説明

金属膜を有する積層体およびその製造方法、並びに、パターン状金属膜を有する積層体およびその製造方法

【課題】析出しためっき膜(金属膜)上にノジュールの発生が抑制された金属膜を有する積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】所定の官能基を含むポリマーを含む被めっき層形成用組成物を用いて、基板10上に被めっき層12を形成する被めっき層形成工程と、所定の成分を含むアルカリ水溶液と被めっき層12とを接触させるアルカリ水溶液接触工程と、未硬化部分が除去された被めっき層12にめっき触媒またはその前駆体を付与する触媒付与工程と、めっき処理を行い、被めっき層上12に金属膜14を形成するめっき工程と、を備える金属膜を有する積層体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属膜を有する積層体およびその製造方法、並びに、パターン状金属膜を有する積層体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、絶縁性基板の表面に金属パターンによる配線を形成した金属配線基板が、電子部品や半導体素子に広く用いられている。
かかる金属パターン材料の作製方法としては、主に、「サブトラクティブ法」が使用される。このサブトラクティブ法とは、基板表面に形成された金属膜上に、活性光線の照射により感光する感光層を設け、この感光層を像様露光し、その後現像してレジスト像を形成し、次いで、金属膜をエッチングして金属パターンを形成し、最後にレジストを剥離する方法である。
【0003】
この方法により得られる金属パターンにおいては、基板表面に凹凸を設けることにより生じるアンカー効果により、基板と金属パターン(金属膜)との間の密着性を発現させている。そのため、得られた金属パターンを金属配線として使用する際、金属パターンの基板界面部の凹凸に起因して、高周波特性が悪くなるという問題点があった。また、基板表面に凹凸化処理するためには、クロム酸などの強酸で基板表面を処理する必要があるため、基板との密着性に優れた金属パターンを得るためには、煩雑な工程が必要であるという問題点があった。
【0004】
この問題を解決する手段として、基板上に基板と高密着性を有するポリマー層を形成し、このポリマー層に対してめっきを施して、得られた金属膜をエッチングする方法が知られている(特許文献1)。該方法によれば、基板の表面を粗面化することなく、基板と金属膜との密着性を改良することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−248464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、特許文献1に記載の従来技術について検討を行ったところ、析出しためっき膜(金属膜)上にいわゆるノジュールが発生する場合があることを見出した。
一方、近年、電子機器の小型化、高機能化の要求に対応するため、プリント配線板中の微細配線のより一層の高集積化が進んでいる。そのため、このようなノジュールが発生した積層体を線間/線幅が100μm/100μm以下の微細な導体回路を持つプリント配線板の導体回路形成に使用すると、金属配線間のショート不良を招きやすく、配線板の信頼性を低下させることになる。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、ノジュールの発生が抑制された金属膜を有する積層体の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、該製造方法より得られた積層体を用いたパターン状金属膜を有する積層体の製造方法およびパターン状金属膜を有する積層体を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、所定のポリマーを使用して被めっき層を形成した後に、被めっき層と所定の成分を含むアルカリ水溶液とを接触させることにより、上記課題を解決できることを見出した。つまり、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0009】
(1) 後述する式(X)で表される基および(メタ)アクリルアミド基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基とイオン性極性基とを有するポリマーを含む被めっき層形成用組成物を基板上に接触させた後、基板上の被めっき層形成用組成物に対してエネルギーを付与して、基板上に被めっき層を形成する被めっき層形成工程と、
アミノアルコールおよび界面活性剤を含む、pH10〜14のアルカリ水溶液と被めっき層とを接触させるアルカリ水溶液接触工程と、
アルカリ水溶液接触工程後に被めっき層にめっき触媒またはその前駆体を付与する触媒付与工程と、
めっき触媒またはその前駆体が付与された被めっき層に対してめっき処理を行い、被めっき層上に金属膜を形成するめっき工程と、を備える金属膜を有する積層体の製造方法。
【0010】
(2) アルカリ水溶液の液温が60℃以上である、(1)に記載の金属膜を有する積層体の製造方法。
(3) (1)または(2)に記載の製造方法より得られる、金属膜を有する積層体。
(4) (3)に記載の積層体中の金属膜をパターン状にエッチングして、パターン状金属膜を形成する工程を備える、パターン状金属膜を有する積層体の製造方法。
【0011】
(5) (4)に記載の製造方法より得られる、パターン状金属膜を有する積層体。
(6) (5)に記載のパターン状金属膜を有する積層体と、パターン状金属膜を有する積層体上に設けられる絶縁層とを備える配線基板。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ノジュールの発生が抑制された金属膜を有する積層体の製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、該製造方法より得られた積層体を用いたパターン状金属膜を有する積層体の製造方法およびパターン状金属膜を有する積層体を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(A)〜(D)は、それぞれ本発明の積層体およびパターン状金属膜を有する積層体の製造方法における各製造工程を順に示す基板から積層体までの模式的断面図である。
【図2】(A)〜(D)は、本発明の積層体のエッチング工程の一態様を順に示す模式的断面図である。
【図3】(A)〜(E)は、本発明の積層体のエッチング工程の他の態様を順に示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の金属膜を有する積層体およびその製造方法、並びに、パターン状金属膜を有する積層体およびその製造方法の好適実施態様について説明する。
まず、本発明の従来技術と比較した特徴点について詳述する。本発明の特徴点として、特定のポリマーを用いて被めっき層を形成し、その後に該被めっき層と所定の成分を含むアルカリ水溶液とを接触させる点が挙げられる。
本発明者らは、従来技術の問題点について鋭意検討を行ったところ、エネルギー付与のよる被めっき層形成後に被めっき層中に残存する未硬化部分、または、表面の硬化が十分でない成分がノジュール発生に関連していることを見出した。より具体的には、被めっき層中に未硬化部分または表面の硬化が不十分な成分があると、被めっき層とめっき液との接触時に未硬化部分または分解物がめっき液中に流出してめっき液を汚染し、その結果ノジュールの発生を引き起こすことを見出した。該知見に基づき、検討を重ねた結果、アミノアルコールと界面活性剤を含有する、所定のpHを示すアルカリ水溶液を使用して、所定のポリマーで形成された被めっき層を洗浄することにより、所望の効果が得られることを見出した。
【0015】
本発明の金属膜を有する積層体の製造方法は、被めっき層形成工程、アルカリ水溶液接触工程、触媒付与工程、めっき工程の4つの工程を備える。
以下に、各工程で使用される材料、および、各工程の手順について詳述する。
【0016】
<被めっき層形成工程>
被めっき層形成工程は、式(X)で表される基および(メタ)アクリルアミド基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基とイオン性極性基とを有するポリマーを含む被めっき層形成用組成物を基板上に接触させた後、基板上の被めっき層形成用組成物に対してエネルギーを付与して、基板上に被めっき層を形成する工程である。
より具体的には、該工程において、図1(A)に示されるように基板10を用意し、図1(B)に示すように基板10の上部に被めっき層12が形成される。
【0017】
該工程によって形成される被めっき層は、ポリマー中に含まれるイオン性極性基の機能に応じて、後述する触媒付与工程でめっき触媒またはその前駆体を吸着(付着)する。つまり、被めっき層は、めっき触媒またはその前駆体の良好な受容層として機能する。また、式(X)で表される基および(メタ)アクリルアミド基といった重合性基は、ポリマー同士の結合や、基板との化学結合に利用される。その結果、被めっき層の表面に形成される金属膜(めっき膜)と、基板との間に優れた密着性が発現する。
まず、本工程で使用される材料(基板、ポリマー、被めっき層形成用組成物など)について詳述し、その後工程の手順について詳述する。
【0018】
(基板)
本発明に用いる基板としては、従来知られているいずれの基板も使用することができ、形状保持性を有するものであればよい。また、その表面が、後述するポリマーと化学結合しうる機能を有することが好ましい。具体的には、基板自体がエネルギー付与(例えば、露光)によりポリマーと化学結合を形成しうるものであるか、または、基板上に、エネルギー付与により被めっき層と化学結合を形成しうる中間層(例えば、後述する密着補助層)を設けられていてもよい。
【0019】
基板の材料は特に限定されず、例えば、高分子材料(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアセタール、ポリイミド、エポキシ樹脂、ビスマレインイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン等)、金属材料(例えば、金属合金、金属含有材料、純粋金属、またはこれらに類似したもの。具体的には、アルミニウム、亜鉛、銅等の混合物、合金、またはこれらのアロイ。)、その他の材料(例えば、紙、プラスチックがラミネートされた紙)、これらの組み合わせ、またはこれらに類似したものなどが挙げられる。
【0020】
また、本発明の積層体は、半導体パッケージ、各種電気配線基板等に適用することができる。このような用途に用いる場合は、以下に示す、絶縁性樹脂を含んだ基板、具体的には、絶縁性樹脂からなる基板(絶縁性基板)、または、絶縁性樹脂からなる層(絶縁性樹脂層)を表面に有する基板(絶縁層付き基板)を用いることが好ましい。
【0021】
絶縁性樹脂からなる基板、絶縁性樹脂からなる層を得る場合には、公知の絶縁性樹脂組成物が用いられる。
絶縁性樹脂の具体例としては、例えば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でも、またはそれらの混合物でもよい。例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、イソシアネート樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0022】
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド等が挙げられる。
【0023】
さらに、基板は、その片面または両面に金属配線を有していてもよい。金属配線は、基板の表面に対してパターン状に形成されていてもよいし、全面に形成されていてもよい。代表的には、エッチング処理を利用したサブストラクティブ法で形成されたものや、電解めっきを利用したセミアディティブ法で形成したものが挙げられ、いずれの工法で形成されたものを用いてもよい。
金属配線を構成する材料としては、例えば、銅、銀、錫、パラジウム、金、ニッケル、クロム、タングステン、インジウム、亜鉛、またはガリウムなどが挙げられる。
このような金属配線を有する基板としては、例えば、両面または片面の銅張積層板(CCL)や、この銅張積層板の銅膜をパターン状にしたもの等が用いられ、これらはフレキシブル基板であってもよいし、リジット基板であってもよい。
例えば、その表面に金属配線層と絶縁層とこの順で有する絶縁性基板を本発明の基板として用いてもよい。また、その場合、金属配線層と絶縁層とはそれぞれが交互に2層以上積層していてもよい。
【0024】
基板には、本発明の効果を損なわない限り、種々の添加剤が含まれていてもよい。例えば、無機粒子等の充填材充填物(例えば、ガラス繊維、シリカ粒子、アルミナ、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカ、ウォラストナイト)や、シラン系化合物(例えば、シランカップリング剤やシラン接着剤等)、有機フィラー(例えば、硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリルポリマー等)、可塑剤、界面活性剤、粘度調整剤、着色剤、硬化剤、衝撃強度改質剤、接着性付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0025】
(被めっき層形成用組成物)
被めっき層形成用組成物には、後述する式(X)で表される基または(メタ)アクリルアミド基と、イオン性極性基とを含むポリマーが含まれる。
以下に、該組成物中に含まれる材料(ポリマーなど)について詳述する。
【0026】
(ポリマー)
本発明で使用されるポリマーは、式(X)で表される基および(メタ)アクリルアミド基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基とイオン性極性基とを有する。まず、含有される各基について詳述する。
【0027】
【化1】


