説明

金属管の引抜方法及び引抜装置

【課題】引抜時における管の内面に十分に潤滑油を付着できて焼付を防止することのできる金属管の引抜方法を提供する。
【解決手段】本発明は、内面成形用のプラグの表面に温度TA(℃)の潤滑油を塗布する工程と、前記潤滑油が塗布された前記プラグ11を金属製素管2内に挿通配置する工程と、前記金属製素管2の外面に温度TB(℃)の潤滑油Lを塗布しながら該金属製素管2を外面成形用のダイス10と前記プラグ11との間に通して引抜加工を行う工程とを包含し、前記プラグの表面に塗布する潤滑油として、前記金属製素管の外面に塗布する潤滑油Lと同一の潤滑油を用いるものとし、前記温度TAと前記温度TBとの間に、TA<TBの関係式が成立することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の電子写真装置におけるOPC感光ドラム用基体として好適に用いられる、寸法精度に優れた引抜管を製造できる金属管の引抜装置及び引抜方法に関する。
【0002】
なお、本明細書の記載において、引抜方法及び引抜装置における「後方」とは引抜管に対して素管側の方向を表し、「前方」とは素管に対して引抜管側の方向を表す。
【背景技術】
【0003】
近年、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の電子写真装置におけるOPC感光ドラム用基体として、大量生産に適した無切削管が多用されるようになっている。無切削管の一つに、アルミニウム押出素管を引抜加工したED管があり、複数の製品管を1回の引抜きで生産できる点で大量生産に向いており、市場拡大に伴う大量消費に応える製法として注目されている。
【0004】
このED管は、まずアルミニウム製のビレットを押出してアルミニウム押出素管を得、該押出素管を所定長さに切断した後、ダイスとプラグによる1パスまたは2パス以上の引抜加工を行って、所定形状(外径、内径、肉厚)に規定されたアルミニウム管を得た後、切断、端部の面取り加工、洗浄を行い、寸法と外観を検査することによって製造されている。
【0005】
かかる感光ドラム用基体用アルミニウム管の引抜加工において、素管の外面への潤滑油供給は予め塗布しておくことも引抜加工中に潤滑油を随時流下させることも容易である。しかし、素管の内面への潤滑油供給、特に素管を高速で2パス以上の連続引抜きをするED管の場合には、素管の内面に予め潤滑油を流入させておくことは困難であるため、プラグに潤滑油を塗布して素管内に挿入し、そのまま引抜かざるを得なかった。このため、随時潤滑油を供給できる素管外面に対し、素管内面は引抜途中で潤滑油が不足して焼付きが発生し、引抜管フレ精度が低下することがあった。
【0006】
このような問題に対し、本出願人は、プラグを支持する中空のロッドの周壁に開口部を設け、ロッドの後端部から内部に供給した潤滑油を前記開口部から吐出させ、素管の内面に随時潤滑油を供給できる引抜装置を提案した。これらの引抜装置では、素管の内面に付着させた潤滑油を均等に塗り拡げるための中子が、ロッド棒に取り付けられている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−22982号公報
【特許文献2】特開2009−45663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1、2に記載の技術では、素管の内面に潤滑油を供給するに際しプラグ以外の部分(中子等)にも潤滑油が多く付着し、このために内部に残留する潤滑油量が増加するので、潤滑油の消費量が増加する等の問題があった。
【0009】
また、上述したとおり、潤滑油を塗布したプラグを素管内に挿入して引抜加工を行う方法では、素管内面の潤滑油不足により焼付きが発生することがあり、このように焼付きが発生するとキズが発生するだけでなく、加工熱によって寸法精度を低下させる原因となる。潤滑油切れは、素管の長さが長いほど、また引抜速度が速いほど生じやすいため、長い素管を高速で引抜いてED管の生産性を高めるには内面の焼付きを克服することが課題となっている。なお、プラグに潤滑油を塗布する場合における素管内面の潤滑油不足は、水平方向に引き抜く場合において特に顕著である。
【0010】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、引抜時における管の内面に十分に潤滑油を付着できて焼付を防止することのできる金属管の引抜方法及び引抜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0012】
[1]内面成形用のプラグの表面に温度TA(℃)の潤滑油を塗布する塗布工程と、
前記潤滑油が塗布された前記プラグを金属製素管内に挿通配置する挿通工程と、
前記金属製素管の外面に温度TB(℃)の潤滑油を塗布しながら該金属製素管を外面成形用のダイスと前記プラグとの間に通して引抜加工を行う引抜工程とを包含し、
前記プラグの表面に塗布する潤滑油として、前記金属製素管の外面に塗布する潤滑油と同一の潤滑油を用いるものとし、
前記温度TAと前記温度TBとの間に、TA<TBの関係式が成立することを特徴とする金属管の引抜方法。
【0013】
