金属酸化物を使用して油を改良するプロセス
金属酸化物を使用して油を改良するための組成物および方法が、本明細書中に記載される。金属酸化物は、カルボン酸(例えば、ナフテン酸)を非腐食性生成物に転化することによって油のTANを減少させるための触媒として使用され得る。いくつかの場合において、この転化は、カルボン酸の脱炭酸によって起こり、CO2を生成する。金属酸化物によって促される第2のプロセスは、炭水化物のクラッキングである。クラッキングは、粘性を減少させかつAPIを増加させ、そして多くの燃料および潤滑剤に対して有用である、より低い分子量の炭水化物を生成する。TANの減少およびAPIの増加は、油の価値の増加の質を改善する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国仮特許出願第60/586,026号(2004年7月7日出願)に基づく優先権の利益を主張する。
【0002】
(政府の権利)
米国政府は、米国エネルギー省によって与えられた助成金第DE−FC26−02NT15383;S−105,724号に従って、本発明において一定の権利を有する。
(発明の分野)
本発明は、油の質を、改良するか、または改善するのに有用な方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
原油、または石油は、世界のエネルギー経済の基礎である炭水化物の複雑な混合物である。原油(通常は、非常に粘性である)は、多くの場合、夾雑物を含み、この夾雑物としては、水、懸濁固形物、水溶性の塩、および有機酸が挙げられる。これらの夾雑物は、パイプおよび油加工装置を腐食し、低下した油の質を生じる。
【0004】
ナフテン酸(官能化されていない脂肪族カルボン酸、脂環式カルボン酸、および芳香族カルボン酸の総称)は、原油における等級の変化に見出され、そして特に、重油または生物分解された油中で優勢である。ナフテン酸は、高度の化学反応性を有し、そして製油所において、輸送パイプラインおよび蒸留ユニットの腐食の主な原因として認識されることに加えて、ナフテン酸は、多くの場合、他の物質と反応して、パイプラインおよび運転機構を詰まらせるスラッジならびにガムを形成する。結果として、高濃度のナフテン酸を含む油製品は、質が悪いと認定され、そして市場において、より低い価格を生じる。
【0005】
その複雑な組成上の不均一性に起因して、現在、個々または小さい群のNA化合物の、腐食の重大度を任意の分析的測定によって予想することは、非常に困難である。したがって、全酸度(TAN)または中和価(Neut Number)(1グラムの油中の酸度を中和するのに必要とされるKOHのミリグラム数によって定義される)は、一般的に、原油の腐食可能性を予想するための判定基準として採用される。この基準によって、高いTANの油(>0.5mg KOH/g)は、より低いTANの油より所望されず、非常に低い価格を生じる。カリフォルニア、ベネズエラ、北海、西アフリカ、インド、中国およびロシアからの原油は、代表的に、より高いナフテン酸含有量を有する。ナフテン酸の除去プロセスの開発は、高含有量のナフテン酸を有する重原油の製油処理工程の改良において、石油産業を顕著に補助する。
【0006】
原油を製油するプロセスにおける別の重要な構成要素は、原油を点火器(lighter)燃料および潤滑剤に有用であるより小さい炭水化物成分に転化するプロセスである。このプロセスは、「クラッキング」として公知であり、炭素−炭素結合の切断に関与し、より低い沸点を有する炭水化物を生じる。当該分野において、油の粘性の減少を生じる低温度法(lower−temperature method)に対する継続的な必要性が存在する。
【0007】
ナフテン酸を除去するための従来の方法は、原油中に存在する有機酸を中和する苛性洗浄に基づく。しかし、この処理は、エマルションの形成を生じ、このエマルションは、一旦形成されると、分解するかまたは除去することが困難である。さらに、多くのより大きいナフテン酸の塩が、中和後にその油中に残存する。代替的なアプローチは、高レベルのナフテン酸を含む油と低レベルのナフテン酸を有する油とを混合し、それによってそのナフテン酸を希釈することである。このアプローチは、油サンプル中のカルボン酸の濃度を、最終的に減少させるが、それは、ナフテン酸を効率的に除去しない。
【0008】
いくつかの米国特許は、油を改良するプロセスに関する。例えば、特許文献1は、油のTANを減少させるための触媒として、アルカリ土類金属酸化物の使用を記載する。特許文献2は、非金属酸化物触媒を使用して、TANを減少させかつAPI比重を増加させるための方法を記載する。特許文献3および特許文献4は、アルコキシル化アミンを使用して、ナフテン酸(napathenic acid)を除去するための方法を記載する。しかし、上記の参考文献(これらの各々は、本明細書中に参考として援用される)に記載された技術は、それらの商業的用途に限定されるか、または大幅な改善の余地がない。
【特許文献1】米国特許第5,985,137号明細書
【特許文献2】米国特許第6,547,957号明細書
【特許文献3】米国特許第6,096,196号明細書
【特許文献4】米国特許第5,961,821号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
製油した石油に対する継続的な需要に基づき、当該分野において、油の粘性および油中のナフテン酸の量の両方を減少させるための改善された技術に対する顕著な必要性が、存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本明細書中に記載される発明は、金属酸化物を使用して油を改良するための組成物および方法を提供する。本発明の1つの実施形態は、多量の油が、この多量の油を改良するのに十分な量の金属酸化剤と接触させられる、油を改良するための方法を包含する。
【0011】
さらなる実施形態は、方法を包含し、ここで上記金属酸化剤は、アルカリ土類金属酸化物、酸化的遷移金属酸化物、希土類金属酸化物、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0012】
さらなる実施形態は、方法を包含し、ここで上記アルカリ土類金属酸化物は、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、ならびにベリリウム(Be)の酸化物、マグネシウム(Mg)の酸化物、カルシウム(Ca)の酸化物、ストロンチウム(Sr)の酸化物、バリウム(Ba)の酸化物、銀(Ag)の酸化物、銅(Cu)の酸化物、マンガン(Mn)の酸化物、鉛(Pb)の酸化物、ニッケル(Ni)の酸化物、セリウム(Ce)の酸化物、ランタン(La)の酸化物、イットリウム(Y)の酸化物、ジルコニウム(Zr)の酸化物、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0013】
よりさらなる実施形態は、方法を包含し、ここで上記酸化的遷移金属酸化物は、AgO、Ag2O、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0014】
本発明の他の実施形態は、上記反応の温度に関連し、上記接触させる工程は、約200℃〜約450℃、約250℃〜約450℃、約300℃〜約450℃、約350℃〜約450℃、および約400℃〜約450℃、ならびに約300℃〜約370℃からなる群より選択される温度範囲内で行われる。
【0015】
他の実施形態は、油を改良するシステムを包含し、上記接触させる工程は、密封されたガラス管、オートクレーブ、流通反応装置、回分反応器、スラリー反応器(slurry reactor)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される反応系において実施される。
【0016】
さらなる実施形態は、方法を包含し、ここで上記多量の油は、地下貯留層(subsurface reservoir)にある。
【0017】
さらなる実施形態は、方法を包含し、ここで上記油は、脂肪ベースの油である。
【0018】
さらなる実施形態は、方法を包含し、ここで多量の水が添加されて、水溶性不純物が溶解される。
【0019】
さらなる実施形態は、方法を包含し、ここでピリジン、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、および/またはA12O3が添加されて、酸の転化が促進される。
【0020】
さらなる実施形態は、上記多量の油が、上記多量の油の全酸度を減少させるのに十分な量の吸着材料と接触させられる、方法を包含する。
【0021】
よりさらなる実施形態は、方法を包含し、ここで上記吸着材料は、粘土鉱物または粘土鉱物の混合物である。これらの鉱物は、カオリナイト、イライト、イライト−スメクタイト、パリゴルスカイト、モンモリロナイト、Ca−モンモリロナイト、海泡石、ヘクトライト、Na−モンモリロナイト、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され得る。上記多量の油と、上記吸着材料および上記金属酸化剤とを接触させる工程は、並行してか、連続してか、または同時に起こり得る。他の実施形態は、方法を包含し、ここで上記吸着材料は、酸の転化を触媒する。
【0022】
別の実施形態は、多量の油の全酸度を減少させるための方法を包含し、この方法は、この多量の油と、この多量の油の全酸度および/または全酸価を減少させるのに十分な量の金属酸化剤とを接触させる工程を包含する。
【0023】
さらなる実施形態は、方法を包含し、ここで上記全酸度を減少させる工程は、上記多量の油中の多量のナフテン酸を減少させる工程を包含する。
【0024】
さらなる実施形態は、多量の油の粘性を減少させるための方法を包含し、この方法は、多量の油と、この多量の油の粘性を減少させるのに十分な量の金属酸化剤とを接触させる工程を包含する。さらなる実施形態は、方法を包含し、ここでこの多量の油の粘性を減少させる工程は、この多量の油のAPI比重を増加させる工程を包含する。
【0025】
さらなる実施形態は、プロセスによって生成される多量の改良された油を含有する組成物を含み、このプロセスは、以下の工程を包含する:多量の油を提供する工程;およびこの多量の油と、この多量の油を改良するのに十分な量の金属酸化剤とを接触させる工程。
【0026】
よりさらなる実施形態は、改良された油の組成物を含み、ここでその生産に使用される上記金属酸化剤は、アルカリ土類金属酸化物、酸化的遷移金属酸化物、希土類金属酸化物、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0027】
さらなる実施形態はまた、改良された油の組成物を含み、ここで上記プロセスは、上記多量の油または上記多量の改良された油と、この多量の油またはこの多量の改良された油の全酸度を減少させるのに十分な量の吸着材料とを接触させる工程をさらに包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(発明の詳細な説明)
本願の目的は、金属酸化物を使用して油の質を改良しそして/または改善するための、対費用効果の高い方法を提供することである。本発明の代替的な実施形態にしたがって、以下の2つの方法が別個かまたは一緒に実行されて、これが達成され得る:(1)油中に存在するカルボン酸(例えば、ナフテン酸)の量を減少させること、および(2)油の粘性を減少させること。本発明は、金属酸化物が油を改良するために使用され得ることを示した、驚くべき研究に基づく。他の特徴は、次の議論においてより詳細に記載されるように、プロセスに加えられ得る。本明細書中に開示される金属酸化物による油の処理は、油中のカルボン酸レベルおよび油中の粘性の両方を減少させることによって、その油の質を改善し得る。
【0029】
特に明記されない限り、本明細書中で使用される専門用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって、一般的に理解されるものと同じ意味を有する。当業者は、本明細書中に記載されるものと類似するか、または等価である、多くの方法および材料を認識し、これらは、本発明の実施おいて使用され得る。実際に、本発明は、決して記載される方法および材料に限定されない。
【0030】
本明細書中で使用される場合、用語「油」とは、液体の、炭水化物ベースまたは脂肪ベースの物質をいい、これらは、動物、植物、もしくは鉱床から得られるか、または人工的に製造される。一般的に、油は、水と混和できない。用語「油」はまた、石油および石油誘導体を包含する。
【0031】
本明細書中で使用される場合、用語「石油」(または原油)とは、ガス状の相、液相または固相中の炭水化物から主に構成される、天然に存在する混合物をいう。石油は、アスファルト、ディーゼル燃料、燃料油、ガソリン、ジェット燃料、潤滑油、およびプラスチックが挙げられる、多くの有用な製品に加工(製油)され得る。
【0032】
油中のカルボン酸のレベルを減少させるための機構としては、以下が挙げられる:(1)酸の転化(カルボン酸が非腐食性成分に変換されるプロセス)、および(2)そのシステムからカルボン酸を除去する固体吸着剤の使用。これらの加工の両方の目的は、サンプルの全酸価(TAN)を減少させることである。本発明の種々の実施形態と関連して、これらの技術は、一緒かまたは別個に実行され得る。
【0033】
上記TANまたは中和価は、1グラムの油中の酸度を中和するのに必要とされるKOHのミリグラム数によって定義される。このTANおよび中和価は、一般的に、原油の腐食可能性を予想するための判定基準として採用される。高いTANの油(>0.5mg KOH/g)は、より低いTANの油より所望されず、このような油が市場で販売される場合に非常に低い価格を生じる。カリフォルニア、ベネズエラ、北海、西アフリカ、インド、中国およびロシアからの原油は、代表的に、他の供給源から得られた原油より高いTANを有する。
【0034】
油の質を改善するための別の技術は、大きい炭水化物を、より小さい炭水化物に転化することによって油の粘性を減少させることである。このプロセスはまた、「クラッキング」として公知である。粘性は、せん断応力下における変形に対する流体の抵抗性の指標である。それは、一般的に、「厚さ」または注ぎに対する抵抗性として理解される。粘性は、流れに対する、流体の内在的な抵抗性を示し、そして流体摩擦の指標として考えられ得る。粘性を定量化するために有用な単位は、「センチポイズ」またはcPである。しばしば用いられる粘性についての代替的な単位は、「API比重」である。
【0035】
用語「API比重」とは、American Petroleum Institute(API)によって採用された、液体石油製品の密度を示すための一般に認められた尺度をいう。このAPI比重は、比重に関連し、これは、任意の物質の質量と、4℃における同じ体積の純水の質量との比である。API比重の単位は、度として表され、そして一般的に、API比重が高くなるにつれて、油は軽くなり、そして粘性は低くなる。原油は、多くの場合、その測定されたAPI比重に従って、軽いか、中間か、または重いかに分類される。概して、より高いAPI比重度の油の値は、より大きい商業的価値を有し、そしてより低い度の値は、より低い商業的価値を有する。
【0036】
本明細書中で使用される場合、用語「クラッキング」とは、複雑な物質(例えば、石油中の高分子量の炭水化物)が、(より低い沸点を有する傾向にある)より小さい分子へと分解されるプロセスをいう。一般的に、クラッキングは、炭素−炭素結合の破壊を包含する。クラッキングは、加熱(熱クラッキング)および触媒作用(触媒クラッキング)を含む多くのプロセスの結果として起こり得る。金属酸化物による油の処理は、クラッキングプロセスを促進することによってその油の質を上昇させ得る。油と1種以上の金属酸化物とを接触させる工程は、クラッキングプロセスを、より低い温度で起こさせ得る。
【0037】
本明細書中で使用される場合、用語「改良(upgrade)」とは、油の質が改善されるプロセスをいう。改良された油は、その全酸度の実質的な減少、その粘性の実質的な増加、またはそれらの組み合わせを生じるプロセスを受けた油として定義され得る。全酸度の「実質的な」減少(この用語が本明細書中で使用されて、全酸度を修飾する場合)は、TAN1単位を超えるTANの減少として定義され得る。粘性の「実質的な」減少(この用語が本明細書中で使用されて、粘性を修飾する場合)は、API1度を超えるAPI比重の増加、または1cPを超えるcP数の減少として定義され得る。
【0038】
