説明

金属部材内蔵基板とその基板を用いた電池パック,車両および機器

【課題】バスバー等の金属部材を所望の位置に安定して保持できるとともに,単電池の端子を安定して取り付けることができ,信頼性の高い金属部材内蔵基板とその基板を用いた電池パック,車両および機器を提供すること。
【解決手段】本発明の電源装置用基板10は,絶縁性基材に金属部材(バスバー20)を内蔵してなるものであって,バスバー20は,基板の表裏面に露出するとともに,厚さ方向に貫通する第1貫通穴21が形成された,2以上の被締結部35と,2以上の被締結部35の間に設けられ,少なくとも片面が被締結部に比して凹部となっていることにより被締結部より薄肉である連結部36とを有するものであり,バスバー20における連結部36の箇所にて基板を厚さ方向に貫通する第2貫通穴22が形成されており,第2貫通穴22を通してバスバー20に導通する配線パターンを有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,例えば,複数の電池を互いに接続して電池パックとする際に用いられ,大電流を流すことのできる金属部材内蔵基板に関する。さらに詳細には,電池間を接続するバスバーと,各電池の制御に使用される信号線とを,ともに基板内に形成した金属部材内蔵基板とその基板を用いた電池パック,車両および機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より,複数の単電池を組み合わせて一体化し,大電流・大電圧を得られる電池パックとすることが行われている。また,電池パック内の各単電池の状態を検知するために,各単電池と制御装置等との間に信号線が接続されているものもある。このような電池パックを製造する際に,各単電池をそれぞれワイヤ等で接続していては,非常に手間が掛かる。そこで,例えば特許文献1には,複数の単電池を接続するバスバーやリード線等を埋め込んでモールド成型し,一体的な端子板を形成することが提案されている。
【0003】
また,特許文献2には,合成樹脂製コア部材の切欠部に金属回路を嵌入することにより,高電流・高電圧に対応できる金属回路基板が提案されている。さらに,金属回路の上下面を合成樹脂で被覆するとともに,めっきスルーホールを穿設して金属回路との導通をとるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3785499号公報
【特許文献2】特開2007−294656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,前記した従来の技術には以下のような問題点があった。例えば,特許文献1には,モールド成型の方法やリード線の接続方法についての具体的な記載はない。そのため,この文献の内容のみに基づいて,電気的に信頼性の高いモールド成型品を製造することは困難である。
【0006】
例えば,自動車用等の大パワーを利用する電池パックでは,大電流を流すことのできるバスバーが必要である。そのため,バスバーとして,ある程度大きい断面積のものを用いなければならない。さらに,電池パックの小型化のためには表面積を小さくすることが望まれ,従って,厚さの大きいバスバーを使用することが好ましい。ところが,厚さの大きいバスバーを単純にモールド成型しようとすると,樹脂流動に伴って,バスバーの位置ずれが発生するおそれがある。また,比較的繊細な信号線と厚いバスバーとを同時にモールド成型すれば,樹脂の充填圧等により,信号線やその接続箇所が破損するおそれがあるという問題点があった。
【0007】
また,特許文献2に記載の回路基板では,金属回路を安定して埋め込むために,その上下面に樹脂層が形成されている。そのため,電池パックを構成する基板として使用する場合には,安定した取付が困難である。例えば,自動車用等の単電池で,その端子部がネジ状となっているものがある。この単電池を基板に接続する際には,通常,基板に貫通穴を設けて端子部を貫通させ,他面側からナットで締め付けることによって行われている。特許文献2の回路基板に,このような単電池を取り付けると,樹脂層を挟んでネジ締めすることとなる。そのため,単電池の取り付け状態が不安定となるおそれがある。場合によっては,回路基板の表面に形成された信号回路の信頼性が損なわれるおそれがあるという問題点があった。
