説明

金属製の物体に設けられた金属層の厚さを測定するための方法および装置

本発明は、金属製の物体(1)上に設けられた金属層(2)の厚さを測定するための方法および装置に関する。金属層は、金属製の物体の抵抗率(ρ2)とは異なる抵抗率(ρ1)を有している。本装置は、金属層の近傍に磁界を生じさせ、金属層の表面に電流が誘導されるように磁界に変動を生じさせるように構成される第1のデバイス(4、7)と、誘導電流が金属層を伝搬するのに要する時間よりも長い期間にわたって、誘導電流に起因する金属層外部の磁界の変化を測定するように構成される第2のデバイス(5、8)と、測定される磁界の変化を受信し、金属層の厚さと磁界の変化の測定値との間の数学的関係にもとづいて、金属層の厚さ(d)を割り出すように構成される演算ユニット(9)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板または金属帯などの金属製の物体に設けられた金属層の厚さを測定するための方法および装置に関する。本発明は、例えば、異なる種類のアルミニウム合金で製造された金属層および金属製の物体の厚さを測定することに適している。
【背景技術】
【0002】
今日では、金属板および金属帯などの金属製の物体を製造する際に、異なる金属または異なる金属合金から作られる複数の層を有する物体を製造することが、一般的である。金属合金から作られる物体を、例えば、その物体とは別の合金から作られる薄膜または層で保護することができる。例えば、特定の合金から作られるアルミニウム板を、良好な耐食性を有する別の合金から作られる表面層で覆うことができる。そのような物体を製造する場合、製造は、より厚い2枚の金属板から出発し、それら金属板が接合され、次いで重ねられた金属板は圧延機において所望の厚さへと圧延される。この製造方法における問題は、異なる金属板が、変形の際に異なる流動特性を有する可能性があり、結果として圧延の際に異なる金属板が異なる仕方で圧縮される点にある。したがって、そのような金属板の製造者は、金属層の厚さを測定する必要がある。さらには、圧延プロセスで生じる金属の変化を理解するために、層の電気抵抗を測定することに関心がもたれている。
【0003】
圧延機は、少なくとも2つのローラと、ローラ間のすき間を制御し、したがって製造される物体の厚さを制御する厚さ制御システムとを備えている。厚さを制御するために、物体の厚さが、圧延後(すなわち、物体がローラを通過した後)の帯の少なくとも1点において測定される。この測定値は、物体の厚さの所望値とともに、厚さ制御のための入力値として使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、金属製の物体に設けられた金属層の厚さを測定するための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1に記載の方法によって達成される。
【0006】
この方法は、以下のステップ、すなわち金属層の近傍に磁界を生じさせることと、金属層の表面に電流が誘導されるように磁界に変動を生じさせることと、電流が金属層を伝搬するのに要する時間よりも長い期間にわたって、金属層外部の誘導電流に起因する磁界の変化を測定することと、金属層の厚さと磁界の変化の測定値との間の数学的関係にもとづいて、金属層の厚さを割り出すこととを含んでいる。
【0007】
組成の異なる金属および金属合金は、異なる抵抗率を有する。本発明は、時間につれての誘導電流の材料への浸透の深さが材料の抵抗率に依存し、金属層が金属製の物体の抵抗率とは異なる抵抗率を有するという事実を利用する。本発明によれば、時間変化する磁界が、層の付近に生成される。時間変化する磁界は、層の表面に電流を誘導する。誘導電流は、層を通過して金属製の物体へと伝搬する。誘導電流は、二次磁界を生じさせる。二次磁界の時間につれての変化は、誘導電流が層を通過して金属製の物体へと伝搬している間に、層の外部で測定される。適切には、二次磁界の変化は、コイルによって測定される。したがって、磁界の変化は、コイルの電圧を測定することによって測定される。
【0008】
コイルを横切る磁界の大きさは、誘導電流の浸透の深さに依存する。したがって、誘導電流が材料を通過して伝搬するとき、磁界は減少する。電流が誘導された時点から特定の時間を経た後の浸透の深さは、浸透される材料の抵抗率の平方根に比例する。したがって、誘導電流が層と物体との間の境界を過ぎる時点において、測定される電圧(すなわち、磁界)に変化が存在する。磁界の変化と、伝搬の時間と、伝搬される材料の抵抗率との間の既知の数学的関係、および誘導電流の浸透の深さと、伝搬の時間と、伝搬される材料の抵抗率との間の数学的関係を利用することによって、層の厚さと磁界の変化の測定値との間の関係を導出することができる。本発明によれば、この関係を、層の厚さを割り出すために使用することができる。
【0009】
本発明によって、金属製の物体上の金属層の厚さを自動的に割り出すことが可能になる。さらに、本発明によって、層または物体に触れることなく、層の厚さを割り出すことが可能になる。このように、本発明による方法は、層の厚さの制御など、金属板または金属帯上に金属層が設けられてなる製品の製造において使用されることに適している。
【0010】