油を改良するプロセスは、図1に示される。図1において、原油または送り101は、油ポンプ102によってこのシステムに供給される。このプロセスは、流量制御システム103を備え得る。その油の予熱およびナフテン酸の吸着が行われ得るユニット104がまた、このプロセスに備えられ得る。ボックス105は、必要に応じた水パージ工程またはガスパージ工程を示す。このプロセスはまた、触媒コンバーター106を備え得る;金属酸化物触媒を含み得、そして油を改良する反応が起こる装置のユニット。触媒作用の後に、この油は、冷却ユニット107を通過し得る。触媒コンバーター106のために温度および圧力を制御するユニット108がまた、備えられ得る。ボックス109は、触媒による転化の生成物を示す。1回目の触媒による転化の後に、その油をさらに改良するためにこのプロセスを繰り返すことが、所望され得る。これを達成するために、ボックス110は、必要に応じた再循環ループを示す。この油改良プロセスは、多くの場合、気体の生成を生じ、これは、ボックス111によって表される。これらの気体は、ボックス112に示されるように精製され得、次いでこれらの気体は、ボックス113に示されるように部分的に燃焼されて、触媒による転化のための熱を発生させる。その後、上に記載されるような加工を受けた油は、ボックス114に示されるように、さらなる加工のために製油所に送られ得る。図1は、このプロセスの一般的な例示としてのみ示され;当業者は、構成プロセスが、個々の必要性に合わせて、追加され得るか、削除され得るか、または改変され得ることを認識する。
【0039】
酸の転化は、有機性のカルボン酸(例えば、ナフテン酸)が脱炭酸されるプロセスであり、このプロセスは、多くの場合、TANの減少をもたらす。酸の転化の1つの考えられる生成物は、二酸化炭素(CO2)である。しかし、酸の転化はまた、CO2生成の非存在下で起こり得る。酸の転化の他の考えられる生成物は、従来の酸−塩基反応を介したカルボン酸塩の形成および/または金属酸化物によるCO2の吸着を介したアルカリ土類金属の炭素塩の形成を含む。金属酸化物媒介性の酸の転化の間に起こり得る反応の例は、図2に示され、図2においては、MgOが、例示の目的のために使用される。
【0040】
TANを減少させるための酸の転化に対して代替的な方法は、吸着固体材料によるカルボン酸の結合を包含する。吸着剤は、その表面上に物質もしくは粒子を結合するかまたは収集し得る材料である。当業者によって容易に認識されるように、多くの吸着材料が、油から酸を除去しそして/またはTANを減少させるために使用され得、例としては、多くの異なるクレーが挙げられる。本発明の1つの実施形態において、吸着および触媒的な酸の転化は、図3Aに示されるように、多量の油のTANを減少させるために、個別かまたは連続して行われ得る。この吸着および酸の転化が連続して起こる場合、多量の油は、一方のプロセスに供され、次いで同じ多量の油は、他方のプロセスに供される。一連の反応は、最初に起こる酸の転化または吸着のいずれかによって始まり得る。
【0041】
本発明のさらなる実施形態において、上記酸の転化および上記吸着は、図3Bに示されるように、並行して実施され得る。これらの反応が並行して実施される本発明の実施形態において、油の2つの異なる量が、処理され;一方は、酸の転化を促すために金属酸化物と接触させられ、そして他方は、カルボン酸を除去するために吸着剤と接触させられる。並行した反応の後、油の2つの量は、合わせられ得るが;これは、必須ではない。301は、吸着が一連の反応において行われ得るこのシステム中の領域を示す。302は、触媒的処理が一連の反応において起こり得る場所を示す。ボックス303およびボックス304は、吸着および触媒的処理が、並行した反応において起こり得る場所を、それぞれ示す。
【0042】
本発明のなお別の実施形態において、吸着および酸の転化は、多量の油を伴って、同時に起こる。実際に、当業者によって容易に認識されるように、単一の材料が、吸着および酸の転化の両方を同時に行うために使用され得る。例えば、多くの異なる金属酸化物を含有する粘土鉱物は、酸の転化および吸着の両方を触媒し得るかもしれない。
【0043】
金属酸化物は、1個以上の酸素分子と結合した1個以上の金属原子を含む化合物として定義される。金属酸化物の異なる分類としては、アルカリ土類金属酸化物、酸化的遷移金属酸化物、および希土類金属酸化物が挙げられる。アルカリ土類金属酸化物の例としては、カルシウム(Ca)の酸化物、ストロンチウム(Sr)の酸化物、マグネシウム(Mg)の酸化物、およびバリウム(Ba)の酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。酸化的遷移金属酸化物の例としては、銀(Ag)の酸化物、銅(Cu)の酸化物、マンガン(Mn)の酸化物、鉛(Pb)の酸化物、ニッケル(Ni)の酸化物、コバルト(Co)の酸化物、および鉄(Fe)の酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。希土類金属酸化物の例としては、ランタニド系列の酸化物、ならびにセリウム(Ce)の酸化物、ランタン(La)の酸化物、イットリウム(Y)の酸化物、およびジルコニウム(Zr)の酸化物、およびスカンジニウム(Sc)の酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。当業者によって容易に認識されるように、本発明の代替的な実施形態と組み合わせて使用するのに適した多くの金属酸化物が、存在する。
【0044】
本明細書中で使用される場合、用語「金属酸化剤」とは、金属酸化物または金属酸化物の混合物をいう。金属酸化剤はまた、他のさらなる不活性成分を含み得る。
【0045】
本明細書中で使用される場合、用語「接触させる工程(contacting)」とは、2つ以上の反応成分が互いに隣接して十分に近接し、これらの成分が互いに化学的に反応し得るようなプロセスをいう。
【0046】
本明細書中で使用される場合、用語「ナフテン酸」とは、しばしば石油および石油製品中に見出される、官能化されていない脂肪族カルボン酸、脂環式カルボン酸、および芳香族カルボン酸の群をいう。ナフトエ酸は、一般に、式CnH2nを有するナフテン酸の型である。
【0047】
当業者は、本発明の代替的な実施形態との組み合わせにおいて、油を改良するプロセスに適した種々の異なる型の反応器が存在することを認識する。ここで、いくつかの例が、提供されるが、本発明の適用は、決してこれらの特定の反応器の使用に限定されない。酸の転化反応を実施するための1つのシステムは、密封されたガラス管の回分反応器である。酸のサンプル、触媒、および/または他の添加剤(存在する場合)(ミリグラムの量)は、真空下でガラス管中に密封され得る。その後、これらの密封されたガラス管は、制御された反応条件下において所望の反応を開始するために、オーブン中に配置され得る。これらの反応は、約200℃〜約450℃の温度範囲で約4時間実施され得るが、この範囲外の温度、ならびにより長いかまたはより短いインキュベーション時間もまた、適切であり得;特に、そのシステムの構成およびその規模に依存する。反応気体は、標準的な気体輸送法を使用して、真空ライン中に収集され得、そして定量化され得る。
【0048】
原油検査実験のために、より大きいサンプル容量が、しばしば必要とされ、そしてオートクレーブ反応器を使用する代替的な実験手順が、確立された。例えば、約40mLの容量を有するオートクレーブ反応器が、使用され得る。サンプル操作手順は、以下の通りである:(i)多量の油および金属酸化剤(油の2〜5重量%)は、反応器に添加される;(ii)その内容物は、この反応器を振盪することによって1時間混合される;(iii)この反応は、反応器を動かし続けて反応物と触媒との間の接触を維持しつつ、250〜300℃の温度範囲で4時間インキュベートされる;(iv)この反応器は、その反応の終点にて冷却され、そして処理された油は、ジクロロメタンまたは別の適切な溶媒を使用した溶媒抽出によって取り出される。この溶媒抽出は、例えば、真空濾過し、次いで溶媒を蒸発させることによって実施され得る。
【0049】
図4Aに例示的に示されるように、上記酸の転化を実施するための代替的なシステムとしては、流通反応装置システムが挙げられ、この流通反応装置システムは、一般に、低い運転費用を有する。流通反応装置は、固定層触媒または非固定層触媒のいずれかを有し得る。流通反応装置において、その反応物流体は、触媒を含む1つ以上の管型反応器を通って流れる(図4Bを参照のこと)。流通反応装置は、継続的に運転され得、そして多くの場合、一回の通過において酸の転化を起こさせる。さらに、それらは、比較的長い触媒の接触時間を可能にし、そしてこの触媒からこの生成物を分離する直接的なプロセスを提供する。
【0050】
流通反応装置の設備において、ポンプ400が使用されて、デカンまたは別の適切な溶媒が輸送管402に一定の流量で供給される。圧力計1および圧力計2(それぞれ、401および403)は、この輸送管の上流および下流のシステムの圧力変化を示す。原油は、他方の輸送管に添加され、そしてデカンによって輸送ピストンを通して押し出される。N2(または他の適切な気体)パージライン404が使用されて、油が反応後にこのシステムからパージされ得る。触媒反応は、炉405中で行われ、この炉は、温度制御ユニット406によって調節される。得られた油は、この反応の終点にて容器407中に収集され得る。この反応は、止め弁(それぞれ、408および409)を有し得る。これらの輸送チュービングラインおよび弁は、加熱テープによってくるまれ得、そして油が容易に流れる温度に油を維持するために80℃または約80℃に維持され得るが;この温度は、本発明の代替的な実施形態に関連して変えられ得る。流通反応装置システムの必要に応じた構成要素としては、流量制御ユニット、熱供給源、油再循環ループ、油冷却ユニットなどが挙げられるが、これらに限定されず、これらは、当業者によって容易に認識される。固定層流通反応装置システムは、産業用途に必要とされる反応容量に適応するように、スケールアップされ得る。
【0051】
酸の転化プロセスに対して適切であり得る他の型の反応系としては、回分反応器システムおよびスラリー反応器システムが挙げられる。回分反応器は、上記反応成分がタンクまたは他の適切な容器に添加されるシステムである。一般に、全ての反応成分は、この反応のはじめにおいて添加され、そして生成物は、この反応が所望の量の時間に達するまでこのタンクの中に残る。この反応後、その生成物は、分析またはさらなる処理のために取り出される。スラリー反応器は、触媒が反応物と継続的に混合されて、懸濁固形物を含む液体として定義されるスラリーとして、この反応混合物が維持されることを除いて、回分反応器と同様である。回分反応器システムおよびスラリー反応器システムの両方は、当業者による産業上の設定の必要性に適応するように、容易にスケールアップされ得る。
【0052】
脱炭酸は、酸の転化プロセスにおいて重要である。脱炭酸機構の理論上の研究は、ラジカル経路は、遷移金属(例えば、Cu(II)およびMn(III))が含まれる場合に優勢であることを示唆する。これらのカチオン性化学種は、閉殻(Cu(II),−3d9電子配置〜Cu(I),−3d10電子配置)および半閉殻(Mn(III)−3d4電子配置〜Mn(II)−3d5電子配置)に起因する内部の電子移動を発生し得る。これらの研究はまた、協奏した経路が、卑金属に関する機構であり得ることを示唆する。協奏した経路において、β−炭素上の求核攻撃は、自発性の工程である。これらの研究は、金属表面上のヒドロキシル基が炭素−炭素結合の破壊を支援し得ることを、さらになお示唆する。任意の特定の理論に拘束されることを望まないが、おそらく、塩基性条件は初期の塩基−酸反応を促進する一方で、酸性条件はその後の脱炭酸反応を促進すると考えられる。
【0053】
酸の転化に加えて、吸着は、油からカルボン酸(例えば、ナフテン酸)を除去するための有効な方法である。「吸着材料」とは、別の物質を吸着する能力または傾向を有する材料をいう。粘土鉱物は、ナフテン酸を除去する固体吸着剤として使用されてきた。粘土鉱物の主要な構成成分は、ケイ素、アルミナ、および水であり、多くの場合、かなりの量の鉄カチオン、アルカリカチオン、およびアルカリ土類カチオンを含む。天然のクレーは、通常、高いカチオン交換容量(CEC)および表面積を有する。さらに、それらは、安価でありかつ環境に優しい。粘土鉱物は、多くの有機化合物と相互作用して、安定性および特性が変化する錯体を形成し得る。クレーと有機物との相互作用は、シリケートの層、無機カチオン、水および有機分子に関する多変量反応である。酸化合物と固体表面との間の化学親和力は、酸性分子、この酸性分子に存在する官能基(例えば、疎水基(−C−C−C−C−)、電気的陰性基(−C=O、−C−O−C−、−OH)、π結合(−C=C−、芳香環))、および酸性分子の立体配置の構造(分子量、鎖の長さなど)に依存する(Kowalska,M.ら、The Sci.of the Total Environ.、(1994)141、223−240)。金属酸化物を吸着するのに有用であり得るクレーの例としては、カオリナイト、イライト、イライト−スメクタイト、パリゴルスカイト、モンモリロナイト、Ca−モンモリロナイト、海泡石、ヘクトライト、およびNa−モンモリロナイトが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
ゼオライトはまた、油を部分的に改良するために使用され得る。ゼオライトは、多孔性構造を有する、合成かまたは天然に存在する鉱物である。一般に、それらは、種々の陽イオン、および他の化合物に適応し得る柔軟な構造(open structure)を有する水和したアルミノケイ酸の鉱物である。いくつかの、より一般的な天然に存在する鉱物ゼオライトは、以下である:方沸石、斜方沸石、輝沸石、ソーダ沸石、灰十字石、および束沸石。例示の鉱物の式は、以下である:Na2A12Si3O10−2H2O(ソーダ沸石についての式)。天然ゼオライトは、火山岩および火山灰層を形成し、アルカリ性の地下水と反応する。アルカリおよび有機性の鋳型の存在下におけるシリカ−アルミナゲルのゆっくりとした結晶化のプロセスによって形成される、数種の型の合成ゼオライトが存在する。ZSMファミリーおよびHZSMファミリー中のゼオライトは、油を改良するために有用であり得る物質によってコーティングされ得る。ZSM−5は、油のクラッキングにおけるその有用性について、既に周知である。
【0055】
上に記載された方法は、石油から腐食性物質(例えば、カルボン酸)を除去するのに有用である。しかし、このプロセスはまた、当該分野、および関連分野の当業者によって容易に認識されるように、他の脂肪ベースの油(例えば、植物由来の油および動物由来の油)に対して適切であり、そしてこのような関連分野に対する本発明の技術の適用は、本発明の範囲内であると見なされる。これらの他の型の油は、多くの場合、これらの油の安定性に負の影響を与える望まれない化学反応を生じるナフテン酸を含む。したがって、これらの型の油中の酸を除去する方法は、本発明の有益な目的であり、そして本発明の範囲内にある。
【0056】
上記油の質を改良するための方法は、地表の上、および地表の下(例えば、地下のオイルプール)の両方で適用可能である。したがって、本発明の代替的な実施形態と組み合わせて使用される反応器は、地上の環境または地下の環境において使用するために構成され得る。これらの構成のいずれかまたは両方は、本発明の技術の特定の産業用途に依存して所望され得る。
【0057】
本発明の代替的な実施形態において、異なる物質の範囲は、本明細書中に記載される油を改良する反応の1つ以上に加えられ得、この油を改良する反応は、上記反応プロセスに役立つか、または上記改良を容易にするかもしくは向上させる。いくつかのこのような添加剤は、水およびピリジン、銅、ニッケル、A12O3ならびに他の金属物質または有機物質である。
【0058】
当業者は、本明細書中に記載されるプロセスが、反応器の型、サンプルのサイズおよび多くの他の条件に依存して、種々の異なる温度にて種々の長さの時間で実施され得ることを認識する。本発明の代替的な実施形態との組み合わせにおいて、油のサンプルと金属酸化物とを接触させるのに適切であり得る温度範囲の例は、以下の通りであるが、決してそれらに限定されない:約200℃〜約450℃、約250℃〜約450℃、約300℃〜約450℃、約350℃〜約450℃、約400℃〜約450℃、および約300℃〜約370℃。これらの範囲は、例示の目的で与えられ、そして限定の目的で与えられない。
【0059】
以下の実施例は、例示の目的で提供され、そして限定の目的で提供されない。
【実施例】
【0060】
(実施例1)
(全酸価測定)
室内の全酸価(TAN)測定法を、ASTM標準方法D664の手順に従って構築した。この測定の原理は、PH/mv計測器(Oakton PH510 Series)によって決定される非水性の酸塩基電位差滴定に基づく。
【0061】
(手順)
(アルコール性水酸化カリウム溶液の調製)
6gのKOHを、約1Lの無水イソプロパノールに添加した。次いでこの溶液を、穏やかに30分間煮沸して、この溶液中のKOHの溶解性を増加させた。この溶液を、一晩保存し、次いでフタル酸水素カリウム(KHC8H4O4またはKHP)によって標準化した。
【0062】
(アルコール性KOH溶液の標準化)
上記溶液を、CO2を含まない水に溶解した重み付けした量(weighed quantity)のKHPの電位差滴定によって標準化した。
【0063】
(油サンプルの調製)
1つの5gの油サンプルを、125mLの滴定溶媒(500mLのトルエン/495mLの無水イソプロパノール/5mLの水)に溶解した。次いで、得られた溶液を、濾過し、そして滴定容器として使用される250mLビーカーに移した。
【0064】
(油サンプルに対するKOHの滴定)
適切な量のKOHアルコール性溶液を、添加した。一旦、定電位を観察し、この計測器の測定値を、記録した。上記サンプルを変曲点の近くまで滴定した場合、数滴のKOHを添加した。各組のサンプルに関して、並行してブランクの滴定を、コントロールとして行った。
