説明

金属片切断装置および金属片切断システム

【課題】本発明は、一台で金属板に溶接等された金属片を取り除くことができ、作業負担を軽減し、作業効率を向上させることのできる金属片切断装置およびこの金属片切断装置を備えた金属片切断システムを提供することを目的とする。
【解決手段】金属片切断装置1は、水平梁11a、11aおよび接続梁11bからなるベース枠11と一対の支持柱12、12と、からなる支持フレーム10と、固定手段30と、移動手段40と、当接手段70と、移送手段20と、を主に有して構成されている。
また、金属片切断システム200は、金属片切断装置1と冷却集塵装置110と、を有して構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板に溶接等された金属片を切断して取り除く際に使用される金属片切断装置および金属片切断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、船舶等の製造においては、各部を構成する金属板等の対象物にフック掛け等の金属片を溶接し、このフック掛けにクレーンやホイストのフックを引っ掛けて吊り上げ、作業現場内を搬送させて金属板の設置作業を行っている。このフック掛けは、金属板が所定の位置に設置された後は不要となるため、その後取り除かれ、別の金属板等に溶接されて再利用される。
【0003】
このような、金属板に溶接等された金属片を取り除くには、従来、特許文献1に示すようなガス切断装置により金属片の一部を溶かして金属板と切り離した後、金属板に残った部分を、特許文献2に示すような切削装置により切削し、取り除く手法がとられていた。
【特許文献1】特開平10−193099号公報
【特許文献2】特開平9−248769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記した従来の手法によると、ガス切断作業と切削作業の二つの作業が必要となることから、作業時間が掛かり、作業効率が悪く、また、作業者の作業負担が大きかった。
また、ガス切断装置と切削装置の両方が必要となることから、搬入作業や運搬費用等の負担が大きかった。また、これらの装置は大型で重量があるため、作業現場での移動あるいは作業準備を行うときに、複数の作業者が必要となっていた。
【0005】
また、ガス切断によると、溶融され切断される切断部分からでる切断カスが周囲の金属板に付着し、金属板の錆止め塗料を溶かして剥離させる等により、金属板を損傷してしまっていた。一方、できる限り金属板を損傷しないようにするため、切断位置を金属板表面から離すと、切断後に金属板に残って突出する部分が多くなってしまうことから、その後の切削作業の負担が大きくなっていた。
また、ガス切断によると、切断面が平坦とならないため、切断した金属片を再利用する場合には、切断面を平坦に加工するための再切断作業が必要となり、そのための作業負担が大きかった。
加えて、ガス切断装置の操作には特殊免許が必要であり、このような特殊免許を所有する作業者の確保も負担となっていた。
【0006】
本発明は前記した課題を解決するため、一台で金属板に溶接等された金属片を取り除くことができ、作業負担を軽減し、作業効率を向上させることのできる金属片切断装置および金属片切断システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る金属片切断装置は、前記目的を達成するため以下のような構成とした。金属板表面から突出する金属片を前記金属板表面に沿って切断除去する金属片切断装置であって、前記突出する金属片を囲む平面空間を枠材により形成するベース枠及びこの平面空間の少なくとも一部を挟んで対向するようにベース枠上に立設した一対の支持柱を有する支持フレームと、前記支持柱間に亘って設けられ、装備される前記金属片の切断手段を往復動させる移動手段と、前記支持フレームを前記金属板表面に固定する、前記ベース枠に設けられた解除自在な固定手段と、前記ベース枠に設けられ、前記支持フレームを前記金属板表面上で移送させる移送手段と、を備える構成とした。
【0008】
金属片切断装置をこのように構成したことにより、金属片切断装置の各部材を設置する基台となる支持フレームに設けられた移送手段により、支持フレームを金属板表面上で移送させて金属片を、ベース枠の枠材で形成した平面空間内に位置させる。そして、金属片切断装置は、固定手段を、金属板表面上に固着状態にすることで支持フレームを固定する。金属片切断装置は、支持フレームを固定手段により金属板表面に固定した状態で、移動手段により、切断工具を金属板表面に平行な方向に移動させることにより、金属片を金属板表面から切断する。
【0009】
また、本発明の金属片切断装置において、前記ベース枠は、その一部が前記金属片に対して外接又は内接により当接可能な枠材を備えていてもよい。
【0010】
この構成によれば、前記した作用に加え、枠材により、金属片を外接又は内接させて、金属片を支持する。
【0011】
また、本発明の金属片切断装置において、前記ベース枠は、互に平行な一対の水平梁と、この水平梁間を接続する少なくとも1つの接続梁とにより構成することが好ましい。より好ましくは、前記ベース枠は、互に平行な一対の水平梁と、この水平梁間を接続する1つの接続梁と前記金属片に当接される当接梁とにより構成し、前記当接梁は、前記移動手段と平行に設けられ、前記金属片に係合される当接手段を備え、前記当接手段は、前記金属片の一側面に当接する第1当接部と、前記第1当接部に対面して前記金属片の他側面に当接する第2当接部と、この第1当接部及び第2当接部により前記金属片をその間に挟持可能な係合部と、を備えた構成とする。
【0012】
この構成によれば、ベース枠の、移動手段と平行に設けられた当接梁に金属片を当接させて支持し、この状態で、当接手段の第1当接部を金属片の一側面に当接させるとともに、第1当接部に対面する位置で第2当接部を金属片の他側面に当接させ、係合部により、金属片を第1当接部と第2当接部との間に係合することで、金属片を支持フレームに固定する。
【0013】
また、本発明の金属片切断装置は、金属板表面に突出する金属片を前記金属表面に沿って切断する金属片切断装置であって、前記金属板表面に平行する一対の水平梁、および、前記水平梁間を接続する接続梁を有するベース枠と、このベース枠上に所定間隔を隔てて立設した一対の支持柱と、を有する支持フレームと、この支持フレームの水平梁に設けられ、前記金属板表面の適宜位置に前記支持フレームを着脱自在に固定する固定手段と、前記支持フレームの支持柱間に亘って設けられ、前記金属片を切断する切断工具を前記金属板表面に平行な方向に移動させる移動手段と、前記支持フレームの水平梁間に亘って設けられると共に、前記移動手段に平行に設けられ、前記金属片に当接させる当接手段と、前記固定手段に隣合う位置で前記支持フレームに設けられ、前記支持フレームを前記金属板表面上で移送させる移送手段と、を備え、前記当接手段は、前記金属片の一側面に当接する第1当接部と、この第1当接部に対面する位置で前記金属片の他側面に当接する第2当接部と、この第2当接部を前記第1当接部に近接するように移動させて第1当接部および第2当接部により前記金属片を間に係合する係合部とを有する構成とした。