さまざまな種類の磁界の変動を使用することが可能であるが、磁界をその以前の値とは大きく異なる値へと急激に変化させるステップ関数として変動を生じさせることが適切である。磁界をかなり低い値へと減らすことができ、または磁界をかなり高い値へと増やすことができる。例えば、磁界を急激にゼロへと低下させることによって、変動が生じる。そのようなステップ関数は、生成が容易であり、層の厚さの計算を容易にする。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、本方法は、磁界の変化の測定値が金属層と同じ抵抗率を有する均質な物体についての磁界の変化の予想値から逸脱するときを検出することと、該検出にもとづいて、誘導電流が金属層を通過して伝搬し、金属層と金属製の物体との間の境界に達するまでの時間を推定することと、金属層の厚さと誘導電流が金属層と金属製の物体との間の境界に達するまでの時間との間の数学的関係にもとづいて、金属層の厚さを割り出すこととを含む。
【0012】
磁界の測定値が金属層と同じ抵抗率を有する均質な物体についての予想値から逸脱する時点を検出することによって、誘導電流が金属層を通過して伝搬して金属層と金属製の物体との間の境界に達するまでの時間を割り出すことができ、その結果電流が金属層と物体との間の境界を過ぎる時点の浸透の深さを割り出すことができる。層の厚さが、電流が金属層と物体との間の境界を過ぎる時点の浸透の深さとして割り出される。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、本方法は、測定される磁界の変化を積分することと、金属層の厚さと磁界の変化の測定値の積分との間の数学的関係にもとづいて、金属層の厚さを割り出すこととを含む。この実施形態では、浸透の深さが、測定される磁界の変化の積分に比例するという事実を利用する。安定した測定値をもたらし、測定の理解を容易にするがゆえに、測定値を積分することには利点がある。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、本方法は、測定される磁界の変化の積分と時間の平方根との間の関係が線形から逸脱する時点、すなわち電流が境界を通過する時点を割り出すことと、この時点にもとづいて、誘導電流が金属層と金属製の物体との間の境界に達するまでの時間を推定することとを含む。この実施形態では、金属層の表面に電流が誘導された後に、磁界の変化の積分と時間の平方根との間に線形関係が存在し、この線形関係が、伝搬される材料の抵抗率に依存するという事実を利用している。
【0015】
浸透の深さは、測定される磁界の変化の積分に比例する。したがって、層の厚さは、電流が金属層と金属製の物体との間の境界を過ぎる時点における測定される磁界の変化の積分に比例する。電流が誘導された時点から測定電圧を積分することによって、磁界および磁界の経時変化が得られる。積分された電圧を時間の平方根に対してグラフで表現すると、誘導電流が層を通過して伝搬しているかぎりは、実質的な直線が得られる。この線の勾配は、層の抵抗率に比例する。誘導電流が層に浸透して層と物体との間の境界に達し、物体へと浸透し始めると、グラフ表示の線の勾配が変化する。
【0016】
誘導電流が一部分を物体の材料へと伝搬してから或る程度の時間が過ぎると、再び実質的な直線が得られるが、しかしそれは異なる勾配を有している。この線の勾配は、物体の材料の抵抗率に比例する。したがって、電流が層と物体との間の境界を通過する時点における測定される電圧の積分、すなわち磁界の変化には、検出可能な変化が存在する。この変化によって、電流が金属層と物体との間の境界を通過する時点における測定される磁界の変化の積分を割り出すことができる。層の厚さは、電流が金属層と金属製の物体との間の境界を通過する時点における測定される磁界の変化の積分と、所定の定数とにもとづいて計算される。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、本方法は、測定される磁界の変化の積分と時間の平方根との間の関係が線形から逸脱する時点、すなわち電流が境界を通過する時点を割り出すことと、この時点にもとづいて、電流が境界を通過する時点における測定される磁界の変化の積分を割り出すことを含む。この実施形態によれば、測定される磁界の変化の積分と時間の平方根との間の関係が線形から逸脱するときを検出することによって、測定される磁界の変化の値が、いつ均質な物体における磁界の変化の予想値から逸脱するのかが検出される。この実施形態の利点は、いつ測定値が線形から逸脱するのかを容易に検出できる点にある。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、本方法は、測定される磁界の変化の積分と時間の平方根との間の関係が線形から逸脱するときに積分値(Iu(tδ))を割り出すことと、割り出された積分値にもとづき、割り出された積分値に比例するものとして層の厚さを推定することとを含む。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、本方法は、電流が金属層の表面に誘導された後、かつ磁界の変動が金属層の全体に伝搬する前について、測定される磁界の変化の積分を時間の平方根に対してプロットした線を計算することと、電流が金属層の表面に誘導された後、かつ磁界の変動が金属層の全体に伝搬した後について、測定される磁界の変化の積分を時間の平方根に対してプロットした線を計算することと、磁界の変動が金属層の全体に伝搬する前の磁界の変化の積分の線と磁界の変動が金属層の全体に伝搬した後の磁界の変化の積分の線との間の交点として、電流が金属層と金属製の物体との間の境界を通過する時点の測定される磁界の変化の積分を割り出すこととを含む。