【0065】
(計算)
添加したKOH溶液の容量 対 対応する電極電位(mv)を、プロットした。油サンプルおよび溶媒のみに対する変曲点Aならびに変曲点Bを、記録した。これらは、単位KOHに対する最も大きい電位の変化を反映すると考えられる。TANを、以下の方程式を使用して計算した:酸価(1gあたりのKOHのmg)=(A−B)×M×56.1/W。この方程式において、Mは、アルコール性KOH溶液の濃度(mol/L)であり、そしてWは、このサンプルの質量(g)である。
【0066】
(結果)
KHPに対するKOHおよび油に対するKOHについての2つの代表的な滴定曲線を図5Aおよび図5Bに示す。それぞれの場合において、これらの変曲点は、明確に観察された。これらの結果は、表1に示されるように、The Oil Analysis Labから得られたデータと一致する。
【0067】
(表1:TAN測定の結果)
【0068】
【表1】
(実施例2)
(原油からナフテン酸を除去するための触媒性脱炭酸)
この実施例は、原油中のナフテン酸の触媒性脱炭酸に有用なプロセスを概説する。MgOは、150℃〜250℃の温度範囲にて実施した4時間の反応において、飽和および芳香族の両方のモデルのナフテン酸化合物との脱炭酸活性を有することを示した。Ag2Oの存在下において、生成されたCO2の量は、「直接的な」触媒性脱炭酸を生じる他の脱炭酸生成物(ナフタレン)の量と一致した。これらの知見は、油からナフテン酸を除去するための、低い温度の、対費用効果が高い触媒性脱炭酸プロセスを提供する。さらに、この実施例は、種々の固体触媒の存在下におけるナフテン酸の触媒性脱炭酸を調査したことを示す。試験した触媒の間で、MgOは、モデルの飽和ナフテン酸化合物および芳香族ナフテン酸化合物の脱炭酸に関して、高い反応性を示す。Ag2Oは、酸の転化を容易にするだけでなく、「直接的に」ナフトエ酸をナフタレンに転化する。
【0069】
(実験的方法)
(選択したモデル化合物および油サンプル)
カルボン酸の対(ナフトエ酸(C10H7COOH)およびシクロヘキサンカルボン酸(CHCA))を、芳香族ナフテン酸および飽和ナフテン酸を示すモデル化合物として選択した。
【0070】
5種の有機酸(シクロペンタンカルボン酸(CPCA)、シクロヘキサンカルボン酸(CHCA)、安息香酸(BA)、C5H11−CHCAおよびC7H15−BA)を、ドデカンに溶解し、0.871%〜2.471%の範囲の重量濃度を得た。
【0071】
Chevron Texacoによって提供された4.38の全酸価(TAN)を有するTexaco原油を、この研究に使用した。
【0072】
(実験の設定)
ミリグラムの桁のNAサンプル、触媒、および他の添加剤を、還元雰囲気下においてガラス管に封入した。この密封したガラス管を、温度を制御したオーブン中に配置して、制御した温度下において反応させた。
【0073】
原油検査実験のために、40mLオートクレーブ反応器を使用してガラス管に封入された反応を実施する、異なる実験手順を確立した。この手順の詳細な説明は、以下の通りである:(i)12gの油および0.24〜0.60gの触媒(油の2〜5重量%)を、この反応器に装填した;(ii)これら2つの成分を、この反応器を振盪することによって1時間、予め混合した;(iii)この反応を、この反応器を継続的に振盪しながら250〜300℃の温度で4時間行わせて、この油とこの触媒との間の良好な接触を達成した;(iv)所望の反応時間が経過した後、この反応器を冷却し、そしてこの処理した油を、真空濾過によってこの触媒から分離した。
【0074】
(分析方法)
反応気体を、標準的な気体輸送法を介して、真空ライン中に収集し、そして定量化した。次いで、得られた気体をGCによって分析して、上記反応において生成されたCO2および他の気体の量を定量化した。固体残渣(推定上、未反応の酸を含む)を、ジクロロメタンを使用して抽出し、そしてGC分析に供した。これらの数値(numbers)を使用して、起こった酸の転化の量を計算した。
【0075】
原油の試験のために、反応前後の、ナフテン酸サンプルの全酸価(TAN)を、Standard Test Method for Acid Number of Petroleum Products by Potentiometric Titration(ASTM−D 664)によって測定した。この作業を、The Oil Analysis Labにて行った。
【0076】
(理論的方法)
反応物、生成物、中間体および遷移状態(TS)の気相ジオメトリー(gas phase geometry)を、密度汎関数理論のB3LYP汎関数を使用して最適化した。全ての計算結果に対する6−31G(d)基底系を、使用した。全ての停留点は、極小(0の虚振動)およびTS(1の虚振動)に対してポジティブに同定した。振動数をまた、全ての停留点において計算して、0点エネルギー(ZPE)および熱力学パラメーターを得た。
【0077】
(結果)
(モデル化合物の触媒性脱炭酸)
表2は、触媒反応のCO2発生を記載する。試験した種々の固体触媒の間で、飽和および芳香族の両方に対するMgOから発生したCO2の量(17.4%および25.5%のmolの転化に対応する、30.38ml/gおよび33.20ml/g)は、他の固体触媒からの量よりずっと高かった。CO2形成の欠如は、必ずしも酸の転化が起こらなかったことを意味せず、ある程度のCO2がこれらの金属酸化物によって吸着されて、カーボネートが形成されたようである。しかし、CO2の検出は、酸化合物の転化を明確に示す。MgOは、ナフテン酸化合物の脱炭酸に関して最も高い反応性を示した。有機塩基(例えば、ピリジン)の添加は、触媒反応性をわずかに促がし得た。ピリジンの存在下において、MgO触媒性の脱炭酸は、100℃と同程度に低い温度で起こった。
【0078】
(表2.モデル化合物の触媒性脱炭酸)
【0079】
【表2】
bの反応温度および反応時間(100℃および4時間)を除いて、反応温度および反応時間は、200℃および4時間である。
【0080】
(酸混合物の触媒性脱炭酸)
有機酸の脱炭酸における開発したMgO系触媒の有効性を試験するために、5種の酸化合物の混合物を調製して、高い酸含有量を有する油の組成を部分的に模擬した。表3に記載したように、より高い酸の転化を、単一の酸試験の場合において、MgOから得た。この酸の転化は、少量のNiおよびCuをMgO上に負荷した場合に、さらに改善され、そしてこの転化は、>90%に達した。
【0081】
(表3.酸混合物の触媒的脱炭酸)
【0082】
【表3】
CPCA(シクロペンタンカルボン酸)、CHCA(シクロヘキサンカルボン酸)、BA(安息香酸)、200℃、4時間。
【0083】
(MgO触媒性の脱炭酸反応)
上記反応の間の、ナフテン酸の分解に関する温度依存性およびMgO負荷効果を、調査した。これらの反応を、固定したMgO負荷(20重量%)において100℃〜300℃の範囲で反応温度を変化させること、および250℃において0〜40重量%でMgO負荷を変化させることによって、個別に行った。ガス状生成物および残った固体生成物を分析して、CO2収率および酸の転化についてのデータを得た。
【0084】
図6に示す結果は、この酸の転化が、約150℃で始まり、150℃〜250℃の範囲で迅速に増加し、次いで、より高い温度で横ばいになったことを示す。250℃を超える温度において、80%を超える酸が転化されたが、CO2収率は、増加し続けなかった。0〜20重量%の範囲でのMgO負荷の増加は、このCO2収率およびこの酸の転化を直線的に増加させたが、MgO負荷の量のさらなる増加は、このCO2収率をさらに増加させなかった。
【0085】
(MgO触媒性の脱炭酸反応の機構研究)
MgOの存在下における、妥当な協奏した酸化的脱炭酸経路を、全ての安定な、計算された中間状態および遷移状態のエネルギー図を用いて、気相において理論的に研究した。この反応経路を、図7に示す通り、安息香酸をフェノールに転化する3工程の機構のように要約する:
工程1:カルボキシル基のC原子における求核攻撃((A)〜(B));
工程2:4員環の遷移状態を介する水酸基の転移(TS−I(C)を経由する(B)〜(D));
工程3:脱炭酸よるプロトン転移の達成(TS−2(E)を経由する(D)〜(F))。
【0086】
芳香環のオルト位における水酸基の攻撃を特徴付ける、TS−Iに対する計算された遷移の障壁(約30kcal/mol)は、本明細書中に開示される実験条件(200℃、4時間)と一致する。しかし、オルト位からipso位へのプロトンの移動を特徴付ける、TS−2に対する障壁(49kcal/mol)は、予想したものよりも高い。これは、気相のみの、単一分子の計算を行ったという事実に、一部起因し得る。より大きい金属酸化物クラスターおよび/または水の補助を伴うさらなる計算は、この障壁が、より低いことを予期する。
【0087】
(CO2収率 対 酸の転化)
試験した金属酸化物の大部分がCO2生成を生じた一方で、酸の転化は、既に起こっていたかもしれない。実際に、表4に示す通り、数種の金属酸化物の存在下における、CO2収率および酸の転化を比較することによって、この酸の転化が、ほとんどの場合において、一般的にはCO2収率よりずっと高いことが明確となる。この大きな違いは、従来の酸−塩基反応によるカルボン酸塩の形成、または金属酸化物によるCO2の吸着を介したアルカリ土類金属の炭酸塩の形成のいずれかに起因し得る。しかし、これらの形成は、これらの油を魅力のないものにする、一連のエマルションの問題を生じることが公知である。この意味において、Ag2Oの場合は、確実に、「きれいな(clean)」触媒の良好な選択である。なぜなら、この酸の転化は、CO2収率と一致するからである。さらに、この脱炭酸生成物(ナフタレン)をまた、検出した。これは、「直接的な」触媒性脱炭酸反応が起こったことを明確に示す。
【0088】
(表4:数種の金属酸化物の存在下におけるCO2収率および酸の転化の比較)
【0089】
【表4】
250℃;cat約10mg。
【0090】
(原油を用いた試運転)
原油の脱炭酸反応に関して、試薬としての金属酸化物触媒群の、最初の試験実行の結果を、図8に示す。CaOが、高い酸の転化(約70%)を示す一方で、MgO、Ag2O、およびCuOは、酸の除去に関して、予期したような著しい反応性を示さなかった。このことは、この油中の不純物から生じるこの触媒の失活に起因するようである。
【0091】
(実施例3)
(希土類金属酸化物を使用するナフトエ酸の触媒性脱炭酸)
CeO2、La2O3、Y2O3およびZrO2が挙げられる数種の希土類金属酸化物を、モデルの酸(ナフトエ酸(C10H7COOH))を用いて試験し、そしてその結果を、表2に示した。低いCO2収率(表5に示すような、CO2への炭素の転化として定義される)は、これらの金属酸化物が触媒性脱炭酸に関して不活性であることを示唆する。金属酸化物ZrO2は、酸−塩基の二重の官能性を示した。
【0092】
(表5:希土類金属酸化物を使用するナフトエ酸の触媒性脱炭酸)
【0093】
【表5】
NA、C10H7COOH、2−ナフトエ酸。
【0094】
(実施例4)
(酸化的遷移金属酸化物を使用するナフテン酸の触媒性脱炭酸)
より酸化的な金属酸化物を、モデル化合物(ナフトエ酸およびシクロヘキサンペンタン酸)の触媒性脱炭酸において調査した。後者は、原油中のナフテン酸の成分として、より代表的であると見なされる。試験した金属酸化物としては、Ag2O、AgO、MnO2、Mn2O3、PbO2、CuO、Cu2O、Fe2O3およびCo2O3が挙げられる。これらの金属酸化物の全ては、可変性の酸化的状態を有する。
【0095】
表6のデータは、触媒性脱炭酸の指標であるCO2形成がFe2O3を除く各場合において検出されたことを示す。250oCの温度において、そのCO2収率は、全て、10%より低かったが、その酸の転化は、より高いもの到達し得る。反応温度の300oCまでの上昇は、より高いCO2収率、およびより高い酸の転化をもたらした。このことは、これらの金属酸化物の酵素活性が温度感受性であることを示唆する。重要なことには、Ag2OによるCO2収率が、96.93%と同程度の高さに達した。このことは、このナフトエ酸が、ほぼ完全に、CO2に転化されたことを示す。93.9%の高い酸の転化は、これらデータと一致する。さらに、別の重要な脱炭酸生成物として、ナフタレンをまた検出した。ナフタレンへの炭素の転化として定義される、ナフタレンの収率は、66.2%に達した。さらに、GC−MS分析はまた、1,2’−ビナフタレンおよび2,2’−ビナフタレン(C20H14)の形成を同定した。これらの副生物は、ナフタレンの二量体化の結果であり得る。この結果は、この反応がラジカル機構によって起こったことを強力に示唆した。
【0096】
異なる酸化的状態における同じ金属原子の比較は、それらの脱炭酸の有効性において、一般的傾向を示さなかった。例えば、Ag(I)は、Ag(II)より非常に活性であるが、Mn(IV)は、Mn(III)より多くのCO2を生じる一方で、Cu(I)およびCu(II)は、300oCの温度にてほぼ等しいCO2収率を与えた。
【0097】
新しい酸基質(シクロヘキサンペンタン酸(CHPA))に対してAg2O、MnO2およびPbO2を適用する場合、CO2をまた、検出したが、その収率は、より低い反応温度に起因して高くなかった。これらの結果は、多様な酸基質の構造と反応する、酸化的な金属酸化物触媒の適用に対する見込みを示す。
【0098】
酸化的な金属酸化物における触媒性脱炭酸の機構に関して、ラジカル中間体を介する酸化的脱炭酸は、最も妥当な反応経路である。したがって、これらの化合物の酸化性能は、その活性とって必須である。
【0099】
(表6.酸化的な金属酸化物の存在下におけるモデルのカルボン酸の触媒性脱炭酸)
【0100】
【表6】
NA、C10H7COOH、2−ナフトエ酸;CHPA、C6H11C4H8COOH、シクロヘキセンペンタン酸。
【0101】
(実施例5)
(固体触媒の存在下における原油との反応速度測定)
TAN、油の粘性および処理した油のIR吸着を、複数の冷トラップを使用して異なる反応段階にて測定した。2種の触媒(MgOおよびMnO2)を、調査した。MgOおよびMnO2は、モデル化合物の脱炭酸、およびバッチ反応試験における原油からのナフテン酸の除去に対して有効であることが示された。
【0102】
この反応において、0.5gの触媒(粒子サイズ28〜65)および添加した2%のCHPAを有するTexacoからの原油を、3g/時間〜4g/時間の流量で反応器に添加した。反応の間に、赤外分光学(IR)を使用して、この触媒の有効性をモニタリングした。この触媒を、RCOOHの吸着(約1,700nmにおけるピークによって示されるような)が顕著に回復した場合に、失活したと見なした。これが起こった場合、この反応を、終了した。これらの油を、異なる反応間隔にて回収し、そしてTAN分析および粘度測定に供した。
【0103】
異なる温度での熱処理の結果を、図9および表7に示す。IR測定は、温度効果が、増加およびその後の減少を提示することを示した。250℃および300℃で処理した油についてのTANが、開始の送りより高いことを見出した。これは、この温度範囲におけるナフテン酸以外のいくつかの軽い成分の蒸発に起因し得、ナフテン酸濃度の明らかな増加を生じる。この温度を約350℃までさらに増加させた場合、ある程度のナフテン酸は、蒸発するか、または分解して、より低い酸度を生じた。
【0104】
MgO触媒に関して、この反応を、全部で29.25時間(80℃で2時間、150℃で2時間、250℃で21.33時間、および300℃で4時間)、継続的に行い、図6および表8に示す結果を得た。IR測定は、触媒が250℃(全13時間)で9時間まで有効であったことを示した。このとき、47.74gの油を回収し、そして油処理能力を、MgO 1gあたり95.48gの油であると計算した。この油のTANは、流れにおいて13時間後に30%を超えて減少した。
【0105】
本発明者らは、図10および表9に示すように、反応温度を300℃までさらに上昇させ、そしてこの油を、より長い時間MgO触媒によって処理した。IR測定は、失活が12時間30分から始まったことを示した。TAN測定は、反応時間2〜4時間および反応時間5〜8時間の間に回収した油について、それぞれ、5.6および7.9のより低い値を与えた。TANの減少に基づいて計算した酸の転化は、64%〜50%に達した。反応温度を350℃まで連続的に上昇させることによって、この回収した油は、より迅速に流れた。これは、より低い粘性を生じた。任意の特定の理論に拘束されることを望まないが、おそらくMgOによって促される触媒性クラッキングが、この結果を導き得たことが考えられる。
【0106】
酸の除去に対するMgOの役割において、それは、複数の機構を有すると考えられる。モデルの酸化合物による結果は、そのCO2形成に起因して、その脱炭酸活性を同定した。一方で、その固有の強い塩基度に起因して、MgOはまた、酸−塩基の中和によって、酸と反応する傾向にある。より高い温度において、MgOは、炭水化物のC−Cクラッキングを容易にする活性があることが報告された。
【0107】