式(X)中、R12〜R16は、それぞれ独立に、水素原子、または、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。無置換のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、またはブチル基が挙げられる。また、置換アルキル基としては、例えば、メトキシ基、塩素原子、臭素原子、またはフッ素原子等で置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
なお、R12〜R16としては、本発明の効果がより優れる点で、水素原子が好ましい。つまり、式(X)で表される基としては、アリル基であることが好ましい。
【0028】
式(X)で表される基および(メタ)アクリルアミド基は、エネルギー付与により、ポリマー同士、または、ポリマーと基板との間に化学結合を形成しうる官能基である。ポリマーが該基を含むことにより、エネルギー付与によって硬化形成される被めっき層が後述するアルカリ水溶液に対して十分な耐性(耐アルカリ性)を有する。
【0029】
イオン性極性基は、後述するめっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する基であり、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ボロン酸基、またはその塩が挙げられる。中でも、適度な酸性(他の官能基を分解しない)という点から、カルボン酸基が好ましい。
【0030】
ポリマーの重量平均分子量は特に制限されないが、1000以上70万以下が好ましく、更に好ましくは2000以上20万以下である。特に、重合感度の観点から、20000以上であることが好ましい。
また、ポリマーの重合度は特に制限されないが、10量体以上のものを使用することが好ましく、更に好ましくは20量体以上のものである。また、7000量体以下が好ましく、3000量体以下がより好ましく、2000量体以下が更に好ましく、1000量体以下が特に好ましい。
【0031】
(好適態様)
ポリマーの第1の好ましい態様として、下記式(a)で表される重合性基を有するユニット(以下、適宜重合性基ユニットとも称する)、および、下記式(b)で表されるイオン性極性基を有するユニット(以下、適宜イオン性極性基ユニットとも称する)を含む共重合体が挙げられる。なお、ユニットとは繰り返し単位を意味する。
【0032】
【化2】

【0033】
上記式(a)および式(b)中、R1、R2、およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、またはメチル基を表す。なお、メチル基は他の置換基(例えば、ハロゲン原子)で置換されていてもよい。
【0034】
3は、水素原子、または、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、もしくはこれらを組み合わせた基を表す。脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などが挙げられる。なかでも、炭素数1〜10が好ましい。芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0035】
上記式(a)および式(b)中、XおよびYは、それぞれ独立して、単結合、または、置換若しく無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基としては、置換若しくは無置換の二価の脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素数1〜8)、置換若しくは無置換の二価の芳香族炭化水素基(好ましくは炭素数6〜12)、−O−、−S−、−SO2−、−N(R)−(R:アルキル基)、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−、またはこれらを組み合わせた基(例えば、アルキレンオキシ基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基など)などが挙げられる。
置換または無置換の二価の脂肪族炭化水素基(例えば、アルキレン基)としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、若しくはブチレン基、または、これらの基が、メトキシ基、塩素原子、臭素原子、若しくはフッ素原子等で置換されたものが好ましい。
置換または無置換の二価の芳香族炭化水素基としては、無置換のフェニレン基、または、メトキシ基、塩素原子、臭素原子、若しくはフッ素原子等で置換されたフェニレン基が好ましい。
【0036】
XおよびYとしては、単結合、エステル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)、エーテル基(−O−)、または置換若しくは無置換の二価の芳香族炭化水素基などが好ましく挙げられ、より好ましくは単結合、エステル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)である。
【0037】
上記式(a)および式(b)中、L1およびL2は、それぞれ独立して、単結合、または、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基の定義としては、上述したX、およびYで述べた二価の有機基と同義である。
1としては、単結合、二価の脂肪族炭化水素基、または、ウレタン結合またはウレア結合を有する二価の有機基(例えば、脂肪族炭化水素基)が好ましく、中でも、総炭素数1〜9であるものが好ましい。なお、ここで、L1の総炭素数とは、L1で表される置換若しくは無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
1の構造として、より具体的には、下記式(1−1)、または、式(1−2)で表される構造であることが好ましい。
【0038】
【化3】

【0039】
上記式(1−1)および式(1−2)中、RaおよびRbは、それぞれ独立して、炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる群より選択される2つ以上の原子を用いて形成される二価の有機基である。好ましくは、置換若しくは無置換のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、若しくはブチレン基)、または、アルキレンオキシ基もしくはポリオキシアルキレン基(例えば、エチレンオキシド基、ジエチレンオキシド基、トリエチレンオキシド基、テトラエチレンオキシド基、ジプロピレンオキシド基、トリプロピレンオキシド基、テトラプロピレンオキシド基)が挙げられる。
【0040】
また、L2は、単結合、または、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、またはこれらを組み合わせた基であることが好ましい。該アルキレン基と芳香族基とを組み合わせた基は、更に、エーテル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基を介していてもよい。中でも、L2は、単結合、または、総炭素数が1〜15であることが好ましく、特に無置換であることが好ましい。なお、ここで、L2の総炭素数とは、L2で表される置換または無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、およびこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたもの、更には、これらを組み合わせた基が挙げられる。
【0041】
上記式(b)中、Wは、イオン性極性基を表す。該官能基の定義は、上述の定義と同じである。
【0042】
上記式(a)で表される重合性基ユニットの好適態様としては、下記式(c)で表されるユニットが挙げられる。
【0043】
【化4】

【0044】
式(c)中、R1、R2、R3、およびL1は、式(a)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。Zは、酸素原子、またはNR(Rは、水素原子またはアルキル基を表し、好ましくは、水素原子または炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表す。
また、上記式(c)において、L1は、無置換のアルキレン基、または、ウレタン結合若しくはウレア結合を有する二価の有機基(特に、アルキレン基)が好ましく、総炭素数1〜9であるものが特に好ましい。
【0045】
また、式(b)で表されるイオン性極性基ユニットの好適態様としては、下記式(d)または式(e)で表されるユニットが挙げられる。
【0046】
【化5】

【0047】
上記式(d)中、W、R4およびL2は、式(b)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。Qは、酸素原子、またはNR’(R’は、水素原子、またはアルキル基を表し、好ましくは、水素原子または炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表す。
また、式(d)におけるL2は、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、または、これらを組み合わせた基であることが好ましい。
特に、式(d)においては、L2中のイオン性極性基との連結部位が、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基を有する二価の有機基であることが好ましく、中でも、この二価の有機基が総炭素数1〜10であることが好ましい。
また、別の好ましい態様としては、式(d)におけるL2中のイオン性極性基との連結部位が、芳香族基を有する二価の有機基であることが好ましく、中でも、該二価の有機基が、総炭素数6〜15であることが好ましい。
【0048】
式(e)中、WおよびR4は、式(b)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。
【0049】
(好適態様2)
ポリマーの第2の好ましい態様として、第1の好ましい態様中の下記式(a)で表される重合性基を有するユニットの代わりに、下記式(g)で表される重合性基を有するユニットを含む共重合体が挙げられる。
【0050】
【化6】

