説明

鉄筋コンクリート製の躯体構造物の構築方法

【課題】鉄筋コンクリート製の躯体構造物を短期間で効率的に構築し得るようにする。
【解決手段】鉄筋コンクリート製の躯体構造物は、躯体梁21a,21bを有しており、躯体支柱11の上に構築される。躯体支柱11を成形する柱型枠13には、躯体梁21a,21bを成形する梁型枠22が取り付けられる。躯体支柱11の上に床上側支柱を連結するためのアンカーボルトフレーム30が柱鉄筋組立体12の上端部に配置され、アンカーボルトフレーム30が上昇移動した状態のもとで、上側の梁鉄筋27aと下側の梁鉄筋27bとそれぞれの梁鉄筋27a,27bに結束されるスターラップ筋26とを有する梁鉄筋組立体25を組み立てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンカーボルトが埋め込まれる鉄筋コンクリート製の躯体構造物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商業施設やオフィスビル等の建築物を建築する場合には、特許文献1、2に記載されるように、アンカーボルトが設けられたアンカーボルトフレームを鉄筋コンクリート造の躯体構造物に埋め込み、その躯体構造物と建築物とをアンカーボルトにより連結するようにしている。アンカーボルトは躯体構造物を構成する躯体支柱に上端部を吐出させて埋め込まれ、建築物の鉄骨柱がその柱脚部でアンカーボルトの上端部に連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−319900号公報
【特許文献2】特開平10−204892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、建築物が建築される鉄筋コンクリート造つまり鉄筋コンクリート製の躯体構造物は、建築物の鉄骨柱を支持する躯体支柱と、この躯体支柱の上端部に連結される鉄筋コンクリート製の躯体梁と、躯体梁に取り付けられる鉄筋コンクリート製の床板つまり床スラブとを有している。このような躯体構造物を構築するには、躯体支柱を構成する柱鉄筋組立体、躯体梁を構成する梁鉄筋組立体、および床スフラブを構成するスラブ鉄筋組立体をそれぞれ組み立てるとともに、それぞれの鉄筋組立体には型枠が配置される。型枠が配置された状態のもとで型枠にはコンクリートが流し込まれ、コンクリートと鉄筋組立体とからなる躯体構造物が構築される。
【0005】
例えば、躯体梁を構成する梁鉄筋組立体は、水平方向の複数の梁鉄筋と垂直方向の複数のスターラップ筋とを連結つまり結束することによりを組み立てられる。この結束作業は、躯体梁の高さつまり階高によっては、躯体構造物の側面に仮設足場を設けて、その上に作業者が乗って行うので、作業者は不安定な姿勢で組立作業を行わなければならず、組立作業性が大きく相違することになる。
【0006】
本発明の目的は、鉄筋コンクリート製の躯体構造物を短期間で効率的に構築し得るようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の鉄筋コンクリート製の躯体構造物の構築方法は、鉄骨柱下側の躯体支柱、前記躯体支柱の上部に設けられる躯体梁および床スラブを有する鉄筋コンクリート製の躯体構造物を構築する鉄筋コンクリート製の躯体構造物の構築方法であって、前記躯体支柱を成形する柱型枠を前記躯体支柱の柱鉄筋組立体の外側に配置する工程と、水平方向に隣り合う前記躯体支柱の上端部相互間に構築される前記躯体梁を成形する梁型枠を前記柱型枠に取り付ける工程と、前記床スラブ用のスラブ型枠を前記梁型枠に取り付ける工程と、建築物の鉄骨柱が連結されるアンカーボルトフレームを前記柱鉄筋組立体の上端部に配置する工程と、前記アンカーボルトフレームを上昇移動させた状態のもとで、前記アンカーボルトフレームの下側枠体の上を水平に伸びる上側の梁鉄筋と、前記アンカーボルトフレームの下側枠体の下を水平に伸びる下側の梁鉄筋と、それぞれの前記梁鉄筋に結束されるスターラップ筋とを有する梁鉄筋組立体を組み立てる工程と、前記アンカーボルトフレームを下降移動させて前記梁鉄筋組立体を前記梁型枠の内部に挿入する工程とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の鉄筋コンクリート製の躯体構造物の構築方法は、前記柱鉄筋組立体は前記躯体支柱の内側部に設けられるアンカー受け架台と、当該アンカー受け架台の外側に設けられ、フープ筋により結束される柱主筋とを有し、前記アンカーボルトフレームを前記アンカー受け架台に装着することを特徴とする。