本発明者らは、図12および表10に示すように、MnO2において流動試験(flow test)を行った。MnO2触媒に関して、その反応を、250℃で10時間30分、継続的に行った。IR測定は、MnO2が、初期の反応においてRCOOHの減少に有効であり、次いで、そのピークは、反応時間と共に徐々に増加することを示した。10時間35分後、それは、ほぼ完全に回復した。TAN分析は、この油のTANが4.17時間までは、ある程度まで減少し、そして油処理能力が、MnO2 1gあたり約51gの油であったことを示した。
【0108】
(表7:熱処理したものについてのTANおよび粘度の測定)
【0109】
【表7】
(表8:250℃以下でMgOによって処理した油についてのTANおよび粘度の測定)
【0110】
【表8】
(表9:300℃および350℃にてMgOによって処理した油についてのTANおよび粘度の測定)
【0111】
【表9】
MgO 0.5g,300℃,350℃ 送り,油+2% CHPA。
【0112】
(表10:250℃にてMnO2によって処理した油についてのTANおよび粘度の測定)
【0113】
【表10】
流量:4.57〜2.08ml/hr。
【0114】
(実施例6)
(粘土鉱物上へのナフテン酸吸着)
モデルのナフテン酸(NA)溶液を、ドデカン(C12)に溶解したテトラデセンを伴う4種の市販のNA(すなわち、シクロヘキサンプロピオン酸(NA1)、安息香酸(NA2)、シクロヘキサンペンタン酸(NA3)、および4−ヘプチル安息香酸(NA4))を使用することによって調製した。それらの濃度は、それぞれ約0.5重量%であった。数種のクレーサンプル(Source Clay Repository of Clay Mineral Society at Purdue University、West Lafayette、INから得た)、すなわち、カオリン(KGa−2)、イライト(IMt−1)、イライト−スメクタイト混合層60/40(ISMt−2)、イライト−スメクタイト混合層70/30(ISCz−1)、パリゴルスカイト(PF1−1)、モンモリロナイト(SAz−1)、Ca−モンモリロナイト(SAz−2)、モンモリロナイト、CA(SCa−3)、海泡石(SepSp−1)、ヘクトライト(SHCa−1)、およびNa−モンモリロナイト、WY(SWy−2)を、この研究のためのモデル吸着剤として選択した。使用した粘土鉱物の化学組成を、表11に示す。
【0115】
上記吸着実験を、バッチ平衡技術(batch equilibration technique)を使用して実施した。所望の量のNA溶液を、既知の量の粘土鉱物を含んだ異なるガラス製遠心チューブに添加した。これらのチューブを、25℃および66℃にて24時間振盪し、次いで10分間遠心分離した。上清を、取り出し、そして分析に供し、Hewlett Packardガスクロマトグラフ−質量分析(GC−MS)を使用してNA濃度を決定した。クレーを含まない溶質の濃度における変化は、実験時間内のこれらのチューブにおいて検出されなかった。したがって、クレーのスラリーから得た上清中の溶質質量の損失は、クレーによる吸着に起因すると仮定した。吸着されたNAの量を、ドデカン溶液中の最初の溶質濃度と平衡状態の溶質濃度との間の違いから計算した。
【0116】
(表11:粘土鉱物の化学組成)
【0117】
【表11】
表12は、選択されたクレー吸着剤上に吸着されたNAの結果を概説する。吸着剤としての種々のクレーのNAに対する親和性の順序は、以下である:SepSp−1>SWy−2>SAz−1>PF1−1>SHCa−1≧SCa−3>SAz−2>IMt−1>IScz−1>KGa−2>ISMt−2。さらに、各試験において、著しい吸着は、テトラデセンについて観察されなかった。この結果は、これらのクレー吸着剤が、NAに対して選択的であるが、炭水化物に対して選択的でないことを示す。これは、海泡石(SepSp−1)およびNa−モンモリロナイト(SWy−2)が、原油からNAを除去するための、潜在的に効率的な吸着剤であることを示す。NAを吸着する能力は、SepSp−1およびSWy−2について、それぞれ、クレー1gあたり68mgの酸および53mgの酸に達した。対照的に、ISCz−1は、酸の吸着に関して不活性であることが見出された。使用したクレーのほとんどにおいて、吸着される4種のNAのクレーに対する親和性の順序は、KGa−2に対するものを除いて、以下である:NA2>NA3>NA1>NA4。これらのクレー上への安息香酸の吸着は、他のNAの吸着と比較して、より有効であった。芳香環を有する安息香酸は、物理的吸着−化学的吸着に対する強力な影響を示した。
【0118】
上記鉱物の分析を、表11に示すように金属の%ではなく、酸化物の%として報告する。NA吸着を、個別かまたは一緒に、MgO、CaO、およびNa2Oの濃度と関連付けた。吸着されたNAの量は、おおまかに、MgOの量と共に増加することが見出された(図13)。これらのNAの吸着は、クレーの化学構造に影響され得る。
【0119】
(表12:選択したクレー吸着剤に由来する酸の除去の有効性)
【0120】
【表12】
(実施例7)
(MgOによる触媒作用後の原油のTANおよび粘性の減少)
20〜60メッシュの粒子サイズを有する1gのMgOを、流通反応装置中の原油のサンプルに添加した。反応を、300℃および350℃にて実施した。300℃におけるこの反応の実行を、54時間行い、そしてこの反応の間に、この油の流量は、15.35mL/時間〜1.76mL/時間(主に、2mL/時間〜5mL/時間の範囲)に変化した。反応の間に回収した油の総量は、206.23gであった。異なる反応段階において変化するTANを、図14にプロットする。開始の油のTANは、4.79であり、そして処理した油のTANは、2.42〜3.20の範囲であった。この触媒は、48時間より長く活性なままであり、そしてTANの減少速度33.2%〜49.9%の範囲であった。300℃における実験の結果を、表13に示す。
【0121】
(表13.300℃におけるMgOによる原油の流動反応)
【0122】
【表13】
MgO 1.0g、20〜60メッシュ。
【0123】
350℃にて7.7時間試験した反応サンプルに関して、TANは、4.72から1.75まで減少し、そしてその粘度は、40℃において6,300cPから174cPまで減少した。処理した油について推定したAPIは、18度であり、そして最初の送り(原油)は、約13度であった。
【0124】
同様の反応を、325℃にて8時間実施した。この場合において、TANは、4.72から2.91まで減少し、そして終点における粘度は、おおまかに、最初における粘度の半分であった。
【0125】
(実施例8.触媒の存在下における混酸の反応)
酸の転化の分析を、ニッケルおよびA12O3の存在下においてMgOを使用して行った。以下の酸を含む混酸溶液を、使用した:2.47%のCPCA(シクロペンタンカルボン酸);1.93%のCHCA(シクロヘキサンカルボン酸);0.87%のBA(安息香酸);1.10%のC5H11−CHCA;1.11%のC7H15−BA。この反応のために使用した溶媒は、デカンであった。この反応を、200℃にて4時間実施した。これらの結果を、以下の表14に示す。
【0126】
(表14:触媒の存在下における混酸の反応)
【0127】
【表14】
(実施例9)
(より高い機械的ストレスを伴う触媒および添加した不活性材料を伴う触媒を使用して改善した油を改良する工程)
流動反応20(FR20)において、この反応を、1.0gのMgOを使用し、325℃にて、2.05mL/時間〜6.56mL/時間の流量を用いて164時間、継続的に実行した。この反応において、ガラスビーズをこの触媒に添加して、触媒粒子の移動を抑制した。さらに、使用したMgOは、40〜60のメッシュサイズを有した。この反応において処理した油についてのTANは、約20%〜30%減少した。FR20の結果を、表15に示す。
【0128】
(表15:流動反応20の結果)
【0129】
【表15】
さらなる反応(FR21)において、その温度を、350℃まで上昇させ、そしてその流量を、1.0mL/時間に設定し、そしてこの反応を、40.9時間実行した。これらの場合において、TANは、4.71から1.74まで減少し、そして粘度は、6,300cPから282cPまで(40℃において)減少した。得られた油のAPIは、17.7度であると推定される。FR20の結果を、表16に示す。
【0130】
(表16:流動反応の結果)
【0131】
【表16】
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】図1は、本発明の実施形態に従った、酸の転化のプロセスを示す。
【図2】図2は、本発明の実施形態に従った、金属酸化物媒介性の酸の転化の間に起こり得る反応の型を示す。酸化マグネシウムは、例示の目的で示される。
【図3】図3Aは、本発明の実施形態に従った、油中のカルボン酸を連続して除去するための2つの方法(吸着および触媒的処理)を示す。図3Bは、本発明の実施形態に従った、油中のカルボン酸を並行して除去するための2つの方法(吸着および触媒的処理)を示す。
【図4】図4Aは、本発明の実施形態に従った、固定層流通反応装置についての反応設備を示す。P1およびP2は、反応の上流および下流の、システムの圧力変化を示す圧力計である。TCは、温度制御ユニットを示す。図4Bは、本発明の実施形態に従った、流通反応装置の固定層触媒部分を示す。
【図5】図5Aは、本発明の実施形態に従った、KOH/イソプロパノール溶液に対するフタル酸水素カリウムの滴定曲線を示す。図5Bは、本発明の実施形態に従った、油サンプルに対するKOH/イソプロパノール溶液の滴定曲線を示す。
【図6】図6は、本発明の実施形態に従った、MgO触媒性の脱炭酸反応((a)温度効果および(b)触媒負荷効果)を示す。
【図7】図7は、本発明の実施形態に従った、協奏したMgO触媒性の脱炭酸経路を示す。
【図8】図8は、本発明の実施形態に従った、種々の金属酸化物触媒を使用した油サンプルの酸の転化を示す。
【図9】図9は、本発明の実施形態に従った、原油の熱処理を示す。
【図10】図10は、本発明の実施形態に従った、250℃以下でMgOの存在下における流動反応を示す。
【図11】図11は、本発明の実施形態に従った、300℃および350℃でのMgOの存在下における流動反応を示す。
【図12】図12は、本発明の実施形態に従った、250℃でのMnO2の存在下における流動反応を示す。
【図13】図13は、本発明の実施形態に従った、NA吸着の間の、クレー中のMgOの%との相関関係を示す。
【図14】図14は、本発明の実施形態に従った、原油およびMgOを含む反応における300℃での、時間に対するTANを示す。
【技術分野】
【0001】
本願は、米国仮特許出願第60/586,026号(2004年7月7日出願)に基づく優先権の利益を主張する。
【0002】
(政府の権利)
米国政府は、米国エネルギー省によって与えられた助成金第DE−FC26−02NT15383;S−105,724号に従って、本発明において一定の権利を有する。
(発明の分野)
本発明は、油の質を、改良するか、または改善するのに有用な方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
原油、または石油は、世界のエネルギー経済の基礎である炭水化物の複雑な混合物である。原油(通常は、非常に粘性である)は、多くの場合、夾雑物を含み、この夾雑物としては、水、懸濁固形物、水溶性の塩、および有機酸が挙げられる。これらの夾雑物は、パイプおよび油加工装置を腐食し、低下した油の質を生じる。
【0004】
ナフテン酸(官能化されていない脂肪族カルボン酸、脂環式カルボン酸、および芳香族カルボン酸の総称)は、原油における等級の変化に見出され、そして特に、重油または生物分解された油中で優勢である。ナフテン酸は、高度の化学反応性を有し、そして製油所において、輸送パイプラインおよび蒸留ユニットの腐食の主な原因として認識されることに加えて、ナフテン酸は、多くの場合、他の物質と反応して、パイプラインおよび運転機構を詰まらせるスラッジならびにガムを形成する。結果として、高濃度のナフテン酸を含む油製品は、質が悪いと認定され、そして市場において、より低い価格を生じる。
【0005】
その複雑な組成上の不均一性に起因して、現在、個々または小さい群のNA化合物の、腐食の重大度を任意の分析的測定によって予想することは、非常に困難である。したがって、全酸度(TAN)または中和価(Neut Number)(1グラムの油中の酸度を中和するのに必要とされるKOHのミリグラム数によって定義される)は、一般的に、原油の腐食可能性を予想するための判定基準として採用される。この基準によって、高いTANの油(>0.5mg KOH/g)は、より低いTANの油より所望されず、非常に低い価格を生じる。カリフォルニア、ベネズエラ、北海、西アフリカ、インド、中国およびロシアからの原油は、代表的に、より高いナフテン酸含有量を有する。ナフテン酸の除去プロセスの開発は、高含有量のナフテン酸を有する重原油の製油処理工程の改良において、石油産業を顕著に補助する。
【0006】
原油を製油するプロセスにおける別の重要な構成要素は、原油を点火器(lighter)燃料および潤滑剤に有用であるより小さい炭水化物成分に転化するプロセスである。このプロセスは、「クラッキング」として公知であり、炭素−炭素結合の切断に関与し、より低い沸点を有する炭水化物を生じる。当該分野において、油の粘性の減少を生じる低温度法(lower−temperature method)に対する継続的な必要性が存在する。
【0007】
ナフテン酸を除去するための従来の方法は、原油中に存在する有機酸を中和する苛性洗浄に基づく。しかし、この処理は、エマルションの形成を生じ、このエマルションは、一旦形成されると、分解するかまたは除去することが困難である。さらに、多くのより大きいナフテン酸の塩が、中和後にその油中に残存する。代替的なアプローチは、高レベルのナフテン酸を含む油と低レベルのナフテン酸を有する油とを混合し、それによってそのナフテン酸を希釈することである。このアプローチは、油サンプル中のカルボン酸の濃度を、最終的に減少させるが、それは、ナフテン酸を効率的に除去しない。
【0008】
いくつかの米国特許は、油を改良するプロセスに関する。例えば、特許文献1は、油のTANを減少させるための触媒として、アルカリ土類金属酸化物の使用を記載する。特許文献2は、非金属酸化物触媒を使用して、TANを減少させかつAPI比重を増加させるための方法を記載する。特許文献3および特許文献4は、アルコキシル化アミンを使用して、ナフテン酸(napathenic acid)を除去するための方法を記載する。しかし、上記の参考文献(これらの各々は、本明細書中に参考として援用される)に記載された技術は、それらの商業的用途に限定されるか、または大幅な改善の余地がない。
【特許文献1】米国特許第5,985,137号明細書
【特許文献2】米国特許第6,547,957号明細書
【特許文献3】米国特許第6,096,196号明細書
【特許文献4】米国特許第5,961,821号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
製油した石油に対する継続的な需要に基づき、当該分野において、油の粘性および油中のナフテン酸の量の両方を減少させるための改善された技術に対する顕著な必要性が、存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本明細書中に記載される発明は、金属酸化物を使用して油を改良するための組成物および方法を提供する。本発明の1つの実施形態は、多量の油が、この多量の油を改良するのに十分な量の金属酸化剤と接触させられる、油を改良するための方法を包含する。
【0011】
さらなる実施形態は、方法を包含し、ここで上記金属酸化剤は、アルカリ土類金属酸化物、酸化的遷移金属酸化物、希土類金属酸化物、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0012】
さらなる実施形態は、方法を包含し、ここで上記アルカリ土類金属酸化物は、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、ならびにベリリウム(Be)の酸化物、マグネシウム(Mg)の酸化物、カルシウム(Ca)の酸化物、ストロンチウム(Sr)の酸化物、バリウム(Ba)の酸化物、銀(Ag)の酸化物、銅(Cu)の酸化物、マンガン(Mn)の酸化物、鉛(Pb)の酸化物、ニッケル(Ni)の酸化物、セリウム(Ce)の酸化物、ランタン(La)の酸化物、イットリウム(Y)の酸化物、ジルコニウム(Zr)の酸化物、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0013】
よりさらなる実施形態は、方法を包含し、ここで上記酸化的遷移金属酸化物は、AgO、Ag2O、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0014】
本発明の他の実施形態は、上記反応の温度に関連し、上記接触させる工程は、約200℃〜約450℃、約250℃〜約450℃、約300℃〜約450℃、約350℃〜約450℃、および約400℃〜約450℃、ならびに約300℃〜約370℃からなる群より選択される温度範囲内で行われる。
【0015】
