説明

金銀糸製造用シート及び金銀糸

【課題】
本発明は、市場要望にも応えられる価格で製造することが可能であり、従来のポリエステルフィルムを用いたものに比べ高度な難燃性を実現し、かつ、柔軟性、取り扱い性および風合いにも優れる上に、廃棄時の環境への影響のない金銀糸製造用シートおよび金銀糸を提供せんとするものである。
【解決手段】
本発明の金銀糸製造用シートは、ポリエステルフィルムの両面にポリイミド樹脂層が積層されており、かつ、その少なくとも片面に金属蒸着層が積層されていることを特徴とするものである。また、本発明の金銀糸は、かかる金銀糸製造用シートを細かく裁断してなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金銀糸製造用シート及び金銀糸に関するものである。特に、ハロゲン系難燃剤やアンチモン等を添加しなくても難燃性に優れており、かつ燃焼時にドリップが生じないため安全性に優れ、更に燃焼時に有毒であるハロゲンガスを発生しないなど、環境に配慮した難燃性の金銀糸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、衣服、衣類、カーテン、カーペット、幕等の布製品において、意匠性や審美性を豊かにするため、金糸や銀糸が用いられている。かかる金糸や銀糸(以下金銀糸と呼ぶ)の製造方法としては、金箔や銀箔を芯紙に巻き付けて作る方法、金箔や銀箔を芯紙と撚って作る方法の他に、図5(a)に示すように、金又は銀の蒸着膜を表面に形成した合成樹脂フィルムを平糸状に裁断して金銀糸を得るという金銀糸の製造方法や、図5(b)又は図5(c)に示すように、合成樹脂フィルムの上に赤色の着色樹脂層又は透明樹脂層と銀蒸着膜とを形成し、この合成樹脂フィルムを細かく裁断して平糸状の金銀糸を得るという製造方法が従来から行われていた。更に最近では、合成樹脂フィルムの表面により安価なアルミニウムを蒸着した後、更に赤色の着色樹脂層又は透明樹脂層をその表面に設けた積層フィルムをマイクロスリットすることにより金銀糸を得ている。
【0003】
一方、最近ではホテル、旅館、ホール、公会堂、映画館、劇場、老人ホーム、病院、客船などの大型公共施設において用いられるカーテン、カーペット、寝具、衣服等の色々な布地に対して、防災の観点から十分な難燃性を有することが強く求められている。従来の合成樹脂フィルムを用いた金銀糸においては、これらの用途で要求される難燃性に対して不十分であり、大幅な改善が必要であった。
【0004】
このような問題を解決するため、例えば特許文献1においては、アルミニウム箔の表面に難燃剤を含有する樹脂塗膜を設けたフィルム状物2枚、アルミニウム箔を内側にして難燃性樹脂接着剤を両面に塗布したフィルムを介して張り合わせた構成のものが提案されており、また特許文献2においては、金属薄膜を設けたベースフィルムを難燃性接着剤を介して接着積層したものが提案されている。さらには、特許文献3に見られるように、難燃性のポリフェニレンサルファイドフィルムの片面に金属蒸着膜、難燃性樹脂もしくは難燃剤を含有する樹脂を積層した金銀糸が提案されている。
【特許文献1】特許登録第2878720号公報
【特許文献2】特開平3−161538号公報
【特許文献3】特開2005−281875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1における発明においては、難燃性樹脂塗膜や難燃性樹脂接着剤を使用しているが、難燃性に乏しい樹脂中に難燃添加剤を配合することにより難燃性を得ているため、十分な難燃性を発揮することができず、このため、4〜20μmという厚めのアルミニウム箔を2枚使用して難燃性を得ている。このアルミニウム箔の厚みは通常の蒸着タイプのものに比べると、約100倍以上厚付けしており、コスト高になったり、柔軟性に欠け、取り扱いが難しく、風合いも堅く、好ましくない。
【0006】
特許文献2における発明においても、難燃性に乏しい樹脂中に難燃添加剤を配合した接着剤でベースフィルムを張り合わせるため、十分な難燃性を発揮することはできない。しかも、難燃性を有さない通常の金銀糸と同様に、燃焼時に溶融してドリップ(滴下)するという問題は解決されていない。燃焼時にドリップが発生すると、火種がドリップを通して他の繊維に移動し、燃焼を大きくするばかりか、高温の溶融したベースフィルム樹脂により人体が火傷を受けるなど、安全上問題となる。
【0007】
特許文献3における発明では、UL−94垂直燃焼規格のV−0クラスの高い難燃性を有するポリフェニレンサルファイドフィルムを基材に用いた上に、金属蒸着層を積層後、さらにその上に難燃性樹脂、もしくは難燃剤を有する樹脂を積層している。難燃性樹脂としては、フェノール系樹脂、もしくは難燃性エポキシ樹脂を提案している。また、難燃剤を含有する樹脂の難燃剤として、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、窒素系難燃剤、金属水酸化物系難燃剤、酸化アンチモン系難燃剤を提案している。
【0008】
特許文献3では、金銀糸に難燃性を求めるには、金属蒸着層以外の部分、すなわち難燃性の基材フィルムと難燃性を有する樹脂塗料を同時に用いることが理想であることが述べられている。その中で、基材フィルムとしてフッ素フィルムを用いた場合、フィルム自体が高価であるため、これを基材フィルムとした金銀糸を製造しようとしても、実際の市場の要望にかなう価格で提供することは困難であると述べている。しかしながら、特許文献3における発明にて用いられるポリフェニレンサルファイドフィルムも、汎用的に金銀糸に用いられているポリエステルフィルムに比べると非常に高価であり、工業的用途が限定されてしまうという問題がある。また、ポリフェニレンサルファイドフィルムは難燃性は高いものの、燃焼時に溶融してドリップ(滴下)するという問題もあり、この点についても本質的な解決に至っていない。
【0009】
やはり、工業的に安価に製造されているポリエステルフィルムを用い、金銀糸を製蔵することが要望される。ベースフィルムに安価なポリエステルフィルムを用いた場合、ポリエステルフィルムはUL−94垂直燃焼規格のVTM−2クラスの低い難燃性しか有しないため、金属蒸着層を積層後、特許文献3で開示されている難燃性樹脂、もしくは難燃剤を有する樹脂を積層するだけでは十分な難燃性が発現できないのは明白である。特許文献3で提案されている難燃剤として、ハロゲン系難燃剤、酸化アンチモン系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、金属水酸化物系難燃剤を提案しているが、ベースフィルムを安価なポリエステルフィルムとした場合、これらの難燃剤を有する樹脂を積層して十分な難燃性を発現するためには、厚膜が必要となり、風合いのある意匠性や審美性豊かな金銀糸は製造できない。また、これらの難燃剤は燃焼時にハロゲン化ガス、ダイオキシン等の有害物を放出するものがあり、着用している人体への影響、もしくは廃棄時の環境への影響が懸念される。一方で、有害性の少ない金属水酸化物、窒素系難燃剤を用いた場合は、難燃性が発現できない。さらには、燃焼時のドリップの問題も解決できない。