[2]前記プラグの表面に塗布する潤滑油として、冷却処理が施されることによって前記温度TA(℃)に設定された潤滑油を用いる前項1に記載の金属管の引抜方法。
【0014】
[3]前記金属製素管の外面に塗布する潤滑油として、加熱処理が施されることによって前記温度TB(℃)に設定された潤滑油を用いる前項1または2に記載の金属管の引抜方法。
【0015】
[4]前記プラグへの塗布に使用した後に回収した潤滑油と、前記金属製素管への塗布に使用した後に回収した潤滑油とを混合したものを、プラグへの塗布用及び金属製素管への塗布用として再利用することを特徴とする前項1〜3のいずれか1項に記載の金属管の引抜方法。
【0016】
[5]前記塗布工程、前記挿通工程、前記引抜工程をこの順に実施することを特徴とする前項1〜4のいずれか1項に記載の金属管の引抜方法。
【0017】
[6]金属製素管の外面を成形するダイスと、
前記金属製素管の内面を成形するプラグと、
前記プラグに潤滑油を塗布する第1ノズル部と、
前記金属製素管の外面に潤滑油を塗布する第2ノズル部と、
潤滑油を収容するタンクと、
一端が前記タンクに接続され、他端が前記第1ノズル部に接続された第1供給管と、
一端が前記タンクに接続され、他端が前記第2ノズル部に接続された第2供給管と、
前記第1供給管の少なくとも一部を冷却する冷却手段又は/及び前記第2供給管の少なくとも一部を加熱する加熱手段と、を備えることを特徴とする金属管の引抜装置。
【0018】
[7]金属製素管の外面を成形するダイスと、
前記金属製素管の内面を成形するプラグと、
前記プラグに潤滑油を塗布する第1ノズル部と、
前記金属製素管の外面に潤滑油を塗布する第2ノズル部と、
潤滑油を収容するタンクと、
一端が前記タンクに接続され、他端に切替バルブが接続されて該他端が2つに分岐する主管と、
一端が前記第1ノズル部に接続され、他端が前記主管の他端の切替バルブの一方の分岐部に接続された第1分岐管と、
一端が前記第2ノズル部に接続され、他端が前記主管の他端の切替バルブの他方の分岐部に接続された第2分岐管と、
前記第1分岐管の少なくとも一部を冷却する冷却手段と、を備えることを特徴とする金属管の引抜装置。
【0019】
[8]金属製素管の外面を成形するダイスと、
前記金属製素管の内面を成形するプラグと、
前記プラグに潤滑油を塗布する第1ノズル部と、
前記金属製素管の外面に潤滑油を塗布する第2ノズル部と、
潤滑油を収容するタンクと、
一端が前記タンクに接続され、他端に切替バルブが接続されて該他端が2つに分岐する主管と、
一端が前記第1ノズル部に接続され、他端が前記主管の他端の切替バルブの一方の分岐部に接続された第1分岐管と、
一端が前記第2ノズル部に接続され、他端が前記主管の他端の切替バルブの他方の分岐部に接続された第2分岐管と、
前記第2分岐管の少なくとも一部を加熱する加熱手段と、を備えることを特徴とする金属管の引抜装置。
【0020】
[9]金属製素管の外面を成形するダイスと、
前記金属製素管の内面を成形するプラグと、
前記プラグに潤滑油を塗布する第1ノズル部と、
前記金属製素管の外面に潤滑油を塗布する第2ノズル部と、
潤滑油を収容するタンクと、
一端が前記タンクに接続され、他端に切替バルブが接続されて該他端が2つに分岐する主管と、
一端が前記第1ノズル部に接続され、他端が前記主管の他端の切替バルブの一方の分岐部に接続された第1分岐管と、
一端が前記第2ノズル部に接続され、他端が前記主管の他端の切替バルブの他方の分岐部に接続された第2分岐管と、
前記第1分岐管の少なくとも一部を冷却する冷却手段と、
前記第2分岐管の少なくとも一部を加熱する加熱手段と、を備えることを特徴とする金属管の引抜装置。
【0021】
[10]前記主管の途中位置にポンプが配置されている前項7〜9のいずれか1項に記載の金属管の引抜装置。
【0022】
[11]前記プラグへの塗布に供された潤滑油及び前記金属製素管への塗布に供された潤滑油を回収して前記タンクに移送する回収手段を備える前項6〜10のいずれか1項に記載の金属管の引抜装置。
【0023】
[12]前記回収手段は、
前記プラグへの塗布に供された潤滑油及び前記金属製素管への塗布に供された潤滑油を受容する回収容器と、
一端が前記回収容器に接続され、他端が前記タンクに接続された回収管とを備える前項11に記載の金属管の引抜装置。
【0024】
[13]金属製素管に引抜加工を行って金属管を製造する金属管の製造方法であって、
内面成形用のプラグの表面に温度TA(℃)の潤滑油を塗布する塗布工程と、
前記潤滑油が塗布された前記プラグを金属製素管内に挿通配置する挿通工程と、
前記金属製素管の外面に温度TB(℃)の潤滑油を塗布しながら該金属製素管を外面成形用のダイスと前記プラグとの間に通して引抜加工を行うことによって金属管を製造する引抜工程とを包含し、
前記プラグの表面に塗布する潤滑油として、前記金属製素管の外面に塗布する潤滑油と同一の潤滑油を用いるものとし、
前記温度TAと前記温度TBとの間に、TA<TBの関係式が成立することを特徴とする金属管の製造方法。
【発明の効果】
【0025】