他の実施形態は、油を改良するシステムを包含し、上記接触させる工程は、密封されたガラス管、オートクレーブ、流通反応装置、回分反応器、スラリー反応器(slurry reactor)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される反応系において実施される。
【0016】
さらなる実施形態は、方法を包含し、ここで上記多量の油は、地下貯留層(subsurface reservoir)にある。
【0017】
さらなる実施形態は、方法を包含し、ここで上記油は、脂肪ベースの油である。
【0018】
さらなる実施形態は、方法を包含し、ここで多量の水が添加されて、水溶性不純物が溶解される。
【0019】
さらなる実施形態は、方法を包含し、ここでピリジン、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、および/またはA12O3が添加されて、酸の転化が促進される。
【0020】
さらなる実施形態は、上記多量の油が、上記多量の油の全酸度を減少させるのに十分な量の吸着材料と接触させられる、方法を包含する。
【0021】
よりさらなる実施形態は、方法を包含し、ここで上記吸着材料は、粘土鉱物または粘土鉱物の混合物である。これらの鉱物は、カオリナイト、イライト、イライト−スメクタイト、パリゴルスカイト、モンモリロナイト、Ca−モンモリロナイト、海泡石、ヘクトライト、Na−モンモリロナイト、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され得る。上記多量の油と、上記吸着材料および上記金属酸化剤とを接触させる工程は、並行してか、連続してか、または同時に起こり得る。他の実施形態は、方法を包含し、ここで上記吸着材料は、酸の転化を触媒する。
【0022】
別の実施形態は、多量の油の全酸度を減少させるための方法を包含し、この方法は、この多量の油と、この多量の油の全酸度および/または全酸価を減少させるのに十分な量の金属酸化剤とを接触させる工程を包含する。
【0023】
さらなる実施形態は、方法を包含し、ここで上記全酸度を減少させる工程は、上記多量の油中の多量のナフテン酸を減少させる工程を包含する。
【0024】
さらなる実施形態は、多量の油の粘性を減少させるための方法を包含し、この方法は、多量の油と、この多量の油の粘性を減少させるのに十分な量の金属酸化剤とを接触させる工程を包含する。さらなる実施形態は、方法を包含し、ここでこの多量の油の粘性を減少させる工程は、この多量の油のAPI比重を増加させる工程を包含する。
【0025】
さらなる実施形態は、プロセスによって生成される多量の改良された油を含有する組成物を含み、このプロセスは、以下の工程を包含する:多量の油を提供する工程;およびこの多量の油と、この多量の油を改良するのに十分な量の金属酸化剤とを接触させる工程。
【0026】
よりさらなる実施形態は、改良された油の組成物を含み、ここでその生産に使用される上記金属酸化剤は、アルカリ土類金属酸化物、酸化的遷移金属酸化物、希土類金属酸化物、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0027】
さらなる実施形態はまた、改良された油の組成物を含み、ここで上記プロセスは、上記多量の油または上記多量の改良された油と、この多量の油またはこの多量の改良された油の全酸度を減少させるのに十分な量の吸着材料とを接触させる工程をさらに包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(発明の詳細な説明)
本願の目的は、金属酸化物を使用して油の質を改良しそして/または改善するための、対費用効果の高い方法を提供することである。本発明の代替的な実施形態にしたがって、以下の2つの方法が別個かまたは一緒に実行されて、これが達成され得る:(1)油中に存在するカルボン酸(例えば、ナフテン酸)の量を減少させること、および(2)油の粘性を減少させること。本発明は、金属酸化物が油を改良するために使用され得ることを示した、驚くべき研究に基づく。他の特徴は、次の議論においてより詳細に記載されるように、プロセスに加えられ得る。本明細書中に開示される金属酸化物による油の処理は、油中のカルボン酸レベルおよび油中の粘性の両方を減少させることによって、その油の質を改善し得る。
【0029】
特に明記されない限り、本明細書中で使用される専門用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって、一般的に理解されるものと同じ意味を有する。当業者は、本明細書中に記載されるものと類似するか、または等価である、多くの方法および材料を認識し、これらは、本発明の実施おいて使用され得る。実際に、本発明は、決して記載される方法および材料に限定されない。
【0030】
本明細書中で使用される場合、用語「油」とは、液体の、炭水化物ベースまたは脂肪ベースの物質をいい、これらは、動物、植物、もしくは鉱床から得られるか、または人工的に製造される。一般的に、油は、水と混和できない。用語「油」はまた、石油および石油誘導体を包含する。
【0031】
本明細書中で使用される場合、用語「石油」(または原油)とは、ガス状の相、液相または固相中の炭水化物から主に構成される、天然に存在する混合物をいう。石油は、アスファルト、ディーゼル燃料、燃料油、ガソリン、ジェット燃料、潤滑油、およびプラスチックが挙げられる、多くの有用な製品に加工(製油)され得る。
【0032】
油中のカルボン酸のレベルを減少させるための機構としては、以下が挙げられる:(1)酸の転化(カルボン酸が非腐食性成分に変換されるプロセス)、および(2)そのシステムからカルボン酸を除去する固体吸着剤の使用。これらの加工の両方の目的は、サンプルの全酸価(TAN)を減少させることである。本発明の種々の実施形態と関連して、これらの技術は、一緒かまたは別個に実行され得る。
【0033】
上記TANまたは中和価は、1グラムの油中の酸度を中和するのに必要とされるKOHのミリグラム数によって定義される。このTANおよび中和価は、一般的に、原油の腐食可能性を予想するための判定基準として採用される。高いTANの油(>0.5mg KOH/g)は、より低いTANの油より所望されず、このような油が市場で販売される場合に非常に低い価格を生じる。カリフォルニア、ベネズエラ、北海、西アフリカ、インド、中国およびロシアからの原油は、代表的に、他の供給源から得られた原油より高いTANを有する。
【0034】
油の質を改善するための別の技術は、大きい炭水化物を、より小さい炭水化物に転化することによって油の粘性を減少させることである。このプロセスはまた、「クラッキング」として公知である。粘性は、せん断応力下における変形に対する流体の抵抗性の指標である。それは、一般的に、「厚さ」または注ぎに対する抵抗性として理解される。粘性は、流れに対する、流体の内在的な抵抗性を示し、そして流体摩擦の指標として考えられ得る。粘性を定量化するために有用な単位は、「センチポイズ」またはcPである。しばしば用いられる粘性についての代替的な単位は、「API比重」である。
【0035】
用語「API比重」とは、American Petroleum Institute(API)によって採用された、液体石油製品の密度を示すための一般に認められた尺度をいう。このAPI比重は、比重に関連し、これは、任意の物質の質量と、4℃における同じ体積の純水の質量との比である。API比重の単位は、度として表され、そして一般的に、API比重が高くなるにつれて、油は軽くなり、そして粘性は低くなる。原油は、多くの場合、その測定されたAPI比重に従って、軽いか、中間か、または重いかに分類される。概して、より高いAPI比重度の油の値は、より大きい商業的価値を有し、そしてより低い度の値は、より低い商業的価値を有する。
【0036】
本明細書中で使用される場合、用語「クラッキング」とは、複雑な物質(例えば、石油中の高分子量の炭水化物)が、(より低い沸点を有する傾向にある)より小さい分子へと分解されるプロセスをいう。一般的に、クラッキングは、炭素−炭素結合の破壊を包含する。クラッキングは、加熱(熱クラッキング)および触媒作用(触媒クラッキング)を含む多くのプロセスの結果として起こり得る。金属酸化物による油の処理は、クラッキングプロセスを促進することによってその油の質を上昇させ得る。油と1種以上の金属酸化物とを接触させる工程は、クラッキングプロセスを、より低い温度で起こさせ得る。
【0037】
本明細書中で使用される場合、用語「改良(upgrade)」とは、油の質が改善されるプロセスをいう。改良された油は、その全酸度の実質的な減少、その粘性の実質的な増加、またはそれらの組み合わせを生じるプロセスを受けた油として定義され得る。全酸度の「実質的な」減少(この用語が本明細書中で使用されて、全酸度を修飾する場合)は、TAN1単位を超えるTANの減少として定義され得る。粘性の「実質的な」減少(この用語が本明細書中で使用されて、粘性を修飾する場合)は、API1度を超えるAPI比重の増加、または1cPを超えるcP数の減少として定義され得る。
【0038】
油を改良するプロセスは、図1に示される。図1において、原油または送り101は、油ポンプ102によってこのシステムに供給される。このプロセスは、流量制御システム103を備え得る。その油の予熱およびナフテン酸の吸着が行われ得るユニット104がまた、このプロセスに備えられ得る。ボックス105は、必要に応じた水パージ工程またはガスパージ工程を示す。このプロセスはまた、触媒コンバーター106を備え得る;金属酸化物触媒を含み得、そして油を改良する反応が起こる装置のユニット。触媒作用の後に、この油は、冷却ユニット107を通過し得る。触媒コンバーター106のために温度および圧力を制御するユニット108がまた、備えられ得る。ボックス109は、触媒による転化の生成物を示す。1回目の触媒による転化の後に、その油をさらに改良するためにこのプロセスを繰り返すことが、所望され得る。これを達成するために、ボックス110は、必要に応じた再循環ループを示す。この油改良プロセスは、多くの場合、気体の生成を生じ、これは、ボックス111によって表される。これらの気体は、ボックス112に示されるように精製され得、次いでこれらの気体は、ボックス113に示されるように部分的に燃焼されて、触媒による転化のための熱を発生させる。その後、上に記載されるような加工を受けた油は、ボックス114に示されるように、さらなる加工のために製油所に送られ得る。図1は、このプロセスの一般的な例示としてのみ示され;当業者は、構成プロセスが、個々の必要性に合わせて、追加され得るか、削除され得るか、または改変され得ることを認識する。
【0039】
酸の転化は、有機性のカルボン酸(例えば、ナフテン酸)が脱炭酸されるプロセスであり、このプロセスは、多くの場合、TANの減少をもたらす。酸の転化の1つの考えられる生成物は、二酸化炭素(CO2)である。しかし、酸の転化はまた、CO2生成の非存在下で起こり得る。酸の転化の他の考えられる生成物は、従来の酸−塩基反応を介したカルボン酸塩の形成および/または金属酸化物によるCO2の吸着を介したアルカリ土類金属の炭素塩の形成を含む。金属酸化物媒介性の酸の転化の間に起こり得る反応の例は、図2に示され、図2においては、MgOが、例示の目的のために使用される。
【0040】
TANを減少させるための酸の転化に対して代替的な方法は、吸着固体材料によるカルボン酸の結合を包含する。吸着剤は、その表面上に物質もしくは粒子を結合するかまたは収集し得る材料である。当業者によって容易に認識されるように、多くの吸着材料が、油から酸を除去しそして/またはTANを減少させるために使用され得、例としては、多くの異なるクレーが挙げられる。本発明の1つの実施形態において、吸着および触媒的な酸の転化は、図3Aに示されるように、多量の油のTANを減少させるために、個別かまたは連続して行われ得る。この吸着および酸の転化が連続して起こる場合、多量の油は、一方のプロセスに供され、次いで同じ多量の油は、他方のプロセスに供される。一連の反応は、最初に起こる酸の転化または吸着のいずれかによって始まり得る。
【0041】
本発明のさらなる実施形態において、上記酸の転化および上記吸着は、図3Bに示されるように、並行して実施され得る。これらの反応が並行して実施される本発明の実施形態において、油の2つの異なる量が、処理され;一方は、酸の転化を促すために金属酸化物と接触させられ、そして他方は、カルボン酸を除去するために吸着剤と接触させられる。並行した反応の後、油の2つの量は、合わせられ得るが;これは、必須ではない。301は、吸着が一連の反応において行われ得るこのシステム中の領域を示す。302は、触媒的処理が一連の反応において起こり得る場所を示す。ボックス303およびボックス304は、吸着および触媒的処理が、並行した反応において起こり得る場所を、それぞれ示す。
【0042】
本発明のなお別の実施形態において、吸着および酸の転化は、多量の油を伴って、同時に起こる。実際に、当業者によって容易に認識されるように、単一の材料が、吸着および酸の転化の両方を同時に行うために使用され得る。例えば、多くの異なる金属酸化物を含有する粘土鉱物は、酸の転化および吸着の両方を触媒し得るかもしれない。
【0043】
金属酸化物は、1個以上の酸素分子と結合した1個以上の金属原子を含む化合物として定義される。金属酸化物の異なる分類としては、アルカリ土類金属酸化物、酸化的遷移金属酸化物、および希土類金属酸化物が挙げられる。アルカリ土類金属酸化物の例としては、カルシウム(Ca)の酸化物、ストロンチウム(Sr)の酸化物、マグネシウム(Mg)の酸化物、およびバリウム(Ba)の酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。酸化的遷移金属酸化物の例としては、銀(Ag)の酸化物、銅(Cu)の酸化物、マンガン(Mn)の酸化物、鉛(Pb)の酸化物、ニッケル(Ni)の酸化物、コバルト(Co)の酸化物、および鉄(Fe)の酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。希土類金属酸化物の例としては、ランタニド系列の酸化物、ならびにセリウム(Ce)の酸化物、ランタン(La)の酸化物、イットリウム(Y)の酸化物、およびジルコニウム(Zr)の酸化物、およびスカンジニウム(Sc)の酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。当業者によって容易に認識されるように、本発明の代替的な実施形態と組み合わせて使用するのに適した多くの金属酸化物が、存在する。
【0044】
本明細書中で使用される場合、用語「金属酸化剤」とは、金属酸化物または金属酸化物の混合物をいう。金属酸化剤はまた、他のさらなる不活性成分を含み得る。
【0045】
本明細書中で使用される場合、用語「接触させる工程(contacting)」とは、2つ以上の反応成分が互いに隣接して十分に近接し、これらの成分が互いに化学的に反応し得るようなプロセスをいう。
【0046】
本明細書中で使用される場合、用語「ナフテン酸」とは、しばしば石油および石油製品中に見出される、官能化されていない脂肪族カルボン酸、脂環式カルボン酸、および芳香族カルボン酸の群をいう。ナフトエ酸は、一般に、式CnH2nを有するナフテン酸の型である。
【0047】
当業者は、本発明の代替的な実施形態との組み合わせにおいて、油を改良するプロセスに適した種々の異なる型の反応器が存在することを認識する。ここで、いくつかの例が、提供されるが、本発明の適用は、決してこれらの特定の反応器の使用に限定されない。酸の転化反応を実施するための1つのシステムは、密封されたガラス管の回分反応器である。酸のサンプル、触媒、および/または他の添加剤(存在する場合)(ミリグラムの量)は、真空下でガラス管中に密封され得る。その後、これらの密封されたガラス管は、制御された反応条件下において所望の反応を開始するために、オーブン中に配置され得る。これらの反応は、約200℃〜約450℃の温度範囲で約4時間実施され得るが、この範囲外の温度、ならびにより長いかまたはより短いインキュベーション時間もまた、適切であり得;特に、そのシステムの構成およびその規模に依存する。反応気体は、標準的な気体輸送法を使用して、真空ライン中に収集され得、そして定量化され得る。
【0048】
原油検査実験のために、より大きいサンプル容量が、しばしば必要とされ、そしてオートクレーブ反応器を使用する代替的な実験手順が、確立された。例えば、約40mLの容量を有するオートクレーブ反応器が、使用され得る。サンプル操作手順は、以下の通りである:(i)多量の油および金属酸化剤(油の2〜5重量%)は、反応器に添加される;(ii)その内容物は、この反応器を振盪することによって1時間混合される;(iii)この反応は、反応器を動かし続けて反応物と触媒との間の接触を維持しつつ、250〜300℃の温度範囲で4時間インキュベートされる;(iv)この反応器は、その反応の終点にて冷却され、そして処理された油は、ジクロロメタンまたは別の適切な溶媒を使用した溶媒抽出によって取り出される。この溶媒抽出は、例えば、真空濾過し、次いで溶媒を蒸発させることによって実施され得る。
【0049】
