説明

金属錯体

アノード、カソード、前記アノード及び前記カソードの間に配置される発光層を含む発光装置であって、
前記発光層は発光化合物を含み、前記発光化合物は金属錯体を及びXを含み、前記金属錯体は金属(M)及びMに直接配位結合されるリン原子並びに前記リン原子に直接結合されるアリール又はヘテロアリール基Arsを含み、ArsはXで置換されており、Xはアリール又はヘテロアリール基を含むことを特徴とする発光装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属錯体及びその製造方法に関する。本発明は、また、金属錯体の使用、金属錯体を含む発光装置及び発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この10年間、高効率の材料及び高効率の装置構造の開発によって発光装置(LED)の改良に関する多大な努力がなされてきた。
【0003】
図1は、典型的なLEDの断面図を示す。この装置はアノード2、カソード5及び前記アノードとカソードの間に位置する発光層4を有する。例えば、アノードはインジウム錫酸化物層であることができる。例えば、カソードはLiAlであり得る。装置に注入された正孔と電子は発光層で再結合して放射線崩壊する。装置のさらなる特徴は選択的な正孔輸送層である。正孔輸送層はポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)であり得る。これは、アノードから注入された正孔が発光層に到達するのを助ける。
【0004】
公知のLED構造は、カソード5と発光層4の間に位置する電子輸送層を有する。これはカソードから注入された電子が発光層に到達するのを助ける。
【0005】
LEDにおいては、対極の電極から注入された電子と正孔が結合して2つのタイプの励起を形成する。すなわち、スピン対称3重項とスピン非対称1重項である。1重項からの放射性崩壊は速く、3重項(燐光)からの崩壊はスピンの保存性から公式には禁止されている。
【0006】
この数年間、混合によって燐光性材料が発光層に組み込まれる研究がなされてきた。しばしば、燐光性材料は金属錯体であるが、これに限定されない。さらに、金属錯体はときどき蛍光性である。
【0007】
金属錯体は配位子で囲まれた金属イオンを含む。金属錯体中の配位子はいくつかの役割を有する。配位子は金属から電子を受け取り発光する「発光」配位子であり得る。あるいは、単に金属のエネルギーレベルに影響を与えるために配位子は存在し得る。例えば、配位子から発光がある場合、非放射性崩壊過程によってエネルギーが損失するのを防止するために金属に配位結合する強い配位子場の配位子を有することが有利である。一般的な強力な配位子場は当業者に知られており、CO,pph3及び負イオン炭素原子が金属に結合した配位子がある。N−ドナー配位子は、前述のものより強くはないが強力な配位子場を有する配位子である。
【0008】
強力な配位子場の配位子は金属錯体から光が放出されるメカニズムの理解によって評価され得る。このメカニズムの評価を提供する発光金属錯体の研究が下記に引用される。Chem.Rev.,1987,87,711−7434は有機錯体の発光特性に関するものである。この研究論文は有機金属錯体に共通して見られる励起状態の簡潔な要約を提供する。検討される励起状態は、金属中心軌道から配位子軌道への電子的移転を含む金属−配位子電荷移転(MLCT)状態を含む。したがって、正式な意味ではこの励起は金属の酸化と配位子の還元をもたらす。これらの移転は、金属の中心の低い電価の性質と多くの配位子におけるアクセプター軌道の低エネルギー位置のため有機金属配位子に共通して観察される。配位子軌道から金属中心軌道への電子的移転を含む配位子−金属電荷移転(LMCT)状態についても言及されている。
【0009】
電子発光に関する記事のセクションにおいては、最も感光性の高い無機材料の一種として認識される金属カルボニル錯体に関するがサブセクションが設けられている。例としては、M(CO)6-(M=V,Nb,Ta)及びM(CO)6(M=Cr,Mo,W)が挙げられる。
【0010】
M(CO)5L錯体、M=Mo又はW及びL=ピリジン、3−ブロモピリジン、ピリダジン、ピペリジン、トリメチルホスフィン又はトリクロロホスフィンのマトリックス分離の研究が報告され、これは置換金属カルボニルからの蛍光の最初の報告を提供したと言われている。
【0011】
いくつかのMo(CO)5L錯体、L=置換ピリジンについても言及されており、これは流体の状態で発光することが知られている。発光は、低−MLCT励起状態に割り当てられている。
【0012】
この研究論文における他のサブセクションはジニトロゲン錯体、すなわち、メタロセン、キンゾクイソシアニド、アルケン及びオルトメタレート錯体に関するものである。
【0013】