【0008】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,バスバー等の金属部材を所望の位置に安定して保持できるとともに,単電池の端子を安定して取り付けることができ,信頼性の高い金属部材内蔵基板とその基板を用いた電池パック,車両および機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の金属部材内蔵基板は,絶縁性基材に金属部材を内蔵してなる金属部材内蔵基板であって,金属部材は,基板の表裏面に露出するとともに,厚さ方向に貫通する第1貫通穴が形成された,2以上の被締結部と,2以上の被締結部の間に設けられ,少なくとも片面が被締結部に比して凹部となっていることにより被締結部より薄肉である連結部とを有するものであり,金属部材における連結部の箇所にて基板を厚さ方向に貫通する第2貫通穴が形成されており,第2貫通穴を通して金属部材に導通する配線パターンを有するものである。
【0010】
本発明の金属部材内蔵基板によれば,金属部材のうち第1貫通穴が形成された被締結部は基板の表裏面に露出している。従って,この被締結部に単電池の端子を締結すれば,単電池を安定して取り付けることができる。さらに,被締結部を連結する連結部には,第2貫通穴が形成されている。配線パターンはその第2貫通穴を通して金属部材と導通されているので,単電池の配置に関わらず信頼性の高い配線が可能である。この金属部材を絶縁性基材に内蔵させることにより,信頼性の高い金属内蔵基板となっている。
【0011】
さらに本発明では,連結部は,その一面が凹部であるとともに,他面が平面となっており,配線パターンは,基板の表裏面のうち凹部のある側の面に設けられていることが望ましい。
このようなものであれば,配線パターンの配置が容易であるとともに製造や取扱が容易である。
【0012】
さらに本発明では,絶縁性基材として,コア層と外コア層とを有しており,コア層は,金属部材の外周側のみに設けられており,外コア層は,金属部材の外周側と凹部の内部とにわたって設けられていることが望ましい。
このようなものであれば,金属部材の基板の面内での配置はコア層によって安定して保持できるとともに,基板の厚さ方向の配置は外コア層によって保持される。従って,金属部材を基板内の所望の位置に内蔵させることは容易である。
【0013】
さらに本発明では,外コア層よりさらに外層の回路層を有し,回路層に配線パターンが形成されていることが望ましい。
このようなものであれば,金属部材の配置による影響を受けることなく,配線パターンを配置することができる。必要であれば,さらに積層して複数の回路層を形成することも可能である。
【0014】
また本発明は,上記のいずれかの金属部材内蔵基板の第1貫通穴にそれぞれ単電池の端子を締結することにより,複数の単電池を接続してなる電池パックにも及ぶ。
【0015】
さらに本発明は,電力の供給を受けて車輪を回転駆動するモータと,モータに電力を供給する電源部とを有し,電源部に,上記の電池パックが含まれている車両にも及ぶ。
さらに本発明は,電力の供給を受けて動作する動作部と,動作部に電力を供給する電源部とを有し,電源部に,上記の電池パックが含まれている機器にも及ぶ。
【発明の効果】
【0016】
本発明の金属部材内蔵基板とその基板を用いた電池パック,車両および機器によれば,バスバー等の金属部材を所望の位置に安定して保持できるとともに,単電池の端子を安定して取り付けることができ,信頼性の高いものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本形態に係る電源装置用基板のおもて面を示す平面図である。
【図2】本形態に係る電源装置用基板の裏面を示す平面図である。
【図3】電源装置用基板のおもて面を示す部分拡大図である。
【図4】電源装置用基板の裏面を示す部分拡大図である。
【図5】電源装置用基板の断面図である。
【図6】バスバーの形状を示す斜視図である。
【図7】検出回路形成工程(前半)を示す説明図である。
【図8】検出回路形成工程(後半)を示す説明図である。
【図9】バスバー埋め込み工程を示す説明図である。
【図10】二次成型工程を示す説明図である。
【図11】二次成型工程が終了した状態を示す説明図である。
【図12】電源装置用基板を使用した電池パックの構成例を示す説明図である。
【図13】電池の外形の概略を示す説明図である。
【図14】電池パックの部分断面図である。
【図15】電池パックを搭載した車両を示す説明図である。
【図16】電池パックを搭載したハンマードリルを示す説明図である。
【図17】電源装置用基板の別の例を示す断面図である。
【図18】電源装置用基板の別の例を示す断面図である。
【図19】電源装置用基板の別の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下,本発明を具体化した最良の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,複数の電池を互いに接続して電池パックとするための電源装置用基板に本発明を適用したものである。