図4Aに例示的に示されるように、上記酸の転化を実施するための代替的なシステムとしては、流通反応装置システムが挙げられ、この流通反応装置システムは、一般に、低い運転費用を有する。流通反応装置は、固定層触媒または非固定層触媒のいずれかを有し得る。流通反応装置において、その反応物流体は、触媒を含む1つ以上の管型反応器を通って流れる(図4Bを参照のこと)。流通反応装置は、継続的に運転され得、そして多くの場合、一回の通過において酸の転化を起こさせる。さらに、それらは、比較的長い触媒の接触時間を可能にし、そしてこの触媒からこの生成物を分離する直接的なプロセスを提供する。
【0050】
流通反応装置の設備において、ポンプ400が使用されて、デカンまたは別の適切な溶媒が輸送管402に一定の流量で供給される。圧力計1および圧力計2(それぞれ、401および403)は、この輸送管の上流および下流のシステムの圧力変化を示す。原油は、他方の輸送管に添加され、そしてデカンによって輸送ピストンを通して押し出される。N2(または他の適切な気体)パージライン404が使用されて、油が反応後にこのシステムからパージされ得る。触媒反応は、炉405中で行われ、この炉は、温度制御ユニット406によって調節される。得られた油は、この反応の終点にて容器407中に収集され得る。この反応は、止め弁(それぞれ、408および409)を有し得る。これらの輸送チュービングラインおよび弁は、加熱テープによってくるまれ得、そして油が容易に流れる温度に油を維持するために80℃または約80℃に維持され得るが;この温度は、本発明の代替的な実施形態に関連して変えられ得る。流通反応装置システムの必要に応じた構成要素としては、流量制御ユニット、熱供給源、油再循環ループ、油冷却ユニットなどが挙げられるが、これらに限定されず、これらは、当業者によって容易に認識される。固定層流通反応装置システムは、産業用途に必要とされる反応容量に適応するように、スケールアップされ得る。
【0051】
酸の転化プロセスに対して適切であり得る他の型の反応系としては、回分反応器システムおよびスラリー反応器システムが挙げられる。回分反応器は、上記反応成分がタンクまたは他の適切な容器に添加されるシステムである。一般に、全ての反応成分は、この反応のはじめにおいて添加され、そして生成物は、この反応が所望の量の時間に達するまでこのタンクの中に残る。この反応後、その生成物は、分析またはさらなる処理のために取り出される。スラリー反応器は、触媒が反応物と継続的に混合されて、懸濁固形物を含む液体として定義されるスラリーとして、この反応混合物が維持されることを除いて、回分反応器と同様である。回分反応器システムおよびスラリー反応器システムの両方は、当業者による産業上の設定の必要性に適応するように、容易にスケールアップされ得る。
【0052】
脱炭酸は、酸の転化プロセスにおいて重要である。脱炭酸機構の理論上の研究は、ラジカル経路は、遷移金属(例えば、Cu(II)およびMn(III))が含まれる場合に優勢であることを示唆する。これらのカチオン性化学種は、閉殻(Cu(II),−3d9電子配置〜Cu(I),−3d10電子配置)および半閉殻(Mn(III)−3d4電子配置〜Mn(II)−3d5電子配置)に起因する内部の電子移動を発生し得る。これらの研究はまた、協奏した経路が、卑金属に関する機構であり得ることを示唆する。協奏した経路において、β−炭素上の求核攻撃は、自発性の工程である。これらの研究は、金属表面上のヒドロキシル基が炭素−炭素結合の破壊を支援し得ることを、さらになお示唆する。任意の特定の理論に拘束されることを望まないが、おそらく、塩基性条件は初期の塩基−酸反応を促進する一方で、酸性条件はその後の脱炭酸反応を促進すると考えられる。
【0053】
酸の転化に加えて、吸着は、油からカルボン酸(例えば、ナフテン酸)を除去するための有効な方法である。「吸着材料」とは、別の物質を吸着する能力または傾向を有する材料をいう。粘土鉱物は、ナフテン酸を除去する固体吸着剤として使用されてきた。粘土鉱物の主要な構成成分は、ケイ素、アルミナ、および水であり、多くの場合、かなりの量の鉄カチオン、アルカリカチオン、およびアルカリ土類カチオンを含む。天然のクレーは、通常、高いカチオン交換容量(CEC)および表面積を有する。さらに、それらは、安価でありかつ環境に優しい。粘土鉱物は、多くの有機化合物と相互作用して、安定性および特性が変化する錯体を形成し得る。クレーと有機物との相互作用は、シリケートの層、無機カチオン、水および有機分子に関する多変量反応である。酸化合物と固体表面との間の化学親和力は、酸性分子、この酸性分子に存在する官能基(例えば、疎水基(−C−C−C−C−)、電気的陰性基(−C=O、−C−O−C−、−OH)、π結合(−C=C−、芳香環))、および酸性分子の立体配置の構造(分子量、鎖の長さなど)に依存する(Kowalska,M.ら、The Sci.of the Total Environ.、(1994)141、223−240)。金属酸化物を吸着するのに有用であり得るクレーの例としては、カオリナイト、イライト、イライト−スメクタイト、パリゴルスカイト、モンモリロナイト、Ca−モンモリロナイト、海泡石、ヘクトライト、およびNa−モンモリロナイトが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
ゼオライトはまた、油を部分的に改良するために使用され得る。ゼオライトは、多孔性構造を有する、合成かまたは天然に存在する鉱物である。一般に、それらは、種々の陽イオン、および他の化合物に適応し得る柔軟な構造(open structure)を有する水和したアルミノケイ酸の鉱物である。いくつかの、より一般的な天然に存在する鉱物ゼオライトは、以下である:方沸石、斜方沸石、輝沸石、ソーダ沸石、灰十字石、および束沸石。例示の鉱物の式は、以下である:Na2A12Si3O10−2H2O(ソーダ沸石についての式)。天然ゼオライトは、火山岩および火山灰層を形成し、アルカリ性の地下水と反応する。アルカリおよび有機性の鋳型の存在下におけるシリカ−アルミナゲルのゆっくりとした結晶化のプロセスによって形成される、数種の型の合成ゼオライトが存在する。ZSMファミリーおよびHZSMファミリー中のゼオライトは、油を改良するために有用であり得る物質によってコーティングされ得る。ZSM−5は、油のクラッキングにおけるその有用性について、既に周知である。
【0055】
上に記載された方法は、石油から腐食性物質(例えば、カルボン酸)を除去するのに有用である。しかし、このプロセスはまた、当該分野、および関連分野の当業者によって容易に認識されるように、他の脂肪ベースの油(例えば、植物由来の油および動物由来の油)に対して適切であり、そしてこのような関連分野に対する本発明の技術の適用は、本発明の範囲内であると見なされる。これらの他の型の油は、多くの場合、これらの油の安定性に負の影響を与える望まれない化学反応を生じるナフテン酸を含む。したがって、これらの型の油中の酸を除去する方法は、本発明の有益な目的であり、そして本発明の範囲内にある。
【0056】
上記油の質を改良するための方法は、地表の上、および地表の下(例えば、地下のオイルプール)の両方で適用可能である。したがって、本発明の代替的な実施形態と組み合わせて使用される反応器は、地上の環境または地下の環境において使用するために構成され得る。これらの構成のいずれかまたは両方は、本発明の技術の特定の産業用途に依存して所望され得る。
【0057】
本発明の代替的な実施形態において、異なる物質の範囲は、本明細書中に記載される油を改良する反応の1つ以上に加えられ得、この油を改良する反応は、上記反応プロセスに役立つか、または上記改良を容易にするかもしくは向上させる。いくつかのこのような添加剤は、水およびピリジン、銅、ニッケル、A12O3ならびに他の金属物質または有機物質である。
【0058】
当業者は、本明細書中に記載されるプロセスが、反応器の型、サンプルのサイズおよび多くの他の条件に依存して、種々の異なる温度にて種々の長さの時間で実施され得ることを認識する。本発明の代替的な実施形態との組み合わせにおいて、油のサンプルと金属酸化物とを接触させるのに適切であり得る温度範囲の例は、以下の通りであるが、決してそれらに限定されない:約200℃〜約450℃、約250℃〜約450℃、約300℃〜約450℃、約350℃〜約450℃、約400℃〜約450℃、および約300℃〜約370℃。これらの範囲は、例示の目的で与えられ、そして限定の目的で与えられない。
【0059】
以下の実施例は、例示の目的で提供され、そして限定の目的で提供されない。
【実施例】
【0060】
(実施例1)
(全酸価測定)
室内の全酸価(TAN)測定法を、ASTM標準方法D664の手順に従って構築した。この測定の原理は、PH/mv計測器(Oakton PH510 Series)によって決定される非水性の酸塩基電位差滴定に基づく。
【0061】
(手順)
(アルコール性水酸化カリウム溶液の調製)
6gのKOHを、約1Lの無水イソプロパノールに添加した。次いでこの溶液を、穏やかに30分間煮沸して、この溶液中のKOHの溶解性を増加させた。この溶液を、一晩保存し、次いでフタル酸水素カリウム(KHC8H4O4またはKHP)によって標準化した。
【0062】
(アルコール性KOH溶液の標準化)
上記溶液を、CO2を含まない水に溶解した重み付けした量(weighed quantity)のKHPの電位差滴定によって標準化した。
【0063】
(油サンプルの調製)
1つの5gの油サンプルを、125mLの滴定溶媒(500mLのトルエン/495mLの無水イソプロパノール/5mLの水)に溶解した。次いで、得られた溶液を、濾過し、そして滴定容器として使用される250mLビーカーに移した。
【0064】
(油サンプルに対するKOHの滴定)
適切な量のKOHアルコール性溶液を、添加した。一旦、定電位を観察し、この計測器の測定値を、記録した。上記サンプルを変曲点の近くまで滴定した場合、数滴のKOHを添加した。各組のサンプルに関して、並行してブランクの滴定を、コントロールとして行った。
【0065】
(計算)
添加したKOH溶液の容量 対 対応する電極電位(mv)を、プロットした。油サンプルおよび溶媒のみに対する変曲点Aならびに変曲点Bを、記録した。これらは、単位KOHに対する最も大きい電位の変化を反映すると考えられる。TANを、以下の方程式を使用して計算した:酸価(1gあたりのKOHのmg)=(A−B)×M×56.1/W。この方程式において、Mは、アルコール性KOH溶液の濃度(mol/L)であり、そしてWは、このサンプルの質量(g)である。
【0066】
(結果)
KHPに対するKOHおよび油に対するKOHについての2つの代表的な滴定曲線を図5Aおよび図5Bに示す。それぞれの場合において、これらの変曲点は、明確に観察された。これらの結果は、表1に示されるように、The Oil Analysis Labから得られたデータと一致する。
【0067】
(表1:TAN測定の結果)
【0068】
【表1】
(実施例2)
(原油からナフテン酸を除去するための触媒性脱炭酸)
この実施例は、原油中のナフテン酸の触媒性脱炭酸に有用なプロセスを概説する。MgOは、150℃〜250℃の温度範囲にて実施した4時間の反応において、飽和および芳香族の両方のモデルのナフテン酸化合物との脱炭酸活性を有することを示した。Ag2Oの存在下において、生成されたCO2の量は、「直接的な」触媒性脱炭酸を生じる他の脱炭酸生成物(ナフタレン)の量と一致した。これらの知見は、油からナフテン酸を除去するための、低い温度の、対費用効果が高い触媒性脱炭酸プロセスを提供する。さらに、この実施例は、種々の固体触媒の存在下におけるナフテン酸の触媒性脱炭酸を調査したことを示す。試験した触媒の間で、MgOは、モデルの飽和ナフテン酸化合物および芳香族ナフテン酸化合物の脱炭酸に関して、高い反応性を示す。Ag2Oは、酸の転化を容易にするだけでなく、「直接的に」ナフトエ酸をナフタレンに転化する。
【0069】
(実験的方法)
(選択したモデル化合物および油サンプル)
カルボン酸の対(ナフトエ酸(C10H7COOH)およびシクロヘキサンカルボン酸(CHCA))を、芳香族ナフテン酸および飽和ナフテン酸を示すモデル化合物として選択した。
【0070】
5種の有機酸(シクロペンタンカルボン酸(CPCA)、シクロヘキサンカルボン酸(CHCA)、安息香酸(BA)、C5H11−CHCAおよびC7H15−BA)を、ドデカンに溶解し、0.871%〜2.471%の範囲の重量濃度を得た。
【0071】
Chevron Texacoによって提供された4.38の全酸価(TAN)を有するTexaco原油を、この研究に使用した。
【0072】
(実験の設定)
ミリグラムの桁のNAサンプル、触媒、および他の添加剤を、還元雰囲気下においてガラス管に封入した。この密封したガラス管を、温度を制御したオーブン中に配置して、制御した温度下において反応させた。
【0073】
原油検査実験のために、40mLオートクレーブ反応器を使用してガラス管に封入された反応を実施する、異なる実験手順を確立した。この手順の詳細な説明は、以下の通りである:(i)12gの油および0.24〜0.60gの触媒(油の2〜5重量%)を、この反応器に装填した;(ii)これら2つの成分を、この反応器を振盪することによって1時間、予め混合した;(iii)この反応を、この反応器を継続的に振盪しながら250〜300℃の温度で4時間行わせて、この油とこの触媒との間の良好な接触を達成した;(iv)所望の反応時間が経過した後、この反応器を冷却し、そしてこの処理した油を、真空濾過によってこの触媒から分離した。
【0074】
(分析方法)
反応気体を、標準的な気体輸送法を介して、真空ライン中に収集し、そして定量化した。次いで、得られた気体をGCによって分析して、上記反応において生成されたCO2および他の気体の量を定量化した。固体残渣(推定上、未反応の酸を含む)を、ジクロロメタンを使用して抽出し、そしてGC分析に供した。これらの数値(numbers)を使用して、起こった酸の転化の量を計算した。
【0075】
原油の試験のために、反応前後の、ナフテン酸サンプルの全酸価(TAN)を、Standard Test Method for Acid Number of Petroleum Products by Potentiometric Titration(ASTM−D 664)によって測定した。この作業を、The Oil Analysis Labにて行った。
【0076】
(理論的方法)
反応物、生成物、中間体および遷移状態(TS)の気相ジオメトリー(gas phase geometry)を、密度汎関数理論のB3LYP汎関数を使用して最適化した。全ての計算結果に対する6−31G(d)基底系を、使用した。全ての停留点は、極小(0の虚振動)およびTS(1の虚振動)に対してポジティブに同定した。振動数をまた、全ての停留点において計算して、0点エネルギー(ZPE)および熱力学パラメーターを得た。
【0077】
(結果)
(モデル化合物の触媒性脱炭酸)
表2は、触媒反応のCO2発生を記載する。試験した種々の固体触媒の間で、飽和および芳香族の両方に対するMgOから発生したCO2の量(17.4%および25.5%のmolの転化に対応する、30.38ml/gおよび33.20ml/g)は、他の固体触媒からの量よりずっと高かった。CO2形成の欠如は、必ずしも酸の転化が起こらなかったことを意味せず、ある程度のCO2がこれらの金属酸化物によって吸着されて、カーボネートが形成されたようである。しかし、CO2の検出は、酸化合物の転化を明確に示す。MgOは、ナフテン酸化合物の脱炭酸に関して最も高い反応性を示した。有機塩基(例えば、ピリジン)の添加は、触媒反応性をわずかに促がし得た。ピリジンの存在下において、MgO触媒性の脱炭酸は、100℃と同程度に低い温度で起こった。
【0078】
(表2.モデル化合物の触媒性脱炭酸)
【0079】
【表2】
bの反応温度および反応時間(100℃および4時間)を除いて、反応温度および反応時間は、200℃および4時間である。
【0080】
(酸混合物の触媒性脱炭酸)
有機酸の脱炭酸における開発したMgO系触媒の有効性を試験するために、5種の酸化合物の混合物を調製して、高い酸含有量を有する油の組成を部分的に模擬した。表3に記載したように、より高い酸の転化を、単一の酸試験の場合において、MgOから得た。この酸の転化は、少量のNiおよびCuをMgO上に負荷した場合に、さらに改善され、そしてこの転化は、>90%に達した。
【0081】
(表3.酸混合物の触媒的脱炭酸)
【0082】
【表3】
CPCA(シクロペンタンカルボン酸)、CHCA(シクロヘキサンカルボン酸)、BA(安息香酸)、200℃、4時間。
【0083】
(MgO触媒性の脱炭酸反応)
上記反応の間の、ナフテン酸の分解に関する温度依存性およびMgO負荷効果を、調査した。これらの反応を、固定したMgO負荷(20重量%)において100℃〜300℃の範囲で反応温度を変化させること、および250℃において0〜40重量%でMgO負荷を変化させることによって、個別に行った。ガス状生成物および残った固体生成物を分析して、CO2収率および酸の転化についてのデータを得た。
【0084】
図6に示す結果は、この酸の転化が、約150℃で始まり、150℃〜250℃の範囲で迅速に増加し、次いで、より高い温度で横ばいになったことを示す。250℃を超える温度において、80%を超える酸が転化されたが、CO2収率は、増加し続けなかった。0〜20重量%の範囲でのMgO負荷の増加は、このCO2収率およびこの酸の転化を直線的に増加させたが、MgO負荷の量のさらなる増加は、このCO2収率をさらに増加させなかった。