【0014】
金属片切断装置をこのように構成したことにより、金属片切断装置の各部材を設置する基台となる支持フレームに設けられた移送手段により、支持フレームを金属板表面上で移送させて金属片の近傍に位置させる。そして、金属片切断装置は、当接手段の第1当接部を金属片の一側面に当接させるとともに、第1当接部に対面する位置で第2当接部を金属片の他側面に当接させ、係合部により、金属片を第1当接部と第2当接部との間に係合して、金属片を支持フレームに固定する。そして、金属片切断装置は、固定手段を、金属板表面上に固着状態にすることで支持フレームを固定する。金属片切断装置は、支持フレームを固定手段により金属板表面に固定した状態で、移動手段により、切断工具を金属板表面に平行な方向に移動させることにより、金属片を金属板表面から切断する。
【0015】
また、本発明の金属片切断装置において、前記移動手段は、前記切断工具を設置する設置台を前記金属板表面から接離する垂直方向に移動させる垂直移動手段と、この垂直移動手段および前記設置台を支持して前記設置台を前記金属板表面に平行な方向に移動させる水平移動手段とを備える構成としてもよい。
【0016】
この構成によれば、垂直移動手段により、切断工具が設置された設置台を金属板表面に接離させることで、切断工具の金属板表面からの高さを調節し、高さを調節した位置で、水平移動手段により金属板表面に切断工具を移動させて金属片を切断する。
【0017】
また、本発明の金属片切断装置において、前記支持フレームは、前記金属板表面から遠い側となる前記支持柱の上端に、当該支持フレームを傾斜したときに把持するフレーム用アームを設けた構成としてもよい。
【0018】
この構成によれば、作業者が、フレーム用アーム部を把持して支持フレームを傾斜させた状態で、移送手段により金属片切断装置を金属板表面上で移送させることができる。このため、一人の作業者によって、容易に支持フレームを扱い金属片切断装置を金属板表面上で移送させることができる。
【0019】
また、本発明の金属片切断装置は、前記金属片を切断するときに前記切断工具にかかる負荷を電気的に計測して表示する表示装置を前記操作ハンドルに隣合うように前記支持フレームの側方に備える構成としてもよい。
【0020】
この構成によれば、作業者が、切断作業中に操作ハンドルを操作しながら表示装置を目視することができるため、金属片を切断するときに切断工具にかかる負荷の状態に応じて、設置台の送り速度を調節することができる。これにより、切断工具の送り速度を適正に保つことができ、急激な負荷の変更により切断工具が損傷することを防止することができる。
【0021】
また、前記移送手段は、移動用車輪であり、前記固定手段の金属板表面に対面する固定面より、当該移動用車輪を上下方向に昇降させる昇降機構を介して前記支持フレームに設けた構成としてもよい。
【0022】
この構成によれば、昇降機構により、移動用車輪を固定面に対して下方に位置させることにより、金属片切断装置を金属板表面上で移送させることができ、一方、この状態で、昇降機構により、移動用車輪を固定面に対して上方に位置させることにより、固定手段を金属板表面に当接させて、金属片切断装置を金属板表面上に固定することができる。
【0023】
また、本発明の金属片切断装置において、前記固定手段は、前記金属板表面に電磁石又は磁石により着脱自在となる磁着固定手段としてもよい。
【0024】
この構成によれば、磁着固定手段の電磁石又は磁石を金属板表面に接触させることにより、金属片切断装置を金属板表面に着脱自在に固定して位置決めすることができる。
【0025】
また、本発明の金属片切断装置において、前記水平移動手段は、前記一対の支持柱に亘って設け、前記垂直移動手段および前記設置台を支持する案内部材と、この案内部材に平行に設けた送りネジと、この送りネジを回転操作する操作ハンドルとを有し、前記操作ハンドルは、前記支持フレームの一方の支持柱の側方に設けた構成としてもよい。
【0026】
この構成によれば、操作ハンドルにより、案内部材の送りネジを回転させると、案内部材が支持する垂直移動手段および設置台を送りネジの回転方向に往復動させることができ、切断工具を手動により水平に移動させて金属片の切断作業を行う。
【0027】
また、本発明の金属片切断装置は、前記支持フレームの一対の支持柱のそれぞれの裏面側に突出させて一対のスタンドを設け、前記一対のスタンドにより前記支持フレームを傾斜した状態で支持する構成としてもよい。
【0028】
この構成によれば、一対のスタンドにより、支持フレームを傾斜した状態で支持することができるため、作業者において、切断工具の交換作業などを行いやすくすることができる。
【0029】
また、本発明の金属片切断装置は、前記支持フレームの水平梁の一方には、前記金属片の板厚方向に形成された貫通孔に係合する係合部材を吊り下げるための吊下アームを、前記金属片の上方に離間するように設けた構成としてもよい。
【0030】
この構成によれば、金属片切断装置は、例えばワイヤ等の係合部材を吊下アームから吊り下げて、この係合部材を金属片の貫通孔に係合することで常に金属片を上方に付勢させた状態で金属片を金属板表面上から切断することができる。
【0031】
また、本発明の金属片切断システムは、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の金属片切断装置と、前記金属片切断装置が位置決めされた状態で、前記切断刃の周囲を前記金属板に当接して前記金属片の周りを囲む周壁シール部と、前記切断刃に冷却水を供給するとともに、前記周壁シール部の内部に溜まった前記冷却水を回収してろ過する循環ろ過機構を備えたタンクと、を備えた冷却集塵装置を有する構成とした。
【0032】
このように構成した金属片切断システムは、金属片切断装置により金属板表面に突出する金属片を切断するときに、冷却集塵装置により切断刃を冷却しながら、切断部分から発生した切粉等を回収することができ、切断時の切断部分の周囲への熱影響を低減させることができる。また、冷却水を濾過しながら循環して使用することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る金属片切断装置は、以下に示すような優れた効果を有する。
本発明の金属片切断装置によれば、金属板を損傷することなく、金属板から金属片を取り除くことができる。また、金属片切断装置によれば、一人で切断作業を行うことができるため、移動や固定が容易であり、作業人員を削減することができ、さらに、作業効率を向上させることができる。さらに、金属片の切断面が平坦となり、金属片の再利用時の再切断作業が不要となる。このため、作業負担を軽減することができる。
