説明

金属箔パターンの形成方法

【課題】エッチングを必要とせず、かつ精度の良いパターンを得ることができる金属箔パターンを形成する方法を提供する。
【解決手段】基材11、露光により接着力が変化する接着層12、金属箔13を順次積層してなる金属箔付接着シート1に、
(1)遮光パターン21と透光パターン22とからなるマスク2を用いて基材11側から露光し、接着層12を部分的に露光する工程
(2)金属箔13側から基材11をカットしないようにマスク2の遮光パターン21に対応させて金属箔付接着シート1をカットする工程
を含む工程を行った後、露光部又は未露光部に対応する金属箔13を接着層12から剥離して所定のパターンの金属箔13を得る金属箔パターンの形成方法において、
前記マスク2としてカットする位置より透光パターン22側に遮光パターン21を広げたマスク2を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属箔回路などの金属箔パターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属箔回路などの金属箔パターンは、基板の表面に積層した銅箔表面に、レジストを塗布し、回路パターンとして必要な部分以外に塗布されたレジストを除去するための露光、現像処理を施した後、露出された部分の銅箔をエッチングすることにより印刷回路を形成して、残りのレジストを剥離する方法や、銅箔表面に耐エッチング性インクを回路パターンに印刷して酸又はアルカリなどの薬剤でエッチングする方法などにより製造されていた。
【0003】
しかしながら、これら従来の方法は、エッチング液の処理という煩雑な作業を必要とし、効率的に金属箔パターンを製造することができなかった。
【0004】
これを解決するものとして、金属箔または絶縁基板に回路パターン状に接着剤を塗布し、金属箔と絶縁基板とを接着した後、金属箔側より半抜き(ハーフカット)する方法がある(特許文献1、2)。
【0005】
しかし、特許文献1、2のような方法では、接着剤を塗布する際の精度に限度があり精密なパターンが得にくいなどの欠点があった。
【0006】
これを解決するものとして、シート基材の表面に電離放射線硬化型接着剤層を有する接着シートの接着層の表面に金属箔を貼着し、マスクを用いてシート基材側から紫外線を照射して接着層を部分的に露光し、次に金属箔側からハーフカットし、その後接着シートから金属箔を部分的に剥離する方法がある(特許文献3)。
【0007】
【特許文献1】特開昭58−154291号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開昭60−49694号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2002−151830号公報(実施例2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3の方法は、接着剤を塗布する際の精度が要求されないため、特許文献1、2のような問題は解決できる。しかし、得られる金属箔パターンがマスクの遮光パターンと正確に一致しないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意研究した結果、特許文献3の方法で得られる金属箔パターンがマスクの遮光パターンと正確に一致しない原因が、光の回折や散乱光により、マスクの遮光部分まで接着層が露光されてしまうことにあることを見出した。そして、さらに鋭意研究した結果、本発明を完成するに至った。
【0010】
上記課題を解決する本発明の金属箔パターンの形成方法は、基材、露光により接着力が変化する接着層、金属箔を順次積層してなる金属箔付接着シートに、
(1)遮光パターンと透光パターンとからなるマスクを用いて基材側から露光し、接着層を部分的に露光する工程
(2)金属箔側から基材をカットしないようにマスクの遮光パターンに対応させて金属箔付接着シートをカットする工程
を含む工程を行った後、露光部又は未露光部に対応する金属箔を接着層から剥離して所定のパターンの金属箔を得る金属箔パターンの形成方法において、
前記マスクとしてカットする位置より透光パターン側に遮光パターンを広げたマスクを用いてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の金属箔パターンの形成方法によれば、エッチングを必要とすることなく精度の良いパターンを得ることができる。特に、パターン幅が5mm以下、さらには1mm以下のような細かいパターンに好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の金属箔パターンの形成方法は、基材、露光により接着力が変化する接着層、金属箔を順次積層してなる金属箔付接着シートに、