【0051】
上記式(g)中、R11は、水素原子、または、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。無置換のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、またはブチル基が挙げられる。また、置換アルキル基としては、例えば、メトキシ基、塩素原子、臭素原子、またはフッ素原子等で置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。なお、R11としては、水素原子、メチル基、または、臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
12〜R16の定義は、上述の通りである。
【0052】
1は、それぞれ独立に、単結合、エステル基、アミド基、またはフェニレン基を表す。なかでも、めっき性の点から、エステル基、アミド基が好ましく、アルカリ溶液耐性の点から、アミド基が好ましい。
【0053】
11は、単結合、または2価の有機基を表す。2価の有機基としては、上述したX、およびYで述べた二価の有機基と同義である。
なかでも、被めっき層のアルカリ溶液耐性の点から、L11としては−COO−以外の2価の有機基であることが好ましく、さらに、金属膜の密着性の観点で、−O−を1つ以上有している炭素数10〜13の脂肪族炭化水素基が好ましい。なお、該脂肪族炭化水素基は、水酸基などの極性基が置換されていてもよい。
【0054】
上記重合性基ユニット(具体的には、式(a)および式(g)で表されるユニット)は、ポリマー中の全ユニットに対して、5〜50モル%で含まれることが好ましく、更に好ましくは5〜40モル%である。5モル%未満では反応性(硬化性、重合性)が落ちる場合があり、50モル%超では合成の際にゲル化しやすく合成しにくい。
また、上記イオン性極性基ユニットは、めっき触媒またはその前駆体に対する吸着性の観点から、ポリマー中の全ユニットに対して、5〜95モル%で含まれることが好ましく、更に好ましくは10〜85モル%である。
【0055】
(その他のユニット)
上記ポリマーは、式(X)で表される基、(メタ)アクリルアミド基、およびイオン性極性基以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、他の官能基を有していてもよい。例えば、イオン性極性基を除くめっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基(以下、適宜相互作用性基とも称する)が挙げられる。
相互作用性基としては、めっき触媒またはその前駆体と配位形成可能な含窒素官能基、含硫黄官能基、含酸素官能基などを使用することができる。
相互作用性基としては、例えば、非解離性官能基(解離によりプロトンを生成しない官能基)なども挙げられる。
【0056】
相互作用性基としては、例えば、アミノ基、アミド基、イミド基、ウレア基、3級のアミノ基、アミジノ基、トリアジン環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール基、イミダゾール基、ベンズイミダゾール基、キノリン基、ピリジン基、ピリミジン基、ピラジン基、ナゾリン基、キノキサリン基、プリン基、トリアジン基、ピペリジン基、ピペラジン基、ピロリジン基、ピラゾール基、アニリン基、アルキルアミン構造を含む基、イソシアヌル構造を含む基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基、シアノ基、シアネート基(R−O−CN)などの含窒素官能基;エーテル基、カーボネート基、カルボニル基、エステル基、N−オキシド構造を含む基、S−オキシド構造を含む基などの含酸素官能基;チオフェン基、チオール基、チオウレア基、チオシアヌール酸基、ベンズチアゾール基、メルカプトトリアジン基、チオエーテル基、チオキシ基、スルホキシド基、サルファイト基、スルホキシイミン構造を含む基、スルホキシニウム塩構造を含む基、スルホン酸エステル構造を含む基などの含硫黄官能基;ホスフォロアミド基、リン酸エステル構造を含む基などの含リン官能基;塩素、臭素などのハロゲン原子を含む基などが挙げられ、塩構造をとりうる官能基においてはそれらの塩も使用することができる。
なかでも、めっき触媒またはその前駆体などへの吸着能が高いことから、エーテル基、またはシアノ基に好ましい。
【0057】
なお、上記エーテル基としては、以下の式(Y)で表されるポリオキシアルキレン基が好ましい。
式(Y) *−(VO)n−Rc
式(Y)中、Vはアルキレン基を表し、Rcはアルキル基を表す。nは1〜30の数を表す。*は結合位置を表す。アルキレン基としては、炭素数1〜3が好ましく、具体的には、エチレン基、プロピレン基が好ましく挙げられる。アルキル基としては、炭素数1〜10が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基が好ましく挙げられる。
nは1〜30の数を表し、好ましくは3〜23である。なお、nは平均値を表し、該数値は公知の方法(NMR)などによって測定できる。
【0058】
なお、上記ポリマーは、以下式(f)で表される相互作用性基を有するユニットを含んでいてもよい。
【0059】
【化7】

