部70上に被溶解材料35が堆積する。すると、溶解バーナー33と保持バーナー43との燃焼排ガスにより、被溶解材料35が十分加熱され流動化して、自重で被溶解材料35が傾斜面底部10を経て、煙道64の垂直下方に形成される溶解室30に流入する。また、図示しない自動開閉機構により開閉蓋72を開いて、材料投入口68から投入され、煙道64内を上昇移動する燃焼排ガスの熱により十分加熱され、軟らかくなり流動化した被溶解材料35を傾斜面底部70から押圧部材78にて、予熱室65の右方端開口から煙道64経て垂直下方に形成される溶解室30の傾斜面底部31上に強制的に移動可能である。これにより予熱室65にて、所定温度に十分加熱された被溶解材料35が、効率よく速やかに溶解室30に移送可能となる。しかも、複数の案内突部70aを備えた予熱室65の傾斜面底部70は、耐摩耗性の硬質材又は耐摩耗性のコーティングを施してあり、押圧部材78が、摺動しても耐摩耗性や耐衝撃性を有しており、耐久性がありメンテナンス費用が安価で便利である。即ち、被溶解材料35が、良好な溶湯37品質を確保するために、次工程に滑らかに移送できて便利である。
【0018】
材料供給タワー63においては、前記予熱室65の右方端開口が、煙動64の垂直下方の接続部20を経て、更に、煙道64の下方に連接して溶解室30が設けられている。溶解室30は、傾斜面底部31と、この傾斜面底部31の途中に設けられたプール部31aと、天井炉壁部42に設けられた溶解バーナー33とから構成されている。溶解室30,保持室40、溶湯汲み出し室50等の構成や機能は、実施例1に説明したことと同一であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0019】
図2(c)を参照して、材料供給タワー63(材料供給タワー3)の耐火煉瓦等からなる炉壁62(炉壁2)により形成された煙道64(煙道4)の、中間部を上下に分割可能に構成した接続部20を有していることは前述した。接続部20は、予熱室65(予熱室5)側の下面端部20aと、溶解室30側の上面端部20bとを、断熱材製の緩衝部材22を挟んで、上ブラケット21と下ブラケット23と及びボルト25とナット26とからなる接続部材21により固着接続してある。尚、括弧内は、実施例1の場合を示している。
【0020】
図6は、本発明に係る第3の実施例を示すタワー型金属溶解炉1の縦断面図である。第3のタワー型金属溶解炉1もまた、図3に示す従来の(現有の)タワー型溶解炉100において、図中のY−Y部分にて金属溶解炉100の材料供給タワー部の垂直部を上方部分と下方部分とに切断し、上方部分の改修をなし、且つ、排熱を有効利用し、安価に効率の良い溶解炉の提供をすることを目的としたものである。図6を参照して、このタワー型金属溶解炉1は、本発明に係る第1の実施例を示すタワー型金属溶解炉1に対して、材料供給タワー3の途中のY−Y部分に、接続部材21を有する接続部20を具備していないので、第1の実施例を示すタワー型金属溶解炉1より安価に製造可能である。その他の構成は、第1の実施例を示すタワー型金属溶解炉1(図1参照)と同一であるので、詳細な説明は省略する。この材料供給タワー3の途中のY−Y部分に、接続部材21を有する接続部20を具備していないのは、既に工場に設置された現場の状況に合った金属溶解炉1の改造が可能であるし、新たに金属溶解炉1を製作可能でもある。
【0021】
図7は、本発明に係る第4の実施例を示すタワー型金属溶解炉の縦断面図である。第4のタワー型金属溶解炉61もまた、図3に示す従来の(現有の)タワー型溶解炉100において、図中のY−Y部分にて金属溶解炉100の材料供給タワー部の垂直部を上方部分と下方部分とに切断し、上方部分の改修をなし、且つ、排熱を有効利用し、安価に効率の良い溶解炉の提供をすることを目的としたものである。図7を参照して、この第4のタワー型金属溶解炉61は、本発明に係る第2の実施例を示すタワー型金属溶解炉61に対して、材料供給タワー3の途中のY−Y部分に、接続部材21を有する接続部20を具備していないので、第2の実施例を示すタワー型金属溶解炉61より安価に製造可能である。その他の構成は、第2の実施例を示すタワー型金属溶解炉1(図2参照)と同一であるので、詳細な説明は省略する。この例でも、材料供給タワー3の途中のY−Y部分に、接続部材21を有する接続部20を具備していないのは、既に工場に設置された現場の状況に合った第4の金属溶解炉61の改造が可能であるし、新たに金属溶解炉61を製作可能でもある。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は窯業関係に実施できるものである。
【符号の説明】