オルトメタレート錯体の多くの例が室温の溶液中において発光を示したと言われている。例えば、[Ru(bpy)2(NPP)]+の発光スペクトルは、MLCT発光に関連する構造を示すと言われている。いくつかのオルト−メタレートPt(II)錯体が言及され、ここで、発光はMLCT励起状態に割り当てられていると言われている。
【0014】
研究論文は、低電子価金属中心及び有機金属錯体における空低エネルギー配位子アクセプター軌道のため低−MLCT励起状態がしばしば観察されることを要約している。励起状態レベルのエネルギー順序付けと観察される光物理的及び光化学的性質の間に関連性があると報告されている。さらに、室温発光の例の多くの数がMLCT励起状態に帰すると言われている。
【0015】
Analytical Chemistry,Vol.63,No.17,September 1,1991,829A〜837Aは、高発光遷移金属錯体、特にプラチナ金属Ru(,Os,Re,Rh及びIr)を有するものの設計及びその応用に関係する。
【0016】
この論文における表Iには、発光効率によって分類される代表的な金属錯体が掲げられている。この系は、多くの設計規則及び基本原則が他の発光金属錯体に適用できると言われているが、2,2’−ビピリジン(bpy)又は1,10−フェナントロリン(phen)のような少なくとも1つのa−ジイミン配位子を含むものに限定されている。
【0017】
この論文においては、遷移金属錯体は部分占有d軌道によって特徴付けられること及びこれら軌道の順序及び占有がある程度発光特性を決めることが説明されている。
【0018】
代表的な8面を有するMX66錯体においては、Mは金属であり、Xは1つの位置に配位結合する配位子であり、その配位子の8面結晶場は5つの縮重d軌道を3つの縮重tレベルと2つの縮重eレベルに分裂させると説明されている。分裂の等級は、配位子の発光特性を決める特に重要なファクターである結晶場分裂によって与えられ、その大きさは配位子及び中心の金属イオンによって決められる。錯体の発光特性は、配位子、幾何学的構造及び金属イオンを変更することによって制御される。
【0019】
この論文において述べられている3つのタイプの励起状態がある。すなわち、d−d状態、配位子に基づくp−p*状態及び電荷転移状態である。
【0020】
電荷転移(CT)状態は有機配位子及び金属を含む。上記のように、金属−配位子電荷転移(MLCT)は金属軌道から配位子軌道への電子の移転を含み、配位子−金属電荷転移(LMCT)は配位子軌道から金属軌道への電子の移転を含む。
【0021】
この論文によれば、発光転移金属錯体の最も重要な設計ルールは、発光は常に最低の励起状態から生じることである。したがって、錯体の発光特性の制御は相対的な状態エネルギー及び性質並びに最低励起状態のエネルギーを制御することによって決まる。この点において、金属−中心d−d状態は、その熱的励起を防止するための放射レベルを十分上回らなければならず、これによって光化学不安定性及び急速な励起状態崩壊を招く。したがって、より重要な基準の1つは、放射レベルとの競争から最低d−dレベルを除くことにある。このように望まれる設計目標は放射MLCT又はp−p*状態からd−d状態を可能な限り熱的に遮断することである。d−d状態のエネルギーの制御は、結晶場分裂に影響を与えるように配位子又は中央金属イオンを変化させることによって達成される。より強い結晶場強度配位子又は金属はd−d状態エネルギーを上昇させ、結晶場強度はCl<py<<bpy、phen<CN<CO(pyはピリジンを表す)の順で増加する。
【0022】
金属においては、結晶場分裂は周期律表における段が下がると増加する。CT状態エネルギーは、配位子と金属イオンの酸化/還元の容易さによって影響を受ける。MLCT転移においては、より還元しやすい配位子及びより酸化しやすい金属がMLCT状態を低くする。
【0023】
p−p*状態エネルギーは配位子自体によって大きく影響される。しかしながら、p−p*転移のエネルギー及び強度は芳香環のヘテロ原子又はp共役の延長の置換基を変えることによって変更され得る。
【0024】
Photochemistry And Luminescence Of Cyclometallated Comlexes, Advances in Photochemistry, Volume 17, 1992, p. 1-68は、この分野においても最も注目されたのは、ポリピリジン型系の錯体(代表例:Ru(bpy)2+、bpyは2,2’ビピリジン)であったと記載している。
【0025】
シクロメタレート錯体の光化学及び光物理的特性における関心はこの延長であると言われている。
【0026】
この刊行物における表2は、シクロメタレートルテニウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム及びプラチナ錯体及びこれらの配位子の吸収及び発光特性を示す。
【0027】
PPh3強力場リガンドを含む金属錯体は、例えば、下記のレニウム錯体を開示する特開2002−173674号公報に開示される。
【0028】
【化1】

