説明

金属触媒担体

【課題】 ハニカム体の外筒への挿入性を向上できる金属触媒担体の提供。
【解決手段】 波状の金属箔と平板状または小波状の金属箔を重ねて多重に巻回してなるハニカム体が筒状の外筒内に圧入され、両金属箔の接合部同士が拡散接合により接合された金属触媒担体において、ハニカム体2の軸方向中央位置における外周面と外筒3の内周面とを接触させると共に、該ハニカム体2の外周面と外筒3の内周面との隙間7が該軸方向中央位置から離間するに連れて大きくなるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属触媒担体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属触媒担体として特許文献1の記載の技術が知られており、この発明によれば、ハニカム体を外筒内に圧入して収容している。
【特許文献1】特開平11−197518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の発明にあっては、ハニカム体の外筒への圧入時において、ハニカム体の外周部が外筒の内周部に接触して変形し易く、ハニカム体の外筒への挿入性が悪いという問題点があった。
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、ハニカム体の外筒への挿入性を向上できる金属触媒担体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明では、波状の金属箔と平板状または小波状の金属箔を重ねて多重に巻回してなるハニカム体が筒状の外筒内に圧入され、上記両金属箔の接合部同士が拡散接合により接合された金属触媒担体において、上記ハニカム体の軸方向中央位置における外周面と上記外筒の内周面とを接触させると共に、該ハニカム体の外周面と該外筒の内周面との隙間が該軸方向中央位置から離間するに連れて大きくなるように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明では、ハニカム体の軸方向中央位置における外周面と外筒の内周面とを接触させると共に、該ハニカム体の外周面と該外筒の内周面との隙間が該軸方向中央位置から離間するに連れて大きくなるように構成している。
これにより、ハニカム体を外筒に圧入する際に、ハニカム体の外周面と外筒の内周面との接触面積を小さくしてハニカム体の外周部の変形を防止でき、ハニカム体の外筒への挿入性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
以下、実施例1を説明する。
図1は実施例1の金属触媒担体を示す側断面図、図2は図1の矢視A1による側面図、図3は実施例1のハニカム体の製造に用いられる巻軸の斜視図、図4は同分解図(a)と合体図(b)、図5は実施例1のハニカム体の巻回を説明する図である。
図6〜14は実施例1のハニカム体の外筒への圧入を説明する図、図15は実施例1の金属触媒担体が採用された排気系を説明する図である。
【0009】
先ず、全体構成を説明する。
図1、2に示すように、実施例1の金属触媒担体1は、略樽形状の外形を有するハニカム体2と、このハニカム体が収容された円筒状の外筒3とから構成されている。
ハニカム体2は、波状の金属箔4と平板状の金属箔5を重ねて多重に巻回されてなり、この金属箔4の波状の頂部と金属箔5とは外筒3に圧入され加圧状態で加熱されることにより拡散接合されている。
一方、ハニカム体2の軸方向中央位置は、ろう箔材6を圧入前に巻回しておき拡散接合と同時に溶融させることにより外筒3の内周面の一部に全周に亘ってろう付け接合されている。
【0010】
また、ハニカム体2の外形が略樽形状に形成されることにより、その外周面は、ろう箔材6から軸方向に離間するに連れて縮径され、この結果、ハニカム体2の外周面と外筒3の内周面との隙間7がろう箔材6から離間するに連れて大きくなっている。
【0011】
次に、金属触媒担体1の製造方法を説明する。
金属触媒担体1の製造は、ハニカム体形成工程、外筒形成工程、圧入工程、ろう付け工程の順番に行われる。なお、ハニカム体形成工程と外筒形成工程は並行して行われる。