(1)遮光パターンと透光パターンとからなるマスクを用いて基材側から露光し、接着層を部分的に露光する工程
(2)金属箔側から基材をカットしないようにマスクの遮光パターンに対応させて金属箔付接着シートをカットする工程
を含む工程を行った後、露光部又は未露光部に対応する金属箔を接着層から剥離して所定のパターンの金属箔を得る金属箔パターンの形成方法において、
前記マスクとしてカットする位置より透光パターン側に遮光パターンを広げたマスクを用いてなることを特徴とするものである。以下、本発明の金属箔パターンの形成方法の実施の形態について説明する。
【0013】
図1は本発明の金属箔パターンの形成方法の実施の形態を示す図である。図1の(a)は露光工程、(b)はカット工程、(c)は剥離工程である。露光工程とカット工程とは順番が入れ替わっても構わない。
【0014】
金属箔付接着シートは、基材、露光により接着力が変化する接着層、金属箔からなる。
【0015】
基材としては、露光に用いる光(紫外線や電子線)に対する透過性がある材料であれば特に限定されることなく使用することができる。このような基材としては、例えば、ガラス板や、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアリレート、アクリル、アセチルセルロース、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックからなるフィルム或いは板が使用できる。これらの中でも、取り扱い性や寸法安定性の点で、延伸加工、特に二軸延伸加工されたプラスチックフィルムが好適に使用される。基材の厚みは通常25〜250μm程度である。基材の厚みが厚くなると光の回折の影響が大きくなることから、基材の厚みは125μm以下とすることが好ましい。
【0016】
露光により接着力が変化する接着層は、露光により接着力が低下するタイプと露光により接着力が上昇するタイプに分けられる。いずれのタイプであっても、露光部と未露光部との間において金属箔と接着層との接着力にコントラストが生じるため、所望の金属箔パターンを形成することができる。具体的には、前者のタイプの場合、露光部の金属箔を接着層から剥離することができ、後者のタイプの場合、未露光部の金属箔を接着層から剥離することができる。これら2つのタイプの中でも、初期接着力を十分にすることができるため取り扱い性に優れる前者のタイプ(露光により接着力が低下する接着層)が好ましい。
【0017】
露光により接着力が低下する接着層は、主として露光により接着力が低下する接着剤から構成される。このような接着剤としては、粘着性ポリマーと、光照射により重合・硬化し、金属箔に対する接着力を光照射前よりも低下させるように作用する光重合性化合物と、光重合開始剤とを含有するような、光架橋型の粘接着剤があげられる。なお、粘着性ポリマーが光重合性基を含有する場合には、接着剤中に光重合性化合物は含有していなくてもよい。
【0018】
粘着性ポリマーとしては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、酢酸ビニル系ポリマー、酢酸ビニル−エチレン共重合体系ポリマー、エチレン−アクリル酸エチル共重合体系ポリマー、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体系ポリマー、ウレタン系ポリマー、合成ゴム系ポリマー、ポリブチラール系ポリマー、エポキシ系ポリマーなどがあげられる。これらの中でも、透明性が高い(メタ)アクリル系ポリマーが好適に使用できる。
【0019】
金属箔に対する接着力を光照射前よりも低下させるように作用する光重合性化合物としては、接着力を低下させるように作用する(メタ)アクリル基、ビニル基等の光重合性基を含有するものがあげられる。具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートあるいは1,4−ブチレングリコールジアクリレートなどがあげられる。
【0020】
光重合開始剤としては光重合性基の重合を開始し得るものであれば特に限定されず、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物、ベンジルジメチルケタール等のケタール誘導体化合物などがあげられる。