【0010】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、市場要望にも応えられる価格で製造することが可能であり、従来のポリエステルフィルムを用いたものに比べ高度な難燃性を実現し、かつ、柔軟性、取り扱い性および風合いにも優れる上に、廃棄時の環境への影響のない金銀糸製造用シートおよび金銀糸を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の金銀糸製造用シートは、ポリエステルフィルムの両面にポリイミド樹脂層が積層されており、かつ、その少なくとも片面に金属蒸着層が積層されていることを特徴とするものである。また、本発明の金銀糸は、かかる金銀糸製造用シートを細かく裁断してなるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基材フィルムが、工業的に安価に製造できるポリエステルフィルムを用いるので低コストであり、ポリイミド樹脂の積層体であるため、耐熱性に優れ、かつハロゲン系、リン系等の難燃剤を用いなくても難燃性に優れ、燃焼後もポリイミド樹脂層が両面に残り、薄膜として形状を保持されるため、ポリエステルフィルムのドリップを防止することができ、金銀糸を用いた織物の燃焼時の安全性を更に増すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、前記課題、つまり高度な難燃性を実現し、かつ、柔軟性、取り扱い性および風合いにも優れる上に、廃棄時の環境への影響のない金銀糸製造用シートについて、鋭意検討し、ポリエステルフィルムの両面にポリイミド樹脂層を積層し、かつ、その少なくとも片面に金属蒸着層を設けてみたところ、かかる課題を一挙に解決することができることを究明したものである。
【0014】
本発明の金銀糸製造用シートに用いられる基材フィルムとしては、ポリエステルフィルムを用いる。通常、金銀糸に用いられる熱可塑性樹脂フィルムとしては、溶融押し出し可能な熱可塑性樹脂から製造されたフィルムの内、金銀糸用に適切なものから選ばれ、使用できる熱可塑性樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂などが用いられている。この中でも、特にポリエステルフィルムがコスト面の他かに、透明性、寸法安定性、機械的特性などの点で好ましい。ここで、好ましいポリエステルとしては特に限定されないが、たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンナフタレートなどが挙げられ、これらの2種以上を混合して用いてもよい。また、これらと他のジカルボン酸成分やジオール成分が共重合されたものであってもよい。
【0015】
本発明に用いられるポリエステルフィルムを構成する樹脂としては、その極限粘度(25℃のo−クロロフェノール中で測定)は0.4〜1.2dl/gが好ましく、0.5〜0.8dl/gであることが、フィルム特性の上からより好ましい。
【0016】
また、本発明に用いられるポリエステルフィルム中には、本発明の効果が阻害されない範囲内で、各種の添加剤や樹脂組成物、架橋剤などが含有されていてもよい。例えば、アクリル樹脂、ポリエステル、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂、ワックス組成物、メラミン化合物、オキサゾリン系架橋剤、メチロール化、アルキロール化された尿素系架橋剤、アクリルアミド、ポリアミド、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、有機,無機の粒子、顔料、染料、帯電防止剤、核剤などを用いることができる。
【0017】
これらの中でも無機の粒子、例えばシリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ゼオライト、酸化チタン、金属微粉末などを添加した場合には、得られるフィルムの易滑性、耐傷性などが向上するので好ましい。無機粒子の平均粒子径は0.005〜5μmが好ましく、より好ましくは0.05〜1μmである。また、その添加量は、0.05〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10重量%である。
【0018】
また、本発明の難燃性効果をより効果的に発現させるために、各種難燃剤を添加したり、あるいは、リン系化合物との共重合体を用いてもよい。添加する難燃剤としては特に限定されないが、その一例を挙げれば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、酸化スズ水和物、塩基性炭酸マグネシウム、三酸化アンチモン、硼酸亜鉛、錫酸亜鉛、ジルコニウム系難燃剤、モリブデン系難燃剤などの無機系難燃剤、フェニルスルホン酸、t−ブチルスルホン酸、フェニルスルフィン酸、ポリリン酸アンモニウムなどのリン系難燃剤、フッ素、臭素、塩素などのハロゲン系難燃剤等がある。この中でも、火災時に有毒ガスの発生もなく、環境にも優しい非ハロゲン化合物であることがより好ましく、特に、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の金属水酸化物がより好ましい。また、リン系難燃剤やハロゲン系難燃剤の使用はできる限り少なくするのが好ましい。さらには、耐熱性の低下となるリン系化合物との共重合も、必要最小限にするのが好ましい。
【0019】
本発明に用いられるポリエステルフィルムは、二軸配向されたものであることが、機械的強度や寸法安定性などの点で好ましい。二軸配向しているとは、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものを言い、例えば、未延伸、すなわち結晶配向が完了する前の熱可塑性樹脂フィルムを長手方向および幅方向にそれぞれ2.5〜5.0倍程度延伸し、その後熱処理により結晶配向を完了させたものである。ポリエステルフィルムが二軸配向することにより、特に、高温、高湿下で性能が向上するため、特に好ましい。
【0020】
かかるポリエステルフィルムの膜厚は、好ましくは3〜100μm程度であり、より好ましくは5〜50μm、更に好ましくは6〜25μmであり、適宜選択されて使用される。
【0021】
また、ポリエステルフィルムとしては、内層と表層の2層以上から成る複合体フィルムであってもよい。例えば、かかる複合体フィルムの好ましい態様として、内層は実質的に粒子を含有せず、表層に粒子を含有する層を設けた複合体フィルム、内層は粗大粒子を含有し、表層に微細粒子を含有する層を複合させた複合体フィルム、内層が微細な気泡を含有した層であって表層は実質的に気泡を含有しない層である複合体フィルムなどが挙げられる。また、上記複合体フィルムは、内層と表層が異種のポリマーであっても同種のポリマーであってもよい。
【0022】
ポリエステルフィルムにポリイミド樹脂層を積層する場合、両者の接着力を向上させるため、予めポリエステルフィルムにプライマー層を形成するのが好ましい。プライマリー層の厚みは、片面あたり0.001〜5μmであることが好ましい。厚みを0.001μm以上にすることにより、接着性を十分に得ることができる。厚みが5μmよりも薄くすることにより、ポリエステルフィルム本来の特性や、ポリイミド樹脂層を設けた後のフィルムの物性に影響を及ぼしたりするという問題を防止することができる。プライマリー層の厚みは好ましくは0.05〜3.0μm、より好ましくは0.1〜1.0μmである。
【0023】
また、プライマー層中に無機粒子を添加したものは、易滑性や耐ブロッキング性が向上するので更に好ましい。この場合、添加する無機粒子としては、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウムなどを用いることができる。用いられる無機粒子は、平均粒径0.005〜5μmが好ましく、より好ましくは0.01〜3μm、特に好ましくは0.05〜2μmであり、プライマー層中の樹脂に対する混合比は特に限定されないが、固形分重量比で0.05〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部である。
【0024】
これらのプライマー層は、ポリエステルフィルム製膜時にポリエステル樹脂と共押出して積層する方法や、ポリエステルフィルム製膜後に、フィルム上に塗布、乾燥して積層しても良いが、ポリエステルフィルムの製膜時に塗布、乾燥する所謂インラインコーティング法で形成するのがより好ましい。インラインコーティング法は、長手方向に一軸延伸された後、これらの樹脂を含む塗液を塗布し、さらに横延伸を行いながら同時に乾燥を行う方法や、延伸前に塗液を塗布後、同時二軸方式で延伸しながら乾燥させる方法などが好ましく用いられる。
【0025】
