説明

金属生成物の生成方法

本発明は、純度がP1の低等級な多価カチオンフィード流を、純度がP2の多価カチオン複塩沈殿物及び純度がP3の多価カチオン溶液を形成させることにより産業的に精製する方法であって、P2>P1>P3である方法を提供する。当該方法は、a)上記フィードから、水と、多価カチオンと、アンモニウム、複数種のアルカリ金属のカチオン、陽子、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるカチオンと、複数種のアニオンとを含む溶剤を形成する工程であって、形成された溶剤は、さらに、(i)多価カチオンと、上記カチオンのうち少なくとも一種と、上記アニオンのうち少なくとも一種とを含む複塩沈殿物、及び(ii)多価カチオン溶液、の存在により特徴付けられ、上記アニオンの濃度が10%より高く、上記多価カチオン溶液における上記アニオンの濃度に対する上記カチオンの濃度の比率が、明細書に定義する区間DS内に存在する工程、及びb)上記溶液から上記沈殿物の少なくとも一部を分離する工程、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属生成物の生成方法に関する。特に、本発明は、混合金属塩の流(stream)溶液から金属生成物を生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉱石からの多価の金属カチオン生成物の産業的な生成には、通常、浸出工程、次に費用の掛かる精製工程が含まれる。Ti(IV)の場合のように、場合によっては、浸出工程において試薬(Cl)による侵食によりそれを脱酸素することが含まれ得る。
【0003】
金属の浸出元の鉱石は通常、一価及び多価のカチオンの混合物を含有する。というのは、多くの場合、多価カチオンの金属酸化物もしくは不溶性塩類は、カチオンの混合物を含有する溶液を生成するからである。
【0004】
各種カチオン間の分離及び生成物の精製プロセスは、塩であるか金属そのものであるかに拘わらず各種金属生成物を生成するコストの大半を占める。
【0005】
本発明のプロセスは、金属カチオンの複塩が生成される精製工程を用いて、不純な多価カチオン流から多価カチオン生成物を精製する方法に向けられる。
【0006】
複塩は、二種の異なるカチオン及び/又はアニオンからなる結晶と定義され、その構成成分の単塩に比較して著しく溶解度が低いことが特徴である。複塩は、Fe(II)、Fe(III)、Ti(IV)Ti(III)、Mn(II)、及びその他多数等、多数の多価カチオン(「多価カチオン」と呼ぶ)から生成することができる。多くの場合、複塩に存在する第二カチオンは一価のカチオンであるが、アンモニウム、Na、K、Cs等の二価のカチオンである場合もある(以下、「カチオン」もしくは一価カチオンと呼ぶ)。
【0007】
これまで、いかなる金属生成物(塩もしくは金属。以下、塩との用語は、酸化物と水酸化物も含む)を生成する目的でも複塩の結晶化作用を産業的に利用することは実質上なかった。その主な理由は、多くのカチオンによって複塩が形成され、これらの塩が共沈して純度の低い生成物が形成されるという事実である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
SILVA HELIO JOSE著のブラジル特許第20012509号(2003年)によると、llmeniteもしくはその他のチタン含有鉱石に存在する酸化チタンがその他の多価カチオンから分離される。ここで提案されるプロセスでは、Fe及びAlは、Fe(III)がアンモニウム複塩の形態で沈殿する前にチタン塩から分離される。硫酸を用いてllmeniteから浸出させることにより得られる溶液に硫酸アンモニウムを加えると、二成分塩である(NH)Fe(SO12HO、(NHTiO(SOO、及び(NHFe(SO6HOの共沈が生じた。
【0009】
本発明によると、驚くべきことに、特定のアニオン濃度レベルより上かつ全アニオンに対する全カチオンの比率の特定の範囲においては、ほとんどの場合、溶液に存在する多価Iカチオンの沈殿に高い選択性が存在することが発見された。
【課題を解決するための手段】
【0010】
アニオンがSO(もしくはHSO)である場合、SOの全添加濃度が10%より高ければ、ほとんどの対SOカチオン比率において各種カチオンの複塩の溶解度が非常に高いことが発見された。カチオン/SO比率の特定の範囲においては、金属カチオン複塩の溶解度が大幅に落ち、非常に高い収量で溶液から沈殿させることができることが発見された。また、非常に驚くべきことに、複塩の溶解度が低いカチオン/SOの範囲は、各多価金属カチオンについて、その他の多価金属カチオンに対して異なり、各多価カチオンについて、溶解度の低下は、別のSO濃度において生じることも発見された。
【0011】