【0085】
(MgO触媒性の脱炭酸反応の機構研究)
MgOの存在下における、妥当な協奏した酸化的脱炭酸経路を、全ての安定な、計算された中間状態および遷移状態のエネルギー図を用いて、気相において理論的に研究した。この反応経路を、図7に示す通り、安息香酸をフェノールに転化する3工程の機構のように要約する:
工程1:カルボキシル基のC原子における求核攻撃((A)〜(B));
工程2:4員環の遷移状態を介する水酸基の転移(TS−I(C)を経由する(B)〜(D));
工程3:脱炭酸よるプロトン転移の達成(TS−2(E)を経由する(D)〜(F))。
【0086】
芳香環のオルト位における水酸基の攻撃を特徴付ける、TS−Iに対する計算された遷移の障壁(約30kcal/mol)は、本明細書中に開示される実験条件(200℃、4時間)と一致する。しかし、オルト位からipso位へのプロトンの移動を特徴付ける、TS−2に対する障壁(49kcal/mol)は、予想したものよりも高い。これは、気相のみの、単一分子の計算を行ったという事実に、一部起因し得る。より大きい金属酸化物クラスターおよび/または水の補助を伴うさらなる計算は、この障壁が、より低いことを予期する。
【0087】
(CO2収率 対 酸の転化)
試験した金属酸化物の大部分がCO2生成を生じた一方で、酸の転化は、既に起こっていたかもしれない。実際に、表4に示す通り、数種の金属酸化物の存在下における、CO2収率および酸の転化を比較することによって、この酸の転化が、ほとんどの場合において、一般的にはCO2収率よりずっと高いことが明確となる。この大きな違いは、従来の酸−塩基反応によるカルボン酸塩の形成、または金属酸化物によるCO2の吸着を介したアルカリ土類金属の炭酸塩の形成のいずれかに起因し得る。しかし、これらの形成は、これらの油を魅力のないものにする、一連のエマルションの問題を生じることが公知である。この意味において、Ag2Oの場合は、確実に、「きれいな(clean)」触媒の良好な選択である。なぜなら、この酸の転化は、CO2収率と一致するからである。さらに、この脱炭酸生成物(ナフタレン)をまた、検出した。これは、「直接的な」触媒性脱炭酸反応が起こったことを明確に示す。
【0088】
(表4:数種の金属酸化物の存在下におけるCO2収率および酸の転化の比較)
【0089】
【表4】
250℃;cat約10mg。
【0090】
(原油を用いた試運転)
原油の脱炭酸反応に関して、試薬としての金属酸化物触媒群の、最初の試験実行の結果を、図8に示す。CaOが、高い酸の転化(約70%)を示す一方で、MgO、Ag2O、およびCuOは、酸の除去に関して、予期したような著しい反応性を示さなかった。このことは、この油中の不純物から生じるこの触媒の失活に起因するようである。
【0091】
(実施例3)
(希土類金属酸化物を使用するナフトエ酸の触媒性脱炭酸)
CeO2、La2O3、Y2O3およびZrO2が挙げられる数種の希土類金属酸化物を、モデルの酸(ナフトエ酸(C10H7COOH))を用いて試験し、そしてその結果を、表2に示した。低いCO2収率(表5に示すような、CO2への炭素の転化として定義される)は、これらの金属酸化物が触媒性脱炭酸に関して不活性であることを示唆する。金属酸化物ZrO2は、酸−塩基の二重の官能性を示した。
【0092】
(表5:希土類金属酸化物を使用するナフトエ酸の触媒性脱炭酸)
【0093】
【表5】
NA、C10H7COOH、2−ナフトエ酸。
【0094】
(実施例4)
(酸化的遷移金属酸化物を使用するナフテン酸の触媒性脱炭酸)
より酸化的な金属酸化物を、モデル化合物(ナフトエ酸およびシクロヘキサンペンタン酸)の触媒性脱炭酸において調査した。後者は、原油中のナフテン酸の成分として、より代表的であると見なされる。試験した金属酸化物としては、Ag2O、AgO、MnO2、Mn2O3、PbO2、CuO、Cu2O、Fe2O3およびCo2O3が挙げられる。これらの金属酸化物の全ては、可変性の酸化的状態を有する。
【0095】
表6のデータは、触媒性脱炭酸の指標であるCO2形成がFe2O3を除く各場合において検出されたことを示す。250oCの温度において、そのCO2収率は、全て、10%より低かったが、その酸の転化は、より高いもの到達し得る。反応温度の300oCまでの上昇は、より高いCO2収率、およびより高い酸の転化をもたらした。このことは、これらの金属酸化物の酵素活性が温度感受性であることを示唆する。重要なことには、Ag2OによるCO2収率が、96.93%と同程度の高さに達した。このことは、このナフトエ酸が、ほぼ完全に、CO2に転化されたことを示す。93.9%の高い酸の転化は、これらデータと一致する。さらに、別の重要な脱炭酸生成物として、ナフタレンをまた検出した。ナフタレンへの炭素の転化として定義される、ナフタレンの収率は、66.2%に達した。さらに、GC−MS分析はまた、1,2’−ビナフタレンおよび2,2’−ビナフタレン(C20H14)の形成を同定した。これらの副生物は、ナフタレンの二量体化の結果であり得る。この結果は、この反応がラジカル機構によって起こったことを強力に示唆した。
【0096】
異なる酸化的状態における同じ金属原子の比較は、それらの脱炭酸の有効性において、一般的傾向を示さなかった。例えば、Ag(I)は、Ag(II)より非常に活性であるが、Mn(IV)は、Mn(III)より多くのCO2を生じる一方で、Cu(I)およびCu(II)は、300oCの温度にてほぼ等しいCO2収率を与えた。
【0097】
新しい酸基質(シクロヘキサンペンタン酸(CHPA))に対してAg2O、MnO2およびPbO2を適用する場合、CO2をまた、検出したが、その収率は、より低い反応温度に起因して高くなかった。これらの結果は、多様な酸基質の構造と反応する、酸化的な金属酸化物触媒の適用に対する見込みを示す。
【0098】
酸化的な金属酸化物における触媒性脱炭酸の機構に関して、ラジカル中間体を介する酸化的脱炭酸は、最も妥当な反応経路である。したがって、これらの化合物の酸化性能は、その活性とって必須である。
【0099】
(表6.酸化的な金属酸化物の存在下におけるモデルのカルボン酸の触媒性脱炭酸)
【0100】
【表6】
NA、C10H7COOH、2−ナフトエ酸;CHPA、C6H11C4H8COOH、シクロヘキセンペンタン酸。
【0101】
(実施例5)
(固体触媒の存在下における原油との反応速度測定)
TAN、油の粘性および処理した油のIR吸着を、複数の冷トラップを使用して異なる反応段階にて測定した。2種の触媒(MgOおよびMnO2)を、調査した。MgOおよびMnO2は、モデル化合物の脱炭酸、およびバッチ反応試験における原油からのナフテン酸の除去に対して有効であることが示された。
【0102】
この反応において、0.5gの触媒(粒子サイズ28〜65)および添加した2%のCHPAを有するTexacoからの原油を、3g/時間〜4g/時間の流量で反応器に添加した。反応の間に、赤外分光学(IR)を使用して、この触媒の有効性をモニタリングした。この触媒を、RCOOHの吸着(約1,700nmにおけるピークによって示されるような)が顕著に回復した場合に、失活したと見なした。これが起こった場合、この反応を、終了した。これらの油を、異なる反応間隔にて回収し、そしてTAN分析および粘度測定に供した。
【0103】
異なる温度での熱処理の結果を、図9および表7に示す。IR測定は、温度効果が、増加およびその後の減少を提示することを示した。250℃および300℃で処理した油についてのTANが、開始の送りより高いことを見出した。これは、この温度範囲におけるナフテン酸以外のいくつかの軽い成分の蒸発に起因し得、ナフテン酸濃度の明らかな増加を生じる。この温度を約350℃までさらに増加させた場合、ある程度のナフテン酸は、蒸発するか、または分解して、より低い酸度を生じた。
【0104】
MgO触媒に関して、この反応を、全部で29.25時間(80℃で2時間、150℃で2時間、250℃で21.33時間、および300℃で4時間)、継続的に行い、図6および表8に示す結果を得た。IR測定は、触媒が250℃(全13時間)で9時間まで有効であったことを示した。このとき、47.74gの油を回収し、そして油処理能力を、MgO 1gあたり95.48gの油であると計算した。この油のTANは、流れにおいて13時間後に30%を超えて減少した。
【0105】
本発明者らは、図10および表9に示すように、反応温度を300℃までさらに上昇させ、そしてこの油を、より長い時間MgO触媒によって処理した。IR測定は、失活が12時間30分から始まったことを示した。TAN測定は、反応時間2〜4時間および反応時間5〜8時間の間に回収した油について、それぞれ、5.6および7.9のより低い値を与えた。TANの減少に基づいて計算した酸の転化は、64%〜50%に達した。反応温度を350℃まで連続的に上昇させることによって、この回収した油は、より迅速に流れた。これは、より低い粘性を生じた。任意の特定の理論に拘束されることを望まないが、おそらくMgOによって促される触媒性クラッキングが、この結果を導き得たことが考えられる。
【0106】
酸の除去に対するMgOの役割において、それは、複数の機構を有すると考えられる。モデルの酸化合物による結果は、そのCO2形成に起因して、その脱炭酸活性を同定した。一方で、その固有の強い塩基度に起因して、MgOはまた、酸−塩基の中和によって、酸と反応する傾向にある。より高い温度において、MgOは、炭水化物のC−Cクラッキングを容易にする活性があることが報告された。
【0107】
本発明者らは、図12および表10に示すように、MnO2において流動試験(flow test)を行った。MnO2触媒に関して、その反応を、250℃で10時間30分、継続的に行った。IR測定は、MnO2が、初期の反応においてRCOOHの減少に有効であり、次いで、そのピークは、反応時間と共に徐々に増加することを示した。10時間35分後、それは、ほぼ完全に回復した。TAN分析は、この油のTANが4.17時間までは、ある程度まで減少し、そして油処理能力が、MnO2 1gあたり約51gの油であったことを示した。
【0108】
(表7:熱処理したものについてのTANおよび粘度の測定)
【0109】
【表7】
(表8:250℃以下でMgOによって処理した油についてのTANおよび粘度の測定)
【0110】
【表8】
(表9:300℃および350℃にてMgOによって処理した油についてのTANおよび粘度の測定)
【0111】
【表9】
MgO 0.5g,300℃,350℃ 送り,油+2% CHPA。
【0112】
(表10:250℃にてMnO2によって処理した油についてのTANおよび粘度の測定)
【0113】
【表10】
流量:4.57〜2.08ml/hr。
【0114】
(実施例6)
(粘土鉱物上へのナフテン酸吸着)
モデルのナフテン酸(NA)溶液を、ドデカン(C12)に溶解したテトラデセンを伴う4種の市販のNA(すなわち、シクロヘキサンプロピオン酸(NA1)、安息香酸(NA2)、シクロヘキサンペンタン酸(NA3)、および4−ヘプチル安息香酸(NA4))を使用することによって調製した。それらの濃度は、それぞれ約0.5重量%であった。数種のクレーサンプル(Source Clay Repository of Clay Mineral Society at Purdue University、West Lafayette、INから得た)、すなわち、カオリン(KGa−2)、イライト(IMt−1)、イライト−スメクタイト混合層60/40(ISMt−2)、イライト−スメクタイト混合層70/30(ISCz−1)、パリゴルスカイト(PF1−1)、モンモリロナイト(SAz−1)、Ca−モンモリロナイト(SAz−2)、モンモリロナイト、CA(SCa−3)、海泡石(SepSp−1)、ヘクトライト(SHCa−1)、およびNa−モンモリロナイト、WY(SWy−2)を、この研究のためのモデル吸着剤として選択した。使用した粘土鉱物の化学組成を、表11に示す。
【0115】
上記吸着実験を、バッチ平衡技術(batch equilibration technique)を使用して実施した。所望の量のNA溶液を、既知の量の粘土鉱物を含んだ異なるガラス製遠心チューブに添加した。これらのチューブを、25℃および66℃にて24時間振盪し、次いで10分間遠心分離した。上清を、取り出し、そして分析に供し、Hewlett Packardガスクロマトグラフ−質量分析(GC−MS)を使用してNA濃度を決定した。クレーを含まない溶質の濃度における変化は、実験時間内のこれらのチューブにおいて検出されなかった。したがって、クレーのスラリーから得た上清中の溶質質量の損失は、クレーによる吸着に起因すると仮定した。吸着されたNAの量を、ドデカン溶液中の最初の溶質濃度と平衡状態の溶質濃度との間の違いから計算した。
【0116】
(表11:粘土鉱物の化学組成)
【0117】
【表11】
表12は、選択されたクレー吸着剤上に吸着されたNAの結果を概説する。吸着剤としての種々のクレーのNAに対する親和性の順序は、以下である:SepSp−1>SWy−2>SAz−1>PF1−1>SHCa−1≧SCa−3>SAz−2>IMt−1>IScz−1>KGa−2>ISMt−2。さらに、各試験において、著しい吸着は、テトラデセンについて観察されなかった。この結果は、これらのクレー吸着剤が、NAに対して選択的であるが、炭水化物に対して選択的でないことを示す。これは、海泡石(SepSp−1)およびNa−モンモリロナイト(SWy−2)が、原油からNAを除去するための、潜在的に効率的な吸着剤であることを示す。NAを吸着する能力は、SepSp−1およびSWy−2について、それぞれ、クレー1gあたり68mgの酸および53mgの酸に達した。対照的に、ISCz−1は、酸の吸着に関して不活性であることが見出された。使用したクレーのほとんどにおいて、吸着される4種のNAのクレーに対する親和性の順序は、KGa−2に対するものを除いて、以下である:NA2>NA3>NA1>NA4。これらのクレー上への安息香酸の吸着は、他のNAの吸着と比較して、より有効であった。芳香環を有する安息香酸は、物理的吸着−化学的吸着に対する強力な影響を示した。
【0118】
上記鉱物の分析を、表11に示すように金属の%ではなく、酸化物の%として報告する。NA吸着を、個別かまたは一緒に、MgO、CaO、およびNa2Oの濃度と関連付けた。吸着されたNAの量は、おおまかに、MgOの量と共に増加することが見出された(図13)。これらのNAの吸着は、クレーの化学構造に影響され得る。
【0119】
(表12:選択したクレー吸着剤に由来する酸の除去の有効性)
【0120】
【表12】
(実施例7)
(MgOによる触媒作用後の原油のTANおよび粘性の減少)
20〜60メッシュの粒子サイズを有する1gのMgOを、流通反応装置中の原油のサンプルに添加した。反応を、300℃および350℃にて実施した。300℃におけるこの反応の実行を、54時間行い、そしてこの反応の間に、この油の流量は、15.35mL/時間〜1.76mL/時間(主に、2mL/時間〜5mL/時間の範囲)に変化した。反応の間に回収した油の総量は、206.23gであった。異なる反応段階において変化するTANを、図14にプロットする。開始の油のTANは、4.79であり、そして処理した油のTANは、2.42〜3.20の範囲であった。この触媒は、48時間より長く活性なままであり、そしてTANの減少速度33.2%〜49.9%の範囲であった。300℃における実験の結果を、表13に示す。
【0121】
(表13.300℃におけるMgOによる原油の流動反応)
【0122】
【表13】
MgO 1.0g、20〜60メッシュ。
【0123】
350℃にて7.7時間試験した反応サンプルに関して、TANは、4.72から1.75まで減少し、そしてその粘度は、40℃において6,300cPから174cPまで減少した。処理した油について推定したAPIは、18度であり、そして最初の送り(原油)は、約13度であった。
【0124】
同様の反応を、325℃にて8時間実施した。この場合において、TANは、4.72から2.91まで減少し、そして終点における粘度は、おおまかに、最初における粘度の半分であった。
【0125】
(実施例8.触媒の存在下における混酸の反応)
酸の転化の分析を、ニッケルおよびA12O3の存在下においてMgOを使用して行った。以下の酸を含む混酸溶液を、使用した:2.47%のCPCA(シクロペンタンカルボン酸);1.93%のCHCA(シクロヘキサンカルボン酸);0.87%のBA(安息香酸);1.10%のC5H11−CHCA;1.11%のC7H15−BA。この反応のために使用した溶媒は、デカンであった。この反応を、200℃にて4時間実施した。これらの結果を、以下の表14に示す。
【0126】
(表14:触媒の存在下における混酸の反応)
【0127】
【表14】
(実施例9)
(より高い機械的ストレスを伴う触媒および添加した不活性材料を伴う触媒を使用して改善した油を改良する工程)
流動反応20(FR20)において、この反応を、1.0gのMgOを使用し、325℃にて、2.05mL/時間〜6.56mL/時間の流量を用いて164時間、継続的に実行した。この反応において、ガラスビーズをこの触媒に添加して、触媒粒子の移動を抑制した。さらに、使用したMgOは、40〜60のメッシュサイズを有した。この反応において処理した油についてのTANは、約20%〜30%減少した。FR20の結果を、表15に示す。