【0060】
式(f)中、R5は、それぞれ独立して、水素原子、または置換若しくは無置換のアルキル基を表す。アルキル基としては、炭素数1〜2が好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基が挙げられる。
【0061】
式(f)中、Uは、単結合、または、置換若しく無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基の定義は、上述したXおよびYで表される二価の有機基と同義である。なかでも、単結合、エステル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)、エーテル基(−O−)、または置換若しくは無置換の二価の芳香族炭化水素基などが好ましく挙げられる。
【0062】
式(f)中、L3は、単結合、または、置換若しく無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基の定義は、上述したL1およびL2で表される二価の有機基と同義である。なかでも、L3としては、二価の脂肪族炭化水素基(例えば、アルキレン基)が好ましく挙げられる。
式(f)中、Vは、イオン性極性基を除くめっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基(例えば、シアノ基、エーテル基)を表す。
【0063】
式(f)で表されるユニットがポリマー中に含まれる場合、めっき触媒などの吸着性の点から、その含有量は、ポリマー中の全ユニットに対して、10〜70モル%で含まれることが好ましく、更に好ましくは20〜60モル%であり、特に好ましくは30〜50モル%である。
【0064】
上記ポリマーの具体例としては、例えば、ラジカル重合性基とイオン性極性基とを有するポリマーとして、特開2006−135271号公報の段落[0065]〜[0070]に記載のポリマーが使用できる。ラジカル重合性基とめっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する官能基とイオン性極性基とを有するポリマーとしては、US2010−080964号の段落[0030]〜[0108]に記載のポリマーが使用できる。
【0065】
(ポリマーの合成方法)
上記ポリマーの合成方法は特に限定されず、使用されるモノマーも市販品または公知の合成方法を組み合わせて合成したものであってもよい。例えば、特許公開2009−7662号の段落[0120]〜[0164]に記載の方法などを参照して、上記ポリマーを合成することができる。
【0066】
被めっき層形成用組成物中のポリマーの含有量は特に制限されないが、組成物全量に対して、1〜50質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、組成物の取扱い性に優れ、被めっき層の層厚の制御がしやすい。
【0067】
(被めっき層形成用組成物中の他の任意成分)
(溶剤)
被めっき層形成用組成物には、必要に応じて、溶剤が含まれていてもよい。
使用できる溶剤は特に限定されず、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶剤、酢酸などの酸、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶剤、アセトニトリル、プロピロニトリルなどのニトリル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル系溶剤、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネート系溶剤、この他にも、エーテル系溶剤、グリコール系溶剤、アミン系溶剤、チオール系溶剤、ハロゲン系溶剤などが挙げられる。
この中でも、アミド系溶剤、ケトン系溶剤、ニトリル系溶剤、カーボネート系溶剤が好ましく、具体的には、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルカーボネートが好ましい。
【0068】
被めっき層形成用組成物中に溶剤が含まれる場合、溶剤の含有量は組成物全量に対して、50〜98質量%が好ましく、70〜95質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、組成物の取扱い性に優れ、被めっき層の層厚の制御などがしやすい。
【0069】
(その他添加剤)
本発明の被めっき層形成用組成物には、他の添加剤(例えば、重合開始剤、増感剤、硬化剤、重合禁止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、フィラー、粒子、難燃剤、界面活性剤、滑剤、可塑剤など)を必要に応じて添加してもよい。
【0070】
(工程の手順)
上述した被めっき層形成用組成物を基板上に接触させる方法は特に限定されず、被めっき層形成用組成物を直接基板上にラミネートする方法や、被めっき層形成用組成物が溶剤を含む液状である場合、組成物を基板上に塗布する方法などが挙げられる。得られる被めっき層の厚みを制御しやすい点から、組成物を基板上に塗布する方法が好ましい。
塗布の方法は特に制限されず、具体的な方法としては、スピンコータ、ディップコータ、ダブルロールコータ、スリットコータ、エアナイフコータ、ワイヤーバーコータ、スライドホッパー、スプレーコーティング、ブレードコータ、ドクターコータ、スクイズコータ、リバースロールコータ、トランスファーロールコータ、エクストロージョンコータ、カーテンコータ、ダイコータ、グラビアロールによる塗工法、押し出し塗布法、ロール塗布法等の公知の方法を用いることができる。
取り扱い性や製造効率の観点からは、被めっき層形成用組成物を基板(または密着補助層)上に塗布・乾燥させて、残存する溶媒を除去して、ポリマーを含む組成物層を形成する態様が好ましい。
【0071】
被めっき層形成用組成物を基板と接触させる場合、その塗布量は、後述するめっき触媒またはその前駆体との充分な相互作用形成性の観点から、固形分換算で0.1g/m2〜10g/m2が好ましく、特に0.5g/m2〜5g/m2が好ましい。
なお、本工程において被めっき層を形成するに際しては、塗布と乾燥との間に、20〜40℃で0.5時間〜2時間放置させて、残存する溶剤を除去してもよい。
【0072】
(エネルギーの付与)
基板上の被めっき層形成用組成物にエネルギー付与する方法は特に制限されないが、例えば、加熱や露光などが用いられることが好ましい。該処理を施すことにより、被めっき層形成用組成物中でポリマー間、または、ポリマーと基板間での反応を介して、硬化が進行し、被めっき層が形成される。
露光には、UVランプ、可視光線などによる光照射等が用いられる。光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯などがある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線、g線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)なども使用できる。
一般的に用いられる具体的な態様としては、赤外線レーザーによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光、赤外線ランプ露光などが好適に挙げられる。
露光時間としては、ポリマーの反応性および光源により異なるが、通常、10秒〜5時間の間である。露光エネルギーとしては、10〜8000mJ程度であればよく、好ましくは100〜3000mJの範囲である。
【0073】
なお、エネルギー付与として加熱を用いる場合、送風乾燥機、オーブン、赤外線乾燥機、加熱ドラムなどを用いることができる。
【0074】
得られる被めっき層の厚みは特に制限されないが、金属膜の基板への密着性の点から、0.01〜10μmが好ましく、0.05〜5μmがより好ましい。
また、乾燥膜厚で0.05〜20g/m2が好ましく、特に0.1〜6g/m2がより好ましい。
【0075】
なお、被めっき層中におけるポリマーの含有量は、被めっき層全量に対して、2〜100質量%であることが好ましく、更に好ましくは10〜100質量%の範囲である。
【0076】
また、エネルギー付与を行う際に、パターン状にエネルギー付与を行い、その後公知の現像処理によりエネルギー未照射部を除去して、パターン状の被めっき層を形成してもよい。
【0077】
<アルカリ水溶液接触工程>
アルカリ水溶液接触工程は、上記工程で形成された被めっき層と、アミノアルコールおよび界面活性剤を含む、pH10〜14のアルカリ水溶液とを接触させ、被めっき層の未硬化部分を除去する工程である。該工程を施すことにより、後述するめっき液などの汚染が抑制され、ノジュールの発生が抑制される。
以下では、まず、本工程で使用されるアルカリ水溶液の構成成分について詳述し、その後工程の手順について詳述する。
【0078】
(アルカリ水溶液)
本工程で使用されるアルカリ水溶液には、アミノアルコールが含有される。該化合物が含まれることにより、被めっき層の未硬化部分、被めっき層表面の硬化が不十分な成分の除去性が向上する。
アミノアルコールは、アミノ基と水酸基とを有する化合物であれば特に制限されないが、例えば、モノエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミンなどのモノエタノールアミンおよびその誘導体、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミンなどのジエタノールアミンおよびその誘導体、トリエタノールアミン、ヒドロキシエチルピペラジンなどやそれらの誘導体等が挙げられる。
なかでも、被めっき層への浸透性に優れ、ノジュールの発生がより抑制される点で、モノエタノールアミン類またはジエタノールアミン類が好ましく挙げられる。
【0079】
アルカリ水溶液中におけるアミノアルコールの含有量は使用される種類に応じて適宜選択されるが、アルカリ水溶液全量に対して、0.1〜50質量%であることが好ましく、1〜15質量%であることがより好ましい。
【0080】
アルカリ水溶液には、界面活性剤が含有される。該化合物が含まれることにより、アルカリ水溶液の浸透性が促進され、被めっき層の未硬化部分および被めっき層表面の硬化が不十分な成分の除去性が向上する。
使用される界面活性剤の種類は特に制限されないが、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
【0081】
より具体的には、アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルまたはアルケニルエーテル硫酸塩、アルキルまたはアルケニル硫酸塩、アルキルまたはアルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルまたはアルケニルリン酸エステルまたはその塩等が挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルまたはアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等が挙げられる。
カチオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルカチオン系界面活性剤、アミド型4級カチオン系界面活性剤、エステル型4級カチオン系界面活性剤等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシル型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等を挙げることができる。
【0082】
なかでも、界面活性剤の好適態様としては、ノジュールの発生がより抑制される点でノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0083】
アルカリ水溶液中における界面活性剤の含有量は使用される種類に応じて適宜選択されるが、アルカリ水溶液全量に対して、0.1〜10質量%であることが好ましく、1〜5質量%であることがより好ましい。
【0084】
アルカリ水溶液中における界面活性剤とアミノアルコールとの質量比(アミノアルコール含有量/界面活性剤含有量)は、ノジュールの発生がより抑制される点で、10/1〜1/5が好ましく、5/1〜1/1がより好ましい。
【0085】
アルカリ水溶液のpHは、10〜14である。上記範囲内であれば、ノジュール発生を抑制できる。なかでも、該効果がより優れる点で、pH12〜14がより好ましい。
【0086】
アルカリ水溶液に使用される溶媒は、通常、水が使用される。また、必要に応じて、有機溶媒(メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶媒、酢酸、ヒドロキシ酢酸、アミノカルボン酸などの酸、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、アセトニトリル、プロピロニトリルなどのニトリル系溶媒、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネート系溶媒、グリコール系溶媒など)を併用してもよい。
【0087】
アルカリ水溶液には無機塩基が含まれていてもよい。その種類は特に制限されず、例えば、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム)などが挙げられる。
無機塩基の含有量はpHが上記範囲になるような範囲に調整されることが好ましい。
【0088】
(工程の手順)
被めっき層と上記アルカリ水溶液との接触方法は特に制限されず、公知の方法を使用することができる。例えば、被めっき層を有する基板をアルカリ水溶液中に浸漬する方法や、アルカリ水溶液を被めっき層上に塗布する方法が挙げられる。
【0089】
被めっき層とアルカリ水溶液との接触時間は使用されるアルカリ溶液の種類によって適宜選択されるが、生産性およびノジュールの抑制性より、1〜60分が好ましく、2〜20分がより好ましい。
接触時のアルカリ水溶液の液温は特に制限されないが、未硬化部分の除去性、無電解めっき液で分解しやすい成分の除去性がより優れる点で、30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、60〜80℃がさらに好ましい。なお、60℃以上であると、得られる金属膜の面状がより優れる。
【0090】
なお、被めっき層形成工程において、パターン状に露光処理が行われた場合、該工程を実施することにより、硬化部分中の未反応ポリマーを除去すると共に、未露光部分の除去を行うことができる。
【0091】
<触媒付与工程>
触媒付与工程では、上記アルカリ水溶液接触工程で未硬化物が除去された被めっき層にめっき触媒またはその前駆体を付与する。
本工程においては、ポリマー由来のイオン性極性基がその機能に応じて、付与されためっき触媒またはその前駆体を付着(吸着)する。より具体的には、被めっき層中、および被めっき層表面上に、めっき触媒またはその前駆体が付与される。
ここで、めっき触媒またはその前駆体としては、後述するめっき工程における、めっき処理の触媒や電極として機能するものが挙げられる。そのため、めっき触媒またはその前駆体は、めっき工程におけるめっき処理の種類により決定されるが、無電解めっき触媒またはその前駆体であることが好ましい。
まず、本工程で使用される材料(無電解めっき触媒またはその前駆体など)について詳述し、その後該工程の手順について詳述する。
【0092】
(無電解めっき触媒)
本工程において用いられる無電解めっき触媒は、無電解めっき時の活性核となるものであれば、如何なるものも用いることができ、具体的には、自己触媒還元反応の触媒能を有する金属(Niよりイオン化傾向の低い無電解めっきできる金属として知られるもの)などが挙げられる。具体的には、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。中でも、触媒能の高さから、Ag、Pdが特に好ましい。
この無電解めっき触媒は、金属コロイドとして用いてもよい。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤または荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの荷電は、ここで使用される界面活性剤または保護剤により調節することができる。
【0093】
(無電解めっき触媒前駆体)
本工程において用いられる無電解めっき触媒前駆体とは、化学反応により無電解めっき触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には、上記無電解めっき触媒として挙げた金属の金属イオンが用いられる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解めっき触媒である0価金属になる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、被めっき層へ付与した後、無電解めっき浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解めっき触媒としてもよいし、無電解めっき触媒前駆体のまま無電解めっき浴に浸漬し、無電解めっき浴中の還元剤により金属(無電解めっき触媒)に変化させてもよい。
【0094】
無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、金属塩を用いて被めっき層に付与することが好ましい。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO3)n、MCln、M2/n(SO4)、M3/n(PO4)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数および触媒能の点で、Agイオン、Pdイオンが好ましい。
