説明

金属製缶の加熱装置

【課題】永久磁石を用いて渦電流を発生させて金属製容器を加熱するための加熱装置を提供する。
【解決手段】本発明の磁石装置1は、液体と液体を内蔵した導電性の材料からできている容器とからなる被加熱物9を加熱するためのものである。加熱装置1を静磁界を発生させるための磁界発生手段12と、磁界発生手段12と被加熱物9を相対的に回転運動させるための回転駆動手段15,16を備え、静磁界の中に被加熱物9を配置している。回転運動により被加熱物9と交差する静磁界の磁束が変化して容器に渦電流が発生し、その熱損失によって被加熱物9を加熱させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム、スチールなどの金属製容器に封印されている液体を加熱するための加熱装置に関する。詳しくは、飲料が入っている金属製缶を加熱するための加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
我々は、アルミニウムやスチール等の金属製缶に封印されているコーヒーや紅茶等の飲料を日常的に飲用している。この飲料の加熱方法は、この容器である金属製缶に渦電流を発生させると、渦電流の熱損失が発生し金属製缶が加熱される。よって、金属製缶から金属製缶内の飲料に熱伝達が行われ、飲料が加温される。金属製缶に渦電流を発生させるための従来の誘導加熱方法を図12と図13に図示している。
【0003】
図12に示すものは、金属製缶200をコイル201の中に配置し、コイル201に交流電流202を印加してコイル201内に交番磁界203を発生させている(特許文献1)。図13には、金属製缶200を受台205の上に配置し、その側面にサーチコイル206を設け、サーチコイル206に交流電流(図示せず)を印加して交番磁界を発生させている(特許文献2、3)。交番磁界の磁力線が金属製缶と交錯し、金属製缶に渦電流を発生させて加熱する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平03−075992号
【特許文献2】特開平10−307956号
【特許文献3】特開平06−282742号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図12に示すようにコイル201で加熱する場合は、磁力線は金属製缶200の蓋に集中する欠点がある。図13に示すようにサーチコイル206で加熱する場合は、サーチコイル206と金属製缶が固定位置で変わらないために金属製缶の一部だけ誘導加熱することになる。このために、金属製缶を回転させるための回転駆動部を設けて、金属製缶を回転させながら加熱し加熱効率を上げている。
【0005】
これらの誘導加熱の方法では、コイル201又はサーチコイル206に数kHzから数MHz程度の高周波の交流電流を印加する必要があり、そのための高周波の電源回路が必要である。また、金属製缶を回転させたりするためには、回転駆動機構が必要である。
本発明は上述のような技術背景のもとになされたものであり、下記の目的を達成する。
本発明の目的は、永久磁石を用いて渦電流を発生させて金属製容器を加熱するための加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記目的を達成するため、次の手段を採る。
本発明1の加熱装置は、容器である被加熱物を、前記被加熱物に渦電流を発生させて、加熱するための加熱装置において、
静磁界を発生させるための磁界発生手段と、
前記静磁界の中に前記被加熱物を配置し、この被加熱物を把持するための把持手段と、
前記磁界発生手段と前記把持手段を相対的に回転運動させ、前記回転運動により前記被加熱物と交差する前記静磁界の磁束を変化させて前記容器に前記渦電流を生じさせて、前記渦電流の熱損失によって前記被加熱物を加熱するための回転駆動手段とからなることを特徴とする。
【0007】
本発明2の加熱装置は、本発明1に記載の加熱装置において、
前記磁界発生手段は、同心状に配置された複数の磁石と継鉄からなり、
前記複数の磁石は、一方の磁極を前記被加熱物へ向け、かつ、隣り合う前記磁石の磁極が反対になるように前記被加熱物の周囲に配置され、
前記複数の磁石の他方の磁極は継鉄に固定されていることを特徴とする。
【0008】
本発明3の加熱装置は、本発明1に記載の加熱装置において、
