説明

釣銭機

【課題】 出金された釣銭の金額を短時間で確認できるようにする釣銭機を提供すること。
【解決手段】 釣銭機101は、釣銭準備金および/または預り金を入金する硬貨投入口104と、釣銭の金額情報を入力する通信ケーブル106と、通信ケーブル106を介して入力された金額の通貨を、硬貨投入口104により入金された通貨から出金する硬貨払出口105と、硬貨投入口104により入金された通貨のうち硬貨払出口105により出金すべき硬貨の種類と枚数を通信ケーブル106により入力された金額情報に基づいて決定する図示しない硬貨処理制御部と、決定された所定種類の所定枚数の硬貨を、大きさ順もしくは金額順に繰り出す硬貨繰出部304と、繰り出された硬貨を平積みする硬貨保留筒151と、平積みされた硬貨を平積みされた状態で硬貨払出口105から吐出させる吐出筒152とを備える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、スーパーのレジレーンなどで用いられる釣銭機に関し、特に、硬貨払出口で硬貨を整列吐出することでお客がすばやく釣銭を確認できるようにした釣銭機に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの店舗では、キャッシュドロア・ボックス(現金引き出し庫)付のレジスター(以下レジ)が設置され、客の購入した商品の代金を格納するとともに、その中から釣銭を出金している。また、近年ではPOS(Point Of Sale(s))システムを導入して、商品管理の効率化を図るとともに、会計場においてはキャッシュドロア・ボックスを独立させた釣銭機を設置して、現金受け渡しの迅速化、現金管理の確実化、会計処理の迅速化が図られている。
【0003】図12は、従来の釣銭機の外観構成の一例を示した斜視図である。図に示したように、釣銭機1201は、紙幣を入金する紙幣投入口1202と、紙幣を出金する紙幣払出口1203と、硬貨を入金する硬貨投入口1204と、硬貨を出金する硬貨払出口1205を備えている。また、釣銭機1201は、図示しないレジスター(POS端末装置)もしくはストアコントローラから、出金すべき釣銭に関する情報を受信する通信ケーブル1206と、釣銭機1201の状態表示、入金・出金の金額表示、操作指示の確認表示をするディスプレイ1207と、複数の操作ボタンから構成される操作パネル1208も備える。
【0004】操作者(会計場の店員)が開閉して通貨の入出金をおこなうキャッシュドロア・ボックスと異なり、釣銭機1201は、POS端末装置やストアコントローラからの釣銭金額情報にしたがって、自動的に紙幣払出口1203や硬貨払出口1205に釣銭を払い出す。このように、釣銭払出の作業の大部分を釣銭機1201が自動的にかつ速やかにおこなうので、操作者は会計処理を迅速におこなうことが可能となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の技術では以下の問題点があった。硬貨の釣銭は硬貨払出口1205に出金され、操作者は単にそれをつかみ取り、客に渡していた。したがって、釣銭を渡す操作者にとっては、出金された釣銭が過不足ないかという最終確認ができなかった。この場合、釣銭を分別して最終確認することもできるが、このような手間をかけると迅速な会計処理ができるという釣銭機の利点をそこねてしまう。換言すると、従来の釣銭機では、出金された釣銭の金額を一見して確認できないという問題点があった。
【0006】一方、釣銭を受け取る客にとっては、つかみ取りされたばらばらの釣銭が渡されるので、渡された釣銭の金額がPOS端末装置などの表示板に表示された金額と同額であるかといった確認を短時間におこなえないという問題点があった。このとき、客は操作者もしくは店舗に対して不満感を覚える場合があった。したがって店舗運営者はこのような不満感や緊張感を和らげ、心地よく会計処理ができる会計場を求めていた。