いくつかの場合、たとえばFe(II)とFe(III)の場合、複塩の溶解度の低下は、Fe(II)については非常に顕著である一方、Fe(III)については溶解度の低下はずっと穏やかである。その結果として、混合溶液においてFe(III)の複塩からのFe(II)の複塩の分離に高い選択性が見られる。各種多価カチオン間において「複塩低溶解度」の範囲に高いばらつきがあることは、たとえばllmenite浸出液に存在するTi(IV)、Fe(II)、及びFe(III)間、もしくは様々なCu鉱石に存在するCu及びFeカチオン間の分離に利用することができる。
【0012】
非常に驚くべきことに、アニオンのpHと濃度とを制御することにより、各種多価カチオンを順次に沈殿させて、これら多価カチオンの複塩を高い純度で形成することができることが発見された。
【0013】
また、驚くべきことに、生成された複塩は、洗浄しても特定の金属カチオンの損失が非常に少なく、高純度の金属生成物、金属生成物の原料、及びその他の金属生成物(塩、酸化物、もしくは水酸化物)の生成に十分な等級の生成物を提供することができることが発見された。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の開示
本発明によると、当該技術水準を念頭に置き、純度がP1の低等級な多価カチオンフィード流を、純度がP2の多価カチオン複塩沈殿物及び純度がP3の多価カチオン溶液を形成させることにより産業的に精製する方法が提供される。ここで、P2>P1>P3である。当該方法は、以下の工程:
a)上記フィードから、水と、多価カチオンと、アンモニウム、複数種のアルカリ金属のカチオン、陽子、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるカチオンと、複数種のアニオンとを含む溶剤を形成する工程であって、当該形成された溶剤が、さらに、(i)多価カチオンと、上記カチオンのうち少なくとも一種と、上記アニオンのうち少なくとも一種とを含む複塩沈殿物、及び(ii)多価カチオン溶液、の存在により特徴付けられ、上記アニオンの濃度が10%より高く、上記多価カチオン溶液における上記アニオンの濃度に対する上記カチオンの濃度の比率が、本明細書に定義する区間DS(Zone DS)内に存在する工程、及び
b)上記溶液から上記沈殿物の少なくとも一部を分離する工程、を含む。
【0015】
また、当該方法は、複塩を沈殿させ、得られた複塩を食塩水により洗浄すること及び/又は当該複塩を再結晶させることにより精製することにより混合多価カチオン混合流を精製することを含む。
【0016】
精製された多価カチオン複塩は、多価カチオンの金属又は多価カチオンの酸化物/水酸化物、及びその他の多価カチオン生成物の生成に用いることができる。
【0017】
好適な実施形態によると、アニオンはSO(もしくはHSO)であり、カチオンはアンモニウムである。
【0018】
本明細書において用いる用語「金属複塩」は、アニオン、カチオン(一価又は二価)、及び多価カチオンからなる結晶を指す。
【0019】
用語「純度」もしくは「P」は、全多価金属カチオンに対する精製された多価カチオンの重量比と定義される。いくつかの場合において、純度はパーセンテージにより提示される。たとえば、本明細書において用いるP1は、低等級な多価カチオンフィード流における多価カチオンの純度を示す。
【0020】
純度=多価カチオン/合計(多価カチオン)
ここで、多価カチオンは、精製された多価カチオンの濃度であり、合計(多価カチオン)は、各種多価カチオンの濃度の合計である。
【0021】
本明細書、特に工程(c)において用いる用語「金属」は、ゼロ価の金属を指す。
【0022】
本明細書において用いる用語「多価金属カチオン」は、いかなる多価金属カチオン生成物をも指す。
【0023】
用語「区間DS」は、多価カチオンの複塩の溶解度が低い(当該区間に含まれる範囲外の溶解度より低い)区間と定義される。
【0024】
区間DSは、二通りに定義することができる。
【0025】
1.値XとYの間の区間であって、Yは、カチオン/アニオン(当量/当量値)の上限である、より高いpHの境界を表し、Xは、カチオン/アニオン(当量/当量値)の下限である、より低いpHの境界を表す。上記定義における用語「カチオン」には、溶液に存在する、陽子以外の全てのカチオンが含まれる。
【0026】
2.複塩の最小溶解度(X又はY値を有する溶液のpH)が存在する二つのpH値の間の区間。
【0027】
各種多価カチオンの区間DS
【0028】
【表1】

【0029】
本開示においては、低等級な多価カチオン流を精製する高度に効率的なプロセスを提案し、各種多価カチオンを互いから分別することを可能にする。
【0030】
本発明の好適な実施形態においては、上記沈殿した複塩を、水溶液、最も好適には上記溶剤に存在するのと同じアニオン及びカチオンを含有する溶液により類似のpHレベルで洗浄することにより、又は最も好適には区間DS内で成される当該複塩の再結晶によりさらに精製する。
【0031】
