鉄基焼結鋼材およびその製造方法
【課題】低コストと機械的特性を両立できる鉄基焼結鋼材を提供する。
【解決手段】本発明の鉄基焼結鋼材は、Feを主成分とする原料粉末を加圧成形した成形体を焼結させた焼結体からなる鉄基焼結鋼材であって、全体を100質量%としたときに、0.05〜0.6質量%のVと、0.1〜1.0質量%のCと、残部であるFeおよび不可避不純物とからなることを特徴とする。本発明の鉄基焼結鋼材は、Vが少量なため、焼結時間が短くても基地中に拡散し易く、フェライト相とパーライト相が全体的に細粒化した金属組織を呈する。この結果、本発明の鉄基焼結鋼材は、低コストでありながら、従来と同等以上の優れた機械的特性を発現し得る。
【解決手段】本発明の鉄基焼結鋼材は、Feを主成分とする原料粉末を加圧成形した成形体を焼結させた焼結体からなる鉄基焼結鋼材であって、全体を100質量%としたときに、0.05〜0.6質量%のVと、0.1〜1.0質量%のCと、残部であるFeおよび不可避不純物とからなることを特徴とする。本発明の鉄基焼結鋼材は、Vが少量なため、焼結時間が短くても基地中に拡散し易く、フェライト相とパーライト相が全体的に細粒化した金属組織を呈する。この結果、本発明の鉄基焼結鋼材は、低コストでありながら、従来と同等以上の優れた機械的特性を発現し得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境負荷低減やコスト低減と機械的特性の確保とを両立し得る鉄基焼結鋼材およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各部材の製造コストを削減するために、鉄系粉末の成形体を焼結させた素材または部材(以下単に「鉄基焼結鋼材」という。)が利用される。この鉄基焼結鋼材は最終形状に近いため、機械加工の削減や歩留りの向上等によって製造コストを低減し得る。
【0003】
これまでの鉄基焼結鋼材は、強度等の機械的特性を確保するために、種々の合金元素を多く含有していた。特に銅(Cu)やニッケル(Ni)は、鉄基焼結鋼材にとってほぼ必須元素のように考えられていた。しかし、合金元素量の増加は鉄基焼結鋼材の材料コストを上昇させる。また、鉄系スクラップのリサイクル性を阻害するCuやアレルギー性元素であるNiの使用は好ましくはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭58−10962号公報
【特許文献2】特許3446322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献には、Cu、Niや他の合金元素の含有量を抑制した鉄基焼結鋼材用の合金粉が提案されている。しかし、これらの合金粉でも、未だクロム(Cr)やモリブデン(Mo)の含有量が多く、少量ながら多種の合金元素を含有している。
【0006】
本発明はこのような事情のもと、使用する合金元素の種類および量を制限して、原料コストを含む製造コストを一層低減しつつ、高強度を維持できる鉄基焼結鋼材を提供することを目的とする。また、その鉄基焼結鋼材の製造に適した製造方法を併せて提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、適量の炭素(C)が存在することを前提に、少量のバナジウム(V)を加えるだけでも、高強度の鉄基焼結鋼材が得られることを新たに見出した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明が完成するに至った。
【0008】
《鉄基焼結鋼材》
(1)本発明の鉄基焼結鋼材は、Feを主成分とする原料粉末を加圧成形した成形体を焼結させた焼結体からなる鉄基焼結鋼材であって、全体を100質量%としたときに、0.05〜0.6質量%のVと、0.1〜1.0質量%のCと、残部であるFeおよび不可避不純物と、からなることを特徴とする。
【0009】
(2)本発明によれば、主成分であるFe以外の元素が適量のCと少量のVのみであっても、少なくとも強度が従来の焼結鋼材と同等以上で、相応の伸びを有する鉄基焼結鋼材が得られる。この鉄基焼結鋼材によれば、原料コストを含む製造コストの削減と、機械的特性の確保との両立が図られる。勿論、本発明の鉄基焼結鋼材はCuやNi等を実質的に含まないので、スクラップ材のリサイクル性の向上と環境負荷の低減とを図れる。
【0010】
(3)もっとも本発明の鉄基焼結鋼材が優れた機械的特性を発現するメカニズム等は必ずしも定かではない。現状では次のように考えられる。本発明者が鉄基焼結鋼の金属組織を顕微鏡観察したところ、微細化したパーライト相と小径化したフェライト相とが観察された。これは、Vが鉄基焼結鋼の基地中にバナジウム炭化物(VC)として微細にかつ均一に析出したためと考えられる。なお、Vは少量のため、仮に焼結時間が短い場合でも偏析することなく、基地中に均一に拡散して鉄基焼結鋼材を均質的に高強度化する。
【0011】
(4)このようなVの効果は、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)またはケイ素(Si)の一種以上が共存する場合でも発現し得る。さらにいえば、Vが、Mo、MnまたはSiの一種以上と共存することによって、鉄基焼結鋼材の機械的特性は一層向上し得る。
【0012】
原料コスト低減の観点から、これら合金元素の合計量(V+Mo+Mn+Si)を、鉄基焼結鋼材全体を100質量%としたときに高々1.5質量%以下、1.2質量%以下、1質量%以下さらには0.8質量%以下としても、鉄基焼結鋼材は十分な機械的特性を発現する。なお、単に総量規制だけではなく、高価なVやMoの一部を安価なMnやSiで置換すれば、原料コストのさらなる低減が可能となり、従来と同等以上の鉄基焼結鋼材をより一層安価に提供可能となる。なお、本明細書では、特に断らない限り、組成に関して質量%を用い、以降では単に「%」と表記する。
【0013】
《鉄基焼結鋼材の製造方法》
本発明は上述の鉄基焼結鋼材のみならず、その製造方法としても把握できる。すなわち本発明は、原料粉末を加圧成形した成形体を得る成形工程と、該成形体を酸化防止雰囲気で加熱して焼結体を得る焼結工程とを備え、上述の鉄基焼結鋼材が得られることを特徴とする鉄基焼結鋼材の製造方法でもよい。
【0014】
《その他》
(1)本明細書でいう「不可避不純物」は、原料粉末中にまたは鉄基焼結鋼材中に含まれるFe、C、V、Mo、MnおよびSi以外の元素である。このような元素は種々あり、元素の種類により含有許容量(上限値)は異なる。
【0015】
例えば、リン(P):0.03%以下、硫黄(S):0.03%以下、クロム(Cr):0.1%以下、アルミニウム(Al):0.1%以下、ニオブ(Nb):0.1%以下、コバルト(Co):0.1%以下、銅(Cu):0.2%以下、ニッケル(Ni):0.1%以下、タングステン(W):0.1%以下、酸素(O):0.25%以下、ホウ素(B):0.03%以下等である。