本発明の鉄筋コンクリート製の躯体構造物の構築方法は、前記柱型枠の上端部に装着され前記アンカーボルトフレームを上下動自在に支持するアンカー受けフレームを有し、前記アンカーボルトフレームを前記柱型枠に前記アンカー受けフレームを介して装着することを特徴とする。本発明の鉄筋コンクリート製の躯体構造物の構築方法は、前記梁型枠にその上端に連なって設けられたスラブ型枠の上に配置される吊り上げ機により前記アンカーボルトフレームを上下動させることを特徴とする。
【0009】
本発明の鉄筋コンクリート製の躯体構造物の構築方法は、前記梁型枠にその上端に連なって設けられたスラブ型枠の上に配置される支持台により前記アンカーボルトフレームを上昇させた状態で支持することを特徴とする。本発明の鉄筋コンクリート製の躯体構造物の構築方法は、前記アンカー受け架台の上端部を上下動自在に貫通するガイドロッドを前記アンカーボルトフレームに設け、前記アンカーボルトフレームを上下動させるときに前記ガイドロッドにより前記アンカーボルトフレームを案内することを特徴とする。本発明の鉄筋コンクリート製の躯体構造物の構築方法は、前記アンカー受けフレームを貫通するガイドロッドを前記アンカーボルトフレームに設け、前記アンカーボルトフレームを上下動させるときに前記ガイドロッドにより前記アンカーフボルトレームを案内することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、鉄筋コンクリート製の躯体構造物を構成する梁鉄筋組立体は、躯体支柱に建築物の鉄骨柱を連結するために使用されるアンカーボルトフレームをスラブ型枠の表面よりも上方に突出した状態としてスラブ型枠の上に乗った作業者により組み立てられる。組立終了後には梁鉄筋組立体は下降移動されて梁型枠内に収容される。梁鉄筋組立体をスラブ型枠の表面よりも突出させた状態で組み立てることにより、その組立作業性が向上し、躯体構造物を短期間に安全に効率的に構築することができる。これにより、鉄筋コンクリート製の躯体構造物の構築を少ない日数で低コストで安全に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】鉄筋コンクリート製の躯体構造物を構築するための型枠とこれに配置される梁鉄筋組立体の配置パターンを示す平面図である。
【図2】図1におけるA−A線方向の断面図である。
【図3】(A)はアンカーボルトフレームが装着されたアンカー受け架台を地下床面に取り付けた状態を示す正面図であり、(B)はアンカー受け架台の外側にフープ筋により結束された柱主筋を配置して柱鉄筋組立体を構築した状態を示す正面図である。
【図4】(A)は柱鉄筋組立体の外側に柱型枠を配置するとともに柱型枠に梁型枠とスラブ型枠とを取り付けた後に、アンカーボルトフレームを上昇移動させた状態を示す正面側断面図であり、(B)は(A)におけるB−B線方向の断面図であり、(C)は(A)におけるC−C線方向の断面図である。
【図5】梁鉄筋組立体の組み立てる工程を示す正面側断面図である。
【図6】図5の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図7】図6における梁鉄筋組立体の配置状態を示す平面図である。
【図8】他の形態の柱鉄筋組立体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。鉄筋コンクリート製の躯体構造物は、図2に示されるように、下側階の床面10に設けられる躯体支柱11を有している。躯体支柱11は柱鉄筋組立体12と図示しないコンクリートとにより構成され、床面10に柱鉄筋組立体12を構築した後にその外側に柱型枠13を配置し、柱型枠13内にコンクリートを注入することにより躯体支柱11が構築される。
【0013】