本発明の好適な実施形態においては、上記沈殿し精製された複塩をさらに処理して多価金属酸化物を生成する。別の好適な実施形態においては、上記沈殿した複塩をさらに処理して金属酸化物以外の多価カチオン生成物、たとえば塩もしくは錯体等を生成する。
【0032】
本発明の別の好適な実施形態においては、上記沈殿し精製された複塩をさらに処理して、多価カチオンの金属を生成する。
【0033】
多価カチオン複塩の沈殿は、最も好適には、当該多価カチオンの低等級なフィードを酸、塩基、及び塩のうち少なくとも一つに接触させることにより行われる。アニオン濃度を10%より高くに維持し、アニオンに対するカチオンの比率を区間DS内に維持することにより、多価カチオンの複塩の溶解度は低下し、当該多価カチオン複塩が沈殿するに至る。溶液に存在する各種多価カチオン間に高い選択性を達成するには、カチオン/アニオン比率を沈殿した多価カチオンの区間DS内に保つ一方で、当該カチオン/アニオン比率においては、その他の関心対象の多価カチオンは、それら多価カチオンの区間DS外となることが高く望まれる。溶液に存在する各種ポリカチオンの区間DS範囲に比較的小さな差異しか存在しなくても、選択したカチオンの沈殿においては高い選択性を達成することが可能である。
【0034】
沈殿した複塩を除去した後、カチオン/アニオン比率(及びそれらの濃度)を変更して別の多価カチオンが自身の区間DS内となるようにして、当該多価カチオンが比較的純粋な生成物として沈殿するようにしてよい。このような方法により、溶液に存在する各種多価カチオンを順次に沈殿させて、各種多価カチオンを、純度の高い各々の各種複塩として得ることができる。
【0035】
各種多価カチオン間の選択性は、多価カチオン溶液の組成、たとえばアニオンの濃度及びアニオンに対するカチオンの比率を変更することにより非常に高めることができる。
【0036】
利用可能なさらなる手段は、温度を変更することである。したがって、たとえば、最初に沈殿させる複塩を、一つの温度レベル(当該レベルでは、溶液に存在する別の多価カチオンの溶解度は高い)で沈殿させ得る。第二段階では、アニオンに対するカチオンの比率を第一カチオンの区間DS外へと変更し、温度を変更して、第二の多価カチオン複塩を沈殿させる。
【0037】
好適な沈殿順序では、高濃度で存在する多価カチオンを、溶液中のずっと低濃度の多価カチオンよりも前に沈殿させる。
【0038】
最も好適な実施形態においては、多価カチオンフィードは、以下の多価カチオン:Ti(iv)、Ti(iii)、Fe(ii)、Fe(III)、及びMn、Zn、Co、Cr、Al、Cd、スズ、Ni、V、又はCdのカチオン、のうち一種以上を含有する。しかし、その他の多価カチオンが含まれていてもよく、提示した方法を用いて精製されてもよい。
【0039】
好適な実施形態においては、酸性溶液を用いて上記の多価金属の鉱石から浸出させることにより上記の多価カチオン低等級フィードを生成する(酸性浸出)。別の好適な実施形態においては、塩基性溶液を用いて上記の多価金属の鉱石から浸出させることにより上記の多価カチオン低等級フィードを生成する(塩基性浸出)。別の実施形態においては、多価カチオンフィード流は、産業的プロセスからの廃棄流から構成される。
【0040】
好適な実施形態においては、多価フィード溶液の純度P1は、約10%から約90%の範囲にある。
【0041】
別の好適な実施形態においては、P1は70%より低く、P2は95%より高い。別の好適な実施形態においては、P1は90%より低く、P2は98%より高い。
【0042】
本発明を用いて、区間DS内で多価カチオン複塩を結晶させ、それを洗浄して、複塩を再結晶させることにより、多価カチオン含有生成物の純度を、非常に低いレベルから99.9%を超える場合もある非常に高いレベルへと上昇させることができる。最も好適な実施形態においては、洗浄及び再結晶工程(一以上)は、区間DS内で行われる。
【0043】
好適な実施形態においては、上記複塩における上記多価カチオンとその他の多価カチオンとのモル比は、上記多価カチオンフィード流における比よりも少なくとも5倍高い。
【0044】
多様な一価及び二価のカチオンが多価カチオンとの複塩を形成することができる。それらの多くは、多価カチオンの区間DS内で溶解度が低い。本発明の好適な実施形態においては、上記複塩における上記カチオンは、アンモニウムである。別の好適な実施形態においては、上記カチオンは、モノアルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアルキルアンモニウム、又はテトラアルキルアンモニウムからなる群から選択される。別の好適な実施形態においては、上記複塩におけるカチオンは、ナトリウム及びカリウムからなる群から選択される。
【0045】
多様なアニオンが多価カチオンとの複塩を形成することができる。それらの多くは、多価カチオンの区間DS内で溶解度が低い。本発明の好適な実施形態においては、上記複塩における上記アニオンは、OH、SOHSO、及びハロゲン化物からなる群から選択される。別の好適な実施形態においては、アニオンは、シュウ酸等の有機酸からなる群から選択される。
