説明

金属積層体

【課題】金属体の表面に特定の化合物の表面処理層を設けることにより、金属体とオレフィン系重合体との接着性を改良すること、および当該金属体とオレフィン系重合体との積層体層を得ることを目的とする。
【解決手段】金属体(A)の表面の少なくとも一部に、置換された単環又は縮合多環式の芳香族化合物又はその金属塩(b)を含む表面処理層(B)を有してなることを特徴とする金属積層体、表面処理層(B)上に変性オレフィン系重合体(C)層を有する金属積層体、および変性オレフィン系重合体(C)層上に、オレフィン系重合体(D)層を有する金属積層体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系重合体との接着性に優れた表面処理層を有する金属積層体、および表面処理層上に変性オレフィン系重合体層が積層されてなる金属積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
金属を腐食や汚損等から保護する方法の一つとして、金属表面に樹脂を被覆する方法が採られている。かかる樹脂による被覆は、金属素材を用いる各種部品や構造材、例えば鋼板、鋼管材、日用雑貨類、包装材、各種パネルや内装材、各種ケーシング等の分野において広く行われている。
【0003】
ポリオレフィン系樹脂は、熱融着等の加工が容易で、耐水性、耐湿性、衛生的特性に優れかつ安価という利点があることから被覆材として好ましいが、非極性のため本質的に金属との接着性が弱く、一旦金属と融着させても剥離してしまうことがある。この欠点を改良する方法として、ポリオレフィン系樹脂に極性基を導入して接着性を向上させる方法、例えば、ポリオレフィン系樹脂を無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸でグラフト変性し、これを接着層としてポリオレフィン系樹脂と金属基材を接着する方法、あるいは、変性ポリオレフィン系樹脂そのもので金属基材表面を被覆する方法が知られている(特許文献1、特許文献2)。
【0004】
しかしながら、変性ポリオレフィン系樹脂を用いても、被着体である金属の種別によって、あるいは用途による積層の方法や使用環境によって、接着力やその耐久性で満足できなくなる場合もあることから、予め金属表面を、オゾン処理、アンカーコート剤、コロナ放電処理、プラズマ処理、フレーム処理、電子線照射処理、紫外線照射処理といった種々の前処理を行うことにより界面での反応性を補う技術が多々提案されている。
【0005】
具体的には、例えば、金属の表面に水酸基または加水分解性基と酸反応性基とを有する有機ケイ素化合物を塗布して変性ポリオレフィンと熱接着する方法(特許文献3)、鋼材表面に、クロメート処理層、エポキシプライマー層、変性ポリオレフィン接着樹脂層、ポリオレフィン樹脂被覆層を順次積層して、鋼材表面とポリオレフィンの接着性およびその耐久性を向上させる方法(特許文献4)、ポリオレフィン樹脂成形体の表面を、フッ素ガスと酸素ガスあるいは亜硫酸ガスの混合ガスで表面処理することにより、当該成形体の表面に水酸基、カルボキシル基、スルホン基などの官能基を付加させる方法(特許文献5)、金属性芯材の表面に、燃焼化学蒸着により酸化ケイ素あるいは酸化チタンあるいは酸化アルミナなどの微粒子層を形成する方法(特許文献6)などが提案されている。
【0006】
このように種々の改良技術が提案されてきているが、用途によっては、更なる接着力の向上と金属の種類に因らず幅広く適応できる方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭40−23032号公報
【特許文献2】特公昭42−10757号公報
【特許文献3】特公昭56−10184号公報
【特許文献4】特開平8−52838号公報
【特許文献5】特開平10−261387号公報
【特許文献6】特開2007−021919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、金属体の表面に特定の化合物の表面処理層を設けることにより、金属体とオレフィン系重合体との接着性を改良すること、および当該金属体とオレフィン系重合体との積層体層を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、金属体(A)の表面の少なくとも一部に、置換された単環又は縮合多環式の芳香族化合物又はその金属塩であって、該芳香族化合物がアミノ基、水酸基、カルボン酸基から選択される1種乃至3種の基で1〜6個置換されている(但し、未置換の炭素原子が他の任意の置換基で置換されていることを妨げない。)芳香族化合物又はその金属塩(b)を含む表面処理層(B)を有してなることを特徴とする金属積層体である。
【0010】
また、本発明は、上記金属積層体の表面処理層(B)上に、変性オレフィン系重合体(C)層を有してなる金属積層体である。
さらに本発明は、上記金属積層体の変性オレフィン系重合体(C)層上に、オレフィン系重合体(D)層を有してなる金属積層体である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の金属積層体は、金属体の表面に芳香族化合物又はその金属塩(b)を含む表面処理層(B)を有してなるので、変性オレフィン系重合体(C)層などとの接着強度に優れ、且つ、例えば、60℃の温水中に7日間浸漬した後でも接着強度が低下しない、即ち、耐久接着性に優れる。
【0012】
また、本発明の金属積層体は、接着強度に優れ、且つ、上記と同様に耐久接着性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<金属体(A)>
本発明の金属積層体を構成する金属体(A)は、特に限定はされず、種々公知の金属あるいは合金からなる。具体的には、例えば、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、錫(Sn)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、チタン(Ti)、銅(Cu)、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)の単体あるいはこれらの金属成分を2種以上含む合金からなる。合金の例としては、ジュラルミン等のアルミニウム合金、青銅、白銅、黄銅等の銅合金、炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼等の鋼材、ハステロイ、インコネル等のニッケル合金、その他マグネシウム合金といったものが挙げられる。
【0014】
