説明

金属製ガス容器内壁サビ取り用球体の取出し工具及び方法

【課題】金属製ガス容器内壁サビ取り用球体の取出し作業を従来の方法より簡単かつ短時間に行うことを可能として金属製ガス容器の整備時間を大幅に短縮化することができ、さらにサビ取り用球体の取出し作業に伴う身体的負担及び疲労を軽減することの可能な、金属製ガス容器内壁サビ取り用球体の取出し工具及び方法を提供する。
【解決手段】鉄球取出し工具10は、ハンドル部12と、シャフト部13と、アーム部14と、パイプ部16とを備える。パイプ部16外周面には先端側から基端側に向かって切欠22が形成されている。パイプ部16が高圧ガス容器内に挿入されることにより、高圧ガス容器内のサビ取り用鉄球を高圧ガス容器外に取り出すための通路が確保される。この状態で、ハンドル部12が回されることによりパイプ部16が高圧ガス容器内で回転し、高圧ガス容器内で鉄球の置換・取出しが促進される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製ガス容器内壁のサビ取り用に前記金属製ガス容器内に入れた球体を前記金属製ガス容器外に取り出すための工具及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使用済みの金属製ガス容器(例えば高圧ガス容器)の再検査で金属製ガス容器内壁にサビの発生があった場合、そのサビを取るために金属製ガス容器内にサビ取り用球体(例えば鉄球)を入れる。この球体は、サビを取り終えた後に金属製ガス容器外に取り出す必要がある。従来、サビ取り用球体の取出し作業は、千枚通しの抜き差し方式によるものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のように千枚通しの抜き差しによって球体を取り出すには、熟練した技術を習得した整備員でなければ効率的な作業を行うことができず、多くの場合、サビ取りに要する工数(時間)の半分程度はサビ取り用球体の取出作業のために費やされている。また、従来の方法では手首や肘などへの負担が大きく、疲労が蓄積しやすいという問題がある。
【0004】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、金属製ガス容器内壁サビ取り用球体の取出し作業を従来の方法より簡単かつ短時間に行うことを可能として金属製ガス容器の整備時間を大幅に短縮化することができ、さらにサビ取り用球体の取出し作業に伴う身体的負担及び疲労を軽減することの可能な、金属製ガス容器内壁サビ取り用球体の取出し工具及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様は、金属製ガス容器内壁サビ取り用球体の取出し工具である。この工具は、外周面に開口もしくは切欠が形成されたパイプ部と、前記パイプ部の基端側に取り付けられたハンドル部とを備える。
【0006】
ある態様の工具において、前記パイプ部が前記金属製ガス容器のバルブ取付口より柔らかい材質で形成されていてもよい。
【0007】
ある態様の工具において、前記金属製ガス容器のバルブ取付口より前記パイプ部が前記金属製ガス容器内に先端側から挿入されることにより、前記金属製ガス容器内の前記サビ取り用球体を前記金属製ガス容器外に取り出すための通路が確保されてもよい。
【0008】
ある態様の工具において、前記金属製ガス容器のバルブ取付口より前記パイプ部が前記金属製ガス容器内に先端側から挿入された状態で前記ハンドル部が回されることにより、前記パイプ部が前記金属製ガス容器内で前記パイプ部を軸として回転してもよい。
【0009】
本発明の別の態様は、金属製ガス容器内壁サビ取り用球体の取出し方法である。この方法は、
外周面に開口もしくは切欠が形成されたパイプ部と、前記パイプ部の基端側に取り付けられたハンドル部とを備える工具を用い、金属製ガス容器内壁のサビ取り用の球体を前記金属製ガス容器外に取り出す方法であり、
前記金属製ガス容器のバルブ取付口より前記パイプ部を先端側から挿入するパイプ部挿入工程と、