【0016】
また本発明に係る原料粉末または鉄基焼結鋼材は、Fe、C、V、Mo、MnおよびSi以外に、鉄基焼結鋼材の特性を改善し得る有効な元素(改質元素)を含み得る。改善される特性は問わないが、例えば、強度、靱性、延性、寸法安定性等である。改質元素の種類、組合せ、組成等は任意である。もっとも、コスト低減の観点から改質元素は微量であると好ましい。なお、改質元素は、不可避不純物として例示した元素(例えばCr等)であってもよい。
【0017】
(2)本発明の「鉄基焼結鋼材」は、その形態を問わず、鉄基焼結鋼からなる素材または部材の両方を含む。鉄基焼結鋼からなる素材は、例えば、バルク状、棒状、管状、板状等がある。鉄基焼結鋼からなる部材は、最終製品でもそれに近い製品でも良い。
【0018】
(3)鉄基焼結鋼材の「機械的特性」には種々あるが、引張強さや伸びが代表的である。本発明の鉄基焼結鋼材の引張強さは、例えば、600MPa以上、700MPa以上、800MPa以上、850MPa以上さらには900MPa以上であると好ましい。また本発明の鉄基焼結鋼材の伸びは、例えば、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上さらには6%以上であると好ましい。
【0019】
(4)特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の下限値または上限値は、任意に組合わされて「a〜b」のような範囲を構成し得る。さらに本明細書に記載した数値範囲内の任意の数値を上限値または下限値として、新たな数値範囲を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】試料No.1−1の金属顕微鏡写真である。
【図1B】試料No.1−4の金属顕微鏡写真である。
【図1C】試料No.1−27の金属顕微鏡写真である。
【図2A】V量の異なる各試料(焼結温度:1150℃)の引張強さとMo量との関係を示すグラフである。
【図2B】V量の異なる各試料(焼結温度:1150℃)の伸びとMo量との関係を示すグラフである。
【図3A】V量の異なる各試料(焼結温度:1250℃)の引張強さとMo量との関係を示すグラフである。
【図3B】V量の異なる各試料(焼結温度:1250℃)の伸びとMo量との関係を示すグラフである。
【図4A】V量およびGr量の異なる各試料(焼結温度:1150℃)の引張強さとMo量との関係を示すグラフである。
【図4B】V量およびGr量の異なる各試料(焼結温度:1150℃)の伸びとMo量との関係を示すグラフである。
【図5A】V量およびGr量の異なる各試料(焼結温度:1250℃)の引張強さとMo量との関係を示すグラフである。
【図5B】V量およびGr量の異なる各試料(焼結温度:1250℃)の伸びとMo量との関係を示すグラフである。
【図6A】Mo/V量の異なる各試料の引張強さを対比した棒グラフである。
【図6B】Mo/V量の異なる各試料の伸びを対比した棒グラフである。
【図7A】(Mn+Si)/V量の異なる各試料の引張強さを対比した棒グラフである。
【図7B】(Mn+Si)/V量の異なる各試料の伸びを対比した棒グラフである。
【図8A】(Mn+Si)/Mo量の異なる各試料(V:0.1%)の引張強さを対比した棒グラフである。
【図8B】(Mn+Si)/Mo量の異なる各試料(V:0.1%)の伸びを対比した棒グラフである。
【図9A】(Mn+Si)/Mo量の異なる各試料(V:0.2%)の引張強さを対比した棒グラフである。
【図9B】(Mn+Si)/Mo量の異なる各試料(V:0.2%)の伸びを対比した棒グラフである。
【図10A】成形圧力および冷却速度の異なる各試料(焼結温度:1150℃)の引張強さとMo/V量との関係を示すグラフである。
【図10B】成形圧力および冷却速度の異なる各試料(焼結温度:1150℃)の伸びとMo/V量との関係を示すグラフである。
【図11A】成形圧力および冷却速度の異なる各試料(焼結温度:1250℃)の引張強さとMo/V量との関係を示すグラフである。
【図11B】成形圧力および冷却速度の異なる各試料(焼結温度:1250℃)の伸びとMo/V量との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0021】
F フェライト相
P パーライト相
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の実施形態を挙げて本発明をより詳しく説明する。なお、以下の実施形態を含めて本明細書で説明する内容は、本発明に係る鉄基焼結鋼材のみならず、その製造方法にも適宜適用され得る。製造方法に関する構成は、プロダクトバイプロセスとして理解すれば物に関する構成ともなり得る。本明細書中から任意に抽出した一つまたは二つ以上の構成は、上述した本発明の構成に付加され得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
【0023】
《原料粉末》
(1)本発明の鉄基焼結鋼材は、原料粉末の成形体を焼結させてなる。この原料粉末は単種の粉末でも複数種の粉末からなる混合粉末でもよい。原料粉末が混合粉末である場合、純鉄粉、低合金鋼粉、バナジウム炭化物粉、モリブデン炭化物粉、グラファイト(Gr)粉、Fe−Mn−Si合金粉(FeMS粉)、Fe−Mn−Si−C合金粉(FeMSC粉)等を用いて、鉄基焼結鋼材の所望組成に配合される。
【0024】
各粉末の粒径は問わないが、鉄基焼結鋼材の成形性(高密度化)や取扱性等から、ベースとなる純鉄粉や低合金鋼粉は80〜100μm、各炭化物粉、Gr粉、FeMS粉、FeMSC粉は1〜10μmであると好ましい。ちなみに、ここでいう粒径は、粒子を一定の粒径間隔ごとに質量割合で表した粒子の頻度曲線において、累積重量割合の50%となるD50により特定される。
【0025】
(2)原料粉末は、鉄基焼結鋼材の機械的特性(特に引張強さ)の確保と原料コストの低減の観点から調製されると好ましい。原料粉末中のVは、原料粉末全体を100質量%としたときに、0.05〜0.6%、0.1〜0.5%、0.15〜0.4%さらには0.2〜0.35%であるとより好ましい。
【0026】
このような範囲内のVと共に、Mo、MnまたはSiが鉄基焼結鋼材中に共存していると、その金属組織(フェライト相やパーライト相)の微細化、機械的特性の向上をさらに図り得る。具体的にいうと、原料粉末全体を100質量%として、Moは0.05〜0.5%、0.1〜0.45%、0.15〜0.4%さらには0.25〜0.35%であると好ましい。Mnは0.03〜0.6%、0.1〜0.5%さらには0.2〜0.4%であると好ましい。Siは0.01〜0.2%、0.03〜0.15%さらには0.05〜0.1%であると好ましい。いずれの場合も、各元素が過少ではその効果が十分に得られず、過多では原料コストが増大する。