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、本方法は、磁界の変動が金属層の全体に伝搬する前の測定される磁界の変化にもとづいて、金属層の抵抗率を割り出すことを含む。いくつかの用途においては、層の抵抗率および/または物体の抵抗率を割り出すことが望まれる。本発明の一実施形態によれば、本方法は、磁界の変動が金属層の全体に伝搬した後の測定される磁界の変化にもとづいて、金属性の物体の抵抗率を割り出すことを含む。測定される電圧が抵抗率の平方根に比例するという事実ゆえに、層の厚さの割り出しに使用される測定値と同じ測定値を使用して、層および物体の抵抗率を割り出すことが可能である。さらには、層および物体の抵抗率を割り出し、層の厚さの計算を容易にするために割り出した抵抗率を使用することには利点がある。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、本方法は、測定される磁界の変化を積分することと、積分される測定値が層と同じ抵抗率を有する均質な物体についての磁界の変化の予想積分値から逸脱するときを検出することと、該検出にもとづいて、電流が境界を通過する時点における測定される磁界の変化の積分を割り出すことと、電流が金属層と金属製の物体との間の境界を通過する時点における測定される磁界の変化の積分にもとづいて、層の厚さを割り出すこととを含む。
【0022】
本発明の別の目的は、金属製の物体上に設けられた金属層の厚さを測定するための装置を提供することにある。
【0023】
そのような装置は、金属層の近傍に磁界を生じさせ、金属層の表面に電流が誘導されるようにするために磁界に変動を生じさせるように構成された第1のデバイスと、電流が金属層を通過して伝搬するのに要する時間よりも長い期間にわたって、誘導電流に起因する金属層外部の磁界の変化を測定するように構成された第2のデバイスと、測定される磁界の変化を受信し、金属層の厚さと磁界の変化の測定値との間の数学的関係にもとづいて、金属層の厚さを割り出すように構成された演算ユニットとを備える。
【0024】
次に、本発明の種々の実施形態を記述し、また添付図面を参照することによって、本発明をさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】金属製の物体上の金属層の厚さを測定するための本発明による装置の例を示している。
【図2】金属製の物体上の金属層の厚さを測定するための本発明による装置の別の例を示している。
【図3】磁界に変動を生じさせるときに送信コイルを通過する電流の例を示している。
【図4】生じた磁界の変動に起因する受信コイルの電圧を示している。
【図5】物体の抵抗率とは異なる抵抗率を有する層について、受信コイルにおいて測定される電圧の例を、層と同じ抵抗率を有する均質な物体についての電圧の予想値と比較して示している。
【図6】生じた磁界の変動に起因して金属層の表面に誘導される電流を示している。
【図7】層と物体との間の境界に向かって移動する誘導電流を示している。
【図8】層と物体との間の境界を通過し、物体を通って移動する誘導電流を示している。
【図9】金属製の物体上の金属層の厚さを測定するための装置のさらなる例を示している。
【図10】異なる抵抗率の層を有する物体について、受信コイルにおいて測定される電圧の積分を、層と同じ抵抗率を有する均質な物体についての電圧の積分の予想値と比較して示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、金属製の物体1上の金属層2の厚さを測定するための本発明の一実施形態による装置を示している。物体1は、金属または金属合金で製作されており、この物体の抵抗率とは異なる抵抗率を有する金属または金属合金から作られる層2を備えている。この層は、物体の厚さと比べて薄い。この層は、例えば0.1mm〜1mmの間である。物体1は例えば板であり、層を板の片面または両面に設けることができる。層2の厚さdが、測定対象である。
【0027】
装置は、磁界を生じさせるように構成され、金属層の近くに配置される第1のデバイスを備えている。第1のデバイスは、コイル4(以下では、送信コイルと称する)と、送信コイル4に電流を供給するための電流供給手段7とを含んでいる。第1のデバイスは、層2の表面に電流を誘導すべく、磁界および磁界の急激な変動を生じさせるように構成されている。磁界の変動は、送信コイル4へと供給される電流に変動を生じさせることによって生じる。さらに装置は、誘導電流に起因する金属層外部の磁界の変化を測定するように構成される第2のデバイスを備えている。第2のデバイスは、コイル5(以下では、受信コイルと称する)と、受信コイルの電圧を測定するための測定機器8とを備えている。コイル4および5は、物体に対して層2と同じ側に配置されている。
【0028】