【0012】
[ハニカム体形成工程]
ハニカム体形成工程では、公知の特開2006−239580号公報と同様の巻回装置を用いてハニカム体2を形成する。
【0013】
この際、図3、4に示す巻軸8を用いる。
巻軸8は、内子8aと、この内子8aの外周部に合体される4つの外子8bで構成されている。
内子8aは、略円柱状に形成される他、その外周部には十字方向に外側へ突設された4つの凸部8aと、4つの凸部8aのうちの1つに切欠加工された溝8cがそれぞれ該内子8aの全長に亘って設けられている。
外子8cは、略1/4円柱状に形成される他、その外周部は長手方向中央位置に行くに連れて拡径した形状に形成されている。
さらに、内子8aと外子8bとは、その長手方向両端部において図示しない螺子等の締結手段により互いに組み付けられている。
【0014】
そして、ハニカム体2を形成するには、先ず、巻軸8の長手方向両端部を図示しない巻回装置の回転軸にそれぞれ連結する。
次に、図5に示すように、ロールギヤ等で製造された長尺で波状の金属箔4の始端部と、長尺で平板状の金属箔5の始端部を該金属箔5が外側となるように巻軸8の溝8cに止着した後、これら両金属箔4,5を重ねた状態で多重に巻回することによりロール状に形成する。
次に、ロール状の両金属箔4,5の外周にろう箔材6を巻回して、両金属箔4,5の終端部と共にスポット溶接等により固定する。
次に、巻回装置の回転軸から巻軸8の両端部を離脱させる。
次に、内子8aと外子8bの長手方向両端部の締結手段の締結を解除して、先ず内子8bをハニカム体2から軸方向に引き抜いた後、外子8bを縮径させて順次取り出すことにより、所望のハニカム体2を得る。
【0015】
なお、実施例1では4分割の外子8bを採用したが、3分割或いは5分割以上としても良い。
また、溝8cは外子8bに設けても良いし、内子8aを2分割にして、これら両者で両金属箔4,5の始端部を挟んで止着するようにしても良い。
【0016】
両金属箔4,5の板厚や材質は適宜設定できる。
例えば、両金属箔4,5の厚みはそれぞれ20〜30μm前後、材質は高剛性のアルミニウムを含むステンレス合金製で、さらに、焼き鈍し、または緩い焼き入れ処理が施されて高剛性になっている。
具体的には、例えばクロム(Cr)、アルミ(Al)をベースに高温酸化で生成するAl被膜(アルミナ被膜)の成長を抑制する効果の高いランタン(LA)等を添加した、耐高温酸化性に優れたフェライト系ステンレス鋼が採用されている。
フェライト系ステンレス鋼の一例としてJFE規格のJFE20−5USR及びJFE18−3USRを挙げておく。
【0017】
同様に、ろう箔材6の板厚や材質も適宜設定できる。一般的にはろう箔材6の厚みは金属箔4,5と同等の厚み(20〜30μm前後)で、材質はニッケル系のろう箔材である。
【0018】
[外筒形成工程]
外筒形成工程では、電縫管の製造方法と同様に、外筒3となる板状の母材を円筒状に加工して、その両縁部を溶接で接合することにより、所望の外筒3を得る。
外筒3の板厚や材質は適宜設定できる。
例えば外筒3の厚みは1.5mm前後、材質はアルミニウム等を含有するフェライト系ステンレス鋼である。
【0019】
[圧入工程]
圧入工程では、公知の特開平11−197518号公報と同様の圧入装置10を用いてハニカム体2を外筒3内に収容する。
【0020】
<圧入装置について>
先ず、圧入装置10について詳述する。
図6において、水平な基台11上に立設されたタワーブロック12には、鉛直方向にレール13が延設されると共に、このレール13には昇降板14が摺動可能に係合されている。
【0021】
昇降板14には、タワーブロック12に取付けられたエア式または油圧式等のシリンダ15のピストンロッド15aが連結しており、このシリンダ15の作動により昇降板14を上下動可能に構成されている。
また、昇降板14の上部には支持ブラケット16が備えられる一方、下部には支持ブラケット17が備えられている。