【0046】
本発明は、高収量及び高純度で多価カチオンを沈殿させることができる。本発明の好適な実施形態においては、沈殿物は、上記低等級な流溶液に初めから存在する多価カチオンの少なくとも80%を含有する。別の好適な実施形態においては、P2/P3比は2より大きく、より好適な実施形態においては、P2/P3比は10より大きい。
【0047】
好適な実施形態においては、上記多価カチオン溶液は、上記チタンフィード溶液に存在するその他の多価カチオンを含有する生成物からなる群から選択される生成物を形成するよう変更され、変更工程の一つは結晶化である。好適な実施形態においては、当該その他の多価カチオンの生成物は、複塩の群から選択される。
【0048】
本方法の好適な実施形態は、任意に予め洗浄した上記沈殿物を再結晶させて純度P6の沈殿物及び純度P7の母液を形成する工程をさらに含む。ここで、P6>P2>P7である。
【0049】
好適には、上記再結晶化は、上に定義した上記群からそれぞれ選択される、少なくとも一種のカチオンと、少なくとも一種のアニオンとを含む溶液を用いる。
【0050】
好適な実施形態においては、上記複塩は鉄複塩であり、当該鉄複塩のアニオンは、一価アニオン、二価アニオン、ハロゲン化物アニオン、硫酸アニオン及び重硫酸アニオン、有機酸アニオン、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0051】
好適には、上記多価カチオン複塩の純度(P2)は、80%より高い。
【0052】
好適な実施形態においては、上記カチオン複塩(P2)は、チタン複塩であり、当該チタン複塩の純度(P2)は99%より高い。
【0053】
好適には、上記多価カチオンフィードは、複塩の沈殿により得られる母液である。
【0054】
いくつかの好適な実施形態においては、アニオンは濃度が20%より高いSOである。
【0055】
他の好適な実施形態においては、多価カチオンはZn(II)であり、アニオンは濃度が28%より高いSOである。
【0056】
好適には、上記多価カチオン生成物は、上記低等級な流溶液に存在していた上記多価カチオンの少なくとも70%を含有する。
【0057】
好適な実施形態においては、上記溶剤のpHは、5より低い。
【0058】
いくつかの好適な実施形態においては、多価カチオンはTi(iv)であり、区間DSの境界は0.3から1.4の間である。
【0059】
その他の好適な実施形態においては、多価カチオンはTi(ii)であり、区間DSの境界は0.5から1.5の間である。
【0060】
当該その他の好適な実施形態において、好適には、多価カチオンはTi(ii)であり、区間DSの境界は1.5から3.5の間である。
【0061】
いくつかの好適な実施形態においては、多価カチオンはCu(ii)であり、区間DSの境界は0.3から1.0の間である。
【0062】
その他の好適な実施形態においては、多価カチオンはFe(ii)であり、区間DSの境界は0.7から4の間である。
【0063】
さらに他の好適な実施形態においては、多価カチオンはFe(iii)であり、区間DSの境界は0.8から3の間である。
【0064】
さらに他の好適な実施形態においては、多価カチオンはZn(ii)であり、区間DSの境界は0.25から1.75の間である。
【0065】
いくつかの好適な実施形態においては、多価カチオンはマンガンであり、区間DSの境界は0.6から1.2の間である。
【0066】
その他の好適な実施形態においては、多価カチオンはコバルトであり、区間DSの境界は0.47から1.8の間である。
【0067】
さらに他の好適な実施形態においては、多価カチオンはクロム(Cr)であり、区間DSの境界は0.3から1.4の間である。
【0068】
いくつかの好適な実施形態においては、多価カチオンはAl(ii)であり、区間DSの境界は0.5から1.2の間である。
【0069】
その他の好適な実施形態においては、多価カチオンはスズであり、区間DSの境界は0.8から2.5の間である。
【0070】
さらに他の好適な実施形態においては、多価カチオンはニッケルであり、区間DSの境界は0.7から1.9の間である。
【0071】
いくつかの好適な実施形態においては、多価カチオンはバナジウムであり、区間DSの境界は0.4から2.4の間である。
【0072】
その他の好適な実施形態においては、多価カチオンはカドミウムであり、区間DSの境界は0.2から2.2の間である。
【0073】
好適な実施形態においては、金属生成物は、金属酸化物、多価カチオンの水酸化物及び塩の群から選択される。
【0074】
好適には、複塩のカチオンはアンモニウムであり、アニオンは硫酸である。
【0075】
