説明

金属表面の防食処理方法

自己接着性接着テープが金属表面上に施与され、その自己接着性接着テープが接着剤を含む少なくとも一つの層を備え、その接着剤が金属表面上で溶融するようにその層が加熱されることによって防食層が形成されることを特徴とする、金属表面の、特に金属部材の端縁および形状移行部における防食処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分の特徴を有する金属表面の防食処理方法、および金属表面の防食処理のための自己接着性接着剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材は、多様な分野で使用される。その際、それらは様々な天候条件に曝されるので、多くの場合に防食処理が必要となる。これについて、特に金属部材上に防食層を全面に被着するための種々の方法が知られている。例えば独国特許第102006006910号B3(特許文献1)は、保護すべき金属表面上に亜鉛ラメラコーティングの形で防食層を施与する方法を開示している。亜鉛ラメラコーティングの施与は、浸漬法または噴霧法によって行われる。従来技術から公知のさらなる一方法では、陰極析出型電着塗料中に金属表面を浸漬することによって防食処理が行われる(独国特許第102005059314号A1)(特許文献2)。前記の両方法に共通しているのは、防食層が、処理すべき金属表面の比較的広い面、特に全面に施与されることである。
【0003】
しかしながら、特に自動車工業では、小さな面、すなわち金属部材の端縁および形状移行部の表面も、防食層によって腐食を防止する必要がある。このために、通例、微細シームシーラントを手作業でまたはロボットによって塗布する。微細シーム用の材料として、通常はポンプ輸送可能なPVCが使用される。これを金属表面に局所的に噴霧し、続いてブラシで滑らかに塗り広げる。原則的に端縁および形状移行部に適したこの方法では、車両の製造に必要な光学的品質で微細シームを仕上げることが困難である。むしろ表面は粗いままであることが多く、不均一な塗着を肉眼で認識することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許第102006006910号B3
【特許文献2】独国特許第102005059314号A1
【特許文献3】米国特許第4,581,429号A
【特許文献4】国際公開第98/13392号A1
【特許文献5】欧州特許第735052号A1
【特許文献6】国際公開第96/24620号A1
【特許文献7】国際公開第98/44008号A1
【特許文献8】独国特許第19949352号A1
【特許文献9】欧州特許第0824111号A1
【特許文献10】欧州特許第826698号A1
【特許文献11】欧州特許第824110号A1
【特許文献12】欧州特許第841346号A1
【特許文献13】欧州特許第850957号A1
【特許文献14】米国特許第5,945,491号A
【特許文献15】米国特許第5,854,364号A
【特許文献16】米国特許第5,789,487号A
【特許文献17】国際公開第98/01478号A1
【特許文献18】国際公開第99/31144号A1
【特許文献19】欧州特許第1001893号B1
【特許文献20】欧州特許第13734425号B1
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Donatas Satas、「Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology」(van Nostrand、New York 1989)
【非特許文献2】T. G. Fox、Bull. Am. Phys. Soc. 1956、1、123
【非特許文献3】Houben-Weyl、Methoden der Organischen Chemie、E 19a巻、60〜147ページ
【非特許文献4】Hawker、Beitrag zur Hauptversammlung der American Chemical Society、Fruehjahr 1997
【非特許文献5】Husemann、Beitrag zum IUPAC World-Polymer Meeting 1998、Gold Coast
【非特許文献6】Macromolecules 1995、28、7886
【非特許文献7】Macromolecules 2000、33、243〜245
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、多額の費用をかけずに実施可能な、そして特に金属部材の端縁および形状移行部の保護にも使用することができる、金属表面の防食処理方法を提供するという課題に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、請求項1の前提部分の特徴を有する金属表面の防食処理方法において、請求項1の特徴部分の特徴によって解決される。請求項18に示された特徴を有する、少なくとも一つの層を有する自己接着性接着テープの使用は、同等の解決策を提供する。有利な形態および発展形態は、それぞれの従属請求項の対象である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明によれば、第一に、自己接着性接着テープが、相当する処理の際に金属表面上に良好な防食層を形成し、したがって防食処理に適することが見出された。さらに実験の際に、適切な自己接着性接着テープを用いて滑らかな表面が形成できることを示すことができた。そのような滑らかな表面は、観察者にとって肉眼で均一な表面構造を有し、そのうえ平らである。金属表面に防食層を形成するための自己接着性接着テープの使用は、取扱いが簡単なので特に有利である。自己接着作用に基づき、接着テープを表面上に特に簡単に施与し、さらなる工程段階の前にそこで予備固定することができる。そのような接着テープは、特に小さな面に使用するのに適している。
【0009】
本発明による方法では、自己接着性接着テープを各金属表面上に施与し、続いて加熱する。この自己接着性接着テープは、少なくとも一つの本発明による層を含み、その層は加熱によって溶融し、すなわち加熱の際に金属表面上に広がり、それによって閉じた防食層を形成する。これは最終的に防食層を形成する自己接着性接着テープであるので、特に種々の金属部材の間の端縁および形状移行部にも、非常に簡単に施着することができる。接着テープの接着力により、加熱によって防食層が形成される前に予備固定することが可能になる。さらに、自己接着性接着テープは、小さな面にも均一に施与することができ、これは、例えば塗料の噴霧のような従来の方法では、困難を伴って、そして一時的な保護フィルムなどのさらなる補助材料を用いてのみ、可能である。
【0010】