また、本発明の金属片切断システムによれば、切断時の切断部分の周囲への熱影響を低減させることができる。
【0034】
金属片切断装置は、切断工具を使用して金属片の切断作業を行い、移動手段の垂直移動手段により切断工具の高さ位置を調節するとともに、移動手段の水平移動手段により、切断工具を金属板表面に対して平行な方向に移動させることができるため、金属板に近接した位置で金属片を切断することができる。
金属片切断装置は、支持フレームにフレーム用アーム部を設けることで、移動時の扱いが一層容易となる。また、金属片切断装置は、切断時の負荷を電気的に表示しているため、切断工具の損傷を最小限にすることができる。
金属片切断装置は、固定手段として磁着固定手段を使用することで、操作が容易となり、確実に支持フレームを固定することができる。
金属片切断装置は、昇降機構により、移動用車輪を固定手段の当接面に対して上下方向に昇降できるので、支持フレームを垂直にした状態でも移動させることができ、金属片に対する位置合せが容易となる。
さらに、金属片切断装置は、操作ハンドルにより切断工具を水平方向に移動させて切断作業を行うことで、金属片の材質等に対応した切断を行うことができる。
加えて、スタンドを設けることで、切断工具の切断刃の取り替え等のメンテナンスが容易となる。さらに加えて、吊下アームを設けることで切断刃の損傷を防ぐことができる。
また、本発明の金属片切断システムによれば、金属片切断装置により金属板に突出する金属片を切断するときに、冷却集塵装置により切断刃を冷却しながら、切断部分から発生した切粉等を回収することができ、また、冷却水を濾過しながら循環して使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を適宜図面を参照して説明する。
図1は、金属片切断装置の全体構成図である。図2(a)は、図1に示す金属片切断装置の側面図、(b)は、図1に示す金属片切断装置の正面図、図3および図4は、図1に示す金属片切断装置の各構成をより詳細に説明するための一部省略した正面図および移送状態および切断刃の取り替え状態を示す側面図、図5は、金属片切断システムの冷却集塵装置の構成を説明するための斜視図である。
なお、以下の説明において、「前後」、「上下左右」とは、図1中に記載した方向を基準とする。
【0036】
図1に示すように、金属片切断装置1は、支持フレーム10と、固定手段30と、移動手段40と、当接手段70と、移送手段20と、を備えている。
【0037】
支持フレーム10は、金属片切断装置1の各部材を設置するための基台となるものであって、ベース枠11と、このベース枠11上に立設した一対の支持柱12、12と、フレーム用アーム部13と、を有している。
【0038】
ベース枠11は、互いに平行に設けられる水平梁11a、11aと、この水平梁11a、11aを接続するための接続梁11bと、を有して構成されている。本実施形態では、ベース枠11は、水平梁11a、11aが、平行に、かつ、接続梁11bの両端部から接続梁11bに対して垂直方向に延出して、平面視コ字状となるように形成されている。
このように、平面視コ字状に形成することにより、後記する切断手段としての切断工具90を水平移動させるための金属片Mを包囲可能なスペースを形成することができる。なお、ベース枠11は、平面視U字状、又は、円状、あるいは、円弧状に形成しても良い。
また、水平梁11a、11aの前端部間に亘って、前記金属片Mに対して当接する手段としての断面略L字状の補助梁(当接梁)14が設けられている。
【0039】
水平梁11aには、さらに、金属片Mを吊り下げるための吊下アーム100が設けられている。吊下アーム100は、例えば、基端部が、一方(例えば、右側)の水平梁11aに固定され、先端部が、金属片Mの上方に離間して配置されるように湾曲して形成された曲棒状部材である。また、吊下アーム100の先端部には、ロープ等を通すための支持環101が設けられており、この支持環101と金属片Mの貫通孔M1にワイヤ102(図3(d)参照)などの係合部材を係合させることにより、金属片Mを常に上方に付勢するようにしている。これにより、金属片Mを金属板P表面から切断する際に、切断工具90の振動により金属片Mが切り離されたり転倒したりして切断刃が破損することを防止することができる。
【0040】
一対の支持柱12、12は、接続梁11bの両端部の上面にそれぞれ立設されている。
一対の支持柱12、12は、ここでは、平面板12aと、平面板12aの両端に延設される側面板12b、12bとにより水平断面形状がコ字状に形成されている。
本実施形態では、一対の支持柱12、12は、それぞれの平面板12a、12aが対向するように設置されている。この平面板12a、12aの中段付近には、後記する案内部材61を接続するための案内部材接続部12c、12cが設けられている。
【0041】
図1および図2に示すように、フレーム用アーム部13は、作業者が、支持フレーム10を移動させる際に把持するためのものであって、例えば、一対の支持柱12、12の一方の平面板12aから他方の平面板12aに亘って、金属板Pに対して略平行に延設されるコ字状の第1アーム13aと、この第1アーム13aに立設される逆U字状の第2アーム13bと、を有して構成されている。第1アーム13aと第2アーム13bとは、使用状況に応じて適宜使い分けることができる。例えば、図4(a)に示すように、後記する移動用車輪21が金属板Pに当接した状態で、作業者が、第2アーム13bを把持して押すことにより、図4(a)に示す矢印方向へ、支持フレーム10を傾斜した状態で金属片切断装置1を移動させることができる。なお、図4(a)は、支持フレーム10を、フレームアーム部13により傾斜させて金属片切断装置1を移動する場合の例を示しているが、図示の例に限定されず、傾斜させずに水平状態で移動可能であることは勿論である。
【0042】
また、図4(b)に示すように、支持フレーム10は、支持フレーム10を傾斜させ金属板P上に倒置したときに支持フレーム10を支持するためのスタンドS、Sを有しているのが好ましい。スタンドS、Sは、棒状部材であって、一対の支持柱12、12の側面板12b、12bから支持フレーム10の後方に向かって、金属板Pと略平行に突設されており、金属板P上に倒置したときにその先端部で金属板Pに当接して、支持フレーム10を支持するようになっている。また、スタンドS、Sは、先端部付近に、先端部に向かうにつれて先細りとなるテーパ部S1、S1を有していてもよい。図4(b)に示すように、第1アーム13aを矢印方向へ倒して支持フレーム10を倒置すると、スタンドS、S(右側図示せず)のテーパ部S1、S1(右側図示せず)が金属板Pに当接して支持フレーム10を支持する。これにより、支持フレーム10の下面側が作業者の正面側に位置することとなり、駆動軸93への切断刃92の取付けや交換等をしやすくすることができる。