【0029】
他の中で、下記に示されるpph3を有するタングステン、オスミウム、ニッケル及びプラチナ錯体が知られる。
【0030】
【化2】

【0031】
例えば、Journal of the Chemical Society, Dalton Transactions: Inorganic Chemistry (1972-1999) (1986), (3), 511-15(タングステン)及びZeitschrift fur Anorganische und Allegemine Chemie (1975),418(1), 45-53(ニッケル)参照。
【0032】
また、次のオスミウム錯体がAdv. Mat. 2002,14, 433により知られている。
【0033】
【化3】

【0034】
次の錯体が欧州1353388号明細書に開示されている。
【0035】
【化4】

【0036】
次の錯体が特開2002−203678号に開示されている。
【0037】
【化5】

【0038】
これら錯体におけるPPh3配位子は発光配位子ではない。
【0039】
ジ−トピック配位子によって結合された2つの異なるタイプの反応金属中心から構成される他の錯体は、J. Chem. Soc. Dalton Trans. 2002, 3423-2436に開示されている。この論文においては、トリフェニルホスフィンは有機化学でももっとも多く使用される配位子の1つであり、均質遷移金属触媒で発見されたもっとも一般的な配位子の1つであると述べられている。このように、この論文は特に発行装置の分野に関するものではなく、触媒としての金属錯体の使用に関するものである、多くのPPh3錯体が述べられている。
【特許文献1】欧州1353388号明細書
【特許文献2】特開2002−203678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0040】
PPh3配位子を有するこれらを含む金属錯体に関連する1つの問題は、凝集に関係し、これは3重項クエンチを導き、励起転移の効率を減少させる。これは、発光装置を製造する際の問題を生じさせ、溶液プロセスにより装置の層を積層できるという利点を有する。他の問題は、独立したホスト材料が使用される場合の金属錯体の相分離に関連する。
【0041】
上記の観点から、公知の金属錯体を改良する必要性が存在する。それらの多くは、発光装置に使用されるPPh3配位子を含む。
【課題を解決するための手段】
【0042】
このように、本発明の第1の側面は、アノード、カソード、前記アノード及び前記カソードの間に配置される発光層を含む発光装置であって、前記発光層は発光化合物を含み、前記発光化合物は金属錯体を及びXを含み、前記金属錯体は金属(M)及びMに直接配位結合されるリン原子並びに前記リン原子に直接結合されるアリール又はヘテロアリール基Arsを含み、ArsはXで置換されており、Xはアリール又はヘテロアリール基を含むことを特徴とする発光装置を提供する。
【0043】
本発明の第2の側面は、発光装置を製造する方法を提供し、発光層がアノードとカソードの間に配置されるように、アノード、カソード及び発光層を形成する工程を含む。
【0044】
本発明の第3の側面は、発光装置における発光化合物を製造するための反応化合物を提供し、前記反応化合物は金属錯体を含み、前記金属錯体は金属(M)及びP(Ars)(R)(R’)を含み、PはMに直接配位結合されており、Arsはアリール又はヘテロアリール基であり、R及びR’は独立して、H、ハロゲン基又は置換若しくは未置換アルキル、アリール若しくはヘテロアリール基であり、Arsは1又は2以上の反応基で置換され、前記又は各反応基はトリフレート基、ハロゲン基、ボロン酸基、ボロンエステル基及びボラン基から構成される群から選ばれる。
【0045】
本発明の第4の側面は、本発明の第3の側面に関連して定義される反応化合物を使用する発光装置における発光化合物を製造するための方法を提供する。
【0046】
本発明の第5の側面は、発光装置における発光化合物を提供し、前記化合物は金属錯体及びXを含み、前記金属錯体は金属(M)及びMに直接配位結合されているリン原子及びリン原子に直接結合されるアリール又はヘテロアリール基Arsを含み、ここで、ArsはXで置換され、Xはアリール又はヘテロアリール基を含みArsはアリール又はヘテロアリール基に共役的に結合されていることを特徴とする。
【0047】
本発明の第6の側面は、発光化合物の使用を提供し、前記化合物は金属錯体及びXを含み、前記金属錯体は金属(M)及びMに直接配位結合されるリン原子及び前記リン原子に直接結合されるアリール又はヘテロアリール基Arsを含み、ここで、ArsはXで置換され、Xはアリール又はヘテロアリール基を含む点に特徴を有する。
【0048】
本発明の第5の側面の装置の発光層に含まれる化合物についてさらに詳細に説明する。
【0049】
選択的に、Xはアリール又はヘテロアリール基を含み、Arsはアリール又はヘテロアリール基に共役的に結合される。
【0050】
本発明によれば、官能基Xは非発光配位子上に導入される。これは、Xを発光配位子上に導入する場合に比べて、発光色又は発光出力及び放射に関連する他の特性に影響を与えないので有利である。
【0051】
Arsはさらに置換され得る。
【0052】
リン原子はMに直接的に配位結合されるので、金属錯体は燐含有配位子を含むと理解され得る。リン原子は酸化状態+3又は+5であり得る。どちらの場合も通常リン原子はリン原子は、Arsに加えて2つの基(R及びR’)に結合される。好ましくは、前記2つの基(R及びR’)は、それぞれ独立してH、ハロゲン基(好ましくはF)又は置換若しくは未置換アルキル(好ましくはCH3)、アリール若しくはヘテロアリール基を含む。
【0053】
1つの態様において、好ましくは、R及びR’の少なくとも1つは置換若しくは未置換アリール又はヘテロアリール基である。より好ましくは、R及びR’はそれぞれ独立して置換又は未置換アリール又はヘテロアリール基である。さらに好ましくは、Rは置換又は未置換フェニル基であり、R’は独立して置換又は未置換フェニル基である。
【0054】
他の態様において、R及びR’の少なくとも1つはH、ハロゲン基(好ましくはF)又はメチル基である。混雑を回避するために、Xが大きな基であるときはR及びR’はこれら小さい基が好ましい。
【0055】
P(V)の場合、典型的には、リン原子が酸素(P=O)に結合される。
【0056】
本発明の化合物の場合、Xは金属錯体を効果的に機能的にする。このように、ホスフィン配位子又は他のP(Ars)(R)(R’)含有配位子を含む公知文献に開示される金属錯体は、ホスフィン配位子(又は他のP(Ars)(R)(R’)含有配位子)のフェニル基の1つ上へのXの導入により本発明の化合物を得るために機能的にされる。このような錯体は、レニウム、タングステン、プラチナ、パラジウム、銅、クロム、モリブデン、ロジウム、イリジウム、金、ルテニウム及びオスミウム錯体を含む。前記錯体はまた、Mがガリウム、アルミニウム、ベリリウム、亜鉛、水銀又はカドミウムを含む。これらは、一般式I〜Xに関連してより詳細に説明される。この一般式において少なくとも1つのLは上記で定義されるようにP(Ars)(R)(R’)を含む。
【0057】
発光層に含まれる本発明の化合物は低分子、オリゴマー、ポリマー又はデンドリマーであることができる。
【0058】
XはArs上の官能基とみなされ得る。この点において、Xの機能は、例えば、全体として化合物の溶解性を改良し、電子輸送を促進し、及び/又は装置における正孔輸送を促進する。これら機能の適切な基は当業者に公知である。例えば、好ましい溶解性基はアルキル及びアルコキシ基を含む。さらに、電子及び/又は正孔輸送のための好ましい基は2,7−結合9,9分散フルオレン、p−結合ジアルキルフェニレン、p−結合分散フェニレン、フェニレンビニレン、2,5−結合ベンゾチアゾール、2,5−結合分散ベンゾチアゾール、2,5−結合分散又は未分散チオフェン、置換又は未置換トリアリールアミン及び未置換又は置換カルバゾールから構成される群から選択される。未置換及び置換カルバゾールが特に好ましい。
【0059】
本発明の第5の側面の第1の態様において、Xはポリマー又はオリゴマーを含む。下記に説明するように、ポリマーは部分的又は完全に共役されている。
【0060】
第1の態様において、Arsはポリマー又はオリゴマーの主鎖に付着するものであり得る。あるいは、Arsはポリマー又はオリゴマーの主鎖の一部であり得る。この意味において、金属錯体はポリマー又はオリゴマーにおける繰返し単位、側鎖置換基又は末端基であり得る。
【0061】
Arsがポリマー又はオリゴマーの主鎖の一部であるとき、Arsは2つの場所において主鎖に加わるため脱機能化されている。
【0062】
【化6】