[1]の発明では、プラグの表面に塗布する潤滑油として、金属製素管の外面に塗布する潤滑油と同一の潤滑油を用いるが、TA<TBの関係式が成立するから、即ちプラグの表面に塗布する潤滑油の温度TAは、金属製素管の外面に塗布する潤滑油の温度TBより低温であるから、プラグの表面に塗布する潤滑油の動粘度は、金属製素管の外面に塗布する潤滑油の動粘度より大きいものとなり、これによりプラグの表面から垂れ落ちる潤滑油の量が少なくなり(プラグの表面に付着している潤滑油の量が多くなり)、潤滑油が塗布されたプラグを金属製素管内に挿通せしめた際に該素管内に(素管の内面に)潤滑油を十分に持ち込むことができる。従って、引抜加工時の素管内面における潤滑油の枯渇(潤滑油切れ状態)を防止することができ、引抜の際の管の焼付を防止することができる。即ち、本引抜方法によれば、焼付のない引抜管を製造することができる。
【0026】
[2]の発明では、プラグの表面に塗布する潤滑油として、冷却処理が施されることにより温度TAに設定された潤滑油を用いるから、プラグの表面に塗布する潤滑油の温度TAを、金属製素管の外面に塗布する潤滑油の温度TBより安定して低くすることができて、潤滑油が塗布されたプラグを金属製素管内に挿通せしめた際に該素管内に(素管の内面に)潤滑油を常に十分に持ち込むことができる。従って、引抜加工時の素管内面における潤滑油の枯渇(潤滑油切れ状態)を十分に防止することができ、引抜の際の管の焼付を十分に防止することができる。
【0027】
[3]の発明では、金属製素管の外面に塗布する潤滑油として、加熱処理が施されることにより温度TBに設定された潤滑油を用いるものであり、例えば常温において動粘度が大きい潤滑油(例えば25℃での動粘度が5.0×10-42/s〜10.0×10-42/sの潤滑油)を用いる場合には、プラグの表面から垂れ落ちる潤滑油の量が少なくなり、潤滑油が塗布されたプラグを金属製素管内に挿通せしめた際に該素管内に(素管の内面に)潤滑油を十分に持ち込むことができる一方、金属製素管の外面に塗布する潤滑油の温度TBを、プラグの表面に塗布する潤滑油の温度TAより安定して高くすることができて、金属製素管の外面に塗布する潤滑油の動粘度を引抜に適したものに設定できる。従って、引抜加工時の素管内面における潤滑油の枯渇(潤滑油切れ状態)を十分に防止することができ、引抜の際の管の焼付を十分に防止することができる。
【0028】
[4]の発明では、プラグへの塗布に使用した後に回収した潤滑油と、金属製素管への塗布に使用した後に回収した潤滑油とを混合したものを、プラグへの塗布用及び金属製素管への塗布用として再利用するので、資源を有効利用できるし、コストも低減できる。
【0029】
[5]の発明では、塗布工程、挿通工程、引抜工程をこの順序で実施するから、引抜の際の管の焼付を十分に防止することができて、焼付のない高品質の引抜管を製造することができる。
【0030】
[6]の発明では、第1供給管の少なくとも一部を冷却する冷却手段又は/及び前記第2供給管の少なくとも一部を加熱する加熱手段を備えているから、引抜加工時の素管内面における潤滑油の枯渇(潤滑油切れ状態)を防止することができ、引抜の際の管の焼付を防止することができる。即ち、本引抜装置を用いれば、焼付のない引抜管を製造することができる。
【0031】
[7]の発明では、プラグに潤滑油を塗布する第1ノズル部に接続される第1分岐管の少なくとも一部を冷却する冷却手段を備えているから、プラグの表面に塗布する潤滑油の温度を、金属製素管の外面に塗布する潤滑油の温度より安定して低くすることができ、これによりプラグの表面に塗布する潤滑油の動粘度は、金属製素管の外面に塗布する潤滑油の動粘度より大きいものとなるから、潤滑油が塗布されたプラグを金属製素管内に挿通せしめた際に該素管内に(素管の内面に)潤滑油を常に十分に持ち込むことができる。従って、引抜加工時の素管内面における潤滑油の枯渇(潤滑油切れ状態)を十分に防止することができ、引抜の際の管の焼付を十分に防止することができる。
【0032】
[8]の発明では、金属製素管の外面に潤滑油を塗布する第2ノズル部に接続される第2分岐管の少なくとも一部を加熱する加熱手段を備えているから、常温において動粘度が大きい潤滑油(例えば25℃での動粘度が5.0×10-42/s〜10.0×10-42/sの潤滑油)を用いる場合には、プラグの表面から垂れ落ちる潤滑油の量が少なくなり、潤滑油が塗布されたプラグを金属製素管内に挿通せしめた際に該素管内に(素管の内面に)潤滑油を十分に持ち込むことができる一方、前記加熱手段により、金属製素管の外面に塗布する潤滑油の温度を、プラグの表面に塗布する潤滑油の温度より安定して高くすることができて、金属製素管の外面に塗布する潤滑油の動粘度を引抜に適したものに設定できる。従って、引抜加工時の素管内面における潤滑油の枯渇(潤滑油切れ状態)を十分に防止することができ、引抜の際の管の焼付を十分に防止することができる。
【0033】
[9]の発明では、プラグに潤滑油を塗布する第1ノズル部に接続される第1分岐管の少なくとも一部を冷却する冷却手段を備えると共に、金属製素管の外面に潤滑油を塗布する第2ノズル部に接続される第2分岐管の少なくとも一部を加熱する加熱手段を備えているから、上記[7]と[8]の発明での作用効果が合わさることで、引抜加工時の素管内面における潤滑油の枯渇(潤滑油切れ状態)をより十分に防止することができ、引抜の際の管の焼付をより十分に防止することができる。