【0023】
1 第1のタワー型金属溶解炉
2、62 炉壁
3、63 材料供給タワー
4,64 煙道
5,65 予熱室
7,67 予熱室天井壁部
8,68 材料投入口
9,69 開閉蓋
10,70 傾斜面底部
13、73 排煙筒部
13a,73a 排煙道
15,75 監視口
16,76 開閉蓋
20 接続部
21 接続部材
30 溶解室
31 傾斜面底部
33 溶解バーナー
35 被溶解材料
37 溶湯
38 炉床
40 保持室
42 天井壁部
43 保持バーナー
50 溶湯汲み出し室。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に煙道を有する材料供給タワーと、溶解室および保持室を備えた従来の金属溶解炉において、
前記材料供給タワーの垂直部を上方部分と下方部分とに切断し、分割された上方部分の代わりに、開閉可能な開閉蓋を備えた材料投入口と排煙筒部とを含む予熱室を設けた上方部分と、前記分割された下方部分とを、連接してなることを特徴とする金属溶解炉。
【請求項2】
内部に煙道を有する材料供給タワーと、溶解室および保持室を備えた従来の金属溶解炉において、
前記材料供給タワーの垂直部を上方部分と下方部分とに切断し、分割された上方部分の代わりに、開閉可能な開閉蓋を備えた材料投入口と排煙筒部とを含む予熱室を設けた上方部分と、前記分割された下方部分とを、接続部材からなる接続部により、連接されてなることを特徴とする金属溶解炉。
【請求項3】
被溶解材料が各々載置される前記予熱室を構成する傾斜面底部と、前記溶解室を構成する傾斜面底部とは、前記被溶解材料が十分熱せられて流動化し自重で自然落下するような傾斜面角度に設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の金属溶解炉。
【請求項4】
前記予熱室にて予熱された被溶解材料は、押出部材により強制的に前記溶解室に投入され得ることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の金属溶解炉。
【請求項5】
前記被溶解材料が載置される前記予熱室を構成する前記傾斜面底部の表面は、前記被溶解材料間に燃焼排ガスが通過可能となる複数の案内突部を有し、この案内突部が耐摩耗性の硬質材又は耐摩耗性のコーティングを施してあることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の金属溶解炉。
【請求項6】
内部に垂直方向の煙道を有する前記材料供給タワー上端部内側の炉壁に角の丸み部を備えた天井壁部を設け、この天井壁部に連接する天井壁部を有する前記予熱室を前記材料供給タワー上端部近傍の側部に設け、上昇気流の燃焼排ガスが、前記角の丸み部を備えた前記天井壁部に衝突して案内され、流れる方向を変えて前記予熱室内に導入されることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の金属溶解炉。
【請求項7】
前記材料供給タワー上端部内側の炉壁に設けられた角の丸み部が案内突部を具備し、上昇気流の前記燃焼排ガスが旋回流となって前記予熱室内に流入することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の金属溶解炉。
【請求項8】
内部に垂直方向の煙道を有する前記材料供給タワー上端部内側に前記角の丸み部を備えた前記天井壁部を設け、この天井壁部に連接する前記天井壁部を有する前記予熱室を前記材料供給タワー上端部近傍の側部に設け、前記予熱室の側面に前記排煙筒部を設け、上昇気流の燃焼排ガスが、前記天井壁部に衝突して流れる方向を変えて前記予熱室内に進入し、通過して、前記排煙筒部に導かれることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の金属溶解炉。
【請求項9】
表面にディンプル加工を施した被溶解材料を前記予熱室に投入して予熱し、前記被溶解材料を容易に流動化し得ることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の金属溶解炉。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−88027(P2012−88027A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237691(P2010−237691)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(310005755)群馬合金株式会社 (3)
【Fターム(参考)】