特に、適切な自己接着性接着テープを選択した場合、実質的に滑らかな表面を有する防食層が形成されること、すなわち観察者にとって防食層の表面が均一で平らに形成されることが示された。
【0011】
この自己接着性接着テープは、それ自体自己接着性および/または熱融着性の層であり、したがって防食層の形成に適している、ポリアクリレートおよび/ポリメタクリレートをベースとする本発明による少なくとも一つの層を含む。
【0012】
さらなる好ましい一変形形態では、ポリアクリレート(ポリメタクリレート)ベースの熱融着性感圧接着剤が使用される。この熱融着性接着剤は、有利には、ポリマーに対する重量%で表して、
(a1)式
CH=C(R1)(COOR2)
[式中、R1は、Hおよび/またはCHを表し、R2は、Hおよび/または1〜30個のC原子を有するアルキル鎖を表す]
の、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルおよび/またはそれらの遊離酸70〜100重量%と、
(a2)官能基を有するオレフィン不飽和性モノマー0〜30重量%と
を含むポリマーを含有する。
【0013】
モノマー(a1)としては、1〜14個のC原子からなるアルキル基を有するアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルを含めたアクリルモノマーを使用することが好ましい。この列挙によって限定したいわけではないが、具体例として、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、n−ヘプチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルアクリレート、およびその分岐異性体、例えば2−エチルヘキシルアクリレートがある。同じく(a1)に少量追加することができる、使用すべきさらなる化合物クラスは、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレートおよびイソボルニルメタクリレートである。
【0014】
(a2)としては、その後の接着剤の熱架橋および/またはUV架橋および/または電子線架橋をサポートする、次の一般式
【0015】
【化1】


[式中、Rは、Hおよび/またはCHを表し、基−ORは、官能基を表すかまたは含む]に対応するアクリルモノマーが好ましい。
【0016】
成分(a2)の特に好ましい例は、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、アリルアルコール、無水マレイン酸、無水イタコン酸、イタコン酸、アクリルアミドおよびグリシジルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、t−ブチルフェニルアクリレート、t−ブチルフェニルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、シアノエチルメタクリレート、シアノエチルアクリレート、グリセリルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−(ブトキシメチル)メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−(エトキシメチル)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ビニル酢酸、テトラヒドロフルフリルアクリレート、β−アクリロイルオキシプロピオン酸、トリクロロアクリル酸、フマル酸、クロトン酸、アコニット酸、ジメチルアクリレートであるが、この列挙は網羅的ではない。
【0017】
同様に、成分(a2)として、芳香核が好ましくはC4〜C18基本単位からなり、ヘテロ原子も含んでもよい芳香族ビニル化合物を使用することが好ましい。特に好ましい例は、スチレン、4−ビニルピリジン、N−ビニルフタルイミド、メチルスチレン、3,4−ジメトキシスチレン、安息香酸4−ビニルであるが、この列挙は網羅的ではない。
【0018】
重合のために、結果として生じるポリマーを熱融着性感圧接着剤として使用できるようなモノマー、特に結果として生じるポリマーが、Donatas Satas、「Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology」(van Nostrand、New York 1989)(非特許文献1)に従う感圧接着特性を有するようなモノマーが選択される。この使用に関して、結果として生じるポリマーの静的ガラス転移温度は、有利には30℃よりも高い。
【0019】
G,A≧30℃というポリマーのガラス転移温度TG,Aを達成するには、前記に従って、ポリマーに対する所望のTG,A値がFox式(数1)(T. G. Fox、Bull. Am. Phys. Soc. 1956、1、123(非特許文献2)参照)に従って得られるようにモノマーを選び、有利にはモノマー混合物の量的組成を選択することが非常に好ましい。
【0020】
【数1】

【0021】
式中、nは、使用するモノマーの通し番号であり、Wは、各モノマーnの質量部(重量%)であり、TG,nは、各モノマーnからなるホモポリマーのそれぞれのガラス転移温度(K)を表す。
【0022】
このようなポリアクリレート感圧接着剤の様々な製造方法(重合方法)を以下に説明する。
【0023】
コーティングの前に熱融着性ポリマーをコロナ放電またはプラズマで処理すると、そのポリマーの固定(Verankerung)にとって有利となることがある。大気圧プラズマ処理には、例えばPlasmatreat社の機器が適している。
【0024】
さらに、例えばプライマーの上に化学的固定を行うと、このプロセスにとって、またその層をさらなる可能な層に、またはポリエステル、ポリアミド、ポリメタクリレート、PVCなどをベースとするフィルムに固定するのに有利となることがある。
【0025】
ポリマーに関して、ポリマーに対する重量%で表して、
(b1)式
CH2=CH(R3)(COOR4)
[式中、R3は、Hおよび/またはCHを示し、R4は、Hおよび/または1〜30個のC原子を有するアルキル鎖を示す]のアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルおよび/またはそれらの遊離酸70〜100重量%と、
(b2)官能基を有するオレフィン不飽和モノマー0〜30重量%と
を含むポリマーを含有するポリアクリレート感圧接着剤を使用することが特に好ましい。
【0026】