【0043】
図1、図2および図3(a)、(b)に示すように、移送手段20は、支持フレーム10を金属板P上で自由に移送させるためのものであって、移動用車輪21と、この移動用車輪21を上下方向に昇降させる昇降機構22と、を有している。
【0044】
移動用車輪21は、昇降機構22を介して支持フレーム10のベース枠11に、例えば四隅に金属板Pに対して同じ高さ位置で転動可能に取付けられている。昇降機構22は、移動用車輪21を金属板Pに対して上下させて離接させるように、後記する固定手段30を金属板Pに対し固定と解除を可能にさせるためのものであって、この昇降機構22は、例えば、支持板23と、支持軸24と、足踏みレバー25と、リンク機構25a(図3(a)、(b)参照)と、を有して構成される。
【0045】
支持板23は、金属板Pから所定高さ離間した位置で、支持フレーム10の水平梁11aの側面に取付けられている。支持軸24は、支持板23から金属板P側へ延びるように固定される固定軸24aと、固定軸24aにスライド自在に設けられるスライド軸24bと、を有して構成される。このスライド軸24bの先端部に、移動用車輪21が転動自在に取付けられる。
【0046】
足踏みレバー25は、支持軸24のスライド軸24bを、リンク機構25aにより上下動させて移動用車輪21を昇降させるためのものであって、基端部が支持板23側に取付けられており、先端部が金属片切断装置1の外側へ向かって延びるとともに、基端部と先端部との間でスライド軸24bに係合されている。
【0047】
このような昇降機構22によれば、金属板Pに移動用車輪21が当接した状態で、作業者が足踏みレバー25を所定量踏み込むと、足踏みレバー25の抑止が外れて、スライド軸24bが、固定軸24aを上方へスライドして支持軸24が縮小する。これにより、支持軸24に取付けられた移動用車輪21が金属板Pから離間するように上昇し、図3(b)に示すように、移動用車輪21を金属板Pから離間させることができる。なお、図3(b)に示す状態から、足踏みレバー25を所定量踏み込むと、足踏みレバー25の動きに伴って、リンク機構25aが屈曲状態から伸長状態になることで、スライド軸24bが、固定軸24aを下方へスライドして支持軸24を伸長させることにより、移動用車輪21が下降して図3(a)に示すように、金属板Pに当接した状態に保持される。これにより、作業者が、支持フレーム10を移動させることができる。
【0048】
固定手段30は、支持フレーム10を金属板P上に自在に固定し、又は固定を解除するためのものであって、金属板Pに磁着する磁着手段を用いている。この固定手段30は、例えば、水平梁11aの前方側部と後方側部に、金属板Pに対して同じ高さになるように設けた4つの磁石ケース31と、この磁石ケース31にそれぞれ設けられたレバー32と、を有している。本実施形態では、磁石ケース31は、移動用車輪21とともに支持フレーム10の四隅等に取付けられている。また、磁石ケース31は、水平梁11aの後方側部に配置された2つが、移動用車輪21より後方にならないように配置されている。
【0049】
この磁石ケース31は、本実施形態では、4つの当接面が金属板Pに当接すると、金属片切断装置1全体を金属板P上に固定できる大きさに形成されているが、1つの磁石ケース31で固定できるようにしても良いことは勿論である。磁石ケース31は、レバー32の操作で金属板Pに磁着して、支持フレーム10を金属板Pに固定することができる。
【0050】
なお、本実施形態では、レバー32を、磁石ケース31の当接面に対して垂直に立ち上げると、磁石ケース31に収納された磁石が当接面に接触するように移動することで金属板Pに磁着し、この状態から、レバー32を磁石ケース31の当接面に対して水平となるように寝かせると、磁石ケース31の磁石が当接面から離れるように移動して、金属板Pに対する磁着が自在に解除されるようになっている。このようなレバー32の向きにより、作業者は、磁石ケース31が金属板Pに磁着しているか否かを確認することができる。
【0051】
また、図2(b)、図3(a)に示すように、磁石ケース31は、移動用車輪21を支持する支持軸24が伸長した状態においては、金属板Pから離間しており、一方、図3(b)に示すように、支持軸24が縮小した状態においては、移動用車輪21が金属板Pから離間し、磁石ケース31が金属板Pに当接するようになっている。なお、磁石ケース31の後側の2つが後方の移動用車輪21、21より支持フレーム10の前方に配置されることで、移動用車輪21、21が、例えば、後方に2つしか設けられていない場合で、かつ、磁石ケース31の当接面より上方に配置されていても、支持フレーム10を傾斜させることで金属片切断装置1を移送することができる(図4(b)参照)。
【0052】
移動手段40は、垂直移動手段50と、水平移動手段60と、を有して構成されている。
垂直移動手段50は、設置台80を支持した状態で上下動させるためのものである。ここで、垂直移動手段50の説明に先立ち、設置台80について簡単に説明する。
【0053】
設置台80は、金属片切断手段としての切断工具90を着脱自在に装着するためのものである。
図1および図2(a)に示すように、設置台80は、例えば、断面Z字形状に形成された部材であって、上下の水平面とこの水平面間に連続する垂直面とを備え、下側の水平面を、切断工具90を設置する設置部81とする金属製の板状部材である。設置台80の前記略垂直下方向に延びる部分は、その後面側で、後記するガイド板53の板状部53bの前面側と対面状に当接している。
【0054】
また、設置台80は、上側の水平面の端部に、後記する水平移動手段60の案内部材61の送りネジ62と噛合う噛合接続部82を有しており、この噛合接続部82に案内部材61が挿通されている。後記する操作ハンドル63を回転させると、案内部材61の送りネジ62と、噛合接続部82に設けられたネジ溝(図示せず)とが噛合い、設置台80を案内部材61に沿って水平方向に往復動させることができる。
【0055】
垂直移動手段50は、前記したように、設置台80を上下動させて切断工具90の高さを調節するためのものであって、図1および図2に示すように、昇降用ハンドル52と、昇降用軸51と、ガイド板53と、昇降用軸51に嵌合されるナット54、54とを有して構成されている。
【0056】
昇降用軸51は、設置台80を昇降させるためのものであって、一端部に、作業者が昇降用軸51の高さを調節するための昇降用ハンドル52が取付けられ、設置台80に設けられた接続用孔(図示せず)を挿通し、他端部が、ガイド板53の上部に図示しない軸受を介して固定されている。
【0057】