装置は、測定機器8から受信コイル5の測定電圧を受け取り、測定値にもとづいて層の厚さを割り出すように構成される演算ユニット9をさらに備えている。測定値は、それら測定値が取得された時点とともに保存される。このようにして、変動が生じてから測定値が取得されるまでの時間を計算することができる。
【0029】
図2は、金属製の物体上の金属層の厚さを測定するための本発明による装置の別の例を示している。装置が、送信コイル4へと供給される電流を制御するように構成された制御回路12を備えている。制御回路12は、送信コイル4へと接続されるトランジスタ14のベースに接続される。送信コイル4の他端は、アースに接続される。トランジスタ14は、送信コイルを通過してアースへと一定の電流を供給するように構成されている。さらに、トランジスタ14は、例えば電流をオフにするなど、或るレベルから別のレベルへの電流の素早い変化を可能にするように構成されている。トランジスタは、好都合にはデジタルである制御回路12によって制御される。あるいは、制御回路と送信コイルとの間に2つ以上のトランジスタを配置することもできる。さらに装置は、送信コイル4に配置された放電抵抗器16を備えている。トランジスタが、素早く短時間の間オフになる一方で、電流が、放電抵抗器16を通過して流れる。電流が完全に減衰するまでの時間が、抵抗器16によって決定される。受信コイル5の電圧を測定するための測定機器が、作動増幅器17と、AD変換器19とを備えている。AD変換器19からの出力が、演算ユニット9へと転送される。
【0030】
送信コイル4および受信コイル5は、層2の近くに、好ましくはその中心軸6を層の表面に対して垂直に向けて配置される。好ましい実施形態においては、送信コイル4が、送信コイルの中心軸が受信コイルの中心軸と同軸であるように配置される。しかしながら、受信コイルが層および物体によって引き起こされる磁界の時間変化を検出するかぎりにおいて、他の送信コイルおよび受信コイルの配置を使用することも可能である。送信コイル4と層2との間の距離は、測定の状況に依存する。小さな測定距離では、良好な測定結果が得られるが、一方で層を有する物体が移動しているという事実ゆえに、小さな距離を保つことが難しい可能性がある。これは、実際のところ測定距離として3〜30mmの間が適切であることを意味する。
【0031】
送信コイル4のサイズおよび巻き数も、測定の状況に依存し、薄い層が測定される場合には、コイルのインダクタンスが小さくなければならず、厚い層が測定される場合には、コイルのインダクタンスが大きくなければならない。これは、実際のところ、薄い層を測定する場合にはコイルの巻き数が数巻きから約10巻きまでであり、厚い層を測定する場合には巻き数が約10倍も多いことを意味する。受信コイルの巻き数は、概して送信コイルの巻き数と同じである。第2のデバイスは、特定の効果を実現するために、1つ以上の受信コイルを備えることができる。例えば、装置が層までの距離に左右されないよう、複数のコイルを有する受信コイル5を配置することが可能である。別の実施形態においては、同じコイルを、送信および受信コイルとして使用することが可能である。
【0032】
図3は、送信コイル4の電流の例を示している。送信コイルの周囲に生成される磁界が層2および物体1の少なくとも一部分に浸透するために充分に長い期間にわたり、一定の電流が送信コイル4に供給され、磁界が安定になる。その後に、開始時刻t1において、電流が或る値から別の値へと急激に変化する。図2に示した例では、送信コイルを通過する電流を突然にオフすることによって、変化を生じさせる。電流は、時刻t1においてオフにされる。送信コイルのインダクタンスおよび放電抵抗器の抵抗ゆえに、送信コイルの電流は、すぐにはオフにはならない。時刻t2において、送信コイルの電流はゼロへと減少している。
【0033】
図4は、図3に示した磁界に生じた変動に起因して受信コイル5において測定される電圧を示している。図に示されているように、時刻t1とt2との間に測定される電圧のピークが存在する。時刻t2よりも前に測定される電圧は、層の厚さの割り出しには使用されない。時刻t2においては、送信コイルに電流が流れていないため、送信コイルによって生成される磁界はもはや存在しない。しかしながら、磁界の変化によって、層2の表面に電流が誘導されている。この電流は磁界によって囲まれており、またそのような磁界は受信コイル5をも囲む。受信コイルにおける磁界の強さは、層に誘導された電流の強さおよび電流と受信コイルとの間の距離に依存する。
【0034】
電流がオフにされたときの時刻からコイルを通過する電流がゼロになる時刻t2までの期間t1を短くすることが重要である。これは、薄い層の測定の場合に特に重要である。薄い層を測定する場合、電流がオフにされてからコイルを流れる電流がゼロになるまでの時間が、0.1μs未満でなければならない。これは、図3に示されているようなt1とt2との間の時間である。時刻t2において、送信コイルを流れる電流がなくなり、層の厚さの測定を始めることができる。図4は、図3に示した磁界に生じた変動に起因して受信コイルにおいて測定される電圧を示している。図に示されているように、時刻t1およびt2の間に測定電圧のピークが存在する。時刻t1よりも前の測定電圧は、層の厚さの割り出しには使用されない。
【0035】
受信コイルを横切る磁界が変化すると、受信コイルに電圧が誘導されることは、周知の事実である。誘導される電圧は、以下の式