また、本発明に係る金属体(A)は、亜鉛メッキ鋼板、錫メッキ鋼板、クロムメッキ鋼板、ニッケルメッキ鋼板、アルミニウムメッキ鋼板、錫メッキ銅箔、亜鉛メッキ銅板等のメッキされた金属体、あるいは、銅/ニッケル、ニッケル/アルミニウム、アルミニウム/ステンレス等のクラッド材の様な複合金属体であってもよい。
【0015】
本発明に係る金属体(A)は、とくにその形状も特定されず、種々公知の形状、例えば、箔、板、棒、パイプ、チャンネル材、H型材、ワイヤ、リング、その他各種形状の金属体であってもよい。
【0016】
本発明に係る金属体(A)は、必ずしも表面処理する必要はないが、耐食性向上等のため、リン酸処理、クロム酸処理またはリン酸/クロム酸処理、クロメート処理等の公知の表面処理が行われていてもよい。また、金属体(A)の表面を清浄化しておくため、通常の脱脂、洗浄処理を施されていてもよい。脱脂、洗浄の方法は、脱グリス剤、脱脂肪溶媒を含浸させた清浄な脱脂綿、綿布等で清拭する方法、あるいはこれらの溶媒中での超音波洗浄、アルカリ脱脂など、この種の処理に適用されるいかなる方法でもよい。
【0017】
<芳香族化合物又はその金属塩(b)>
本発明の金属積層体の表面処理層(B)に含まれる芳香族化合物又はその金属塩(b)は、置換された単環又は縮合多環式の芳香族化合物又はその金属塩であって、該芳香族化合物がアミノ基、水酸基、カルボン酸基から選択される1種乃至3種の基で1〜6個置換されている(但し、未置換の炭素原子が他の任意の置換基で置換されていることを妨げない。)芳香族化合物又はその金属塩である。
【0018】
本発明に係る芳香族化合物又はその金属塩(b)としては、例えば、一般式(1)〜(3)で表される少なくとも1種の化合物を例示できる。
【0019】
【化1】

【0020】
【化2】

【0021】
【化3】

[各式中Aは単環式もしくは縮合多環式の芳香族基を表し、各置換基は任意の炭素上に結合していることを意味する。a、b、c、dはそれぞれ0〜4の整数で、そのうち少なくともa、b、cのいずれか一つは1以上の整数である。一般式(1)においては1≦a+b+c+d≦6となる置換基の数を意味する。一般式(2)においては0≦a+b+d≦5、一般式(3)においては0≦a+b+d≦4となる置換基の数を意味する。一般式(2)のM1は金属元素 K、Ba、Sr、Ca、Na、Mg、Al、Mn、Zn、Cr、Fe、Co、Ni、Sn、Cuを表し、一般式(3)のM2は金属元素 K、Ba、Sr、Ca、Na、Mg、Mn、Zn、Cr、Fe、Co、Ni、Sn、Cuを表す。一般式(2)のnは1〜3の整数を表す。Rは、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、アセチル基、アセチルオキシ基からなる群より選ばれる置換基であり、複数個置換される場合は同一でも異なっていても良い。]
本発明に係る芳香族化合物又はその金属塩(b)は、より具体的には一般式(4)〜(6)で表される少なくとも1種の芳香族化合物が挙げられる。
【0022】
【化4】

[式中a、b、c、dはそれぞれ0〜4の整数で、そのうち少なくともa、b、cのいずれか一つは1以上の整数であり、1≦a+b+c+d≦6となる置換基の数を意味する。Rは、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、アセチル基、アセチルオキシ基からなる群より選ばれる置換基であり、複数個置換される場合は同一でも異なっていても良い。]
【0023】
【化5】

【0024】
【化6】

[各式中a、b、dはそれぞれ0〜4の整数で、一般式(5)においては0≦a+b+d≦5、一般式(6)においては0≦a+b+d≦4となる置換基の数を意味する。一般式(5)のM1は金属元素 K、Ba、Sr、Ca、Na、Mg、Al、Mn、Zn、Cr、Fe、Co、Ni、Sn、Cuを表し、一般式(6)のM2は金属元素K、Ba、Sr、Ca、Na、Mg、Mn、Zn、Cr、Fe、Co、Ni、Sn、Cuを表す。一般式(5)のnは1〜3の整数を表す。Rは、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、アセチル基、アセチルオキシ基からなる群より選ばれる置換基であり、複数個置換される場合は同一でも異なっていても良い。]
【0025】
本発明に係る芳香族化合物又はその金属塩(b)としては、具体的には、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、p-t-ブチルフェノール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、o−ヒドロキシアセトフェノン、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ニトロフェノール、p−ニトロフェノール、o−シアノフェノール、m−シアノフェノール、p−シアノフェノール、2−ブロモ−4−シアノフェノール、アニリン、p−クロロアニリン、p−ブロモアニリン、o−アミノアセトフェノン、m−アミノアセトフェノン、p−アミノアセトフェノン、m−ニトロアニリン、2,5−ジメチルアニリン、2−メトキシ−4−ニトロアニリン、安息香酸、o−アセチル安息香酸、p−アセチル安息香酸、o-クロロ安息香酸、o−ブロモ安息香酸、o−ニトロ安息香酸、o-シアノ安息香酸、m−シアノ安息香酸、p−シアノ安息香酸、2−フルオロ−4−メトキシ安息香酸、2−フルオロ−5−メチル安息香酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸、1−ナフトール、2−ナフトール、1−アミノナフタレン、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、o−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、4−アミノレゾルシン、2−アミノレゾルシン、5−アミノレゾルシン、2−アミノハイドロキノン、2,4−ジアミノフェノール、2,5−ジアミノフェノール、4,5−ジアミノフェノール、3,4−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノフェノール、4,6−ジアミノレゾルシン、2,4,6−トリアミノフェノール、2,4,6−トリヒドロキシアニリン、2,3−ジアミノ安息香酸、2,5−ジアミノ安息香酸、3,4−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸、3−アミノ−4−メトキシ安息香酸、2−アミノ−6−フルオロ安息香酸、2−アミノ−3−ニトロ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,3,4−トリヒドロキシ安息香酸、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシフタル酸、4−ヒドロキシフタル酸、3,6−ジヒドロキシフタル酸、3−アミノフタル酸、4−アミノフタル酸、2−アミノ−5−ヒドロキシ安息香酸、3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸、4−アミノ−3−ヒドロキシ安息香酸、5−アミノ−2−ヒドロキシ安息香酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,3−ジアミノナフタレン、5−アミノ−1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等が挙げられる。