【0095】
本発明で用いられる無電解めっき触媒またはその前駆体の好ましい例の一つとして、パラジウム化合物が挙げられる。このパラジウム化合物は、めっき処理時に活性核となり金属を析出させる役割を果たす、めっき触媒(パラジウム)またはその前駆体(パラジウムイオン)として作用する。パラジウム化合物としては、パラジウムを含み、めっき処理の際に核として作用すれば、特に限定されないが、例えば、パラジウム(II)塩、パラジウム(0)錯体、パラジウムコロイドなどが挙げられる。
【0096】
また、無電解めっき触媒またはその前駆体としては、銀、または銀イオンが好ましい別の例として挙げられる。
銀イオンを用いる場合、以下に示すような銀化合物が解離したものを好適に用いることができる。銀化合物の具体例としては、硝酸銀、酢酸銀、硫酸銀、炭酸銀、シアン化銀、チオシアン酸銀、塩化銀、臭化銀、クロム酸銀、クロラニル酸銀、サリチル酸銀、ジエチルジチオカルバミン酸銀、ジエチルジチオカルバミド酸銀、p−トルエンスルホン酸銀が挙げられる。この中でも、水溶性の観点から硝酸銀が好ましい。
【0097】
(その他の触媒)
本発明において、被めっき層に対して無電解めっきを行わず直接電解めっきを行うために用いられる触媒としては、0価金属を使用することもできる。
【0098】
(めっき触媒液)
上記のように、めっき触媒またはその前駆体は、分散液や溶液(めっき触媒液)として被めっき層に付与されることが好ましい。
めっき触媒液の溶媒としては、有機溶媒や水が用いられる。有機溶媒を含有することで、被めっき層に対するめっき触媒またはその前駆体の浸透性が向上し、イオン性極性基に効率よくめっき触媒またはその前駆体を吸着させることができる。
【0099】
めっき触媒液に用いられる有機溶媒としては、被めっき層に浸透しうる溶媒であれば特に制限は無いが、具体的には、アセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、エチレングリコールジアセテート、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、アセトフェノン、2−(1−シクロヘキセニル)シクロヘキサノン、プロピレングリコールジアセテート、トリアセチン、ジエチレングリコールジアセテート、ジオキサン、N−メチルピロリドン、ジメチルカーボネート、ジメチルセロソルブなどを用いることができる。
【0100】
(工程の手順)
めっき触媒またはその前駆体を被めっき層に付与する方法は、特に制限されない。
例えば、めっき触媒液(金属を適当な分散媒に分散した分散液、または、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液)を調製し、めっき触媒液を被めっき層上に塗布する方法、または、めっき触媒液中に被めっき層が形成された基板を浸漬する方法などが挙げられる。
被めっき層とめっき触媒液の接触時間としては、30秒〜24時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
接触時のめっき触媒液の温度は、10〜60℃程度であることが好ましく、10〜30℃程度であることがより好ましい。
【0101】
被めっき層のめっき触媒またはその前駆体の吸着量に関しては、使用するめっき浴種、触媒金属種、被めっき層のイオン性極性基種、使用方法等により異なるが、めっきの析出性の観点から、5〜1000mg/m2が好ましく、10〜800mg/m2がより好ましく、特に20〜600mg/m2が好ましい。
【0102】
<めっき工程>
めっき工程は、触媒付与工程で得られためっき触媒またはその前駆体が吸着した被めっき層に対してめっき処理を行い、被めっき層上に金属膜を形成する工程である。より具体的には、図1(C)に示すように、本工程においては、金属膜14が、被めっき層12上に形成され、積層体16が得られる。
本工程において行われるめっき処理の種類は、無電解めっき、電解めっき等が挙げられ、上記工程において、被めっき層との間に相互作用を形成しためっき触媒またはその前駆体の機能によって、選択することができる。
なかでも、金属膜の密着性向上の点から、無電解めっきを行うことが好ましい。また、所望の膜厚の金属膜14を得るために、無電解めっきの後に、更に電解めっきを行うことがより好ましい態様である。
以下、本工程において好適に行われるめっきについて説明する。
【0103】
(無電解めっき)
無電解めっきとは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
本工程における無電解めっきは、例えば、無電解めっき触媒が付与された基板を、水洗して余分な無電解めっき触媒(金属)を除去した後、無電解めっき浴に浸漬して行う。使用される無電解めっき浴としては、公知の無電解めっき浴を使用することができる。なお、無電解めっき浴としては、入手のしやすさの点から、アルカリ性の無電解めっき浴(pHが9〜14程度が好ましい)を使用する場合が好ましい。
また、無電解めっき触媒前駆体が付与された基板を、無電解めっき触媒前駆体が被めっき層に吸着または含浸した状態で無電解めっき浴に浸漬する場合には、基板を水洗して余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解めっき浴中へ浸漬させる。この場合には、無電解めっき浴中において、めっき触媒前駆体の還元とこれに引き続き無電解めっきが行われる。ここで使用される無電解めっき浴としても、上記同様、公知の無電解めっき浴を使用することができる。
【0104】
なお、無電解めっき触媒前駆体の還元は、上記のような無電解めっき液を用いる態様とは別に、触媒活性化液(還元液)を準備し、無電解めっき前の別工程として行うことも可能である。触媒活性化液は、無電解めっき触媒前駆体(主に金属イオン)を0価金属に還元できる還元剤を溶解した液で、液全体に対する該還元剤の濃度が0.1〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましい。還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボランのようなホウ素系還元剤、ホルムアルデヒド、次亜リン酸などの還元剤を使用することが可能である。
浸漬の際には、無電解めっき触媒またはその前駆体が接触する被めっき層表面付近の無電解めっき触媒またはその前駆体の濃度を一定に保つ上で、攪拌または揺動を加えながら浸漬することが好ましい。
【0105】
一般的な無電解めっき浴の組成としては、例えば、溶剤(例えば、水)の他に、1.めっき用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このめっき浴には、これらに加えて、めっき浴の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
【0106】
めっき浴に用いられる有機溶媒としては、水に可能な溶媒である必要があり、その点から、アセトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類が好ましく用いられる。
【0107】
無電解めっき浴に用いられる金属の種類としては、例えば、銅、すず、鉛、ニッケル、金、銀、パラジウム、ロジウムが知られており、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物が選択される。
【0108】
このようにして形成される無電解めっきによる金属膜の膜厚は、めっき浴の金属イオン濃度、めっき浴への浸漬時間、または、めっき浴の温度などにより制御することができるが、導電性の観点からは、0.1μm以上であることが好ましく、0.2〜2μmであることがより好ましい。
ただし、無電解めっきによる金属膜を導通層として、後述する電解めっきを行う場合は、少なくとも0.1μm以上の膜が均一に付与されていることが好ましい。
また、めっき浴への浸漬時間としては、1分〜6時間程度であることが好ましく、1分〜3時間程度であることがより好ましい。
【0109】
(電解めっき(電気めっき))
本工程おいては、上記工程において付与されためっき触媒またはその前駆体が電極としての機能を有する場合、その触媒またはその前駆体が付与された被めっき層に対して、電解めっきを行うことができる。
また、前述の無電解めっきの後、形成された金属膜を電極とし、更に、電解めっきを行ってもよい。これにより基板との密着性に優れた無電解めっき膜をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつ金属膜を容易に形成することができる。このように、無電解めっきの後に、電解めっきを行うことで、金属膜を目的に応じた厚みに形成しうるため、金属膜を種々の応用に適用するのに好適である。
【0110】
電解めっきの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、電解めっきに用いられる金属としては、例えば、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
【0111】
また、電解めっきにより得られる金属膜の膜厚は、めっき浴中に含まれる金属濃度、または、電流密度などを調整することで制御することができる。
なお、一般的な電気配線などに適用する場合、金属膜の膜厚は、導電性の観点から、0.5μm以上であることが好ましく、1〜30μmがより好ましい。
【0112】
<積層体>
上記工程を経ることにより、図1(C)に示すように、基板10と、被めっき層12と、金属膜14とをこの順で備える積層体16(金属膜付き積層体)を得ることができる。
得られた積層体16は、様々な分野において使用することができ、例えば、電気・電子・通信、農林水産、鉱業、建設、食品、繊維、衣類、医療、石炭、石油、ゴム、皮革、自動車、精密機器、木材、建材、土木、家具、印刷、楽器等の幅広い産業分野に使用することができる。
より具体的には、プリンター、パソコン、ワープロ、キーボード、PDA(小型情報端末機)、電話機、複写機、ファクシミリ、ECR(電子式金銭登録機)、電卓、電子手帳、カード、ホルダー、文具等の事務機器、OA機器、洗濯機、冷蔵庫、掃除機、電子レンジ、照明器具、ゲーム機、アイロン、コタツ等の家電機器、TV、VTR、ビデオカメラ、ラジカセ、テープレコーダー、ミニディスク、CDプレーヤー、スピーカー、液晶ディスプレー等のAV機器、コネクター、リレー、コンデンサー、スイッチ、プリント基板、コイルボビン、半導体封止材料、LED封止材料、電線、ケーブル、トランス、偏向ヨーク、分電盤、半導体チップ、各種電気配線板、FPC、COF、TAB、2層CCL(Copper Clad Laminate)材料、電気配線用材料、多層配線基板、マザーボード、アンテナ、電磁波防止膜、時計等の電気・電子部品、および、通信機器等の用途に用いられる。
【0113】
特に、金属膜と被めっき層の界面における平滑性が改良されたことから、例えば、装飾品(めがねフレーム、自動車装飾品、宝飾品、遊戯筐体、洋食器、水道金具、照明器具等)や、高周伝送を確保する必要がある用途(例えば、配線基板用、プリント配線基板用)等の種々の用途に適用することができる。
【0114】
<任意工程:パターン形成工程>
必要に応じて、上記で得られた積層体に対して、金属膜をパターン状にエッチングして、パターン状金属膜を形成する工程を実施してもよい。
より具体的には、図1(D)に示すように、本工程においては、金属膜14の不要部を除去することにより、パターン状の金属膜18が、被めっき層12上に形成される。本工程において、基板表面全体に形成された金属膜の不要部分をエッチングで取り除くことで、所望のパターン状の金属膜を生成することができる。
このパターンの形成には、如何なる手法も使用することができ、具体的には一般的に知られているサブトラクティブ法(金属膜上にパターン状のマスクを設け、マスクの非形成領域をエッチング処理した後、マスクを除去して、パターン状の金属膜を形成する方法)、セミアディティブ法(金属膜上にパターン状のマスクを設け、マスクの非形成領域に金属膜を形成するようにめっき処理を行い、マスクを除去し、エッチング処理して、パターン状の金属膜を形成する方法)が用いられる。
【0115】
サブトラクティブ法とは、具体的には、形成された金属膜上にレジスト層を設けパターン露光、現像により金属膜パターン部と同じパターンを形成し、レジストパターンをマスクとしてエッチング処理にて金属膜を除去し、パターン状の金属膜を形成する方法である。
レジストとしては如何なる材料も使用でき、ネガ型、ポジ型、液状、フィルム状のものが使用できる。また、エッチング方法としては、プリント配線基板の製造時に使用されている方法が何れも使用可能であり、湿式エッチング、ドライエッチング等が使用可能であり、任意に選択すればよい。作業の操作上、湿式エッチングが装置などの簡便性の点で好ましい。エッチング液として、例えば、塩化第二銅、塩化第二鉄等の水溶液を使用することができる。
【0116】
より具体的に、図2にサブトラクティブ法を用いたエッチング工程の態様を示す。
まず、上記めっき工程を行うことにより、図2(A)に示す、基板10と、絶縁性樹脂層22と、被めっき層12と、金属膜14とを備える積層体を用意する。なお、図2(A)においては、基板10表面上およびその内部に、金属配線20を備えている。絶縁性樹脂層22、金属配線20は、必要に応じて追加される構成部材である。また、図2(A)においては、基板10の片面に金属膜14が設けられているが、両面にあってもよい。
次に、図2(B)に示すように、パターン状のマスク24を金属膜14上に設ける。
その後、図2(C)に示すように、マスクが設けられていない領域の金属膜14を、エッチング処理(例えば、ドライエッチング、ウェットエッチング)により除去して、パターン状の金属膜18を得る。最後に、マスク24を取り除き、本発明の積層体を得る(図2(D)参照)。
【0117】
セミアディティブ法とは、具体的には、形成された金属膜上にレジスト層を設け、パターン露光、現像により非金属膜パターン部と同じパターンを形成し、レジストパターンをマスクとして電解めっきを行い、レジストパターンを除去した後にクイックエッチングを実施し、金属膜をパターン状に除去することで、パターン状の金属膜を形成する方法である。
レジスト、エッチング液等はサブトラクティブ法と同様な材料が使用できる。また、電解めっき手法としては上記記載の手法が使用できる。
【0118】
より具体的に、図3にセミアディティブ法を用いたエッチング工程の態様を示す。
まず、図3(A)に示す、金属配線20を有する基板10と、絶縁性樹脂層22と、被めっき層12と、金属膜14とを備える積層体を用意する。
次に、図3(B)に示すように、パターン状のマスク24を金属膜14上に設ける。
次に、図3(C)に示すように、電解めっきを行い、マスク24が設けられていない領域に金属膜を形成させ、金属膜14bを得る。
その後、図3(D)に示すように、マスク24を取り除き、凸部と凹部を含む凹凸状の金属膜14bに対してエッチング処理(例えば、ドライエッチング、ウェットエッチング)を行い、凸部以外の凹部を除去し、図3(E)に示すようにパターン状の金属膜18を備える積層体を得る。
【0119】
なお、金属膜の除去と同時に、公知の手段(例えば、ドライエッチング)などによって、被めっき層を合わせて除去してもよい。
【0120】
上記で得られたパターン状金属膜を有する積層体は、各種用途に使用することができる。例えば、半導体チップ、各種電気配線板、FPC、COF、TAB、アンテナ、多層配線基板、マザーボード、等の様々な用途に適用することができる。なかでも、配線基板として好適に利用できる。また、配線基板と使用する際には、必要に応じて、積層体上に絶縁層を設けてもよい。
本発明の積層体と絶縁層とを含む配線基板は、平滑な基板との密着性に優れた配線が形成でき、高周波特性も良好であるとともに、微細な高密度配線であっても、配線間の絶縁信頼性に優れる。
絶縁層としては公知の材料を使用することができ、例えば、公知の層間絶縁膜、ソルダーレジスト層などが挙げられる。
【実施例】
【0121】
以下、実施例により、本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0122】
(合成例1:ポリマーA)
2Lの三口フラスコに酢酸エチル1L、2−アミノエタノール159gを入れ、氷浴にて冷却をした。そこへ、2−ブロモイソ酪酸ブロミド150gを内温20℃以下になるように調節して滴下した。その後、内温を室温(25℃)まで上昇させて2時間反応させた。反応終了後、蒸留水300mLを追加して反応を停止させた。その後、酢酸エチル層を蒸留水300mLで4回洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、さらに酢酸エチルを留去することで原料Aを80g得た。
次に、500mLの三口フラスコに、原料A47.4g、ピリジン22g、酢酸エチル150mLを入れて氷浴にて冷却した。そこへ、アクリル酸クロライド25gを内温20℃以下になるように調節して滴下した。その後、室温に上げて3時間反応させた。反応終了後、蒸留水300mLを追加し、反応を停止させた。その後、酢酸エチル層を蒸留水300mLで4回洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、さらに酢酸エチルを留去した。その後、カラムクロマトグラフィーにて、以下のモノマーM1を精製し20g得た。
【0123】
【化8】

