説明

金属触媒担体

【課題】 金属箔にスリット穴を形成することなく排気の拡散作用による浄化性能の向上を得ることができる金属触媒担体の提供。
【解決手段】 波状の金属箔4と小波状の金属箔5の幅方向端部同士を重ねた重ね部7を有した状態でこれら両金属箔4,5を多重に巻回したロール状のハニカム体2を備えることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属触媒担体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、波状の金属箔と小波状または平板状の金属箔とを重ねた状態で多重に巻回して成るロール状のハニカム体を備える金属触媒担体の技術が公知になっている。
また、ハニカム体の金属箔にスリット穴を設けて、排気をハニカム体の主に径方向に拡散させることにより、触媒作用を促進させて浄化性能を向上するようにした金属触媒担体の技術が公知になっている(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2004−154699号公報
【特許文献2】特開2006−150194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の発明にあっては、スリット穴の加工による工数及びコストが増加してしまうという問題点があった。
また、スリット穴により金属箔の剛性が低下してハニカム体を巻回する作業が非常に困難となる。
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、金属箔にスリット穴を形成することなく排気の拡散作用による浄化性能の向上を得ることができる金属触媒担体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明では、それぞれ長尺で波状の金属箔と小波状または平板状の金属箔の幅方向端部同士を重ねた重ね部を有した状態でこれら両金属箔を多重に巻回したロール状のハニカム体を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明では、ハニカム体が、それぞれ長尺で波状の金属箔と小波状または平板状の金属箔の幅方向端部同士を重ねた重ね部を有した状態で多重に巻回してロール状に形成される。
従って、ハニカム体の重ね部を介して排気を径方向に拡散でき、金属箔にスリット穴を形成することなく排気の拡散作用による浄化性能の向上を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
以下、実施例1を説明する。
図1は実施例1の金属触媒担体の側面図、図2は同側断面図、図3は実施例1のハニカム体の製造を説明する図、図4は実施例1のハニカム体の斜視図、図5は実施例1の排気の拡散の様子を説明する模式図である。
【0009】
先ず、全体構成を説明する。
図1、2に示すように、実施例1の金属触媒担体1は、金属製で円柱状のハニカム体2と、このハニカム体2を収容した金属製で円筒状の外筒3等から構成されている。
【0010】
図3に示すように、ハニカム体2は、それぞれ長尺で波状の金属箔4(4a〜4c)と、小波状の金属箔5(5a,5b)を幅方向に所定寸法だけ重ねた状態で、これら金属箔4,5の始端部を公知の巻き上げ機の巻軸6に止着した後、多重に巻回することによりロール状に形成されている。
なお、重ね部7の重ね代の寸法は適宜設定できる。
また、金属箔5a,5bは金属箔4a〜4cよりも波の高さが低く、波ピッチが大きいものが採用されている。
【0011】
これによって、図4に示すように、巻回終了後のハニカム体2には、金属箔4,5の幅方向端部同士が重なった重ね部7が4箇所形成されている(図2、3参照)。
なお、図示を省略するが、金属箔4,5の終端部はハニカム体2の外周部にスポット溶接等により固定されている。
【0012】
さらに、金属箔4,5を巻回後のハニカム体2の外周一部には、ろう箔材8が全周に亘って巻回された後、外筒3内に圧入されて熱処理され、これにより、金属箔4の波の頂部同士と、重ね部7における金属箔4の波の頂部と金属箔5の接している部分がそれぞれ拡散接合されると共に、ハニカム体2と外筒3とがろう箔材8の溶融によりろう付け固定されている(図2参照)。
また、熱処理後のハニカム体2の各金属箔4,5の隙間で形成されるセルの表面には排気浄化用触媒が担持されている。
【0013】
従って、図2に示すように、実施例1のハニカム体2は、排気上流側から金属箔4a、金属箔5a、金属箔4b、金属箔5b、金属箔4cの順番に連結した状態で設けられる他、その外周一部(実施例では金属箔5b)が外筒3に対してろう箔材8を介して固定支持されている。