図2(a)に示すように、ガイド板53は、一端部に水平移動手段60のガイド軸66を挿通させるための接続部53aと、この接続部53aから延び、その一部で設置台80の垂直面に当接する板状部53bとを有して構成されている。ガイド板53は、接続部53aが水平移動手段60のガイド軸66に接続された状態で、設置台80の垂直面が当接して上下方向に摺動できるようになっている。
【0058】
ナット54、54は、昇降用軸51の下端が接続された設置台80の水平な基端部の上下面に溶接により固定された状態で昇降用軸51に螺合されており、昇降用ハンドル52を回転させると、ナット54、54は、昇降用軸51に沿って昇降する。これにより、図3(c)に示すように、設置台80をガイド板53に沿って昇降させることができる。
【0059】
なお、このとき、ガイド板53の板状部53bの前面側と設置台80の垂直面の後面側とが、例えば、図示しないアリとアリ溝によりスライド可能に結合されていることにより、設置台80を垂直方向に上下動させることができる。そして、設置台80に切断工具90を設置することで、図3(d)に示すように、切断工具90を上下動させることができる。
【0060】
再び、図1および図2に示すように、水平移動手段60は、設置台80(切断工具90)を水平方向に往復動させるためのものであって、案内部材61と、この案内部材61に設けられる送りネジ62と、操作ハンドル63と、ガイド手段65と、を有して構成される。
【0061】
案内部材61は、ネジ62が形成され、設置台80を支持柱12、12の間に水平に往復動させるための長棒状部材である。この案内部材61は、一対の支持柱12、12に亘って水平に配置され、両端部が、それぞれ一対の支持柱12、12の平面板12a、12aを貫通した状態で一対の支持柱12、12の案内部材接続部12c、12cの軸受を介して回転自在に支持されている。この案内部材61には、設置台80の噛合接続部82が噛合しており、当該案内部材61の回転により設置台80が左右に移動するように設置されている。
【0062】
また、案内部材61の左側の先端部は、左側の支持柱12の平面板12aを貫通して外方に突出しており、その先端部に操作ハンドル63が一体的に係合されている。作業者が、この操作ハンドル63を回動させて送りネジ62を回転させるように構成されている。
【0063】
ガイド手段65は、後記する設置台80を案内部材61に沿って往復動させるためのものであって、ガイド軸66と、このガイド軸66を支持する支持部67とを有している。
【0064】
支持部67は、ガイド軸66を支持フレーム10の接続梁11bに案内部材61と平行に固定するためのものであって、その中心部にガイド軸66を固定するための固定孔(図示せず)を有し、接続梁11bの長手方向に所定距離離間して2つ設置されている。
【0065】
ガイド軸66は、案内部材61に沿って往復動させるためのガイドとなるものであって、支持部67の固定孔(図示せず)を挿通して、案内部材61の下方位置に、案内部材61と平行に固定されている。このガイド軸66は、スライド自在に挿通する接続部53aを介してガイド板53と接続している。
【0066】
図1では、作業者が操作ハンドル63を回転操作することで、噛合接続部82および接続部53aを介して設置台80(切断工具90)を案内部材61およびガイド手段65に沿って往復動させることができる。
【0067】
なお、ガイド軸66にストッパ(図示せず)を設けることにより、設置台80(切断工具90)の左右方向の移動量を規定することもできる。ストッパ(図示せず)は、支持部67、66で囲まれた内側であって、かつ、金属片Mの他端部側の支持部67(図1において右側)に近接した位置で、ガイド軸66に嵌合するなどして固定される。このようなストッパ(図示せず)は、金属片Mの他端部の位置に応じて適宜変更することができる。たとえば、ストッパ(図示せず)が、金属片Mの他端部と奥行き方向に略同軸上に位置するように位置決めする。このように配置することにより、設置台80(切断工具)の噛合接続部82の右端部がストッパ(図示せず)に当接するまで設置台80(切断工具90)を移動させると、金属片Mを金属板Pから切断することができる。このように、金属片Mの切断終了位置にストッパ(図示せず)を配置することにより、作業者が切断終了位置を手動で調節する必要がなくなるため、切断作業の効率をより向上させることができる。
【0068】
図1に示すように、当接梁14に設けられて金属片Mに係合する当接手段70は、第1当接部71と、第2当接部72と、係合部73と、を有して構成されている。
【0069】
第1当接部71は、金属片Mの後面側から当接する棒状部材であって、補助梁14に沿って配置、固定されている。第1当接部71は、その両端部に、第2当接部72を固定するためのネジ溝等の固定用孔71a、71aが形成されている。
一方、第2当接部72は、金属片Mの前面側から当接する棒状部材である。第2当接部72は、その両端部に、第1当接部71に接続するための接続用孔(図示せず)が設けられている。係合部73は、第2当接部72を第1当接部71に接続するためのものであって、例えば、ネジ部材である。
【0070】
このように構成された当接手段70は、第1当接部71に金属片Mの後面を当接させた状態で、第1当接部71の固定用孔71a、71aと第2当接部72の接続用孔(図示せず)を合致させ、第2当接部72の接続用孔(図示せず)側から、例えば、係合部73を螺合させ締結する。これにより、第1当接部71と第2当接部72とで金属片Mを挟持して固定することができる。このとき、係合部73は、金属片Mの厚み以上の長さを有しており、第2当接部72は、金属片Mの厚みと略同じ距離、金属片切断装置1の外側へ向かって離間した位置で第1当接部71に取付けられる。
【0071】
このような当接手段70を用いて、金属片Mを挟みつけるようにして支持フレーム10に固定することにより、金属片Mを確実かつ容易に位置決めすることができる。さらに、切断刃92による金属片Mの切断中に、切断工具90の振動によって金属片Mが揺動したり、切断の途中で転倒したりすることを防止することができる。
なお、本実施形態では、補助梁14に棒状部材を載置、固定して第1当接部71としたが、これに限られず、補助梁14を第1当接部71としてもよいことは勿論である。
【0072】
図1から図3に示すように、切断工具90は、金属片Mを金属板Pから切断するためのものであって、駆動装置91と、切断刃92と、を有して構成されている。
【0073】
駆動装置91は、切断刃92を高速回転させるためのものであって、設置台80の設置部81に着脱自在に設置されている。駆動装置91としては、エンジンやモータなどを使用することができる。
【0074】
また、図2に示すように、駆動装置91には、切断刃92を取付けるための駆動軸93が設けられている。
