説明

金属膜の作製方法及び金属膜

【課題】焼結時の基材へのダメージがなく、且つ膜厚のコントロールが可能な金属膜の作製方法、及び金属膜を提供する。
【解決手段】印刷法で、基材上に酸化銅からなる粒子を含む銅系粒子堆積層を形成する工程と、ガス状のギ酸を含むガスにより、120℃以上に加熱した前記銅系粒子堆積層を還元し金属銅膜(めっき核)を生成する工程と、前記金属銅膜(めっき核)表面にめっきを行う工程とを含む、金属膜を作製する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属膜の作製方法、およびこれを用いて作製される金属膜に関する。
【背景技術】
【0002】
金属膜又は金属パターンを形成する方法として、サブトラクティブ法やセミアディティブ法に代表されるように、フォトレジストを形成して、エッチングによって不必要な部位を除去して金属パターンを形成する。この方法では、煩雑な工程と、エッチング液やフォトレジスト剥離液の廃液の増大が問題となる。また、射出成形回路部材(Molded Interconnect Device;MID)などの三次元構造体へ金属パターンを形成する方法として、レーザーを用いてパターニングを行う方法がある。この方法では、段差や曲面のある基材へのパターニングが可能であるが、レーザーを用いていることから生産性が悪く、コスト高となる。
【0003】
一方、省資源化のために必要な部分にのみ材料を供給する印刷法、例えばインクジェット印刷、スーパーインクジェット印刷、ジェットディスペンサ、ディスペンサ、ニードルディスペンサ、スクリーン印刷、凸版印刷、凹版印刷、グラビア印刷、転写印刷、ソフトリソグラフ、ディップペンリソグラフ、粒子堆積法、カンマコータ、スリットコータ、ダイコータ、グラビアコータ、スプレーコータ、スピンコータ、ディップコータ、電着塗装などが着目されている。その中でも、インクジェット印刷やジェットディスペンサでは任意の形状に液状の材料を塗布できるため、オンデマンド生産、省力化、省材料化、低コスト化の点から注目されている。さらに非接触であることから、段差や曲面、小面積への印刷が可能であり、有版印刷では不可能な形状を有する基材へのパターン形成が可能である。
【0004】
このような印刷法を用いた金属パターンのうち、印刷法で所望の膜厚よりも薄い金属膜の生成を行った後、該金属膜をめっき核として導電金属によるめっきを施し所望の膜厚の金属膜を得る方法がある。例えば、平均粒子径が100nm以下の金属微粒子を水または有機溶剤中に分散させた金属微粒子インクを用いて回路パターンを描画し、次いで基材を熱もしくは光線により処理して前記パターンに含まれる重合体または界面活性剤を分解揮散させて薄い導体パターンを形成する方法が記載されている(特許文献1参照)。しかし、この方法で得られる薄い金属膜は粒子間をつなぎ合わせた多孔質な焼結体となり、金属膜と基材との接着性に問題があった。また、基材と金属膜との接着性を向上させるために、有機ケイ素化合物または有機マンガン化合物を含む金属微粒子分散液を用いて回路パターンを描画し、次いで焼成を行って薄い金属膜を作製する方法が記載されている(特許文献2参照)。しかし、焼成温度が350〜400℃と高く、使用できる基材に制約があった。
【0005】
一方、ギ酸ガスを用いた手法としてギ酸リフロー炉が、銅およびはんだ表面の酸化皮膜の除去に効果があることが報告されている(特許文献3参照)。ギ酸ガスを用いた手法では、処理温度が120〜250℃で、且つ基材へのダメージなく金属膜の生成が可能である。この手法を用いて、金属銅微粒子インクを焼結する方法が報告されている(特許文献4、5参照)。しかし、これらの焼結体も多孔質であり、良好な金属膜を作製するまでには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−134878号公報
【特許文献2】特開2003−209341号公報
【特許文献3】特許第3373499号公報
【特許文献4】特開2009−252685号公報
【特許文献5】特開2010−59535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、基材への接着性が良好で、基材へのダメージが無く、膜厚のコントロールが可能な金属膜の作製方法が切望されている。本発明は、焼結時の基材へのダメージがなく、且つ膜厚のコントロールが可能な金属膜の作製方法、及び、金属膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための金属膜の作製方法として、印刷法を用いて酸化銅からなる粒子を含む銅系粒子堆積層を形成し、焼結方法としてギ酸ガスを含むガスを用いて銅系粒子堆積層から金属銅膜を生成し、さらにこれをめっき核としてめっきを行い所望の膜厚の金属膜を得ることができることを見出し、本発明に至った。なお、本発明においては、めっき核を「金属銅膜」という場合があり、金属銅膜をめっき核としてめっきにより形成される「金属膜」と区別する。
すなわち本発明は、以下の通りである。