Arsが側鎖置換基を形成するためにポリマー又はオリゴマーの主鎖に付着するものである場合、又は末端基である場合、Arsは単官能基であると考えられる。
【0063】
凝集及び相分離のような相変態に関連する問題は、本発明の第1の態様において回避される。化合物の制御された構造とは金属錯体の位置及び移動が空間的に制御されることを意味する。
【0064】
この空間的な制御は、ポリマー又はオリゴマーと金属錯体間の相互作用の制御を可能にする。これは、ポリマー又はオリゴマーと金属錯体の相互作用的効果により、結局、金属錯体がポリマー又はオリゴマーに共役的に結合するときの励起状態における材料のエネルギーレベルをある程度操作可能にする。
【0065】
金属錯体がポリマー又はオリゴマーに共役的に結合するときWO03/091355(その内容は引用文献として本明細書に組み込まれる)に記載されるようにエネルギーレベルの混合を導く。エネルギーレベルの混合はポリマー又はオリゴマーからリガンドへのエネルギー移転を助ける。ポリマー又はオリゴマーから有機金属基への電荷輸送は、有機金属化合物及びポリマーの公知の混合物に比較して高められている。
【0066】
一般に、材料中の共役の拡張の増加はその材料の3重項エネルギーレベルを低下させると言われている。このように、本化合物の共役の拡張の制御は3重項エネルギーレベルを少なくとも部分的に制御する有益な方法である。この点において、1つの態様において、ポリマー又はオリゴマーの主鎖は部分的に共役され、より好ましくは部分的に又は完全に共役される。
【0067】
ポリマー又はオリゴマーの共役の拡張の制御のために、ポリマー又はオリゴマーはアリール又はヘテロアリール繰返し単位、例えば、カルバゾール、トリアリールアミン、フェニレンビニレン基のようなフェニル基を含むことが好ましい。したがって、1つの実施態様において、Xは、好ましくはカルバゾール、トリアリールアミン、フルオレン又はフェニレン系ポリマーを含む。カルバゾール及びトリアリールアミン系ポリマーが最も好ましい。
【0068】
他の有益なアリール又はヘテロアリール繰返し単位は、置換又は未置換ベンゾチアジアゾール及び置換又は未置換チオフェンである。
【0069】
化合物が発光できるようにそのエネルギーレベルが金属錯体に贈呈される限りいかなるポリマー又はオリゴマーも使用され得る。
【0070】
ポリマー又はオリゴマーは発光装置において官能基であり得る。例えば、ポリマー又はオリゴマーは電子輸送又は正孔輸送であり得る。この目的のために、本発明の発明者らはポリマー又はオリゴマーは導電体又は半導体、より好ましくは半導体であることを発見した。
【0071】
材料の溶解性を改良するために溶解性基を含むポリマー又はオリゴマーが好ましい。好ましい溶解性基はアルキル及びアルコキシ基を含む。この点において、材料は溶液プロセス性であることが好ましい。
【0072】
本発明の第1の側面の第1の態様において、本材料は2以上の金属錯体を含む。この場合、材料における金属錯体の空間的分離はより重要である。空間的分離は下記により詳細に示される方法、又はポリマー又はオリゴマーの主鎖に付着する金属錯体を選択することによって制御される。
【0073】
材料の特性をさらに制御する観点から、材料の共役を遮断するためにスペーサー基が使用され得る。したがって、Xは選択的に置換されたC1−C10アルキレン基のような非共役スペーサー基を含む。アルキレン基は、ポリマー又はオリゴマー及び金属錯体間の距離を制御するのに役立ち、これによって電荷のトラップを改良する。スペーサー基の長さはポリマー又はオリゴマー主鎖から金属錯体を分離するのにある程度使用される。このように、スペーサー基は適切にはCH2基の鎖であり得る。
【0074】
本発明の第5の側面の第2の態様においては、Mはデンドリマーの中心に含まれる。このように、本発明の第2の態様は核の一部として金属イオンを有するデンドリマーに関する。
【0075】
デンドリマーの特性は溶液プロセスにとって理想的であり、金属錯体を溶液プロセス系に組み込むことを可能にする。WO02/066552(引用文献として本明細書に組み込まれる)は適切なデンドリマー構造についてある情報を提供する。
【0076】
デンドリマーは典型的には一般式(XI)を有する。
【0077】
【化7】

【0078】
ここで、核は金属イオン又は金属イオンを含む基を表し、nは1又は2以上の整数を表し、それぞれ同じか異なる各デンドロンは、アリール及び/又はヘテロアリール構造単位を含む少なくとも部分的に共役された構造を表す。
【0079】
好ましいアリール及びヘテロアリール構造単位は次のものである。置換及び未置換カルバゾール、置換及び未置換トリアリールアミン、置換及び未置換フルオレン、置換及び未置換フェニレン、置換及び未置換ベンゾチアジアゾール及び置換又は未置換チオフェンである。
【0080】
次に、発光層の金属錯体に移ると、好ましい錯体は中性である。この目的のため、Mは、非配位アニオンが存在しないように錯体を中性化するために好ましくは十分な電荷配位子によって囲まれる。
【0081】
第1又は第2の態様において、適切なArs基はアリール又は5若しくは6員環を含むヘテロアリール環を含む。適切なヘテロアリール基はヘテロアリール環において2以上のヘテロ原子を含むことができる。適切なArs基の例は、フェニル及びピリジルである。
【0082】
上述したように、通常、リン原子は、Arsに加えて、2つの他の基(R及びR’)に結合される。好ましくは、この2つは、さらにそれぞれ独立して、H、ハロゲン基、又は置換若しくは未置換アルキル、アリール又はヘテロアリール基を含む。
【0083】
他の態様において、好ましくは、R及びR’の少なくとも1つは置換又は未置換アリール又はヘテロアリール基である。さらに好ましくは、Rは置換又は未置換フェニル基であり、R’は独立して置換又は未置換フェニル基である。
【0084】
他の態様において、R及びR’の少なくとも1つは、H,ハロゲン基(好ましくはF)又はメチル基である。混雑を避けるためにXが大きいときは、これらR及びR’は小さいことが好ましい。
【0085】
錯体における金属Mについては、適切なMは次のものを含む。
【0086】
セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、ジプロシウム、タリウム、エルビウム及びネオジウム、及び
d−ブロック金属、特に、2及び3列、例えば、元素39〜48及び72〜80、特に、レニウム、タングステン、プラチナ、パラジウム、銅、クロム、モリブデン、ロジウム、金、ルテニウム及びオスミウム。
【0087】
金属Mについては、好ましい金属は、レニウム、イリジウム、タングステン、オスミウム、プラチナ及び金、最も好ましくは、レニウム及びイリジウムを含む。
【0088】
典型的には、金属錯体は上述した配位子を含むりんに加えて、他の配位子(配位結合)を含む。
【0089】
もちろん、金属錯体は上記の配位子を含む2以上のりんを含む金属錯体であり得る。各Lは同じか異なり得る。
【0090】
金属錯体における他の配位子(上述したりん含有配位子以外の他のもの)の性質は、Xを有する金属錯体の互換性さらに最適化するために選択される、この目的のため、配位子は、1)電子輸送配位子、2)正孔輸送配位子及び3)(半)導体配位子のカテゴリーから選択され得る。配位子の選択においては、立体的障害に注意しなければならない、典型的には、好ましい配位子は、共役配位子、2座配位子及び金属を有する配位子のための少なくとも1つの窒素原子を含む配位子を含む。
【0091】
上述したように、PPh3及び他のP(Ars)(R)(R’)含有配位子は、通常、発光/電子受容配位子ではない。したがって、LEDにおける発光に適した化合物のためには、発光配位子は金属錯体中のMに配位結合されるべきである。この目的のため、好ましくは、Mは次の2座配位子、又は
【0092】
【化8】