また本発明に用いられる化合物(B)として、安息香酸、フタル酸、ナフトエ酸およびそれらの誘導体の、K、Ba、Sr、Ca、Na、Mg、Al、Mn、Zn、Cr、Fe、Co、Ni、Sn、Cu等の金属塩も挙げることができる。これらの化合物(B)は、単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
【0026】
<表面処理層(B)>
本発明に係る表面処理層(B)は、前記芳香族化合物又はその金属塩(b)を含む。本発明に係る表面処理層(B)は、金属体(A)の表面に、通常、金属体(A)の単位面積当り芳香族化合物又はその金属塩(b)を0.05〜100mg/m2、好ましくは、0.1〜20.0mg/m2、より好ましくは1.0〜10.0mg/m2の量(乾燥重量)で形成される。
【0027】
金属体(A)の表面に形成させる方法は、種々公知の方法を採り得る。具体的には、例えば、芳香族化合物又はその金属塩(b)を溶剤に分散、もしくは溶解させた処理液を塗布する方法、芳香族化合物又はその金属塩(b)を溶融させて塗布する方法、あるいは、芳香族化合物又はその金属塩(b)を蒸着させて形成する方法などにより形成させ得る。
【0028】
前記芳香族化合物又はその金属塩(b)を溶解もしくは分散させるための溶剤としては、特に限定されず、水や有機溶媒を使用し得る。有機溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族系炭化水素、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロへキサン等の脂環族炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、プロパンジオール、等のアルコール、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンペンタノン、ヘキサノン、イソホロン、アセトフェノン等のケトン系溶剤、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等のセルソルブ類、酢酸メチル、酢酸エチル酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、ギ酸ブチル等のエステル類、トリクロルエチレン、ジクロルエチレン、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素等を挙げることができる。これらの溶剤は、1種単独でも2種以上を組合せて用いてもよい。これらの溶剤の中では、乾燥工程の簡便さ、溶解の容易さから、水、あるいはアルコール、ケトン系溶剤が好ましい。
【0029】
芳香族化合物又はその金属塩(b)を溶剤に分散、もしくは溶解させた処理液を、金属体(A)の少なくとも表面に塗布する方法は、とくに限定はされず、例えば、浸漬、噴霧、コーター、刷毛塗り等のいずれの方法を採り得る。
【0030】
処理液中の芳香族化合物又はその金属塩(b)の濃度は、塗布の方法にもよるが通常、0.01〜10重量%程度、好ましくは0.1〜5.0重量%程度に調製される。処理液の塗布量は、乾燥後の処理量が化合物基準で面積当り0.1〜100mg/m2 の範囲になるように調整するのが望ましい。処理液を塗布した後は、乾燥して、金属体(A)の表面に、表面処理層(B)を形成させる。乾燥は、通常、使用する溶剤の揮発する温度で行うのが望ましい。
【0031】
<オレフィン系重合体(D)>
本発明の金属積層体のオレフィン系重合体(D)層を形成するオレフィン系重合体(D)は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等のα−オレフィンの単独重合体、あるいは2種以上のα−オレフィンの共重合体である。具体的には、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレンなどのエチレンを主体とするエチレン系重合体;プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体、プロピレン・ブロック共重合体などのプロピレンを主体とするプロピレン系重合体;1−ブテン単独重合体、1−ブテン・エチレンランダム共重合体、1−ブテン・プロピレンランダム共重合体などの1−ブテンを主体とする1−ブテン系重合体;4−メチル−1−ペンテン単独重合体、4−メチル−1−ペンテン・1−デセンランダム共重合体などの4−メチル−1−ペンテンを主体とする4−メチル−1−ペンテン系重合体;低結晶性あるいは非晶性のエチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・1−ブテンランダム共重合体、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体などの低結晶性あるいは非晶性オレフィン系重合体;等のオレフィン系重合体を挙げることができる。本発明に係るオレフィン系重合体(D)は、単独でも2種以上のオレフィン系重合体の組成物であってもよい。
【0032】
本発明に係るオレフィン系重合体(D)には、本発明の目的を損なわない範囲で、種々公知の酸化防止剤、耐熱安定剤、難燃剤、耐候安定剤、耐光安定剤、滑剤、核剤、顔料、無機物あるいは有機物等の充填材、オレフィン系重合体以外の重合体、ゴムなどを添加しておいてもよい。
【0033】