(1) 金属膜を作製する方法において、印刷法で、基材上に酸化銅からなる粒子を含む銅系粒子堆積層を形成する工程と、ガス状のギ酸を含むガスにより、120℃以上に加熱した前記銅系粒子堆積層を還元し金属銅膜(めっき核)を生成する工程と、前記金属銅膜(めっき核)表面にめっきを行う工程とを含むことを特徴とする金属膜の作製方法。
(2) 印刷法が、インクジェット印刷、スーパーインクジェット印刷、ジェットディスペンサ、ディスペンサ、ニードルディスペンサ、スクリーン印刷、凸版印刷、凹版印刷、グラビア印刷、転写印刷、ソフトリソグラフ、ディップペンリソグラフ、粒子堆積法、カンマコータ、スリットコータ、ダイコータ、グラビアコータ、スプレーコータ、スピンコータ、ディップコータ、電着塗装から選択される少なくとも一つであることを特徴とする(1)記載の金属膜の作製方法。
(3) 酸化銅が、酸化第一銅又は酸化第二銅であることを特徴とする(1)又は(2)記載の金属膜の作製方法。
(4) 酸化銅からなる粒子の一次粒径が、1〜10000nmであることを特徴とする(1)〜(3)いずれかに記載の金属膜の作製方法。
(5) 基材が、金属、プラスティック、ガラス、セラミックス、およびこれらの複合材料から選択される少なくとも一つであることを特徴とする(1)〜(4)いずれかに記載の金属膜の作製方法。
(6) めっきが、電解めっき又は自己触媒型の無電解めっきであることを特徴とする(1)〜(5)いずれかに記載の金属膜の作製方法。
(7) 自己触媒型の無電解めっきが、無電解ニッケルめっき、無電解銅めっき、無電解銀めっき、無電解すずめっき、無電解ロジウムめっき、無電解パラジウムめっき、無電解金めっき、無電解白金めっきから選択される少なくとも一つ以上の無電解めっきであることを特徴とする(6)記載の金属膜の作製方法。
(8) (1)〜(7)いずれかに記載の金属膜の作製方法で作製された、金属膜。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、焼結時の基材へのダメージがなく、且つ膜厚のコントロールが可能な金属膜の作製方法、及び、金属膜を提供することが可能となった。
本発明の処理では、昇華性を有するギ酸第一銅を経由することから、昇華により銅原子は粒子外にも拡散でき、図1(b)に示すように金属銅が析出したと考える。また、120〜250℃の比較的低い温度で焼成できることから、基材にダメージを与えることなく緻密な金属銅膜を生成することができる。さらに、図1(c)に示すように該金属銅膜をめっき核としてめっきを行うことで所望の膜厚の金属膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の金属膜の作製方法の各工程を示す模式図であり、(a)は基材上の銅系粒子堆積層であり、(b)は生成した金属銅膜であり、(c)はめっき後の金属膜である。
【図2】実施例1において作製した金属膜の断面SIM(走査イオン顕微鏡)写真である。
【図3】実施例2において作製した金属膜の断面SIM(走査イオン顕微鏡)写真である。
【図4】実施例1において、無電解めっき処理を行う前の金属銅膜の断面SIM(走査イオン顕微鏡)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を示す。
本発明は、金属膜を作製する方法において、印刷法で、基材上に酸化銅からなる粒子を含む銅系粒子堆積層を形成する工程と、ガス状のギ酸を含むガスにより、120℃以上に加熱した前記銅系粒子堆積層を還元し金属銅膜(めっき核)を生成する工程と、前記金属銅膜(めっき核)表面にめっきを行う工程とを含むことを特徴とする。
以下、本発明の金属膜の作製方法について説明する。
【0012】
図1(a)に示すように、基材上に銅系粒子堆積層を有する構造体を、120℃以上に加熱した状態で、ギ酸ガスを含むガスと接触させる。ギ酸が還元剤として作用することで、該銅系粒子堆積層中の酸化銅は還元され、金属銅を生成する。このようにして生成された金属銅は、図1(b)に示すように緻密な銅膜となり、バルクの金属銅に近い性質を示すことになる。
【0013】
さらに、図1(c)に示すように、生成した金属銅膜をめっき核としてめっきすることにより、所望の金属膜が得られる。めっきは、給電層を必要とせず、且つギ酸ガスを含むガス処理によって生成した金属銅膜に欠陥が生じた場合に、欠陥を埋めることが可能な無電解めっきであることが好ましい。
以下、本発明の各構成要素について説明する。
【0014】
先ず、銅系粒子堆積層について詳細に説明する。
(銅系粒子堆積層)
銅系粒子堆積層は、酸化銅からなる粒子を含む粒子の堆積した層からなり、酸化銅は、酸化第一銅及び/又は酸化第二銅であることが好ましい。銅系粒子堆積層に含まれる酸化銅の割合は、緻密な銅膜を形成するために質量比で10質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましく、70質量%以上であることが特に好ましく、80質量%以上であることが極めて好ましく、90質量%以上であることが最も好ましい。酸化銅の割合が10質量%未満であると、緻密な銅膜が生成できないおそれがある。なお、酸化銅における、酸化第一銅と酸化第二銅の割合は特に限定しない。