水平方向に隣り合う躯体支柱11の上端部相互間には、躯体梁21a,21bが構築される。図1に示されるように、紙面の上下方向(X方向)に伸びる躯体梁は符号21aで示されており、左右方向(Y方向)に伸びる躯体梁は符号21bで示されている。躯体支柱11は図1に示されるようにマトリックス状に配置されており、図1においてX方向に示された躯体梁21aとY方向に示された躯体梁21bにより、躯体梁は全体的に格子状に形成される。図1はオフィスビル等の建築物が構築されることになる躯体構造物の一部分を示しており、図1においては、符号X1〜X4で示すように躯体梁21aのうち4列の部分のみが示され、符号Y1〜Y4で示すように躯体梁21bのうち4列の部分のみが示されている。図1に示されるそれぞれの躯体支柱11は躯体梁が十字形状に連結されている。躯体構造物の角部に配置される躯体支柱11には相互に90度をなす2辺に躯体梁が連結されることになる。
【0014】
図2に示す床面10は、地下1階の床面を示しており、躯体支柱11の上端部に構築される躯体梁21a,21bと床スラブとにより建築物の1階用のフロアー部分が構築される。ただし、床面10が躯体構造物の1階である場合には、躯体構造物の上に建築物の2階用のフロアー部分が構築されることになる。
【0015】
躯体梁21a,21bを構築するための梁型枠22は、底壁22aと相互に対向する側壁22bとを有し、上部が開放されている。梁型枠22は柱型枠13が床面10に設けられた後に柱型枠13に取り付けられ、側壁22bの相互間の寸法により躯体梁21a,21bの横断面の幅寸法が設定される。梁型枠22の上端部にはスラブ型枠23が取り付けられるようになっており、図1には全ての梁型枠22の相互間にスラブ型枠23が取り付けられた状態を示す。図2において符号23aはスラブ型枠23の表面を示す。
【0016】
柱鉄筋組立体12は、図3および図4に示される場合には、アンカー受け架台14を有している。アンカー受け架台14は、平面が四辺形となっており、上下方向に伸びる棒材14aにより四辺形の角部が形成され、上端部には四辺形の上部枠14bが取り付けられている。アンカー受け架台14の外側にはこれに対して隙間を隔てるとともに相互に隙間を隔てて複数の柱主筋15が配置されている。アンカー受け架台14は床面10から突出したアンカーボルトに締結される。一方、柱主筋15は床面10から突出された図示しない下側の柱主筋の端部にガス圧接等の手段により接合される。
【0017】
柱主筋15には四辺形のフープ筋16が水平方向を向いて取り付けられるようになっており、図4(C)に示されように、柱主筋15はフープ筋16の各辺に沿って一定間隔を隔てた状態となる。フープ筋16は上下方向に所定の間隔で設けられるが、図3および図4においては、便宜的に一部のフープ筋16のみが示されている。
【0018】
梁型枠22により形成される収容溝24内には、図2に示されるように、梁鉄筋組立体25が組み込まれ、梁鉄筋組立体25が収容溝24内に組み込まれた状態のもとで、コンクリートを収容溝24内に注入することにより躯体梁21a、21bが構築される。梁鉄筋組立体25は、垂直方向を向いた四辺形のスターラップ筋26と、このスターラップ筋26の上辺の内部に沿って水平方向に伸びる上側の梁鉄筋27aと、スターラップ筋26の下辺の内部に沿って水平方向に伸びる下側の梁鉄筋27bとを有している。それぞれの梁鉄筋27a,27bはスターラップ筋26に対して直角となって1列に並んでおり、梁鉄筋27a,27bとスターラップ筋26とをワイヤで結束することにより、梁鉄筋組立体25が組み立てられる。
【0019】
図示する梁鉄筋組立体25は上側の梁鉄筋27aと下側の梁鉄筋27bとを有するように示されているが、さらにそれぞれの梁鉄筋27a,27bの内側に1列ないし複数列に梁鉄筋を配置して梁鉄筋組立体25が構成される。
【0020】
躯体支柱11の上端部には躯体梁21a,21bが交差するようになっており、躯体支柱11の上端部にはアンカーボルトフレーム30が図2に示されるように配置される。アンカーボルトフレーム30はそれぞれ四辺形の下側枠体31と上側枠体32とを有し、下側枠体31と上側枠体32との間は、複数本のアンカーボルト33により連結されている。アンカーボルトフレーム30は梁型枠22内に注入されるコンクリート内に埋め込まれるようになっており、埋め込まれた状態のアンカーボルトフレーム30のアンカーボルト33の上端には、図示しない建築物の鉄骨柱が連結されるようになっている。このように、アンカーボルトフレーム30は躯体支柱11とその上に建築される建築物の鉄骨柱とを連結するために、アンカーボルト33の上端部を突出させた状態でコンクリート内に埋め込まれるようになっている。