【0019】
本形態の電源装置用基板10は,図1〜図4に示すように,複数のバスバー20が埋め込まれている基板である。図1は電源装置用基板10のおもて面10F,図2は同じく裏面10Bを示している。さらに,図1の部分拡大図を図3に,図2の部分拡大図を図4にそれぞれ示す。なお,図1および図2では,電源装置用基板10のおもて面10Fに,電源ライン12とコネクタ13とが取り付けられている状態を示している。
【0020】
図3に示すように,本形態の電源装置用基板10には,各バスバー20ごとに2つの大貫通穴21と1つの小貫通穴22とが形成されている。おもて面10Fから見ると,大貫通穴21の周囲に,円環状にバスバー20の一部である台座部23が見えている。また,小貫通穴22の周囲には,後述するように穴の壁面と接続されているランド24が設けられている。さらに,各バスバー20のランド24には,信号線25が接続されている。また,図4に示すように,裏面10Bには,各バスバー20の外形および,貫通穴21,22が見えている。
【0021】
次に,電源装置用基板10の断面図を図5に示す。この図は,図1のA−A断面図である。電源装置用基板10は,バスバー20とその周囲の多層の樹脂層(コア層41,接着層42,外コア層43,接着層44,絶縁シート層45)とを有している。さらに,接着層44と絶縁シート層45との間には,図1に示したランド24および信号線25を含む回路層が形成されている。
【0022】
各樹脂層(コア層41,接着層42,外コア層43,接着層44,絶縁シート層45)の材質としては,その線膨張係数がバスバー20のものに近い材料を選択することが望ましい。このような選択を行うことにより,耐冷熱衝撃性に優れた電源装置用基板10とすることができる。さらに,各樹脂層として,熱伝導率の高いものを選択することが望ましい。このようにすれば,基板からの放熱性が良好なものとなる。そして,電池パックに用いた場合にも,電池の冷却性能を向上させる。このような性能を有する樹脂配合は,例えば,ガラス繊維やシリカ等の無機基材を多く配合することで得られる。このようにすると,機械的強度,耐熱性,寸法安定性等も向上させることができる。
【0023】
バスバー20は,図5に示すように,大貫通穴21が形成されている厚肉の被締結部35(厚さD1)とそれらの間の薄肉の連結部36(厚さD2)とを有するものである。そして,バスバー20は,電源装置用基板10の裏面10Bには,その全体が露出されている。おもて面10Fには,2つの貫通穴21とその周縁部分のみが露出されている。すなわち,被締結部35のおもて面のうち,周辺部には接着層44と絶縁シート層45とが覆い被さっている。そして,その残りの露出部分が台座部23となっている。
【0024】
このバスバー20は,電池の端子同士を互いに接続して,比較的大きい電流が流されるためのものである。そのため,銅等の良電導性の金属によって一体的に形成されているとともに,ある程度断面積の大きいものである。例えば本形態では,連結部36の断面は,厚さ(D2)1.5mm×幅20mm程度となっている。また,被締結部35の厚さD1は,2.0mm程度となっている。
【0025】
なお,小貫通穴22は,バスバー20に各樹脂層41〜45を重ねて成型した後に開けられためっきスルーホールである。すなわち,小貫通穴22の壁面には,その全体に銅メッキが施されている。そして,その銅メッキによって,ランド24とバスバー20とが導通されている。従って本形態では,信号線25を介して,各バスバー20の状態値(電圧値,温度など)を取得することができる。
【0026】
電源装置用基板10に組み込まれる前の各バスバー20は,図6に示すような,いずれも同じ形状のものである。このバスバー20は,平面視で外形が略長円形状の部材である。図中上面が,おもて面10F側に配置される。バスバー20の下面38は平面状である。この下面38は,図5に示すように,電源装置用基板10に組み込まれた状態でも,その全体が露出されている。なお,電源装置用基板10に組み込まれる前の各バスバー20には,小貫通穴22に相当する穴はない。
【0027】
次に,この電源装置用基板10の製造方法について,図7〜図11を使用して説明する。この製造方法は,順に
(1)検出回路形成工程,
(2)バスバー埋め込み工程,
(3)二次成型工程,
(4)スルーホール形成工程
の4工程を有している。ただし,(1)検出回路形成工程と(2)バスバー埋め込み工程との順序は逆順としてもよい。また,この各工程を示す各図では,図中上方に電源装置用基板10のおもて面10Fとなる側を,図中下方に裏面10Bとなる側を示している。
【0028】