本発明に係るオレフィン系重合体(D)は、公知の方法で得ることができ、例えば、遷移金属触媒の存在下にα−オレフィンを単独重合するか、または2種以上のα−オレフィンを気相または液相下で共重合することにより得ることができる。また、用いる触媒や重合方法などには特に制約はなく、例えばチタン(Ti)系、クロム系(Cr)系またはジルコニウム(Zr)系などの遷移金属触媒成分を含むチーグラー型触媒、フィリップス型触媒またはメタロセン型触媒などを使用し、気相法、溶液法、バルク重合法などの重合法により重合することができる。また高圧ラジカル重合法、中・低圧重合法などの重合法により重合することができる。
【0034】
<エチレン系重合体>
本発明に係るエチレンを主体とするエチレン系重合体としては、密度が0.910〜0.925g/cm3、好ましくは0.910〜0.920g/cm3、特に好ましくは0.910〜0.915g/cm3、MFR(ASTM D 1238による温度;190℃、荷重;2.16kg)が通常、0.1〜30g/10分、好ましくは0.5〜20g/10分、特に好ましくは1.0〜10g/10分の範囲にある高圧法低密度ポリエチレン、密度が0.910〜0.940g/cm3、好ましくは0.915〜0.935g/cm3、特に好ましくは0.920〜0.930g/cm3、MFR(ASTM D 1238による温度;190℃、荷重;2.16kg)が通常、0.1〜30g/10分、好ましくは0.5〜20g/10分、特に好ましくは1.0〜10g/10分の範囲にある線状低密度ポリエチレン、密度が0.945〜、好ましくは0.945〜0.970g/cm3、特に好ましくは0.953〜0.960g/cm3、MFR(ASTM D 1238による温度;190℃、荷重;2.16kg)が通常、0.1〜30g/10分、好ましくは0.5〜20g/10分、特に好ましくは1.0〜15g/10分の範囲にある高密度ポリエチレンが好ましく用いられる。
【0035】
<プロピレン系重合体>
本発明に係るプロピレンを主体とするプロピレン系重合体としては、プロピレン単独重合体、融点が通常135〜155℃の範囲にあるプロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体などのプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン単独重合体あるいはプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体と非晶性あるいは低結晶性のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体との組成物からなるプロピレン・ブロック共重合体などが挙げられる。本発明に係るプロピレン系重合体は、通常、MFR(ASTM D 1238による温度;230℃、荷重;2.16kg)が0.1〜100g/10分、好ましくは0.5〜50g/10分、特に好ましくは1.0〜10g/10分の範囲にある。
【0036】
<低結晶性あるいは非晶性オレフィン系重合体>
本発明に係る低結晶性あるいは非晶性オレフィン系重合体は、密度が0.865〜0.910g/cm3未満、好ましくは0.870〜0.900g/cm3の範囲にあるエチレンあるいはプロピレンを主体とするランダム共重合体であり、通常、MFR(ASTM D 1238による温度;190℃、荷重;2.16kg)が0.01〜20g/10分、好ましくは0.05〜20g/10分の範囲にある。これら低結晶性あるいは非晶性オレフィン系重合体としては、具体的には、具体的には、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ヘキセン共重合体などを例示できる。
【0037】
<変性オレフィン系重合体(C)>
本発明の金属積層体の変性オレフィン系重合体(C)層を形成する変性オレフィン系重合体(C)は、上記オレフィン系重合体(D)を不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体でグラフト変性してなる変性オレフィン系重合体である。
【0038】
本発明に係る変性オレフィン系重合体(C)は、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体のグラフト量が、通常、0.05〜15重量%、好ましくは0.1〜10重量%の範囲にある。不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体のグラフト量を上記範囲にすることにより、より前記金属表面処理層(B)との接着強度に優れる金属積層体が得られる。
【0039】
本発明に係る変性オレフィン系重合体(C)は、直接上記オレフィン系重合体(D)を不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体のグラフト量が上記範囲になるようにグラフト変性した変性オレフィン系重合体、あるいは不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体が上記範囲より高濃度でグラフト変性された変性オレフィン系重合体と未変性のオレフィン系重合体との組成物であって、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体からなるグラフト基を上記範囲で含むようにしたオレフィン系重合体の組成物であってもよい。
【0040】
本発明に係る変性オレフィン系重合体(C)は、好ましくは不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体からなるグラフト基を0.1〜10重量%の範囲で含む。
本発明に係る変性オレフィン系重合体(C)を構成する不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体としては、カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物、カルボン酸基を有する化合物とアルキルアルコールとのエステル、無水カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物等を挙げることができ、不飽和基としては、ビニル基、ビニレン基、不飽和環状炭化水素基などを挙げることができる。