前記複数の磁石は前記回転の回転軸に対して縦に1以上の層にして配置されていることを特徴とする。
本発明4の加熱装置は、本発明1又は本発明2に記載の加熱装置において、
前記回転駆動手段は、前記磁界発生手段と前記把持手段を互いに逆方向に回転させる歯車機構である逆回転歯車機構を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の加熱装置は、次の効果を奏する。即ち、本発明は、永久磁石が作る磁界中に導電性の容器と永久磁石と相対的に回転運動させて、容器に発生する渦電流によって、容器に内臓された液体を加熱することが可能になった。これにより、誘導コイルを駆動する交流電源を必要とせず、又この誘導コイルが発生する漏洩電磁波を低減させることが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態の加熱装置は、導電性材料からなる被加熱物に流れている渦電流が熱損失を起こして被加熱物を加熱する加熱装置である。この渦電流は、被加熱物の周りに配置された永久磁石と被加熱物が相対的に回転駆動されると発生する。以下、最初に加熱するときの熱エネルギーの理論式、及び、加熱装置の構造、その動作を説明する。
【0011】
〔理論式について〕
電磁気学の理論によると、磁界内に置かれている金属の導体と交錯する磁束の磁束密度が変化すると、導体に渦電流が流れる。導体に渦電流が流れると、導体の固有抵抗によって熱損失が発生し導体が加熱される。この加熱するときの熱エネルギーの量は、次式で表される。
【数1】

【0012】
〔第1の実施の形態〕
(加熱装置の構造)
図1には、本発明の第1の実施の形態の加熱装置の外観を示す斜視図、図2にはその加熱装置の断面図である。本実施の形態の加熱装置1の外観は、円筒状の形をしたものであり、加熱しようとする飲用缶である被加熱物9がその内部に収納される。加熱装置1の外殻を形成する外枠(機体)2は、内部が空洞の筒状で形成されている。この外枠2の上部には、この上端面の開口部を覆うように配置された蓋3が配置されている。後述するように、蓋3は、外枠2内に被加熱物9を収納して外枠2の上部から蓋をして固定するためのものである。
【0013】
蓋3は、外枠2の上部に周知構造の固定金具である2個のロック手段4で固定されている。円筒状の外枠2の外周面の下部には、温度設定手段5が配置されている。この温度設定手段5は、被加熱物9(図2を参照)を加熱するときの温度を設定するための設定手段である。正確には飲用缶の場合、その飲料が最適な加熱温度となるように加温するときの目的とする温度を設定するのための温度設定手段である。外枠2内には温度センサ26(図5参照)が配置されており、この温度センサーの出力値により設定温度に達すると後述するモータ15の電源をコントローラ16の制御により切断する。
【0014】
この温度設定手段5の上部の外枠2には、被加熱物9を加熱するときの後述する磁界発生部12の回転速度を設定するための回転速度設定手段6が配置されている。更に、回転速度設定手段6の上部の外枠2には、電源スイッチ7が配置されている。電源スイッチ7は、加熱装置1の電源を入れるための電源スイッチである。電源コード(以下、コードという。)8は、加熱装置1を商用電源に接続するためのものである。
【0015】
図2に図示している被加熱物9は飲用缶の例である。この飲用缶は、下方が開口されたコップ状のホルダー10内に収納される。ホルダー10は、この内部に飲用缶を把持するための手段である。ホルダー10の外周には、これを取り囲むように回転部材である磁界発生部12が配置されている。磁界発生部12は、多角形ヨーク(継鉄)13、及び磁石14からなる。多角形ヨーク13は、本例では16角形をしたヨーク(継鉄)である。
【0016】
この辺部の一つ置きに永久磁石14が配置固定されている。被加熱物9は、飲用缶の場合は円筒状の形状をしている。被加熱物9は、アルミニウム、鋼板等の導電性の材料からなる容器であり、その内部に飲用の液体が収納されている。以下の説明では、被加熱物9として、容器だけを対象に説明したものと、容器とそれに内蔵された液体とを対象に説明したが、容器の内部に収納された種々のものが知られており、本実施の形態のように液体の飲用物に限定されるものではない。
【0017】