モノマー(b1)として、4〜14個のC原子、好ましくは4〜9個のC原子からなるアルキル基を有するアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルを含めたアクリルモノマーを使用することが好ましい。この列挙によって限定を意図するわけではないが、具体例は、n−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘプチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、およびその分岐異性体、例えば2−エチルヘキシルアクリレートである。同じく(b1)に少量追加することができる、使用すべきさらなる化合物のクラスは、メチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレートおよびイソボルニルメタクリレートである。
【0027】
モノマー(b2)として、ビニルエステル、ビニルエーテル、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、α位に芳香環および複素環を有するビニル化合物を使用することが特に好ましい。ここでも非限定的な例をいくつか挙げると、酢酸ビニル、ビニルホルムアミド、ビニルピリジン、エチルビニルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデンおよびアクリロニトリルがある。モノマー(b2)として、以下の官能基、すなわちヒドロキシ−、カルボキシ−、エポキシ−、酸アミド−、イソシアナト−またはアミノ基を有するモノマーを使用することが特に好ましい。
【0028】
有利な一変形形態では、(b2)として、その後の接着剤の熱架橋および/またはUV架橋および/または電子線架橋を可能にする、以下の一般式
【0029】
【化2】


[式中、Rは、HまたはCHを表し、基−ORは官能基を表しまたは含む]のアクリルモノマーを使用する。
【0030】
成分b2)の特に好ましい例は、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、アリルアルコール、無水マレイン酸、無水イタコン酸、イタコン酸、アクリルアミド、およびグリシジルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、t−ブチルフェニルアクリレート、t−ブチルフェニルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、シアノエチルメタクリレート、シアノエチルアクリレート、グリセリルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−(ブトキシメチル)メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−(エトキシメチル)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ビニル酢酸、テトラヒドロフルフリルアクリレート、β−アクリロイルオキシプロピオン酸、トリクロロアクリレート、フマル酸、クロトン酸、アコニット酸、ジメチルアクリレートであるが、この列挙は網羅的ではない。
【0031】
さらなる好ましい一変形形態では、成分(b2)として、好ましくは芳香核がC4〜C18からなり、ヘテロ原子も有してもよい、芳香族ビニル化合物が使用される。特に好ましい例は、スチレン、4−ビニルピリジン、N−ビニルフタルイミド、メチルスチレン、3,4−ジメトキシスチレン、安息香酸4−ビニルであるが、この列挙は網羅的ではない。
【0032】
この場合も、重合のために、結果として生じたポリマーが工業的に使用可能な感圧接着剤として使用できるような、特に、結果として生じたポリマーがDonatas Satas、「Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology」(van Nostrand、New York 1989)(非特許文献1)に従う感圧接着特性を有するようなモノマーを選択する。ここでも、重合の基礎となるモノマー混合物の組成を定める際にFox式(数1)を使用することによって、所望のガラス転移温度の制御を達成することができる。層Bの感圧接着剤において、結果として生じたポリマーの静的ガラス転移温度は、好ましくは15℃未満である。
【0033】
ポリアクリレート感圧接着剤を製造するために、従来のラジカル重合または制御ラジカル重合を実施するのが有利である。ラジカルによって進行する重合の場合、追加的にさらなる重合用ラジカル開始剤、特に熱分解性のラジカル形成性アゾまたはペルオキソ開始剤を含有する開始剤系を使用することが好ましい。ただし原則的には、当業者が熟知しているアクリレート用の全ての通常の開始剤が適している。C−中心ラジカルの製造は、Houben-Weyl、Methoden der Organischen Chemie、E 19a巻、60〜147ページ(非特許文献3)に記載されている。これらの方法は、好ましい方式で同様に使用される。
【0034】
ラジカル源の例は、ペルオキシド、ヒドロペルオキシドおよびアゾ化合物である。典型的なラジカル開始剤のいくつかの非限定的な例として、ペルオキソ二硫酸カリウム、ジベンゾイルペルオキシド、クモールヒドロペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、アゾジイソ酸ブチロニトリル(Azoduesosaeurebutyronitril)、アセチルシクロヘキシルスルホニルペルオキシド、過炭酸ジイソプロピル、過オクタン酸tert−ブチル、ベンズピナコールをここで挙げておく。ラジカル開始剤として1,1’−アゾ−ビス−(シクロヘキサンカルボニトリル)(Vazo88(登録商標)、DuPont社)を使用することが特に好ましい。
【0035】
ラジカル重合の際に生成する感圧接着剤の平均分子量Mは、20,000〜2,000,000g/molの範囲になるように選択することが非常に好ましく、特に融着性感圧接着剤としてさらに使用するためには、平均分子量Mが100,000〜500,000g/molの感圧接着剤を製造する。平均分子量の決定は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)またはマトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析法(MALDI−MS)によって行う。
【0036】