駆動軸93は、駆動装置91が設置台80に設置された状態で、挿通孔(図示せず)を挿通して金属板P側へ延びるように配置されている。このような駆動軸93は、駆動装置91で発生させた回転力を切断刃92に伝えて、切断刃92を高速回転させる。
【0075】
切断刃92は、金属片Mを切断するためのものであって、金属製の円盤の外周面に複数の鋸歯又はチップ(図示せず)を有して構成されている。
切断刃92は、円盤状の中央部に駆動軸93と接続するための接続用孔(図2(b)参照)を有して構成されている。図4(b)に示すように、切断刃92の接続用孔(図示せず)に駆動軸93を挿通し、駆動軸93の下端部側からネジ(図示せず)等を挿通させ、切断刃92の上面側からボルト(図示せず)等を螺合・締結するなどにより、切断刃92を駆動軸93に取付けることができる。
【0076】
なお、切断刃92を砥石(図示せず)に交換することにより、金属板Pの切削を行うことができる。砥石(図示せず)は、駆動軸93に着脱自在に取付けることができる。
このような砥石(図示せず)としては、例えば、特開2004−276197号に開示されたディスク状砥石のような、金属板Pに弾性的に接触することができるものを好適に用いることができる。このようなディスク状砥石によれば、金属板Pに僅かに金属片Mが残った場合にも、金属片Mに砥石部分(図示せず)を押し付けながら切削することで、確実に取り除くことができる。
【0077】
次に、金属片切断装置1のその他の構成要素について説明する。
図1および図2(a)に示すように、金属片切断装置1は、切断時に、切断刃92と金属片Mとが摩擦することにより切断刃92にかかる負荷を電気的に計測するための表示装置Aを有していてもよい。この表示装置Aは、前記した操作ハンドル63が設けられる側の支持柱12に設けられることが望ましい。これにより、作業者が、表示装置Aに表示される切断刃92にかかる負荷の値を目視しながら、操作ハンドル63による設置台80(切断工具90)の送り速度を調節することができる。この表示装置Aとしては、例えば、電流計を用いることができる。
【0078】
次に、金属片切断装置1に接続されて使用される冷却集塵装置110を備えた金属片切断システム200について図1および図5を参照して説明する。なお、図5では、説明の便宜上、設置台80を省略している。
【0079】
冷却集塵装置110は、金属片Mの切削時に切断刃92を冷却し、また、切断部分付近の切粉等を回収するためのものであって、冷却水が貯留されるタンク111と、冷却水および切粉を溜めるための周壁シール材112と、を有して構成されている。
【0080】
タンク111は、二層構造になっており、上層部分には、回収ホース113が接続され、下層部分には、供給ホース114が接続されている。回収ホース113は、一端部がタンク111に接続され、他端部が周壁シール材112に接続されて、他端部付近の空気と冷却水を吸引することにより、周壁シール材112に溜まった冷却水を切粉等とともに回収している。供給ホース114は、一端部がタンク111に接続され、他端部が切断刃92付近に固定されて、切断刃92に冷却水を供給している。
【0081】
また、タンク111の上層部分にはフィルタ(図示せず)が内蔵されており、回収ホース113で回収した冷却水を通過させることにより、回収した冷却水に含まれる切粉等をろ過している。そして、ろ過された冷却水は、下層部分に貯留され、供給ホース114から、再度、切断刃92に供給される。さらに、タンク111の下端部には、移動用のキャスター111aが複数個取付けられている。このような冷却装置としては、例えば、特許第3521399号に記載の穿孔機用液体循環装置を用いることができる。
【0082】
周壁シール材112は、切断刃92に供給された冷却水を溜めるためのものであって、例えば、金属片切断装置1が位置決めされたときに切断刃92を前方側から囲む第1パッド115と、切断刃92を後方側から囲む第2パッド116と、が連結されて、切断刃92の周囲を囲んでいる。この周壁シール材112は、回収ホース113を介してタンク111に接続されている。
【0083】
また、周壁シール材112の一部の前側と両側は、冷却水および切粉の飛散防止のための、プラスチック製の飛散防止プレート119(図5参照)によって被覆されている。飛散防止プレート119は、周壁シール材112で囲まれた空間の内側に向かって張り出すように周壁シール材112の枠幅より幅広に形成されている。
【0084】
このように構成された冷却集塵装置110は、金属片切断装置1に設置されると、タンク111の供給ホース114から切断刃92に冷却水を供給するとともに、使用後の冷却水を周壁シール材112の内部に溜める。そして、回収ホース113により、周壁シール材112の内部に溜まった冷却水および切断部分で発生した切粉等の一部を、通水路118からタンク111に回収する。そして、タンク111に回収された冷却水を、タンク111に内蔵されたフィルタ(図示せず)を通してろ過し、再度、供給ホース114から切断刃92に供給する。冷却集塵装置110は、この一連の作業を繰り返す。
【0085】
このような冷却集塵装置110によれば、切断時に切断刃92が高温となることを防止することができ、また、切断刃92と金属片Mとが摩擦することによる金属音の発生を抑制することができる。また、切断部分から発生する切粉等の飛散を防止することができる。また、冷却水の使用量を削減することができる。また切断部分から発生する切粉等の一部を回収することにより、作業後の後部材付け作業の負担を低減させることができる。
【0086】
このような冷却集塵装置110と、金属片切断装置1と、により、金属片切断システム200が構築される。
【0087】
次に、このような金属片切断装置1と冷却集塵装置110を用いて、作業者が、金属板Pから金属片Mを切断する動作および手順について図6および適宜図1から図5を参照して説明する。参照する図面において、図6(a)〜(h)は、作業者が、金属片切断装置と冷却集塵装置とを備えた金属片切断システムにより金属片を切断する動作を説明するための図である。なお、以下の説明においては、切断刃92は、駆動装置91に予め取付けられているものとする。
【0088】
まず、作業者は、図6(a)および図4(a)に示すように、金属片切断装置1の移動用車輪21のすべてを金属板Pに当接した状態から、後方の移動用車輪21を支点として第2アーム13bにより支持フレーム10を後方に傾斜させ、この状態で、第2アーム13bを把持して押進し、金属片Mに近接する方向へ金属片切断装置1を前進させて、支持フレーム10の補助梁(当接梁)14に金属片Mに当接(外接)する位置へ移送させる。この際、ベース枠11が平面視円状に形成されたものである場合は、支持フレーム10を傾斜させた状態で金属片Mを通過させて、図示しないベース枠11又は当接梁14に内接するように当接させる。このようにすると、一人の作業者で楽に金属片切断装置1を移送することができる。
