説明

金属線条体の接続方法および接続装置

【課題】接続作業が容易な金属線条体の接続方法および軽量で携帯性に優れた金属線条体の接続装置を提供する。
【解決手段】相対する金属線条体同士を接続する金属線条体の接続方法である。相対する金属線条体を固定する一対の固定部と、一対の固定部の間に適宜間隔をあけて切り欠き部を備えた回転体と、を配設し、相対する金属線条体が並置されて形成された金属線条体の平行部の両端部を一対の固定部で固定し、金属線条体の平行部の略中央部を回転体の切り欠き部に配置した後、回転体を回転させることにより前記相対する金属線条体同士を撚り合わせる。一対の固定部が切り欠き部と押圧部材とを備え、切り欠き部に相対する金属線条体の平行部の両端部を配置し、両端部を押圧部材で押圧することにより固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属線条体の接続方法(以下、単に「接続方法」とも称す)および接続装置(以下、単に「接続装置」とも称す)に関し、詳しくは、接続作業が容易な金属線条体の接続方法および軽量で携帯性に優れた金属線条体の接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ等に用いられるゴム物品補強用スチールコードは、複数のスチールフィラメントを撚線機により撚り合わされて製造される。スチールコードの撚線機にはチューブラー型撚線機やバンチャー型撚線機等があるが、その製造において材料となるスチールフィラメントの交換作業は不可欠である。そのため、撚線機側に残ったスチールフィラメントと新規に交換した材料のスチールフィラメントとを結ぶ作業を実施している。
【0003】
近年、スチールコードの構造簡素化や高強力化により、スチールフィラメントの径は太いものが使用されるようになってきている。そのため、従来、人手で行ってきたスチールフィラメント同士を結ぶ作業において、フィラメント径が太くなった結果、その曲げ剛性の増大により作業負荷が増大している。また、スチールフィラメント同士の結び目の径が大きくなってしまうため、撚線機のスチールフィラメントが通過するガイドの穴径に余裕がなくなり、その結び目が通過し難いといった問題が発生した。
【0004】
スチールフィラメントのような金属線条体の接続装置として、例えば、特許文献1には、金属線条体を保持可能な挿通孔およびスリットが間隔をあけて設けられた一対の平歯車を間隔をあけて配設し、これら平歯車の挿通孔およびスリットにそれぞれの金属線条体の端部近傍を、それぞれ保持させて互いの金属線条体の端部近傍を軸方向に重なるように架け渡し、平歯車を挿通孔およびスリットの間を回転中心として逆方向へ相対的に回転させることにより、これら平歯車の間で金属線条体同士をスペーサにより径方向外側への移動を規制しつつ撚り合わせて接続する方法が提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、2つの細い線材端部を機械的に結合するための装置が共通の軸を中心として相対的に旋回可能に結合されている2つの脚と、定置の線材保持部とより成っていて、脚がそれぞれ一方の端部においてグリップとして構成されていて、かつ脚の内の1つがその反対側の端部に歯付セグメントを有しているのに対して、他の脚がその反対側の端部においてケーシングと一体に構成されており、歯付セグメントがケーシング内の、軸まで達するスリットを有した歯車と協動するようになっていて、かつ定置の線材保持部がスリットを有する歯車の片側若しくは両側に配置されている形式の接続装置が提案されている。
【0006】
この装置は、スリットを有する歯車が回転可能な線材締付け装置として機能し、伝達装置を介して歯付セグメントとこれによって駆動可能に結合されており、かつ同様にスリットの切られていて同軸的に配置された、自動的に作用する締付け装置を有しているシリンダ片を片側に備えている。また、定置の線材保持部が締付け作用を有していない線材案内として構成されているのに対して、スリットを有する歯車の、スリットを有するシリンダ片と反対の側にこの歯車から所定の距離をおいて、歯付セグメントを有するレバーに取り付けられたカム円板を用いてかつばねによる緩衝作用を伴った押し棒あるいは玉を介して操作可能な回転不能の締付け装置が配置されている。さらに、特許文献3には、接続する2本の線を把持する部分に回転を与えて線を捻回して接続する工具が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−183951号公報