ホルダー10は、容器の外形と合致するように円筒状の構造をしている。ホルダー10は、蝶ネジ11によって蓋3に固定されている。ホルダー10と被加熱物9の外周には、これらの回りで回転する磁界発生部12が設けられている。磁界発生部12は、多角形ヨーク13と、多角形ヨーク13の内面に配置された複数の磁石14から構成される。この中央部にはホルダー10と被加熱物9を配置するための円筒状の空間が配置されている。これらの磁石14の一方の磁極は被加熱物9へ向くように配置され、磁石14の他方の磁極は、多角形ヨーク13の内面に固定されている。
【0018】
外枠2の底部には、磁界発生部12を回転駆動させるための回転駆動部が固定設置されている。この回転駆動部は、磁界発生部12を回転駆動させるための動力源であるモータ15と、このモータ15の回転速度、回転の有無等を制御するためのコントローラ16から構成される。回転駆動部は電源コード8を介して電源に接続されている。電源は、商用交流電源又はバッテリーである。電源は、商用交流電源の場合は、交流直流変換器(図示せず)が必要である。
【0019】
被加熱物9は、スラスト軸受17の上に置かれ、その上からホルダー10で覆い被される。スラスト軸受17は、モータ15が回転して磁界発生部12を回転させるとき、スラスト軸受17の上に被加熱物9が載せられても、磁界発生部12が回転運動をスムーズにするためのものである。被加熱物9は液体を内蔵した缶である。この缶は、アルミニウム、スチール等の金属製の板材料からなり、均等な加熱という意味では円筒状の形状をしているものが好ましいが、多角柱形状等であっても良い。この内部の液体としては、例えば飲料の水、コーヒー、茶、ミネラルウォータや各種のジュース等である。
【0020】
更に、ホルダー10は、被加熱物9を保持して、回転運動する磁界発生部12の中に保持し固定し、磁界発生部12から発生される磁界に影響を与えないものであればどのような形状、材質のものでも良い。ホルダー10は、例えば、蓋3と一体化されたもので、被加熱物9を覆い被せる円筒状のものでも良い。また、図1及び2に示すように、蓋3に蝶ネジ11によって固定されたもので、被加熱物9を保持し固定するものでも良い。ホルダー10の材料としては、プラスチック等の非磁性材料が好ましい。
【0021】
(磁界発生部の構造)
図3は、磁界発生部12の構造を図示したものである。図3(a)は、磁界発生部12の水平断面図である。図3(a)に図示するように、被加熱物9の外周に8個の磁石14が等角度間隔で、かつ被加工物9の中心から半径方向(放射方向)になるように配置固定されている。1個の磁石14は、それに隣り合う磁石14と反対の磁極が被加熱物9へ向くように配置されている。例えば、1個の磁石14は磁極のN極が被加熱物9へ向くように配置されていれば、それの両側の磁石はS極が被加熱物9へ向くように配置されている。
【0022】
図3(b)は、磁界発生部12の垂直断面図である。図3(b)に図示するように、磁石14は、複数の磁石層14−1、14−2から構成される。ここでは、2層だけを例示しているが、1層又は3層以上であっても良い。磁石14を製造するときにコスト、品質によって多様な構成が可能である。磁石14は、ネオジウム磁石等の永久磁石からなる。永久磁石であるので、磁石14は常に静磁界を作る。磁石14の磁極の内、被加熱物9へ向いている磁極のN極とS極の数が等しい。
【0023】
被加熱物9へ向いているこれらの磁極から発生する磁束は互いに打ち消しあうので磁界は磁界発生部12から外側へ漏洩することは無い。磁石14の磁極の内、多角形ヨーク13に固定されている磁極から発生する磁束は、多角形ヨーク13から外側へ漏洩することはない。よって、磁界発生部12からの磁界が外側へ漏洩することはほとんど無くその内部だけにとどまる。
【0024】
この静磁界の磁束18は、図4に図示したように概念的に示すことができる。被加熱物9へ向いている磁石14の磁極側から発生した磁束は、それに隣り合う磁石に入るようになっている。磁石14の表面に近い部分、被加熱物9の外周周辺付近では磁束密度が高くなっている。本実施の形態では磁界発生部12を回転駆動させるモータ15の回転速度は、概ね毎分500〜5000/rpmで回転させる。ただし、このモータ15の回転速度は、磁石の種類、設定温度、被加熱物等の種類によって異なる。
【0025】