【0124】
500mLの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド8gを入れ、窒素気流下65℃まで加熱した。そこへ、上記で得たモノマーM1:14.3g、アクリロニトリル(東京化成工業(株)製)3.0g、アクリル酸(東京化成製)6.5g、V−65(和光純薬製)0.4gのN,N−ジメチルアセトアミド8g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド41gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成製)0.09g、DBU54.8gを加え、室温で12時間反応を行った。その後、反応溶液に70質量%メタンスルホン酸水溶液54gを加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、ポリマーA(重量平均分子量5.3万)を12g得た。得られたポリマーAの酸価を、電位差自動滴定装置(京都電子工業(株)製)、及び滴定液として0.1M水酸化ナトリウム水溶液を用いて測定したところ、このポリマーAの酸価は3.9mmol/gであった。
【0125】
得られたポリマーAの同定をIR測定機((株)堀場製作所製)を用いて行った。測定はポリマーをアセトンに溶解させKBr結晶を用いて行った。IR測定の結果、2240cm-1付近にピークが観測されニトリルユニットであるアクリロニトリルがポリマーに導入されている事が分かった。また、酸価測定によりカルボン酸ユニットとしてアクリル酸が導入されている事が分かった。また、重DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させ、ブルカー製300MHzのNMR(AV−300)にて測定を行った。ニトリル基含有ユニットに相当するピークが2.5−0.7ppm(5H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニットに相当するピークが7.8−8.1ppm(1H分)、5.8−5.6ppm(1H分)、5.4−5.2ppm(1H分)、4.2−3.9ppm(2H分)、3.3−3.5ppm(2H分)、2.5−0.7ppm(6H分)にブロードに観察され、カルボン酸基ユニットに相当するピークが2.5−0.7ppm(3H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニット:ニトリル基含有ユニット:カルボン酸基ユニット=25:28:47(mol比)であることが分かった。
【0126】
【化9】