重合は、塊状で、1種もしくは複数種の有機溶媒の存在下で、水の存在下で、または有機溶媒と水の混合物中で実施することができる。その際、使用する溶媒の量を可能な限り少なく保つように努める。適切な有機溶媒は、純粋なアルカン(例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン)、芳香族炭化水素(例えばベンゼン、トルエン、キシレン)、エステル(例えば酢酸エチルエステル、酢酸プロピル−、酢酸ブチル−または酢酸ヘキシルエステル)、ハロゲン化炭化水素(例えばクロロベンゼン)、アルカノール(例えばメタノール、エタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル)およびエーテル(例えばジエチルエーテル、ジブチルエーテル)またはその混合物である。モノマーの反応中に反応混合物が均一相の形で存在することを保証するために、水と混合可能な共溶媒または親水性の共溶媒を水系重合反応物に添加することができる。本発明のために有利に使用可能な共溶媒は、脂肪族アルコール、グリコール、エーテル、グリコールエーテル、ピロリジン、N−アルキルピロリジノン、N−アルキルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アミド、カルボン酸およびその塩、エステル、有機スルフィド、スルホキシド、スルホン、アルコール誘導体、ヒドロキシエーテル誘導体、アミノアルコール、ケトンなど、ならびにそれらの誘導体および混合物からなる群から選択される。
【0037】
重合時間は、反応および温度に応じて4〜72時間である。選択できる反応温度が高いほど、すなわち反応混合物の熱安定性が高いほど、より短い反応時間を選択することができる。
【0038】
熱分解性開始剤では、重合開始のために熱の投入が不可欠である。熱分解性開始剤の場合、開始剤の種類に応じて50〜160℃に加熱することによって、重合を開始することができる。
【0039】
ラジカル安定化のために、適切な手順においては、例えば2,2,5,5−テトラメチル−1−ピロリジニルオキシ(PROXYL)、3−カルバモイル−PROXYL、2,2−ジメチル−4,5−シクロヘキシル−PROXYL、3−オキソ−PROXYL、3−ヒドロキシルイミン−PROXYL、3−アミノメチル−PROXYL、3−メトキシ−PROXYL、3−t−ブチル−PROXYL、3,4−ジ−t−ブチル−PROXYL−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシルピロリジニルオキシル(TEMPO)、4−ベンゾイルオキシ−TEMPO、4−メトキシ−TEMPO、4−クロロ−TEMPO、4−ヒドロキシ−TEMPO、4−オキソ−TEMPO、4−アミノ−TEMPO、2,2,6,6−テトラエチル−1−ピペリジニルオキシル、2,2,6−トリメチル−6−エチル−1−ピペリジニルオキシル、N−tert−ブチル−1−フェニル−2−メチルプロピルニトロキシド、N−tert−ブチル−1−(2−ナフチル)−2−メチルプロピルニトロキシド、N−tert−ブチル−1−ジエチルホスホノ−2,2−ジメチルプロピルニトロキシド、N−tert−ブチル−1−ジベンジルホスホノ−2,2−ジメチルプロピルニトロキシド、N−(1−フェニル−2−メチルプロピル)−1−ジエチルホスホノ−1−メチルエチルニトロキシド、ジ−t−ブチルニトロキシド、ジフェニルニトロキシド、t−ブチル−t−アミルニトロキシドのようなニトロキシドが使用される。
【0040】
代替の手順において接着剤を製造することができるさらなる一連の重合方法は、従来技術から選択することができる。米国特許第4,581,429号A(特許文献3)は、開始剤として式R’R’’N−O−Y[式中、Yは、不飽和モノマーを重合することができるフリーラジカル種である]の化合物を使用する、制御ラジカル重合法を開示している。この反応は、全般に低い転換率を示す。特に問題なのは、非常に低すぎる収量およびモル質量しかもたらさないアクリレートの重合である。国際公開第98/13392号A1(特許文献4)は、対称性の置換パターンを示す開鎖アルコキシアミン化合物を記載している。欧州特許第735052号A1(特許文献5)は、狭いモル質量分布を有する熱可塑性エラストマーの製造方法を開示している。国際公開第96/24620号A1(特許文献6)は、例えばイミダゾリジンをベースとするリン含有ニトロキシドのような非常に特別なラジカル化合物を使用する重合方法を記載している。国際公開第98/44008号A1(特許文献7)は、モルホリン、ピペラジノンおよびピペラジンジオンをベースとする特別なニトロキシルを開示している。独国特許第19949352号A1(特許文献8)は、制御ラジカル重合における調節剤としての複素環式アルコキシアミンを記載している。アルコキシアミンまたは対応する遊離ニトロキシドの適切なさらなる発展形態は、ポリアクリレートの製造効率を改善する(Hawker、Beitrag zur Hauptversammlung der American Chemical Society、Fruehjahr 1997(非特許文献4);Husemann、Beitrag zum IUPAC World-Polymer Meeting 1998、Gold Coast(非特許文献5))。
【0041】
さらなる制御重合法として、原子移動ラジカル重合(ATRP)がブロックコポリマーの合成に有利に使用できるが、この方法では、開始剤として好ましくは一官能性または二官能性の第2級または第3級ハロゲン化物が使用され、ハロゲン化物の引抜きのためにCu−、Ni−、Fe−、Pd−、Pt−、Ru−、Os−、Rh−、Co−、Ir−、Ag−またはAu−錯体(欧州特許第0824111号A1(特許文献9);欧州特許第826698A1(特許文献10);欧州特許第824110号A1(特許文献11);欧州特許第841346号A1(特許文献12);欧州特許第850957号A1(特許文献13))が使用される。ATRPの種々の可能性は、さらに米国特許第5,945,491号A(特許文献14)、米国特許第5,854,364号A(特許文献15)および米国特許第5,789,487号A(特許文献16)に記載されている。
【0042】
さらに、本発明に従って使用されるポリマーは、有利にはアニオン重合によって製造することができる。この場合、反応媒質として、好ましくは不活性溶媒が、例えば脂肪族および脂環式炭化水素が使用され、また芳香族炭化水素も使用される。
【0043】
リビングポリマーは、一般に構造PL(A)−Me[式中、Meは、周期表の第I族の金属、例えばリチウム、ナトリウムまたはカリウムであり、PL(A)は、モノマーAからなる成長中のポリマーブロックである]によって表される。製造すべきポリマーのモル質量は、開始剤濃度とモノマー濃度の比によって規定される。
【0044】
適切な重合開始剤として、例えばn−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、2−ナフチルリチウム、シクロヘキシルリチウムまたはオクチルリチウムが適するが、ここで、この列挙は完全であることを要求するものではない。さらに、アクリレートの重合のためにサマリウム錯体ベースの開始剤が公知であり(Macromolecules 1995、28、7886(非特許文献6))、ここで使用可能である。
【0045】