これ以外にも、コロナ処理、プラズマ処理、サンドブラスト処理等を施し接着力の強化を図ることが好ましい。
【0026】
本発明の金銀糸製造用シートは、ポリエステルフィルムの両面にポリイミド樹脂層が積層されているものである。かかるポリイミド樹脂は、特に限定されないが、高い耐熱性を有するのが好ましい。例として、脂肪族ポリイミド、芳香族ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドなどを挙げることができる。これらの中でも、芳香族ポリイミドが最も好ましい。通常、ポリエステルフィルム単体では難燃性が低く、燃焼時に溶融してドリップが発生し、火傷などの問題がある。しかし、本発明は、これらの高い耐熱性を有するポリイミド樹脂層をポリエステルフィルムの両面に積層することにより、これらの層が燃焼時に壁となるため、ポリエステルフィルムに高い難燃性を付与すると同時に、溶融したポリエステルフィルムのドリップをも完全に防止することができるのである。さらには、環境的側面からも、本発明におけるポリイミド樹脂層の樹脂成分は燃焼時にダイオキシンが発生しないようハロゲン基を含有しないものであることが好ましい。
【0027】
本発明に用いられるポリイミド樹脂は、環状イミド基を繰り返し単位として含有するポリマーであることが好ましい。本発明の効果が損なわれない範囲であれば、ポリイミドの主鎖に環状イミド以外の構造単位、例えば、芳香族、脂肪族、脂環族、脂環族エステル単位、オキシカルボニル単位等が含有されても良い。
【0028】
このポリイミド樹脂として、例えば、下記一般式で示されるような構造単位を含有するものが好ましい。
【0029】
【化1】

【0030】
上記式中のArは、6〜42個の炭素原子を有する芳香族基であり、Rは6〜30個の炭素原子を有する芳香族基、2〜30個の炭素原子を有する脂肪族基および4〜30個の炭素原子を有する脂環族基からなる群より選択された2価の有機基である。
【0031】
上記一般式において、Arとしては、例えば、
【0032】
【化2】

【0033】
【化3】

【0034】
を挙げることができる。Rとしては、例えば、
【0035】
【化4】

【0036】
【化5】

【0037】
を挙げることができる。式中nは、2〜30の整数である。
【0038】
これらは、本発明の効果を阻害しない範囲で、1種あるいは2種以上一緒にポリマー鎖中に存在しても良い。
【0039】
このポリイミド樹脂は公知の方法によって製造することができる。例えば、上記Arを誘導することができる原料であるテトラカルボン酸及び/又はその酸無水物と、上記Rを誘導することができる脂肪族一級ジアミンよりなる群から選ばれる一種もしくは二種以上の化合物とを脱水縮合することによりポリアミド酸を得る。次いで、加熱及び/又は化学開閉環剤を用いてポリアミド酸を脱水閉環する。または、テトラカルボン酸無水物とジイソシアネートとを加熱して脱炭酸を行って重合する方法などを例示することができる。
【0040】
上記方法で用いられるテトラカルボン酸としては、例えばピロメリット酸、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルフォン、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8,−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、2,2’−ビス[‘2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン等及び/又はその酸無水物等が挙げられる。
【0041】
また、ジアミンとしては、例えば、ベンジジン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエタン、ジアミノジフェニルプロパン、ジアミノジフェニルブタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジフェニルベンゾフェノン、o,m,p−フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン等の芳香族一級ジアミン等や、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン、1,10−デカメチレンジアミン、1,11−ウンデカメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジメチルアミン、2−メチル−1,3−シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン等の脂肪族又は脂環族一級ジアミン等を例示することができる。
【0042】
上記ポリイミドの製造方法において、ポリアミド酸を得て次いで加熱及び/又は化学閉環剤を用いて脱水閉環する方法を用いる場合には、以下の脱水剤や触媒が好適に用いられる。
【0043】
脱水剤としては、例えば無水酢酸などの脂肪族酸無水物、芳香酸無水物などが挙げられる。また、触媒としては、例えばトリエチルアミンなどの脂肪族第三級アミン類、ジメチルアニリン等の芳香族第三級アミン類、ピリジン、ピコリン、イソキリン等の複素環式第三級アミン類などが挙げられる。本発明において、これらの中でも特に下記式(I)で示されるヒドロキシピリジン系化合物、下記式(II)で示されるイミダゾール系化合物の中から選ばれる少なくとも1種類の化合物を触媒として用いることが好ましい。
【0044】
【化6】

【0045】
(式中、R、R、R、R及びRのうち、少なくとも1つは水酸基である。水酸基以外の場合は、それぞれ水素原子、1〜30個の炭素原子を有する脂肪族基、6〜30個の炭素原子を有する芳香族基、4〜30個の炭素原子を有するシクロアルキル基、7〜30個の炭素原子を有するアラルキル基及びホルミル基のいずれかを示す。)
【0046】
【化7】

【0047】
(式中、R、R、R及びRは、それぞれ、水素原子、1〜30個の炭素原子を有する脂肪族基、6〜30個の炭素原子を有する芳香族基、4〜30個の炭素原子を有するシクロアルキル基、7〜30個の炭素原子を有するアラルキル基及びホルミル基のいずれかを示す。)
式(I)のヒドロキシピリジン系化合物の具体例としては、2−ヒドロキシピリジン、3−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、2,6−ヒドロキシピリジン、3−ヒドロキシ−6−メチルピリジン、3−ヒドロキシ−2−メチルピリジンなどが挙げられる。
【0048】
式(II)のR、R、R、R及びRとしては、例えば、脂肪族基の場合は炭素数1〜17のアルキル基、ビニル基、ヒドロキシルアルキル基、シアノアルキル基が好ましく、芳香族基の場合はフェニル基が好ましく、アラルキル基の場合はベンジル基が好ましい。
【0049】
式(II)のイミダゾール系化合物の具体例としては、1-メチルイミダゾール、1-エチルイミダゾール、1-プロピルイミダゾール、1-フェニルイミダゾール、1-ベンジルイミダゾール、1-ビニルイミダゾール、1-ヒドロキシエチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-プロピルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2-ブチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ベンジルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、4-ベンジルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1,4-ジメチルイミダゾール、1,5-ジメチルイミダゾール、1-エチル-2-メチルイミダゾール、1-ビニル-2-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-ブチル-4-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-ブチル-4-ホルミルイミダゾール、2,4-ジフェニルイミダゾール、4,5-ジメチルイミダゾール、4,5-ジフェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1,2,5-トリメチルイミダゾール、1,4,5-トリメチルイミダゾール、1-メチル-4,5-ジフェニルイミダゾール、2-メチル-4,5-ジフェニルイミダゾール、2,4,5-トリメチルイミダゾール、2,4,5-トリフェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾールなどが挙げられる。