【0015】
酸化銅からなる粒子以外の粒子としては、酸化銅やギ酸銅の分解に対し触媒活性を有する金属成分、例えば銅、白金、パラジウム、ロジウム、金、銀、ニッケルなどを含んでいても良い。
【0016】
また、該銅系粒子堆積層において、ギ酸を含むガス処理により生成される金属銅膜の緻密性向上や内部応力の調整、銅系粒子堆積層外への金属銅の析出抑制など様々な目的に応じて、該銅系粒子堆積層に有機系や無機系、金属塩等の添加剤を含んでいても良い。該添加剤としては、例えば、2,2′−ビピリジル、オルトフェナントリン、フェロシアン化カリウム、ベンゾチアゾール、チアゾール、ニコチン酸、ベンゾトリアゾール、ポリ硫化カリウム、8−アザグアニン、8−アザキサンチン、8−アザヒポキサンチン、アデニン、8−アザアデニン、グアニン、ヒポキサンチン、ノルボルナジエン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、シアン化ナトリウム、クプロン、硫化カリウム、硫化ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、ゲルマニウム酸ナトリウム、二酸化ゲルマニウム、スズ酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、メタバナジン酸ナトリウム、五酸化バナジウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸ニッケル、硫酸銅、硝酸銅、塩化銅、ギ酸銅、酢酸銅、ほう酸、しゅう酸カリウム、チオ尿素、アリルチオ尿素、チオリンゴ酸、チオグリコール酸、チオシアン酸、グリコール酸、炭酸ナトリウム、硝酸カリウム及び鉛塩類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
また、酸化銅からなる粒子は、一次粒径が1〜10000nmであることが好ましく、2〜5000nmであることがより好ましく、3〜3000nmであることがさらに好ましい。酸化銅からなる粒子の一次粒径が10000nmより大きいと、緻密な銅膜が生成できないため好ましくない。また、一次粒径が1nm未満であると、銅系粒子堆積層を作製するための、銅系粒子(酸化銅からなる粒子)を含む分散液を調製が困難になるおそれがある。なお、粒子の一次粒径とは、一般的に、一次粒子の数平均粒子径である。また、数平均粒子径は、例えば、レーザー回折散乱法により求めることが可能である。
【0018】
基材上に形成する、銅系粒子堆積層の厚みは、該銅系粒子堆積層に含まれる酸化銅が還元され金属銅が生成するときの体積収縮を考慮し、生成する金属銅膜の厚みよりも厚く形成する必要がある。よって、銅系粒子堆積層の厚みは、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上がより好ましく、1μm以上がさらに好ましく、5μm以上が特に好ましい。銅系粒子堆積層の厚みが0.01μm未満であると、生成する金属銅膜に欠損を生じる可能性があるため好ましくない。また、厚すぎると酸化銅の還元が不十分になるおそれがあるため、100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、50μm以下が特に好ましい。
【0019】
続いて、銅系粒子堆積層の形成方法について詳細に説明する。
(銅系粒子堆積層の形成方法)
銅系粒子堆積層は、銅系粒子を含む分散液を調製し、該分散液を塗布液として基材上に塗布し、乾燥することにより形成することができる。なお、銅系粒子を含む分散液とは、酸化銅の粒子を含む分散液のことである。
【0020】
前記分散液中の銅系粒子の濃度は、塗布あるいは印刷手法に使用できる粘度、分散性から主に制約を受け、固形分として5〜90質量%とすることが好ましく、10〜85質量%とすることがより好ましく、10〜80質量%とすることがさらに好ましい。
【0021】
分散は、超音波分散機、ビーズミルなどのメディア分散機、ホモミキサーやシルバーソン攪拌機などのキャビテーション攪拌装置、アルティマイザーなどの対向衝突法、クレアSS5などの超薄膜高速回転式分散機、自転公転式ミキサなどを用いて行うことができるが、所望の粒子分散性を得られる方法であればこれらに限定されない。
【0022】
該分散液の分散媒としては、銅系粒子を分散可能であれば良く、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、炭酸プロピレン、シクロヘキサノン、アニソール、N、N−ジメチルホルムアミド、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1、3−ブチレングリコールジアセテート等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの分散媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、分散液の表面張力を調整するための調整剤を含んでも良い。