さらに、例えば1,1,4,4−テトラフェニル−1,4−ジリチオブタンまたは1,1,4,4−テトラフェニル−1,4−ジリチオイソブタンのような二官能性開始剤も使用できうる。共開始剤も使用することができる。適切な共開始剤は、とりわけハロゲン化リチウム、アルカリ金属アルコキシドまたはアルキルアルミニウム化合物である。非常に好ましい一変形形態では、アクリレートモノマー、例えばn−ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートを直接重合することができ、ポリマー中で対応するアルコールとのエステル交換によって生成しなくてよいように、配位子および共開始剤が選択される。
【0046】
非常に好ましい製造法として、RAFT重合(可逆的付加開裂連鎖移動重合)の変形が実施される。この重合法は、例えば文書国際公開第98/01478号A1(特許文献17)および国際公開第99/31144号A1(特許文献18)に詳細に記載されている。製造のために、特に有利には一般構造R’’’−S−C(S)−S−R’’’のトリチオカ−ボネートが適している(Macromolecules 2000、33、243〜245(非特許文献7))。
【0047】
非常に有利な一変形形態では、重合のために例えばトリチオカーボネート(TTC1)および(TTC2)またはチオ化合物(THI1)および(THI2)
【0048】
【化3】


[式中、Φは、官能化されていなくても、また直接にまたはエステルもしくはエーテル架橋を介して結合しているアルキルまたはアリール置換基によって官能化されていてもよいフェニル環でもよく、シアノ基または飽和もしくは不飽和脂肪族残基でもよい]が使用される。フェニル環Φは場合により、1個または複数個のポリマーブロック、例えばいくつか例を挙げるならば、P(A)またはP(B)の定義に対応する構造を有し得る、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレンまたはポリ(メタ)アクリル酸、あるいはポリスチレンを担持してもよい。官能基は、例えばハロゲン、ヒドロキシ基、エポキシド基、窒素または硫黄含有基であってよいが、この列挙は網羅的ではない。
【0049】
上記のラジカルによって進行する制御された重合に関連して、重合のために追加的にさらなるラジカル開始剤、特に熱分解してラジカルを形成するアゾ開始剤またはペルオキソ開始剤を含有する開始剤系が好ましい。しかしながら、これには原則としてアクリレート用の公知の全ての通常の開始剤が適する。C−中心ラジカルの生成は、Houben-Weyl、Methoden der Organischen Chemie、E 19a巻、60ページ以降(非特許文献3)に記載されている。これらの方法は、好ましい方式で使用される。ラジカル源の例は、ペルオキシド、ヒドロペルオキシドおよびアゾ化合物である。典型的なラジカル開始剤のいくつかの非限定的な例として、ここではペルオキソ二硫酸カリウム、ジベンゾイルペルオキシド、クモールヒドロペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、アセチルシクロヘキシルスルホニルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、アゾジイソブチロニトリル、過炭酸ジイソプロピル、tert−ブチルペルオクトエート、ベンズピナコールを挙げておく。非常に好ましい一変形形態では、ラジカル開始剤として1,1’−アゾ−ビス−(シクロヘキシルニトリル)(Vazo88(登録商標)、DuPont(登録商標))または2,2−アゾ−ビス−(2−メチルブタンニトリル)(Vazo67(登録商標)、DuPont(登録商標))が使用される。さらに、UV照射下で初めてラジカルを遊離するラジカル源も使用することができる。
【0050】
従来のRAFT法では、できるだけ狭い分子量分布を実現するために、大抵は非常に低い転換率までしか重合しない(国際公開第98/01478号A1(特許文献17))。しかし、このわずかな転換率が原因で、このポリマーは感圧接着剤として、特に融着性感圧接着剤として使用することができない。それは、高い割合の残留モノマーが接着技術的性質に悪影響を与え、濃縮工程において残留モノマーが溶媒リサイクル原料を汚染し、対応する自己接着テープが非常に高いガス発生挙動を示すからである。
【0051】
有利なさらなる発展のために、感圧接着剤に樹脂を混合することができる。添加すべき、粘着性付与樹脂は、文献に記載された既知の接着性樹脂が例外なく全て使用可能である。代表例を挙げると、ピネン−、インデン−およびコロホニウム樹脂、それらの不均化、水素化、重合化、エステル化された誘導体および塩、脂肪族および芳香族炭化水素樹脂、テルペン樹脂およびテルペンフェノール樹脂、ならびにC−、C−およびその他の炭化水素樹脂が挙げられる。得られる接着剤の特性を希望どおりに調整するために、これらおよびさらなる樹脂の任意の組合せを使用することができる。一般に、対応するポリアクリレートと相容性のある全ての(可溶性)樹脂が使用できるが、特に全ての脂肪族、芳香族、アルキル芳香族炭化水素樹脂、純モノマーをベースとする炭化水素樹脂、水素化された炭化水素樹脂、官能性炭化水素樹脂ならびに天然樹脂が参照される。Donatas Satas、「Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology」(van Nostrand、1989)(非特許文献1)における知識の水準の記述に明確に示されている。
【0052】
さらに、随意の軟化剤(可塑剤)、充填材(例えば繊維、カーボンブラック、酸化亜鉛、二酸化チタン、白亜、無孔または中空ガラス球、他の材料からなる微細球体、ケイ酸、ケイ酸塩)、核形成剤、発泡剤、配合剤および/または老化防止剤(例えば一次酸化防止剤および二次酸化防止剤の形または遮光剤の形のもの)を添加することができる。
【0053】
好ましくは、感圧接着剤の接着強さ(粘着力)は、架橋によって増大する。このために、場合によりアクリレート含有感圧接着剤に、適合する架橋剤物質を添加することができる。架橋剤として、例えば金属キレート、多官能性イソシアネート、多官能性アミン、多官能性エポキシドまたは多官能性アルコールが適している。多官能性アクリレートも化学線照射用の架橋剤として有利に使用できる。
【0054】
特に好ましいのは、架橋可能なポリアクリレート接着剤である。架橋は、本発明の自己接着性接着テープのポリアクリレート層(自己接着性であることができ、かつ/または熱融着性である)の溶融中に熱架橋として行うのが有利である。しかし、光架橋または他の架橋方法も使用可能である。架橋によって、自己接着性接着剤は高温に対する感受性が明らかに下がり、その結果、もはや溶融することができなくなる。したがって特に架橋により、それ自体が温度安定性に乏しいことが原因で、生産的な部材、すなわち長期間留まり続ける部材として使用することができない、自己接着性接着テープの使用が可能になる。