【0050】
式(I)で示されるヒドロキシピリジン系化合物、式(II)のイミダゾール系化合物には脱水閉環反応を促進する効果があることから、これらの化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を添加することにより、低温、かつ、短時間の熱処理で脱水閉環することができるので、生産効率が良くなるため好ましい。その使用量は、好ましくはポリアミド酸の繰り返し単位に対して10モル%以上であり、さらに好ましくは40モル%以上である。添加量がポリアミド酸の繰り返し単位に対してかかる好ましい範囲であると、低温、かつ、短時間においても脱水閉環させる効果を十分に維持できる。脱水閉環しないポリアミド酸繰り返し単位が残存していても良いが、ポリアミド酸が十分に脱水閉環して、ポリイミドになった割合が高くなると、ポリイミド樹脂層の耐溶剤性および耐湿熱性が向上するため、より好ましい。添加量の上限は、特に限定されないが、原料価格を低く抑える観点から、ポリアミド酸の繰り返し単位に対して300モル%以下であることが好ましい。
【0051】
本発明においては、ポリイミド樹脂の全構造単位の70%以上100%以下が下記式(III)で表される構造単位であることが特に好ましい。
【0052】
【化8】

【0053】
(式(III)中のR’は下記式(IV)の中から選ばれる少なくとも1種の基である。)
【0054】
【化9】

【0055】
(式(IV)中のX、Yは下記式(V)の中から選ばれる少なくとも1種の基である。)
-O-,-CH2 -,-CO-,-SO2 -,-S-,-C(CH3 2 - (V)
ポリイミド樹脂の全構造単位の70%以上が上記式(III)で表される構造単位でない場合には、難燃性の効果が低下したり、積層厚みを厚くしなければ難燃性の効果が得られず生産性やコスト面での優位性のないものとなることがある。また、上記式(III)以外の構造単位を30%より多く有するポリイミド樹脂は、これを合成するときの原料コストが高価となる傾向があり、金銀糸のコストが高くなるなどの問題が生じる場合がある。
【0056】
本発明におけるポリイミド樹脂は、より好ましくは下記式(VI)で表される構造単位を70%以上有するポリイミド樹脂であり、特に好ましくは下記式(VI)で表される構造単位を90%以上有するポリイミド樹脂である。
【0057】
【化10】

【0058】
本発明に用いられるポリイミド樹脂層は、樹脂成分以外に前記の非可燃性ガスを発生する化合物を含有することが好ましい。非可燃性ガスを発生する化合物を含有させることによって、難燃性の効果が発現しやすくなる。
【0059】
非可燃性ガスを発生する化合物としては、特に限定されないが、無機炭酸化物、無機水酸化物、トリアジン系化合物、グアニジン系化合物、グアニル尿素系化合物、含ハロゲン化合物等が挙げられ、これらを単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、難燃性の点から、無機水酸化物および/またはトリアジン系化合物が好ましく、無機水酸化物が特に好ましい。
【0060】
無機水酸化物としては、種々のものが使用できるが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ジルコニウム等が好適に用いられる。これらの中でも、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムが好ましい。難燃性の点で特に好ましいのは、水酸化マグネシウムである。また、水酸化アルミニウムは、ポリイミド樹脂を含む層を高温高湿下においた場合でも、ポリイミドを含む層の劣化を促進することが少ないため好ましい。これらの無機水酸化物の平均粒子径は1.5μm以下であることが難燃性の点で好ましく、より好ましくは1.0μm以下であり、さらに好ましくは0.8μm以下であり、特に好ましいのは0.5μm以下である。また、これらの無機水酸化物を亜鉛化合物および/またはホウ素化合物からなる被覆層で被覆したり、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、脂肪酸等により表面処理した場合には、難燃性の効果が発現しやすくなるため好ましい。
【0061】
トリアジン系化合物としては、例えば、硫酸メラミン、ポリリン酸メラミン、メラミン、メラム、メレム、メロン、メラミンシアヌレート、メラミンフォスフェート、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、トリグアナミン、トリス(β-シアノエチル)イソシアヌレート、アセトグアナミン、硫酸メレム、硫酸メラム等が挙げられる。
【0062】
ここで、非可燃性ガスを発生する化合物の添加量は、ポリイミド樹脂層の1〜65質量%であることが好ましい。かかる添加量が1質量%未満であると、難燃性の効果が十分に発現しない場合がある。またかかる添加量が65質量%より多いと、ポリイミド樹脂層が脆くなったり、難燃性の効果が発現しない場合がある。非可燃性ガスを発生する化合物の添加量は、より好ましくは5〜60質量%であり、特に好ましくは10〜50質量%である。また、非可燃性ガスを発生する化合物の添加量は、難燃性ポリエステルフィルム全体の0.01〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜10質量%であり、特に好ましくは0.01〜3質量%である。
【0063】
本発明において、金銀糸製造用シート(金銀糸)全体の厚みに対するポリイミド樹脂層の厚みの割合は、0.5〜30%であることが好ましい。ポリイミド樹脂層の厚みの割合は、より好ましくは1.0〜15%、さらに好ましくは2.0〜10%である。ここで、ポリイミド樹脂層の厚みは、両面のポリイミド樹脂層の合計厚みである。金銀糸厚みに対するポリイミド樹脂層の厚みの割合がかかる範囲であると、難燃性の効果が十分に発揮され、かつ、生産性が良好である。
【0064】
また、ポリイミド樹脂層の膜厚は、両面共にほぼ同じ膜厚とするのが好ましい。このとき、ポリイミドを含む層の厚みは、片面当たり0.05〜15μm程度が好ましく、より好ましくは0.1〜10μm、特に好ましくは0.5〜5μm程度である。この範囲をはずれてポリイミドを含む層の厚みの割合が大きかったり、ポリイミド樹脂層の厚みが厚い場合には、生産性が悪くなり、また金銀糸の柔軟性や風合いが低下し好ましくない。逆に、この範囲をはずれてポリイミド樹脂層の厚みの割合が小さかったり、、ポリイミドを含む層の厚みが薄い場合には、難燃性の効果が十分に発揮されなく、さらに燃焼時のドリップ性の点でも好ましくない。
【0065】
本発明に使用するポリイミド樹脂層の形成方法は、例えば、ポリイミド樹脂層と積層ポリエステルフィルムを共押出により積層してもよく、ポリイミドを含む層を積層ポリエステルフィルムに貼り合わせてもよく、ポリイミド樹脂層の形成溶液を積層ポリエステルフィルムに塗布し、乾燥する方法により形成してもよい。これらの中で、塗布によりポリイミド樹脂層を形成する方法が、積層ポリエステルフィルムとの接着性の効果を十分に発現させることができるため好ましい。
【0066】