【0007】この発明は上記に鑑みてなされたものであって、出金された釣銭の金額を短時間で確認できるようにする釣銭機を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明にかかる釣銭機は、釣銭準備金および/または預り金を入金する入金手段と、釣銭の金額情報を入力する釣銭情報入力手段と、前記釣銭情報入力手段により入力された金額の通貨を、前記入金手段により入金された通貨から出金する出金手段と、を有する釣銭機において、前記入金手段により入金された通貨のうち前記出金手段により出金すべき硬貨の種類と枚数を前記釣銭情報入力手段により入力された金額情報に基づいて決定する出金硬貨決定手段と、前記出金硬貨決定手段により決定された所定種類の所定枚数の硬貨を、大きさ順もしくは金額順に繰り出す硬貨繰出手段と、前記硬貨繰出手段により繰り出された硬貨を平積みする平積手段と、前記平積手段により平積みされた硬貨を平積みされた状態で前記出金手段から吐出させる吐出手段と、を具備したことを特徴とする。すなわち、請求項1にかかる発明は、釣銭を大きさ順もしくは金額順に重なった状態で出金することができる。
【0009】また、請求項2に記載の発明にかかる釣銭機は、請求項1に記載の発明において、前記入金手段により入金された通貨のうち硬貨を金種別に格納する金種別格納手段を具備し、前記硬貨繰出手段が、前記出金硬貨決定手段により決定された所定種類の所定枚数の硬貨を、前記金種別格納手段により格納された硬貨から大きさ順もしくは金額順に繰り出すことを特徴とする。すなわち、この請求項2に記載の発明によれば、硬貨を速やかに繰り出して平積みすることができる。
【0010】また、請求項3に記載の発明にかかる釣銭機は、請求項1に記載の発明において、前記平積手段が、最大径を有する種類の硬貨の径と同程度の径を有する鉛直方向に延びた筒形状の側面部と、当該側面部の下部に配置され底を形成する底部と、から構成されたことを特徴とする。すなわち、この請求項3に記載の発明によれば、硬貨を簡易に平積みすることができる。
【0011】また、請求項4に記載の発明にかかる釣銭機は、請求項3に記載の発明において、前記吐出手段が、前記底部を移動させ前記側面部の下部を解放する解放手段を具備したことを特徴とする。すなわち、この請求項4に記載の発明によれば、平積みされた硬貨を平積みした状態で簡易に出金することができる。
【0012】また、請求項5に記載の発明にかかる釣銭機は、請求項3または4に記載の発明において、前記側面部および/または底部の全部または一部を緩衝材で被覆したことを特徴とする。すなわち、この請求項5に記載の発明によれば、硬貨の暴れを低減して速やかに硬貨を平積みすることができる。
【0013】また、請求項6に記載の発明にかかる釣銭機は、請求項3または4に記載の発明において、前記底部が水平から所定の角度傾斜した平面からなることを特徴とする。すなわち、この請求項6に記載の発明によれば、硬貨の暴れを低減して速やかに硬貨を平積みすることができる。
【0014】また、請求項7に記載の発明にかかる釣銭機は、釣銭準備金および/または預り金を入金する入金手段と、釣銭の金額情報を入力する釣銭情報入力手段と、前記釣銭情報入力手段により入力された金額の通貨を、前記入金手段により入金された硬貨から出金する出金手段と、を有する釣銭機において、前記釣銭情報入力手段からの入力情報に基づいて前記出金手段により硬貨を出金し、この出金した釣銭を保留すると共に開閉可能な底板を設けた硬貨保留筒と、当該硬貨保留筒に対しその軸に沿って相対移動する吐出筒と、当該吐出筒の昇降動作に連動して前記硬貨保留筒の底板を開閉する開閉機構とを具備したことを特徴とする。すなわち、この請求項7に記載の発明によれば、お客もしくは店員などの操作者が吐出筒を上昇させることで手元に釣銭をワンアクションで取ることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、以下に示す実施の形態の構成には、通常の当業者が設計変更しうる事項が含まれることはいうまでもない。
【0016】(釣銭機の外観構成)図1は、本実施の形態にかかる釣銭機の外観構成の一例を示した斜視図である。図に示したように釣銭機101は、紙幣を入金する紙幣投入口102と、紙幣を出金する紙幣払出口103と、硬貨を入金する硬貨投入口104と、硬貨を出金する硬貨払出口105を備えている。硬貨払出口105は、硬貨を平積みする硬貨保留筒151と、硬貨保留筒151で平積みした硬貨を吐出するための吐出筒152とから構成される。
【0017】また、釣銭機101は、図示しないレジスター(POS端末装置)もしくはストアコントローラから出金すべき釣銭に関する情報を受信する通信ケーブル106と、釣銭機101の状態表示、入金・出金の金額表示、操作指示の確認表示をするディスプレイ107と、複数の操作ボタンから構成される操作パネル108も備える。