【0023】
銅系粒子堆積層は、上記方法で調整した銅系粒子を含む分散液を調製し、該分散液を塗布液として基材上に塗布し、乾燥することにより形成することができる。
【0024】
銅系粒子堆積層のパターニングに用いる印刷法は、該銅系粒子堆積層を、基材の任意の場所に付着させられる手法であれば良く、このような手法として、インクジェット印刷、静電誘引法によるインクジェット印刷(一般にスーパーインクジェットとも呼ばれる)、ジェットディスペンサ、ディスペンサ、ニードルディスペンサ、スクリーン印刷、凸版印刷、凹版印刷、グラビア印刷、転写印刷、ソフトリソグラフ、ディップペンリソグラフ、粒子堆積法、カンマコータ、スリットコータ、ダイコータ、グラビアコータ、スプレーコータ、スピンコータ、ディップコータ、電着塗装を用いることができるが、これらに限定されない。また、必要に応じて、従来技術であるフォトレジスト法を用いて、印刷法で形成したパターンをさらにパターニングしても良い。
【0025】
尚、前記の印刷法により作製された金属膜は、金属パターン(印刷金属パターン)として使用できる。さらに、本発明の金属膜の作製方法により作製された、金属膜は、例えば、導体配線、バンプ、熱伝導路として好適であり、さらに、放熱性が要求される、熱交換機、放熱装置等に使用可能である。
金属パターンとしては、印刷法により金属膜からなる金属パターンを形成してもよく、あるいは、作製した金属膜を適宜、エッチングし、金属パターンとしてもよい。
【0026】
該分散液を塗布し、銅系粒子堆積層を形成するための下地となる基材は、該銅系粒子堆積層が形成可能な基材であれば良く、このような基材として、鉄、銅、金、銀、ニッケル、コバルト、クロムなどの金属及びこれらの金属を含んだ合金、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、液晶ポリマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネートエステル樹脂、繊維強化樹脂、粒子充填樹脂、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、架橋ポリビニル樹脂などのプラスティック、ガラス、セラミックス、及びこれらの複合材料などが挙げられる。
なお、基材の形状として、印刷法で、銅系粒子堆積層の形成が可能であれば、特に限定しないが、例えば、厚み1〜1000μmのフィルム、あるいは、厚さ0.01〜10mmの基板が好ましい。
【0027】
続いて、銅系粒子堆積層から、ギ酸ガスを含むガス処理(還元処理)により、生成される金属銅膜の生成方法について詳細に説明する。
(ガス処理)
本発明の金属銅膜の生成方法は、ガス状のギ酸を含むガスにより処理(還元処理)することを特徴とする。ガスはギ酸ガス単独で用いても良く、キャリアーガスとの混合ガスとして用いても良い。該キャリアーガスは、ギ酸及び有機溶剤と反応しないガスであり、且つ銅系粒子分散液又は銅系粒子堆積層に含まれる酸化銅、分散媒、表面調整剤、添加剤及び生成する金属銅と反応しないガスであることが好ましい。例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴンなどの希ガス、窒素、二酸化炭素などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
ギ酸ガス単独で用いる場合は、液状のギ酸を加熱、あるいは減圧してガス状にして、被処理物(銅系粒子堆積層、以下同様。)に導く方法が挙げられるが、これに限定されない。キャリアーガスとの混合ガスとして用いる場合は、(A)液状のギ酸をキャリアーガスでバブリングして、キャリアーガスと共に混合ガスを被処理物に導く。(B)液状のギ酸を加熱、あるいは減圧してガス状にして、ガス流路内でキャリアーガスと混合して混合ガスとし、該混合ガスを被処理物に導く等の方法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
また、ガス状のギ酸を含むガスとして、アルコール、ケトン、エステルなどの有機溶剤との混合ガスとして用いても良い。該混合ガスの作製方法は、(1)液状のギ酸と液状の有機溶剤を混合して混合液体とし、加熱、あるいは減圧してガス状にして、被処理物に導く。または、該混合液体をキャリアーガスでバブリングして、キャリアーガスと共に混合ガスを被処理物に導く。(2)液状のギ酸と液状の有機溶剤を別々に加熱、あるいは減圧してガス状にして、ガス流路内で混合して混合ガスとし、被処理物に導く。または、それぞれの液体をキャリアーガスでバブリングして、キャリアーガスと共に流路内で混合して混合ガスとし、被処理物に導く等の方法が、挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