支持ブラケット16にはエア式または油圧式等のシリンダ18が鉛直方向に向けて装着される一方、支持ブラケット17には円筒状の圧入治具19がシリンダ18のピストンロッド18aと同軸上に装着されている。
【0022】
ピストンロッド18aの下端には、円柱状の圧入ブロック20が連結されている。
なお、圧入ブロック20は、特開2001−341034号公報に記載のものと同様に径方向へ拡縮可能な構成にしても良い。
【0023】
基台11上には、圧入治具19の下方で同軸上に配置されたワーク支持ブロック21が固設されると共に、このワーク支持ブロック21の上面には、外筒3の下端内周に嵌合する環状突起状の突起21aが形成されている。
さらに、圧入ブロック20の下方には同軸上に円盤状の支持体22が配置されている。
この支持体22の下部には、圧入治具19及びワーク支持ブロック21を貫通して基台11内に収容されたエア式または油圧式等のシリンダ23のピストンロッド23aが連結されており、このシリンダ23の作動により支持体22を上下動可能に構成されている。
【0024】
図7、8に示すように、圧入治具19の内周には、その下端に行くにつれて徐々に拡径しながら開口するテーパ面を有する第1案内孔19aと、この第1案内孔19aの上端に連なる真円の矯正孔19bと、この矯正孔19bの上端から起立する環状段部19cと、この環状段部19cの内周縁から該治具19の上端に行くに連れて徐々に拡径しながら開口するテーパ面を有する第2案内孔19dとが形成されている。
第2案内孔19cの上端の入口径L1は、ハニカム体2の外径より大きい一方、下端の出口径L2は、外筒3の内径よりも小さく設定されている。
第1案内孔19aの下端の入口径L3は、外筒3の外径より大きく、矯正孔19bの内径L4は、外筒3の外径と等しく設定されている。
【0025】
<圧入装置の作動について>
このように構成された圧入装置10では、先ず、シリンダ15のピストンロッド15aの収縮作動により昇降板14を上昇位置に停止させる。
また、図9に示すように、シリンダ23のピストンロッド23aの収縮作動により支持体22を突起21aと同一高さで停止させた状態として、ワーク支持ブロック21上に外筒3を載置する。
この際、外筒3の下端内側に突起21aを嵌合させることにより、外筒3を圧入治具19と同軸上に配置できる。
【0026】
次に、図9,10に示すように、エアシリンダ15のピストンロッド15aの伸長作動により昇降板14を徐々に下降させる。
この際、ワーク支持ブロック21上の外筒3の上端部が圧入治具19の第1案内孔19aを経て矯正孔19bに嵌合し、これにより外筒3の歪みが矯正される。
そして、外筒3の上端部が環状段部19cに当接した位置で昇降板14を停止させる。
【0027】
次に、図11に示すように、シリンダ23のピストンロッド23aの伸長作動により支持体22を圧入治具19の上端よりも上方となるように配置した後、支持体22上にハニカム体2を載置する。
【0028】
次に、図12に示すように、シリンダ18の伸長作動によりピストンロッド18aに結合された圧入ブロック20を徐々に下降させて、圧入ブロック20の下面がハニカム体2の上面に当接したところで、シリンダ23のピストンロッド23aの収縮作動により支持体22を圧入ブロック20と同期させて下降させる。
【0029】
その後、ハニカム体2の軸方向中央付近(ろう箔材6共)が圧入治具19の傾斜部19dに接触したところで、支持体22を増速して元位置に復帰させる(図13参照)。
【0030】
一方、図13に示すように、圧入ブロック20はハニカム体2の上面を下方へ押して、圧入ブロック20の下端がガイド部19eの下端から下方に所定位置になるまで下降する。
これにより、ハニカム体2を外筒3内に圧入して所定位置に収容できる。
【0031】
この際、ハニカム体2の軸方向中央付近(ろう箔材6共)のみがガイド部19eと外筒3の内周に接触して縮径することとなる。
従って、ハニカム体2の圧入時において、ハニカム体2の上下端部が座屈することがなく、損傷・変形を防止できる。
また、実施例1では、ハニカム体2の中央部における縮径率を1〜3%(圧入前の直径を100%とすると、圧入後は97〜99%)に設定し、さらに、ハニカム体2の両端部での隙間を大きくしているため、ハニカム体2の縮径による負担を非常に低くできる。