【0055】
上記のように、架橋は、種々の方式で行うことができる。一方では、架橋は、自己接着性接着テープの溶融中または溶融後にUV線による放射ならびに電子線を用いた放射によって起こりうる。
【0056】
熱エネルギーによる架橋、すなわち自己接着性接着テープのアクリレート層が溶融する際の架橋は、多官能性イソシアネート、多官能性エポキシド、多官能性アミンおよび多官能性アルコール、ならびに当業者に公知のさらなる熱架橋剤を用いて行うことができる。欧州特許第1001893号B1(特許文献19)および欧州特許第13734425号B1(特許文献20)に、上記使用の間のそのような熱架橋、および例えばシアノアクリレートのような反応系の例が挙げられているが、これらには、有効性を失わないためには接着テープを低温で貯蔵するしかなく、使用のためにまず改めて加熱して基体上に接着テープが感圧接着を維持するようにしなければならないという欠点がある。
【0057】
驚くべきことに、当業者にははっきりわかってはいなかったが、多官能性エポキシドと、ウレタンおよび/または尿素誘導体からなる組合せが、自己接着性接着テープにおける本発明のポリアクリレート層用の架橋剤として、貯蔵安定性、加工性、ならびに溶融時の所望の架橋に関して前記問題を非常によく解決することが見出された。少なくとも2個の尿素官能基を有し、かつ溶融温度または溶融温度範囲で熱により分解し、その際に1種のイソシアネートおよび1種のアミンを遊離する、尿素誘導体が特に適している。イソシアネート用のブロック剤として機能するアミンは、驚くべきことにエポキシドがポリアクリレートと反応することなく、エポキシド架橋のための促進剤として作用する能力も有する。本発明のポリアクリレートを含む自己接着性接着テープは、溶融温度未満では貯蔵安定であり、架橋反応は生じない。
【0058】
このような本発明の尿素誘導体の一例は、EVONIK製のDyhard(登録商標)UR500である。
【0059】
エポキシド基含有物質として、特に多官能性エポキシド、すなわち分子1個あたり少なくとも2個のエポキシドユニットを有する(すなわち少なくとも二官能性である)エポキシドが使用される。これは芳香族化合物であってもよく、また脂肪族化合物であってもよい。
【0060】
特別に適切な多官能性エポキシドは、エピクロロヒドリンのオリゴマー、多価アルコール[特にエチレン−、プロピレン−、およびブチレングリコール、ポリグリコール、チオジグリコール、グリセリン、ペンタエリトリット、ソルビット、ポリビニルアルコール、ポリアリルアルコールおよび類似物]のエポキシエーテル、多価フェノール[特にレゾルシン、ヒドロキノン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)−メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジフルオロフェニル)−メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)−プロパン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4’−メチルフェニルメタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2,2,2−トリクロロエタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−(4−クロロフェニル)−メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキシルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン]のエポキシエーテル、ならびにそれらのヒドロキシエチルエーテル、フェノールアルコール、フェノールアルデヒド樹脂および類似物のようなフェノール−ホルムアルデヒド縮合産物、S−およびN−含有エポキシド(例えばN,N−ジグリシジルアニリン、N,N’−ジメチルジグリシジル−4,4−ジアミノジフェニルメタン)、ならびに多価不飽和カルボン酸または不飽和アルコールのモノ不飽和カルボン酸エステルから通常の方法で製造されたエポキシド、グリシジルエステル、不飽和酸のグリシジルエステルの重合もしくは混合重合によって得ることができるか、または他の酸化合物(シアヌル酸、ジグリシジルスルフィド、環状トリメチレントリスルホンまたはそれらの誘導体他)から得られるポリグリシジルエステルである。
【0061】
非常に適切なエーテルは、例えば、1,4−ブタンジオールジグリシドエーテル、ポリグリセロール−3−グリシドエーテル、シクロヘキサン−ジメタノールジグリシドエーテル、グリセリントリグリシドエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシドエーテル、ペンタエリトリットテトラグリシドエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシドエーテル、トリメチロールプロパントリグリシドエーテル、ビスフェノール−A−ジグリシドエーテルおよびビスフェノール−F−ジグリシドエーテルである。
【0062】
エポキシ化された少なくとも二官能性のシクロヘキセン誘導体、例えばCYTEC製のUVACURE(登録商標)1500(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)およびビス−3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアジペートも、非常に適している。
【0063】
純粋な熱融着性ポリアクリレート層の場合、自己接着性接着剤の感圧接着性は、場合により熱活性化または溶媒活性化によって発生させることができる。自己接着性ポリアクリレート、または感圧接着剤、特に好ましくはポリアクリレート感圧接着剤を含む純粋な熱融着性ポリアクリレート層のコーティングが特に好ましく、ここで、当業者によく知られた全ての種類の感圧接着剤を使用することができ、それらは、場合によりプライマーまたは物理的前処理によって純粋な熱融着性ポリアクリレート層上に固定される。
【0064】
接着テープは、輸送、貯蔵または打抜きのために、好ましくは少なくとも片側にライナー、すなわち例えばシリコーンで被覆したフィルムまたはシリコーン紙を備える。
【0065】
本発明のさらなる有利な実施形態は、自己接着性接着テープに無担体の接着剤を使用することである。ポリマーフィルムまたは不織布のような持久性の担体を有さない接着剤を無担体接着剤と呼ぶ。好ましい形態では、自己接着性接着剤が単にライナー上に、すなわち自己接着性接着剤の支持および容易な塗装のために単に一時的に役立つ材料上に施与される。自己接着性接着剤を金属表面上に施与した後に、ライナーは取り除かれる。したがって、本発明の層とは対照的に、この自己接着性接着剤の場合、ライナーは、生産的部材ではない。次に、あとに残った無担体接着剤は、特に簡単に溶融することができ、その際に担体材料による損傷は予想されない。