【0027】
但し、VやMoに比較して、MnやSiは鋼の一般的な合金元素であり、安価で入手も容易である。従って、鉄基焼結鋼材の所望特性の確保を前提に、MnやSiの配合量を増加させつつ、VやMoの配合量を減少させると好適である。ちなみに、MnおよびSiの供給源として、単体粉末を用いても良いが、FeMS粉等を用いると原料コストの低減を図れる。このようにMnとSiを同時添加する場合なら、原料粉末全体を100質量%としたときに、それらの合計(Mn+Si)が0.1〜0.8%、0.2〜0.7%さらには0.25〜0.6%であると好ましい。
【0028】
《製造工程》
本発明の鉄基焼結鋼材は、主に成形工程と焼結工程を経て得られる。以下、これら工程について説明する。
【0029】
(1)成形工程
成形工程は、上述の原料粉末を加圧成形した成形体を得る工程である。成形圧力の調整により、成形体密度(ひいては鉄基焼結鋼材の密度)を調整し得る。この成形圧力は、例えば、400MPa以上、500MPa以上、600MPaさらには700MPa以上と高くなるほど、成形体ひいては鉄基焼結鋼材の高密度化を図れる。成形工程は、冷間成形(室温成形)でも温間成形でも良い。また、原料粉末中に内部潤滑剤を添加しても良い。なお、本明細書では、内部潤滑剤を原料粉末に含めて考える。
【0030】
ところで、金型寿命を確保しつつ高圧成形する際は、金型潤滑温間加圧成形法(詳細は特許3309970号公報等を参照)を用いると良い。この成形方法によれば、成形圧力が700MPa程度の場合は勿論、800MPa以上、900MPa以上さらには1000MPa以上といった超高圧成形も容易に行える。しかも金型潤滑温間加圧成形法は、内部潤滑剤を使用する必要がないので、得られた成形体を焼結した際に炉内が汚染等されることもなく、環境性能に優れる。
【0031】
(2)焼結工程
焼結工程は、成形体を加熱して焼結体を得る工程である。焼結温度および焼結時間は、鉄基焼結鋼材の所望特性、生産性等を考慮して適宜選択されるが、それらが過大ではエネルギーコストが増大し、それらが過小では機械的特性の確保が困難となる。焼結温度は、例えば、1050℃〜1350℃以上さらには1100〜1300℃が好ましい。焼結時間は、例えば、0.1〜3時間さらには0.3〜1時間であると好ましい。
【0032】
焼結工程は酸化防止雰囲気でなされると好ましい。鉄基焼結鋼材中に酸化物が介在すると、その機械的特性が劣化し得るからである。酸化防止雰囲気には、例えば、真空雰囲気、不活性ガス雰囲気、窒素ガス雰囲気等がある。
【0033】
原料粉末が特に酸化され易いV、Mn若しくはSiを含む場合、焼結雰囲気はハイレベルな酸化防止雰囲気であると好ましい。このような酸化防止雰囲気として、例えば、窒素ガスに水素ガスを2〜5体積%程度混合した還元雰囲気がある。また水素ガスを使用しない場合なら、焼結雰囲気は、酸素分圧が10−19Pa以下(CO濃度で100ppm以下)に相当する極低酸素分圧の不活性ガス雰囲気であると好ましい。なお、この極低酸素分圧の不活性ガス(N2ガス)雰囲気は、例えば、関東冶金工業株式会社製オキシノン炉を用いて得られる。
【0034】
(3)冷却工程または焼入工程(シンターハードニング)
高温の焼結体を急冷する冷却工程を行ってもよい。これにより焼結体は焼入れ(シンターハードニング)され、さらに高強度化し得る。この工程は焼結工程に続けて行うと効率的である。具体的には次の通りである。
【0035】
焼結工程後の焼結体は、通常、A1変態点(約730℃)以上の高温状態となっている。この焼結体を、その高温域から室温域まで(Ms点以下まで)急冷する(冷却工程)。これにより焼結体は焼き入れ(シンターハードニング)される。その際の冷却速度は、25〜200℃/分(0.4〜3.3℃/秒)、40〜150℃/分(0.67〜2.5℃/秒)さらには80〜120℃/分(1.3〜2℃/秒)であると好ましい。冷却速度が過小では焼入れが不十分となり十分な高強度化を図れない。過大な冷却速度の実現は製造コストを上昇させる。
【0036】
《鉄基焼結鋼材》
(1)本発明の鉄基焼結鋼材は、要求仕様に応じて、焼鈍、焼準、時効、調質(焼き入れ、焼き戻し)、浸炭、窒化等の熱処理を適宜施して、金属組織の調整がなされても良い。
【0037】
(2)本発明の鉄基焼結鋼材は、その用途を問わないが、例えば、各種プーリー、変速機のシンクロハブ、エンジンのコンロッド、ハブスリーブ、スプロケット、リングギヤ、パーキングギヤ、ピニオンギヤ、サンギヤ、ドライブギヤ、ドリブンギヤ、リダクションギヤ等の素材や製品に用いることができる。
【実施例】
【0038】
実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
《試験片の製造》
(1)原料粉末の調製
原料粉末を調製するために、次の各種粉末を用意した。先ず、主たるFe源として純鉄粉(ヘガネスAB社製ASC100.29、粒径20〜180μm)、主たるC源として黒鉛(Gr)粉末(日本黒鉛社製JCPB、平均粒径は5μm以下)を用意した。次に、V源としてバナジウム炭化物(VC)粉末(日本新金属社製:粒度1〜3μm)、Mo源としてモリブデン炭化物(Mo2C)粉末(日本新金属社製:粒度1〜2μm)を用意した。さらに、Mn源およびSi源としてFe−65%Mn−16%Si−2%C粉末(東洋電化社製:5μm以下)を用意した。特に断らない限り、組成に関する「%」は質量%を意味する(以下同様)。
【0039】
これらの各種粉末を各表に示す組成となるように配合し、ボールミル式回転混合を30分間行って、試料毎に均一な混合粉末(原料粉末)を調製した。
【0040】
(2)成形工程
成形工程は、上述した金型潤滑温間加圧成形法により行った。具体的には以下の通りである。試験片の形状に応じたキャビティを有する超硬製金型を用意した。金型の内周面には予めTiNコート処理を施し、その表面粗さを0.4Zとした。金型はバンドヒータで予め150℃に加熱しておいた。加熱した金型の内周面に、高級脂肪酸系潤滑剤であるステアリン酸リチウム(LiSt)を分散させた水溶液を、スプレーガンにて1cm3/秒程度の割合で均一に塗布した(塗布工程)。これにより、金型の内周面には約1μm程度のLiStの被膜が形成された。
【0041】
なお、用いた水溶液は、界面活性剤と消泡剤とを添加した水に、LiStを分散させたものである。界面活性剤には、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO)6、(EO)10及びホウ酸エステルエマルボンT−80を用いた。それらを水溶液全体(100体積%)に対して1体積%ずつ添加した。消泡剤には、FSアンチフォーム80を用いた。これを水溶液全体(100体積%)に対して0.2体積%添加した。