これにより、ハニカム体の外周部の変形を防止できると共に、ろう箔材6の位置がずれれたり、剥がれることがなく、スムーズな圧入が可能となる。
加えて、圧入治具19の負担も低いため、圧入治具19の長寿命化を図れる。
なお、ハニカム体2が収容された外筒3は、シリンダ15,18のピストンロッド15a,18aの収縮作動により、昇降板14(圧入治具19)を元位置に復帰させた後、ワーク支持ブロック21から取り外すことができる。
【0032】
従って、実施例1では、ハニカム体2の変形を招くことなく、外筒3内に良好に圧入して収容できる。
【0033】
[ろう付け工程]
このように形成された金属触媒担体1は、ハニカム体2が外筒3に加圧された状態で真空加熱炉に搬送されて熱処理される。
これにより、金属箔4の波の頂部と金属箔5の接している接合部同士が拡散接合されると同時に、ハニカム体2の軸方向中央位置において、該ハニカム体2の外周面と外筒3の内周面とがろう箔材6の溶融によりろう付け接合される。
【0034】
金属触媒担体1の拡散接合時の適正温度は1200℃前後であり、この温度はろう箔材6の適正温度よりも150℃前後高いため、拡散接合時において、ろう箔材6は液化粘度が低い状態になっている。
この結果、ろう箔材6の一部が毛細管現象により外筒3の内周面を軸方向外側に伝って広がる、所謂ろう流れが発生する。
ここで、ろう箔材の一部によってハニカム体の軸方向中央位置以外の部位が外筒の内周面にろう付け接合された場合には、ハニカム体の熱膨脹・収縮時において所望のプロフィルと異なる熱変形が生じ、耐久性が低くなってしまう。
【0035】
これに対し、実施例1では、前述したように、ハニカム体2の外周面と外筒3の内周面との隙間7がろう箔材6から離間するに連れて大きくなっているため、毛細管現象は所定の隙間の位置で止まり、ろう箔材6の一部によって、ハニカム体2の外周面と外筒3の内周面とが外筒3との接触部の軸方向の狭い範囲を除いてろう付け接合されることがない。
即ち、隙間7の寸法は、ろう箔材6の一部を想定した寸法に設定されている。
従って、ハニカム体2の軸方向中央位置においてのみ、ハニカム体2の外周面と外筒3の内周面とをろう付け接合でき、ハニカム体2の耐久性を向上できる。
【0036】
なお、真空加熱炉から取り出された金属触媒担体1は、その後、ハニカム体2の両金属箔4,5の隙間で形成される軸方向に貫通したセルの表面に貴金属、アルミナ等からなる排気ガス浄化用の触媒担持体層が形成される。
【0037】
[排気系との接続について]
このように構成された金属触媒担体1は、外筒3の両端部が自動車の内燃機関排気系に連通接続された状態で介装される。
例えば、図14に示すように、自動車の内燃機関排気系は、排気上流側となるエンジンa1の図示しない排気ポートから各排気管a2〜a4を介して金属触媒担体1、サブマフラa5、メインマフラa6が連通接続されている。
また、金属触媒担体1の外筒3の両端部には、それぞれ対応する筒状のディフューザ24,24の一端部が溶接固定されている。
さらに、ディフューザ24,24の縮径した他端部にはそれぞれ対応する接続管a2,a3と締結するための接続フランジa7が溶接固定される。
【0038】
次に、作用を説明する。
[排気浄化作用について]
自動車の内燃機関排気系に介装された金属触媒担体1において、外筒3のエンジン側の排気上流側となる一端部から外筒3に流入した排気は、ハニカム体2のセルを通過することにより、触媒の作用により排気中の有害成分(HC、CO、NOx等)が無害成分(CO2、O等)に浄化されて排気下流側となる他端部からサブマフラa5及びメインマフラa6側へ排出される。
【0039】
[ハニカム体の耐久性について]
ハニカム体2は、排気熱により軸方向及び径方向に熱膨張・収縮する。
この際、ハニカム体2は、前述したろう箔材6のろう付け接合により軸方向中央位置で外筒3に固定支持されているため、軸方向中央位置から両側へ均等に熱膨張・収縮すると共に、径方向は固定支持されていない部分は応力の発生が無い。