【0093】
次の2つの単座配位子に配位結合されている。
【0094】
【化9】

【0095】
金属錯体中の配位子(りん含有配位子以外の)は、単座(L)、2座(L2)又は3座(L3)であり得る。2座及び3座配位子においては、Mに配位結合されるとき7、6、5又は4員環を形成するために配位原子は配位子中で結合され得る。有益な3座配位子の例は、次のものである。
【0096】
【化10】

ここで、X1、X2及びX3は、N,C,O及びSから独立して選ばれる、好ましくは、X1=X2=X3=N。
【0097】
Mに配位結合される好ましい基はフェニル基である。
【0098】
【化11】

【0099】
このように、特に好ましい2座配位子はキノリネートである。
【0100】
f−ブロック金属の他の適切な配位基は、カルボキシル酸、1,3−ジケトネート、ヒドロキシカルボン酸、アシルフェノール及びイミノアシル基を含む塩基のような酸素又は窒素ドナー系を含む。公知のように、蛍光性金属錯体は、金属イオンの第1の励起状態より高い3重項励起エネルギーを有する感光性基を要求する。発光は金属f−f転移から行われ、したがって発光色は金属の選択によって決められる、鋭い発光は、通常狭く、ディスプレイの応用に有益な純カラー発光をもたらす。
【0101】
d−ブロック金属は、好ましくは、ポルフィリン又は一般式(XII)の2座配位子のような炭素又は窒素ドナーを有する錯体を形成する。
【0102】
【化12】

ここで、Ar2及びAr3は同じか異なり、選択的に置換されるアリール又はヘテロアリールから独立して選ばれる。Y1及びYは同じか異なり、炭素又は窒素から独立して選ばれる。Ar2及びAr3は共に縮合され得る。Yが炭素でありY1が窒素であり、Y及びY1が共に窒素である配位子が特に好ましい。
【0103】
2座配位子の例は下記に示される。
【0104】
【化13】

1又は2のAr2及びAr3は、1又は2以上の置換基を有する。dブロック元素を有する使用に適切な他の配位子は、ジケトン、特に、アセチルアセトン(acac)、キノリネート、トリアリルホスフィン及びピリジンを含み、それぞれは置換され得る。
【0105】
Xと共に機能的される最も有益な化合物は、一般式Iを有する。
【0106】
【化14】

M=イリジウム、レニウム、タングステン、プラチナ又はオスミウム。
A,Bは結合され得る発光配位子である。
【0107】
少なくとも1つのLはP(Ars)(R)(R’)、好ましくはホスフィンを含む。LはP(Ars)(R)(R’)うぃ含まず、好ましくは強力場配位子であり、最も好ましくはカルボニルである。
【0108】
L基は結合され得る。
【0109】
mはMに電価を満たすに必要な数である。レニウム(I)、イリジウム(III)、タングステン(0)、オスミウム(II)及びプラチナ(IV)においてmは好ましくは4である。プラチナ(II)においては、mは好ましくは2である。
【0110】
nは0又は整数である。対イオン(Z)が存在する。
【0111】
特定の例は次のとおりである。
【0112】
【化15】

Xと共に機能化される他の錯体は、一般式II又はIIIで示されるレニウム錯体を含む。
【0113】
【化16】

少なくとも1つのLはP(Ars)(R)(R’)、好ましくはホスフィンを含む。Aは中性であり、発光配位子を含む。残りの配位子Lは中性配位子である。レニウムの場合、残りの配位子Lは好ましくは強力場配位子であり、例えば、C=O又はPR3であり、各Rは独立して選択的に置換されるアルキル、アリール又はヘテロアリール基を表す。
【0114】
2又は3以上のL基は結合されることができ、例えば、2つのPR3基は次のものを形成する。
【0115】
【化17】

【0116】
上式において、少なくとも1つのLはP(Ars)(R)(R’)、好ましくはホスフィンを含む。A及びBは中性の、選択的に結合される発光配位子、例えば、ビピリジル又はフェナントロリンを表す。Lは一般式I又はIIに関連して上記のように定義される。
【0117】
他のXと共に機能化され得る錯体は、一般式IV、V,VI、VII又はVIIIを有するイリジウム錯体を含む、これらの一般式において、少なくとも1つの配位子は上記に定義されるP(Ars)(R)(R’)、好ましくはホスフィンを含む。
【0118】
【化18】

【0119】
【化19】

【0120】
イリジウムについては、一般式IV及びVにおける残りのLに対する適切な基は、単座、2座又は3座配位子、例えば、ビピリジル、フェナントロリン、トリアリールアミンを含む。また、好ましくは少なくとも1つの残りのLは強力場配位子を含む。
【0121】
【化20】

【0122】
少なくとも1つのLは配位子(L’)(例えば、塩化物)である。好ましい態様において、1つの帯電配位子L’があり、これは一般式VIIIに示されるように中性配位子に結合されている(例えば、L−L’=フェニルピリジン)。
【0123】
【化21】

【0124】
【化22】

【0125】
Xと共に機能化され得る好ましいオスミウム錯体は、一般式IX、及び一般式IV〜VIIIにおける上記イリジウム錯体に類似する他の錯体を含む。
【0126】
【化23】

【0127】
上述のように、金属錯体は燐光性又は蛍光性である。
【0128】
Xの導入による本発明の錯体を得るために機能化され得る公知の蛍光性錯体の例は、前述したIrのAl類縁物質及びOs錯体、特に次の化合物を含む。
【0129】
【化24】

上式において、L及びL’は上記で定義したとおりである。
【0130】
好ましくは、AlについてはL’−Lは、キノリン、特に、8−キノリン、例えば下記の化合物である。
【0131】
【化25】