【0018】操作パネル108は、具体的には、たとえば、「精査指示」、「紙幣回収指示」、「硬貨回収指示」などの操作ボタンが設けられている。また、ディスプレイ107の表示内容は、具体的には、「払い出し金額」、「収納硬貨の金種別枚数」、「収納貨幣合計金額」、「エラーコード」、「金種別収容状態」、その他の動作モードが表示される。ディスプレイ107は、液晶ディスプレイを用いるが、これに限定されることなく、たとえば7セグメントのLEDを9桁で使用して実現する態様であってもよい。
【0019】(釣銭機のハードウエアの概略構成)つぎに、釣銭機101のハードウエアの概略構成について説明する。図2は、釣銭機101のハードウエアの概略構成の一例を示したブロック図である。釣銭機101は、大別して、紙幣の入出金を処理する紙幣処理部201と、硬貨の入出金を処理する硬貨処理部202と、紙幣処理部201と硬貨処理部202の動作を制御するとともに釣銭機101内の金額情報を送受信する釣銭機制御部203とから構成される。ここで金額情報とは、在高、入金された通貨の合計金額、出金された通貨の合計金額、精査結果、金種別の通貨の枚数、通貨の入出金履歴やPOS端末装置から入力する釣銭の金額などの釣銭機101における通貨に関する様々な情報をいう。
【0020】(硬貨処理部の構成)ここで、硬貨処理部202のハードウエア構成について説明する。図3は、硬貨処理部202のハードウエア構成の一例を示した平面図であり、図4は、その正面図である。図に示したように、硬貨処理部202は、硬貨投入口104に一括投入された複数枚の硬貨を1枚ずつ分離し、後述する搬送ベルトへ送り出す硬貨送出部301と、分離された硬貨を搬送しながら金種毎に選別する硬貨選別部302と、選別された硬貨を起立状態で整列収納する金種別収納筒303と、金種別収納筒303から硬貨を1枚ずつ筒外へ繰り出す硬貨繰出部304と、硬貨繰出部304で繰り出された硬貨を硬貨払出口105に搬送する出金搬送部305とから構成されている。
【0021】(硬貨処理部の構成:硬貨送出部の内容)硬貨送出部301は、硬貨投入口104の下部に配置され、後述する搬送ベルトに硬貨を引き渡す硬貨送出ベルト311と、硬貨送出ベルト311で送出される硬貨の山を崩し、硬貨を1枚ずつ通過させるリバースローラ312と、リバースローラを通過した硬貨を幅寄せし、後述する搬送ベルトや選別穴との位置関係を調整するガイド313とを有している。
【0022】(硬貨処理部の構成:硬貨選別部の内容)硬貨選別部302は、硬貨送出部301から送出された硬貨を背部方向へ導く搬送ベルト321と、順次搬送される硬貨をその大きさで選別する選別穴322と、選別穴322から落下した硬貨を金種別収納筒303に案内する滑落シュート323とを有している。なお、滑落シュート323には図示しない入金センサが設けられており、金種毎に格納枚数をカウントすることができる。
【0023】なお、硬貨送出ベルト311、リバースローラ312および搬送ベルト321はモータ324とタイミングベルト325により同期回転する。また、図中の符合の添字a〜fは、以降において、それぞれ、1円硬貨、50円硬貨、5円硬貨、100円硬貨、10円硬貨および500円硬貨にかかるものを示すものとする。
【0024】(硬貨処理部の構成:金種別収納筒の内容)金種別収納筒303は金種毎に選別された硬貨をそれぞれ収納する。図3に示したように、硬貨処理部202には前部から背部方向にかけて、1円硬貨用、50円硬貨用、5円硬貨用、100円硬貨用、10円硬貨用、500円硬貨用の金種別収納筒303(303a〜303f)が横並びに設置されている。また、図4から明らかなように、金種別収納筒303は、約5°程度傾斜している。これは、後述するように硬貨を起立姿勢で整列収納する際に硬貨を安定させることができるためである。
【0025】金種別収納筒303は、硬貨を起立姿勢で整列収納する。これは、金種別収納筒303を図示しないモータにより回転させることによりおこなう。このモータはその回転力を金種別収納筒303に設けられた歯車331によりすべての金種別収納筒303にカスケード的に伝達する。このような構成にすることにより、6本の金種別収納筒303を単一のモータで回転させることができ、駆動系の簡素化が図れ、硬貨処理部202を小型化することが可能となる。
【0026】なお、金種別収納筒303の内周面には、螺旋形状の突条が設けられている。詳細な説明は省略するが、突条の設けられた金種別収納筒303が回転することにより、硬貨が硬貨繰出部304側に寄せられ起立姿勢で整列収納される。