【特許文献2】実開昭54−35738号公報
【特許文献3】実公昭51−2291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1および2に記載の接続装置は、金属線条体や線材部材の接続時、左右の保持部を相対的に逆方向に回転させるので、構造が複雑で装置重量も重く、持ち運びに適さない。また、左右の保持部を相対的に逆方向に回転させなければならないため、金属線条体や線材部材の接続部の両側に捻りが残留するためキンクが発生するおそれがあり、撚線機の材料交換時のスチールフィラメントの接続には適さない。
【0009】
また、特許文献3は線の接続時、左右の保持部は回転せず、中央部の回転駒を回転させることにより前記線を捻回し接続するため上記のような線に捻りが残留することは無いが、回転駒の回転のために多数の歯車を組合せ配置しており、上記同様に構造が複雑で重量も重く、持ち運びに適さない。また、特許文献3では、2本の線を掴持するクリップの適切な強さについては一切検討されてはいないが、スチールコードに使用されるスチールフィラメントは抗張力が高いため、捻って接続するためには十分な力でスチールフィラメントを固定する必要がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、このような課題を克服したうえで、接続作業が容易な金属線条体の接続方法および軽量で携帯性に優れた金属線条体の接続装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解消するために鋭意検討した結果、2本の金属線条体を撚り合わせて接続する際、2本の金属線条体の固定が不十分であると、金属線条体同士の結節部の形状が乱れてしまうことを見出した。このような結節部の乱れは撚り線工程での断線の原因となる。かかる知見を踏まえて、本発明者はさらに鋭意検討した結果、下記構成とすることにより、上記課題を解消し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の金属線条体の接続方法は、相対する金属線条体同士を接続する金属線条体の接続方法において、
前記相対する金属線条体を固定する一対の固定部と、該一対の固定部の間隙で回転自在の、切り欠き部を有する回転体と、を配設し、前記相対する金属線条体が並置されて形成された金属線条体の平行部の両端部を前記一対の固定部で固定し、前記金属線条体の平行部の略中央部を前記回転体の切り欠き部に配置した後、前記回転体を回転させることにより前記相対する金属線条体同士を撚り合わせる金属線条体の接続方法であって、
前記一対の固定部が切り欠き部と押圧部材とを備え、該一対の固定部の切り欠き部に前記相対する金属線条体の平行部の両端部を配置し、該両端部を前記押圧部材で押圧することにより固定することを特徴とするものである。
【0013】
本発明においては、前記一対の固定部の切り欠き部は、前記金属線条体の線径に対して100〜150%の幅を有する金属線条体保持部を有し、前記相対する金属線条体を、前記一対の固定部の切り欠き部の深さ方向に並べて配置することが好ましい。また、本発明においては、前記金属線条体保持部は、前記一対の固定部の切り欠き部の深さ方向に対して0.5〜2.5°の角度で幅が減少していることが好ましい。さらに、本発明においては、前記回転体が歯車を備え、該歯車にハンドルを有する駆動歯車が噛み合わされており、前記ハンドルを回転させて前記駆動歯車を回転させることにより、前記回転体を回転させることが好ましい。
【0014】
また、本発明の金属線条体は本発明の金属線条体の接続方法により接続されたことを特徴とするものである。
【0015】
本発明の金属線条体の接続装置は、相対する金属線条体同士を接続する金属線条体の接続装置において、
前記相対する金属線条体が並置されて形成された金属線条体の平行部の両端部を固定可能な一対の固定部と、該一対の固定部の間隙に回転自在に配設され、前記金属線条体の平行部の略中央部を保持可能な切り欠き部を有する回転体と、該回転体に設けられた歯車と噛合する駆動歯車とを備え、
前記一対の固定部が、前記金属線条体の平行部の両端部を保持する切り欠き部と金属線条体を押圧により固定する押圧部材とを備えることを特徴とするものである。
【0016】