【0021】
露光により接着力が上昇する接着層は、主として露光により接着力が上昇する接着剤から構成される。このような接着剤としては、粘着性ポリマーと、光照射により重合・硬化し、金属箔に対する接着力を光照射前よりも上昇させるように作用する光重合性化合物と、光重合開始剤とを含有するような、光架橋型の粘接着剤があげられる。なお、粘着性ポリマーが光重合性基を含有する場合には、接着剤中に光重合性化合物は含有していなくてもよい。
【0022】
粘着性ポリマーおよび光重合開始剤としては、露光により接着力が低下する接着層に用いられるものと同様のものが使用できる。
【0023】
金属箔に対する接着力を光照射前よりも上昇させるように作用する光重合性化合物としては、接着力を上昇させるように作用するグリシジル基等の光重合性基を含有するものがあげられる。具体的には、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル−p−オキシ安息香酸、サリチル酸のグリシジルエーテル−グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステルなどや、これらの水素添加物などのグリシジルエステル型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、環状アルキレン尿素のN,N’−ジグリシジル誘導体、p−アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体、m−アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体などや、これらの水素添加物などのグリシジルアミン型エポキシ樹脂;グリシジル(メタ)アクリレートと例えばエチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステルなどのラジカル重合性モノマーとの共重合体などがあげられる。
【0024】
粘着性ポリマーと光重合性化合物との配合比は、初期の接着力と露光後の接着力のバランスから調整を行う。具体的な配合比は用いる粘着性ポリマーや光重合性化合物の種類により異なるが、露光により接着力が低下する接着剤の場合、粘着性ポリマー100重量部に対して光重合性化合物を50〜200重量部程度とすることが好ましく、露光により接着力が上昇する接着剤の場合、粘着性ポリマー100重量部に対して光重合性化合物を50〜200重量部程度とすることが好ましい。
【0025】
接着層と金属箔との露光前の接着力は、作業性の観点から次の範囲であることが好ましい。露光により接着力が低下するタイプの場合、5〜40N/25mmとすることが好ましく、10〜30N/25mmとすることがより好ましい。露光により接着力が上昇するタイプの場合、0.01〜10N/25mmとすることが好ましく、0.1〜1.0N/25mmとすることがより好ましい。
【0026】
露光後の露光部分の接着層と金属箔との接着力は、露光により接着力が低下するタイプと上昇するタイプとで異なる。前者の場合、1.0N/25mm以下とすることが好ましく、0.5N/25mm以下とすることがより好ましい。後者の場合、10N/25mm以上とすることが好ましく、20N/25mm以上とすることがより好ましい。露光後の露光部分の接着層と金属箔との接着力をこのような範囲とすることにより、該接着力と未露光部分の接着層と金属箔との接着力との間で十分なコントラストが生じ、金属箔を剥離しやすくすることができる。
【0027】
接着層の厚みは、通常1〜100μm程度である。
【0028】
金属箔は回路パターン等となるものであり、金、銀、銅、アルミニウム等の低抵抗金属、又はこれら低抵抗金属の少なくとも1種を含有する合金などを用いることができる。金属箔の厚みは0.1〜50μm程度である。
【0029】
金属箔付接着シートは、さらに接着層と金属箔との界面間に反射防止処理が施されていることが好ましい。このような処理を施すことにより、露光の際に金属箔まで到達した光が反射されるのを防止できる。これにより、マスクの遮光部分まで接着層が露光されることを防止でき、金属箔を剥離する際に目的の箇所以外の金属箔が剥離するのを防止できる。
【0030】