前記金属製ガス容器を前記バルブ取付口が下側となるように保持しながら、前記ハンドル部を回すことにより前記パイプ部を前記金属製ガス容器内で前記パイプ部を軸として回転させるパイプ部回転工程とを有する。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、金属製ガス容器内壁サビ取り用球体の取出し作業を従来の方法より簡単かつ短時間に行うことを可能として金属製ガス容器の整備時間を大幅に短縮化することができ、さらにサビ取り用球体の取出し作業に伴う身体的負担及び疲労を軽減することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態として、高圧ガス容器内壁サビ取り用鉄球の取出し工具及び方法(以下「鉄球取出し工具」及び「鉄球取出し方法」)について詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態にかかる鉄球取出し工具10の正面図、図2は同平面図、図3は同右側面図である。図4は、鉄球取出し工具10を金属製ガス容器としての高圧ガス容器50に挿入した状態の全体図である。図5は、鉄球取出し工具10による高圧ガス容器50内での鉄球の置換・取出しのイメージ図である。
【0014】
鉄球取出し工具10は、ハンドル部12と、シャフト部13と、アーム部14と、パイプ部16とを備える。パイプ部16外周面には先端側から基端側に向かって切欠22が形成されている。切欠22は、取り出すべき球体としての鉄球20(図4又は図5参照)の径よりも十分大きな幅である。また、切欠22は、図4に示されるように、高圧ガス容器50のバルブ取付口52よりパイプ部16が高圧ガス容器50内に先端側から挿入されたときに高圧ガス容器50内の挿入根本部分(出口近傍)にまで達する長さである。パイプ部16が高圧ガス容器50内に挿入されることにより、高圧ガス容器50内のサビ取り用鉄球20を高圧ガス容器50外に取り出すための通路が確保される。パイプ部16は、高圧ガス容器50のバルブ取付口52より柔らかい材質で形成されている。例えば高圧ガス容器50及びそのバルブ取付口52が鉄製であるとき、パイプ部16は銅製とする。これは高圧ガス容器50入口(バルブ取付口52)のネジをつぶさないように配慮したものである。
【0015】
パイプ部16基端にはアーム部14がパイプ部16と垂直に取り付けられ、アーム部14先端にシャフト部13が固定され、シャフト部13先端にハンドル部12が回転自在に取り付けられる。つまり、ハンドル部12は、アーム部14及びシャフト部13を介してパイプ部16基端側に取り付けられる。ハンドル部12が例えば図4矢印方向に回されると、パイプ部16はパイプ部16を軸として同方向に回転する。
【0016】
以下、鉄球取出し工具10を用いて高圧ガス容器50内のサビ取り用鉄球20を高圧ガス容器50外に取り出す方法(鉄球取出し方法)について説明する。この鉄球取出し方法は、以下の2工程を有する。
【0017】
・パイプ部挿入工程… 高圧ガス容器50のバルブ取付口52より鉄球取出し工具10のパイプ部16を先端側から挿入する。本工程により、高圧ガス容器50から鉄球20を取り出す通路が確保される。
【0018】
・パイプ部回転工程… 図4に示されるように高圧ガス容器50をバルブ取付口52が下側となるように保持しながら、鉄球取出し工具10のハンドル部12を図4矢印方向に回すことにより、パイプ部16を高圧ガス容器50内でパイプ部16を軸として回転させる。本工程により、高圧ガス容器50内の鉄球20は、パイプ部16を経由して高圧ガス容器50外に順次取り出される(パイプ部16基端側の開口から外部に放出される)。このとき、パイプ部16の回転によってまず図5にA,Bで示した鉄球がパイプ部16に取り入れられ、C,D,Eで示した鉄球が重力によりパイプ部16の近くに寄せられる。このような動きの連続で鉄球20が連続的に取り出される。
【0019】
本実施の形態によれば、下記の通りの効果を奏することができる。
【0020】
(1) 鉄球取出し工具10のパイプ部16に切欠22が形成されているので、パイプ部16を図4のように高圧ガス容器50内に挿入した状態で、高圧ガス容器50内の鉄球20を切欠22を介してパイプ部16内に容易に取り入れて外部に取り出すことができる。
【0021】
(2) パイプ部回転工程においては、パイプ部16の回転と重力の作用によって図5に例示のように高圧ガス容器50内で鉄球20の置換が促進され、鉄球20を連続的に効率よく高圧ガス容器50外に取り出すことができる。
【0022】
(3) 一連の作業は従来のような千枚通しの抜き差し方式と比較して簡単なため迅速に行うことができ、高圧ガス容器50の整備時間を短縮することができる。また整備員の技術や経験によって効率が左右される度合いも少なく、整備員ごとの取出し時間の差が縮まる。さらに手首や肘にかかる負担も少なく、疲労しにくい。