【0132】
ベリリウム、ガリウム水銀、カドミウム及び亜鉛は蛍光性錯体を形成する他の金属である。したがって、本発明の他の錯体はこれら金属を含むことができる。
【0133】
一般式IV〜Xにおいて、少なくとも1つの配位子は金属から電荷を受領することができ、MLCTによって発光することができる。
【0134】
発光は蛍光又は燐光であることができる。好ましくは、発光は燐光である。
【0135】
化合物は発光層において他の材料と混合されることができる。化合物は発光層においてホスト材料と共に存在することが望ましい。
【0136】
1つの好ましい態様において、化合物は発光層においてホスト材料と共に混合される。
【0137】
ホスト材料はまた電荷輸送特性を有することができる。正孔輸送ホスト材料は、次の一般式を有する選択的に置換された正孔輸送アリールアミンのようなものが特に好ましい。
【0138】
【化26】

ここで、Ar5はフェニル又は次の化合物のような選択的に置換される芳香族基であり、及び
【0139】
【化27】

【0140】
Ar6,Ar7、Ar8及びAr9は選択的に置換される芳香族又は複素環式芳香族化合物である(Shi et al (Kodak) US5,554,450. Van Slyke et al, US5,061,569. So et al (Motorola) US 5,853905 (19997))。Arは好ましくはビフェニルである。少なくとも2つのAr6,Ar7、Ar8及びAr9は、チオール基、又は反応性未飽和炭素−炭素結合含有基のどちらかに結合され得る。Ar6及びAr7及び/又はAr8及びAr9は、例えばNは次のカルバゾール単位の一部を形成するようにN含有環を形成するために選択的に結合される。
【0141】
【化28】

【0142】
ホスト材料は、代わりに電子輸送特性を有することができる。電子輸送ホスト材料の例は、アゾール、ジアゾール、トリアゾール、オキサジアゾール、ベンゾキサゾール、バンザゾール及びフェナントロリンであり、それぞれ選択的に置換されることができる。特に好ましい置換基はアリール基であり、特に、フェニルオキサジオザール、特にアリール置換オアキサジアゾールである。これらホスト材料は低分子の形で存在するか、又はポリマーの繰返し単位、特に、ポリマー主鎖に位置する繰返し単位又はポリマー主鎖に付着した置換基として供給される。電子輸送ホスト材料の特定の例は、3−フェニル1−4−(1−ナフチル)−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール及び2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−フェナントロリンを含む。
【0143】
ホスト材料は双極性、すなわち、正孔及び電子輸送できる。適切な双極性材料は好ましくは少なくとも2つのカルバゾール単位(Shirota, J. Mater. Chem., 2000. 10, 1-25)を含む。1つの好ましい化合物においては、上記のAr6及びAr7並びにAr8及びAr9はカルバゾール環を形成するために結合し、Ar5はフェニルである。あるいは、双極性ホスト材料は正孔輸送セグメント及び電子輸送セグメントを含む材料であり得る。そのような材料の例としては、正孔輸送がポリマー主鎖内に位置するトリアリールアミン繰返し単位として供給され、電子輸送がポリマー主鎖内の共役ポリフルオレン鎖として供給される国際公開00/55927号パンフレットに開示される正孔及び電子輸送セグメントを含むポリマーである。あるいは、正孔輸送及び電子輸送特性は共役又は非共役ポリマー主鎖からの分岐繰返し単位として供給される。
【0144】
「低分子」ホスト材料の特定の例は、CBPとして知られる4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル、Ikai et al. (Appl. Phys. Lett., 79 no. 2, 2001, 156)に開示されるTCTAとして知られる(4,4’,4”−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン)及びMTDATAとして知られるトリス−4−(N−3−メチルフェニル−N−フェニル)フェニールアミンのようなトリールアミンを含む。
【0145】
ホモポリマー及びコポリマーはホストとして使用され、正孔輸送層に関連して上記のポリフルオレン、ポリスピロフルオレン、ポリインデノフルオレン又はポリフェニレンのような選択的に置換されるポリアリーレンを含む。
【0146】