(1)検出回路形成工程は,図7と図8に示すように,フィルム状の絶縁部材51の片面に検出回路を形成することにより,回路層46が設けられた絶縁シート層45となる部材を形成する工程である。まず,図7の上段に示すように,シート状の絶縁部材51を用意し,その全体形状が電源装置用基板10の形状となるように打ち抜く。その結果,図中下段に示すような,所々に貫通穴が形成されたものとなる。このとき,バスバー20の被締結部35が配置される箇所にも,被締結部35と同心位置でやや小さい径の貫通穴52を形成しておく。また,後にランド24となる箇所にも,ランド24の露出径の貫通穴53を形成しておく。
【0029】
続いて,図8の上段に示すように,成型プレスによって絶縁部材51の裏面に銅箔54を接合する。そして,接合後に,エッチングによって,銅箔54を検出回路の形状に加工する。その結果,図中下段に示すようになる。なお,この図では,銅箔54のうち,貫通穴53の下面部に残された部分のみが見えているが,後に信号線25となる回路部分も同時に形成されている。すなわち,この工程で残された銅箔54の部分が,後に回路層に相当するものとなる。
【0030】
(2)バスバー埋め込み工程は,まず,電源装置用基板10の形状の硬化済み樹脂によるコア樹脂55を用意する。例えば,ガラス繊維を含有させたエポキシ樹脂が適している。また,バスバー20を必要個数用意する。図9に示すように,コア樹脂55の厚さD3は,バスバー20の連結部36の厚さD2とほぼ等しいものとする。さらに,コア樹脂55の必要箇所に,バスバー20の外形と同じかわずかに小さい程度の貫通穴56を形成する。そして,この貫通穴56に,バスバー20をはめ込む。バスバー20の下面38とコア樹脂55の図中下側の面57とが,同一平面上となるようにする。このコア樹脂55が,後に,コア層41となる。
【0031】
(3)二次成型工程では,図10に示すように,外形が電源装置用基板10の形状で,バスバー20の被締結部35の配置および大きさ,形状の貫通穴が形成された外コア部材58を用意する。外コア部材58は,硬化済みのガラス繊維入りエポキシ樹脂である。この外コア部材58が,後に外コア層43となる。また,外コア部材58と同様の平面形状に形成したプリプレグ61と,被締結部35の箇所の貫通穴のみこれよりやや小さいプリプレグ62とを用意する。プリプレグ62の被締結部35の箇所の貫通穴は,絶縁部材51の貫通穴52と同じ大きさである。プリプレグ61,62は,ガラス繊維等にエポキシ樹脂等を含浸させた未硬化の樹脂部材である。
【0032】
そして,これらを図10に示すように,(2)バスバー埋め込み工程の終了したコア樹脂55のおもて面に下から順に,プリプレグ61,外コア部材58,プリプレグ62,絶縁部材51の順に重ねる。なお,プリプレグ61と外コア部材58とを合わせた厚さは,バスバー20の被締結部35の厚さD1と連結部36厚さD2との差にほぼ等しいものとしておく。従って,これらを重ねることにより,バスバー20の被締結部35と外コア部材58との上面がほぼ同一面となる。そして,絶縁部材51とプリプレグ62は,その面上に重ねられる。
【0033】
そして,これらを重ねて加熱するとともにプレスする。その結果,プリプレグ61,62が硬化し,図11に示すように,一体の基板となる。これにより,プリプレグ61,62は,その隣接する部材を接着する接着層42,44となった。また,コア樹脂55がコア層41に,絶縁部材51が絶縁シート層45に,外コア部材58が外コア層43に,それぞれなった。
【0034】
また,銅箔54のうち(1)検出回路形成工程で残された回路部分は,貫通穴53からその一部が露出している。なお前述したように,絶縁シート層45に形成されている貫通穴52は,バスバー20の被締結部35の上面よりわずかに小さい。従って,図11に示すように,絶縁シート層45と接着層44とは,被締結部35と外コア層43との境目を覆って,被締結部35の上面の周囲に多少覆い被さる。そして,被締結部35の上面のうち,それらに覆われていない部分が露出し,台座部23となっている。
【0035】
(4)スルーホール形成工程では,図11において銅箔54が貫通穴53から露出している範囲内に,めっきスルーホールを形成する。すなわち,銅箔54からバスバー20の下面38までをすべて貫通して,貫通穴を形成し,その壁面に銅めっきを施す。このめっきスルーホールが,図5に示した小貫通穴22となる。さらに,貫通穴を形成した後も上面に残った銅箔54の部分がランド24となった。これにより,図5に示した電源装置用基板10が完成した。以上で,電源装置用基板10の製造方法の説明を終了する。
【0036】