【0034】
[10]の発明では、主管の途中位置にポンプが配置されているから、プラグへの潤滑油塗布及び金属製素管の外面への潤滑油塗布を安定状態に実施することができるし、定量塗布も可能となる。
【0035】
[11]の発明では、プラグへの塗布に供された潤滑油及び金属製素管への塗布に供された潤滑油を回収してタンクに移送する回収手段を備えるから、プラグへの塗布に供された潤滑油及び金属製素管への塗布に供された潤滑油をタンクに回収し、該回収潤滑油を、プラグへの塗布用及び金属製素管への塗布用として再利用することができる。
【0036】
[12]の発明では、簡易な設備により、プラグへの塗布に供された潤滑油及び金属製素管への塗布に供された潤滑油をタンクに回収できるので、潤滑油回収のための設備コストを抑制できる。
【0037】
[13]の発明では、プラグの表面に塗布する潤滑油として、金属製素管の外面に塗布する潤滑油と同一の潤滑油を用いるが、TA<TBの関係式が成立するから、即ちプラグの表面に塗布する潤滑油の温度TAは、金属製素管の外面に塗布する潤滑油の温度TBより低温であるから、プラグの表面に塗布する潤滑油の動粘度は、金属製素管の外面に塗布する潤滑油の動粘度より大きいものとなり、これによりプラグの表面から垂れ落ちる潤滑油の量が少なくなり(プラグの表面に付着している潤滑油の量が多くなり)、潤滑油が塗布されたプラグを金属製素管内に挿通せしめた際に該素管内に(素管の内面に)潤滑油を十分に持ち込むことができる。従って、引抜加工時の素管内面における潤滑油の枯渇(潤滑油切れ状態)を防止することができ、引抜の際の管の焼付を防止することができる。即ち、焼付のない引抜管を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る引抜装置の一実施形態を一部を縦断面で示す概略図である。
【図2】本発明に係る引抜装置の他の実施形態を一部を縦断面で示す概略図である。
【図3】本発明に係る引抜装置のさらに他の実施形態を一部を縦断面で示す概略図である。
【図4】本発明に係る引抜装置のさらに他の実施形態を一部を縦断面で示す概略図である。
【図5】第1ノズル部からプラグの表面に潤滑油を塗布している状態を示す断面図である。
【図6】金属製素管内へのプラグの挿通を開始した状態を示す断面図である。
【図7】金属製素管をダイスとプラグとの間の引き抜き位置にセットして素管の先端をチャッキングした状態を示す断面図である。
【図8】引抜の途中状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、本発明の金属管の引抜方法を実施するための引抜装置1の一例をその一部を縦断面で示す概略図である。本実施形態に係る引抜方法及び引抜装置1は、金属製素管2を水平方向に引抜いて引抜加工するものであるが、特にこのような形態に限定されるものではなく、例えば鉛直方向に引抜いて引抜加工するものであってもよい。
【0040】
前記引抜装置1は、金属製素管2の外面を成形するダイス10と、金属製素管2の内面を成形するプラグ11と、プラグ11に潤滑油Lを塗布する第1ノズル部18と、金属製素管2の外面に潤滑油Lを塗布する第2ノズル部19と、潤滑油Lを収容するタンク40と、供給管部31とからなる(図1参照)。
【0041】
前記ダイス10は、ダイスケース12内に嵌合されたダイス本体13を備え、前記ダイス本体13は、中央のダイス孔の内周面にアプローチ部14とこれの前方側に続くベアリング部15とを有している。
【0042】
前記プラグ11は、中空管からなるロッド20の先端に取り付けられて支持されている。前記プラグ11は、外周面にアプローチ部16とこれの前方側に続くベアリング部17とを有している。
【0043】
図1において、21は、チャック手段である。前記チャック手段21は、金属製素管2の先端部(口付け部)を互いに協働してチャックする一対のチャック指22、22と、これらチャック指22、22を保持するチャック指ホルダ23とからなる。前記チャック手段21は、引抜加工の際には、牽引手段24により図面右方向に牽引され、これにより金属製素管2の引き抜きが行われる。即ち、金属製素管2をダイス10とプラグ11との間に通して水平方向に引き抜くことにより、管の外面がダイス本体13のベアリング部15によって成形されるとともに、管の内面がプラグ11のベアリング部17によって成形され、引抜管3が製作される。
【0044】
前記第2ノズル部19は、前記ダイス10の後方の上部位置に配置されている。また、前記第1ノズル部18は、前記第2ノズル部19に対して後方位置に配置されている(図1参照)。
【0045】
前記供給管部31は、一端がタンク40に接続され(一端がタンク40の内部空間内に配置され)、他端に切替バルブ38が接続されて該他端が2つに分岐した主管32と、一端が第1ノズル部18に接続され、他端が主管32の他端の切替バルブ38の一方の分岐部に接続された第1分岐管33と、一端が第2ノズル部19に接続され、他端が主管32の他端の切替バルブ38の他方の分岐部(残りの分岐部)に接続された第2分岐管34とからなる。前記主管32の途中位置にポンプ35が配置されている。
【0046】