具体的な化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、無水マレイン酸、無水ハイミック酸、クロトン酸、イソクロトン酸、4−メチルシクロヘキセ−4−エン−1,2−ジカルボン酸無水物、α−エチルアクリル酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、エンドシス−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸(ナジック酸〔商標〕)、ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、1,2,3,4,5,8,9,10−オクタヒドロナフタレン−2,3−ジカルボン酸無水物、2−オクタ−1,3−ジケトスピロ[4.4]ノン−7−エン、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、マレオピマル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、x−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、x−メチル−ノルボルネン−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルネン−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物などをあげることができる。また、不飽和カルボン酸の誘導体としては、酸無水物、酸ハライド、アミド、イミド、エステル等の誘導体であり、具体的には、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエート等が挙げられる。これらの中では不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物が好ましく、特に無水マレイン酸または無水ハイミック酸が好ましい。これら不飽和カルボン酸および/またはその誘導体は、単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。
【0041】
オレフィン系重合体(D)を不飽和カルボン酸および/またはその誘導体でグラフト変性する方法は、公知の種々の方法を採用することができる。具体的には、例えば、押出機を使用して、オレフィン系重合体(D)を溶融し、そこに不飽和カルボン酸および/またはその誘導体を添加してグラフト反応させる方法、あるいはオレフィン系重合体(D)を溶媒に溶解して溶液とし、そこに不飽和カルボン酸またはその誘導体を添加してグラフト反応させる方法などが挙げられる。いずれの場合にも前記不飽和カルボン酸および/またはその誘導体を効率よくグラフト共重合させるためには、ラジカル開始剤の存在下にグラフト反応を実施することが好ましい。グラフト反応は、通常60〜350℃の条件で行われる。ラジカル開始剤の使用割合は変性前のオレフィン系重合体(D)100重量部に対して、通常0.001〜1重量部の範囲である。
【0042】
ラジカル開始剤としては、有機ペルオキシドが好ましく、例えばベンゾイルペルオキシド、ジクロルベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ペルオキシドベンゾエート)ヘキシン−3、1,4−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルペルアセテート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2.5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルペルベンゾエート、tert−ブチルペルフェニルアセテート、tert−ブチルペルイソブチレート、tert−ブチルペル−sec−オクトエート、tert−ブチルペルピバレート、クミルペルピバレートおよびtert−ブチルペルジエチルアセテートなどが挙げられる。その他アゾ化合物、例えばアゾビスイソブチロニトリル、ジメチルアゾイソブチレートなどを用いることもできる。
【0043】
本発明に係る変性オレフィン系重合体(C)には本発明の目的を損なわない範囲で通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、滑剤、核剤、顔料、無機物あるいは有機物等の充填材、変性オレフィン系重合体以外の重合体、ゴムなどを添加しておいてもよい。
【0044】
<金属積層体>
本発明の金属積層体は、前記金属体(A)の表面の少なくとも一部に、前記芳香族化合物又はその金属塩(b)を含む表面処理層(B)を有してなる金属積層体(以下、「金属積層体(I)」と称する場合がある。)、金属積層体(I)の表面処理層(B)上に、前記変性オレフィン系重合体(C)層を有してなる金属積層体(以下、「金属積層体(II)」と呼称する場合がある。)、および、金属積層体(II)の変性オレフィン系重合体(C)層上に、前記オレフィン系重合体(D)層を有してなる金属積層体(以下、「金属積層体(III)」と呼称する場合がある。)を含む。
【0045】
<金属積層体(I)>
本発明の金属積層体は、前記金属体(A)の表面の少なくとも一部に、前記芳香族化合物又はその金属塩(b)を含む表面処理層(B)を有してなる金属積層体(以下、「金属積層体(I)」と称する場合がある。)である。
【0046】
本発明の金属積層体(I)において、芳香族化合物又はその金属塩(b)を含む表面処理層(B)は、前記変性オレフィン系重合体(C)層が積層される表面に形成される限り、とくに限定はされず、金属体(A)表面の全てが表面処理層(B)に覆われていてもよい。
【0047】
本発明の金属積層体(I)は、前記記載の種々公知の方法、具体的には、例えば、金属体(A)の表面の少なくとも一部に、前記芳香族化合物又はその金属塩(b)を溶剤に分散、もしくは溶解させた処理液を塗布する方法、処理液に浸漬する方法、処理液を噴霧する方法、芳香族化合物又はその金属塩(b)を溶融させて塗布する方法、あるいは、芳香族化合物又はその金属塩(b)を蒸着させて形成する方法などにより形成させ得る。
【0048】
<金属積層体(II)>
また、本発明の金属積層体は、前記金属積層体(I)の表面処理層(B)上に、前記変性オレフィン系重合体(C)層を有してなる金属積層体(以下、「金属積層体(II)」と呼称する場合がある。)である。
【0049】
本発明の金属積層体(II)における変性オレフィン系重合体(C)層の厚さはとくに限定はされないが、通常、10〜300μm、好ましくは30〜150μmの範囲にある。
【0050】
本発明の金属積層体(II)は、種々公知の方法、具体的には、例えば、前記金属積層体(I)の表面処理層(B)上に、前記変性オレフィン系重合体(C)の粉末、フィルム、シート、溶融物、溶液または分散体を用いて、従来公知の方法により製造することができる。
【0051】
変性オレフィン系重合体(C)の粉末を用いて、金属積層体(I)を被覆する方法としては、流動浸漬塗装法、静電粉末塗装またはその他の粉末塗装法など、種々公知の方法を用い得る。例えば、流動浸漬塗装法を用いる場合は、変性オレフィン系重合体(C)の粉末を入れた流動床の中に変性オレフィン系重合体(C)の融点以上に加熱した金属積層体(I)を浸漬し、金属積層体(I)の表面処理層(B)上に変性オレフィン系重合体(C)を融着させて、被覆することにより得られる。