接着層と金属箔との界面間に反射防止処理を施すには、金属箔として、少なくとも一方の面が黒化処理された金属箔を用いたり、少なくとも一方の面に黒色フィルムを貼り合わせたり黒色層を形成した金属箔を用いる手段があげられる。金属箔を黒化処理する方法としては、例えば銅箔の場合、亜酸化銅の被膜を形成したり、Co−Cu合金メッキ処理したり、市販の黒化処理液を用いる方法などがあげられる。黒色フィルム及び黒色層は、主として黒色顔料およびバインダー樹脂から形成され、さらに十分な反射防止効果を持たせるため、バインダー樹脂100重量部に対して黒色顔料を10〜100重量部含むことが好ましい。また、バインダー樹脂および黒色顔料以外に、マット剤を含有させ、黒色フィルムや黒色層の表面を適度に粗らすことが好ましい。
【0031】
さらに、接着層と金属箔との界面間に反射防止処理を施すには、金属箔として、少なくとも一方の面に、酸化ケイ素やフッ化リチウムなどの透明性の高い低屈折率層を、反射防止を目的とする主波長の1/4となる光学膜厚となるように形成した金属箔を用いる手段があげられる。
【0032】
本発明の金属箔パターンの形成方法は、上述した金属箔付接着シートに、露光工程(図1(a))、カット工程(図1(b))、剥離工程(図1(c))を行う。露光工程とカット工程とは順番が入れ替わっても構わない。
【0033】
露光工程では、遮光パターンと透光パターンとからなるマスクを用いて基材側から露光し、接着層を部分的に露光する。
【0034】
マスクは金属箔付接着シートの基材側と露光光源との間に設置する。光の回折を少なくするため、基材との間隔を空けず、基材に密着させるようにマスクを設置することが好ましい。露光光源とマスクとの間隔は任意である。
【0035】
マスクの種類としては、クロムマスク、フィルムマスク、エマルジョンマスクなどがあげられる。これらマスクは、プラスチックフィルムやガラス等の透明基材上に銀塩乳剤やクロムなどにより遮光パターンが形成されている2層構造のものが多いが、遮光性基材に透光パターンを抜き加工したような1層構造のものであってもよい。なお、透明基材上に遮光パターンが形成されているマスクの場合、露光時にはマスクの遮光パターン側を金属箔付接着シートに向けて設置することが好ましい。
【0036】
マスクの遮光パターンと透光パターンは、目的とする回路パターン等の形状(カットする形状)に一致させたマスクを用いるのが通常である。しかし、本発明においては、図2〜図4に示すように、カットする位置dより透光パターン22側に遮光パターン21を広げたマスクを用いることを特徴とする。
【0037】
このようにカットする位置より透光パターン側に遮光パターンを広げたマスクを用いた場合、目的とする回路パターン等の形状(カットする形状)と露光パターンの形状とが一致しないとも考えられる。しかし、光の回折により露光パターンgの形状は透光パターン22より広がり(図5)、さらに露光する光が散乱光を含んでいる場合にも露光パターンの形状は透光パターンより広がることから、本発明のようにカットする位置より透光パターン側に遮光パターンを広げたマスクを用いることにより、目的とする回路パターンの形状と露光パターンの形状とを一致させることができる。これにより、金属箔を剥離する際に、目的箇所以外の金属箔が剥がれるのを防止し、精度の良い金属箔パターンを得ることができる。特に、パターン幅(カットする幅)が5mm以下、さらには1mm以下のような細かいパターンでは光の回折の影響が大きいため好適である。
【0038】
マスクの遮光パターン21を広げる程度は、目的とする回路パターン等のパターン幅、基材の厚みにより異なるため一概にはいえないが、目的とするパターン幅(カットする幅f)の5〜20%の範囲で遮光パターン21を広げることが好ましい(図2〜図4)。このようにすることで、目的とする回路パターンの形状と露光パターンの形状とを一致させることができる。
【0039】
遮光パターンは均等に広げる。例えば、図2の場合、上下ともカットする幅fの5〜20%遮光パターン21を広げ、図3および図4の場合、円の周囲全体で均等にカットする幅fの5〜20%遮光パターン21を広げる。図2〜図4中のeが遮光パターン21を広げた幅を示している。
【0040】
また、マスクは遮光パターンの厚みが厚めのマスクが好ましい。具体的には、マスクの遮光パターンの厚みは、0.15mm以上であることが好ましく、0.30mm以上であることがより好ましく、1.00mm以上であることがさらに好ましい。このように、遮光パターンの厚みが0.15mm以上のマスクを用いることにより、露光する光に含まれている散乱光をマスクの遮光パターンで吸収し、マスクのパターンと露光パターンとを一致させやすくすることができる。
【0041】