本発明の観点がより一層理解され、評価されるべく、本発明をいくつかの好適な実施形態に関連付けて以下の実施例において記載するが、本発明をこれら特定の実施形態に限定することを意図したものでない。むしろ、添付の特許請求の範囲に定義する発明の範囲に含まれ得るすべての代替物、変更、均等物を範囲に収めることを意図している。したがって、好適な実施形態を含む以下の実施例は、本発明の実施を例示するものであり、提示される特定的事項は例示であり、かつ本発明の好適な実施形態の例証的説明のみを目的としたものであり、発明の調製手順についての最も実用的かつ容易に理解されると思料するところの記載ならびに原理及び概念的観点を提供する目的で提示されることを理解されたい。
【実施例】
【0076】
比較例1
様々な量の、硫酸を用いてllmeniteから浸出させることにより得られる溶液と、様々な量のアンモニア及び(NH)2SOとをフラスコに加えた。25℃で20分又は1.5時間フラスコを振とうした。沈殿物が形成された。llmenite浸出溶液の組成を表1に示し、結果を表2に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
実施例3
様々な量の、硫酸を用いてllmeniteから浸出させることにより得られる溶液と、アンモニアと、(NH4)SOとをフラスコに加えた。25℃で1.5時間フラスコを振とうした。沈殿物が形成された。沈殿物及び溶液の組成を表4に示す。
【0080】
【表4】

【0081】
実施例4
様々な量の、硫酸を用いてllmeniteから浸出させることにより得られる溶液と、(NH4)SOとをフラスコに加えた。30℃で20分フラスコを振とうした。沈殿物が形成された。初期溶液の組成を表5に示し、結果の組成を表6に示す。
【0082】
【表5】

【0083】
【表6】

【0084】
本発明は上記の例示的実施例の詳細に限定されず、本発明の本質的特性から逸脱することなくその他の特定的形態で実施され得ることは当業者には明白であろう。したがって、本実施形態及び実施例は、あらゆる観点において例示的であって限定的なものでないと考慮されることが望まれ、上記の記載ではなく添付の特許請求の範囲を参照すべきであり、したがって特許請求の範囲の均等の意味及び範囲内に存在するあらゆる変更は、特許請求の範囲に含められることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
純度がP1の低等級な多価カチオンフィード流を、純度がP2の多価カチオン複塩沈殿物及び純度がP3の多価カチオン溶液を形成させることにより産業的に精製する方法であって、P2>P1>P3であり、該方法が以下の工程:
a)当該フィードから、水と、多価カチオンと、アンモニウム、複数種のアルカリ金属のカチオン、陽子、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるカチオンと、複数種のアニオンとを含む溶剤を形成する工程であって、形成された当該溶剤が、さらに、(i)多価カチオンと、当該カチオンのうち少なくとも一種と、当該アニオンのうち少なくとも一種とを含む複塩沈殿物、及び(ii)多価カチオン溶液、の存在により特徴付けられ、当該アニオンの濃度が10%より高く、当該多価カチオン溶液における当該アニオンの濃度に対する当該カチオンの濃度の比率が、明細書に定義される区間DS内に存在する工程、及び
b)当該溶液から当該沈殿物の少なくとも一部を分離する工程、
を含む、方法。
【請求項2】
前記沈殿物を処理して多価金属酸化物を生成する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記沈殿物を処理して金属酸化物以外の多価金属生成物を生成する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記沈殿物を前記処理するプロセスが、Mi金属の生成段階を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記フィードがフィード水溶液であり、前記形成が当該フィード溶液を酸、塩基、及び塩の少なくとも一つに接触させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記多価カチオンが、Ti(iv)、Ti(iii)、Fe(ii)、Mn、Zn、Co、Cr、Al、Cd、スズ、Ni、V、及びCdからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記多価カチオンフィードが、酸性溶液を用いて前記多価金属の鉱石から浸出させることにより形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記多価カチオンフィードが、塩基性溶液を用いて前記多価金属の鉱石から浸出させることにより形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
P1が約10%から約90%の範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
