説明

金属製の平形ガスケット

本発明は、少なくとも3つの層、すなわち、中間層(80)と、機能層(84、86)と、圧縮リミッタ(82)の層とを有する、内燃機関上のたとえばシリンダヘッドガスケット(2)などの平形金属製ガスケットに関する。中間層は、機能層と圧縮リミッタとの間に配置される。中間層は、密封領域の外側に基本的に丸い少なくとも2つの固定開口部(90)を有する。圧縮リミッタは、その領域内の固定開口部の縁部の周りにビード加工部を有し、圧縮リミッタを中間層に固定する。機能層は、圧縮リミッタの固定領域におけるシールの総厚を厚くせずに圧縮リミッタ(82)のビード加工部の領域(20)を収容するために中間層の固定開口部の領域に切り欠き(92)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、内燃機関のシリンダヘッドガスケットのような金属製の平形ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
紙および繊維ベースのガスケットに代わるものとして多層の金属製の平形ガスケットを使用することが当技術分野で公知になってから、広範囲の実施形態が公知になっている。
【0003】
当技術分野の現状として、明確な参考文献としては、燃焼室の領域にはめ込み圧縮リミッタを有する2層または多層の金属製の平形ガスケットを開示する国際特許出願第03010450号がある。国際特許出願第03010450号では、圧縮リミッタは金属製の平形ガスケットの中間層の平面内に位置している。圧縮リミッタは、中空のリベットによって金属製の平形ガスケットに固定され、中空の各リベットの1つの環状セグメントが圧縮リミッタを囲み、中空の各リベットの他の環状セグメントが平形ガスケットの中間層を囲んでいる。この原理は、たとえば、オートバイで公知のような「フローティング」ブレーキディスクの取り付けにおいて最も明確に見られる。圧縮リミッタを金属製の平形ガスケットに固定する他の方法は、たとえば米国特許第6027124号から公知である。この文献は、突起によって金属製の平形ガスケットに圧縮リミッタを固定する手段を開示している。この方法では、圧縮リミッタで形成された突起が金属製の平形ガスケットの長穴に押し込まれることで圧縮リミッタは確実なる取り付けによって金属製の平形ガスケットに固定される。
【0004】
たとえばレーザ溶接などの溶接方法によって圧縮リミッタ、ストッパコーティング、またはストッパ層を他の密封層に固定することも公知である。
【0005】
この場合のストッパ層は、特にシリンダヘッドガスケットでは、燃焼室の周りの領域で圧縮圧力を高くして、燃焼室が確実に密封されるようにするために使用される。シリンダヘッドガスケットは、エンジンブロックからシリンダヘッドガスケットを通ってシリンダヘッドに至る、たとえば冷却水配管またはオイル配管を密封するために他の密封領域も有することが少なくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、圧縮リミッタ、ストップ層、またはストッパカラープレートを、たとえば、シリンダヘッドガスケットのような金属製の平形ガスケットの他の層に、たとえばレーザ溶接のようなコストのかかる方法に依存する必要なしに取り付けるかまたは連結することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、少なくとも3つの層を有する平形ガスケットによって達成される。これらの少なくとも3つの層はそれぞれ、少なくとも1つの中間層と、1つの機能層と、圧縮リミッタの層とを有する。中間層は、機能層と圧縮リミッタとの間に配置される。中間層は、圧縮リミッタを中間層に固定するために密封領域の外側に基本的に丸い少なくとも2つの固定開口部を有する。圧縮リミッタは、その領域内の固定開口部の縁部の周りにビード加工部を有し、それによって圧縮リミッタは中間層に固定される。機能層は、中間層の固定開口部および周囲のビード加工部の領域に切り欠きを有する。切り欠きは、圧縮リミッタのビード加工部の領域を収容し、平形ガスケットが4つ以上の層を含む領域を有さないようにすることができる。この構成によって、圧縮リミッタを固定する領域内のガスケットの総厚を小さく維持することができ、したがって、平形ガスケットの機能、特に、圧縮リミッタを有する平坦なシールの領域上への圧縮の集中が維持される。
【0008】
したがって、ストッパ、すなわち圧縮リミッタは、ビード加工部のために、中間層、すなわちスペーサ層に確実に嵌るように連結することができる。複雑でコストのかかるレーザ溶接方法を不要にすることができる。
【0009】
したがって、ビード加工部は、圧縮リミッタから単一の部材として形成される中空のリベットの効果を有する。このビード加工部は、たとえば、拡大され、拡張され、曲げられ、平らに押し広げられたアイレットから形成することができる。ビード加工部および固定部は平形ガスケットの密封領域の外側に位置するので、ビード加工部が、たとえ割れ目または隆起部を有するとしても、平形ガスケットの機能に悪影響を与えない。ビード加工部は、圧縮リミッタを固定する働きのみを有し、密封性を有さない。