【0042】
LiStには、融点が約225℃で、平均粒径が20μmのものを用いた。その分散量は上記の水溶液100cm3に対して25gとした。LiStを分散させた水溶液をさらにボールミル式粉砕装置で微細化処理(テフロンコート鋼球:100時間)した。こうして得られた原液を20倍に希釈した最終濃度1%の水溶液を、上記塗布工程に供した。
【0043】
LiStの均一な被膜が内面に形成された金型のキャビティへ、各原料粉末(予熱なし)を自然充填した(充填工程)。この原料粉末を各表に示す成形圧力(490〜784MPa)で成形した。得られた各成形体は、金型の内面にかじり等を生じることなく、低い抜出力で金型から容易に取出すことができた。
【0044】
(3)焼結工程
各成形体を、連続焼結炉(関東冶金工業製オキシノン炉)を用いて、1150℃または1250℃の窒素ガス雰囲気中で焼結させた(焼結工程)。均熱保持時間は30分とし、焼結後の冷却速度は100℃/min(1.67℃/秒)または50℃/min(0.83℃/秒)とした。なお、その焼結炉内は、露点−50〜−65℃程度のN2ガス雰囲気とした。こうして鉄基焼結鋼材からなる各試験片を得た。
【0045】
《測定》
(1)密度および寸法変化
各試料の円柱状試験片(φ23×7mm)を用いて、焼結体の重量と焼結前後の寸法(外径)を測定した。これらの測定値から、焼結体の密度と寸法変化(外径変化)を求め、それらの値を各表に併せて記載した。なお、各表に示した寸法変化は、100×{(焼結後の外径)−(焼結前の外径)}/(焼結前の外径)により求めた。
【0046】
(2)引張強さおよび伸び
各試料の平板状引張試験片(55×10×3mm)を用いて引張試験を行った。これにより、各試験片が破断するまでの強度(引張強さ)と伸びを求め、その値を各表に併せて記載した。
【0047】
(3)ヤング率
各試料の円柱状試験片(φ23×7mm)を用いて、超音波法によりヤング率を測定し、その値を各表に併せて記載した。なお超音波法は、縦波および横波のパルスエコーの伝播時間および円柱状試験片の厚さから求めた超音波の音速と、試験片の密度とからヤング率を算出する方法である。
【0048】
《評価》
〈金属組織〉
表1Aおよび表1B(両表を併せて単に「表1」という。)から抽出した試料の金属顕微鏡写真を図1A〜図1Cに示した。写真中、白色部分(F)はフェライト相を、灰色部分(P)はパーライト相を示す。
【0049】
Fe−0.6%Grの組織(図1A)は、フェライト相およびパーライト相が粗い。0.5%Vをさらに含む組織(図1B)では、パーライト相が微細化し、フェライト相も小径化している。0.3%Moをさらに含む組織、つまりV−Moの複合添加組織(図1C)では、フェライト相またはパーライト相がより微細化する傾向を示した。そして、金属組織がこのように微細化するほど、引張強さが大きくなることが表1からわかる。
【0050】
〈機械的特性〉
(1)表1に示した各試料(Gr:0.6%)の機械的特性(引張強さと伸び)を、図2A〜図3Bにグラフ化して示した。これから次のことがわかった。先ず、Vが0.1%程度でも加わると、引張強さが急激に度向上し、Vが0.5%に近づくほど引張強さは大きくなった。もっとも、引張強さの向上は、Vが0.5%程度で、ほぼ飽和する傾向となった。
【0051】
次に、このVによる強度向上効果は、Mo量が変化しても同様の傾向を示すが、Moが0.1〜0.6%さらには0.15〜0.5%で、極大傾向を示した。さらに、焼結温度が高いと引張強さは大きくなり、焼結温度が低いと伸びが安定して高くなった。
【0052】
(2)表1および表2から抽出した各試料(Gr:0.6%とGr:0.8%)の機械的特性(引張強さと伸び)を、図4A〜図5Bにグラフ化して示した。先ず、焼結温度が1150℃の場合でも1250℃の場合でも、Gr量が多いと、引張強さは大きく、伸びは小さくなった。
【0053】
(3)表1および表2から抽出した各試料(V+Mo=0.5%)の機械的特性(引張強さと伸び)を、図6Aおよび図6Bにグラフ化して示した。これから次のことがわかった。Vの方がMoよりも引張強さの向上効果が大きく、Mo/Vが4〜0(0.4/0.1〜0/0.5)のとき、強度が大きく向上した。特にMo/Vが1.5(0.3/0.2)前後(例えば、Mo/V=2〜1)のとき、引張強さが大きくなり、伸びも十分であった。
【0054】
(4)表3から抽出した各試料(V+Mn+Si=0.5%)の機械的特性(引張強さと伸び)を、図7Aおよび図7Bにグラフ化して示した。これから次のことがわかった。Moを(Mn+Si)に置換しても、図6Aおよび図6Bの場合と同様の傾向を示した。但し、Vが0.1〜0.5%の範囲で観ると、(Mn+Si)よりもMoの方が、引張強さおよび伸びの向上効果が少し大きかった。
【0055】
(5)表3から抽出した各試料(V+Mo+Mn+Si=0.5%)の機械的特性(引張強さと伸び)を、図8A〜図9Bにグラフ化して示した。これから次のことがわかった。V、Mo、MnおよびSiを含む場合でも、すなわち、(V+Mo)の一部を(Mn+Si)で置換した場合でも、引張強さおよび伸びは十分であった。
【0056】
(6)表4Aおよび表4B(両表を併せて単に「表4」という。)から抽出した各試料の機械的特性(引張強さと伸び)を、図10A〜図11Bにグラフ化して示した。これから次のことがわかった。成形圧力や焼結後の冷却速度が変化しても、各試料の引張強さや伸びは、図6Aまたは図6Bに示した場合とほぼ同様な傾向を示した。但し、引張強さは、成形圧力や冷却速度が大きくなるほど向上した。また伸びも成形圧力が大きくなるほど向上したが、冷却速度にはあまり影響しなかった。
【0057】
【表1A】
【0058】
【表1B】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
【表4A】
【0062】
【表4B】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境負荷低減やコスト低減と機械的特性の確保とを両立し得る鉄基焼結鋼材およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各部材の製造コストを削減するために、鉄系粉末の成形体を焼結させた素材または部材(以下単に「鉄基焼結鋼材」という。)が利用される。この鉄基焼結鋼材は最終形状に近いため、機械加工の削減や歩留りの向上等によって製造コストを低減し得る。
【0003】