【0052】
変性オレフィン系重合体(C)をフィルムまたはシートとして用いる場合は、箔、板、またはパイプなどの形状の金属積層体(I)の表面処理層(B)面とフィルムまたはシート状の変性オレフィン系重合体(C)を貼り合わせ、これを加熱することにより熱接着して積層する方法を採り得る。金属積層体(I)にフィルムまたはシート状の変性オレフィン系重合体(C)を貼り合わせる際には、同時に所定の圧力を加えて被覆することが好ましい。またその他の方法として、変性オレフィン系重合体(C)の溶融物を、金属積層体(I)の表面処理層(B)上に押出しコーティングする方法、板材の金属積層体(I)の表面処理層(B)面と変性オレフィン系重合体(C)とをプレス成形する方法、成形機金型内に金属積層体(I)を挿入して、表面処理層(B)上に、変性オレフィン系重合体(C)を射出成形する、所謂インサート成形などにより、金属積層体(I)の表面処理層(B)上に変性オレフィン系重合体(C)を積層する方法を採り得る。
【0053】
有機溶媒中に、変性オレフィン系重合体(C)を均質に溶解もしくは分散した液状の状態で用いる場合、箔、板、ワイヤ、その他の形状の金属積層体(I)に該液を塗布して加熱し、乾燥することにより製造し得る。
【0054】
<金属積層体(III)>
また、本発明の金属積層体は、前記金属積層体(II)の変性オレフィン系重合体(C)層上に、前記オレフィン系重合体(D)層を金属積層体(以下、「金属積層体(III)」と呼称する場合がある。)である。
【0055】
本発明の金属積層体(III)におけるオレフィン系重合体(D)層の厚さはとくに限定はされないが、通常、10〜300μm、好ましくは100〜150μmの範囲にある。
【0056】
本発明の金属積層体(III)は、前記金属積層体(II)の変性オレフィン系重合体(C)層上に、オレフィン系重合体(D)を積層する方法により得ることができる。
変性オレフィン系重合体(C)層上に、オレフィン系重合体(D)を積層する方法としては、特に限定はされず、種々公知の方法を採用し得る。例えば、金属積層体(II)の変性オレフィン系重合体(C)層とフィルムまたはシート状のオレフィン系重合体(D)を積層して、加熱、あるいは加熱・圧着する方法、変性オレフィン系重合体(C)層上に、オレフィン系重合体(D)を溶融押出しラミネートする方法、金属積層体(II)を金型内に挿入した後、変性オレフィン系重合体(C)層上に、オレフィン系重合体(D)を射出成形する方法などを採り得る。
【0057】
また、金属積層体(I)の表面処理層(B)上に、変性オレフィン系重合体(C)とオレフィン系重合体とを共押出しラミネートする方法、金属積層体(I)の表面処理層(B)上に変性オレフィン系重合体(C)を押出しラミネートした後、引続き、変性オレフィン系重合体(C)層上に、オレフィン系重合体(D)を押出しラミネートする方法、あるいは、金属積層体(I)の表面処理層(B)面とフィルムあるいはシート状の変性オレフィン系重合体(C)およびフィルムあるいはシート状のオレフィン系重合体(D)を重ねて溶融・圧着する方法などを採り得る。
【0058】
本発明の金属積層体(III)を構成する変性オレフィン系重合体(C)層とオレフィン系重合体(D)層は、それぞれ異なるオレフィン系重合体であってもよいが、同種のオレフィン系重合体、例えば、変性オレフィン系重合体(C)層として、変性エチレン系重合体を用いる場合は、オレフィン系重合体(D)としてもエチレン系重合体を用い、変性オレフィン系重合体(C)として、変性プロピレン系重合体を用いる場合は、オレフィン系重合体(D)としてもプロピレン系重合体を用いれば、変性オレフィン系重合体(C)層とオレフィン系重合体(D)層との相溶性がよいので好ましい。
【実施例】
【0059】
以下に実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<アルミニウム積層体>
[比較例1]
無水マレイン酸を0.5重量%グラフト変性した線状低密度ポリエチレン(190℃のMFRが4.5g/10分、密度が0.92g/cm3)のペレットを剥離用のポリイミドフィルムを介して2枚の鏡面板にはさみ込み、熱プレス機により190℃、10MPaで20分間加熱、加圧して、厚み:100μmの接着用フィルムを得た。この無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンのフィルムを幅:2cm、長さ:10cmのサイズに切り出し、これを、同じ幅で長さ:20cm、厚み:200μmのアルミニウム板(JIS,H,4000(A1050P))2枚で挟んで重ね合わせ、ヒートシール機を用いて、温度:140℃、圧力:0.1MPaで60秒間熱接着を行い、アルミニウム積層体を得た。得られたアルミニウム積層体を島津製オートグラフ(AGS−500B)のチャックに固定し、上下のアルミニウム板を引っ張り、剥離角度:180°、剥離速度:200mm/分で剥離を行って接着強度(剥離強度)を測定した。得られたアルミニウム積層体の接着強度は4.8kN/mであった。結果を表1に示す。
【0060】
[実施例1]
安息香酸をエタノールに溶解し、濃度0.5wt%になるように調整し、表面処理液を作製した。この表面処理液を、比較例1で用いたアルミニウム板(JIS,H,4000(A1050P))の表面にバーコーター(番手#1)で塗布し、乾燥させ、アルミニウム板の片面に表面処理層を形成し、アルミニウム積層体(I−1)を得た。得られたアルミニウム積層体(I−1)の安息香酸の被覆量は、7.7mg/m2であった。
【0061】
次いで、2枚のアルミニウム積層体(I−1)の表面処理層を内側にして、比較例1で用いた幅:2cm、長さ:10cmの無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンフィルムを挟んで重ね合わせ、ヒートシール機を用いて、温度:140℃、圧力:0.1MPaで60秒間熱接着を行い、アルミニウム積層体(II−1)を得た。得られたアルミニウム積層体(II−1)を島津製オートグラフ(AGS−500B)のチャックに固定し、上下のアルミニウム板を引っ張り、剥離角度:180°、剥離速度:200mm/分で剥離を行って接着強度を測定した。アルミニウム積層体(II−1)の接着強度は7.1kN/mであった。結果を表1に示す。
【0062】
[実施例2〜4]