【0010】
機能層の厚さは圧縮リミッタの厚さと少なくとも同じであることが好ましい。したがって、(圧縮状態では)機能層、中間層、および圧縮リミッタ層からなる積層部分を、常に、圧縮リミッタ、中間層、およびビード付き圧縮リミッタからなる積層部分より高くすることができる。実際には、圧縮リミッタの厚さが周囲のビード加工部よりわずかに薄くされるため、機能層を圧縮リミッタよりいくらか薄くすることも考えられる。
【0011】
中間層の固定開口部の直径は、中間層の厚さの少なくとも9倍に相当することが好ましい。この実施態様では、中間層の反対側にビード加工部を設けるために、圧縮リミッタ(場合によっては中間層より薄くされる)を固定開口部に通すことができる。
【0012】
平形ガスケットの好ましい実施態様では、中間層における切り欠きの直径は、固定開口部の直径より少なくとも1.5倍大きい。したがって、ビード加工部を切り欠き内に収容することができる。切り欠きを卵形または楕円形とし、ビード加工部が圧縮され、および/または熱膨張することによって機能層を変形させ、密封すべき密封隙間に沿って移動させることも可能である。
【0013】
機能層は第1の機能層であってもよい。平形ガスケットは、この実施態様では、第1の機能層に面する中間層上に配置された第2の機能層を有する。これによって、中間層および圧縮リミッタが各機能層間に配置される4層を有する構造が形成される。
【0014】
少なくとも一方の機能層は、エラストマ材料の少なくとも1つのコーティングを備えることが好ましい。コーティングはたとえば、冷却水および/またはオイル供給路あるいは水および/またはオイル密封領域を補強する働きをすることができる。
【0015】
機能層はそれぞれ、少なくとも1つのクロムニッケルばね鋼層を有することが好ましい。それによって、機能層に半ビード加工部または全ビード加工部を設け、これらの領域をより良好に密封できる。
【0016】
中間層をばね鋼で形成し、中間層に追加的なビードを設け、任意にコーティングも設けることも好ましい。一実施態様では、ガスケットは3つの層を備え、中間層はばね鋼で作られた第2の機能層として働く。
【0017】
機能層は半ビード加工部または全ビード加工部を有することが好ましい。全ビード加工部および半ビード加工部と、シールを設けると、たとえばシリンダヘッドガスケットの組み立てを簡略化する助けにもなる。
【0018】
平形ガスケットは、燃焼室密閉穴を有するシリンダヘッドガスケットであってもよい。
【0019】
中間層、第1および/または第2の機能層、ならびに圧縮リミッタ(すなわち、圧縮リミッタの層)は、燃焼室の穴の領域で互いに重ね合わせられることが好ましく、その場合、これらの層は、それぞれの一側面によって燃焼室の一部を形成する。この実施態様では、圧縮リミッタが燃焼室の領域にビードを有することはなく、個々の層が燃焼室の領域で互いにサンドイッチ構造にて重ね合わせられる。
【0020】
シリンダヘッドガスケットは、多気筒エンジンの1つのシリンダヘッドガスケットであってもよく、その場合、圧縮リミッタは「ストッパカラープレート」として設けられている。この構成(固定用のビード加工部を除く)の圧縮リミッタは、基本的に、燃焼室の領域内にのみ延びた、個々の円(または燃焼室)が互いに接触する位置で繋がった8の字形状、または2重の8の字形状を有する。
【0021】
この構造は固定アイも備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明によるシリンダヘッドガスケットの一部を示している。このシリンダヘッドガスケット2は、シリンダヘッドねじ用の穴4を備えている。シリンダヘッドねじ用の穴のいくつかは密封用のビードを備えている。シリンダヘッドガスケットは、冷却水用の穴6も備えている。ビード加工部20によって中間層の周りの固定開口部に固定されるように示されている圧縮リミッタ8を燃焼室10の周りに識別することができる。ガスケットの切り欠き12は、オーバヘッドカムシャフト用の(たとえば、チェーン)駆動装置を収容する働きをする。
【0023】
図2は、図1の線II−IIに沿ったシリンダヘッドガスケット全体の断面図を示している。このストッパは、カラープレートとして構成され、スペーサ層(すなわち、中間層)上の固定開口部90に固定されている。外側の機能層(すなわち、第1の機能層84および第2の機能層86)は、圧縮リミッタ層が中間層の固定開口部の周りにビードを有する部位に切り欠き92を備えており、切り欠き92の寸法はビード加工部用の穴より大きいか、またはビード加工部の外径より大きい。
【0024】