公知文献に開示されるホストポリマーの特定の例は、例えば、Appl. Phys. Lett. 200, 77(15), 2280に開示されるポリ(ビニルカルバゾール)、Synth. Met. 2001, 116, 379, Phys. Rev. B 2001, 63, 235206及びAppl. Phys. Lett. 2003, 82(7), 1006に開示されるポリフルオレン、Adv. Mater. 1999, 11(4), 285に開示されるポリ[4−(N−4−ビニルベンジルオキシエチル,N−メチルアミノ)−N−(2,5−ジ−タート−ブチルフェニルナプタルイミド)]、J. Chem. Phys. (2003), 118 (6), 2853-2864に開示されるファク−トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)及び2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリンプラチナ(II)のホストとしてポリ[9,9’−ジ−n−ヘキシル−2,7−フルオレン−アルト−1,4−(2,5−ジ−n−へキシルオキシ)フェニレーン]、Mat. Res. Symp. Spring Meeting 2003 Book of Abstracts, Heeger, p. 214に開示されるジオクチルフルオレン及びジシアノ−ベンゼンのランダムコポリマーホスト、及びMat. Res. Soc. Symp. Proc. 708, 2002, 131に開示されるフルオレン繰返し単位とフェニレン繰返し単位のABコポリマーを含む。
【0147】
ホスト材料中の化合物の濃度は薄膜が高い電子発光効率を有するように決められる。発光化合物の濃度が高すぎると、発光のクエンチが生じる。濃度範囲は0.01〜49wt%であり、より好ましくは0.5〜10wt%、最も好ましくは1−3wt%とするのが通常適当である。
【0148】
第1の側面においては、図1を参照すると、本発明の有機発光ダイオードは、基板1、アノード2(好ましくは、インジウム錫酸化物)、有機正孔注入材料の層3、電子発光層4及びカソード5を含む。
【0149】
図1に示されるように、本発明のLEDにおいて、通常、アノードは基板上に供給される。光学装置は湿気と酸素によって劣化しやすい。したがって、基板は、好ましくは、湿気と酸素の装置への侵入の防止について良好な遮蔽特性を有する。基板は、一般的にガラスであるが、特に、装置の柔軟性が必要な場合は他の基板が使用され得る。例えば、交替プラスチックの基板を開示する米国6268695号明細書にあるようなプラスチック、又は欧州0949850に開示されるような薄いガラスとプラスチックのラミネートを含むことができる。
【0150】
必須ではないが、アノードから発光層への正孔の注入を促進するのでアノードと発光層の間の正孔注入層が存在することも望ましい。有機正孔注入材料の例は、欧州0901176号明細書及び欧州0947123号明細書に開示されるポリ(スチレンサルファネート)のような適当な対イオンを有するポリエチレンジオキシチオフェン(PEDT)、又は米国5723873号明細書及び米国5798170号明細書に開示されるようなポリアニリンを含む。
【0151】
半導体材料を含む電荷輸送層(図示しない)を供給することもできる、正孔輸送層はアノードと発光層の間に供給され、電子輸送層はカソードと発光層の間に供給され得る。
【0152】
カソードは、電子が効率的に装置に注入されるように選択され、アルミニウム層のような単一の導電層を含む。あるいは、それは複数の金属、例えば、国際公開98/10621号パンフレットに開示されるようなカルシウムとアルミニウムの2層を有することができる。例えば、欧州00/48258号パンフレットに開示されるように、電子注入を促進するためにフッ化リチウムのような誘電材料の薄膜層が発光層とカソードの間に供給される。
【0153】
装置は、湿気と酸素の侵入を防止するために好ましくは封止材で封止される。適切な封止材は、ガラス、ポリマーの交互堆積のような適切な遮断特性を有する薄膜及び例えば国際公開01/81649号明細書に開示されるような誘電層、又は国際公開01/19142号明細書に開示されるような選択的に乾燥剤を有する密封容器を含む。
【0154】
実用的な装置において、少なくとも1つの電極は光が放射されるように半透明である。アノードが透明である場合、典型的にはインジウム錫酸化物を含む。透明カソードの例は例えば、GB2348316に開示されている。
【0155】
本発明の第2の側面は第1の側面に関連して定義される発光装置の製造方法を提供する。この方法は、発光層がアノードとカソードの間に位置するようにアノード、カソード及び発光層を形成する工程を含む。好ましくは、発光層は溶液プロセスによって形成される。適切な技術は当業者に知られている。
【0156】
発光層に含まれる発光化合物の製造に関して、本発明の第3の側面で定義される中間反応化合物によって製造され得る。
【0157】
したがって、本発明の第3の側面は、発光装置における発光化合物を製造するための反応化合物を提供する。言い換えると、本発明の第3の側面は、本発明の第5の側面との関連で上記に定義される発光化合物を製造するための反応化合物を提供する。反応化合物は金属錯体を含む。反応化合物は金属及びP(Ars)(R)(R’)を含み、PはMに直接配位結合されており、Arsはアリール又はヘテロアリール基であり、R及びR’は本発明の第5の側面に関連して上記に定義され、Arsは1又は2以上の(好ましくは1又は2)の反応基で置換され、各反応基(Y,Y’)は、トリフレート基、ハロゲン基、ボロン酸基、ボロンエステル基及びボラン基から選択される。好ましくは、各反応基は臭素である。
【0158】
したがって、第3の側面の反応化合物は一般式XII又はXIIIで示される構造を有し、Ars、R及びR’は上記で定義され、R2は金属(M)及び配位子を表し、PはMに直接配位結合される。Y及びY’は上記で定義される反応基である。
【0159】
【化29】