本発明においては、前記一対の固定部の切り欠き部は、前記金属線条体の線径に対して100〜150%の幅を有する金属線条体保持部を有することが好ましい。また、本発明においては、前記金属線条体保持部は、前記一対の固定部の切り欠き部の深さ方向に対して0.5〜2.5°の角度で幅が減少していることが好ましい。さらに、本発明においては、前記駆動歯車がハンドルを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、接続作業が容易な金属線条体の接続方法および軽量で携帯性に優れた金属線条体の接続装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一好適な実施の形態の金属線条体の接続装置の斜視図である。
【図2】本発明の一好適な実施の形態の金属線条体の接続装置の正面図である。
【図3】本発明の一好適な実施の形態の金属線条体の接続装置の側面図である。
【図4】本発明の一好適な実施の形態の金属線条体の接続装置の透視斜視図である。
【図5】相対する金属線条体の平行部の両端部を固定した状態を示す斜視図である。
【図6】(a)〜(c)は固定部で固定された金属線条体の相対する平行部が、回転体の回転により撚り合わせられる状態を説明する説明図である。
【図7】本発明の金属線条体の接続装置を用いて接続した金属線条体の結節部の模式図である。
【図8】本発明の金属線条体の一好適な接続装置の固定部の拡大側面図である。
【図9】(a)はラチェト爪7Bにより位置決めされた状態を示す図であり、(b)は駆動歯車が回転中の状態を示す図である。
【図10】本発明の接続装置に係る駆動歯車の好適な一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の金属線条体の接続装置を用いつつ、本発明の金属線条体の接続方法について詳細に説明する。
図1は本発明の一好適な実施の形態の金属線条体の接続装置の斜視図、図2は本発明の一好適な実施の形態の金属線条体の接続装置の正面図、図3は本発明の一好適な実施の形態の金属線条体の接続装置の側面図、図4は本発明の一好適な実施の形態の金属線条体の接続装置の透視斜視図である。
【0020】
まず、本発明の金属線条体の接続装置について説明する。図1〜4に示す様に、本発明の金属線条体の接続装置は、一対の固定部1と、一対の固定部1の間隙に両固定部1から適宜間隔をあけて回転自在に配設され、切り欠き部2Aを備える回転体2と、を備えている。図示例においては、固定部1は切り欠き部1Aと、押圧部材1Bと、押付け台部1Cとを備え、固定部1の切り欠き部1Aは、相対する金属線条体20が並置されて形成された金属線条体の平行部20A(以下、単に「相対する金属線条体の平行部」とも称す)の両端部を保持する金属線条体保持部1Aaと、金属線条体の平行部20Aの両端部を金属線条体保持部1Aaに容易に導入するための幅広のガイド部1Abとからなる。図示例においては、押圧部材1Bは、その一方の端部を軸に回転可能に取り付けられていが、本発明においては、押圧部材の形状はこれに限られるものではない(後述)。
【0021】
また、本発明の接続装置は、図4に示す様に、回転体2は歯車2Bを備えており、さらに回転体2の歯車2Bに歯合する駆動歯車3を備えている。図示例においては、歯車2Bは回転体2と同軸上に固着されているが、回転体2自体を歯車として形成してもよい(図示せず)。また、図示例においては、回転体2の切り欠き部2Aは、相対する金属線条体20の平行部20Aの略中央部を保持する金属線条体保持部2Aaと、相対する金属線条体の平行部20Aの略中央部を金属線条体保持部2Aaに容易に導入するためのガイド部2Abを備えている。図示例においては、駆動歯車3にはハンドル4が設けられており、ハンドル4を回転させると、駆動歯車3が回転し、駆動歯車3と歯合した歯車2Bとともに、回転体2が回転する構造となっているが、ハンドルの形態は図示例に限定されるものではない。
【0022】
次に、上述の接続装置を用いて、金属線条体を接続する方法について詳述する。
本発明の金属線条体の接続方法は、図1に示す様に、まず、相対する金属線条体20を平行に並べ、金属線条体20が並置されて形成された金属線条体の平行部20Aの両端部を一対の固定部1の切り欠き部1Aに、相対する金属線条体の平行部20Aの略中央部を回転体2の切り欠き部2Aにそれぞれ導入する。図示例においては、金属線条体の平行部20Aの両端部は固定部1の金属線条体保持部1Aa、略中央部は回転体2の金属線条体保持部2Aaに保持される。次いで、押圧部材1Bで金属線条体20の平行部20Aの両端部を押圧することにより固定する。図5は、相対する金属線条体20の平行部の両端部を固定した状態を示す斜視図である。その後、図示例によれば、駆動歯車3に設けたれたハンドル4を回転させ、駆動歯車3を回転させて回転体2を回転させることにより、2本の金属線条体20を撚り合わせて接続する。