P1が70%より低く、P2が95%より高い、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
P1が90%より低く、P2が98%より高い、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記多価カチオンフィード流が、産業的プロセスからの廃棄流を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記複塩における前記多価カチオンとその他の多価カチオンとのモル比が、前記フィード流における比よりも少なくとも5倍高い、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記複塩における前記カチオンがアンモニウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記複塩における前記カチオンが、モノアルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアルキルアンモニウム、又はテトラアルキルアンモニウムからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記複塩における前記カチオンが、ナトリウム及びカリウムからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記複塩における前記アニオンが、OH、SOHSO、及びハロゲン化物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記複塩における前記アニオンが、有機酸からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記沈殿物が、前記低等級な流溶液に初めから存在する前記多価カチオンの少なくとも80%を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
比P2/P3が2より大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
比P2/P3が10より大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記多価カチオン溶液が、前記チタンフィード溶液に存在するその他の多価カチオンを含有する生成物からなる群から選択される生成物を形成するべく変更され、変更工程の一つが結晶化である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記その他の多価カチオンの生成物が、複塩の群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記分離された沈殿物を洗浄して、純度がP4の被洗浄沈殿物と、純度がP5の洗浄溶液とを形成する工程をさらに含み、ここでP4>P2>P5である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記洗浄が、前記請求項1の群からそれぞれ選択される、少なくとも一種のカチオンと、少なくとも一種のアニオンとを含む溶液により行われ、当該アニオンの濃度が10%より高く、前記多価カチオン溶液における当該アニオンの濃度に対する当該カチオンの濃度の比率が、明細書に定義される区間DS内に存在する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記洗浄が、陽子と、前記カチオンと、硫酸イオンとを含む溶液により行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
任意に予め洗浄した前記沈殿物を再結晶させて、純度がP6の沈殿物と、純度がP7の母液とを形成する工程をさらに含み、ここでP6>P2>P7である、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記再結晶において、前記請求項1の群からそれぞれ選択される、少なくとも一種のカチオンと、少なくとも一種のアニオンとを含む溶液が用いられる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記複塩が鉄複塩であり、当該鉄複塩の前記アニオンが、一価アニオン、二価アニオン、ハロゲン化物アニオン、硫酸アニオン及び重硫酸アニオン、有機酸アニオン、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記多価カチオン複塩の純度(P2)が、80%より高い、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記チタン複塩の純度(P2)が、99%より高い、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記多価カチオンフィードが、複塩の沈殿から得られる母液である、