【0027】(硬貨処理部の構成:硬貨繰出部の内容)硬貨繰出部304は、金種別収納筒303の端に設けられ、硬貨を金種別に1枚ずつ繰り出す。繰出機構については様々な方法を採用できるが、たとえば硬貨をせき止める堰止板341と、後述の搬送ベルト351まで跳ね上げる跳上爪342とを設けるようにしてもよい。このとき跳上爪342の動作回数により出金枚数をカウントすることができる。また、これに限らず、金種別収納筒303の回転により跳上爪を出して硬貨を跳ね上げ、跳ね上がった硬貨をセンサが検知することにより出金枚数をカウントしてもよい。
【0028】(硬貨処理部の構成:出金搬送部の内容)出金搬送部305は、各硬貨繰出部304のそれぞれから繰り出された硬貨を起立させたまま搬送する搬送ベルト351と、搬送ベルト351を駆動するモータ352と、モータ352の駆動力を搬送ベルト351に伝達する伝達ベルト353とから構成される。また、搬送ベルト351には、起立した硬貨が慣性力で回転して硬貨繰出部304付近で停滞しないように硬貨止354が多数設けられており、これにより、高速搬送が可能となる。また、搬送ベルト351のベルト幅は最小径を有する1円硬貨の径よりも小さくして、繰り出された硬貨を起立させたまま搬送する。これにより、硬貨処理部202を小型化することが可能となる。
【0029】このように、硬貨処理部202は、硬貨収納方式として略水平の金種別収納筒303を採用し硬貨を整列収納するので装置高さの低減を図ることができる。また、金種別に収納筒が設けられているので金種区別なく硬貨を収納する場合に比し出金速度を早めることが可能となる。
【0030】(紙幣処理部)なお、図示は省略するが、紙幣処理部201は、紙幣投入口102に投入された紙幣を釣銭機101の背部方向へ送出する紙幣送出部と、送出された紙幣の金種を検知する入金検知センサと、送出された紙幣を金種区別なく積層載置する紙幣収納庫と、紙幣収納庫の下部から紙幣を1枚ずつ繰り出す繰出ローラと、繰り出した紙幣の金種を検知する出金検知センサと、繰り出された紙幣を紙幣払出口103へ送出するか、再び紙幣収納庫に合流させる循環路に送出するかを切り替える切替ゲートとを備える。
【0031】金種区別なく紙幣を格納する紙幣収納庫を設けることにより紙幣処理部201を小型化することが可能となる。また、入金検知センサと出金検知センサとを備えるため、紙幣を1枚ずつ分離して投入すれば、釣銭機101内の在高を把握することが可能となる。また、紙幣が束で投入された場合にあっては、精査処理により正確な在高把握することができる。なお、紙幣処理部201の具体的構成は、たとえば出願人がすでに出願済みの特願平8−194494号(特開平10−40437号公報)に記載されているような周知の技術を用いることにより実現可能である。したがって、紙幣処理部201の詳細な説明については省略する。
【0032】(釣銭機制御部の構成)つぎに、釣銭機制御部203の構成について説明する。図5は、釣銭機制御部203の構成の一例を示したブロック図である。図に示したように、釣銭機制御部203は、図示しないPOS端末装置と接続して金額情報を送受信するモデムなどからなる通信部501と、紙幣処理部201の動作を制御する紙幣処理制御部502と、硬貨処理部202の動作を制御する硬貨処理制御部503と、記憶部504と、これら各部を統括制御するCPUなどからなる中央制御部505とを備える。
【0033】記憶部504は、釣銭機101内の金額情報を逐次記憶するRAMなどからなる金額情報記憶部506と、中央制御部505を介して通信部501を制御するプログラムが内蔵されたROMやハードディスクなどからなる通信プログラム格納部507と、硬貨もしくは紙幣の出金処理の際の通貨の組合せを決定するプログラムもしくは参照テーブルおよび処理プログラムが記録されたROMなどからなる出金制御プログラム508とを有する。
【0034】通信プログラム格納部507は、釣銭機101が、電子メール機能、FTP機能、Webサーバ機能を果たすべく通信プログラムを格納する。このような各種機能をもつことにより、釣銭機101は、たとえば、あらかじめ設定した時刻に金額情報を電子メール送信し、遠隔地にいる釣銭機の管理者の便に資する。