燃焼室上では、中間層の縁部81、圧縮リミッタの縁部83、第1の機能層の縁部85、および第2の機能層の縁部87はそれぞれ、サンドイッチ状に互いに重ね合わせられている。シリンダヘッドガスケットは、燃焼室を囲むビード加工部を備えていない。
【0025】
機能層84および86は、たとえば溶接継手によって中間層に固定されている。部位42では、機能層84および86は密封領域にビードを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明によるシリンダヘッドガスケットの上面図である。
【図2】本発明によるシリンダヘッドガスケットの断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つの層、すなわち、中間層と、機能層と、圧縮リミッタの層とを有する平形ガスケットであって、
前記中間層は、前記機能層と前記圧縮リミッタとの間に配置され、
前記中間層は、密封領域の外側に基本的に丸い少なくとも2つの固定開口部を有し、
前記圧縮リミッタは、前記固定開口部のある領域内の前記固定開口部の縁部の周りにビード加工部が形成されていることで前記圧縮リミッタが前記中間層に固定され、
前記機能層は、前記圧縮リミッタの前記固定領域における前記ガスケットの総厚を厚くせずに前記圧縮リミッタの前記ビード加工部の領域を収容するため、前記中間層の前記固定開口部の領域に切り欠きを有することを特徴とする平形ガスケット。
【請求項2】
前記機能層は、前記圧縮リミッタの材料厚さと少なくとも同じ厚さである材料厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載の平形ガスケット。
【請求項3】
前記中間層の前記固定開口部の直径は、前記中間層の厚さの少なくとも9倍に相当することを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の平形ガスケット。
【請求項4】
前記中間層における前記切り欠きの直径は、前記固定開口部の直径より少なくとも1.5倍大きいことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の平形ガスケット。
【請求項5】
前記機能層は第1の機能層であり、前記平形ガスケットは、前記中間層上に配置された、前記第1の機能層に面する第2の機能層を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の平形ガスケット。
【請求項6】
少なくとも一つの機能層は、エラストマ材料の少なくとも1つのコーティングを備えることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の平形ガスケット。
【請求項7】
前記機能層はそれぞれ、少なくとも1つのクロムニッケルばね鋼層を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の平形ガスケット。
【請求項8】
前記機能層は半ビード加工部および全ビード加工部を有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の平形ガスケット。
【請求項9】
前記平形ガスケットは、燃焼室密封穴を有するシリンダヘッドガスケットであることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の平形ガスケット。
【請求項10】
前記中間層と、前記第1および/または第2の機能層は、前記燃焼室穴の領域で互いに重ね合わせられ、一側面によって前記燃焼室の一部を形成することを特徴とする、請求項10に記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項11】
前記シリンダヘッドガスケットは、多気筒エンジンの1つのシリンダヘッドガスケットであり、前記圧縮リミッタはストッパカラープレートとして設けられていることを特徴とする、請求項9または10に記載のシリンダヘッドガスケット。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−508059(P2009−508059A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529481(P2008−529481)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【国際出願番号】PCT/EP2006/005674
【国際公開番号】WO2007/031127
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(595157503)フェデラル−モーグル シーリング システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (21)
【氏名又は名称原語表記】Federal−Mogul Sealing Systems GmbH
【Fターム(参考)】