【0021】
上述のように、鉄筋コンクリート製の躯体構造物がその上に建築される建築物の1階のフロアーとなる場合には、アンカーボルトフレームに連結される鉄骨柱は1階部分を構成する支柱となる。
【0022】
アンカーボルトフレーム30の下側枠体31に取り付けられたガイドロッド34がアンカー受け架台14に形成された貫通孔を貫通しており、図3に示されるように、アンカーボルトフレーム30はアンカー受け架台14の上部枠14bに上下動自在に装着されている。アンカー受け架台14とアンカーボルトフレーム30とによりアンカーフレームが構成される。ガイドロッド34はボルトにより形成されており、このガイドロッド34の中間位置には、アンカー受け架台14の上部枠14bの上面に当接してアンカーボルトフレーム30のアンカー受け架台14に対する上下動位置を設定する位置調整ナット35がねじ結合されている。さらに、上部枠14bの下面に当接してガイドロッド34が上部枠14bから抜けるのを防止するためのストッパとしての抜け止めナット36がガイドロッド34の下端部にねじ結合されている。
【0023】
図1に示されるように、下側枠体31と上側枠体32を連結するアンカーボルト33はそれぞれの枠体の四隅に2本ずつ、合計8本設けられており、それぞれのアンカーボルト33が上側枠体32の上方に突出している。また、ガイドロッド34は、図1に示されるように下側枠体31の相互に平行な2辺に2本ずつ合計4本設けられている。
【0024】
鉄筋コンクリート製の躯体構造物を構築するには、図2に示されるように、柱鉄筋組立体12の外側に柱型枠13が配置され、柱型枠13に取り付けられた梁型枠22内に梁鉄筋組立体25が収容された状態のもとで、柱型枠13内と梁型枠22内にコンクリートを注入する。さらに、スラブ型枠23の上側に格子状にスラブ鉄筋を配置した状態のもとで、スラブ型枠23の上面にコンクリートが所定の厚みで注入される。これにより、鉄筋コンクリート製の躯体構造物が構築される。
【0025】
躯体梁21a,21bを構築するには、梁鉄筋組立体25を梁型枠22の収容溝24内に組み込むことになる。その組み込み操作を容易にするために、躯体構造物の上に建築物の鉄骨柱を取り付けるためのアンカーボルトフレーム30と梁鉄筋組立体25をスラブ型枠23の表面23aから突出させた状態で組み立てるようにしている。
【0026】
図1および図2に示した躯体構造物を構築する手順について、図3〜図5を参照して説明する。
【0027】
図3(A)はアンカーボルトフレーム30が装着されたアンカー受け架台14が、躯体構造物よりも下側の階の床面10に固定された状態を示しており、アンカー受け架台14は床面10に埋め込まれた図示しないアンカーボルトに締結される。アンカーボルトフレーム30のアンカー受け架台14に対する上下方向の位置は、位置調整ナット35により設定される。アンカー受け架台14の外側には、図3(B)に示すように、柱鉄筋組立体12が構築される。柱鉄筋組立体12は、アンカー受け架台14の外側に配置される柱主筋15を有しており、柱主筋15は床面10から突出した図示しない柱主筋の突出端部にガス圧接等の接合手段により接合することにより床面10側に取り付けられる。柱主筋15の外側にはフープ筋16が上下方向に所定の間隔を隔てて複数本配置され、それぞれのフープ筋16は水平方向を向き、柱主筋15に図示しないワイヤを用いて結束される。このように、柱鉄筋組立体12は複数本の柱主筋15と複数本のフープ筋16とにより構成される。
【0028】