【0035】金額情報記憶部506は、前述した金額情報を記憶する。たとえば、紙幣投入口102および硬貨投入口104より入金された通貨の額、すなわち入金金額と、紙幣払出口103および硬貨払出口105より出金された通貨の額、すなわち出金金額とを記憶し、また、必要に応じて両者を差し引いた金額、すなわち在高も記憶する。
【0036】(釣銭機制御部の構成:硬貨処理制御部の内容)つぎに、硬貨処理制御部503の処理内容について説明する。硬貨処理制御部503は、硬貨処理部202の動作を制御する。特に釣銭の出金に関しては、通信部501から入力された金額情報のうち、硬貨の釣銭に関する情報に基づいて、所定種類の硬貨を所定枚数、所定の順序で出金する制御をおこなう。具体的には、硬貨処理制御部503は、図3に示したモータ324やモータ352および金種別収納筒303を回転するモータ(図示せず)の制御や跳上爪342などの動作制御をおこなう。
【0037】ここで、硬貨の出金制御の流れをフローチャートを用いて説明する。図6は、硬貨の出金制御の一例を示したフローチャートである。硬貨処理制御部503は、出金指示があったか否かを判断する(ステップS601)。これは、通信部501および中央制御部505を介してPOS端末装置からの釣銭の金額情報を入力することによりおこなう。続いて、出金すべき金種およびその枚数を決定する(ステップS602)。POSシステムによっては金種および枚数がPOS端末装置側から指示されるので、この場合はその指示にしたがい後述する繰出動作をおこなってもよい。
【0038】一方、釣銭金額のみが入力される場合は、硬貨処理制御部503が出金制御プログラム508にしたがって出金すべき金種およびその枚数を決定する。たとえば、釣銭が896円である場合を考える。硬貨処理制御部503は、釣銭枚数が最も少なくなるように金種を決定する。この場合は、500円硬貨×1枚、100円硬貨×3枚、50円硬貨×1枚、10円硬貨×4枚、5円硬貨×1枚、1円硬貨×1枚、という組合せとなる。
【0039】なお、ある金種の釣銭がなくなった場合は、同額の代替硬貨を決定する。上記の例では、5円硬貨がなくなってしまっていた場合は、1円硬貨×6枚、という組合せを決定する。このような、釣銭枚数が最も少なくなる金種の決定のアルゴリズムや代替硬貨を決定するアルゴリズムは、出金制御プログラム508に格納されている。
【0040】なお、硬貨の不足は、釣銭準備金として格納した金種毎の枚数と、入出金した金種毎の枚数を記憶することにより認識することができる。この情報は、金額情報記憶部506に随時格納する。なお、使用の態様によっては、随時金種毎の在高を通信部501を通じてPOS端末装置に送信してもよい。このときは5円硬貨がなくなっていることをPOS端末装置が把握できるので、POS端末装置の指示により1円硬貨を6枚出金してもよい。
【0041】つぎに、硬貨処理制御部503は、金種別収納筒303および搬送ベルト351を回転し(ステップS603)、跳上爪342により所定枚数の硬貨を繰り出して(ステップS604)、硬貨を搬送する。図7には、100円硬貨の繰出例を示した。硬貨の繰出態様によっては金種別収納筒303を回転させなくてもよい。硬貨の繰出順序は、大きさ順、すなわち、500円硬貨、10円硬貨、100円硬貨、5円硬貨、50円硬貨、1円硬貨の順に出金する。図8には、10円硬貨の搬送後に5円硬貨を繰り出した様子を示した。このように出金すると、硬貨保留筒151(図1参照)においては大きさ順に硬貨が平積みされ、客に綺麗に揃った釣銭硬貨を渡すことができる。
【0042】硬貨の出金順序については、これに限ることなく、たとえば、金額順、すなわち、500円硬貨、100円硬貨、50円硬貨、10円硬貨、5円硬貨、1円硬貨の順に出金してもよい。このように並べられた釣銭により、客は、より短時間で釣銭額を正確に把握することが可能となる。
【0043】つぎに、すべての釣銭硬貨を搬送し終えたかを判断する(ステップS605)。この判断は、たとえば、搬送ベルト351の下流にセンサを設けておくことにより検知することができる。また、搬送されて出金される時間の上限はあらかじめわかっているので、搬送されて出金されたであろう時間をマージンをもって設定しておき、この時間の経過により硬貨を搬送し終えたと判断させてもよい。
【0044】すべて搬送が終わったと検知した場合(ステップS605:YES)、金種別収納筒303および搬送ベルト351の回転を停止し(ステップS606)、出金処理を終了する。このように、釣銭機制御部203は、釣銭の出金の制御をおこない、釣銭硬貨を金種別に繰り出して速やかに硬貨保留筒151に平積みすることが可能となる。