これまでの鉄基焼結鋼材は、強度等の機械的特性を確保するために、種々の合金元素を多く含有していた。特に銅(Cu)やニッケル(Ni)は、鉄基焼結鋼材にとってほぼ必須元素のように考えられていた。しかし、合金元素量の増加は鉄基焼結鋼材の材料コストを上昇させる。また、鉄系スクラップのリサイクル性を阻害するCuやアレルギー性元素であるNiの使用は好ましくはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭58−10962号公報
【特許文献2】特許3446322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献には、Cu、Niや他の合金元素の含有量を抑制した鉄基焼結鋼材用の合金粉が提案されている。しかし、これらの合金粉でも、未だクロム(Cr)やモリブデン(Mo)の含有量が多く、少量ながら多種の合金元素を含有している。
【0006】
本発明はこのような事情のもと、使用する合金元素の種類および量を制限して、原料コストを含む製造コストを一層低減しつつ、高強度を維持できる鉄基焼結鋼材を提供することを目的とする。また、その鉄基焼結鋼材の製造に適した製造方法を併せて提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、適量の炭素(C)が存在することを前提に、少量のバナジウム(V)を加えるだけでも、高強度の鉄基焼結鋼材が得られることを新たに見出した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明が完成するに至った。
【0008】
《鉄基焼結鋼材》
(1)本発明の鉄基焼結鋼材は、Feを主成分とする原料粉末を加圧成形した成形体を焼結させた焼結体からなる鉄基焼結鋼材であって、全体を100質量%としたときに、0.05〜0.6質量%のVと、0.1〜1.0質量%のCと、残部であるFeおよび不可避不純物と、からなることを特徴とする。
【0009】
(2)本発明によれば、主成分であるFe以外の元素が適量のCと少量のVのみであっても、少なくとも強度が従来の焼結鋼材と同等以上で、相応の伸びを有する鉄基焼結鋼材が得られる。この鉄基焼結鋼材によれば、原料コストを含む製造コストの削減と、機械的特性の確保との両立が図られる。勿論、本発明の鉄基焼結鋼材はCuやNi等を実質的に含まないので、スクラップ材のリサイクル性の向上と環境負荷の低減とを図れる。
【0010】
(3)もっとも本発明の鉄基焼結鋼材が優れた機械的特性を発現するメカニズム等は必ずしも定かではない。現状では次のように考えられる。本発明者が鉄基焼結鋼の金属組織を顕微鏡観察したところ、微細化したパーライト相と小径化したフェライト相とが観察された。これは、Vが鉄基焼結鋼の基地中にバナジウム炭化物(VC)として微細にかつ均一に析出したためと考えられる。なお、Vは少量のため、仮に焼結時間が短い場合でも偏析することなく、基地中に均一に拡散して鉄基焼結鋼材を均質的に高強度化する。
【0011】
(4)このようなVの効果は、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)またはケイ素(Si)の一種以上が共存する場合でも発現し得る。さらにいえば、Vが、Mo、MnまたはSiの一種以上と共存することによって、鉄基焼結鋼材の機械的特性は一層向上し得る。
【0012】
原料コスト低減の観点から、これら合金元素の合計量(V+Mo+Mn+Si)を、鉄基焼結鋼材全体を100質量%としたときに高々1.5質量%以下、1.2質量%以下、1質量%以下さらには0.8質量%以下としても、鉄基焼結鋼材は十分な機械的特性を発現する。なお、単に総量規制だけではなく、高価なVやMoの一部を安価なMnやSiで置換すれば、原料コストのさらなる低減が可能となり、従来と同等以上の鉄基焼結鋼材をより一層安価に提供可能となる。なお、本明細書では、特に断らない限り、組成に関して質量%を用い、以降では単に「%」と表記する。
【0013】
《鉄基焼結鋼材の製造方法》
本発明は上述の鉄基焼結鋼材のみならず、その製造方法としても把握できる。すなわち本発明は、原料粉末を加圧成形した成形体を得る成形工程と、該成形体を酸化防止雰囲気で加熱して焼結体を得る焼結工程とを備え、上述の鉄基焼結鋼材が得られることを特徴とする鉄基焼結鋼材の製造方法でもよい。
【0014】
《その他》
(1)本明細書でいう「不可避不純物」は、原料粉末中にまたは鉄基焼結鋼材中に含まれるFe、C、V、Mo、MnおよびSi以外の元素である。このような元素は種々あり、元素の種類により含有許容量(上限値)は異なる。
【0015】
例えば、リン(P):0.03%以下、硫黄(S):0.03%以下、クロム(Cr):0.1%以下、アルミニウム(Al):0.1%以下、ニオブ(Nb):0.1%以下、コバルト(Co):0.1%以下、銅(Cu):0.2%以下、ニッケル(Ni):0.1%以下、タングステン(W):0.1%以下、酸素(O):0.25%以下、ホウ素(B):0.03%以下等である。
【0016】
また本発明に係る原料粉末または鉄基焼結鋼材は、Fe、C、V、Mo、MnおよびSi以外に、鉄基焼結鋼材の特性を改善し得る有効な元素(改質元素)を含み得る。改善される特性は問わないが、例えば、強度、靱性、延性、寸法安定性等である。改質元素の種類、組合せ、組成等は任意である。もっとも、コスト低減の観点から改質元素は微量であると好ましい。なお、改質元素は、不可避不純物として例示した元素(例えばCr等)であってもよい。
【0017】
(2)本発明の「鉄基焼結鋼材」は、その形態を問わず、鉄基焼結鋼からなる素材または部材の両方を含む。鉄基焼結鋼からなる素材は、例えば、バルク状、棒状、管状、板状等がある。鉄基焼結鋼からなる部材は、最終製品でもそれに近い製品でも良い。
【0018】
(3)鉄基焼結鋼材の「機械的特性」には種々あるが、引張強さや伸びが代表的である。本発明の鉄基焼結鋼材の引張強さは、例えば、600MPa以上、700MPa以上、800MPa以上、850MPa以上さらには900MPa以上であると好ましい。また本発明の鉄基焼結鋼材の伸びは、例えば、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上さらには6%以上であると好ましい。
【0019】
(4)特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の下限値または上限値は、任意に組合わされて「a〜b」のような範囲を構成し得る。さらに本明細書に記載した数値範囲内の任意の数値を上限値または下限値として、新たな数値範囲を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】試料No.1−1の金属顕微鏡写真である。
【図1B】試料No.1−4の金属顕微鏡写真である。
【図1C】試料No.1−27の金属顕微鏡写真である。
【図2A】V量の異なる各試料(焼結温度:1150℃)の引張強さとMo量との関係を示すグラフである。