床面10に柱鉄筋組立体12が、図3(B)に示すように、構築された後には、柱鉄筋組立体12の外側には、図4に示されるように、柱型枠13が配置される。柱型枠13の内部は躯体支柱11のサイズに対応しており、この中にコンクリートを注入すると、コンクリートと柱鉄筋組立体12とにより躯体支柱11が製造される。柱型枠13には、図4に示されるように、梁型枠22が取り付けられる。梁型枠22により躯体梁21a,21bを成形するための収容溝24が形成されており、収容溝24は躯体梁21a,21bのサイズに対応している。収容溝24内に梁鉄筋組立体25を配置し、コンクリートを注入すると、梁鉄筋組立体25とコンクリートとにより躯体梁21a,21bが製造される。梁型枠22には図1に示されるようにスラブ型枠23が取り付けられる。このスラブ型枠は、躯体梁21a,21bにより仕切られる床スラブの部分を成形するための型枠であり、スラブ型枠23の上面に格子状等にスラブ鉄筋が配置され、配置されたスラブ鉄筋を埋め込むようにコンクリートが注入される。スラブ型枠23の上側に注入されるコンクリートの表面と、梁型枠22に注入されるコンクリートの表面とを一致させると、躯体構造物の表面は全体的に平坦となる。図4〜図6において符号Lはスラブ型枠23の上に注入されるコンクリートの表面位置を示す。
【0029】
アンカー受け架台14には予めアンカーボルトフレーム30が装着されており、アンカーボルトフレーム30は柱鉄筋組立体12の上端部に予め配置されている。この配置工程と、柱型枠13の配置工程と、梁型枠22の取付工程とが完了した後には、図5に示されるように、梁鉄筋組立体を組み立てる工程が実行される。なお、アンカーボルトフレーム30の配置を柱型枠13と梁型枠22が製造された後に行うようにしても良い。
【0030】
梁鉄筋組立体25を組み立てるには、まず、図4に示されるように、スラブ型枠23の表面に鉄筋吊り架台41を配置する。この鉄筋吊り架台41は4本の垂直支持脚42とこれらを連結する吊り支持棒43とを有しており、吊り支持棒43には、巻上機やホイスト等からなる吊り上げ機44が取り付けられている。この吊り上げ機44はアンカーボルトフレーム30の上側枠体32に連結され、吊り上げ機44によりアンカーボルトフレーム30は、図4に示されるように、上昇移動される。アンカーボルトフレーム30の上昇限位置は、抜け止めナット36がアンカー受け架台14の上部枠14bに当接することにより規制される。
【0031】
このように、アンカーボルトフレーム30が上昇移動した状態のもとで、梁型枠22の収容溝24に沿って長手方向に所定の間隔毎に、水平支持棒45が支持台として配置される。水平支持棒45の高さは台座46により調整され、水平支持棒45の上下高さは、アンカーボルトフレーム30の下側枠体31よりも高い位置に設定される。なお、図4に示すように、アンカーボルトフレーム30を上昇した状態のもとで、アンカーボルトフレーム30を固定するために、アンカーボルトフレーム30を図示しない棒材により吊り支持棒43に締結する。図4には、躯体梁21aを成形するための梁型枠22の収容溝24を横切るように配置された1本の水平支持棒45が示されている。水平支持棒45は、それぞれの躯体梁21a,21bを成形するための梁型枠22を横切るように複数本配置されることになる。
【0032】
図4に示されるように、アンカーボルトフレーム30を上昇させた状態のもとで、梁鉄筋組立体25の組立作業がスラブ型枠の上に乗った作業者により行われる。まず、X方向の躯体梁21aを構築するには、支持台としての水平支持棒45に、図6に示されるように、この図において紙面に垂直な方向の躯体梁21aを製造するための上側の梁鉄筋27aを配置する。図6に示す場合には、上側の梁鉄筋27aが水平支持棒45の上に配置されるようになっており、それぞれの上側の梁鉄筋27aはアンカーボルトフレーム30の下側枠体31よりも上側となっている。上側の梁鉄筋27aには四辺形のスターラップ筋26の上側の水平辺が接触した状態で、スターラップ筋26が上側の梁鉄筋27aに沿って所定の間隔毎に配置される。次いで、スターラップ筋26の内部には、その下側の水平辺に接触させて下側の梁鉄筋27bが配置される。下側の梁鉄筋27bはアンカーボルトフレーム30の下側枠体31よりも下側に配置され、それぞれのスターラップ筋26と梁鉄筋27a,27bは、ワイヤにより結束される。このようにして、躯体梁21aを構築するための梁鉄筋組立体25の組み立て作業が終了する。
【0033】
次いで、図6において左右方向に伸びるY方向の躯体梁21bを構築するための梁鉄筋組立体25の組立作業が行われる。この組立作業は、上述した躯体梁21aの梁鉄筋組立体25の組立と同様であり、躯体梁21bの梁鉄筋組立体25は躯体梁21aの上側の梁鉄筋27aの上側に配置される梁鉄筋27aと、これと平行な下側の梁鉄筋27bとを有し、それぞれの梁鉄筋27a,27bにはスターラップ筋26がワイヤにより結束される。