【0045】(硬貨保留筒・吐出筒の内容)つぎに、硬貨保留筒151および吐出筒152について説明する。釣銭機制御部203の制御の下、硬貨繰出部304で繰り出され、搬送ベルト351で搬送された硬貨は硬貨保留筒151に落下し平積み載置される。硬貨保留筒151は、現在流通している硬貨のうち最大径を有する500円硬貨より若干大きな径を有する円筒形状の筒である。搬送ベルト351で起立姿勢を保ち搬送された硬貨は硬貨保留筒151の内部側面に当たって落下し、倒伏する(図7、図8参照)。
【0046】図9は、硬貨保留筒151および吐出筒152の断面の一例を示した図である。図に示したように、硬貨保留筒151の内部側面901および硬貨を保持する底板902には、騒音防止および制動を目的としてゴムなどの緩衝材903が張り付けられている。
【0047】底板902と吐出筒152との間には、連結棒904が設けられている。連結棒904の節部分には、図示しないコイルバネが設けられており、当該コイルバネによって連結棒904が上方に付勢されている。この連結棒904は、吐出筒152が上部に持ち上げられることに連動して、底板902を硬貨保留筒151と吐出筒152との間に引き込む。これにより、硬貨保留筒151の底部が解放され、平積みされた硬貨が塊となって吐出される。
【0048】図10は、吐出筒152が下に下がった状態を示した模式図であり、図11は吐出筒152が持ち上げられて、硬貨が吐出される様子を示した模式図である。なお、硬貨の出金順序を決めず、任意の状態で吐出筒152に保持し、これらをまとめて吐出するようにしてもよい。また、硬貨を吐出する機構はこれに限ることなく、カメラの絞りのように複数の羽根板を組み合わせて、これを吐出筒152の上下に連動させる機構であってもよい。
【0049】また、吐出筒152は人の手により持ち上げられるが、このような構成に限ることなく、吐出筒152を設けないで、硬貨保留筒151の底板902に人の手が差し出されたことをセンサにより検知して、平積みされた硬貨を吐出する態様であってもよい。
【0050】なお、硬貨は、搬送ベルト351から順次短時間で送出される。このとき底板902が水平であると、落下した硬貨はどの方向にも同等に踊り跳ねるので、落下した硬貨が相互に干渉し合って、平積みされない場合が生じうる。したがって、底板902は、水平から所定の角度傾いた傾斜面を構成してもよい。このようにすることで、硬貨が落下した際の暴れが低減され、硬貨を速やかに傾斜方向に倒伏させることが可能となる。
【0051】なお、以上の例では、紙幣処理部201を設けた紙幣処理付の釣銭機101について説明したが、これに限ることなく、この発明の釣銭機は、硬貨のみを処理する釣銭機に適用したものであってもよい。また、釣銭機101は、金種別収納筒303を備えた、いわゆるチューブ式収納庫を備えた釣銭機であるが、この発明の釣銭機はこれに限ることなく、他の方式、たとえばベルト搬送方式を備えた釣銭機に適用したものであってもよい。
【0052】以上の例では、主として会計場に設置する釣銭機について説明したが、これに限ることなく、この発明の釣銭機は、たとえば、缶ジュースやたばこなどの自動販売機や、券売機にも適用することができる。従来の自動販売機や券売機では、硬貨の払出口にカバーが掛けられ、釣銭を全部取り終えたかの確認が必要な場合もあり、釣銭の受け取りが面倒であった。しかしながら、本実施の形態で説明した釣銭機を内蔵することにより、簡便にかつ綺麗に揃った釣銭を受け取ることが可能となる。
【0053】以上説明したように、本実施の形態の釣銭機は、釣銭機制御部203により硬貨の繰出順序を制御し、硬貨保留筒151および吐出筒152により金種毎に平積みされた硬貨を出金できる。したがって、釣銭機101の操作者は短時間に釣銭の最終確認ができるとともに、客に綺麗に揃った釣銭を渡すことができる。一方、客は渡された釣銭を短時間に確認できるとともに、綺麗に揃った釣銭が渡されるので、操作者(店員)や店に対して不要な緊張感や不満感を抱くことなく心地よく会計処理を終えることができる。