図5には、コントローラ16の構成の例を示している。コントローラ16は、中央処理装置21、ROM22、RAM23、インターフェース手段24、表示手段25、温度センサ26、モータ制御部27、クロック発振手段28、判別手段29等から構成される。中央処理装置21は、コントローラ16全体を動作させるためのプログラムである制御プログラムを動作させて、加熱装置1全体を制御するための中央処理装置である。ROM22は、制御プログラム、その初期化に必要なデータを格納した読取専用のメモリである。
【0026】
RAM23は、上記の制御プログラムの動作時のデータを格納するためのメモリである。インターフェース手段24は、温度設定手段5、回転速度設定手段6、電源スイッチ7と接続を提供するためのインターフェースである。又、外部装置から加熱装置1を遠隔制御するためのインターフェースとしても利用することができる。表示手段25は、コントローラ16の動作状態を示すためのもので、LCDディスプレイ、LED等が使用できる。
【0027】
温度センサ26は、被加熱物9の温度を検知するためのセンサである。モータ制御部27は、モータ15の回転開始、その停止、回転速度の制御を行うためのものである。クロック発振手段28は、中央処理装置21用又は、モータ16の回転時間の計算等のために必要なクロックを発振させるためのものである。判別手段29は、被加熱物9の大きさ、その材料の種類等を判別するためのセンサである。
【0028】
〔動作〕
以下、液体が入っている被加熱物9を利用者が暖める手順を図6のフローチャート参照しながら説明する。利用者は、被加熱物9を加熱するときの加熱装置1の蓋3を開けて、被加熱物9をその中に入れる(ステップ1)。そして、加熱装置1の上面開口部に蓋3を蓋して閉じてロック手段4でロックを掛ける。蝶ネジ11を回しながらホルダー10に被加熱物9を保持する。(ステップ2)。利用者は、コード8が電源に接続されていることを確認する。接続されていない場合は電源に接続する(ステップ3)。
【0029】
その後は、温度設定手段5によって被加熱物9を加熱する温度を設定する(ステップ4)。回転速度設定手段6によって、モータ15の回転速度を設定する(ステップ5)。利用者が電源スイッチ7を押して加熱動作を開始させる(ステップ6)。加熱装置1は被加熱物9内の液体を設定温度に加熱するまで動作して自動的に停止する。利用者は、加熱装置1が動作停止したら蓋3を開けて、加熱装置1内から被加熱物9を取り出し(ステップ7)、それを利用する(ステップ8)。
【0030】
被加熱物9を加熱する温度は、被加熱物9に内蔵されている飲料の種類によって、または、それを飲む人の好みによって変化する。被加熱物9の温度は、加熱装置1に内蔵されている温度センサ26(図5を参照)によって測定することができる。モータ15の回転速度は、被加熱物9を加熱する速度であると考えることができる。モータ15の回転速度は被加熱物9ができている材料、その大きさ、加熱温度に大きく依存する。モータ15の回転速度を大きくすれば被加熱物9を速く加熱する。モータ15の回転速度を遅くすればその逆になる。
【0031】
このように被加熱物9を加熱するときは、モータ15の回転速度が重要なファクターになるが、磁石14の種類、磁石14から発生する磁界の強さも重要なファクターである。現在、市販されているアルミニウム製の缶(350ミリリットル)に入っているコーヒーの場合を考える。この場合は、毎分500〜1200回転の回転速度でモータ15を動作させることが好ましい。この値より大きく又は遅くして加熱時間の短縮又は増加を図ることもできることもできる。
【0032】
回転速度設定手段6、温度設定手段5、温度センサ26は、公知技術でありその詳しい構造、動作の説明は省略する。回転速度設定手段6、温度設定手段5、温度センサ26は、上述した又はこれから説明するような機能を有するものであればどのような形状、動作原理、構造のものであっても良い。
【0033】
次に、コントローラ16によって加熱装置1の動作を制御する手順を図7を参照して説明する。図7は、制御プログラムの動作手順を示したフローチャートである。電源スイッチ7が押されると、中央処理装置21によって、ROM22から制御プログラムが呼び出されて動作する。制御プログラムは、ROM22に格納されている初期データで初期化処理を行う(ステップ11)。
【0034】