によるu(t)であり、
coil(t)は、コイルの表面全体について積分されたコイルの軸方向の磁界である。C1は、コイルの巻き数に依存する定数である。
【0036】
図6は、時刻t2において磁界に生じた変動に起因して金属層の表面に誘導される電流を示している。時刻t2においては、電流は層の表面に誘導されているだけである。図7は、時刻t3における誘導電流を示している。この時刻において、電流は層へと浸透しており、層と物体との間の境界22に向かって移動している。誘導電流が境界22に向かって移動するとき、受信コイルの磁界が変化する。例えばマクスウェル方程式によって、磁界の変化を計算することができる。送信コイルによって加えられた磁界が、層の全体にわたってほぼ一定である場合、受信コイルにおける磁界は、


と記述することができ、
tは、磁界の変動が生じてから経過した時間であり、
ρ1は、層の抵抗率であり、
C3およびC2は、定数である。
【0037】
受信コイルの電圧は、受信コイルを横切る磁界の変化である。数式2を微分することによって、受信コイルの電圧を


と割り出すことができ、
u(t)は、磁界の変動が生じてから時間tが経過した時刻の測定電圧である。
【0038】
電圧が時刻t3において測定される場合、磁界の変動が生じてから経過した時間tは、t3−t2である。
上記の数式3から、層の抵抗率の平方根を、


と割り出すことができ、
u(t3)は、時刻t3における測定電圧であり、
t2は、層に電流が誘導されたときの時刻であり、
定数2/(C1・C2)は、既知の抵抗率を有する均質な材料について時刻t3において測定を行い、数式3を適用することによって割り出すことができる。
【0039】
数式10から、時刻t3における測定電圧にもとづいて、層の抵抗率を割り出すことが可能である。
【0040】
誘導された電流が層を通過して移動し、その結果磁界の変化が層においてのみ生じるかぎりにおいて、測定電圧は、上記数式3による時間の関係に従うであろう。しかしながら、電流が層と物体との間の境界22に浸透する場合、測定電圧は、物体の抵抗率ρ2が層の抵抗率ρ1とは異なるため、もはや数式3には従わない。
【0041】
誘導電流が物体へと深く浸透し、その結果かなり長い時間の後に、測定電圧が、以下の関係


によって記述されるとき、
ρ2は、物体の抵抗率である。
【0042】
図8は、層2と物体1との間の境界22を通過し、物体を通過して移動する誘導電流を示している。
【0043】
図5は、層と同じ抵抗率を有する均質な物体について、受信コイルの電圧が時間の関数としてどのように変化するかを示しており(破線の曲線B)、異なる抵抗率の層を有する物体について、受信コイルの電圧が時間の関数としてどのように変化するかを示している(曲線A)。曲線は、誘導電流が層と物体との間の境界を横切るときの時刻tδまでは、重なり合っている。曲線Bは、層と物体との間の抵抗率の相違に起因して、時刻tδにおいて曲線Aから逸脱する。電圧の測定値を、層と同じ抵抗率を有する均質な物体について計算される電圧の値と比較することによって、曲線が逸脱する時点を検出することができ、その結果誘導電流が層と物体との間の境界を横切るときの時刻tδを割り出すことができる。
【0044】
数式4による抵抗率の平方根を、数式3による電圧の数式に挿入することによって、曲線Bによって示されるとおり、層と同じ抵抗率を有する均質な物体の場合について、電圧−時間の関係を計算することができる。

【0045】
t3の後の適切な時刻において、層と物体との間の境界に起因する変化が生じる前に、好ましくは時刻t3からtnまでの一定のステップ長による測定値の自動収集が開始される。本発明の第1の実施形態によれば、収集された測定値と数式6から計算される値との間のずれが、各々の測定値について計算される。このずれが所定の限界値よりも大きくなるとき、t3からの時間が、電流が層へと浸透して層と物体との間の境界に達するまでに要する時間の指標として保存される。この時間は、tδと表示される。
【0046】
数式3および4に関するやり方と同じやり方で、印加磁界の変動が生じた後の特定の瞬間について、導電性材料における誘導電流の浸透の深さδを、マクスウェル方程式によって計算することが可能である。層における浸透の深さδを、


として計算することができる。
【0047】
C4は、定数であって、抵抗率がnOHmmという単位で与えられ、dがμmという単位で与えられ、時間がμsという単位で与えられる場合、100のオーダーである。
【0048】
数式4が数式7に挿入され、時刻tがtδ−t2である場合、電流が層と物体との間の境界へと浸透するときの時刻tδにおける誘導電流の深さ、したがって層の厚さdを、計算することができる。