【0023】
図6は、固定部1で固定された、相対する金属線条体20の平行部20Aが、回転体2の回転により撚り合わせられる状態を示す説明図である。まず、図6(a)に示す様に、相対する2本の金属線条体20の平行部20Aの両端部が固定部1の切り欠き部1Aに、略中央部が回転体2の切り欠き部2Aに、それぞれ導入され、各金属線条体保持部1Aa、2Aaで保持される。その後、図6(b)および(c)に示す様に、回転体2が回転することにより、相対する金属線条体20の平行部20Aの両端部が一対の固定部1に固定されたまま、一対の固定部1の間の金属線条体20の平行部20Aの略中央部が撚り合わされる。
【0024】
本発明の接続方法においては、図5に示す様に、金属線条体20を撚り合わせて接続する際に、固定部1の切り欠き部1Aに配置された2本の金属線条体20の平行部20Aの両端部を、押圧部材1Bで押圧して固定することが肝要である。スチールコードに使用される金属線条体は抗張力も高く、特に線径が0.40mmを超えるような太径の金属線条体は、捻って接続するためには金属線条体を確実に固定する必要がある。相対する金属線条体の平行部の両端部の固定が不十分だと、回転体が回転する際に金属線条体の平行部が固定部の切り欠き部内で動いてしまい、相対する金属線条体を撚り合わせてできた結節部の形状が乱れてしまうためである。図7は、本発明の接続装置を用いて接続した金属線条体20の結節部20Bの模式図であり、図5に示す様に、撚り合わせる2本の金属線条体20の平行部20Aの両端部は押圧部材1Bにて固定されているため、結節部20Bが乱れることなく、良好な形状となる。
【0025】
本発明の接続装置には、金属線条体20の結節部20Bの形状を安定化するために、押圧部材1Bは押圧力が常に一定となる機構を備えていることが好ましい。本発明においては、図示するように、押圧部材1Bの回転軸の反対側の端部に、板ばね5が取り付けられていることが好ましい(図1〜5参照)。また、図示例においては、固定部1の側面には、板ばね5を固定する爪6が設けられている(図1〜5参照)。このような構造とすることにより、押圧力を常に一定とすることができるとともに、押圧部材1Bの固定、解除が容易になり、作業性も向上する。なお、相対する金属線条体20の平行部20Aを押圧する際の最適な押圧力は、金属線条体の線径により異なり、線径に応じて適宜設定することになる。例えば、線径0.45mmの金属線条体を用いる場合は、金属線条体の押圧力は65N程度とすればよい。なお、本発明の接続装置においては、前述のとおり、押圧部材の形態は図示例に限られるものではなく、例えば、図示はしないが、押圧部材を接続装置から独立させ、金属線条体の平行部を接続装置の上方から押圧する構成としてもよい。かかる場合は押圧部材の両端部に板バネを設け、固定部の両側面に板ばねを固定する爪を設けて、押圧部材を固定する。
【0026】
図8は、本発明の接続装置の一好適な固定部1の切り欠き部1Aの拡大側面図である。先に述べたとおり、本発明の接続装置においては、固定部1の切り欠き部1Aは、相対する金属線条体の平行部の両端部を保持する金属線条体保持部1Aaと、金属線条体保持部1Aaに相対する金属線条体の平行部の端部を容易に導入するための幅広のガイド部1Abとからなることが好ましい。本発明においては、金属線条体保持部1Aaの幅w1は、金属線条体20の線径と同等か、または金属線条体20の線径よりもわずかに大きく、具体的には金属線条体20の100〜150%の幅を有していることが好ましい。このような構造とすると、相対する金属線条体20の平行部20Aは、切り欠き部1Aの深さ方向に並ぶことになる。したがって、相対する金属線条体20の平行部の両端部を押圧部材1Bで押圧すると、2本の金属線条体20に同等の力が加わることになり、結節部の形状の乱れを良好に防止することができる。金属線条体保持部1Aaの幅w1が上記範囲を超えると、相対する金属線条体20が幅方向に動いてしまうため、均等に力を加えることが困難となってしまうため、結節部の形状が乱れてしまい、好ましくない。
【0027】