制御プログラムは、温度設定手段5によって設定された温度の値Twを取り込む(ステップ12)。制御プログラムは、回転速度設定手段6によって設定されたモータ15の回転速度Vの値を取り込む(ステップ13)。制御プログラムは、モータ15を駆動するための命令をモータ制御部27に送信する(ステップ14)。モータ制御部27は、モータ15を駆動させる。モータ15が回転し、磁界発生部12を回転させる。
【0035】
磁界発生部12が回転すると、その磁石14から発生する磁束が被加熱物9の周りを回転し、被加熱物9と交錯する磁束が変化する。被加熱物9と交錯する磁束の密度が変化すると、被加熱物9に渦電流が流れる。この渦電流は熱損失を発生させ、被加熱物9を加熱する。被加熱物9からそれに内蔵されている液体へ熱伝達が行われ、液体が暖まる。この加熱は、数式1で表される熱エネルギーの量に熱伝達時の損失係数、保温材などによる損失係数を乗じた熱量になる。
【0036】
また、モータ15が駆動しているときに、温度センサ26で被加熱物9の温度を常時測定している。制御プログラムは、温度センサ26で測定した温度の値Tsを取り込む(ステップ15)。そして、制御プログラムは、温度の値Tsと設定温度の値Twとの比較を行いながら被加熱物9の加熱を制御する(ステップ16、18、15)。温度の値Tsが設定温度の値Tw以上になると、モータ15を停止する命令をモータ制御部27に送信する(ステップ16、17)。モータ制御部27は、モータ15を停止させる。
【0037】
このように磁石14を回転させて交番磁界を作り、その磁界を被加熱物9と交錯させて渦電流を発生させている。従来から渦電流を発生させるために必要であった誘導電流用の高周波電源を必要としなくなり、かつ、このときに発生する高周波の電磁波の発生を低減することが可能になった。
【0038】
〔第2の実施の形態〕
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。図8は、第2の実施の形態の加熱装置101の断面図である。以下、第2の実施の形態の加熱装置101の構造を説明するとき、第1の実施の形態の加熱装置1と同一の機能と構造を有する部分については同じ符号を用いる。また、同様な構造、機能を説明するときはその内容を省略し、異なっている部分だけの説明をする。本発明の第2の実施の形態の加熱装置101は、第1の実施の形態と基本的な加熱原理は同一である。被加熱物と磁界発生手段とも回転駆動されるが、両者が異なる点は、この第2の実施の形態の加熱装置101は両者を相対的に逆回転方向に回転させるための逆回転駆動歯車機構を有している点である。
【0039】
加熱装置101は、加熱装置1(図1を参照)と同様の外枠(機体)2、コード8、モータ15、コントローラ16を有している。モータ15の出力軸には、被加熱物9を保持するためのホルダー110が連結して固定されている。モータ15が起動されると、ホルダー110が回転するような構造になっている。ホルダー110の外周には、ヨーク113と、ヨーク113の内面に配置された複数の磁石114がある。以下は、ヨーク113と複数の磁石114と合わせたものを磁界発生部として説明する。
【0040】
これらの磁石114は、加熱装置1と同様に、一方の磁極は被加熱物9へ向くように配置され、磁石114の他方の磁極は、ヨーク113の内面に固定されている。ヨーク113は、スペーサ120を介してインターナルギヤ121に固定されている。スペーサ120の材質は、非磁性材から作られている。インターナルギヤ121は、環状で内周面に歯が形成されたものであり、このインターナルギヤ121にモータ15の出力軸に固定されたギヤ122と、中間ギヤ123を介して噛み合っている。図9には、インターナルギヤ121、ギヤ122、中間ギヤ123の回転動作の関係を模式的に図示している。
【0041】
モータ15が回転するとギヤ122がそれと一緒に回転し、その回転は中間ギヤ123を介してインターナルギヤ121に伝わる。図9に図示したように、インターナルギヤ121とギヤ122が相対的に反対方向に回転駆動される。結局、ギヤ122、中間ギヤ123、インターナルギヤ121は、磁界発生手段と被加熱物9を把持している把持手段を互いに逆方向に回転させる逆回転歯車機構を構成する。インターナルギヤ121には、スペーサ120、ヨーク113を介して磁石114が一体に固定されている。ギヤ122には、出力軸、ホルダー110を介して被加熱物9が固定されている。よって、磁石114と被加熱物9が相対的に反対方向に回転駆動されることになる。固定円板125は、外枠2の内面に固定されているものである。