本形態の電源装置用基板10は,図12に示すように,電池パック100を構成するために使用される部材である。この電池パック100は,複数個の円筒型電池110を互いに接続して,大パワーを利用するためのものである。この図は,組み付け前の状態を示している。電池パック100は,電池ホルダ81に収納された複数の円筒型電池110を,電源装置用基板10および背面用基板82に対して,それぞれナット83によって取り付けたものである。
【0037】
背面用基板82は,電源装置用基板10と比較して,小貫通穴22,ランド24や信号線25が設けられていないが,それ以外は基本的に同じ構成のものである。また,回路層46および絶縁シート層45も不要である。図12に示しているのは,背面用基板82の裏面であり,バスバー20の外形と大貫通穴21のみが見えている。なお,背面用基板82のバスバー20の配置は,電源装置用基板10とはやや異なる。また,背面用基板82には,電源ライン12,コネクタ13は取り付けられない。
【0038】
ここで使用している円筒型電池110は,図13に示すように,円筒状の本体部111の両端に,正負の電極112,113が突出して設けられているものである。各電極112,113には,いずれもその外周面にネジ山が形成されている。また,電池ホルダ81は,多数の円筒型電池110をできるだけ隙間なく収納するためのものである。収納された各円筒型電池110の各電極112,113は,電池ホルダ81の両側面から外側へ向かって突出された配置となっている。
【0039】
この電池パック100を製造する際には,まず,複数の円筒型電池110を電池ホルダ81に収納する。そして,その電池ホルダ81の両外側から電源装置用基板10と背面用基板82とを,各電極112,113が電源装置用基板10または背面用基板82の大貫通穴21を貫通して突出するように配置する。さらに,多数のナット83を用いて,各電極112,113を両外側から締めつける。これにより,円筒型電池110とナット83によって電源装置用基板10を挟み込んで固定することができる。
【0040】
その結果,図14に示すように,バスバー20のみをはさんで,円筒型電池110とナット83とが締結される。従って,締結部分に樹脂が挟み込まれることはなく,安定して強力に締結することができる。また,バスバー20の断面積は大きいので,大電流を流すことができる。
【0041】
本形態の電池パック100では,電源装置用基板10に信号線25を設けているので,ランド24を介してバスバー20から信号を受けることができる。これにより,2つの円筒型電池110ごとの電池電圧の検出を行うことができる。さらに,背面用基板にも小貫通穴や信号線に相当するものを設けるようにすれば,1つずつの円筒型電池110について,電池電圧の検出を行うこともできる。電池パックのシステム構成に応じて,適切な背面用基板を選択するようにすればよい。
【0042】
この電池パック100は,例えば,図15に示すように,車両200に搭載して使用することができる。この車両200は,エンジン240,フロントモータ220及びリアモータ230を併用して駆動するハイブリッド自動車である。この車両200は,車体290,エンジン240,これに取り付けられたフロントモータ220,リアモータ230,ケーブル250,インバータ260及び複数の電池101を自身の内部に有する電池パック100を有している。
【0043】
なお,車両としては,その動力源の全部あるいは一部に電池による電気エネルギを使用している車両であれば良く,例えば,電気自動車,ハイブリッド自動車,プラグインハイブリッド自動車,ハイブリッド鉄道車両,フォークリフト,電気車椅子,電動アシスト自転車,電動スクータ等が挙げられる。
【0044】
電池パック100は,あるいは,図16に示すように,電池を搭載する機器に使用することもできる。この図に示すのは,本形態の電池101を含む電池パック100を搭載したハンマードリル300である。このハンマードリル300は,電池パック100,本体320を有する機器である。なお,電池パック100は,ハンマードリル300の本体320のうち底部321に着脱可能に収容されている。
【0045】
なお,電池を搭載する機器としては,電池を搭載しこれをエネルギー源の少なくとも1つとして利用する機器であれば良く,例えば,パーソナルコンピュータ,携帯電話,電池駆動の電動工具,無停電電源装置など,電池で駆動される各種の家電製品,オフィス機器,産業機器が挙げられる。
【0046】