【図2B】V量の異なる各試料(焼結温度:1150℃)の伸びとMo量との関係を示すグラフである。
【図3A】V量の異なる各試料(焼結温度:1250℃)の引張強さとMo量との関係を示すグラフである。
【図3B】V量の異なる各試料(焼結温度:1250℃)の伸びとMo量との関係を示すグラフである。
【図4A】V量およびGr量の異なる各試料(焼結温度:1150℃)の引張強さとMo量との関係を示すグラフである。
【図4B】V量およびGr量の異なる各試料(焼結温度:1150℃)の伸びとMo量との関係を示すグラフである。
【図5A】V量およびGr量の異なる各試料(焼結温度:1250℃)の引張強さとMo量との関係を示すグラフである。
【図5B】V量およびGr量の異なる各試料(焼結温度:1250℃)の伸びとMo量との関係を示すグラフである。
【図6A】Mo/V量の異なる各試料の引張強さを対比した棒グラフである。
【図6B】Mo/V量の異なる各試料の伸びを対比した棒グラフである。
【図7A】(Mn+Si)/V量の異なる各試料の引張強さを対比した棒グラフである。
【図7B】(Mn+Si)/V量の異なる各試料の伸びを対比した棒グラフである。
【図8A】(Mn+Si)/Mo量の異なる各試料(V:0.1%)の引張強さを対比した棒グラフである。
【図8B】(Mn+Si)/Mo量の異なる各試料(V:0.1%)の伸びを対比した棒グラフである。
【図9A】(Mn+Si)/Mo量の異なる各試料(V:0.2%)の引張強さを対比した棒グラフである。
【図9B】(Mn+Si)/Mo量の異なる各試料(V:0.2%)の伸びを対比した棒グラフである。
【図10A】成形圧力および冷却速度の異なる各試料(焼結温度:1150℃)の引張強さとMo/V量との関係を示すグラフである。
【図10B】成形圧力および冷却速度の異なる各試料(焼結温度:1150℃)の伸びとMo/V量との関係を示すグラフである。
【図11A】成形圧力および冷却速度の異なる各試料(焼結温度:1250℃)の引張強さとMo/V量との関係を示すグラフである。
【図11B】成形圧力および冷却速度の異なる各試料(焼結温度:1250℃)の伸びとMo/V量との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0021】
F フェライト相
P パーライト相
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の実施形態を挙げて本発明をより詳しく説明する。なお、以下の実施形態を含めて本明細書で説明する内容は、本発明に係る鉄基焼結鋼材のみならず、その製造方法にも適宜適用され得る。製造方法に関する構成は、プロダクトバイプロセスとして理解すれば物に関する構成ともなり得る。本明細書中から任意に抽出した一つまたは二つ以上の構成は、上述した本発明の構成に付加され得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
【0023】
《原料粉末》
(1)本発明の鉄基焼結鋼材は、原料粉末の成形体を焼結させてなる。この原料粉末は単種の粉末でも複数種の粉末からなる混合粉末でもよい。原料粉末が混合粉末である場合、純鉄粉、低合金鋼粉、バナジウム炭化物粉、モリブデン炭化物粉、グラファイト(Gr)粉、Fe−Mn−Si合金粉(FeMS粉)、Fe−Mn−Si−C合金粉(FeMSC粉)等を用いて、鉄基焼結鋼材の所望組成に配合される。
【0024】
各粉末の粒径は問わないが、鉄基焼結鋼材の成形性(高密度化)や取扱性等から、ベースとなる純鉄粉や低合金鋼粉は80〜100μm、各炭化物粉、Gr粉、FeMS粉、FeMSC粉は1〜10μmであると好ましい。ちなみに、ここでいう粒径は、粒子を一定の粒径間隔ごとに質量割合で表した粒子の頻度曲線において、累積重量割合の50%となるD50により特定される。
【0025】
(2)原料粉末は、鉄基焼結鋼材の機械的特性(特に引張強さ)の確保と原料コストの低減の観点から調製されると好ましい。原料粉末中のVは、原料粉末全体を100質量%としたときに、0.05〜0.6%、0.1〜0.5%、0.15〜0.4%さらには0.2〜0.35%であるとより好ましい。
【0026】
このような範囲内のVと共に、Mo、MnまたはSiが鉄基焼結鋼材中に共存していると、その金属組織(フェライト相やパーライト相)の微細化、機械的特性の向上をさらに図り得る。具体的にいうと、原料粉末全体を100質量%として、Moは0.05〜0.5%、0.1〜0.45%、0.15〜0.4%さらには0.25〜0.35%であると好ましい。Mnは0.03〜0.6%、0.1〜0.5%さらには0.2〜0.4%であると好ましい。Siは0.01〜0.2%、0.03〜0.15%さらには0.05〜0.1%であると好ましい。いずれの場合も、各元素が過少ではその効果が十分に得られず、過多では原料コストが増大する。
【0027】
但し、VやMoに比較して、MnやSiは鋼の一般的な合金元素であり、安価で入手も容易である。従って、鉄基焼結鋼材の所望特性の確保を前提に、MnやSiの配合量を増加させつつ、VやMoの配合量を減少させると好適である。ちなみに、MnおよびSiの供給源として、単体粉末を用いても良いが、FeMS粉等を用いると原料コストの低減を図れる。このようにMnとSiを同時添加する場合なら、原料粉末全体を100質量%としたときに、それらの合計(Mn+Si)が0.1〜0.8%、0.2〜0.7%さらには0.25〜0.6%であると好ましい。
【0028】
《製造工程》
本発明の鉄基焼結鋼材は、主に成形工程と焼結工程を経て得られる。以下、これら工程について説明する。
【0029】
(1)成形工程
成形工程は、上述の原料粉末を加圧成形した成形体を得る工程である。成形圧力の調整により、成形体密度(ひいては鉄基焼結鋼材の密度)を調整し得る。この成形圧力は、例えば、400MPa以上、500MPa以上、600MPaさらには700MPa以上と高くなるほど、成形体ひいては鉄基焼結鋼材の高密度化を図れる。成形工程は、冷間成形(室温成形)でも温間成形でも良い。また、原料粉末中に内部潤滑剤を添加しても良い。なお、本明細書では、内部潤滑剤を原料粉末に含めて考える。
【0030】
ところで、金型寿命を確保しつつ高圧成形する際は、金型潤滑温間加圧成形法(詳細は特許3309970号公報等を参照)を用いると良い。この成形方法によれば、成形圧力が700MPa程度の場合は勿論、800MPa以上、900MPa以上さらには1000MPa以上といった超高圧成形も容易に行える。しかも金型潤滑温間加圧成形法は、内部潤滑剤を使用する必要がないので、得られた成形体を焼結した際に炉内が汚染等されることもなく、環境性能に優れる。
【0031】
(2)焼結工程