【0042】
固定円板125には、中間ギヤ123を軸受(図示せず)を介して回転可能に支持している軸124の下端が固定されている。また、固定円板125の上には、スラスト軸受117が設けられ、それにはインターナルギヤ121が設置されている。インターナルギヤ121は、スラスト軸受117の上に載せられており、スムーズに回転することができる。蓋103は、外枠2と、ホルダー110の上部を蓋するものである。蓋103には、軸受が配置固定されており、蓋103で被加熱物9を蓋したとき、この軸受には被加工物9が接する。このために蓋103は、ホルダー110に保持された被加熱物9が回転するとき、その回転がスムーズにできるような構造である。ホルダー10の材料としては、プラスチック等の非磁性材料であることが望ましい。
【0043】
加熱装置101のモータ15、コントローラ16の動作は、加熱装置1のものと同様である。磁界発生部と被加熱物9は両方が互いに逆方向に回転する。そのため、加熱装置1と比べモータ15の回転速度が2倍少ない場合でも同様な効果が得られる。言い換えると、同じ回転速度で回転している場合は、2倍の効果がある。また、被加熱物9は回転しているので、内容物(内蔵された液体)が振動攪拌されて金属製の容器からの熱が効率的に伝達される。
【0044】
図10は、磁界発生部の構造を図示したものである。被加熱物9の周りに一層8個の磁石114が等間隔で設けられている。1個の磁石114は、それに隣り合う磁石114と反対の磁極を被加熱物9へ向くように配置されている。各磁石114は、ほぼ台形の形状をしている。各磁石114は、円筒形のヨーク113と一体に固定するために各磁石114の外周面は、ヨーク113の内周面に接着されている。磁石114と磁石114との間のスペースは非磁性材でできたスペーサである。磁石114は、図3(b)に図示したように、複数の層から構成される。
【0045】
〔その他の実施の形態〕
次に本発明の第3の実施の形態について説明する。本第3の実施の形態は、制御プログラムの動作の手順を説明したものである。この制御プログラムの動作の手順は、本発明の第1又は2の実施の形態に応用できるものである。加熱装置の構造については、第1又は2の実施の形態で詳しく説明しているのでここでは省略する。
【0046】
前述した加熱装置1、及び加熱装置101は、判別手段29(図5を参照)を有し、ホルダー10にどの種類の材質からできている容器が保持されているかを判別する。渦電流を移用して、被加熱物9がどの金属製であるか否かを判別する。例えば、容器がアルミニウム製かスチール製かを判別する。この容器の材料を判別する技術は公知なものであり、その詳細な説明は省略する。制御プログラムは、判別手段29からの値を読み取り、モータ15の回転速度の制御のために利用することができる。
【0047】
この判別するときの手順をを図11のフローチャートに図示している。電源スイッチ7が押されると、中央処理装置21によって、ROM22から制御プログラムが呼び出されて動作する。制御プログラムは、ROM22に格納されている初期データで初期化処理を行う(ステップ21)。制御プログラムは、温度設定手段5によって設定された温度の値Twを取り込む(ステップ22)。制御プログラムは、回転速度設定手段6によって設定された加熱希望時間tの値を取り込む(ステップ23)。
【0048】
制御プログラムは、判別手段29によって設定された判別値を取り込む(ステップ24)。判別値は、被加熱物9の容器ができている材質によって予め設定された値である。制御プログラムによって、加熱希望時間t、温度の値Tw、判別値を利用してモータ15の回転速度を計算する(ステップ25)。制御プログラムによって、容器の種類を示す判別値と、温度の値Twを用いて被加熱物9を所定の温度、例えば摂氏80度までに暖めるためのモータの回転速度、回転時間を計算する。
【0049】