前記第1分岐管33には、該第1分岐管33の一部を冷却する冷却手段36が設けられている。
【0047】
更に、前記第1ノズル部18から前記第2ノズル部19を経て前記ダイス10に至るまでの領域の略下方領域に対応する位置に回収容器42が配置されている。更に、回収管43の一端が前記回収容器42の底面壁に設けられた孔に連通して接続されると共に、該回収管43の他端が前記タンク40に接続されている(回収管43の他端が前記タンク40の内部空間内に位置している)。これら回収容器42及び回収管43により回収手段41が構成されている。
【0048】
前記回収容器42は、前記プラグへの塗布に供されたのち落下する潤滑油Lを受容すると共に、金属製素管2外面への塗布に供されたのち落下する潤滑油Lを受容する。
【0049】
次に、前記引抜装置1を用いた金属管の引抜方法について説明する。
【0050】
まず、前記プラグ11を前記第1ノズル部18の下方位置に配置せしめ、該プラグ11の表面に第1ノズル部18から温度TA(℃)の潤滑油Lを塗布する(図5参照)。前記第1ノズル部18から吐出される潤滑油Lは、前記第1分岐管33に設けられた冷却手段36により冷却処理が施されることによって温度TA(℃)に設定される。所定時間塗布を行った後、ポンプ35を停止させることによりプラグ11表面への塗布を停止する。金属製素管2の外面の上部に付着した潤滑油Lは外面を伝って素管2の外面の全周に供給され、過剰な潤滑油Lは流れ落ちる。
【0051】
しかる後、前記潤滑油が塗布された前記プラグ11を金属製素管2内に挿通していく(図6参照)。図7に示すように、潤滑油Lが塗布されたプラグ11を金属製素管2内に挿通配置せしめ、これらプラグ11及び金属製素管2をダイス10内に挿通して引抜位置にセットする。引抜位置にセットすると同時にポンプ35を駆動させることにより第2ノズル部19から金属製素管2の外面への潤滑油Lの塗布を開始する。前記第2ノズル部19から吐出される潤滑油Lは、タンク40から主管32、第2分岐管34を経由して冷却処理、加熱処理のいずれも施されることなく吐出されるものであり、第2ノズル部19から吐出される潤滑油Lの温度はTB(℃)である。しかして、温度TAと温度TBとの間にはTA<TBの関係が成立している。
【0052】
次いで、図7に示すように、金属製素管2の先端部(口付け部)を一対のチャック指22、22でチャックする(挟み込み固定する)。
【0053】
次に、金属製素管2の外面に温度TB(℃)の潤滑油Lを塗布しながら、素管2の先端部をチャック手段21で牽引して金属製素管2をダイス10とプラグ11の間に通すことによって引抜加工を行って引抜管3を得る(図8参照)。
【0054】
ここで、前記第1ノズル部18から吐出されてプラグ11の表面に塗布される潤滑油Lと、前記第2ノズル部19から吐出されて金属製素管2の外面に塗布される潤滑油Lは、いずれもタンク40内に貯留されていた潤滑油Lであるから、これら潤滑油は、同一である。
【0055】
上記引抜方法では、プラグ11の表面に塗布する潤滑油として、冷却処理が施されることにより温度TAに設定された潤滑油を用いているから、プラグ11の表面に塗布する潤滑油の温度TAを、金属製素管2の外面に塗布する潤滑油の温度TBより安定して低くすることができ、これにより、プラグ11の表面に塗布する潤滑油の動粘度は、金属製素管2の外面に塗布する潤滑油の動粘度より大きいものとなり、従って、潤滑油Lが塗布されたプラグ11を金属製素管2内に挿通せしめた際に該素管2内に(素管2の内面に)潤滑油Lを常に十分に持ち込むことができる。従って、引抜加工時の素管2の内面における潤滑油Lの枯渇(潤滑油切れ状態)を十分に防止することができ、引抜の際の管の焼付を十分に防止することができる。
【0056】
また、プラグ11から落下する潤滑油と、金属製素管2から落下する潤滑油とが、回収容器42において混合され、このようにして回収容器42に回収した潤滑油Lは、回収管43を介してタンク40に移送されるので、これら混合された回収潤滑油を、プラグ11への塗布用及び金属製素管2への塗布用として再利用することができる(図1、7、8参照)。
【0057】
図1の引抜装置1は、常温において動粘度が小さい潤滑油(25℃での動粘度が0.5×10-42/s〜3.0×10-42/sの潤滑油)を用いる場合に好適である。
【0058】
本発明の引抜装置1の他の実施形態を図2に示す。なお、前記実施形態に係る引抜装置(図1)と同一の構成部については同一の符号を付してその説明は省略する。
【0059】
図2の引抜装置1では、第1ノズル部18に接続される第1分岐管33には、冷却手段も加熱手段のいずれも設けられていない一方、第2ノズル部19に接続される第2分岐管34には、該第2分岐管34の一部を加熱する加熱手段37が設けられている。他の構成は、図1の引抜装置と同一である。この引抜装置1では、第1ノズル部18から吐出される潤滑油Lの温度TA(℃)と、第2ノズル部19から吐出される潤滑油Lの温度TB(℃)との間に、TA<TBの関係が成立する。
【0060】