なお、実施例1では、ろう箔材8をハニカム体2の排気が通過するときの下流側に設けているが、この限りではない。
【0014】
次に、効果を説明する。
このように構成された金属触媒担体1は、外筒3の排気上下流側端部が自動車の内燃機関排気系に連通接続された状態で介装され、図2に示すように、図示を省略するエンジン側の排気上流側から排気(破線矢印で図示)が外筒3内のハニカム体2のセルを通過することにより、触媒の作用により排気中の有害成分(HC、CO、Nox等)を無害成分(CO2、O等)に浄化して排気下流側へ排出する。
【0015】
この際、ハニカム体2を通過する排気は、金属箔4a、金属箔5a、金属箔4b、金属箔5b、金属箔4cの順番に通過すると共に、排気が小波状の金属箔5a,5bで渦巻き状に形成されるセルをそれぞれ通過する際に周方向に渦巻き状に拡散して流れを乱すことにより、触媒との接触を良好にでき、浄化性能を向上できる。
【0016】
また、金属箔4,5の波の高さとピッチが異なるため、金属箔4a、金属箔5a、金属箔4b、金属箔5b、金属箔4c間を移行する際に排気を乱流化でき、触媒作用を促進して浄化性能を向上できる。
また、図5に示すように、ハニカム体2を通過する排気(破線矢印で図示)を、重ね部7における金属箔4,5の隙間9を介してハニカム体2の径方向に拡散でき、これによって、触媒作用を促進させて浄化性能を向上できる。
【0017】
従って、従来の発明のように金属箔にスリット穴を設けた場合に比べて、ハニカム体2を通過する排気の拡散作用による浄化性能の向上を大幅に得ることができ、浄化性能を向上できる。
また、スリット穴の形成に掛かる工数とコストを省略でき、実施も容易である。
また、金属箔4,5の剛性を向上でき、ハニカム体2を巻回する作業をスムーズに行える。
さらに、金属箔4,5及び触媒の使用量を減らして金属製触媒担体1の材料コストの低減とコンパクト化を図れる。
【0018】
次に、効果を説明する。
以上、説明したように、実施例1の発明では、それぞれ長尺で波状の金属箔4と小波状の金属箔5の幅方向端部同士を重ねた重ね部7を有した状態でこれら両金属箔4,5を多重に巻回したロール状のハニカム体2を備えるため、金属箔4,5にスリット穴を形成することなく排気の拡散作用による浄化性能の向上を得ることができる。
【0019】
以上、実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、金属箔5の波の高さや波ピッチは適宜設定でき、金属箔4と同一形状にしても良い。
また、金属箔5を平板状の金属箔で代用しても良い。
また、金属箔4.5の数、即ち重ね部7の形成数は適宜設定できるが、重ね部7は2つ以上形成することが好ましい。
また、実施例1ではハニカム体2の外周を円形状に形成したが、楕円やレーシングトラック型等の他の形状にしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1の金属触媒担体の側面図である。
【図2】実施例1の金属触媒担体の側断面図である。
【図3】実施例1のハニカム体の製造を説明する図である。
【図4】実施例1のハニカム体の斜視図である。
【図5】実施例1の排気の拡散の様子を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0021】
1 金属触媒担体
2 ハニカム体
3 外筒
4、4a、4b、4c 波状の金属箔
5、5a、5b 波状の金属箔
6 巻軸
7 重ね部
8 ろう箔材
9 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ長尺で波状の金属箔と小波状または平板状の金属箔の幅方向端部同士を重ねた重ね部を有した状態でこれら両金属箔を多重に巻回したロール状のハニカム体を備えることを特徴とする金属触媒担体。
【請求項2】
請求項1記載の金属触媒担体において、
前記波状の金属箔と小波状または平板状の金属箔のうちのいずれかを複数で構成して、前記重ね部を複数形成したことを特徴とする金属触媒担体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−183844(P2009−183844A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25510(P2008−25510)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】