モータ15を駆動するための命令をモータ制御部27に送信する(ステップ26)。モータ制御部27は、モータ15を駆動させる。モータ15が回転し、磁界発生部12を回転させる。制御プログラムは、温度センサ26で測定した温度の値Tsを取り込む(ステップ27)。そして、制御プログラムは、温度の値Tsと温度の値Twとの比較を行いながら被加熱物9の加熱を制御する(ステップ28、29、27)。温度の値Tsが設定温度の値Tw以上になると、モータ15を停止させる命令をモータ制御部27に送信する(ステップ28、30)。モータ制御部27は、モータ15を停止させる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、加熱した飲料品等の販売、サービスを行う業界で利用すると良い。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態の加熱装置1の斜視図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態の加熱装置1の断面図である。
【図3】図3は、加熱装置1の磁界発生部12の構造を図示した断面図である
【図4】図4は、図3の磁界発生部12内の静磁界の磁束を示す概念図である
【図5】図5は、加熱装置1のコントローラ16の構成を図示した図である。
【図6】図6は、被加熱物9を加熱する手順を示したフローチャートである。
【図7】図7は、コントローラ16によって加熱装置1の動作を制御する手順を示すフローチャートである。
【図8】図8は、本発明の第2の実施の形態の加熱装置101の概要を示す断面図である。
【図9】図9は、ギヤ121〜123の回転駆動方向を様式的に図示した図である。
【図10】図10は、加熱装置101の磁界発生部の構造を図示して図である。
【図11】図11は、本発明の第3の実施の形態の加熱装置の動作を制御する手順(判別手段を有する)を示すフローチャートである。
【図12】図12は、従来の誘導加熱方法(コイル)を示す概念図である。
【図13】図13は、従来の誘導加熱方法(サーチコイル)を示す概念図である。
【符号の説明】
【0052】
1、101…加熱装置
2…外枠
3…蓋
4…ロック手段
5…温度設定手段
6…回転速度設定手段
7…電源スイッチ
9…被加熱物
10…ホルダー
12…磁界発生部
13多角形ヨーク(継鉄)
14…磁石
15…モータ
16…コントローラ
26…温度センサ
27…モータ制御部
28…クロック発振手段
110…ホルダー
113…ヨーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を内蔵し導電性の材料からできている容器である被加熱物を、前記被加熱物に渦電流を発生させて、加熱するための加熱装置において、
静磁界を発生させるための磁界発生手段と、
前記静磁界の中に前記被加熱物を配置し、この被加熱物を把持するための把持手段と、
前記磁界発生手段と前記把持手段を相対的に回転運動させ、前記回転運動により前記被加熱物と交差する前記静磁界の磁束を変化させて前記容器に前記渦電流を生じさせて、前記渦電流の熱損失によって前記被加熱物を加熱するための回転駆動手段と
からなることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱装置において、
前記磁界発生手段は、同心状に配置された複数の磁石と継鉄からなり、
前記複数の磁石は、一方の磁極を前記被加熱物へ向け、かつ、隣り合う前記磁石の磁極が反対になるように前記被加熱物の周囲に配置され、
前記複数の磁石の他方の磁極は継鉄に固定されている
ことを特徴とする加熱装置。
【請求項3】
請求項2に記載の加熱装置において、
前記複数の磁石は前記回転の回転軸に対して縦に1以上の層にして配置されている
ことを特徴とする加熱装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の加熱装置において、
前記回転駆動手段は、前記磁界発生手段と前記把持手段を互いに逆方向に回転させる歯車機構である逆回転歯車機構を備えている
ことを特徴とする加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−236856(P2006−236856A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−51817(P2005−51817)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(599058866)トック・エンジニアリング株式会社 (8)
【Fターム(参考)】