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記アニオンが、濃度が20%より高いSOである、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記多価カチオンがZn(II)であり、前記アニオンが濃度が28%より高いSOである、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記多価カチオン生成物が、前記低等級な流溶液に存在していた当該多価カチオンの少なくとも70%を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記溶剤のpHが5よりも低い、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記多価カチオンがTi(iv)であり、区間DSの境界が0.3から1.35の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記多価カチオンがTi(iii)であり、区間DSの境界が0.8から1.65の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記多価カチオンがTi(ii)であり、区間DSの境界が1.5から3.5の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
前記多価カチオンがCu(ii)であり、区間DSの境界が0.3から1.0の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記多価カチオンがFe(iii)であり、区間DSの境界が0.5から3の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記多価カチオンがFe(ii)であり、区間DSの境界が0.8から4の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
前記多価カチオンがZn(ii)であり、区間DSの境界が0.25から1.75の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項44】
前記多価カチオンがマンガンであり、区間DSの境界が0.6から1.2の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
前記多価カチオンがコバルトであり、区間DSの境界が0.47から1.8の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項46】
前記多価カチオンがクロム(Cr)であり、区間DSの境界が0.3から1.4の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項47】
前記多価カチオンがAl(ii)であり、区間DSの境界が0.5から1.2の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項48】
前記多価カチオンがスズであり、区間DSの境界が0.8から2.5の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項49】
前記多価カチオンがニッケルであり、区間DSの境界が0.7から1.9の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項50】
前記多価カチオンがバナジウムであり、区間DSの境界が0.4から2.4の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項51】
前記多価カチオンがカドミウムであり、区間DSの境界が0.2から2.2の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項52】
前記金属生成物が、金属酸化物、前記多価カチオンの水酸化物及び塩の群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項53】
前記複塩の前記カチオンがアンモニウムであり、前記アニオンが硫酸である、請求項37〜51に記載の方法。

【公表番号】特表2010−526207(P2010−526207A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−505009(P2010−505009)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際出願番号】PCT/IL2008/000583
【国際公開番号】WO2008/135976
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(507132813)ヨマ インターナショナル アーエス (6)
【出願人】(508109829)
【Fターム(参考)】