また、ポリイミド樹脂層に非可燃性ガスを発生する化合物を含有させる場合には、塗布によりポリイミド樹脂層を形成する方法が、比較的穏やかな条件でポリイミド樹脂層を形成でき、非可燃性ガスを発生する化合物の変質を防ぎやすいため、好ましい。塗布によりポリイミドを含む層を形成する方法としては、各種の塗布方法、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法、ナイフコート法などを用いることができる。また、効率よく溶剤を乾燥するために赤外線による加熱を用いてもよい。
【0067】
塗布によりポリイミド樹脂層を形成する場合、ポリイミド樹脂層形成用塗布液の溶媒としては、特に限定されないが、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキシドなどの双極性非プロトン溶媒、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、1,3ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、トルエン、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコール、エチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、クロロホルム等、およびこれらの混合溶媒を使用できる。これらの中でも、溶媒中にアルコール類、ケトン類、エステル類、トルエンが含まれていると積層ポリエステルフィルムへの塗工性が良好となるため好ましい。より好ましくは、溶媒中にアルコール類が含まれていることが好ましい。
【0068】
本発明に用いられるポリイミド樹脂層には、本発明の効果が損なわれない範囲内で、各種の添加剤や樹脂組成物、架橋剤などが含有されていてもよい。例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、有機粒子、無機粒子、顔料、染料、帯電防止剤、核剤、難燃剤、アクリル樹脂、ポリエステル、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂、ワックス組成物、メラミン化合物、オキサゾリン系架橋剤、メチロール化あるいはアルキロール化された尿素系架橋剤、アクリルアミド、ポリアミド系樹脂、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、各種シランカップリング剤、あるいは各種チタネート系カップリング剤などを用いることができる。
【0069】
これらの中でも無機の粒子、例えばシリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ゼオライト、酸化チタン、金属微粉末などを添加した場合には易滑性、耐傷性などが向上するので好ましい。無機粒子の平均粒子径は0.005〜5μmが好ましく、より好ましくは0.05〜1μm程度である。また、その添加量は、0.05〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。
【0070】
次に、金属蒸着層について説明する。本発明に用いられる金属蒸着層としては、例えば、アルミニウム、銀、錫、インジウム、金、銅、クロム、チタン、ニッケル、白金、亜鉛、ステンレス合金などが使用可能である。この中でも、コストメリットの高いものとしてアルミニウムが最も工業的に重要な金属であり、最適に使用される。
【0071】
これらの金属を蒸着する方法は、抵抗加熱方式、高周波加熱方式、イオンビーム加熱方式、電子ビーム加熱方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等のいずれであっても可能であるが、抵抗加熱方式、高周波加熱方式、電子ビーム加熱方式のいずれかとするのが好ましい。
【0072】
金属蒸着層の厚さは、50〜2000オングストロームが好ましく、より好ましくは100〜1000オングストローム、特に好ましくは200〜800オングストロームである。これらの膜厚範囲にすることにより、金属光沢を有し、熱皺やフィルム破れ等がなく、かつ低コストで、金属蒸着層を形成することができる。
【0073】
本発明の金銀糸製造用シートは、ポリエステルフィルムの両面にポリイミド樹脂層が積層されており、さらにその少なくとも片面、つまり片面又は両面に金属蒸着層が積層されているものである。かかる金属蒸着層は機械的強度、化学的安定性に乏しいため、金属蒸着層の摩擦によるキズを防止したり、水分、酸素、硫化物、窒素酸化物などによる腐食・変色を防止するため、その上に無色の透明樹脂層(保護層とも言う)を設けるのが好ましい。金属蒸着層の上に透明樹脂層を設けることにより、金属蒸着層で反射した光により光沢を与えるためであり、例えば銀、アルミニウム、錫などの白色光沢の金属を用いると耐久性のある銀糸を得ることができ、金などの金色光沢の金属を用いると耐久性のある金糸を得ることができる。
【0074】
かかる透明樹脂層としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、尿素−メラミン樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系化樹脂などを用いることができる。透明樹脂層には、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、有機粒子、無機粒子、顔料、染料、帯電防止剤、核剤、難燃剤、各種シランカップリング剤、あるいは各種チタネート系カップリング剤、オキサゾリン系架橋剤、メチロール化あるいはアルキロール化された尿素系架橋剤等の各種の添加剤や樹脂組成物、架橋剤などが含有されていてもよい。
【0075】
かかる透明樹脂層は、前記樹脂の有機溶媒溶液やエマルジョンなどを金属蒸着層上にロールコーティング、グラビアコーティング、スプレイコーティング法などのコーティング法により塗布し、乾燥することにより設けるのが一般的である。透明樹脂層の厚みとしては、0.2〜5μm程度が好ましく、より好ましくは0.3〜3μm、特に好ましくは0.5〜2μmである。これらの膜厚範囲にすることにより、十分な耐キズ性、耐腐食、耐変色性と、難燃性効果を両立することができる。
【0076】
また、金糸として用いる場合は、透明な樹脂中に赤色系、オレンジ色系、黄色系、茶色系など用途に応じた色調の顔料、蛍光顔料、染料、蛍光染料を樹脂に含有せしめた着色樹脂層を、金属蒸着膜の上又は下に設けるのが好ましい。着色樹脂層を設けることにより、以下の原理により金色に輝く金糸を得ることができる。まず白色の外光が着色樹脂層を透過し着色される。次にこの光が金属蒸着層で高反射率で反射された後、再度着色樹脂層を透過することにより再度着色される。このようにして透過/反射/透過を繰り返すことにより外光を金色に着色することができる。
【0077】
着色樹脂層に用いられる樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、尿素−メラミン樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系化樹脂などを用いることができる。着色層には、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、有機粒子、無機粒子、帯電防止剤、核剤、難燃剤、各種シランカップリング剤、あるいは各種チタネート系カップリング剤、オキサゾリン系架橋剤、メチロール化あるいはアルキロール化された尿素系架橋剤等の各種の添加剤や樹脂組成物、架橋剤などが含有されていてもよい。
【0078】
着色樹脂層は、前記樹脂の有機溶媒溶液やエマルジョンなどを金属蒸着層上にロールコーティング、グラビアコーティング、スプレイコーティング法などのコーティング法により塗布し、乾燥することにより設けるのが一般的である。着色樹脂層の厚みとしては、0.2〜5μm程度が好ましく、より好ましくは0.3〜3μm、更に好ましくは0.5〜2μmである。これらの膜厚範囲にすることにより、十分な発色性を有し、かつ難燃性効果を両立することができる他、金属蒸着層の耐キズ性、耐腐食、耐変色性を付与することもできる。