ここで、t2は、層に電流が誘導されたときの時刻であり、tδは、電流が層と物体との間の境界に達するまでに要する時間である。
【0049】
定数2C4/(C1・C2)は、さまざまなやり方で割り出すことが可能である。1つのやり方は、定数を理論的に割り出すことである。測定によって定数を割り出すことも容易である。測定を、既知の厚さの層を有する材料について行うことができる。
【0050】
数式8は、層の厚さdと、時刻t3における金属層外部の磁界の変化の測定値u(t3)と、電流が層と物体との間の境界に達するまでに要する時間との間の数学的関係を記述している。
【0051】
本発明の好ましい実施形態によれば、測定信号が積分される。受信コイルからの信号を、層の厚さおよび抵抗率の計算に使用する前に積分することが、きわめて好適であることが証明されている。積分は、より安定した測定値をもたらし、測定の理解を容易にする。
【0052】
図9は、金属製の物体上の金属層の厚さを測定するための装置であって、本発明のこの実施形態を実行するために適している装置の例を示している。この実施形態において、送信コイルへの電流の供給は、図2に示した実施形態と同じやり方で構成されている。受信コイル5は、図2に開示した実施形態のように、作動増幅器17へと接続されている。この装置は、積分器24を演算ユニット9と作動増幅器17との間に接続して備えている点で、図2に開示した装置と異なっている。受信コイルからの測定信号u(t)は、時刻t2を始まりとして積分される。これは、スイッチ25によって行われる。スイッチが閉じられると、積分器24は非稼動になりゼロに設定され、スイッチが開かれると、積分器は稼動する。スイッチは、時刻t2までは閉じられている。時刻t2において、スイッチが開かれ、積分が開始される。積分器の後の信号が、3つの時刻t3、t4、およびt5において測定される。装置は、3つのサンプルホールド増幅器26(sample−and−hold amplifier)を備えている。3つの測定は、3つのサンプルホールド増幅器26において該当の時刻における信号を測定することによって実行される。3つの測定値Iu(t3)、Iu(t4)、およびIu(t5)が、層の厚さならびに層(および、おそらくは物体)の抵抗率を計算するために使用される。計算は、例えばPCコンピュータである演算ユニット9において実行される。
【0053】
誘導電流が層を通過して移動するときに、受信コイルの測定電圧は数式3によって記述される。数式3を時刻t2からtまで積分することによって、積分された電圧Iu(t)は、以下の式fによって記述され、t1とt2との間の時間差はきわめて小さいので、t1およびt2はほぼ同じ時刻である。

【0054】
この式は、定数を除いて、浸透の深さδの式と同じであるため、積分された電圧Iu(t)は、δに比例する。このように、積分された電圧は、誘導電流がどのくらい深く材料へと浸透したかの指標である。本発明のこの実施形態によれば、積分された電圧Iu(t)が、時刻t3において測定され、電流がきわめて素早くオフにされたならば、送信コイルへの電流の変動からの時間が、t3−t2である。上述の式6から、式


によって層の抵抗率の平方根を割り出すことができる。
【0055】
既知の抵抗率を有する金属板について測定を行うことによって、定数1/(C1・C2)を割り出すことができる。
【0056】
式10から、時刻t3における測定電圧の積分にもとづいて、層の抵抗率を割り出すことが可能である。
【0057】
磁界の変化が層にとどまるかぎりにおいて、積分された電圧は、数式9による時間関係に従う。しかしながら、誘導電流が層と物体との間の境界22に浸透したとき、この関係は変化する。誘導電流が物体の基材へと深く浸透したとき、積分電圧は、以下の関係


によって記述され、ρ2は、物体の抵抗率である。数式9および10を組み合わせることによって、層と同じ抵抗率の均質な物体についての時間関係が成り立つ。

【0058】
図10は、誘導電流が層と物体との間の境界を浸透するときに何が生じるのかを、積分される測定電圧を時間の平方根の関数として示すことによって説明している。数式12から分かるように、積分された電圧と時間の平方根との間には、線形関係が存在する。破線D1は、層と同じ抵抗率を有する均質な物体における電圧の積分の計算値を示している。曲線Cは、物体の材料とは異なる抵抗率の層で覆われた物体について測定された積分された電圧信号を示している。図から分かるように、曲線の最初の部分は、この曲線の第2の部分とは異なる傾きを有している。曲線Cの最初の部分の傾きは、層の抵抗率ρ1の平方根に比例しており、曲線Cの第2の部分は、物体の抵抗率ρ2の平方根に比例している。
【0059】
測定時刻t4およびt5は、誘導電流が層と基材との間の境界および物体の材料の一部に浸透しているように選択される。これらの時刻において、積分電圧は、時間の平方根に対して線形であり、物体の抵抗率ρ2の平方根に比例する傾きを有する。点Iu(t4)/t4およびIu(t5)/t5を通過する線と数式12に従って計算される線との間の交点は、誘導電流が層と物体との間の境界に浸透する図中の点をもたらす。数式7および数式10を組み合わせることによって、誘導電流の浸透の深さδ、したがって層の厚さdを、以下の式