図2の引抜装置1を用いて前記同様に金属管の引抜加工を行うと、この引抜方法では、金属製素管2の外面に塗布する潤滑油として、加熱処理が施されることにより温度TBに設定された潤滑油を用いるものであり、例えば常温において動粘度が大きい潤滑油を用いる場合には、プラグ11の表面から垂れ落ちる潤滑油の量が少なくなり、潤滑油Lが塗布されたプラグ11を金属製素管2内に挿通せしめた際に該素管2内に(素管2の内面に)潤滑油Lを十分に持ち込むことができる一方、金属製素管2の外面に塗布する潤滑油Lの温度TBを、プラグ11の表面に塗布する潤滑油Lの温度TAより安定して高くすることができて、金属製素管2の外面に塗布する潤滑油Lの動粘度を引抜に適したものに設定できる。従って、引抜加工時の素管内面における潤滑油の枯渇(潤滑油切れ状態)を十分に防止することができ、引抜の際の管の焼付を十分に防止することができる。図2の引抜装置1は、常温において動粘度が大きい潤滑油(25℃での動粘度が5.0×10-42/s〜10.0×10-42/sの潤滑油)を用いる場合に好適である。
【0061】
なお、図2の引抜装置のように加熱手段37により潤滑油を加熱する方が、図1の引抜装置のように冷却手段36により潤滑油を冷却するよりも容易である(潤滑油温度の調整が容易である)。
【0062】
本発明の引抜装置1の他の実施形態を図3に示す。なお、図1の引抜装置と同一の構成部については同一の符号を付してその説明は省略する。
【0063】
図3の引抜装置1では、第2ノズル部19に接続される第2分岐管34には、該第2分岐管34の一部を加熱する加熱手段37が設けられている。他の構成は、図1の引抜装置と同一であり、例えば、第1ノズル部18に接続される第1分岐管33には、該第1分岐管33の一部を冷却する冷却手段36が設けられている。この引抜装置1では、第1ノズル部18から吐出される潤滑油Lの温度TA(℃)と、第2ノズル部19から吐出される潤滑油Lの温度TB(℃)との間に、TA<TBの関係が成立する。
【0064】
図3の引抜装置1を用いて前記同様に金属管の引抜加工を行うと、図1の装置および図2の装置の効果が合わさる結果、引抜加工時の素管内面における潤滑油の枯渇(潤滑油切れ状態)を十分に防止することができ、引抜の際の管の焼付を十分に防止することができる。
【0065】
本発明の引抜装置1の他の実施形態を図4に示す。なお、図1の引抜装置と同一の構成部については同一の符号を付してその説明は省略する。
【0066】
図4の引抜装置1では、供給管部31の構成が図1の引抜装置と相違する。他の構成は、図1の引抜装置と同一である。即ち、図4の引抜装置1では、供給管部31は、一端がタンク40に接続され、他端が第1ノズル部18に接続された第1供給管51と、一端がタンク40に接続され、他端が第2ノズル部19に接続された第2供給管52とからなる。前記第1供給管51に、該第1供給管51の一部を冷却する冷却手段36が設けられている。前記第1供給管51における前記冷却手段36よりタンク40側の位置にポンプ35Aが設けられている。前記第2供給管52に、該第2供給管52の一部を加熱する加熱手段37が設けられている。前記第2供給管52における前記加熱手段37よりタンク40側の位置にポンプ35Bが設けられている。この引抜装置1では、第1ノズル部18から吐出される潤滑油Lの温度TA(℃)と、第2ノズル部19から吐出される潤滑油Lの温度TB(℃)との間に、TA<TBの関係が成立する。
【0067】
図4の引抜装置1を用いて前記同様に金属管の引抜加工を行うと、引抜加工時の素管内面における潤滑油の枯渇(潤滑油切れ状態)を十分に防止することができ、引抜の際の管の焼付を十分に防止することができる。
【0068】
本発明において、前記冷却手段36としては、特に限定されるものではないが、例えば、熱交換器、ラジエータ等が挙げられる。また、前記加熱手段37としては、特に限定されるものではないが、例えば、配管に直接巻き付けて使用されるバンドヒーター等が挙げられる。
【0069】
本発明では、引抜対象の素管2の長さを限定するものではないが、潤滑油切れは、素管の長さが長いほど生じやすいため、本発明は、長い素管の引抜きに適している。具体的には、2m以上、特に2.5m以上の素管に対して顕著な効果が得られるものである。
【0070】
本発明において、引抜対象の金属製素管2の素材(金属種)は、特に限定されず、例えば、アルミニウム、鉄、銅、或いはこれらの合金等が挙げられる。本発明は、長い素管を引抜く場合に顕著な効果が得られることから、感光ドラム基体用アルミニウム管の製造に適している。
【実施例】
【0071】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0072】
<実施例1>
図1に示す構成を備えた引抜装置1を用いて金属製素管2の引抜加工を行った。アルミニウム合金(Mn:1.12質量%、Si:0.11質量%、Fe:0.39質量%、Cu:0.16質量%、Zn:0.01質量%、Mg:0.02質量%を含み、残部アルミニウムおよび不可避不純物)からなるビレットを、押出温度520℃、押出速度5m/分の条件で押出し、外径32mm、肉厚1.5mmの円筒管を得、これを2.2mに切断したものを金属製素管2として用いた。
【0073】