これにより、ハニカム体2の安定した熱変形のプロフィルを得ることができ、耐久性を向上できる。
【0040】
次に、実施例1の効果を請求項1〜3に対応する(1)〜(3)共に記載する。
【0041】
(1)波状の金属箔4と平板状の金属箔5を重ねて多重に巻回してなるハニカム体2が筒状の外筒3内に圧入され、両金属箔4,5の接合部同士が拡散接合により接合された金属触媒担体1において、ハニカム体2の軸方向中央位置における外周面と外筒3の内周面とを接触させると共に、該ハニカム体2の外周面と外筒3の内周面との隙間7が該軸方向中央位置から離間するに連れて大きくなるように構成した。
これにより、ハニカム体2の外筒3への圧入時にハニカム体2の外周部が座屈するのを防止でき、ハニカム体2を外筒3内に良好に収容できる。
【0042】
(2)ハニカム体2の軸方向中央位置における外周面と外筒3の内周面とをろう箔材6の溶融によりろう付け接合した。
これにより、ろう箔材6をハニカム体2の軸方向中央位置に配置しつつ、ろう箔材6のろう流れによる悪影響を防止でき、ハニカム体2の耐久性を向上できる。
【0043】
(3)ハニカム体2の外周面を軸方向中央位置(ろう箔材6)から離間するに連れて縮径させることにより、隙間7が大きくなるように構成した。
これにより、(1)、(2)と同様の作用・効果を得ることができる。
【実施例2】
【0044】
以下、実施例2を説明する。
実施例2において、実施例1と同様の構成部材については同じ符号を付してその説明は省略し、相違点のみ詳述する。
【0045】
図15は、実施例2の金属触媒担体を示す断面図である。
図15に示すように、実施例2では、外筒3がその軸方向中央位置から両端部に行くにつれて拡径した形状に形成されている。
これにより、外筒3の内周面がろう箔材6から軸方向へ離間するに連れて拡径され、この結果、ハニカム体2の外周面と外筒3の内周面との隙間7がろう箔材6から軸方向へ離間するに連れて大きくなっている。
【0046】
従って、実施例2では、円筒状の外筒3の中央位置から両端部に掛けて拡径加工するという簡便な変更でもって、実施例1と同様の作用・効果を得ることができる。
また、従来と同様の装置・工法でもってハニカム体2を形成でき、ハニカム体2の製造に係る製造開発コストの増大を抑えることができる。
【0047】
次に、実施例2の効果を請求項4に対応する(4)と共に記載する。
(4)外筒3の内周面を軸方向中央位置(ろう箔材6)から離間するに連れて拡径させることにより、隙間7が大きくなるように構成した。
これにより、実施例1の(1)〜(3)と同様の作用・効果に加えて、従来と同様の工法・装置でもってハニカム体2を形成できる。
【0048】
以上、実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、実施例1の金属触媒担体1は円形状の断面としたが、この限りではなく、楕円形状、三角形状、レーシングトラック形状等の他の形状の断面のものでも良い。
また、隙間7の寸法は巻軸6の形状により容易に設定可能である。
【0049】
金属触媒担体1の製造に用いた装置の構成は適宜設定できる。
例えば、両金属箔4,5の巻軸6の他の例としては、図16に示すように、折り紙の所謂提灯と同様の作動・構造を有する巻軸30を用いても良い。
具体的には、巻軸30は薄肉の直管状に形成される他、その長手中央位置の外周上には複数のスリット31を有する拡開部32が形成されている。
そして、巻軸30の長手方向両端部から内側に力を付与して収縮させることにより、スリット31を拡開させて拡開部32を外側に膨出させる。
この状態で、巻軸30の長手方向両端部を図示しない巻回装置の回転軸に連結して、同様に両金属箔4,5を巻回してハニカム体2を形成する。
その後、巻軸30と回転軸の連結を解除すると、巻軸30が伸長して拡開部32が初期形状に復元することにより巻軸30をハニカム体2から引き抜くことができる。
なお、この場合の両金属箔4,5の止着方法としては、巻軸30の全長を両金属箔4,5の幅よりも小さく設定し、両金属箔4,5の始端部の一部を巻回装置の回転軸に止着する。