【0079】
また、本発明は、適宜顔着色樹脂層中の顔料、染料を変えることにより、さらに別の好ましい色に調色せしめることも可能であり、金銀糸以外の色調を有するラメ糸全般にも使用することができるのは言うまでもない。
【0080】
金属蒸着層、透明樹脂層、着色樹脂層を設けるにあたって、予め基材の上にアンカーコート層を設けることにより、各層間の密着力を向上させたり、水分、酸素、硫化物、窒素酸化物などによる金属蒸着層腐食・変色を防止することができるので、好ましい。
【0081】
アンカーコート層としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、尿素−メラミン樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂などが好ましく用いられる。アンカーコート層には、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、有機粒子、無機粒子、帯電防止剤、核剤、難燃剤、各種シランカップリング剤、あるいは各種チタネート系カップリング剤、オキサゾリン系架橋剤、メチロール化あるいはアルキロール化された尿素系架橋剤等の各種の添加剤や樹脂組成物、架橋剤などが含有されていてもよい。
【0082】
アンカーコート層は、前記樹脂の有機溶媒溶液やエマルジョンなどを金属蒸着層上にロールコーティング、グラビアコーティング、スプレイコーティング法などのコーティング法により塗布し、乾燥することにより設けるのが一般的である。アンカーコート層の厚みとしては、0.1〜5μm程度が好ましく、より好ましくは0.2〜2μm、更に好ましくは0.5〜1μmである。これらの膜厚範囲にすることにより、十分な機械的強度、化学的安定性と、難燃性効果を両立することができる。
【0083】
次に、本発明の金銀糸製造用シート(金銀糸)について、構成例を説明する。本発明の金銀糸製造用シートは、ポリエステルフィルム(1)、ポリイミド樹脂層(2)、金属蒸着層(3)からなる。これまで説明してきた1プライタイプの場合(ポリエステルフィルムを1シート用いる場合)の基本的構成は、片面に金属蒸着層を設けた金銀糸製造用シート及び、両面に金属蒸着層を設けた金銀糸製造用シートである。
【0084】
まず、片面に金属蒸着層を設けた金銀糸製造用シートの断面の模式図を図1に示す。図1(a)は、その基本となる構成である。この金属蒸着面側に透明樹脂層(4)及び、又は着色樹脂層(5)を積層したものを図1(b)に示す。さらに、金属蒸着層と反対の面にも透明樹脂層及び、又は着色樹脂層を積層したものを図1(c)に示す。
【0085】
さらに、両面に金属蒸着層を設けた金銀糸製造用シートの断面の模式図を図2に示す。図2(a)は、その基本となる構成である。この金属蒸着面側に透明樹脂層及び、又は着色樹脂層を積層したものを図2(b)に示す。
【0086】
次に、本発明の金銀糸製造用シートにおいて2プライタイプの場合、すなわちポリエステルフィルムを2シート用い、それぞれを接着層(6)で張り合わせる場合について説明する。
【0087】
まず、図3(a)はポリエステルフィルムの片面にポリイミド樹脂層、金属蒸着層がこの順に積層されたものと、ポリエステルフィルムの片面にポリイミド樹脂層を積層されたものとを用意し、各々のポリエステルフィルム面側を対向させて接着層を用いて張り合わせたことを特徴とする金銀糸製造用シートの断面模式図である。この金属蒸着面側に透明樹脂層及び、又は着色樹脂層を積層したものを図3(b)に示す。さらに、金属蒸着層と反対の面にも透明樹脂層(4)及び、又は着色樹脂層(5)を積層したものを図3(c)に示す。
【0088】
さらに、図4(a)はポリエステルフィルムの片面にポリイミド樹脂層、金属蒸着層がこの順に積層されたものを2枚用意し、各々のポリエステルフィルム面側を対向させて接着層を用いて張り合わせたことを特徴とする金銀糸製造用シートの断面模式図である。この金属蒸着面側に透明樹脂層及び、又は着色樹脂層を積層したものを図4(b)に示す。
【0089】
これまでに説明したように、各層の間にはアンダーコート層を設けても良い。また、透明樹脂層や着色樹脂層は単独で設けてもよく、積層して用いても良い。
【0090】
接着層としては、特に制限はなく、エチレン酢酸ビニル系樹脂、塩素化ポリプロピレン系、塩化ビニル−酢酸ビニル系、アクリル系、アクリル−塩化ビニル−酢酸ビニル系などの溶剤型接着剤、エマルジョン型接着剤などが用いられる。
【0091】
接着層は、前記接着剤の有機溶媒溶液やエマルジョンなどをポリエステルフィルム(A)上にロールコーティング、グラビアコーティング、スプレイコーティング法などのコーティング法により塗布し、乾燥後、両者を重ね合わせて加熱加圧して張り合わせて積層体フィルとなる。接着層の厚みは、通常0.5〜5μm、より好ましくは0.6〜3μm、更に好ましくは0.7〜2μmの範囲である。接着層の厚みをこの範囲にすることにより、乾燥を十分に行うことができ、さらにはスリット時に刃に接着層が付着する等の不良を発生しにくくすることができ、好ましい。
【0092】
これ以外にも、2プライタイプの場合、ポリエステルフィルムの片面にポリイミド樹脂層、金属蒸着層をこの順に積層し、さらに反対面のポリエステルフィルム側に接着層を積層したものを用意し、このシートと、(A)ポリエステルフィルムの両面にポリイミド樹脂層を積層したもの、又は(B)ポリエステルフィルムの両面にポリイミド樹脂層を積層し、さらに片面に金属蒸着層を積層したもの、又は(C)ポリエステルフィルムの両面にポリイミド樹脂層を積層し、さらに両面に金属蒸着層を積層したものを、各々接着層を介して張り合わせることは構わない。この場合、(A)、(B)、(C)のシートはどちらの面を接着させても構わない。
【0093】
もちろん、これまで説明してきた本発明の金銀糸製造用シートの各々を、接着層を介して張り合わせることも構わない。
【0094】
このようにして得られた金銀糸製造用シートを、通常0.15〜2mm程度の幅に、マイクロスリットすることにより、金銀糸を製造することができる(金銀平糸とも言う)。その製造方法は特別なものではなく、公知のマイクロスリットで良い。通常のマイクロスリッターは、上下に1列ずつ互い違いに配列された多数の円板形のロータリーブレード及びそれぞれのブレードに一対となる断面直角の切刃を有し、これらは金銀糸製造用シートの搬送方法と同方向、同速度で回転している。金銀糸は、金銀糸製造用シートを噛合するロータリーブレードと切刃間で長手方向にスリットすることにより、製造することができる。
【0095】
以上のようにして得られた本発明の金銀糸は、そのまま平糸として用いることも可能である。また、金銀平糸を芯糸の周囲に螺旋状に巻き付ければ、金銀撚糸が得られる。すなわち、芯糸として、ナイロン、ポリエステル、アクリル、レーヨン、ビスコースレーヨン、銅アンモニウムレーヨン、綿、麻、獣毛繊維、シルク等から選ばれた少なくとも1種類以上からなるフィラメント糸や紡績糸と撚り合わせることにより、羽衣撚り、タスキ撚り、絡み撚り、丸撚り、蛇腹撚り等、金銀糸が用いられる一般的な撚り加工により、審美性や意匠性を高めることが可能である。もちろん、難燃性繊維を撚り合わせることにより、より一層難燃性を高めることも可能である。そして撚り加工を行うことにより、一般の金銀糸同様に、様々な光沢感を発現させることが可能となるのである。さらに、金銀平糸又は金銀撚糸を横糸(あるいは縦糸)として、通常の絹糸等の糸を縦糸(もしくは横糸)として織機にかければ金銀装飾を有する織布が得られる。
【0096】
本発明の金銀糸は、ポリエステルフィルム、ポリイミド樹脂層のいずれにもハロゲン系難燃剤を含まなくても、高い難燃性を有することができるため、火災等により燃焼しても有毒なハロゲン化水素、ダイオキシン等の発生の恐れがなく、非常に有用である。また、燃焼時に基材となるポリエステルフィルムのドリップがなく、非常に安全な金銀糸である。