に従って割り出すことができ、tδは、誘導電流が層と物体との間の境界に浸透するときの時点である。時点tδを、測定される磁界の変化の積分と時間の平方根との間の関係が、線形から逸脱するときの時点として割り出すことができる。
【0060】
積分された電圧Iu(t)が浸透の深さδに比例するため、交点tδにおける積分された電圧の値Iu(tδ)は、層の厚さdに比例する。したがって、層の厚さdは、電流が境界に浸透するときの時刻tδにおいて割り出される積分値に比例する。


Iu(tδ)は、時刻tδにおける測定電圧の積分である。
【0061】
定数C5は、既知の厚さの層を有する物体を測定することによって割り出すことができる。
【0062】
例えば、Iu(tδ)は、図10に示されるように、測定される磁界の変化の積分と時間の平方根との間の関係が線形から逸脱するときに積分値として割り出され、層の厚さdが、それにもとづいて推定される。この実施形態は、誘導電流が層と物体との間の境界に浸透する時点t(δ)を割り出す必要がないため、数式13を使用する実施形態よりも単純である。
【0063】
層の厚さを正確に測定するために、物体の材料は、層と比べて厚くなければならず、少なくとも層の3倍の厚さでなければならず、時刻t4は、誘導電流が境界を通過してから長い時間の後で測定されなければならず、適切には層への浸透に要する時間の5倍超の時間の後で測定されなければならない。しかしながら、これらの要件が満たされない場合にも、本発明による方法を使用することが可能である。
【0064】
時刻t3は、誘導電流が未だ層に浸透していないように選択しなければならない。さらに、時刻t4およびt5は、誘導電流が層と物体との間の境界に充分に浸透しているように選択しなければならない。これには、測定の際に、誘導電流がいつ境界に浸透するのかが少なくとも大まかに知られていることが必要である。多くの場合、層のおおよその厚さは前もって知られているが、厚さをより高い精度で割り出すことが求められる。それらの場合、時刻t3、t4、およびt5を割り出すために、以前に測定された厚さの大まかな指標を使用することができる。第1の測定において、積分電圧が可能なかぎり短い時刻t3において測定され、この測定から、層の抵抗率の平方根が、推定による浸透時間によって数式4から計算され、時刻t4およびt5が割り出され、サンプルホールド増幅器が相応に調節される。層の厚さの概略値が知られていない場合、時刻t3は、第1の測定において可能なかぎり短く選択され、時点t4およびt5は、可能なかぎり遅く選択される。電圧の積分における対応する測定値から、浸透の時間の第1の値が、数式13に従って計算される。浸透の時間のこの計算値が、他の機会のための設定値として使用される。
【0065】
積分された電圧と時間の平方根との間の関係の形態を、tδよりもいくぶんだけ長い時間について計算することができる。複雑であってもそのような計算は、t4およびt5がtδの直後に選択される場合でも、dを割り出すために使用することができる。
【0066】
以下で、本発明のさらなる実施形態を開示する。この実施形態においては、層の抵抗率ρ1が、前もって知られている。抵抗率は、材料の組成が既知であるという事実によって知ることができ、または物体に層を適用する前に抵抗率を測定することによって知ることができる。さらに、物体の材料の抵抗率が、前もって知られている。層の既知の抵抗率が数式3へと挿入され、定数C1・C2が既知である場合、電圧−時間の関係を、層と同じ抵抗率を有する均質な物体の場合について計算することができる。誘導電流が層と物体との間の境界を通過する時点の後の適切な時刻t4において、積分された電圧の値が測定され、層の厚さdが、以下の式