【0054】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1に記載の発明によれば、入金手段が釣銭準備金および/または預り金を入金し、釣銭情報入力手段が釣銭の金額情報を入力し、出金手段が前記釣銭情報入力手段により入力された金額の通貨を、前記入金手段により入金された通貨から出金し、出金硬貨決定手段が前記入金手段により入金された通貨のうち前記出金手段により出金すべき硬貨の種類と枚数を前記釣銭情報入力手段により入力された金額情報に基づいて決定し、硬貨繰出手段が前記出金硬貨決定手段により決定された所定種類の所定枚数の硬貨を、大きさ順もしくは金額順に繰り出し、平積手段が前記硬貨繰出手段により繰り出された硬貨を平積みし、吐出手段が前記平積手段により平積みされた硬貨を平積みされた状態で前記出金手段から吐出するので、釣銭を大きさ順もしくは金額順に重なった状態で出金することができ、これにより、出金された釣銭の金額を短時間で確認することが可能な釣銭機が得られるという効果を奏する。
【0055】また、請求項2に記載の発明によれば、金種別格納手段が前記入金手段により入金された通貨のうち硬貨を金種別に格納し、前記硬貨繰出手段が前記出金硬貨決定手段により決定された所定種類の所定枚数の硬貨を、前記金種別格納手段により格納された硬貨から大きさ順もしくは金額順に繰り出すので、硬貨を速やかに繰り出して平積みすることができ、これにより、出金された釣銭の金額を短時間で確認することが可能な釣銭機が得られるという効果を奏する。
【0056】また、請求項3に記載の発明によれば、前記平積手段が、最大径を有する種類の硬貨の径と同程度の径を有する鉛直方向に延びた筒形状の側面部と、当該側面部の下部に配置され底を形成する底部と、を有するので、硬貨を簡易に平積みすることができ、これにより、出金された釣銭の金額を短時間で確認することが可能な釣銭機が得られるという効果を奏する。
【0057】また、請求項4に記載の発明によれば、前記吐出手段が解放手段を有し、当該解放手段が前記底部を移動させ前記側面部の下部を解放するので、平積みされた硬貨を平積みした状態で簡易に出金することができ、これにより、出金された釣銭の金額を短時間で確認することが可能な釣銭機が得られるという効果を奏する。
【0058】また、請求項5に記載の発明によれば、前記側面部および/または底部の全部または一部を緩衝材で被覆したので、硬貨の暴れを低減して速やかに硬貨を平積みすることができ、これにより、出金された釣銭の金額を短時間で確認することが可能な釣銭機が得られるという効果を奏する。
【0059】また、請求項6に記載の発明によれば、前記底部が水平から所定の角度傾斜した平面からなるので、硬貨の暴れを低減して速やかに硬貨を平積みすることができ、これにより、出金された釣銭の金額を短時間で確認することが可能な釣銭機が得られるという効果を奏する。
【0060】また、請求項7に記載の発明によれば、釣銭準備金および/または預り金を入金する入金手段と、釣銭の金額情報を入力する釣銭情報入力手段と、前記釣銭情報入力手段により入力された金額の通貨を、前記入金手段により入金された硬貨から出金する出金手段と、を有する釣銭機において、前記釣銭情報入力手段からの入力情報に基づいて前記出金手段により硬貨を出金し、この出金した釣銭を保留すると共に開閉可能な底板を設けた硬貨保留筒と、当該硬貨保留筒に対しその軸に沿って相対移動する吐出筒と、当該吐出筒の昇降動作に連動して前記硬貨保留筒の底板を開閉する開閉機構とを具備したので、お客もしくは店員などの操作者がワンアクションで釣銭を取ることが可能な釣銭機が得られるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態にかかる釣銭機の外観構成の一例を示した斜視図である。
【図2】本実施の形態にかかる釣銭機のハードウエアの概略構成の一例を示したブロック図である。
【図3】本実施の形態にかかる釣銭機の硬貨処理部のハードウエア構成の一例を示した平面図である。
【図4】本実施の形態にかかる釣銭機の硬貨処理部のハードウエア構成の一例を示した正面図である。
【図5】本実施の形態にかかる釣銭機制御部の構成の一例を示したブロック図である。
【図6】本実施の形態にかかる釣銭機の硬貨の出金制御の一例を示したフローチャートである。
【図7】本実施の形態にかかる釣銭機において100円硬貨の繰出例を示した図である。
【図8】本実施の形態にかかる釣銭機において10円硬貨の搬送後に5円硬貨を繰り出した様子を示した図である。
【図9】本実施の形態にかかる釣銭機の硬貨保留筒および吐出筒の断面の一例を示した図である。