液状のギ酸が被処理物に付着すると、被処理物の温度は、ギ酸の沸点付近(100℃程度)まで下がり、還元が進行せず、酸化銅の一部はギ酸に溶け出し、堆積層の流失や塗布部位外への銅の析出が起こるなどの問題が生じるため、液状のギ酸が被処理物に付かないようにすることが好ましい。
【0031】
(ガス処理の前処理)
ガス処理の前処理として、ギ酸ガスの加熱による爆発を防止するため、空気中に含まれる酸素を除去する必要がある。酸素を除去する方法としては、窒素や二酸化炭素などの無酸素ガスを通じて除去する方法が好ましい。また、印刷形成した銅系粒子堆積層に分散媒が残存する場合、該分散媒を除去することが好ましい。除去方法としては、加熱除去、減圧除去、無酸素ガスを通じての除去などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
(ガス処理条件)
ガスによる処理温度は、金属銅が析出する温度である120℃以上であり、反応速度の点から140℃以上が好ましい。処理温度の上限は、基材の耐熱温度により規定されるが、250℃以下であることが好ましい。また、処理圧力は、特に制約なく、大気圧、減圧、加圧いずれの条件でも良い。また、ガスによる処理時間は、5〜180分間が好ましく、10〜180分間がより好ましい。処理時間が5分より短いと、金属銅が析出しない恐れがあるため好ましくなく、180分より長いとガスの消費量が多くなるため好ましくない。
【0033】
(ガス処理の後処理)
処理に用いたギ酸等が金属銅表面に残存すると金属銅の腐食の原因となる可能性が高いことから、ガス処理後にギ酸の除去工程を設けても良い。ギ酸ガスを含むガスの除去方法としては、窒素などの無酸素ガス気流下での加熱、減圧下での加熱、あるいは水洗を用いることができる。無酸素ガス気流下での加熱としては、ギ酸ガス処理槽内でギ酸ガスを含まない無酸素ガスを供給しての加熱、無酸素ガスオーブン、無酸素ガス気流での熱源による加熱を用いることができる。減圧下での加熱としては、減圧槽内でガス処理した場合にはギ酸ガスの供給を停止しての減圧加熱、減圧オーブンを用いることができる。
【0034】
続いて、生成した金属銅膜をめっき核として、めっきを行うことによって作製する金属膜の作製方法について詳細に説明する。
なお、生成した金属銅膜は、めっき核として作用する必要があるため、その膜厚は、0.001μm以上であることが好ましく、0.01μm以上がより好ましく、0.1μm以上がさらに好ましく、0.5μm以上が特に好ましい。また、金属銅膜の膜厚の上限は、特に限定しないが、10μm程度が好ましい。0.001μm未満では、無電解めっき(化学めっき)または電解めっきにおいてめっき核として働かず、めっき反応が十分には進行しないおそれがある。
【0035】
(めっき処理)
本発明の金属膜の作製方法は、ギ酸ガスを含むガス処理によって生成した金属銅膜をめっき核として、めっきを行うことを特徴とする。
めっきには、電解めっきおよび無電解めっき(化学めっき)を用いることができる。なお、作製した金属膜の厚みは特に限定しないが、電解めっきであれば、通常、1〜100μm程度、無電解めっき(化学めっき)であれば、通常、0.1〜50μm程度である。
このうち、無電解めっきはめっき給電を必要としないことから、めっきは無電解めっきであることが好ましい。また、無電解めっきには、置換型の無電解めっきと自己触媒型(還元型)の無電解めっきがあるが、本発明の所望の膜厚の金属膜を得るためには、自己触媒型の無電解めっきが好ましい。以降、特に注釈が無い場合、無電解めっきとは、自己触媒型の無電解めっきのことを指すものとする。
なお、自己触媒型の無電解めっきとしては、無電解ニッケルめっき、無電解銅めっき、無電解銀めっき、無電解すずめっき、無電解ロジウムめっき、無電解パラジウムめっき、無電解金めっき、無電解白金めっき等が挙げられる。
【0036】
電解めっきに用いる電解めっき液は、通常、金属イオンを含む電解溶液であり、必要に応じてpH調整剤や添加剤が含まれる。電解めっきを行うときは、この電解めっき液に浸漬して、外部電源から直流電流を流すことで電子を供給し、陰極(−)側に配置された被めっき物に該金属イオンを還元析出させることで、金属膜を作製することができる。使用する電解めっき液は、作製する金属膜に応じて選択することができる。
【0037】
無電解めっきに用いる無電解めっき液は、通常、金属イオン、金属イオンの錯化剤、還元剤及びpH調整剤を含み、必要に応じて各種添加剤が含まれる。無電解めっきを行うときは、この無電解めっき液に浸漬して、該金属イオンを還元析出させて金属膜を作製することができる。使用する無電解めっき液は、作製する金属膜に応じて選択することができる。以下、無電解ニッケルめっきおよび無電解銅めっきについて説明する。
【0038】