また、図示するように、固定部1の切り欠き部1Aの金属線条体保持部1Aaは切り欠き部1Aの深さ方向に対して0.5〜2.5°の傾斜角θ1を有していることが好ましい。金属線条体保持部1Aaに傾斜角θ1を持たせることで、接続後の金属線条体の取り出しが容易になり、作業性がさらに向上する。なお、金属線条体保持部1Aaに傾斜角θ1を持たせる場合は、切り欠き部1Aの底部が金属線条体20の100〜145%の幅を持つように設計すればよい。
【0028】
また、本発明においては、固定部1の切り欠き部1Aのガイド部1Abは、深さ方向に対して15〜45°の傾斜角θ2を有していることが好ましく、また、ガイド部1Abは10〜20mmの幅w2を有していることが好ましい。これらの要件を満足することで、相対する2本の金属線条体20の導入や、接続後の金属線条体20の取り出しがより容易になる。なお、回転体2の切り欠き部2Aの形状は、固定部1の切り欠き部1Aと同一であることが好ましい。
【0029】
本発明の製造装置を用いて金属線条体を接続する場合、相対する金属線条体を配置する際に、固定部材1の切り欠き部1Aと、回転体2の切り欠き部2Bとの位置を合わせる必要がある。この位置決めを容易にするため、本発明の接続装置は、回転体2の切り欠き部2Aの位置決め機構を有していることが好ましい。位置決め機構としては、ボールプランジャ等を用いることもできるが、一方向回転であるラチェット機構が好ましい。
【0030】
図9は、ラチェット機構7を用いた場合の、回転体2の切り欠き部2Aと固定部1の切り欠き部1Aとの位置決め機構の説明図である。図9(a)はラチェト爪7Bにより回転体2の切り欠き部2Aが位置決めされた状態を示す図であり、(b)は駆動歯車が回転中の状態を示す図である。図示するように、ラチェットの歯車7Aが駆動歯車3に設けられており、駆動歯車3の回転に併せてラチェットの歯車7Aが回転し、この回転は同図中のラチェト爪7Bが歯車7Aに噛み込む毎に位置決めされる。図示例においては、駆動歯車3と回転体2の歯車2Bとのギア比は4:1であり、駆動歯車3を1回転させると回転体2は4回転する。すなわち、駆動歯車3を90°回転させると、回転体2が1回転し、回転体2の切り欠き部2Aの位置と、固定部1の切り欠き部1Aの位置とが一致する。よって、図示例では、ラチェット機構7として歯車7Aを90°間隔に4個としている。
【0031】
本発明の接続装置は、従来の接続装置とは異なり、回転機構に必要となる部材が少ないため、軽量かつコンパクトな構造である。したがって、本発明の接続装置は携帯性に優れ、また金属線条体の接続作業の作業性を向上させることができる。本発明の製造装置においては、各構成部材の材質については特に制限はなく、軽量化の観点から、アルミニウムや樹脂材料を用いることが好ましいが、強度が必要な歯車は鋼材とすることが好ましい。図10は、本発明の接続装置に係る駆動歯車の好適な一例を示す模式図であり、図示するように、駆動歯車3には孔8が設けられ、肉抜きされていることが好ましい。かかる構成とすることにより、さらなる軽量化が可能であり、より携帯性に優れたものとなる。
【0032】
また、本発明の接続装置においては、図3に示す様に、接続装置の背面に磁石9と樹脂ガイド10とを設けてもよい。これにより、本発明の接続装置を撚り線機に簡易固定することができるようになるので、作業者は両手を使って金属線条体の接続作業を行うことができ、さらに作業性が向上する。
【0033】
本発明の接続方法および接続装置は、特に、線径が0.40mm以上の太径の金属線条体の接続に好適に用いることができる。本発明の金属線条体は、上記本発明の金属線条体の接続方法により接続されたものである。かかる金属線条体は金属線条体の結節部の幅が小さく、また形状が安定しているため金属線条体の撚り合わせの際の断線を防止することができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の製造方法および製造装置について実施例を用いて詳細に説明する。
<実施例>
図1に示すタイプの金属線条体の接続装置を用いて線径0.45mmのスチールフィラメントを接続した。固定部材の金属線条体保持部は、切り欠き部の深さ方向に対して1.5°の角度を有しており、その幅は0.46mmであった。また、固定部材には幅13mmで30°の角度を有するスチールフィラメントを案内するガイド部を設けた。押圧部材によるスチールフィラメントの押付け力は65Nとした。なお、板ばねの長さは27mm、幅22mm、厚さは0.7mmであった。この接続装置を用いて金属線材の接続に要した時間および結節部の厚みを測定した。結果を表1に示す。