実施例1で用いた表面処理液に替えて、安息香酸の濃度を各々0.01wt%(被覆量:0.2mg/m2)、0.1wt%(被覆量:1.5mg/m2)および2.0wt%(被覆量:30.8mg/m2)とする以外は、実施例1と同様に行い、アルミニウム積層体を得た。得られアルミニウム積層体の接着強度を表1に示す。
【0063】
[実施例5〜16]
実施例1で用いた安息香酸に替えて、表1に示す種々の化合物を用いる以外は、実施例1と同様に行い、アルミニウム積層体を得た。得られアルミニウム積層体の接着強度を表1に示す。
【0064】
【表1】

<ステンレス積層体>
[比較例2]
比較例1で用いた無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンを用い、厚み:100μm、幅:2.5cm、長さ:10cmの接着用フィルム、同じ幅で長さ:15cm、厚み:200μmの線状低密度ポリエチレンからなるポリエチレンフィルム(190℃のMFRが5.0g/10分、密度が0.93g/cm3)、および、同じ幅で長さ:15cm、厚み:800μmのステンレス板(JIS,G,4305,NO.4処理(SUS304))を用意した。次いで、ポリエチレンフィルムと接着用フィルムおよびステンレス板を、接着用フィルムが中間層となるように積層し、ヒートシール機を用いて、温度:140℃、圧力:0.1MPaで30秒間熱接着を行い、ステンレス積層体を得た。得られたステンレス積層体を島津製オートグラフ(AGS−500B)のチャックに固定し、ポリエチレンフィルム層を引っ張り、剥離角度:180°、剥離速度:100mm/分で剥離を行って接着強度を測定した。ステンレス積層体の接着強度は3.7kN/mであった。結果を表2に示す。
【0065】
[実施例17]
安息香酸をエタノールに溶解し、濃度0.5wt.%になるように調整し、表面処理液を作製した。この表面処理液を、比較例2で用いたステンレス板(JIS,G,4305,NO.4処理(SUS304))の片面にバーコーター(番手#1)を用いて塗布し、乾燥させ、ステンレス積層体(I−2)を得た。次いで、比較例2で用いたステンレス板に替えて、ステンレス積層体(I−2)を用いる以外は、比較例2と同様に行い、ポリエチレンフィルム/接着用フィル/ステンレス積層体(I−2)からなるステンレス積層体(III−1)を得た。得られたステンレス積層体(III−1)の接着強度は5.7kN/mであった。結果を表2に示す。
【0066】
[実施例18〜24]
実施例17で用いた安息香酸に替えて、表2に示す種々の化合物を用いる以外は、実施例17と同様に行い、ステンレス積層体を得た。得られステンレス積層体の接着強度を表2に示す。
【0067】
【表2】

<銅箔積層体>
[比較例3]
無水マレイン酸を0.1重量%グラフト変性したプロピレン単独重合体(230℃のMFRが3.0g/10分、密度が0.91g/cm3)のペレットを剥離用のポリイミドフィルムを介して2枚の鏡面板にはさみ込み、熱プレス機を用いて、温度:190℃、圧力:10MPaで20分間加熱、加圧して、厚み:100μmの接着用フィルムを得た。この無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレンのフィルムを幅:2.5cm、長さ:10cmのサイズに切り出し、これを、同じ幅で長さ:15cm、厚み:18μmの電解銅箔(三井金属社製:3EC−III)2枚で、銅箔の鏡面を接着面として挟んで重ね合わせ、ヒートシール機を用いて、温度:200℃、圧力:0.1MPaで30秒間熱接着を行い、銅箔積層体を得た。得られた銅積層体を島津製オートグラフのチャックに固定し、上下の銅箔を引っ張り、剥離角度:180°、剥離速度:100mm/分で剥離を行って接着強度を測定した。銅箔積層体の接着強度は0.32kN/mであった。結果を表3に示す。
【0068】
[実施例25]
安息香酸をエタノールに溶解し、濃度0.5wt.%になるように調整し、表面処理液を作製した。この表面処理液を、比較例3で用いた電解銅箔(三井金属社製:3EC−III)の片面にバーコーター(番手#1)を用いて塗布し、乾燥させ、銅箔の片面に表面処理層を形成し、銅箔積層体(I−3)を得た。次いで、比較例3で用いた銅箔に替えて、銅箔積層体(I−3)を用いる以外は比較例3と同様に行い、銅箔積層体(II−3)を得た。得られた銅箔積層体(II−3)の接着強度は1.10kN/mであった。結果を表3に示す。
【0069】
[実施例26〜33]
実施例25で用いた安息香酸に替えて、表3に示す種々の化合物を用いる以外は、実施例25と同様に行い、銅箔積層体を得た。得られた銅箔積層体の接着強度を表3に示す。
【0070】
【表3】

<耐久接着強度>
[実施例34]
実施例1で得られたアルミニウム積層体を、60℃に保温した水中に7日間浸漬した後、水分を拭き取り、常温で一日乾燥させた後、実施例1に記載の方法で、アルミニウム積層体の接着強度(耐久接着強度)を測定した。結果を表4に示す。
【0071】
[実施例35]
実施例5で得られたアルミニウム積層体を、60℃に保温した水中に7日間浸漬した後、水分を拭き取り、常温で一日乾燥させた後、実施例1に記載の方法で、アルミニウム積層体の接着強度(耐久接着強度)を測定した。結果を表4に示す。
【0072】
[実施例36]
実施例6で得られたアルミニウム積層体を、60℃に保温した水中に7日間浸漬した後、水分を拭き取り、常温で一日乾燥させた後、実施例1に記載の方法で、アルミニウム積層体の接着強度(耐久接着強度)を測定した。結果を表4に示す。
【0073】
[実施例37]
実施例11で得られたアルミニウム積層体を、60℃に保温した水中に7日間浸漬した後、水分を拭き取り、常温で一日乾燥させた後、実施例1に記載の方法で、アルミニウム積層体の接着強度(耐久接着強度)を測定した。結果を表4に示す。
【0074】
[実施例38]
実施例12で得られたアルミニウム積層体を、60℃に保温した水中に7日間浸漬した後、水分を拭き取り、常温で一日乾燥させた後、実施例1に記載の方法で、アルミニウム積層体の接着強度(耐久接着強度)を測定した。結果を表4に示す。
【0075】
[実施例39]
実施例17で得られたステンレス積層体を、60℃に保温した水中に7日間浸漬した後、水分を拭き取り、常温で一日乾燥させた後、実施例17に記載の方法で、ステンレス積層体の接着強度(耐久接着強度)を測定した。結果を表4に示す。
【0076】
[実施例40]
実施例18で得られたステンレス積層体を、60℃に保温した水中に7日間浸漬した後、水分を拭き取り、常温で一日乾燥させた後、実施例17に記載の方法で、ステンレス積層体の接着強度(耐久接着強度)を測定した。結果を表4に示す。
【0077】
[実施例41]