焼結工程は、成形体を加熱して焼結体を得る工程である。焼結温度および焼結時間は、鉄基焼結鋼材の所望特性、生産性等を考慮して適宜選択されるが、それらが過大ではエネルギーコストが増大し、それらが過小では機械的特性の確保が困難となる。焼結温度は、例えば、1050℃〜1350℃以上さらには1100〜1300℃が好ましい。焼結時間は、例えば、0.1〜3時間さらには0.3〜1時間であると好ましい。
【0032】
焼結工程は酸化防止雰囲気でなされると好ましい。鉄基焼結鋼材中に酸化物が介在すると、その機械的特性が劣化し得るからである。酸化防止雰囲気には、例えば、真空雰囲気、不活性ガス雰囲気、窒素ガス雰囲気等がある。
【0033】
原料粉末が特に酸化され易いV、Mn若しくはSiを含む場合、焼結雰囲気はハイレベルな酸化防止雰囲気であると好ましい。このような酸化防止雰囲気として、例えば、窒素ガスに水素ガスを2〜5体積%程度混合した還元雰囲気がある。また水素ガスを使用しない場合なら、焼結雰囲気は、酸素分圧が10−19Pa以下(CO濃度で100ppm以下)に相当する極低酸素分圧の不活性ガス雰囲気であると好ましい。なお、この極低酸素分圧の不活性ガス(N2ガス)雰囲気は、例えば、関東冶金工業株式会社製オキシノン炉を用いて得られる。
【0034】
(3)冷却工程または焼入工程(シンターハードニング)
高温の焼結体を急冷する冷却工程を行ってもよい。これにより焼結体は焼入れ(シンターハードニング)され、さらに高強度化し得る。この工程は焼結工程に続けて行うと効率的である。具体的には次の通りである。
【0035】
焼結工程後の焼結体は、通常、A1変態点(約730℃)以上の高温状態となっている。この焼結体を、その高温域から室温域まで(Ms点以下まで)急冷する(冷却工程)。これにより焼結体は焼き入れ(シンターハードニング)される。その際の冷却速度は、25〜200℃/分(0.4〜3.3℃/秒)、40〜150℃/分(0.67〜2.5℃/秒)さらには80〜120℃/分(1.3〜2℃/秒)であると好ましい。冷却速度が過小では焼入れが不十分となり十分な高強度化を図れない。過大な冷却速度の実現は製造コストを上昇させる。
【0036】
《鉄基焼結鋼材》
(1)本発明の鉄基焼結鋼材は、要求仕様に応じて、焼鈍、焼準、時効、調質(焼き入れ、焼き戻し)、浸炭、窒化等の熱処理を適宜施して、金属組織の調整がなされても良い。
【0037】
(2)本発明の鉄基焼結鋼材は、その用途を問わないが、例えば、各種プーリー、変速機のシンクロハブ、エンジンのコンロッド、ハブスリーブ、スプロケット、リングギヤ、パーキングギヤ、ピニオンギヤ、サンギヤ、ドライブギヤ、ドリブンギヤ、リダクションギヤ等の素材や製品に用いることができる。
【実施例】
【0038】
実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
《試験片の製造》
(1)原料粉末の調製
原料粉末を調製するために、次の各種粉末を用意した。先ず、主たるFe源として純鉄粉(ヘガネスAB社製ASC100.29、粒径20〜180μm)、主たるC源として黒鉛(Gr)粉末(日本黒鉛社製JCPB、平均粒径は5μm以下)を用意した。次に、V源としてバナジウム炭化物(VC)粉末(日本新金属社製:粒度1〜3μm)、Mo源としてモリブデン炭化物(Mo2C)粉末(日本新金属社製:粒度1〜2μm)を用意した。さらに、Mn源およびSi源としてFe−65%Mn−16%Si−2%C粉末(東洋電化社製:5μm以下)を用意した。特に断らない限り、組成に関する「%」は質量%を意味する(以下同様)。
【0039】
これらの各種粉末を各表に示す組成となるように配合し、ボールミル式回転混合を30分間行って、試料毎に均一な混合粉末(原料粉末)を調製した。
【0040】
(2)成形工程
成形工程は、上述した金型潤滑温間加圧成形法により行った。具体的には以下の通りである。試験片の形状に応じたキャビティを有する超硬製金型を用意した。金型の内周面には予めTiNコート処理を施し、その表面粗さを0.4Zとした。金型はバンドヒータで予め150℃に加熱しておいた。加熱した金型の内周面に、高級脂肪酸系潤滑剤であるステアリン酸リチウム(LiSt)を分散させた水溶液を、スプレーガンにて1cm3/秒程度の割合で均一に塗布した(塗布工程)。これにより、金型の内周面には約1μm程度のLiStの被膜が形成された。
【0041】
なお、用いた水溶液は、界面活性剤と消泡剤とを添加した水に、LiStを分散させたものである。界面活性剤には、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO)6、(EO)10及びホウ酸エステルエマルボンT−80を用いた。それらを水溶液全体(100体積%)に対して1体積%ずつ添加した。消泡剤には、FSアンチフォーム80を用いた。これを水溶液全体(100体積%)に対して0.2体積%添加した。
【0042】
LiStには、融点が約225℃で、平均粒径が20μmのものを用いた。その分散量は上記の水溶液100cm3に対して25gとした。LiStを分散させた水溶液をさらにボールミル式粉砕装置で微細化処理(テフロンコート鋼球:100時間)した。こうして得られた原液を20倍に希釈した最終濃度1%の水溶液を、上記塗布工程に供した。
【0043】
LiStの均一な被膜が内面に形成された金型のキャビティへ、各原料粉末(予熱なし)を自然充填した(充填工程)。この原料粉末を各表に示す成形圧力(490〜784MPa)で成形した。得られた各成形体は、金型の内面にかじり等を生じることなく、低い抜出力で金型から容易に取出すことができた。
【0044】
(3)焼結工程
各成形体を、連続焼結炉(関東冶金工業製オキシノン炉)を用いて、1150℃または1250℃の窒素ガス雰囲気中で焼結させた(焼結工程)。均熱保持時間は30分とし、焼結後の冷却速度は100℃/min(1.67℃/秒)または50℃/min(0.83℃/秒)とした。なお、その焼結炉内は、露点−50〜−65℃程度のN2ガス雰囲気とした。こうして鉄基焼結鋼材からなる各試験片を得た。
【0045】
《測定》
(1)密度および寸法変化
各試料の円柱状試験片(φ23×7mm)を用いて、焼結体の重量と焼結前後の寸法(外径)を測定した。これらの測定値から、焼結体の密度と寸法変化(外径変化)を求め、それらの値を各表に併せて記載した。なお、各表に示した寸法変化は、100×{(焼結後の外径)−(焼結前の外径)}/(焼結前の外径)により求めた。
【0046】
(2)引張強さおよび伸び
各試料の平板状引張試験片(55×10×3mm)を用いて引張試験を行った。これにより、各試験片が破断するまでの強度(引張強さ)と伸びを求め、その値を各表に併せて記載した。
【0047】
(3)ヤング率