前記引抜装置1において、ダイス10のアプローチ部14のアプローチ角は15°であり、ダイス10のベアリング部15のベアリング長さは15mmであり、プラグ11のアプローチ部16のアプローチ角は7°であり、プラグ11のベアリング部17のベアリング長さは2mmである。
【0074】
第1ノズル部18から吐出された15℃の潤滑油Lをプラグ11の表面に10秒間塗布した後、この塗布を停止し、前記潤滑油が塗布されたプラグ11を金属製素管2内に挿通配置し、次いで金属製素管2の外面に、第2ノズル部19から吐出された25℃の潤滑油Lを塗布しながら、該金属製素管2をダイス10とプラグ11の間に通して、引抜加工を行った。引抜速度30m/分、外径減少率16%、断面積減少率32%で引抜加工を行って、引抜管3を得た。なお、潤滑油Lとして、共栄油化株式会社製「ストロールES150」(動粘度:1.4×10-42/s)を用いた。
【0075】
プラグ11への潤滑油の供給停止から引抜開始までの時間を180秒とした場合と、300秒とした場合の2条件のそれぞれについて引抜管3の製造を行った。なお、素管のセット等をスムーズに行うことができた場合には、プラグへの潤滑油の供給停止から引抜開始までの時間は180秒程度であるが、素管のセット等で時間を要した場合には、プラグへの潤滑油の供給停止から引抜開始までの時間は300秒程度になる。
【0076】
得られた引抜管3を、引抜装置1から搬送コンベアに移載して室温(約25℃)まで放冷し、長さ260mmに切断した。
【0077】
なお、第1ノズル部18から吐出されてプラグ11の外面の上部に付着した潤滑油Lは外面を伝ってプラグ11の外面の全周に供給され、過剰な潤滑油Lは流れ落ちて回収容器42に回収される。また、第2ノズル部19から吐出されて素管2の外面の上部に付着した潤滑油Lは外面を伝って素管2の外面の全周に供給され、過剰な潤滑油Lは流れ落ちて回収容器42に回収される。
【0078】
<実施例2>
第1ノズル部18から吐出されてプラグ11の表面に塗布される潤滑油Lの温度を(15℃に代えて)20℃に設定した以外は、実施例1と同様にして長さ260mmの引抜管3を得た。
【0079】
<比較例1>
第1分岐管33に冷却手段36が設けられていない構成とし、第1ノズル部18から吐出されてプラグ11の表面に塗布される潤滑油Lの温度を(15℃に代えて)25℃に設定した以外は、実施例1と同様にして長さ260mmの引抜管3を得た。
【0080】
<比較例2>
第1分岐管33に加熱手段が設けられた構成とし、第1ノズル部18から吐出されてプラグ11の表面に塗布される潤滑油Lの温度を(15℃に代えて)30℃に設定した以外は、実施例1と同様にして長さ260mmの引抜管3を得た。
【0081】
【表1】

【0082】
上記のようにして得られた引抜管3における焼付発生の有無、状態を調べ、下記判定基準に基づいて焼付防止性を評価した。これらの評価結果を表1に示す。
(判定基準)
「○」…焼付が全く発生しなかった
「△」…引抜管の後半部領域で焼付が発生した
「×」…引抜管の長さ方向の全領域で焼付が発生した。
【0083】
表から明らかなように、本発明の引抜方法(実施例1、2)によれば、プラグへの潤滑油の供給停止から引抜開始までの時間が300秒と比較的長い場合(素管のセット等で時間を要してしまった場合に相当する)であっても、焼付が発生していない引抜管を製造することができる。
【0084】
これに対し、プラグに供給した潤滑油の温度TAと、素管の外面に供給した潤滑油の温度TBとの間に、TA<TBの関係が成立しない条件で製造した比較例1、2では、プラグへの潤滑油の供給停止から引抜開始までの時間が300秒と比較的長い場合(素管のセット等で時間を要してしまった場合に相当する)には、得られた引抜管に焼付が生じていた。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明に係る金属管の引抜方法及び引抜装置は、複数本の金属製素管の連続引抜加工において素管の内面に確実に潤滑油を付着させることができるので、感光ドラム基体用アルミニウム管の量産に適している。
【符号の説明】
【0086】
1…引抜装置
2…金属製素管
3…引抜管
10…ダイス
11…プラグ
18…第1ノズル部
19…第2ノズル部
32…主管
33…第1分岐管
34…第2分岐管
35、35A、35B…ポンプ
36…冷却手段
37…加熱手段
38…切替バルブ
40…タンク
41…回収手段
42…回収容器
43…回収管
51…第1供給管
52…第2供給管
L…潤滑油

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面成形用のプラグの表面に温度TA(℃)の潤滑油を塗布する塗布工程と、
前記潤滑油が塗布された前記プラグを金属製素管内に挿通配置する挿通工程と、
前記金属製素管の外面に温度TB(℃)の潤滑油を塗布しながら該金属製素管を外面成形用のダイスと前記プラグとの間に通して引抜加工を行う引抜工程とを包含し、
前記プラグの表面に塗布する潤滑油として、前記金属製素管の外面に塗布する潤滑油と同一の潤滑油を用いるものとし、
前記温度TAと前記温度TBとの間に、TA<TBの関係式が成立することを特徴とする金属管の引抜方法。
【請求項2】
前記プラグの表面に塗布する潤滑油として、冷却処理が施されることによって前記温度TA(℃)に設定された潤滑油を用いる請求項1に記載の金属管の引抜方法。