実施例19で得られたステンレス積層体を、60℃に保温した水中に7日間浸漬した後、水分を拭き取り、常温で一日乾燥させた後、実施例17に記載の方法で、ステンレス積層体の接着強度(耐久接着強度)を測定した。結果を表4に示す。
【0078】
[実施例42]
実施例22で得られたステンレス積層体を、60℃に保温した水中に7日間浸漬した後、水分を拭き取り、常温で一日乾燥させた後、実施例17に記載の方法で、ステンレス積層体の接着強度(耐久接着強度)を測定した。結果を表4に示す。
【0079】
[実施例43]
実施例23で得られたステンレス積層体を、60℃に保温した水中に7日間浸漬した後、水分を拭き取り、常温で一日乾燥させた後、実施例17に記載の方法で、ステンレス積層体の接着強度(耐久接着強度)を測定した。結果を表4に示す。
【0080】
[実施例44]
実施例25で得られた銅箔積層体を、60℃に保温した水中に7日間浸漬した後、水分を拭き取り、常温で一日乾燥させた後、実施例25に記載の方法で、銅箔積層体の接着強度(耐久接着強度)を測定した。結果を表4に示す。
【0081】
[実施例45]
実施例26で得られた銅箔積層体を、60℃に保温した水中に7日間浸漬した後、水分を拭き取り、常温で一日乾燥させた後、実施例25に記載の方法で、銅箔積層体の接着強度(耐久接着強度)を測定した。結果を表4に示す。
【0082】
[実施例46]
実施例27で得られた銅箔積層体を、60℃に保温した水中に7日間浸漬した後、水分を拭き取り、常温で一日乾燥させた後、実施例25に記載の方法で、銅箔積層体の接着強度(耐久接着強度)を測定した。結果を表4に示す。
【0083】
[実施例47]
実施例31で得られた銅箔積層体を、60℃に保温した水中に7日間浸漬した後、水分を拭き取り、常温で一日乾燥させた後、実施例25に記載の方法で、銅箔積層体の接着強度(耐久接着強度)を測定した。結果を表4に示す。
【0084】
[実施例48]
実施例32で得られた銅箔積層体を、60℃に保温した水中に7日間浸漬した後、水分を拭き取り、常温で一日乾燥させた後、実施例25に記載の方法で、銅箔積層体の接着強度(耐久接着強度)を測定した。結果を表4に示す。
【0085】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の金属積層体は、鋼板、鋼管材、日用雑貨類、包装材、各種パネルや内装材、各種ケーシング等の分野における、ポリオレフィンと金属との接着、あるいは金属部材の塗料のプライマーとして有効に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属体(A)の表面の少なくとも一部に、置換された単環又は縮合多環式の芳香族化合物又はその金属塩であって、該芳香族化合物がアミノ基、水酸基、カルボン酸基から選択される1種乃至3種の基で1〜6個置換されている(但し、未置換の炭素原子が他の任意の置換基で置換されていることを妨げない。)芳香族化合物又はその金属塩(b)を含む表面処理層(B)を有してなることを特徴とする金属積層体。
【請求項2】
金属体(A)がAl、Fe、Ni、Cr、Sn、Mg、Zn、Mn、Co、Ti、Cu、Ag、Mo、Wの単体又はこれら成分を2種以上含む合金であることを特徴とする請求項1に記載の金属積層体。
【請求項3】
芳香族化合物又はその金属塩(b)が、置換された単環の芳香族化合物又はその金属塩であることを特徴とする請求項1記載の金属積層体。
【請求項4】
芳香族化合物又はその金属塩(b)が、少なくとも1個のカルボン酸基で置換されていることを特徴とする請求項1記載の金属積層体。
【請求項5】
芳香族化合物の金属塩(b)を構成する金属元素が、K、Ba、Sr、Ca、Na、Mg、Al、Mn、Zn、Cr、Fe、Co、Ni、Sn、Cuから選択されるいずれか1種であることを特徴とする請求項1記載の金属積層体。
【請求項6】
芳香族化合物の金属塩(b)を構成する金属元素が、Na、Al、Mg、Cuから選択されるいずれか1種であることを特徴とする請求項5記載の金属積層体。
【請求項7】
芳香族化合物又はその金属塩(b)が、置換されていてもよい安息香酸又はそのNa、Al、Mg、Cuから選択されるいずれか1種の金属塩であることを特徴とする請求項1記載の金属積層体。
【請求項8】
表面処理層(B)が、芳香族化合物又はその金属塩(b)を有機溶媒中に均質に溶解した溶液、又は均質に分散した分散体を塗工、乾燥して得られる請求項1記載の金属積層体。
【請求項9】
金属表面処理層(B)が、芳香族化合物又はその金属塩(b)を蒸着して得られる請求項1記載の金属積層体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の金属積層体の表面処理層(B)上に、変性オレフィン系重合体(C)層を有してなる金属積層体。
【請求項11】
請求項10に記載の金属積層体の変性オレフィン系重合体(C)層上に、オレフィン系重合体(D)層を有してなる金属積層体。
【請求項12】
変性オレフィン系重合体(C)が、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体からなるグラフト基を0.05〜15重量%含む変性オレフィン系重合体である請求項10または11に記載の金属積層体。
【請求項13】
不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体からなるグラフト基が、無水マレイン酸である請求項12に記載の金属積層体。
【請求項14】
変性オレフィン系重合体(C)が、無水マレイン酸変性エチレン系重合体又は無水マレイン酸変性プロピレン系重合体を含むことを特徴とする請求項10または11に記載の金属積層体。
【請求項15】
(1−1)金属体(A)の表面の少なくとも一部に、芳香族化合物又はその金属塩(b)を有機溶媒中に均質に溶解した溶液、あるいは均質に分散した分散体を塗工、乾燥して表面処理層(B)を形成する工程、又は、
(1−2)金属体(A)の表面の少なくとも一部に、芳香族化合物又はその金属塩(b)を蒸着して表面処理層(B)を形成する工程、
(2)前記表面処理層(B)上に、変性オレフィン系重合体(C)層を積層する工程、
および
(3)変性オレフィン系重合体(C)層上に、オレフィン系重合体(D)層を積層する工程、
を含む、請求項11に記載の金属積層体の製造方法。

【公開番号】特開2011−20284(P2011−20284A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165007(P2009−165007)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】