【図10】本実施の形態にかかる釣銭機において吐出筒が下に下がった状態を示した模式図である。
【図11】本実施の形態にかかる釣銭機において吐出筒が持ち上げられて、硬貨が吐出される様子を示した模式図である。
【図12】従来の釣銭機の外観構成の一例を示した斜視図である。
【符号の説明】
101 釣銭機
102 紙幣投入口
103 紙幣払出口
104 硬貨投入口
105 硬貨払出口
106 通信ケーブル
107 ディスプレイ
108 操作パネル
151 硬貨保留筒
152 吐出筒
201 紙幣処理部
202 硬貨処理部
203 釣銭機制御部
301 硬貨送出部
302 硬貨選別部
303 金種別収納筒
304 硬貨繰出部
305 出金搬送部
321 搬送ベルト
322 選別穴
323 滑落シュート
341 堰止板
342 跳上爪
351 搬送ベルト
354 硬貨止
501 通信部
502 紙幣処理制御部
503 硬貨処理制御部
504 記憶部
505 中央制御部
506 金額情報記憶部
507 通信プログラム格納部
508 出金制御プログラム
901 内部側面
902 底板
903 緩衝材
904 連結棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】 釣銭準備金および/または預り金を入金する入金手段と、釣銭の金額情報を入力する釣銭情報入力手段と、前記釣銭情報入力手段により入力された金額の通貨を、前記入金手段により入金された通貨から出金する出金手段と、を有する釣銭機において、前記入金手段により入金された通貨のうち前記出金手段により出金すべき硬貨の種類と枚数を前記釣銭情報入力手段により入力された金額情報に基づいて決定する出金硬貨決定手段と、前記出金硬貨決定手段により決定された所定種類の所定枚数の硬貨を、大きさ順もしくは金額順に繰り出す硬貨繰出手段と、前記硬貨繰出手段により繰り出された硬貨を平積みする平積手段と、前記平積手段により平積みされた硬貨を平積みされた状態で前記出金手段から吐出させる吐出手段と、を具備したことを特徴とする釣銭機。
【請求項2】 前記入金手段により入金された通貨のうち硬貨を金種別に格納する金種別格納手段を具備し、前記硬貨繰出手段は、前記出金硬貨決定手段により決定された所定種類の所定枚数の硬貨を、前記金種別格納手段により格納された硬貨から大きさ順もしくは金額順に繰り出すことを特徴とする請求項1に記載の釣銭機。
【請求項3】 前記平積手段は、最大径を有する種類の硬貨の径と同程度の径を有する鉛直方向に延びた筒形状の側面部と、当該側面部の下部に配置され底を形成する底部と、から構成されたことを特徴とする請求項1に記載の釣銭機。
【請求項4】 前記吐出手段は、前記底部を移動させ前記側面部の下部を解放する解放手段を具備したことを特徴とする請求項3に記載の釣銭機。
【請求項5】 前記側面部および/または底部の全部または一部を緩衝材で被覆したことを特徴とする請求項3または4に記載の釣銭機。
【請求項6】 前記底部が水平から所定の角度傾斜した平面からなることを特徴とする請求項3または4に記載の釣銭機。
【請求項7】 釣銭準備金および/または預り金を入金する入金手段と、釣銭の金額情報を入力する釣銭情報入力手段と、前記釣銭情報入力手段により入力された金額の通貨を、前記入金手段により入金された硬貨から出金する出金手段と、を有する釣銭機において、前記釣銭情報入力手段からの入力情報に基づいて前記出金手段により硬貨を出金し、この出金した釣銭を保留すると共に開閉可能な底板を設けた硬貨保留筒と、当該硬貨保留筒に対しその軸に沿って相対移動する吐出筒と、当該吐出筒の昇降動作に連動して前記硬貨保留筒の底板を開閉する開閉機構と、を具備したことを特徴とする釣銭機。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2001−351136(P2001−351136A)
【公開日】平成13年12月21日(2001.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−174063(P2000−174063)
【出願日】平成12年6月9日(2000.6.9)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【出願人】(000237710)富士電機冷機株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】