【0034】
梁鉄筋組立体25の組立作業は、作業者が図5,図6に示すようにスラブ型枠23を利用してその表面23aにおいて作業者が行うことになる。このときには、梁鉄筋組立体25の上下方向の約3分の2が表面23aよりも上方に突出しているので、梁鉄筋27a,27bの配置作業、スターラップ筋26の配置作業、およびスターラップ筋26と梁鉄筋27a,27bとの結束作業を作業者は容易に行うことができる。例えば、下側の梁鉄筋27bとスターラップ筋26との結束作業を行うときには、作業者は大きくかがむことなく、僅かに手を収容溝24内に挿入するだけで、作業を行うことができる。
【0035】
従来のように、型枠を取り付ける前に、梁鉄筋組立体25を柱鉄筋組立体12に組み付けるようにすると、梁鉄筋組立体25の組立作業は床面10に仮設足場を設けて行う必要があり、階高によりその作業が困難であった。これに対し、図5,図6に示すように、梁鉄筋組立体25を構築する前に、梁型枠22とスラブ型枠23とを構築し、スラブ型枠23を利用してその上に乗った作業者により梁鉄筋組立体25の組立作業を行うことができる。しかも、図示しない建築物の鉄骨柱を連結するためのアンカーボルトフレーム30を突出させることにより、梁鉄筋組立体25の組立製造を梁鉄筋組立体25を上昇させて型枠表面よりも突出させた状態で行うことができる。これにより、梁鉄筋組立体25の組立作業性が良好となり、躯体構造物の構築作業を短期間で効率的に行うことができる。アンカーボルトフレーム30を上昇させる位置としては、図5に示す位置よりも高い位置とし、例えば、梁鉄筋組立体25の全体を型枠の表面23aよりも上方に突出させる位置までとすることも可能である。
【0036】
このようにして、柱鉄筋組立体12の外側への柱型枠13の取付作業、柱型枠13への梁型枠22の取付作業、梁型枠22内への梁鉄筋組立体25の配置と、スラブ型枠23の表面への鉄筋の配置作動とが完了した後には、それぞれの型枠内にコンクリートを注入することにより、鉄筋コンクリート躯体構造物が構築される。
【0037】
図8は他の形態の柱鉄筋組立体12を示す断面図である。上述した柱鉄筋組立体12は、フープ筋16により結束される柱主筋15と、その内側に配置されるアンカー受け架台14とにより構成されているが、図8に示す柱鉄筋組立体12は、アンカー受け架台14を有しておらず、柱主筋15とこれに結束されるフープ筋16とにより構成されている。このタイプの柱鉄筋組立体12を有する躯体支柱11に床上側支柱をアンカーボルトフレーム30を介して連結するには、アンカー受けフレーム47が使用される。
【0038】
このアンカー受けフレーム47は、柱型枠13が柱鉄筋組立体12の外側に取り付けられ、柱型枠13に梁型枠22が取り付けられた後に、柱型枠13の上端部に装着される。アンカー受けフレーム47は、柱型枠13内に挿入される枠体47aと、これに対して段差を有し型枠表面に突き当てられるブラケット47bとを有している。枠体47aには、アンカーボルトフレーム30の下側枠体31に取り付けられたガイドロッド34が貫通するようになっている。このガイドロッド34は枠体47aの1つの枠辺に1つ設けられているが、上述したように、1つの枠辺に2本のガイドロッド34を設けるようにしても良い。
【0039】
図8に示すように、アンカー受けフレーム47を使用してアンカーボルトフレーム30をコンクリートの中に埋め込むようにした形態においても、アンカーボルトフレーム30を利用して上述と同様に梁鉄筋組立体25を組み立てることができる。
【0040】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。図示する躯体構造物は、地下1階の上の階として構築されて1階フロアーを構成する場合であるが、地下1階のさらに下に地下2階やそれよりも深い地下構造物が構築される場合にも本発明の躯体構造物を構築することができる。
【符号の説明】
【0041】
10 床面
11 躯体支柱
12 柱鉄筋組立体
13 柱型枠
14 アンカー受け架台
14a 棒材
14b 上部枠
15 柱主筋
16 フープ筋
21a 躯体梁