各試料の円柱状試験片(φ23×7mm)を用いて、超音波法によりヤング率を測定し、その値を各表に併せて記載した。なお超音波法は、縦波および横波のパルスエコーの伝播時間および円柱状試験片の厚さから求めた超音波の音速と、試験片の密度とからヤング率を算出する方法である。
【0048】
《評価》
〈金属組織〉
表1Aおよび表1B(両表を併せて単に「表1」という。)から抽出した試料の金属顕微鏡写真を図1A〜図1Cに示した。写真中、白色部分(F)はフェライト相を、灰色部分(P)はパーライト相を示す。
【0049】
Fe−0.6%Grの組織(図1A)は、フェライト相およびパーライト相が粗い。0.5%Vをさらに含む組織(図1B)では、パーライト相が微細化し、フェライト相も小径化している。0.3%Moをさらに含む組織、つまりV−Moの複合添加組織(図1C)では、フェライト相またはパーライト相がより微細化する傾向を示した。そして、金属組織がこのように微細化するほど、引張強さが大きくなることが表1からわかる。
【0050】
〈機械的特性〉
(1)表1に示した各試料(Gr:0.6%)の機械的特性(引張強さと伸び)を、図2A〜図3Bにグラフ化して示した。これから次のことがわかった。先ず、Vが0.1%程度でも加わると、引張強さが急激に度向上し、Vが0.5%に近づくほど引張強さは大きくなった。もっとも、引張強さの向上は、Vが0.5%程度で、ほぼ飽和する傾向となった。
【0051】
次に、このVによる強度向上効果は、Mo量が変化しても同様の傾向を示すが、Moが0.1〜0.6%さらには0.15〜0.5%で、極大傾向を示した。さらに、焼結温度が高いと引張強さは大きくなり、焼結温度が低いと伸びが安定して高くなった。
【0052】
(2)表1および表2から抽出した各試料(Gr:0.6%とGr:0.8%)の機械的特性(引張強さと伸び)を、図4A〜図5Bにグラフ化して示した。先ず、焼結温度が1150℃の場合でも1250℃の場合でも、Gr量が多いと、引張強さは大きく、伸びは小さくなった。
【0053】
(3)表1および表2から抽出した各試料(V+Mo=0.5%)の機械的特性(引張強さと伸び)を、図6Aおよび図6Bにグラフ化して示した。これから次のことがわかった。Vの方がMoよりも引張強さの向上効果が大きく、Mo/Vが4〜0(0.4/0.1〜0/0.5)のとき、強度が大きく向上した。特にMo/Vが1.5(0.3/0.2)前後(例えば、Mo/V=2〜1)のとき、引張強さが大きくなり、伸びも十分であった。
【0054】
(4)表3から抽出した各試料(V+Mn+Si=0.5%)の機械的特性(引張強さと伸び)を、図7Aおよび図7Bにグラフ化して示した。これから次のことがわかった。Moを(Mn+Si)に置換しても、図6Aおよび図6Bの場合と同様の傾向を示した。但し、Vが0.1〜0.5%の範囲で観ると、(Mn+Si)よりもMoの方が、引張強さおよび伸びの向上効果が少し大きかった。
【0055】
(5)表3から抽出した各試料(V+Mo+Mn+Si=0.5%)の機械的特性(引張強さと伸び)を、図8A〜図9Bにグラフ化して示した。これから次のことがわかった。V、Mo、MnおよびSiを含む場合でも、すなわち、(V+Mo)の一部を(Mn+Si)で置換した場合でも、引張強さおよび伸びは十分であった。
【0056】
(6)表4Aおよび表4B(両表を併せて単に「表4」という。)から抽出した各試料の機械的特性(引張強さと伸び)を、図10A〜図11Bにグラフ化して示した。これから次のことがわかった。成形圧力や焼結後の冷却速度が変化しても、各試料の引張強さや伸びは、図6Aまたは図6Bに示した場合とほぼ同様な傾向を示した。但し、引張強さは、成形圧力や冷却速度が大きくなるほど向上した。また伸びも成形圧力が大きくなるほど向上したが、冷却速度にはあまり影響しなかった。
【0057】
【表1A】
【0058】
【表1B】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
【表4A】
【0062】
【表4B】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄(Fe)を主成分とする原料粉末を加圧成形した成形体を焼結させた焼結体からなる鉄基焼結鋼材であって、
全体を100質量%としたときに、
0.05〜0.6質量%のバナジウム(V)と、
0.1〜1.0質量%の炭素(C)と、
残部であるFeおよび不可避不純物と、
からなることを特徴とする鉄基焼結鋼材。
【請求項2】
さらに、モリブデン(Mo)を0.05〜0.5質量%含む請求項1に記載の鉄基焼結鋼材。
【請求項3】
さらに、マンガン(Mn)を0.03〜0.6質量%含む請求項1または2に記載の鉄基焼結鋼材。
【請求項4】
さらに、ケイ素(Si)を0.01〜0.2質量%含む請求項1〜3のいずれかに記載の鉄基焼結鋼材。
【請求項5】
V、Mo、MnおよびSiの一種以上である合金元素の合計量は1.5質量%以下である請求項4に記載の鉄基焼結鋼材。
【請求項6】
原料粉末を加圧成形した成形体を得る成形工程と、
該成形体を加熱して焼結体を得る焼結工程とを備え、
請求項1〜5に記載したいずれかの鉄基焼結鋼材が得られることを特徴とする鉄基焼結鋼材の製造方法。
【請求項1】
鉄(Fe)を主成分とする原料粉末を加圧成形した成形体を焼結させた焼結体からなる鉄基焼結鋼材であって、
全体を100質量%としたときに、
0.05〜0.6質量%のバナジウム(V)と、
0.1〜1.0質量%の炭素(C)と、
残部であるFeおよび不可避不純物と、
からなることを特徴とする鉄基焼結鋼材。
【請求項2】
さらに、モリブデン(Mo)を0.05〜0.5質量%含む請求項1に記載の鉄基焼結鋼材。
【請求項3】
さらに、マンガン(Mn)を0.03〜0.6質量%含む請求項1または2に記載の鉄基焼結鋼材。
【請求項4】
さらに、ケイ素(Si)を0.01〜0.2質量%含む請求項1〜3のいずれかに記載の鉄基焼結鋼材。
【請求項5】
V、Mo、MnおよびSiの一種以上である合金元素の合計量は1.5質量%以下である請求項4に記載の鉄基焼結鋼材。
【請求項6】
原料粉末を加圧成形した成形体を得る成形工程と、
該成形体を加熱して焼結体を得る焼結工程とを備え、
請求項1〜5に記載したいずれかの鉄基焼結鋼材が得られることを特徴とする鉄基焼結鋼材の製造方法。
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【公開番号】特開2012−122127(P2012−122127A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276326(P2010−276326)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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