【0128】
(表15:流動反応20の結果)
【0129】
【表15】
さらなる反応(FR21)において、その温度を、350℃まで上昇させ、そしてその流量を、1.0mL/時間に設定し、そしてこの反応を、40.9時間実行した。これらの場合において、TANは、4.71から1.74まで減少し、そして粘度は、6,300cPから282cPまで(40℃において)減少した。得られた油のAPIは、17.7度であると推定される。FR20の結果を、表16に示す。
【0130】
(表16:流動反応の結果)
【0131】
【表16】
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】図1は、本発明の実施形態に従った、酸の転化のプロセスを示す。
【図2】図2は、本発明の実施形態に従った、金属酸化物媒介性の酸の転化の間に起こり得る反応の型を示す。酸化マグネシウムは、例示の目的で示される。
【図3】図3Aは、本発明の実施形態に従った、油中のカルボン酸を連続して除去するための2つの方法(吸着および触媒的処理)を示す。図3Bは、本発明の実施形態に従った、油中のカルボン酸を並行して除去するための2つの方法(吸着および触媒的処理)を示す。
【図4】図4Aは、本発明の実施形態に従った、固定層流通反応装置についての反応設備を示す。P1およびP2は、反応の上流および下流の、システムの圧力変化を示す圧力計である。TCは、温度制御ユニットを示す。図4Bは、本発明の実施形態に従った、流通反応装置の固定層触媒部分を示す。
【図5】図5Aは、本発明の実施形態に従った、KOH/イソプロパノール溶液に対するフタル酸水素カリウムの滴定曲線を示す。図5Bは、本発明の実施形態に従った、油サンプルに対するKOH/イソプロパノール溶液の滴定曲線を示す。
【図6】図6は、本発明の実施形態に従った、MgO触媒性の脱炭酸反応((a)温度効果および(b)触媒負荷効果)を示す。
【図7】図7は、本発明の実施形態に従った、協奏したMgO触媒性の脱炭酸経路を示す。
【図8】図8は、本発明の実施形態に従った、種々の金属酸化物触媒を使用した油サンプルの酸の転化を示す。
【図9】図9は、本発明の実施形態に従った、原油の熱処理を示す。
【図10】図10は、本発明の実施形態に従った、250℃以下でMgOの存在下における流動反応を示す。
【図11】図11は、本発明の実施形態に従った、300℃および350℃でのMgOの存在下における流動反応を示す。
【図12】図12は、本発明の実施形態に従った、250℃でのMnO2の存在下における流動反応を示す。
【図13】図13は、本発明の実施形態に従った、NA吸着の間の、クレー中のMgOの%との相関関係を示す。
【図14】図14は、本発明の実施形態に従った、原油およびMgOを含む反応における300℃での、時間に対するTANを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油を改良するための方法であって、多量の油と該多量の油を改良するのに十分な量の金属酸化剤とを接触させる工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記金属酸化剤が、アルカリ土類金属酸化物、酸化的遷移金属酸化物、希土類金属酸化物、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルカリ土類金属酸化物が、ベリリウム(Be)の酸化物、マグネシウム(Mg)の酸化物、カルシウム(Ca)の酸化物、ストロンチウム(Sr)の酸化物、バリウム(Ba)の酸化物、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルカリ土類金属酸化物が、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記酸化的遷移金属酸化物は、銀(Ag)の酸化物、銅(Cu)の酸化物、マンガン(Mn)の酸化物、鉛(Pb)の酸化物、ニッケル(Ni)の酸化物、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記酸化的遷移金属酸化物が、AgO、Ag2O、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記希土類金属酸化物が、セリウム(Ce)の酸化物、ランタン(La)の酸化物、イットリウム(Y)の酸化物、ジルコニウム(Zr)の酸化物、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記接触させる工程が、約200℃〜約450℃、約250℃〜約450℃、約300℃〜約450℃、約350℃〜約450℃、および約400℃〜約450℃からなる群より選択される温度範囲内で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記接触させる工程が、約300℃〜約370℃の温度範囲内で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記接触させる工程が、密封されたガラス管、オートクレーブ、流通反応装置、回分反応器、スラリー反応器、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される反応系において実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記多量の油が、地下貯留層にある、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記油が、脂肪ベースの油である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
多量の水を添加して水溶性不純物を溶解する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
多量のピリジンを添加して酸の転化を促進する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
多量のニッケル(Ni)を添加して酸の転化を促進する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
多量の銅(Cu)を添加して酸の転化を促進する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
多量のAl2O3を添加して酸の転化を促進する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記多量の油と、該多量の油の全酸度を減少させるのに十分な量の吸着材料とを接触させる工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記吸着材料が、粘土鉱物または粘土鉱物の混合物である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記粘土鉱物が、カオリナイト、イライト、イライト−スメクタイト、パリゴルスカイト、モンモリロナイト、Ca−モンモリロナイト、海泡石、ヘクトライト、Na−モンモリロナイト、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記多量の油と前記量の前記金属酸化剤とを接触させる工程、および該多量の油と前記吸着材料とを接触させる工程が、並行してか、連続してか、または同時に起こる、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記吸着材料が、酸の転化を触媒する、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
多量の油の全酸度を減少させるための方法であって、該方法が、該多量の油と、該多量の油の全酸度を減少させるのに十分な量の金属酸化剤とを接触させる工程を包含する、方法。
【請求項24】
前記油の全酸価を減少させる工程をさらに包含する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記多量の油中の多量のナフテン酸を減少させる工程をさらに包含する、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
多量の油の粘性を減少させるための方法であって、該方法が、該多量の油と、該多量の油の粘性を減少させるのに十分な量の金属酸化剤とを接触させる工程を包含する、方法。
【請求項27】
前記多量の油のAPI比重を増加させる工程をさらに包含する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
プロセスによって生成される多量の改良された油を含有する組成物であって、該プロセスが、以下:
多量の油を提供する工程;および
該多量の油と該多量の油を改良するのに十分な量の金属酸化剤とを接触させる工程、
を包含し、それによって該多量の改良された油が生成される、組成物。
【請求項29】
前記金属酸化剤が、アルカリ土類金属酸化物、酸化的遷移金属酸化物、希土類金属酸化物、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記プロセスが、前記多量の油または前記多量の改良された油と、該多量の油の全酸度または該多量の改良された油の全酸度を減少させるのに十分な量の吸着材料とを接触させる工程をさらに包含する、請求項28に記載の組成物。
【請求項1】
油を改良するための方法であって、多量の油と該多量の油を改良するのに十分な量の金属酸化剤とを接触させる工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記金属酸化剤が、アルカリ土類金属酸化物、酸化的遷移金属酸化物、希土類金属酸化物、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルカリ土類金属酸化物が、ベリリウム(Be)の酸化物、マグネシウム(Mg)の酸化物、カルシウム(Ca)の酸化物、ストロンチウム(Sr)の酸化物、バリウム(Ba)の酸化物、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルカリ土類金属酸化物が、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記酸化的遷移金属酸化物は、銀(Ag)の酸化物、銅(Cu)の酸化物、マンガン(Mn)の酸化物、鉛(Pb)の酸化物、ニッケル(Ni)の酸化物、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記酸化的遷移金属酸化物が、AgO、Ag2O、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記希土類金属酸化物が、セリウム(Ce)の酸化物、ランタン(La)の酸化物、イットリウム(Y)の酸化物、ジルコニウム(Zr)の酸化物、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記接触させる工程が、約200℃〜約450℃、約250℃〜約450℃、約300℃〜約450℃、約350℃〜約450℃、および約400℃〜約450℃からなる群より選択される温度範囲内で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記接触させる工程が、約300℃〜約370℃の温度範囲内で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記接触させる工程が、密封されたガラス管、オートクレーブ、流通反応装置、回分反応器、スラリー反応器、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される反応系において実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記多量の油が、地下貯留層にある、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記油が、脂肪ベースの油である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
多量の水を添加して水溶性不純物を溶解する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
多量のピリジンを添加して酸の転化を促進する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
多量のニッケル(Ni)を添加して酸の転化を促進する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
多量の銅(Cu)を添加して酸の転化を促進する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
多量のAl2O3を添加して酸の転化を促進する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記多量の油と、該多量の油の全酸度を減少させるのに十分な量の吸着材料とを接触させる工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記吸着材料が、粘土鉱物または粘土鉱物の混合物である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記粘土鉱物が、カオリナイト、イライト、イライト−スメクタイト、パリゴルスカイト、モンモリロナイト、Ca−モンモリロナイト、海泡石、ヘクトライト、Na−モンモリロナイト、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記多量の油と前記量の前記金属酸化剤とを接触させる工程、および該多量の油と前記吸着材料とを接触させる工程が、並行してか、連続してか、または同時に起こる、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記吸着材料が、酸の転化を触媒する、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
多量の油の全酸度を減少させるための方法であって、該方法が、該多量の油と、該多量の油の全酸度を減少させるのに十分な量の金属酸化剤とを接触させる工程を包含する、方法。
【請求項24】
前記油の全酸価を減少させる工程をさらに包含する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記多量の油中の多量のナフテン酸を減少させる工程をさらに包含する、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
多量の油の粘性を減少させるための方法であって、該方法が、該多量の油と、該多量の油の粘性を減少させるのに十分な量の金属酸化剤とを接触させる工程を包含する、方法。
【請求項27】
前記多量の油のAPI比重を増加させる工程をさらに包含する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
プロセスによって生成される多量の改良された油を含有する組成物であって、該プロセスが、以下:
多量の油を提供する工程;および
該多量の油と該多量の油を改良するのに十分な量の金属酸化剤とを接触させる工程、
を包含し、それによって該多量の改良された油が生成される、組成物。
【請求項29】
前記金属酸化剤が、アルカリ土類金属酸化物、酸化的遷移金属酸化物、希土類金属酸化物、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記プロセスが、前記多量の油または前記多量の改良された油と、該多量の油の全酸度または該多量の改良された油の全酸度を減少させるのに十分な量の吸着材料とを接触させる工程をさらに包含する、請求項28に記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2008−504409(P2008−504409A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518392(P2007−518392)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/023977
【国際公開番号】WO2006/014486
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(504315831)カリフォルニア インスティテュート オブ テクノロジー (11)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/023977
【国際公開番号】WO2006/014486
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(504315831)カリフォルニア インスティテュート オブ テクノロジー (11)
【Fターム(参考)】
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