【0127】
(合成例2:ポリマーB)
1000mLの三口フラスコにアリルアミン塩酸塩60g、水90g、t−ブチルメチルエーテル225gを入れて氷浴にて冷却した。そこへ、トリエチルアミン143g、アクリル酸クロライド75gを内温20℃以下になるように調節して滴下した。その後、室温に上げて3時間反応させた。反応終了後、蒸留水300mL追加し反応を停止させた。その後、t−ブチルメチルエーテル層を蒸留水100mLで2回洗浄後、硫酸マグネシウム乾燥し、t−ブチルメチルエーテルを留去し、カラムクロマトグラフィーにてモノマーDを精製し60g得た。
【0128】
【化10】

【0129】
500mLの三口フラスコに、1−メトキシ−2−プロパノール140gを入れ、窒素気流下、70℃まで加熱した。そこへ、上記で得たモノマーD:9.0g、アクリル酸(東京化成製)5.84g、V−65(和光純薬製)1.20g、1−メトキシ−2−プロパノール140g溶液を、2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、更に2時間撹拌した。その後、室温まで反応溶液を冷却し、ヘキサン/酢酸エチルで再沈を行い、固形物を取り出し、以下の構造式のポリマーB(重量平均分子量1.2万)を5g得た。得られたポリマーBの酸価を、電位差自動滴定装置(京都電子工業(株)製)、及び、滴定液として0.1M水酸化ナトリウム水溶液を用いて測定したところ、このポリマーBの酸価は4.48mmol/gであった。
【0130】
【化11】

【0131】
得られたポリマーBをDMSOに溶解させ、IR測定機((株)堀場製作所製)にてKBr結晶を用いて測定を行った。IR測定の結果、2240cm-1付近にピークが観測されず、シアノ基がポリマーBに含まれていない事が分かった。また、酸価測定によりカルボン酸ユニットとしてアクリル酸が導入されている事が分かった。更に、重DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させ、ブルカー製300MHzのNMR(AV−300)にて測定を行った。重合性基含有ユニットに相当するピークが、5.9−5.7ppm(1H分)、5.2−5.0ppm(2H分)、3.8−3.7ppm(2H分)、2.5−0.7ppm(3H分)にブロードに観察され、カルボン酸基ユニットに相当するピークが2.5−0.7ppm(3H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニット:カルボン酸基ユニット=58:42(mol比)であることが分かった。
【0132】
(合成例3:ポリマーC)
500mLの三口フラスコに、ポリアクリル酸(和光純薬工業(株)製M.W=25,000)30g、4−ヒドロキシ−TEMPO(0.07g)、トリエチルベンジルクロライド(東京化成工業(株)製)1.0g、アリルグリシジルエーテル(東京化成工業(株)製)31.53g、1−メトキシ−2−プロパノール143gを入れ、100℃まで加熱し、12時間攪拌した。その後、室温まで反応溶液を冷却し、水で再沈を行い、固形物を取り出し、以下の構造式のポリマーC(重量平均分子量4.5万)を8g得た。得られたポリマーCの酸価を、電位差自動滴定装置(京都電子工業(株)製)、及び、滴定液として0.1M水酸化ナトリウム水溶液を用いて測定したところ、このポリマーCの酸価は4.31mmol/gであった。
【0133】
【化12】

【0134】
得られたポリマーCをアセトンに溶解させ、IR測定機((株)堀場製作所製)にてKBr結晶を用いて測定を行った。IR測定の結果、2240cm-1付近にピークが観測されず、シアノ基がポリマーCに含まれていない事が分かった。また、酸価測定によりカルボン酸ユニットとしてアクリル酸が導入されている事が分かった。更に、重DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させ、ブルカー製300MHzのNMR(AV−300)にて測定を行った。重合性基含有ユニットに相当するピークが5.9−5.7ppm(1H分)、5.3−5.2ppm(2H分)、4.1−3.9ppm(4H分)、3.8−3.7ppm(1H分)、3.4−3.3ppm(2H分)、2.5−0.7ppm(3H分)にブロードに観察され、カルボン酸基ユニットに相当するピークが2.5−0.7ppm(3H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニット:カルボン酸基ユニット=58:42(mol比)であることが分かった。
【0135】
(合成例4:比較ポリマー1)
500mLの三口フラスコに、1−メトキシ−2−プロパノール28.7gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、アクリロニトリル(東京化成工業(株)製):5.9g、アクリル酸(東京化成工業(株)製)18.7g、V−65(和光純薬工業(株)製)0.74gの1−メトキシ−2−プロパノール28.7g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、1−メトキシ−2−プロパノール41gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。上記の反応溶液に、4−ヒドロキシ−TEMPO0.06g、トリエチルベンジルクロライド(東京化成工業(株)製)1.7g、グリシジルメタクリレート(東京化成工業(株)製)8.16gを加え、95℃に加熱し4時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルで再沈を行い、固形物を取り出し、比較ポリマー1(重量平均分子量2.7万)を21g得た。得られた比較ポリマー1の酸価を、合成例1と同様の手法で測定したところ、この比較ポリマー1の酸価は5.4mmol/gであった。
【0136】
【化13】