【0160】
第3の側面の中間反応化合物は、例えば、下記の合成方法である。
【0161】
【化30】

【0162】
ジフェニルホスフィン塩化物と1,4−ジブロモベンゼンとの反応による反応性ホスフィン(4−ブロモフェニル)ジフェニルホスフィンの合成を開示するOrganic Syntheses (1969), 49, 66-9についても引用する。
【0163】
本発明の第3の側面の中間反応化合物を形成するために上記ホスフィンが金属錯体に組み入れられる。
【0164】
当業者に知られるように、金属錯体に示されたホスフィンを組み込む通常の方法は不安定結合を有する前駆体錯体の利用である、ホスフィンはP受領配位子が加えられる前後に加えられる、他の方法は、配位子、配位子の化学的若しくは光化学置換物を酸化又は還元添加を利用する。
【0165】
本発明の第3の側面の中間反応化合物を製造するための一般的な合成方法は下記に示されるとおりである。
【0166】
【化31】

【0167】
【化32】

【0168】
前述したように、次いで、本発明の第5の側面の装置の発光層に似要される発光化合物を形成するために、これら反応化合物(例えば、一般式XII又はXIIIを有する反応化合物)はデンドリマー構造及び/又はポリマーに組み込まれる。したがって、本発明の第4の側面は、本発明の第1の側面に関連して定義される発光装置の発光層の使用に適する化合物を製造する方法における本発明の第3の側面に関連して定義される反応化合物の使用を提供する。
【0169】
本発明の第4の側面に移ると、本発明の発光化合物は公知のスズキ重合によって有利に製造される。概略的には、この方法は、触媒の存在の下の反応混合中において、ボロン酸、ボロン酸エステル(好ましくは、C1−C6)、ボラン(好ましくは、C1−C6)基から選ばれる少なくとも2つの反応基を有するモノマーと、ジハロゲン若しくはジトリフレート官能モノマー又は1つの反応性ボロン酸、ボロン酸エステル(好ましくはC1−C6)及び1つの反応性トリフレート若しくはハロゲン官能基を有するモノマーを互いに重合させる工程を含む。この方法は米国特許5,777,070号明細書に記載されており、また、この誘導体は国際公開00/53656に記載されている。他の方法は、Macromolecules, 31 1099-1103 (1998)に開示されるヤマモト重合であり、全てのモノマーは反応性ハロゲン基と共に供給される。これら文献の内容は引用例として本明細書に組み込まれる。
【0170】
大まかに言って、金属錯体は末端キャップ基の一部又はモノマー残留物の一部としてこの化合物中に含まれることは上記の方法から明らかであろう。これら2つの種類の方法内においては、金属錯体は、反応混合物に最初に加えられるとき末端キャップ試薬又はモノマー中に存在することができる。あるいは、終端されたポリマー又はオリゴマーが形成された後又は形成され始めるとき(すなわち、反応中)に導入される。適当な方法は、化合物中の金属錯体の望ましい性質、位置及び割合によって選択される。
【0171】
本発明の第5の側面は、発光装置における発光化合物を提供し、前記化合物は金属錯体及びX、前記金属錯体は金属(M)及びMに直接配位結合されるリン原子を含み、並びにリン原子に直接配位されるアリール又はヘテロアリール基Arsを含み、ArsはXで置換され、Xはアリール又はヘテロアリール基を含む点に特徴を有する。本発明の第5の側面においては、第5の側面の化合物においてXはアリール又はヘテロアリール基を含み、Arは前記アリール又はヘテロアリール基に共役的に結合される限り、前記化合物は、本発明の第5の側面の発光装置における発光化合物に関連する前述したいずれかの好ましい特徴を有することができる。
【0172】
本発明の第6の側面は発光化合物の使用を提供し、前記化合物は金属錯体及びXを含み、前記金属錯体は金属(M)及びMに直接配位結合されるリン原子を含み、アリール又はヘテロアリール基Arsはリン原子に直接結合され、ArsはXで置換され、Xはアリール又はヘテロアリール基を含む点に特徴を有する。本発明の第6の側面においては、前記化合物は、本発明の第1の側面の発光装置における発光化合物と関連する前述したいずれかの好ましい特徴を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】典型的なLEDの断面図を示す。
【符号の説明】
【0174】
1 基板
2 アノード
3 正孔輸送層
4 発光層
5 カソード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード、カソード、前記アノード及び前記カソードの間に配置される発光層を含む発光装置であって、
前記発光層は発光化合物を含み、前記発光化合物は金属錯体を及びXを含み、前記金属錯体は金属(M)及びMに直接配位結合されるリン原子並びに前記リン原子に直接結合されるアリール又はヘテロアリール基Arsを含み、ArsはXで置換されており、Xはアリール又はヘテロアリール基を含むことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
Arsは前記アリール又はヘテロアリール基に共役的に結合されている請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
Xがポリマー又はオリゴマーを含む請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
Arsはポリマー又はオリゴマーの主鎖に付着する請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
Arsはポリマー又はオリゴマーの主鎖の一部である請求項3に記載の発光装置。
【請求項6】
Mはデンドリマーの核中に含まれる請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項7】
Arsはフェニル基である請求項1ないし6のいずれかに記載の発光装置。
【請求項8】
前記リン原子はさらにR及び選択的にR’に結合され、R及びR’はそれぞれ独立して置換又は未置換アリール又はヘテロアリール基である請求項1ないし7のいずれかに記載の発光装置。
【請求項9】
Rは置換又は未置換フェニル基であり、R’は独立して置換又は未置換フェニル基である請求項8に記載の発光装置。
【請求項10】
Mがレニウム又はイリジウムである請求項1ないし9のいずれかに記載の発光装置。
【請求項11】
前記発光層が前記アノードと前記カソードの間に配置されるように、前記アノード、前記カソード及び前記発光層を形成する工程を含む請求項1ないし10のいずれかに記載の発光装置を製造する方法。
【請求項12】
前記発光層が溶液プロセスによって形成される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
発光装置における発光化合物を製造するための反応化合物であって、前記反応化合物は金属錯体を含み、前記金属錯体は金属(M)及びP(Ars)(R)(R’)を含み、PはMに直接配位結合されており、Arsはアリール又はヘテロアリール基であり、R及びR’は独立して、H、ハロゲン基又は置換若しくは未置換アルキル、アリール若しくはヘテロアリール基であり、Arsは1又は2以上の反応基で置換され、前記又は各反応基はトリフレート基、ハロゲン基、ボロン酸基、ボロンエステル基及びボラン基から構成される群から選ばれる反応化合物。
【請求項14】
Arsはフェニル基である請求項13に記載の反応化合物。
【請求項15】
Rは置換又は未置換フェニル基であり、R’は独立して置換又は未置換フェニル基である請求項13又は14に記載の反応化合物。
【請求項16】
前記又は各反応基は臭素である請求項13ないし15のいずれかに記載の反応化合物。
【請求項17】
発光装置の発光化合物を製造する方法のために請求項13ないし16のいずれかで定義される反応化合物を使用する方法。
【請求項18】
前記発光層中の発光化合物であって、前記発光化合物は金属錯体を及びXを含み、前記金属錯体は金属(M)及びMに直接配位結合されるリン原子並びに前記リン原子に直接結合されるアリール又はヘテロアリール基Arsを含み、ArsはXで置換されており、Xはアリール又はヘテロアリール基を含み、Arsはアリール又はヘテロアリール基に共役的に結合されていることを特徴とする発光化合物。
【請求項19】
Xがポリマー又はオリゴマーを含む請求項18に記載の発光化合物。
【請求項20】
Arsはポリマー又はオリゴマーの主鎖に付着する請求項19に記載の発光化合物。
【請求項21】
Arsはポリマー又はオリゴマーの主鎖の一部である請求項19に記載の発光化合物。
【請求項22】
Mはデンドリマーの核中に含まれる請求項18に記載の発光化合物。
【請求項23】
Arsはフェニル基である請求項18ないし22のいずれかに記載の発光化合物。
【請求項24】
前記リン原子はさらにR及び選択的にR’に結合され、R及びR’はそれぞれ独立して置換又は未置換アリール又はヘテロアリール基である請求項18ないし23のいずれかに記載の発光化合物。
【請求項25】
Rは置換又は未置換フェニル基であり、R’は独立して置換又は未置換フェニル基である請求項24に記載の発光化合物。
【請求項26】
Mがレニウム又はイリジウムである請求項18ないし25のいずれかに記載の発光化合物。
【請求項27】
金属錯体及びXを含む発光化合物の使用方法であって、前記金属錯体は金属(M)及びMに直接配位結合されるリン原子並びに前記リン原子に直接結合されるアリール又はヘテロアリール基Arsを含み、ArsはXで置換されており、Xはアリール又はヘテロアリール基を含むことを特徴とする発光のための発光化合物の使用方法。
【請求項28】
前記化合物は請求項18ないし26のいずれかに定義される請求項27に記載の使用方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−500717(P2008−500717A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−514075(P2007−514075)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【国際出願番号】PCT/GB2005/001895
【国際公開番号】WO2005/117161
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(506061668)サメイション株式会社 (51)
【Fターム(参考)】