【請求項3】
前記金属製素管の外面に塗布する潤滑油として、加熱処理が施されることによって前記温度TB(℃)に設定された潤滑油を用いる請求項1または2に記載の金属管の引抜方法。
【請求項4】
前記プラグへの塗布に使用した後に回収した潤滑油と、前記金属製素管への塗布に使用した後に回収した潤滑油とを混合したものを、プラグへの塗布用及び金属製素管への塗布用として再利用することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属管の引抜方法。
【請求項5】
前記塗布工程、前記挿通工程、前記引抜工程をこの順に実施することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属管の引抜方法。
【請求項6】
金属製素管の外面を成形するダイスと、
前記金属製素管の内面を成形するプラグと、
前記プラグに潤滑油を塗布する第1ノズル部と、
前記金属製素管の外面に潤滑油を塗布する第2ノズル部と、
潤滑油を収容するタンクと、
一端が前記タンクに接続され、他端が前記第1ノズル部に接続された第1供給管と、
一端が前記タンクに接続され、他端が前記第2ノズル部に接続された第2供給管と、
前記第1供給管の少なくとも一部を冷却する冷却手段又は/及び前記第2供給管の少なくとも一部を加熱する加熱手段と、を備えることを特徴とする金属管の引抜装置。
【請求項7】
金属製素管の外面を成形するダイスと、
前記金属製素管の内面を成形するプラグと、
前記プラグに潤滑油を塗布する第1ノズル部と、
前記金属製素管の外面に潤滑油を塗布する第2ノズル部と、
潤滑油を収容するタンクと、
一端が前記タンクに接続され、他端に切替バルブが接続されて該他端が2つに分岐する主管と、
一端が前記第1ノズル部に接続され、他端が前記主管の他端の切替バルブの一方の分岐部に接続された第1分岐管と、
一端が前記第2ノズル部に接続され、他端が前記主管の他端の切替バルブの他方の分岐部に接続された第2分岐管と、
前記第1分岐管の少なくとも一部を冷却する冷却手段と、を備えることを特徴とする金属管の引抜装置。
【請求項8】
金属製素管の外面を成形するダイスと、
前記金属製素管の内面を成形するプラグと、
前記プラグに潤滑油を塗布する第1ノズル部と、
前記金属製素管の外面に潤滑油を塗布する第2ノズル部と、
潤滑油を収容するタンクと、
一端が前記タンクに接続され、他端に切替バルブが接続されて該他端が2つに分岐する主管と、
一端が前記第1ノズル部に接続され、他端が前記主管の他端の切替バルブの一方の分岐部に接続された第1分岐管と、
一端が前記第2ノズル部に接続され、他端が前記主管の他端の切替バルブの他方の分岐部に接続された第2分岐管と、
前記第2分岐管の少なくとも一部を加熱する加熱手段と、を備えることを特徴とする金属管の引抜装置。
【請求項9】
金属製素管の外面を成形するダイスと、
前記金属製素管の内面を成形するプラグと、
前記プラグに潤滑油を塗布する第1ノズル部と、
前記金属製素管の外面に潤滑油を塗布する第2ノズル部と、
潤滑油を収容するタンクと、
一端が前記タンクに接続され、他端に切替バルブが接続されて該他端が2つに分岐する主管と、
一端が前記第1ノズル部に接続され、他端が前記主管の他端の切替バルブの一方の分岐部に接続された第1分岐管と、
一端が前記第2ノズル部に接続され、他端が前記主管の他端の切替バルブの他方の分岐部に接続された第2分岐管と、
前記第1分岐管の少なくとも一部を冷却する冷却手段と、
前記第2分岐管の少なくとも一部を加熱する加熱手段と、を備えることを特徴とする金属管の引抜装置。
【請求項10】
前記主管の途中位置にポンプが配置されている請求項7〜9のいずれか1項に記載の金属管の引抜装置。
【請求項11】
前記プラグへの塗布に供された潤滑油及び前記金属製素管への塗布に供された潤滑油を回収して前記タンクに移送する回収手段を備える請求項6〜10のいずれか1項に記載の金属管の引抜装置。
【請求項12】
前記回収手段は、
前記プラグへの塗布に供された潤滑油及び前記金属製素管への塗布に供された潤滑油を受容する回収容器と、
一端が前記回収容器に接続され、他端が前記タンクに接続された回収管とを備える請求項11に記載の金属管の引抜装置。
【請求項13】
金属製素管に引抜加工を行って金属管を製造する金属管の製造方法であって、
内面成形用のプラグの表面に温度TA(℃)の潤滑油を塗布する塗布工程と、
前記潤滑油が塗布された前記プラグを金属製素管内に挿通配置する挿通工程と、
前記金属製素管の外面に温度TB(℃)の潤滑油を塗布しながら該金属製素管を外面成形用のダイスと前記プラグとの間に通して引抜加工を行うことによって金属管を製造する引抜工程とを包含し、
前記プラグの表面に塗布する潤滑油として、前記金属製素管の外面に塗布する潤滑油と同一の潤滑油を用いるものとし、
前記温度TAと前記温度TBとの間に、TA<TBの関係式が成立することを特徴とする金属管の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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