或いは、巻軸30の全長を両金属箔4,5の幅よりも長く設定し、スリット31の一部を他のものに比べて長尺に形成して、ここに両金属箔4,5の始端部を止着する。
【0050】
このような巻軸30を採用した場合には、収縮量により拡開部32の膨出量を調整できるため、1つの治具でもって外周部の形状(隙間7)が異なる複数種類の金属触媒担体に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施例1の金属触媒担体を示す側断面図である。
【図2】図1の矢視A1による側面図である。
【図3】実施例1のハニカム体の製造に用いられる巻軸の斜視図である。
【図4】実施例1のハニカム体の製造に用いられる巻軸の分解図(a)と合体図(b)である。
【図5】実施例1のハニカム体の巻回を説明する図である。
【図6】実施例1のハニカム体の外筒への圧入を説明する図である。
【図7】実施例1のハニカム体の外筒への圧入を説明する図である。
【図8】実施例1のハニカム体の外筒への圧入を説明する図である。
【図9】実施例1のハニカム体の外筒への圧入を説明する図である。
【図10】実施例1のハニカム体の外筒への圧入を説明する図である。
【図11】実施例1のハニカム体の外筒への圧入を説明する図である。
【図12】実施例1のハニカム体の外筒への圧入を説明する図である。
【図13】実施例1のハニカム体の外筒への圧入を説明する図である。
【図14】実施例1の金属触媒担体が採用された排気系を説明する図である。
【図15】実施例2の金属触媒担体を示す側断面図である。
【図16】その他の実施例の巻軸を説明する図である。
【符号の説明】
【0052】
a1、a2、a3、a4 排気管
a5 サブマフラ
a6 メインマフラ
a7 接続フランジ
1 金属触媒担体
2 ハニカム体
3 外筒
4 波状の金属箔
5 平板状の金属箔
6 ろう箔材
7 隙間
8 巻軸
8a 内子
8b 外子
8c 溝
10 圧入装置
11 基台
11 貫通穴
11a 縮径側端部
11b 拡径側端部
12 タワーブロック
13 レール
14 昇降板
15、18、23 シリンダ
15a、18a、23a ピストンロッド
16、17 支持ブラケット
19 圧入治具
19a 第1案内孔
19b 矯正孔
19c 環状段部
19d 第2案内孔
20 圧入ブロック
21 ワーク支持ブロック
21a 突起
22 支持体
24 ディフューザ
30 巻軸
31 スリット
32 拡開部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波状の金属箔と平板状または小波状の金属箔を重ねて多重に巻回してなるハニカム体が筒状の外筒内に圧入され、
前記両金属箔の接合部同士が拡散接合により接合された金属触媒担体において、
前記ハニカム体の軸方向中央位置における外周面と前記外筒の内周面とを接触させると共に、該ハニカム体の外周面と該外筒の内周面との隙間が該軸方向中央位置から離間するに連れて大きくなるように構成したことを特徴とする金属触媒担体。
【請求項2】
請求項1記載の金属触媒担体において、
前記ハニカム体の軸方向中央位置における外周面と前記外筒の内周面とをろう箔材の溶融によりろう付け接合したことを特徴とする金属触媒担体。
【請求項3】
請求項1または2記載の金属触媒担体において、
前記ハニカム体の外周面を前記軸方向中央位置から離間するに連れて縮径させることにより、前記隙間が大きくなるように構成したことを特徴とする金属触媒担体。
【請求項4】
請求項1または2記載の金属触媒担体において、
前記外筒の内周面を前記軸方向中央位置から離間するに連れて拡径させることにより、前記隙間が大きくなるように構成したことを特徴とする金属触媒担体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−125423(P2010−125423A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305078(P2008−305078)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】