【0089】
次に、作業者は、図6(b)および図1に示すように、金属片切断装置1の支持フレーム10を起立させて、図1に示す当接手段70の第1当接部71に金属片Mを当接させる。金属片Mに第1当接部71が当接するように支持フレーム10の位置を微調整する場合には、4つの移動用車輪21により支持フレーム10を起立させた状態(図4(a)の仮想線の状態)で第1アーム13aを把持して操作し支持フレーム10を移送することで行なっている。そして、作業者は、昇降機構22の足踏みレバー25(図1、図2(a)および図4(a)参照)を踏み込み、支持軸24(図1、図2(a)および図4(a)参照)を縮小させて移動用車輪21を金属板Pから離間させるとともに、図6(b)に示すように、磁石ケース31を金属板Pに磁着させることで支持フレーム10を金属板Pに固定する。作業者は、支持フレーム10の位置が固定されると、第1当接部71に当接する金属片Mに対して、第2当接部72を第1当接部71と対面する位置に配置し、係合部73を介して金属片Mを固定する。
【0090】
次に、作業者は、図6(c)に示すように、金属片切断装置1の操作ハンドル63を回転させて、設置台80(切断工具90)を、案内部材61に沿って図6(c)に示す矢印方向、すなわち、金属片Mに近接する方向に移動させることにより、切断刃92を切断開始位置に配置する。
【0091】
次に、作業者は、図6(d)及び図4(c)に示すように、金属片切断装置1の垂直移動手段50(図1および図2参照)の昇降用ハンドル52を回転させて、昇降用軸51(図1および図2参照)に沿って設置台80(切断工具90)を降下させて、切断刃92の金属板Pからの高さ位置を調節する。この場合、設置台80を、図6(c)に示す位置から図6(d)に示す矢印方向、すなわち、金属板Pに近接する位置まで下降させる。この場合、できる限り、切断刃92の金属板Pと対面する面が、金属板Pに近接するように高さ位置を調節することにより、切断作業後の切削作業の負担を軽減することができる。
【0092】
次に、作業者は、図6(e)に示すように、冷却集塵装置110を設置する。
まず、周壁シール材112を、切断刃92を囲むようにして設置する。そして、タンク111の供給ホース114を、駆動装置91に接続し、回収ホース113を、周壁シール材112に設けた通水路118(図5参照)に接続する。
この状態で、作業者は、駆動装置91を駆動させて駆動軸93を高速回転させ、これにより、切断刃92を高速回転させるとともに、冷却集塵装置110を駆動させる。
そして、操作ハンドル63を回動させることにより、設置台80および切断工具90を図6(f)に示す矢印方向に切り込みつつ移動させて、切断刃92により金属片Mを一端側から切断していく(図3(d)参照)。
【0093】
このとき、作業者は、図6(g)に示すように、切断刃92にかかる負荷の状態を表示装置Aに表示される値によって確認することができるため、切断刃92にかかる負荷が過大とならないように、操作ハンドル63の回転量を調節して、切断刃92の送り速度を調節しながら切断していく。
【0094】
そして、作業者は、設置台80(切断工具90)が、ストッパ(図示せず)に当接したことを確認し、駆動装置91を停止させる。なお、本実施形態においては、ストッパ(図示せず)は、金属片Mの他端部よりも若干手前側(図1における左側)に配置されている。これによれば、作業者は、金属片切断装置1の切断刃92が金属片Mの他端部を切断し切る寸前に、駆動装置91を停止させることとなる。このようにするのは、金属片Mが切り取られることで切断刃92上に金属片Mが倒れて切断刃92の損傷を防止するためである。
【0095】
なお、図6(f)および図6(g)に示す場合において、冷却集塵装置110は、前記したように切断部分に冷却水を散布して、かつ、作業位置に散布された冷却水および切り屑を回収し、濾過して再び冷却水を循環させる冷却水循環の一連の動作を繰り返している。
【0096】
次に、作業者は、当接手段70を金属片Mから解除して、切断刃92を金属片Mの下から操作ハンドル63の操作により移動させて退避させ、図6(h)に示すように、切り残し状態の金属片Mの一端部側をハンマーHで叩く等により、金属片Mを金属板Pから切り離して取り除く。
【0097】
このようにして金属片Mを金属板Pから取り除くことができる。
なお、金属片Mを金属板Pから切断した後に、金属板Pに金属片Mの一部が残存している場合には、切断刃92から砥石(図示せず)に交換することで金属板Pの表面を切削することにより、金属板Pから金属片Mをより確実に取り除くことができる。
【0098】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
本実施形態では、案内部材61を操作ハンドル63で回転させることにより、設置台80を送りネジ62の回転方向に沿って手動で水平移動させることとしたが、これに限られず、モータを介して自動で水平移動させるようにしてもよい。このときのモータの制御を切断刃92にかかる電流(電圧、電力)の変動により制御する構成にすれば、切断刃92にかかる負担は軽減できる。
【0099】
また、冷却集塵装置110の周壁シール材112は、金属板Pと当接する下面部をゴムマット(図示せず)で被覆してもよい。これによれば、周壁シール材112と金属板Pとの間にゴムマット(図示せず)が介在することで、周壁シール材112と金属板Pとの密着度を高めることができる。このため、使用後の冷却水が周壁シール材112の外に漏れ出るのを確実に防止することができる。
【0100】
さらに、図3(c)に示すように、吊下アーム100(図1および図2(b)参照)の支持環101(図1および図2(b)参照)と金属片Mの貫通孔M1(図1参照)にワイヤ102(図1参照)を通して図3(d)に示すように金属片Mを上方に吊上げるようにワイヤ102に張力を与えた状態で切断作業を行っても構わない。
【0101】
なお、本発明の課題は、金属片切断装置1の支持フレーム10と、移動手段40と、固定手段30と、移送手段20と、のみ有していれば解決することができることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】金属片切断装置と冷却集塵装置の全体図である。
【図2】(a)は、図1に示す金属片切断装置の側面図、(b)は、図1に示す金属片切断装置の正面図である。
【図3】図1に示す金属片切断装置の各構成をより詳細に説明するための一部省略した正面図である。
【図4】図1に示す金属片切断装置の各構成をより詳細に説明するための移送状態および切断刃の取り替え状態を示す斜視図である。
【図5】金属片切断システムの冷却集塵装置の構成を説明するための斜視図である。
【図6】作業者が、金属片切断装置と冷却集塵装置とを備えた金属片切断システムにより金属片を切断する様子を説明するための図である。
【符号の説明】