以上詳細に説明したように,本形態の電源装置用基板10によれば,厚い金属部材であるバスバー20がコア層41にはめ込まれ,大貫通穴21およびその周囲は露出されている。従って,例えば単電池をこの大貫通穴21を貫通してネジ止めした場合でも,安定して固定できる。さらに,バスバー20の連結部36とコア層41とは,接着層42,外コア層43,接着層44,絶縁シート層45で覆われている。絶縁シート層45の下面にはランド24を含む回路層が形成されている。従って,回路層は,外コア層43と絶縁シート層45とによって両面から保護されているとともに,単電池をネジ止めした場合にも変形することがないので,信頼性が高い。従って,バスバー等の厚さのある金属部材を所望の位置に安定して保持できるとともに,単電池の端子を安定して取り付けることができ,信頼性の高い基板となっている。
【0047】
なお,本形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。
例えば,ランド24等を含む回路層のみでなく,さらなる多層化も可能である。また例えば,図17に示すように,バスバーの下面側にも上面側と同様の凹凸形状を形成するとともに,裏面側にも各樹脂層を形成し,その間にもさらに回路層を形成してもよい。また,図18に示すように,バスバーの形状はそのままで,下面側を単に樹脂層で覆うようにしてもよい。また,この下面側の層間に回路層を設けることもできる。また,図19に示すように,被締結部の上面と絶縁シート層45の上面とが同一面上となるようにしてもよい。
【0048】
またあるいは,各樹脂層やバスバーの厚さの関係は,図示のものに限らない。大貫通穴21に代えて,バスバーにネジ穴を形成しておいてもよい。また例えば,対象とする電池は上記形態の円筒型電池に限らない。両端部に端子があるものにも限らない。片側のみに端子を有する電池であれば,背面用基板は不要である。そして,電池の形状や端子配列に応じて,バスバーの配列を適切に調整すればよい。
【符号の説明】
【0049】
10 電源装置用基板
20 バスバー
21 大貫通穴
22 小貫通穴
25 信号線
35 被締結部
36 連結部
41 コア層
43 外コア層
54 銅箔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基材に金属部材を内蔵してなる金属部材内蔵基板において,
前記金属部材は,
基板の表裏面に露出するとともに,厚さ方向に貫通する第1貫通穴が形成された,2以上の被締結部と,
前記2以上の被締結部の間に設けられ,少なくとも片面が前記被締結部に比して凹部となっていることにより前記被締結部より薄肉である連結部とを有するものであり,
前記金属部材における前記連結部の箇所にて基板を厚さ方向に貫通する第2貫通穴が形成されており,
前記第2貫通穴を通して前記金属部材に導通する配線パターンを有することを特徴とする金属部材内蔵基板。
【請求項2】
請求項1に記載の金属部材内蔵基板において,
前記連結部は,その一面が凹部であるとともに,他面が平面となっており,
前記配線パターンは,基板の表裏面のうち前記凹部のある側の面に設けられていることを特徴とする金属部材内蔵基板。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の金属部材内蔵基板において,
前記絶縁性基材として,コア層と外コア層とを有しており,
前記コア層は,前記金属部材の外周側のみに設けられており,
前記外コア層は,前記金属部材の外周側と前記凹部の内部とにわたって設けられていることを特徴とする金属部材内蔵基板。
【請求項4】
請求項3に記載の金属部材内蔵基板において,
前記外コア層よりさらに外層の回路層を有し,
前記回路層に前記配線パターンが形成されていることを特徴とする金属部材内蔵基板。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1つに記載の金属部材内蔵基板の前記第1貫通穴にそれぞれ単電池の端子を締結することにより,複数の単電池を接続してなることを特徴とする電池パック。
【請求項6】
電力の供給を受けて車輪を回転駆動するモータと,
前記モータに電力を供給する電源部とを有し,
前記電源部に,請求項5に記載の電池パックが含まれていることを特徴とする車両。
【請求項7】
電力の供給を受けて動作する動作部と,
前記動作部に電力を供給する電源部とを有し,
前記電源部に,請求項5に記載の電池パックが含まれていることを特徴とする機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−218797(P2010−218797A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62464(P2009−62464)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(504349146)共栄電資株式会社 (9)
【Fターム(参考)】