【実施例】
【0097】
以下、本発明について、実施例および比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0098】
[特性の測定方法および効果の評価方法]
本発明における特性の測定方法および効果の評価方法は次のとおりである。
【0099】
(1)金銀糸の各構成成分の膜厚
(株)日立製作所製の透過型電子顕微鏡HU−12型を用い、金銀糸の断面を観察した写真から、ポリエステルフィルム、ポリイミド樹脂層、透明保護層、着色保護層、金銀糸全体の各々について平均厚みを求めた。
(ポリイミド樹脂層、透明保護層、着色保護層については、各層を有機溶媒もしくは、酸性水溶液、アルカリ性水溶液等で溶解し、溶解前後の重量変化と比重よりその膜厚を求める方法(JIS K 5600−1−7)、金銀糸全体の平均膜厚についてはダイヤルゲージ法(JIS C 2151に準ずる)を用いて測定しても良い。)。
【0100】
(2)ポリイミド樹脂層の金銀糸全体に対する厚みの割合:R
上記(1)で求めた両面のポリイミド樹脂層の厚みの和(TB)、金銀糸全体の厚み(T)からポリイミド樹脂層の金銀糸全体に対する厚みの割合Rを、下記式より求めた。
・R(%)=100×TB/T。
【0101】
(3)イミド化率:Im
金銀糸のポリイミド樹脂層の赤外吸収スペクトルを、日本分光(株)社製フーリエ変換型赤外吸収分光光度計FT/IR−5000を用いて、Geの45°の結晶をプリズムとしたATR法にて測定し、1550cm−1から1450cm−1に現れるベンゼン環の特性吸収の吸光度(a1)と1400cm−1から1300cm−1に現れるイミド基の特性吸収の吸光度(a2)を求めた。このとき下記式から、a1を基準にしたa2の相対値を求め、それをrとする。
・r=a2/a1
続いて、この金銀糸を220℃で120分間熱処理し、このフィルムにおけるポリイミド樹脂塗布層の赤外吸収スペクトルを、同様にATR法で測定し、ベンゼン環の特性吸収の吸光度(a1’)を基準にしたイミド基の特性吸収の吸光度(a2’)の相対値を求め、それをr’とする。ここで、この熱処理後のポリアミド酸のイミド化率は100%とする。
・r’=a2’/a1’
本発明においては、下記式から、r’を基準にしたrの相対値を求めてイミド化率Imとした。
・Im(%)=100×(r/r’)。
【0102】
(4)燃焼性試験
JIS L 1091の繊維製品の燃焼試験方法のD法(接炎試験)に従い、難燃性を評価した。金銀糸を長さ100mm、質量1gとなるよう束ねた後、所定の試験片支持コイルに内にセットし、バーナーで燃焼が停止するまで試験片の最下端を加熱する。残った 試験片の最下端を同様に加熱し、試験片の下端から90mmのところが溶融し燃焼するまでこの操作を繰り返す。5サンプルの測定を行い、試験中、接炎回数の最も少ないもので表す。
【0103】
<ポリエステルフィルム>
平均粒径0.4μmのコロイダルシリカを0.015重量%、平均粒径1.4μmのコロイダルシリカを0.005重量%含有するポリエチレンテレフタレート樹脂ペレット(以降、PETペレットと記載することがある)(極限粘度0.63dl/g)を十分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し285℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化し未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを90℃に加熱して長手方向に3.3倍延伸し、一軸延伸フィルム(基材PETフィルム)とした。この基材PETフィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、一軸延伸した基材PETフィルムの濡れ張力を55mN/mとし、その処理面に下記組成のプライマー塗液を塗布した。ついで、プライマー塗液を塗布した一軸延伸フィルムをクリップで把持しながら予熱ゾーンに導き、90℃で乾燥後、引き続き連続的に105℃の加熱ゾーンで幅方向に3.5倍延伸し、更に、230℃の加熱ゾーンで熱処理を施し、結晶配向の完了した積層PETフィルムを得た。PETフィルム厚みは25μm、プライマー層の厚みは片面あたり0.1μmであった。
【0104】
<プライマー塗液の組成>
下記のポリエステル1とポリエステル2を、固形分重量比で70/30となるように混合した樹脂の水溶液をプライマー塗液とした。
(1)ポリエステル1
・酸成分
テレフタル酸 90モル%
5−ナトリウムスルホイフタル酸 10モル%
・ジオール成分
エチレングリコール 98モル%
ジエチレングリコール 2モル%
(2)ポリエステル2
・酸成分
イソフタル酸 95モル%
5−ナトリウムスルホイフタル酸 5モル%
・ジオール成分
エチレングリコール 8モル%
ジエチレングリコール 92モル%。
【0105】
<ポリイミド樹脂層形成用ポリアミド酸溶液1>
ステンレス製の重合釜に、秤量した4,4’−ジアミノジフェニルエーテルをN−メチル−2−ピロリドンとともに加え、撹拌して溶解した。次に、この溶液にピロメリット酸二無水物を4,4’−ジアミノジフェニルエーテル100molに対して100mol、反応温度が60℃以下になるように添加した。その後、粘度が一定になったところで重合を終了し、ポリアミド酸の重合溶液を得た。これに、水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製、”ハジライト”(R)H−42M)を固形分重量比で、ポリアミド酸/水酸化アルミニウム=2/1となるように添加し、分散させた。樹脂塗布層の厚みに応じた所望濃度となるように、この溶液をN−メチル−2−ピロリドンで適宜希釈して、さらに塗布前に4−ヒドロキシピリジンをポリアミド酸の繰り返し単位に対して100モル%添加し、これをポリアミド酸溶液とした。
【0106】
(実施例1)
膜厚25μmのポリエステルフィルムの片面に、グラビアコーターでポリアミド酸溶液1を全面に塗布し、150℃で20秒間乾燥した。さらに、反対面も同様にしてグラビアコーターでポリアミド酸溶液1を全面に塗布し、150℃で20秒間乾燥後、200℃で20秒間キュアすることにより、ポリエステルフィルムの両面にポリイミド樹脂層を形成した。各ポリイミド樹脂層の膜厚は、共に1.3μmであり、イミド化率Imは95%であった。
【0107】
次に、ポリエステルフィルム上のポリイミド樹脂層の片面に、金属蒸着層として、厚み400オングストロームのアルミニウム層を真空蒸着法で形成した。さらに、グラビアコーターで、この金属蒸着層の上に尿素−メラミン樹脂を、乾燥後膜厚1μmとなるよう塗布し、透明樹脂層を積層した。ポリイミド樹脂層の銀糸全体に対する厚みの割合Rは、9.1%であった。
【0108】
このようにして得られた銀糸製造用シートをマイクロスリッターで120切り(0.252mm幅)の細幅にスリットし、本発明の難燃性の銀糸を得た。燃焼性試験を行った結果、接炎回数は5回で、接炎時ポリエステルフィルムのドリップも発生せず、高い難燃性を有した。
【0109】
(実施例2)
実施例1と同様にして、膜厚25μmのポリエステルフィルムの両面に、膜厚1.3μmのポリイミド樹脂層を設け、さらに、片面に厚み400オングストロームのアルミニウム金属蒸着層を真空蒸着法で形成した。次に、グラビアコーターで、この金属蒸着層の上に尿素−メラミン樹脂100部に対してオレンジ色染料を5部添加した着色樹脂層を、乾燥後膜厚1μmとなるよう塗布した。金属蒸着層と反対のポリイミド樹脂層の上にも、同様にして乾燥後膜厚1μmとなるよう着色樹脂層を塗布した。ポリイミド樹脂層の金糸全体に対する厚みの割合Rは、8.8%であった。
【0110】
このようにして得られた金糸製造用シートをマイクロスリッターで120切り(0.252mm幅)の細幅にスリットし、本発明の難燃性の金糸を得た。燃焼性試験を行った結果、接炎回数は5回で、接炎時ポリエステルフィルムのドリップも発生せず、高い難燃性を有した。