【0137】
<実施例1>
[下地絶縁基板の作製]
ガラスエポキシ基板(商品名:FR−4、松下電工(株)製)上に、味の素ファインテクノ(株)製のエポキシ系絶縁膜(GX−13、45μm)を、0.2MPaの圧力で100〜110℃の条件で、真空ラミネーターを用いて加熱および加圧して接着することにより、電気的絶縁層を基板上に形成した。その後、170℃で1時間加熱処理を行い、該電気的絶縁層の熱層化を行い、基板A1を得た。
【0138】
[被めっき層形成]
次に、後述する被めっき層形成用組成物を、厚さ1.0μmになるように基板A1上にスピンコート法で塗布し、その後、80〜120℃で乾燥した。
次に、基板A1上の被めっき層形成用組成物層に対して、露光機(紫外線照射装置、UVX−02516S1LP01、ウシオ電機(株)製)を用いて、波長254nmの紫外光を室温で2分間全面露光した(エネルギー量:5J)。全面露光後、不要な被めっき層形成用組成物を除去するために、以下の組成のアルカリ水溶液A(液温:60℃、pH:13.6)中に被めっき層付き基板を5分間浸漬して、被めっき層の未硬化部分を洗浄除去した。
これにより、基板A1と被めっき層(洗浄後の厚み:0.6μm)を有する基板A2を得た。
【0139】
(被めっき層形成用組成物)
・ポリマーA 3.1g
・重曹 2.0g
・水 24.6g
・1−メトキシ−2−プロパノール 12.3g
【0140】
(アルカリ水溶液A)
・2−アミノエタノール 3g
・ポリ(オキシエチレン)オクチルフェニルエーテル 2g
(和光純薬社製)
・水酸化ナトリウム 2g
・水 93g
【0141】
[めっき触媒付与]
基板A2を、硝酸パラジウム0.1質量%の水溶液に10分間浸漬し、その後蒸留水で洗浄した。このときのパラジウムイオンの吸着量をICP発光分析装置((株)島津製作所製)にて測定した所、0.10g/m2であった。
【0142】
[無電解めっき処理]
めっき触媒(金属塩)付与後の基板A2を、以下組成の無電解めっき浴(アルカリ性:pH12.5)に6時間浸漬し、厚み0.4μmの無電解銅めっき層を形成した。
【0143】
(無電解めっき浴成分)
・硫酸銅 0.35g
・酒石酸NaK 1.75g
・水酸化ナトリウム 0.75g
・ホルムアルデヒド 0.25g
・水 47.8g
【0144】
[電解めっき処理]
無電解銅めっき層が形成された基板を、以下組成の電解銅めっき浴に浸漬し、電流密度3A/dm2のもと約20分間、電解めっきを行った。電解めっき後の銅めっき層(金属膜)の厚みは、約18μmであった。
【0145】
(電解めっき浴成分)
・硫酸銅 38g
・硫酸 95g
・塩酸 1mL
・カバーグリームPCM(メルテックス(株)製) 3.5mL
・水 500g
【0146】
[パターン形成工程]
電解めっき後の基板に対して、170℃で1時間の加熱処理を行った後、該基板表面にドライレジストフィルム(日立化成(株)製のRY3315、膜厚30μm)をラミネートした。次に、ドライレジストフィルムがラミネートされた基板に、サブトラクティブ法にてL/S=50μm/50μmの櫛形パターンが形成できるガラスマスクを密着させ、レジストの感光領域を露光した。露光後、NaHCO3水溶液を2kg/m2のスプレー圧で付与して、現像処理を行った。その後、基板を水洗・乾燥し、銅めっき層上にレジストパターンを形成した。
【0147】
レジストパターンを形成した基板を、FeCl2/HCl水溶液(温度37℃)に浸漬することにより金属膜のエッチングを行い、レジストパターンの非形成領域に存在する銅めっきを除去した。その後、NaOH4質量%水溶液を50℃、2kg/m2のスプレー圧で2分付与しレジストパターンを剥離し、パターン状の金属膜を得た。
【0148】
[ソルダーレジストの貼り付け]
パターン状金属膜を有する積層体に対して、ソルダーレジスト(PFR800;太陽インキ製造(株)製)を110℃、0.2MPaの条件で真空ラミネートし、中心波長365nmの露光機にて420mJの光エネルギーを照射した。
次いで、基板を80℃/10分間の加熱処理を施した後、NaHCO3:10%水溶液を、スプレー圧2kg/m2で基板表面に付与することで現像し、乾燥した。その後、再度、中心波長365nmの露光機にて1000mJの光エネルギーを、基板に対して照射した。最後に150℃/1hrの加熱処理を行ない、ソルダーレジストで被覆された配線基板を得た。
【0149】
<実施例2>
アルカリ水溶液の液温45℃に変え、被めっき層の未硬化部分を洗浄除去した以外は、実施例1と同様の手順に従って、配線基板を得た。
【0150】
<実施例3,4,5>
アルコールアミンおよび界面活性剤の種類を表1の記載に従って変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、配線基板を得た。なお、使用した界面活性剤は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(花王株式会社製、エマルゲン PP−290)、ラウリル酸ナトリウム(和光純薬社製)であった。
【0151】
<実施例6>
[被めっき層形成]で使用したアルカリ水溶液Aを30%HCl水溶液でpH=10.0に調整したアルカリ水溶液Bを使用した以外は、実施例1と同様の手順に従って、配線基板を得た。
【0152】
<実施例7>
アルカリ水溶液Aの代わりに、以下の組成のアルカリ水溶液C(pH:13.6)を用いた以外は実施例1と同様の手順に従って、配線基板を得た。
(アルカリ水溶液C)
・2−アミノエタノール 3g
・ポリ(オキシエチレン)オクチルフェニルエーテル 8g
(和光純薬社製)
・水酸化ナトリウム 2g
・水 87g
【0153】
<実施例8>
[被めっき層形成]で使用した被めっき層形成用組成物中のポリマーAをポリマーBに置き換え、アルカリ水溶液中のポリ(オキシエチレン)オクチルフェニルエーテルをソルビタンモノステアレート(花王株式会社製、レオドール AS−10V)に置き換えた以外は、実施例1と同様の手順に従って、配線基板を得た。
【0154】
<実施例9>
[被めっき層形成]で使用した被めっき層形成用組成物中のポリマーAをポリマーCに置き換えた以外は、実施例1と同様の手順に従って、配線基板を得た。
【0155】
<比較例1>
[被めっき層形成]で使用したアルカリ水溶液Aの代わりに、以下のアルカリ水溶液D(pH:11.6)を使用した以外は、実施例1と同様の手順に従って、配線基板を得た
【0156】
(アルカリ水溶液D)
・炭酸ナトリウム 1g
・水 99g
【0157】
<比較例2>
[被めっき層形成]で使用したアルカリ水溶液Aの代わりに、アルカリ水溶液E(pH:13.6)を使用した以外は、実施例1と同様の手順に従って、配線基板を得た。なお、アルカリ水溶液Eには、界面活性剤が含まれていない。
【0158】
(アルカリ水溶液E)
・2−アミノエタノール 3g
・水酸化ナトリウム 2g
・水 95g
【0159】
<比較例3>
[被めっき層形成]で使用したアルカリ水溶液Aの代わりに、アルカリ水溶液F(pH:13.6)を使用した以外は、実施例1と同様の手順に従って、配線基板を得た。なお、アルカリ水溶液Fには、アミノアルコールが含まれていない。
【0160】
(アルカリ水溶液F)
・ポリ(オキシエチレン)オクチルフェニルエーテル 2g
・水酸化ナトリウム 2g
・水 96g
【0161】
<比較例4>
[被めっき層形成]で使用したアルカリ水溶液Aに30%HCl水溶液を加え、pH=9.0に調整したアルカリ水溶液Gを使用した以外は、実施例1と同様の手順に従って、配線基板を得た。
【0162】
<比較例5>
[被めっき層形成]で使用した被めっき層形成用組成物中のポリマーAを比較ポリマー1に置き換えた以外は、実施例1と同様の手順に従って、配線基板を得た。
【0163】
<面状評価>
各実施例および比較例において、上記[無電解めっき処理]後に得られる金属膜を有する積層体を20枚用意し、その金属膜(めっき膜)の面状を走査型電子顕微鏡(倍率:10000倍)で1枚につき任意の位置で5視野ずつ観察し、発生したコブ状や半球凸状のノジュールの個数を観察した(合計100視野)。観察した視野内に長径1.0μm以上のコブ状や半球凸状のノジュールがある場合は不良と判定し、不良率(%){(不良と判断された視野数/100)×100}を算出した。以下の基準に従って、評価した。結果を表1にまとめて示す。実用上、「A」「B」であることが好ましい。
「A」:不良率が0%以上10%未満のもの
「B」:不良率が10%以上20%未満のもの
「C」:不良率が20%以上30%未満のもの
「D」:不良率が30%以上のもの
【0164】
表1中、pHは使用したアルカリ水溶液のpHを意味する。
【0165】
【表1】

【0166】
表1に示されるように、実施例1〜9においては、得られる積層体中の金属膜の面状に優れていた。
特に、実施例1と2との比較より、使用するアルカリ水溶液の温度が60℃以上の場合、金属膜の面状がより優れることが確認された。
また、実施例1と3との比較より、使用するアルコールアミンとしてモノエタノールアミンを使用すると、金属膜の面状がより優れることが確認された。
また、実施例1と5との比較より、界面活性剤としてノニオン系界面活性剤を使用する場合、金属膜の面状がより優れることが確認された。ノニオン系界面活性剤以外は、被めっき層に吸着されやすく、めっき液中に流出しやすいためと推測される。
また、実施例1と6との比較より、アルカリ水溶液のpHがより高い(特に、pH12以上)場合、金属膜の面状がより優れることが確認された。
さらに、実施例1と7との比較より、界面活性剤の含有量が1〜5質量%の範囲にあるほうが、金属膜の面状がより優れることが確認された。界面活性剤の量が多すぎると、めっき液中への流出が増えるためと推測される。
【0167】
一方、比較例1〜3に示すように、アルカリ水溶液中にアルコールアミンまたは界面活性剤が含まれない場合は、所望の効果が得られなかった。
また、比較例4に示すように、アルカリ水溶液のpHが所定範囲内でないと、所望の効果が得られなかった。
さらに、比較例5に示すように、所定の官能基を有さないポリマーを使用すると、アルカリ水溶液との接触後に被めっき層の膜減りが大きく、得られる金属膜の面状も劣っていた。
【符号の説明】
【0168】
10:基板
12:被めっき層
14、14b:金属膜
16:積層体
18:パターン状金属膜
20:金属配線
22:絶縁性樹脂層
24:マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(X)で表される基および(メタ)アクリルアミド基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基とイオン性極性基とを有するポリマーを含む被めっき層形成用組成物を基板上に接触させた後、前記基板上の前記被めっき層形成用組成物に対してエネルギーを付与して、前記基板上に被めっき層を形成する被めっき層形成工程と、
アミノアルコールおよび界面活性剤を含む、pH10〜14のアルカリ水溶液と前記被めっき層とを接触させるアルカリ水溶液接触工程と、
前記アルカリ水溶液接触工程後に前記被めっき層にめっき触媒またはその前駆体を付与する触媒付与工程と、
前記めっき触媒またはその前駆体が付与された被めっき層に対してめっき処理を行い、前記被めっき層上に金属膜を形成するめっき工程と、を備える金属膜を有する積層体の製造方法。
【化1】


(式(X)中、R12〜R16は、それぞれ独立に、水素原子、または、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記アルカリ水溶液の液温が60℃以上である、請求項1に記載の金属膜を有する積層体の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法より得られる、金属膜を有する積層体。
【請求項4】
請求項3に記載の積層体中の金属膜をパターン状にエッチングして、パターン状金属膜を形成する工程を備える、パターン状金属膜を有する積層体の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の製造方法より得られる、パターン状金属膜を有する積層体。
【請求項6】
請求項5に記載のパターン状金属膜を有する積層体と、前記パターン状金属膜を有する積層体上に設けられる絶縁層とを備える配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−214889(P2012−214889A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−73386(P2012−73386)
【出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】