【0103】
1 金属片切断装置
10 支持フレーム
11 ベース枠
11a 水平梁
11b 接続梁
12、12 一対の支持柱
20 移送手段
21 移動用車輪
22 昇降機構
30 固定手段
31 磁石ケース
40 移動手段
50 垂直移動手段
60 水平移動手段
61 案内部材
62 送りネジ
63 移動ハンドル
70 当接手段
71 第1当接部
72 第2当接部
73 係合部
80 設置台
90 切断工具
92 切断刃
100 吊下アーム
110 冷却集塵装置
200 金属片切断システム
A 表示装置
M 金属片
M1 貫通孔
P 金属板
S スタンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板表面から突出する金属片を前記金属板表面に沿って切断除去する金属片切断装置であって、
前記突出する金属片を囲む平面空間を枠材により形成するベース枠及びこの平面空間の少なくとも一部を挟んで対向するようにベース枠上に立設した一対の支持柱を有する支持フレームと、
前記支持柱間に亘って設けられ、装備される前記金属片の切断手段を往復動させる移動手段と、
前記支持フレームを前記金属板表面に固定する、前記ベース枠に設けられた解除自在な固定手段と、
前記ベース枠に設けられ、前記支持フレームを前記金属板表面上で移送させる移送手段と、を備えることを特徴とする金属片切断装置。
【請求項2】
前記ベース枠は、その一部が前記金属片に対して外接又は内接により当接可能な枠材を備えることを特徴とする請求項1記載の金属片切断装置。
【請求項3】
前記ベース枠は、互に平行な一対の水平梁と、この水平梁間を接続する少なくとも1つの接続梁と、で構成されることを特徴とする請求項1記載の金属片切断装置。
【請求項4】
前記ベース枠は、互いに平行な一対の水平梁と、この水平梁間を接続する1つの接続梁と、前記金属片に当接される当接梁と、で構成されることを特徴とする請求項1ないし請求項3記載の金属片切断装置。
【請求項5】
前記当接梁は、前記移動手段と平行に設けられ、前記金属片に係合される当接手段を備え、
前記当接手段は、前記金属片の一側面に当接する第1当接部と、
前記第1当接部に対面して前記金属片の他側面に当接する第2当接部と、
この第1当接部及び第2当接部により前記金属片をその間に挟持可能な係合部と、を備えることを特徴とする請求項4記載の金属片切断装置。
【請求項6】
金属板表面に突出する金属片を前記金属表面に沿って切断する金属片切断装置であって、
前記金属板表面に平行する一対の水平梁、および、前記水平梁間を接続する接続梁を有するベース枠と、このベース枠上に所定間隔を隔てて立設した一対の支持柱と、を有する支持フレームと、
この支持フレームの水平梁に設けられ、前記金属板表面の適宜位置に前記支持フレームを着脱自在に固定する固定手段と、
前記支持フレームの支持柱間に亘って設けられ、前記金属片を切断する切断工具を前記金属板表面に平行な方向に移動させる移動手段と、
前記支持フレームの水平梁間に亘って設けられると共に、前記移動手段に平行に設けられ、前記金属片に当接させる当接手段と、
前記固定手段に隣合う位置で前記支持フレームに設けられ、前記支持フレームを前記金属板表面上で移送させる移送手段と、を備え、
前記当接手段は、前記金属片の一側面に当接する第1当接部と、この第1当接部に対面する位置で前記金属片の他側面に当接する第2当接部と、この第2当接部を前記第1当接部に近接するように移動させて第1当接部および第2当接部により前記金属片を間に係合する係合部とを有することを特徴とする金属片切断装置。
【請求項7】
前記移動手段は、前記切断工具を設置する設置台を前記金属板表面から接離する垂直方向に移動させる垂直移動手段と、この垂直移動手段を支持して前記設置台を前記金属板表面に平行な方向に移動させる水平移動手段とを備えることを特徴とする請求項6記載の金属片切断装置。
【請求項8】
前記支持フレームは、前記金属板表面から遠い側となる前記支持柱の上端に、当該支持フレームを傾斜したときに把持するフレーム用アームを設けたことを特徴とする請求項6又は請求項7記載の金属片切断装置。
【請求項9】
前記金属片を切断するときに前記切断工具にかかる負荷を電気的に計測して表示する表示装置を前記支持フレームの側方に備えることを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれか一項に記載の金属片切断装置。
【請求項10】
前記固定手段は、前記金属板表面に電磁石又は磁石により着脱自在となる磁着固定手段であることを特徴とする請求項6ないし請求項9のいずれか一項に記載の金属片切断装置。
【請求項11】
前記移送手段は、移動用車輪であり、前記固定手段の金属板表面に対面する当接面より、当該移動用車輪を上下方向に昇降させる昇降機構を介して前記支持フレームに設けたことを特徴とする請求項6ないし請求項10のいずれか一項に記載の金属片切断装置。
【請求項12】
前記水平移動手段は、前記一対の支持柱に亘って設けた案内部材と、この案内部材に平行に設けた送りネジと、この送りネジを回転操作する操作ハンドルとを有し、前記操作ハンドルは、前記支持フレームの一方の支持柱の側方に設けたことを特徴とする請求項6ないし請求項11のいずれか一項に金属片切断装置。
【請求項13】
前記支持フレームの一対の支持柱のそれぞれの裏面側に突出させて一対のスタンドを設け、前記一対のスタンドにより前記支持フレームを傾斜した状態で支持することを特徴とする請求項6ないし請求項12のいずれか一項に記載の金属片切断装置。
【請求項14】
前記支持フレームの水平梁の一方には、前記金属片の板厚方向に形成された貫通孔に係合する係合部材を吊り下げるための吊下アームを、前記金属片の上方に離間するように設けたことを特徴とする請求項6ないし請求項13のいずれか一項に記載の金属片切断装置。
【請求項15】
請求項6から請求項14のいずれか一項に記載の金属片切断装置と、前記金属片切断装置が位置決めされた状態で、前記切断刃の周囲を前記金属板に当接して前記金属片の周りを囲む周壁シール部と、前記切断刃に冷却水を供給するとともに、前記周壁シール部の内部に溜まった前記冷却水を回収してろ過する循環ろ過機構を備えたタンクと、を備えた冷却集塵装置を有することを特徴とする金属片切断システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−264933(P2008−264933A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111508(P2007−111508)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000142919)株式会社呉英製作所 (21)
【出願人】(503171913)サコス株式会社 (7)
【Fターム(参考)】