無電解ニッケルめっきは、めっき液中のニッケルイオンをニッケルイオンの還元剤の働きによって、ギ酸ガスを含むガス処理で生成した金属銅膜表面にニッケルを析出させることができる。無電解ニッケルめっき膜は、還元剤に起因する元素(リン、ホウ素、窒素等)を含有してニッケルとの合金になるのが通常で、無電解ニッケル−リン合金めっき膜、無電解ニッケル−ホウ素合金めっき膜等である。また、無電解銅めっきは、めっき液中の銅イオンを銅イオンの還元剤の働きによって、ギ酸ガスを含むガス処理で生成した金属銅膜表面に銅を析出させることができる。
【0039】
基材にめっきを行う際、基材の形状に応じて、ラックめっき又はバレルめっきを行うことができる。大面積を有する基材にはラックめっきが、微小な基材にはバレルめっきが好ましい。さらに、めっき液にエアーによる撹拌を行っても良い。特に無電解ニッケルめっきや無電解銅めっきによって金属膜を作製するときには、めっき液の分解を防止するために、エアーによる撹拌を行うことが特に好ましい。
【0040】
(めっき処理の前処理)
また、無電解めっきを行う前段階として、ギ酸ガスを含むガス処理で生成した金属銅膜および基材に、めっき反応を効果的に行うための前処理を行うことも可能である。前処理工程は、例えば、スキージ等を用いて基材表面の不用物を除去する工程、水洗水に超音波を付加する洗浄工程、界面活性剤を含む水溶液に浸漬する脱脂洗浄工程、金属銅膜をソフトエッチングする工程、金属銅膜表面にめっき触媒を付与する工程などが挙げられる。特に、本発明の金属膜の作製方法によって作製された金属膜が微細な金属パターン、例えば配線や端子であり、その間隔が200μm以下であれば、これらの前処理を行うことが好ましい。以下これらの工程について詳細に説明する。
【0041】
スキージを用いて基材表面の不用物を除去する工程では、ギ酸を含むガス処理で生成した金属銅膜の表面およびその周辺部にある不用物、例えば、不用な酸化銅粒子や金属銅を除去することができる。スキージの材質は特に限定されず、ウレタンゴムやオレフィン系エラストマーなどが挙げられる。また、水洗水に超音波を付加する洗浄工程は、基材に水以外の異物が接触することなく表面の不用物を除去することができる。
【0042】
界面活性剤を含む水溶液に浸漬する脱脂洗浄工程では、基材表面に付着した油脂分を除去することができる。界面活性剤は、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤のいずれか、またはそれらの混合物などが使用できる。また、必要に応じて酸性またはアルカリ性のpH調整剤や錯化剤を含んでも良い。さらに、該水溶液中に添加剤を付与するか、もしくは脱脂洗浄工程の後に添加剤を含んだ水溶液に浸漬することで、本発明の金属膜の作製方法で作製された金属膜において、金属銅膜表面のみならず、その周辺部にもめっき金属が析出してしまう現象、いわゆる異常析出を抑制することができる。該添加剤は、例えば、分子内に硫黄原子を含んだ複素環式化合物(特開2006−316350号公報参照)、脂肪族チオール化合物(特開2007−63661号公報参照)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
金属銅膜をソフトエッチングする工程では、金属銅膜表面を平滑にするために、基材をエッチング液に浸漬してソフトエッチングを行う。エッチング液としては、通常のソフトエッチング処理に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、過硫酸アンモニウム水溶液、過硫酸ナトリウム水溶液、硫酸−過酸化水素水溶液、あるいは市販のソフトエッチング液を用いることができる。 また、上記ソフトエッチングに続いて、金属銅膜表面に形成された酸化膜を除去するために、基材を希酸に比較的短時間浸漬して酸洗浄を行う。希酸としては、特に限定されず、例えば、希硫酸、希塩酸、希硝酸などを用いることができる。
【0044】
金属銅膜表面にめっき触媒を付与する工程では、めっき反応を円滑に開始させるための金属触媒を、置換型の無電解めっき液に浸漬することで金属銅膜表面に付与する。置換型の無電解めっき液としては、銅よりも貴な金属であれば特に限定されず、例えば、置換銀めっき液、置換金めっき液、置換パラジウムめっき液、置換白金めっき液などを用いることができる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるもので
はない。
【0046】
(実施例1)
(銅系粒子分散液の調製)
銅系粒子分散液は、酸化銅ナノ粒子(数平均一次粒径70nm、シーアイ化成株式会社製)40gをポリ瓶に秤量し、γ−ブチロラクトン(和光純薬工業株式会社製)60gを加え、密栓後振り混ぜた後、超音波ホモジナイザー(US−600TCVP、株式会社日本精機製作所製)により19.5kHz、600Wで5分間処理して調製した。
【0047】
(銅系粒子堆積層サンプルの作製)
ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂主剤「N−865」(DIC株式会社製、商品名)8gと、変性液状エポキシ樹脂主剤「EXA−4822」(DIC株式会社製、商品名)17gと、硬化剤であるビスフェノールAノボラック樹脂「VH−4170」(DIC株式会社製、商品名)13gと、硬化促進剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール(東京応化工業株式会社製)0.02gと、シリコーン系表面調整剤である「BYK307」(ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名)0.05gとを、溶媒であるγ−ブチロラクトン(和光純薬工業株式会社製)120gに溶解させて、その溶液を、厚さ125μmのポリエチレンナフタレートフィルム「テオネックス」(帝人化成株式会社製、商品名。「テオネックス」は登録商標。)にギャップ50μmに調整したベーカーアプリケータ(YBA型、ヨシミツ精機株式会社製)を用いて塗布した。その後、180℃、30分の熱処理により硬化させエポキシ樹脂硬化膜を形成し、これを基材とした。
基材であるフィルム状の該エポキシ樹脂硬化膜に、該銅系粒子分散液を滴下し、ギャップ50μmに調整したベーカーアプリケータ(YBA型、ヨシミツ精機株式会社製)を用いて塗布した。その後、80℃に加熱したホットプレート上に置き30分間乾燥し、厚さ15μmの銅系粒子堆積層サンプルを得た。
【0048】
(ガス処理)
洗気瓶にギ酸(和光純薬工業株式会社製)を入れ、窒素をバブリングしてギ酸ガスの発生装置とした。銅系粒子堆積層サンプルは、オイルバスで加熱した平底のセパラブルフラスコの底に銅板を敷いた上にセットした。この表面にクロメルアルメル熱電対をセットしサンプル温度を測定した。このサンプルをセットしたセパラブルフラスコに窒素を流しながら240℃のオイルバスで加熱しサンプルの温度が一定(180℃)になった後、ギ酸ガスの発生装置で発生させたギ酸ガスを含む窒素ガスをこのセパラブルフラスコに通じ、60分間ガス処理した。その際、黒色であった銅系粒子堆積層は、還元され、全体が銅色に変化するのが認められた。処理後、ギ酸ガスの発生装置をはずし、窒素を流しながらセパラブルフラスコを放冷し、サンプルが60℃以下になった後、サンプルを空気中に取り出し、純水に浸漬して超音波を15秒間印加して、不要な成分を除去し、厚さ0.3μmの金属銅膜(めっき核)を得た。
【0049】
(無電解めっき処理)
ガス処理によって生成した金属銅膜(めっき核)サンプルを、界面活性剤を含む脱脂洗浄液「Z−200」(株式会社ワールドメタル製、商品名)に50℃で3分間浸漬し、次いで2分間水洗した。次に、15g/Lの過硫酸アンモニウム溶液に20秒間浸漬し、2分間水洗し、10%の硫酸で1分間浸漬し、2分間水洗した。次に、めっき活性化処理液「SA−100」(日立化成工業株式会社製、商品名)に25℃で5分間浸漬処理し、次いで2分間水洗した。次に、無電解ニッケル−リン合金めっき液「トップニコロンLPH」(奥野製薬工業株式会社製、商品名。「トップニコロン」は登録商標。)に85℃で35分間浸漬処理し、次いで5分間水洗して厚さ10.3μmの無電解ニッケル−リン合金めっき膜を作製した。めっき後、基材から金属膜(めっき膜)の剥離はみられなかった。
【0050】
(表面抵抗率測定)
作製した金属膜(めっき膜)の表面抵抗率は、四探針法低抵抗率計「ロレスタGP」(三菱化学株式会社製、商品名。「ロレスタ」は登録商標。)を用いて測定した。単位面積(1cm)あたりの表面抵抗(表面抵抗率)は0.082Ω/□であった。
【0051】
(実施例2)
無電解ニッケル−リン合金めっき液の代わりに、無電解銅めっき液「CUST−3000」(日立化成工業株式会社製、商品名)に70℃で6時間浸漬処理し、次いで5分間水洗した以外は実施例1と同様の条件で無電解めっき処理までを行い、厚さ9.6μmの無電解銅めっき膜を作製した。めっき後、基材から金属膜(めっき膜)の剥離はみられなかった。また、表面抵抗率は0.004Ω/□であった。
【0052】
(実施例3)
セミアディティブ対応絶縁フィルム「AS−Z3」(日立化成工業株式会社製、商品名)を基材として銅系粒子堆積層を形成した以外は、実施例1と同様の条件で無電解めっき処理までを行い、厚さ11.1μmの無電解ニッケル−リン合金めっき膜を作製した。めっき後、基材から金属膜(めっき膜)の剥離はみられなかった。また、表面抵抗率は0.089Ω/□であった。
【0053】
(実施例4)
セミアディティブ対応絶縁フィルム「AS−Z3」(日立化成工業株式会社製、商品名)を基材として銅系粒子堆積層を形成した以外は、実施例2と同様の条件で無電解めっき処理までを行い、厚さ10.1μmの無電解銅めっき膜を作製した。めっき後、基材から金属膜(めっき膜)の剥離はみられなかった。また、表面抵抗率は0.004Ω/□であった。
【0054】
(比較例1)
ガス処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の条件で無電解めっき処理までを行った。銅系粒子堆積層はめっき核として作用せず、無電解ニッケル−リン合金めっき膜は作製できなかった。
【0055】
(比較例2)