【0111】
(実施例3)
膜厚25μmのポリエステルフィルムの片面に、グラビアコーターでポリアミド酸溶液1を全面に塗布し、150℃で20秒間乾燥した。さらに、反対面も同様にしてグラビアコーターでポリアミド酸溶液1を全面に塗布し、150℃で20秒間乾燥後、200℃で20秒間キュアすることにより、ポリエステルフィルムの両面にポリイミド樹脂層を形成した。各ポリイミド樹脂層の膜厚は、共に1.3μmであり、イミド化率Imは95%であった。
【0112】
次に、ポリエステルフィルム上のポリイミド樹脂層の両面に、金属蒸着層として、厚み400オングストロームのアルミニウム層を真空蒸着法で形成した。さらに、グラビアコーターで、これらの金属蒸着層の上に、尿素−メラミン樹脂を乾燥後膜厚1μmとなるよう両面塗布し、透明樹脂層を積層した。ポリイミド樹脂層の銀糸全体に対する厚みの割合Rは、8.8%であった。
【0113】
このようにして得られた銀糸製造用シートをマイクロスリッターで120切り(0.252mm幅)の細幅にスリットし、本発明の難燃性の銀糸を得た。燃焼性試験を行った結果、接炎回数は5回で、接炎時ポリエステルフィルムのドリップも発生せず、高い難燃性を有した。
【0114】
(実施例4)
実施例3と同様にして、膜厚25μmのポリエステルフィルムの両面に、膜厚1.3μmのポリイミド樹脂層を設け、さらに、両面に厚み400オングストロームのアルミニウム金属蒸着層を真空蒸着法で形成した。次に、グラビアコーターで、これら金属蒸着層の上に尿素−メラミン樹脂100部に対してオレンジ色染料を5部添加した着色樹脂層を、乾燥後各1μmとなるよう、両面に塗布した。ポリイミド樹脂層の金糸全体に対する厚みの割合Rは8.8%であった。
【0115】
このようにして得られた金糸製造用シートをマイクロスリッターで120切り(0.252mm幅)の細幅にスリットし、本発明の難燃性の金糸を得た。燃焼性試験を行った結果、接炎回数は5回で、接炎時ポリエステルフィルムのドリップも発生せず、高い難燃性を有した。
【0116】
(実施例5)
膜厚25μmのポリエステルフィルムの片面に、グラビアコーターでポリアミド酸溶液1を全面に塗布し、150℃で20秒間乾燥後、200℃で20秒間キュアすることにより、ポリエステルフィルムの片面にポリイミド樹脂層を形成した。ポリイミド樹脂層の膜厚は、1.8μmであり、イミド化率Imは92%であった。次に、このポリエステルフィルム上のポリイミド樹脂層の上に、金属蒸着層として厚み400オングストロームのアルミニウム層を真空蒸着法で形成した。さらに、グラビアコーターで、この金属蒸着層の上に尿素−メラミン樹脂100部に対してオレンジ色染料を5部添加した着色層を、乾燥後膜厚1μmとなるよう積層した。このようにして、1本目の加工フィルムを用意した。
【0117】
次に、同様にして、膜厚25μmのポリエステルフィルムの片面に、イミド化率Im92%、膜厚1.8μmからなるポリイミド樹脂層をポリエステルフィルム上に形成した。このようにして、2本目の加工フィルムを用意した。
【0118】
1本目の加工フィルムのポリエステルフィルム側に接着剤としてエチレン酢酸ビニル系樹脂を、乾燥後2μmとなるようグラビアコーターで塗工した後、2本目の加工フィルムのポリエステルフィルム側と接着層が対向するようにラミネーターで熱圧着して、本発明の金糸製造用シートを製造した。ポリイミド樹脂層の金糸全体に対する厚みの割合Rは、6.4%であった。
【0119】
このようにして得られた金糸製造用シートをマイクロスリッターで120切り(0.252mm幅)の細幅にスリットし、本発明の難燃性の金糸を得た。燃焼性試験を行った結果、接炎回数は4回で、接炎時ポリエステルフィルムのドリップも発生せず、高い難燃性を有した。
【0120】
(実施例6)
実施例5と同様にして、膜厚25μmのポリエステルフィルムの片面に、イミド化率Im92%、膜厚1.8μmからなるポリイミド樹脂層、厚み400オングストロームのアルミニウムからなる金属蒸着層を形成した。次に、グラビアコーターで、この金属蒸着層の上に尿素−メラミン樹脂を、乾燥後膜厚1μmとなるよう塗布し、透明樹脂層を積層した。この加工フィルムを2本用意した。
【0121】
1本目の加工フィルムのポリエステルフィルム側に接着剤として、エチレン酢酸ビニル系樹脂を乾燥後2μmとなるようグラビアコーターで塗工した後、2本目の加工フィルムのポリエステルフィルム側と接着層が対向するようにラミネーターで熱圧着して、本発明の銀糸製造用シートを製造した。ポリイミド樹脂層の銀糸全体に対する厚みの割合Rは6.3%であった。
【0122】
このようにして得られた銀糸製造用シートをマイクロスリッターで120切り(0.252mm幅)の細幅にスリットし、本発明の難燃性の銀糸を得た。燃焼性試験を行った結果、接炎回数は4回で、接炎時ポリエステルフィルムのドリップも発生せず、高い難燃性を有した。
【0123】
(比較例1)
膜厚25μmのポリエステルフィルムの片面に、金属蒸着層として、厚み400オングストロームのアルミニウム層を真空蒸着法で形成した。さらに、この金属蒸着層の上に、ポリエステル系尿素−メラミン樹脂をグラビアコーターで乾燥後膜厚1μmとなるよう塗布し、透明樹脂層を積層した。
【0124】
このようにして得られた銀糸製造用シートをマイクロスリッターで120切り(0.252mm幅)の細幅にスリットし、銀糸を得た。燃焼性試験を行った結果、接炎回数は1回で上部まで燃え上がってしまい、接炎時にポリエステルフィルムのドリップが発生するなど、低い難燃性しか得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明の金銀糸の構成の一例を説明した断面模式図である。
【図2】本発明の金銀糸の構成の一例を説明した断面模式図である。
【図3】本発明の金銀糸の構成の一例を説明した断面模式図である。
【図4】本発明の金銀糸の構成の一例を説明した断面模式図である。
【図5】従来の金銀糸の構成の一例を説明した断面模式図である。
【符号の説明】
【0126】
1 ポリエステルフィルム
2 ポリイミド樹脂層
3 金属蒸着層
4 透明樹脂層
5 着色樹脂層
6 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの両面にポリイミド樹脂層が積層されており、かつ、その少なくとも片面に金属蒸着層が積層されていることを特徴とする金銀糸製造用シート。
【請求項2】
2枚のポリエステルフィルムの積層体であって、一方のポリエステルフィルムが、片面にポリイミド樹脂層、金属蒸着層がこの順に積層されたものであり、他方のポリエステルフィルムが、片面にポリイミド樹脂層を積層されたものであり、かつ、該積層体が、各々のポリエステルフィルム面側で張り合わされて積層されていることを特徴とする金銀糸製造用シート。
【請求項3】
ポリエステルフィルムの片面にポリイミド樹脂層、金属蒸着層がこの順に積層された積層フィルムの2枚のポリエステルフィルム面側で張り合わされて積層されていることを特徴とする金銀糸製造用シート。
【請求項4】
該金銀糸製造用シートの該金属蒸着層の外面に透明樹脂層及び/又は着色樹脂層が積層されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金銀糸製造用シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の金銀糸製造用シートを細く裁断してなる金銀糸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−68410(P2008−68410A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246384(P2006−246384)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】