21b 躯体梁
22 梁型枠
22a 底壁
22b 側壁
23 スラブ型枠
23a 表面
24 収容溝
25 梁鉄筋組立体
26 スターラップ筋
27a 梁鉄筋
27b 梁鉄筋
30 アンカーボルトフレーム
31 下側枠体
32 上側枠体
33 アンカーボルト
34 ガイドロッド
35 位置調整ナット
36 抜け止めナット
41 鉄筋吊り架台
42 垂直支持脚
43 吊り支持棒
44 吊り上げ機
45 水平支持棒
46 台座
47 アンカー受けフレーム
47a 枠体
47b ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨柱下側の躯体支柱、前記躯体支柱の上部に設けられる躯体梁および床スラブを有する鉄筋コンクリート製の躯体構造物を構築する鉄筋コンクリート製の躯体構造物の構築方法であって、
前記躯体支柱を成形する柱型枠を前記躯体支柱の柱鉄筋組立体の外側に配置する工程と、
水平方向に隣り合う前記躯体支柱の上端部相互間に構築される前記躯体梁を成形する梁型枠を前記柱型枠に取り付ける工程と、
前記床スラブ用のスラブ型枠を前記梁型枠に取り付ける工程と、
建築物の鉄骨柱が連結されるアンカーボルトフレームを前記柱鉄筋組立体の上端部に配置する工程と、
前記アンカーボルトフレームを上昇移動させた状態のもとで、前記アンカーボルトフレームの下側枠体の上を水平に伸びる上側の梁鉄筋と、前記アンカーボルトフレームの下側枠体の下を水平に伸びる下側の梁鉄筋と、それぞれの前記梁鉄筋に結束されるスターラップ筋とを有する梁鉄筋組立体を組み立てる工程と、
前記アンカーボルトフレームを下降移動させて前記梁鉄筋組立体を前記梁型枠の内部に挿入する工程とを有する鉄筋コンクリート製の躯体構造物の構築方法。
【請求項2】
請求項1記載の鉄筋コンクリート製の躯体構造物の構築方法において、前記柱鉄筋組立体は前記躯体支柱の内側部に設けられるアンカー受け架台と、当該アンカー受け架台の外側に設けられ、フープ筋により結束される柱主筋とを有し、前記アンカーボルトフレームを前記アンカー受け架台に装着することを特徴とする鉄筋コンクリート製の躯体構造物の構築方法。
【請求項3】
請求項1記載の鉄筋コンクリート製の躯体構造物の構築方法において、前記柱型枠の上端部に装着され前記アンカーボルトフレームを上下動自在に支持するアンカー受けフレームを有し、前記アンカーボルトフレームを前記柱型枠に前記アンカー受けフレームを介して装着することを特徴とする鉄筋コンクリート製の躯体構造物の構築方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の鉄筋コンクリート製の躯体構造物の構築方法において、前記梁型枠にその上端に連なって設けられたスラブ型枠の上に配置される吊り上げ機により前記アンカーボルトフレームを上下動させることを特徴とする鉄筋コンクリート製の躯体構造物の構築方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の鉄筋コンクリート製の躯体構造物の構築方法において、前記梁型枠にその上端に連なって設けられたスラブ型枠の上に配置される支持台により前記アンカーボルトフレームを上昇させた状態で支持することを特徴とする鉄筋コンクリート製の躯体構造物の構築方法。
【請求項6】
請求項2記載の鉄筋コンクリート製の躯体構造物の構築方法において、前記アンカー受け架台の上端部を上下動自在に貫通するガイドロッドを前記アンカーボルトフレームに設け、前記アンカーボルトフレームを上下動させるときに前記ガイドロッドにより前記アンカーボルトフレームを案内することを特徴とする鉄筋コンクリート製の躯体構造物の構築方法。
【請求項7】
請求項3記載の鉄筋コンクリート製の躯体構造物の構築方法において、前記アンカー受けフレームを貫通するガイドロッドを前記アンカーボルトフレームに設け、前記アンカーボルトフレームを上下動させるときに前記ガイドロッドにより前記アンカーフボルトレームを案内することを特徴とする鉄筋コンクリート製の躯体構造物の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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