【0066】
本発明の層の製造は、溶液からならびに溶融物から行うことができる。後者の場合、適切な製造工程には、バッチ法だけでなく、連続法も含まれる。特に好ましいのは、押出機を用いた連続製造およびそれに続く接着剤層を有するまたは有さないライナー上への直接コーティングである。
【0067】
本発明の層と場合によりその後のプラスチゾル層または塗装層との間の感圧接着を最適化するために、これを改変することができる。その例は、コロナ放電またはプラズマを用いた物理的処理、水素化ニトリルゴム、塩化ビニリデンポリマーのような接着促進物質を用いた、またはその後の塗装のためにポリオレフィン製のプラスチック部品(例えば自動車バンパー)に下塗りするための当業者に公知のプライマーを用いたコーティングである。さらにこの目的のために、表面に、例えばアクリルニトリル−ブタジエン−スチレン−コポリマー(ABS)、カプロラクタム、セロファン、エチレン−酢酸ビニル−コポリマー(EVA)、カプトン、ポリエステル(PEN、PET)、ポリオレフィン(PE、PPなど)、ポリアクリレート(PMMAなど)、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルまたはポリウレタンのようなフィルムを設けることもできる。
【0068】
さらに、多くの場合、プラスチゾル層から防食層への軟化剤の移動、または防食層から塗装層への軟化剤の移動を合理的に回避するために、バリア層が重要である。加えて、この層は、改善された塗装性をもたらすことができ、また塗装工程において継ぎ目から漏れるガスに対するバリアとして働く。これは、例えば塩化ビニリデンポリマーを用いたコーティングであっても、また例えばアクリルニトリル−ブタジエン−スチレン−コポリマー(ABS)、カプロラクタム、セロファン、エチレン−酢酸ビニル−コポリマー(EVA)、カプトン、ポリエステル(PEN、PET)、ポリオレフィン(PE、PPなど)、ポリアクリレート(PMMAなど)、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルまたはポリウレタンのようなフィルムの施与であってもよい。
【0069】
本発明の層の溶融ならびに架橋剤のブロック解除および促進剤の遊離による熱架橋の開始は、第一に少なくとも90℃で、好ましくは少なくとも110℃で、さらに好ましくは少なくとも130℃で行われる。それぞれ必要な最低温度は、自己接着性接着剤の具体的な組成によって決まる。この温度は、自己接着性接着剤ができるだけ貯蔵に安定であるように、一方ではできるだけ高く選択すべきであり、他方では溶融および架橋ができるだけエネルギーを最適化して実施され、さらに例えば自動車ボディーに使用される部材が過度に高い温度に曝されないように、温度はあまり高くすべきではない。この点で、最高200℃、好ましくは最高180℃、さらに好ましくは最高160℃の温度が自己接着性接着剤の溶融のための最高温度として明らかとなった。
【0070】
本発明の層は、少なくとも50μm、好ましくは少なくとも100μm、さらに好ましくは少なくとも200μmの層厚で金属表面上に施与される。そのうえ層厚は、最大750μm、好ましくは最大600μm、さらに好ましくは最大400μmであるべきである。そのような層厚の選択によって、一方で自己接着性接着剤が溶融および架橋した場合に、金属表面が十分に覆われ、他方で防食層の層厚が大きすぎないことが保証される。
【0071】
特に自動車工業の分野において、防食層を手作業で、すなわち手によって、金属表面上に施与することがしばしば必要である。この場合にこれは、自己接着性接着テープを手作業で金属表面上に施与し、続いて対応する加熱工程に通すことによって行われる。この場合、特に重要なのは、自己接着性接着テープが健康上安全であること、すなわち接着テープの取扱いの際に作業者に健康上の危険がないことである。したがって、取扱いのために、特に呼吸防御、安全な貯蔵および/または低温貯蔵などのさらなる防御措置は必要ない。
【0072】
使用のためには、自己接着性接着剤をまずロール上に巻き取り、このロールから金属表面上に施与すると特に適切であることが明らかとなった。次に作業者は、自己接着性接着剤をそれぞれ必要に応じて所定の長さに切断することができる。自己接着性接着剤をロール上に巻き取ることができるように、これは通常、片面がライナーで覆われる。ライナーによって、ロールからの自己接着性接着剤の容易な巻出しが可能になり、そのため取扱いが容易になる。
【0073】
打抜き部品の形での提示もまた特定の用途には有利なことがある。このために所望の形が接着テープから打抜かれ、通常はライナー上に施与される。次にこの組立体は、ロールまたは個別シートのいずれかに加工される。その際、ライナー上で統合される打抜き部品が異なる形であるか同様の形であるかは重要でない。
【0074】
加えて本発明の対象は、金属表面の防食処理のための、本発明のポリアクリレート層を備える自己接着性接着テープの使用である。自己接着性接着剤は、特に前記特徴に従って形成され、選択される。さらに、防食処理された金属表面の応用範囲をできるだけ多様にすることができるように、接着剤は、溶融後にできるだけ高い温度耐久性を有するべきである。特に、接着剤は、溶融後に−5℃まで、好ましくは−15℃まで、さらに好ましくは−30℃まで温度耐久性であるようになされる。そのうえ接着剤は、溶融後に70℃まで、好ましくは80℃まで、さらに好ましくは100℃まで温度耐久性であるべきである。
【0075】
一般的な用語「接着テープ」は、本発明においては、二次元に広がったフィルムまたはフィルム片、長尺で限られた幅を有するテープ、テープ片など、最後に打抜き品またはラベルなど全ての平面状構造物を包含する。
【0076】
以下に例によって本発明を詳細に説明するが、それにより本発明が限定されることはない。
【実施例】
【0077】
例1
ポリアクリレート(3重量%のアクリル酸、45重量%のブチルアクリレートおよび52重量%の2−エチルヘキシルアクリレート、M=514,000g/mol、GPCによって測定)を、(ポリマーに対して)30重量%のテルペン−フェノール樹脂(DRT Resins、フランス製の接着樹脂Dertophene DT110として)ならびに(ポリマーに対して)1重量%のDyhard(登録商標)UR500および0.8重量%のPolypox R16(UPPC AG製)の架橋剤の組合せと共に自己接着性接着剤として調合し、2枚のKTL−金属板の端縁に300μmの厚さで接着させた。
【0078】