【0023】
(4) パイプ部16が高圧ガス容器50のバルブ取付口52より柔らかい材質で形成されているため、バルブ取付口52のネジがつぶれにくい。
【0024】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各工程には請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0025】
実施の形態ではパイプ部16外周面に切欠22が形成されたことで鉄球20をパイプ部16内に取り入れるための間口を広げたが、変形例では切欠22に替えて開口がパイプ部16外周面に形成されてもよい。この場合、開口は鉄球20の径よりも十分大きな径を有するものとする。
【0026】
実施の形態ではハンドル部12はアーム部14を介してパイプ部16基端側に取り付けられたが、変形例ではこれに替えて、パイプ部16基端にリング状の把手を取り付けて、これをハンドル部12としてもよい。この場合はアーム部14が不要となる。
【0027】
実施の形態では金属製ガス容器内壁サビ取り用球体として鉄球を例示したが、変形例では鉄球以外の金属球、あるいはその他の材質の硬質球などを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態にかかる鉄球取出し工具の正面図である。
【図2】同平面図である。
【図3】同右側面図である。
【図4】本発明の実施の形態にかかる鉄球取出し工具を金属製ガス容器としての高圧ガス容器に挿入した状態の全体図である。
【図5】本発明の実施の形態にかかる鉄球取出し工具による高圧ガス容器内での鉄球の置換・取出しのイメージ図である。
【符号の説明】
【0029】
10 鉄球取出し工具
12 ハンドル部
13 シャフト部
14 アーム部
16 パイプ部
20 鉄球
22 切欠
50 高圧ガス容器
52 バルブ取付口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に開口もしくは切欠が形成されたパイプ部と、前記パイプ部の基端側に取り付けられたハンドル部とを備える、金属製ガス容器内壁サビ取り用球体の取出し工具。
【請求項2】
請求項1に記載の工具において、前記パイプ部が前記金属製ガス容器のバルブ取付口より柔らかい材質で形成されている、金属製ガス容器内壁サビ取り用球体の取出し工具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の工具において、前記金属製ガス容器のバルブ取付口より前記パイプ部が前記金属製ガス容器内に先端側から挿入されることにより、前記金属製ガス容器内の前記サビ取り用球体を前記金属製ガス容器外に取り出すための通路が確保される、金属製ガス容器内壁サビ取り用球体の取出し工具。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の工具において、前記金属製ガス容器のバルブ取付口より前記パイプ部が前記金属製ガス容器内に先端側から挿入された状態で前記ハンドル部が回されることにより、前記パイプ部が前記金属製ガス容器内で前記パイプ部を軸として回転する、金属製ガス容器内壁サビ取り用球体の取出し工具。
【請求項5】
外周面に開口もしくは切欠が形成されたパイプ部と、前記パイプ部の基端側に取り付けられたハンドル部とを備える工具を用い、金属製ガス容器内壁のサビ取り用の球体を前記金属製ガス容器外に取り出す方法であり、
前記金属製ガス容器のバルブ取付口より前記パイプ部を先端側から挿入するパイプ部挿入工程と、
前記金属製ガス容器を前記バルブ取付口が下側となるように保持しながら、前記ハンドル部を回すことにより前記パイプ部を前記金属製ガス容器内で前記パイプ部を軸として回転させるパイプ部回転工程とを有する、金属製ガス容器内壁サビ取り用球体の取出し方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−233781(P2009−233781A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81527(P2008−81527)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(390014306)防衛省技術研究本部長 (169)
【Fターム(参考)】