露光は、接着層の光重合性化合物が重合・硬化できる波長の光を発生する光源を用いて行う。例えば、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等のUVランプを用いることができる。
【0042】
露光量は用いる接着剤の種類により異なるが、通常1〜1000mJ/cm2程度である。
【0043】
カット工程では、金属箔側から基材をカットしないように、目的とする回路パターンの形状に合わせて金属箔付接着シートをカットする(いわゆるハーフカット処理)。カットの際は、金属箔のみをカットしてもよいし、金属箔および接着層をカットしてもよい。
【0044】
通常のカット工程では、マスクのパターンの形状に合わせてカットを行う。しかし、本発明では、カットする位置より透光パターン側に遮光パターンを広げたマスク(目的の形状と異なったマスク)を用いていることから、マスクのパターンの形状には合わせず、本来の目的の形状に合わせてカットを行う。
【0045】
カット工程に用いる抜き型としては、ゼンマイ刃、エッチング刃などを用いた平板状又は円筒状の型が使用できる。
【0046】
剥離工程では、露光部又は未露光部に対応する金属箔を接着層から剥離して所定のパターンの金属箔を得る。
【0047】
具体的には、露光により接着力が低下するタイプの場合、露光部の金属箔を接着層から剥離し、露光により接着力が上昇するタイプの場合、未露光部の金属箔を接着層から剥離することにより、所定のパターンの金属箔を得ることができる。なお、剥離した金属箔を所定のパターンの金属箔として用いるのはもちろんのこと、基材に残存した金属箔を所定のパターンの金属箔として用いてもよい。
【0048】
金属箔の剥離は、例えば、剥離用接着シートを金属箔付接着シートの金属箔側に貼りつけた後、剥離用接着シートとともに接着力の弱い金属箔を剥離することにより行うことができる。
【0049】
剥離用接着シートとしては、剥離用接着シートと金属箔との接着力を「接着力A」、基材と露光部分の接着層との接着力を「接着力B」、基材と未露光部分の接着層との接着力を「接着力C」とした場合に、接着力Aの強さが接着力BとCとの間に入るものを用いる。このような剥離用接着シートを金属箔付接着シートの金属箔側に貼り付け、剥離すると、剥離用接着シートとともに、接着力B、Cのうちの弱い接着力に対応する部分の金属箔を剥離することができる。
【0050】
剥離用接着シートは、プラスチックフィルム等の基材上に接着層を有するものがあげられる。接着層を構成する接着剤は、アクリル系感圧接着剤、ポリエステル系感圧接着剤などがあげられる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
【0052】
[実施例1]
厚み100μmのポリエステルフィルム(ルミラーT60:東レ社)からなる基材上に、下記組成の接着層塗布液aを、乾燥後の厚みが25μmとなるようにバーコーティング法により塗布、乾燥して接着層(露光により接着力が低下する接着層)を形成した。次いで、接着層上に厚み20μmの銅箔を貼り合わせ、金属箔付接着シートを得た。接着層と銅箔との接着力は、10N/25mmであった。
【0053】
<接着層塗布液a>
・光架橋型粘接着剤 100部
(SKダインSW-22:綜研化学社)
・硬化剤 2部
(L−45:綜研化学社)
・メチルエチルケトン 45部
・トルエン 70部
【0054】
次いで、金属箔付接着シートの基材側に、線幅0.8mmの回路パターンが形成されたフィルムマスク(遮光パターンの材質:銀塩乳剤、遮光パターンの厚み:2μm)を、マスクの遮光パターン側を金属箔付接着シートの基材側に向けて間隔を空けずに配置した。マスクは線幅0.8mmの部分が透光性を有するネガ型である。
【0055】
次いで、基材側から600mJ/cm2の露光量で露光を行った。露光後の露光部分の接着層と銅箔との接着力は、0.1N/25mmであった。
【0056】
次いで、金属箔側から基材をカットしないように、ハーフカットを行った。ハーフカットの線幅は1.0mmとした。マスクの線幅とハーフカットの線幅から、実施例1で用いているマスクは、ハーフカットする幅の両方向にそれぞれ10%(両方向の合計では20%)遮光パターンが広がったものと計算できる。
【0057】
次いで、金属箔付接着シートの金属箔側に剥離用接着シート(ビューフルEP 75LS:きもと社)を貼り合わせた後、剥離用接着シートとともに露光部分の金属箔を剥離し、実施例1の金属箔パターンの形成方法により形成された金属箔パターンを得た。
【0058】