続いて、この板を自己接着性接着剤と一緒に約140℃で40分間加熱した。加熱は、金属表面上での自己接着性接着剤の溶融および自己接着性接着剤の架橋開始をもたらし、その結果、防食層が形成された。金属板の冷却後に防食層は滑らかな表面を示した。その際、両方の金属板の間の板の端縁は、確かにまだ認識できたが、元のポリアクリレート接着剤の表面は滑らかであって、直接目に見える欠陥を有さなかった。
【0079】
その後、金属板を異なる環境条件に曝した。このために温度を約−5℃と70℃との間で交互に変化させた。その際、元のポリアクリレート接着剤の弾性は十分に保たれたままであり、それによって防食層が剥げ落ちる危険は減少している。
【0080】
さらに1回の塗装実験を行ったが、その実験により、溶融後にポリアクリレート接着剤が直接塗装できたことが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属表面の、特に金属部材の端縁および形状移行部の防食処理方法において、
自己接着性接着テープが前記金属表面上に施与され、前記自己接着性接着テープが接着剤を含む少なくとも一つの層を備え、前記接着剤が前記金属表面上で溶融するように前記層が加熱される、それにより防食層が形成されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記自己接着性接着テープが、溶融の際に本質的に滑らかな表面を形成することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記自己接着性接着テープの少なくとも一つの層の接着剤としてポリアクリレートが使用されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記自己接着性接着テープの少なくとも一つの層の接着剤が架橋され、特に自己接着性接着剤が熱および/またはUV照射および/または電子線によって架橋されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記自己接着性接着テープの少なくとも一つの層の接着剤として感圧接着剤が使用されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記自己接着性接着テープの少なくとも一つの層の接着剤として、熱による活性化によって初めて感圧接着性になる熱融着性ポリアクリレート接着剤が使用されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記自己接着性接着テープの少なくとも一つの層の接着剤として、ポリアクリレート接着剤が、接着性樹脂を主成分として含む粘着付与剤と共に使用されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記ポリアクリレート接着剤が、少なくとも90℃、好ましくは少なくとも110℃、さらに好ましくは少なくとも130℃で溶融することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
前記ポリアクリレート接着剤が、少なくとも90℃、好ましくは少なくとも110℃、さらに好ましくは少なくとも130℃で架橋されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記ポリアクリレート接着剤が、最高200℃、好ましくは最高180℃、さらに好ましくは最高160℃で溶融することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
前記ポリアクリレート接着剤の架橋のために、多官能性エポキシドとウレタン誘導体および/または尿素誘導体との組合せが使用されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
少なくとも一つのポリアクリレート層を備える自己接着性接着テープとして、無担体接着テープが使用されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
前記自己接着性接着テープのポリアクリレート層が、少なくとも50μm、好ましくは少なくとも100μm、さらに好ましくは少なくとも200μmおよび/または最大で750μm、好ましくは最大で600μm、さらに好ましくは最大で400μmの層厚で施与されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
溶融および架橋後に、前記防食層自体が塗装されるか、または前記防食層上にさらなる塗装可能な層が施与され、この層が続いて塗装されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
前記自己接着性接着テープが手作業で金属表面に施与されることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一つに記載の方法。
【請求項16】
前記自己接着性接着テープのポリアクリレート層として、健康上安全なポリアクリレート接着剤、および健康上安全な架橋剤または健康上安全な架橋剤の組合せが、金属表面上に施与されることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一つに記載の方法。
【請求項17】
前記自己接着性接着テープが、ロールから金属表面上に施与され、必要に応じて所定の長さに切断されることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一つに記載の方法。
【請求項18】
特に請求項1〜17のいずれか一つに記載の方法における、金属表面の防食処理のための、特に請求項1〜17のいずれか一つに記載の特徴部分に従って形成された、前記自己接着性接着テープの使用。
【請求項19】
前記自己接着性接着テープが、溶融後に−5℃まで、好ましくは−15℃まで、さらに好ましくは−30℃まで温度耐久性であることを特徴とする、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記自己接着性接着テープが、溶融後に70℃まで、好ましくは80℃まで、さらに好ましくは100℃まで温度耐久性であることを特徴とする、請求項18または19に記載の使用。

【公表番号】特表2012−516387(P2012−516387A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546730(P2011−546730)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050072
【国際公開番号】WO2010/086196
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(509120403)テーザ・ソシエタス・ヨーロピア (118)
【Fターム(参考)】