ガス処理を行わなかった以外は、実施例2と同様の条件で無電解めっき処理までを行った。銅系粒子堆積層はめっき核として作用せず、無電解銅めっき膜は作製できなかった。
【0056】
(比較例3)
ガス処理の代わりに、基材上に銅系粒子堆積層を形成したサンプルを、還元処理液「HIST−100D」(日立化成工業株式会社製、商品名)に40℃で3分間浸漬し、次いで10分間水洗を行った以外は、実施例1と同様の条件で無電解めっき処理までを行った。銅系粒子堆積層から金属銅膜は生成せず、無電解ニッケル−リン合金めっき膜は作製できなかった。
【0057】
(比較例4)
ガス処理の代わりに、基材上に銅系粒子堆積層を形成したサンプルを、還元処理液「HIST−100D」(日立化成工業株式会社製、商品名)に40℃で3分間浸漬し、次いで10分間水洗を行った以外は、実施例2と同様の条件で無電解めっき処理までを行った。銅系粒子堆積層から金属銅膜は生成せず、無電解銅めっき膜は作製できなかった。
【0058】
実施例1において作製した金属膜の断面SIM(走査イオン顕微鏡)観察像を図2に示した。また、実施例2において作製した金属膜の断面SIM(走査イオン顕微鏡)観察像を図3に示した。また、実施例1において、無電解めっき処理を行う前の金属銅膜の断面SIM(走査イオン顕微鏡)観察像を図4に示した。
【0059】
図2から、金属銅膜上から無電解ニッケル−リン合金めっき膜が成長したことがわかる。また、該金属銅膜と無電解ニッケル−リン合金めっき膜の界面にボイドがないことがわかる。同様に、図3から、ガス処理によって生成した金属銅膜上から無電解銅めっき膜がエピタキシャルに成長したことが分かる。また、該金属銅膜と無電解銅めっき膜の界面にボイドがないことがわかる。
【0060】
以上説明したとおり、本発明では、印刷法で、基材上に酸化銅からなる粒子を含む銅系粒子堆積層を形成する工程と、ガス状のギ酸を含むガスにより、120℃以上に加熱した該銅系粒子堆積層を還元し金属銅膜(めっき核)を生成する工程と、金属銅膜(めっき核)にめっきを行う工程とを行うことにより、焼結時の基材へのダメージがなく、且つ所望の膜厚の金属膜、及び、この金属膜の作製方法で作製した金属膜を提供することができる。
【符号の説明】
【0061】
01:基材、11:銅系粒子堆積層、12:金属銅膜、21:めっき金属膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属膜を作製する方法において、印刷法で、基材上に酸化銅からなる粒子を含む銅系粒子堆積層を形成する工程と、ガス状のギ酸を含むガスにより、120℃以上に加熱した前記銅系粒子堆積層を還元し金属銅膜(めっき核)を生成する工程と、前記金属銅膜(めっき核)表面にめっきを行う工程とを含むことを特徴とする金属膜の作製方法。
【請求項2】
印刷法が、インクジェット印刷、スーパーインクジェット印刷、ジェットディスペンサ、ディスペンサ、ニードルディスペンサ、スクリーン印刷、凸版印刷、凹版印刷、グラビア印刷、転写印刷、ソフトリソグラフ、ディップペンリソグラフ、粒子堆積法、カンマコータ、スリットコータ、ダイコータ、グラビアコータ、スプレーコータ、スピンコータ、ディップコータ、電着塗装から選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項1記載の金属膜の作製方法。
【請求項3】
酸化銅が、酸化第一銅又は酸化第二銅であることを特徴とする請求項1又は2記載の金属膜の作製方法。
【請求項4】
酸化銅からなる粒子の一次粒径が、1〜10000nmであることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の金属膜の作製方法。
【請求項5】
基材が、金属、プラスティック、ガラス、セラミックス、およびこれらの複合材料から選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の金属膜の作製方法。
【請求項6】
めっきが、電解めっき又は自己触媒型の無電解めっきであることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の金属膜の作製方法。
【請求項7】
自己触媒型の無電解めっきが、無電解ニッケルめっき、無電解銅めっき、無電解銀めっき、無電解すずめっき、無電解ロジウムめっき、無電解パラジウムめっき、無電解金めっき、無電解白金めっきから選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項6記載の金属膜の作製方法。
【請求項8】
請求項1〜7いずれかに記載の金属膜の作製方法で作製された、金属膜。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−21053(P2013−21053A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151743(P2011−151743)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】