[実施例2]
実施例1の接着層塗布液aを下記処方の接着層塗布液bに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2の金属箔パターンの形成方法により形成された金属箔パターンを得た。接着層塗布液bから形成される接着層は、露光により接着力が低下するものであり露光前の接着層と銅箔との接着力が15N/25mm、露光後の露光部の接着層と銅箔との接着力が0.15mN/25mmであった。
【0059】
<接着層塗布液b>
・光架橋型粘接着剤 100部
(ビニロールPSA SV-6900:昭和高分子社)
・硬化剤 2部
(L−45:綜研化学社)
・光重合開始剤 1.2部
(イルガキュア184:チバスペシャリティケミカルズ社)
・メチルエチルケトン 50部
・トルエン 50部
【0060】
[実施例3]
実施例1のフィルムマスクの回路パターンの線幅を0.4mmに変更し、ハーフカットの線幅を0.5mmに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例3の金属箔パターンの形成方法により形成された金属箔パターンを得た。マスクの線幅とハーフカットの線幅から、実施例3で用いているマスクは、ハーフカットする幅の両方向にそれぞれ10%(両方向の合計では20%)遮光パターンが広がったものと計算できる。
【0061】
[実施例4]
実施例1の露光工程とカット工程との順番を入れ替えた以外は、実施例1と同様にして実施例4の金属箔パターンの形成方法により形成された金属箔パターンを得た。
【0062】
[比較例1]
実施例1において、フィルムマスクの回路パターンの線幅をハーフカットの線幅と同一の1.0mmに変更した以外は、実施例1と同様にして比較例1の金属箔パターンの形成方法により形成された金属箔パターンを得た。
【0063】
実施例1〜4の金属箔パターンの形成方法は、光の回折を考慮してマスクの遮光パターンを広げていることから、目的箇所の金属箔を正確に剥がすことができ、高精度の金属箔パターンを得ることができるものであった。
【0064】
比較例1の金属箔パターンの形成方法は、マスクの遮光パターンとカットする位置が同じであることから、光の回折や光の散乱の影響により目的箇所以外の金属箔が剥がれてしまい、得られる金属箔パターンは精度に劣るものであった。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の金属箔パターンの形成方法の一実施例を示す工程図
【図2】本発明の金属箔パターンの形成方法のカット工程の一実施例を示す図
【図3】本発明の金属箔パターンの形成方法のカット工程の他の実施例を示す図
【図4】本発明の金属箔パターンの形成方法のカット工程の他の実施例を示す図
【図5】光の回折を説明する図
【符号の説明】
【0066】
1・・・・金属箔付接着シート
11・・・基材
12・・・接着層
13・・・金属箔
2・・・・マスク
21・・・遮光パターン
22・・・透光パターン
3・・・・剥離用接着シート
d・・・・カット位置
e・・・・カット位置より透光パターン側に広げた遮光パターンの幅
f・・・・カット幅
g・・・・露光パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、露光により接着力が変化する接着層、金属箔を順次積層してなる金属箔付接着シートに、
(1)遮光パターンと透光パターンとからなるマスクを用いて基材側から露光し、接着層を部分的に露光する工程
(2)金属箔側から基材をカットしないようにマスクの遮光パターンに対応させて金属箔付接着シートをカットする工程
を含む工程を行った後、露光部又は未露光部に対応する金属箔を接着層から剥離して所定のパターンの金属箔を得る金属箔パターンの形成方法において、
前記マスクとしてカットする位置より透光パターン側に遮光パターンを広げたマスクを用いてなることを特徴とする金属箔パターンの形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−226872(P2008−226872A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58331(P2007−58331)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(000125978)株式会社きもと (167)
【出願人】(507076643)創技貿易有限公司 (3)
【Fターム(参考)】