【0035】
<従来例>
線径0.45mmの金属線条体をラジオペンチにて接続し、その接続に要した時間および結節部の厚みを測定した。
【0036】
【表1】

【0037】
表1より、本発明の金属線材の接続装置を用いることにより、従来よりも接続作業が容易となるため、作業時間が短縮されていることがわかる。また、本発明の接続装置を用いることにより、金属線条体の結節部が小さくなっていることがわかる。なお、本発明の接続装置を用いた場合には結節部に乱れは生じていなかった。また、本発明の接続装置の構造が簡易であるため、軽量で携帯性に優れている。
【符号の説明】
【0038】
1 固定部
1A 切り欠き部
1Aa 金属線条体保持部
1Ab ガイド部
1B 押圧部材
1C 押付け台部
2 回転体
2A 切り欠き部
2Aa 金属線条体保持部
2Ab ガイド部
2B 歯車
3 駆動歯車
4 ハンドル
5 板ばね
6 爪
7 ラチェット機構
7A 歯車
7B ラチェット爪
8 孔
9 磁石
10 樹脂ガイド
20 金属線条体
20A 平行部
20B 結節部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対する金属線条体同士を接続する金属線条体の接続方法において、
前記相対する金属線条体を固定する一対の固定部と、該一対の固定部の間隙で回転自在の、切り欠き部を有する回転体と、を配設し、前記相対する金属線条体が並置されて形成された金属線条体の平行部の両端部を前記一対の固定部で固定し、前記金属線条体の平行部の略中央部を前記回転体の切り欠き部に配置した後、前記回転体を回転させることにより前記相対する金属線条体同士を撚り合わせる金属線条体の接続方法であって、
前記一対の固定部が切り欠き部と押圧部材とを備え、該一対の固定部の切り欠き部に前記相対する金属線条体の平行部の両端部を配置し、該両端部を前記押圧部材で押圧することにより固定することを特徴とする金属線条体の接続方法。
【請求項2】
前記一対の固定部の切り欠き部が、前記金属線条体の線径に対して100〜150%の幅を有する金属線条体保持部を有し、前記相対する金属線条体を、前記一対の固定部の切り欠き部の深さ方向に並べて配置する請求項1記載の金属線条体の接続方法。
【請求項3】
前記金属線条体保持部が、前記一対の固定部の切り欠き部の深さ方向に対して0.5〜2.5°の角度で幅が減少している請求項2記載の金属線条体の接続方法。
【請求項4】
前記回転体が歯車を備え、該歯車にハンドルを有する駆動歯車が噛み合わされており、前記ハンドルを回転させて前記駆動歯車を回転させることにより、前記回転体を回転させる請求項1〜3のうちいずれか一項記載の金属線条体の接続方法。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか一項記載の金属線条体の接続方法により接続されたことを特徴とする金属線条体。
【請求項6】
相対する金属線条体同士を接続する金属線条体の接続装置において、
前記相対する金属線条体が並置されて形成された金属線条体の平行部の両端部を固定可能な一対の固定部と、該一対の固定部の間隙に回転自在に配設され、前記金属線条体の平行部の略中央部を保持可能な切り欠き部を有する回転体と、該回転体に設けられた歯車と噛合する駆動歯車とを備え、
前記一対の固定部が、前記金属線条体の平行部の両端部を保持する切り欠き部と金属線条体を押圧により固定する押圧部材とを備えることを特徴とする金属線条体の接続装置。
【請求項7】
前記一対の固定部の切り欠き部が、前記金属線条体の線径に対して100〜150%の幅を有する金属線条体保持部を有する請求項6記載の金属線条体の接続装置。
【請求項8】
前記金属線条体保持部が、前記一対の固定部の切り欠き部の深さ方向に対して0.5〜2.5°の角度で幅が減少している請求項7記載の金属線条体の接続装置。
【請求項9】
前記駆動歯車がハンドルを有する請求項6〜8のうちいずれか一項記載の金属線条体の接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−94821(P2013−94821A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240488(P2011−240488)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】