に従って、積分された測定信号Iu(t4)と、測定の時刻t4と、層の抵抗率ρ1および物体の抵抗率ρ2とにもとづいて計算される。
【0067】
時刻t4は、電流が層と物体との間の境界に浸透するのに要する時間よりも長くなるように選択され、すなわち測定される電圧値が層と同じ抵抗率を有する均質な物体についての計算値から逸脱し始める時間よりも長くなるように選択される。
【0068】
本発明は、開示された実施形態に限定されず、以下の特許請求の範囲内で変形および変更が可能である。例えば、層の厚さを割り出すために、上述した数学的関係以外にも層の厚さと測定値との間の他の数学的関係を、使用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の物体(1)上に設けられ、該金属製の物体の抵抗率(ρ2)とは異なる抵抗率(ρ1)を有している金属層(2)の厚さを測定するための方法であって、
前記金属層の近傍に磁界を生じさせることと、
前記金属層の表面に電流が誘導されるよう、前記磁界に変動を生じさせることと、
前記誘導電流が前記金属層を伝搬するのに要する時間よりも長い期間にわたって、前記誘導電流に起因する前記金属層外部の磁界の変化を測定することと、
前記金属層の厚さと前記磁界の変化の測定値との間の数学的関係にもとづいて、前記金属層の厚さ(d)を割り出すこととを含む、方法。
【請求項2】
前記変動が、前記磁界がその以前の値とは大きく異なる値へと急激に変化させられるステップ関数として生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記変動が、前記磁界を急激にゼロへと低下させることによって生じる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記磁界の変化が、前記金属層(2)の近くに配置されるコイル(5)の電圧を測定することによって測定される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記磁界の変化の測定値が、前記金属層と同じ抵抗率を有する均質な物体についての磁界の変化の予想値から逸脱するときを検出することと、
前記検出にもとづいて、前記誘導電流が前記金属層に伝搬して前記金属層と前記金属製の物体との間の境界に達するまでの時間を推定することと、
前記金属層の厚さと、前記誘導電流が前記金属層と前記金属製の物体との間の境界に達するまでの時間との間の数学的関係にもとづいて、前記金属層の厚さ(d)を割り出すこととを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
測定される磁界の変化を積分することと、
前記金属層の厚さと前記磁界の変化の測定値の積分との間の数学的関係にもとづいて、前記金属層の厚さ(d)を割り出すこととを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記測定される磁界の変化の積分と時間の平方根との間の関係が線形から逸脱するときに積分値(Iu(tδ))を割り出すことと、
該割り出された積分値にもとづき、該割り出された積分値に比例するものとして前記金属層の厚さを推定することとを含む、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記測定される磁界の変化の積分と時間の平方根との間の関係が線形から逸脱するときの時刻(tδ)、すなわち電流が前記境界を通過するときの時刻を割り出すことと、
該割り出された時刻にもとづき、前記誘導電流が前記金属層と前記金属製の物体との間の境界に達するまでに要する時間を推定することとを含む、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項9】
前記磁界の変動が前記金属層を通過して伝搬する前に測定される磁界の変化にもとづいて、前記金属層の抵抗率を割り出すことを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
金属製の物体(1)上に設けられ、該金属製の物体の抵抗率(ρ2)とは異なる抵抗率(ρ1)を有する金属層(2)の厚さを測定するための装置であって、
前記金属層の近傍に磁界を生じさせ、前記金属層の表面に電流が誘導されるように前記磁界に変動を生じさせるように配置される第1のデバイス(4、7)と、
前記誘導電流が前記金属層を伝搬するのに要する時間よりも長い期間にわたって、前記誘導電流に起因する前記金属層外部の磁界の変化を測定するように配置される第2のデバイス(5、8)と、
前記測定される磁界の変化を受信し、前記金属層の厚さと前記磁界の変化の測定値との間の数学的関係にもとづいて、前記金属層の厚さ(d)を割り出すように構成される演算ユニット(9)とを備えることを特徴とする、装置。
【請求項11】
前記第1のデバイスが、時間変化する電流が供給されるコイル(4)を備えており、該コイルに供給される電流を急激に変化させることによって前記変動を生じさせるように配置される、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記第2のデバイスが、コイル(5)を備えており、該コイルの電圧を測定することによって該コイルを横切る磁界の変化を測定するように配置される、請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
前記演算ユニット(9)が、
前記磁界の変化の測定値が、前記金属層と同じ抵抗率を有する均質な物体についての磁界の変化の予想値から逸脱するときを検出し、
前記検出にもとづいて、前記誘導電流が前記金属層を伝搬して前記金属層と前記金属製の物体との間の境界に達するまでに要する時間を推定し、
前記金属層の厚さと、前記誘導電流が前記金属層と前記金属製の物体との間の境界に達するまでに要する時間との間の数学的関係にもとづいて、前記金属層の厚さ(d)を割り出すように構成される、請求項10〜12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
測定される磁界の変化を積分するように配置される積分器(17)を備えており、
前記演算ユニット(9)が、
前記測定される磁界の変化の積分を受信し、
前記金属層の厚さと前記磁界の変化の測定値の積分との間の数学的関係にもとづいて、前記金属層の厚さ(d)を割り出すように構成されている、請求項10〜13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記演算ユニット(9)が、前記磁界の変動が前記金属層を通過して伝搬する前に測定される磁界の変化にもとづいて、前記金属層の抵抗率を割り出すように構成されている、請求項10〜14のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−520990(P2012−520990A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500076(P2012−500076)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053140
【国際公開番号】WO2010/105668
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(302037607)エービービー エービー (11)
【Fターム(参考)】