鉄筋用スペーサー
【課題】鉄筋に装着した姿勢を安定的に保つことができる鉄筋用スペーサーを提供する。
【解決手段】手前側の鉄筋10の下部と当接可能な凹曲面5が形成された溝部4と、鉄筋10を凹曲面5に当接した状態で保持する係止爪8と、溝部4の側方に設けられたヘッド部3を備え、ヘッド部3は、奥側の鉄筋11と当接可能な当接部6を有している。奥側の鉄筋11と当接可能な当接部6を備えているので、強い衝撃を受けても、鉄筋用スペーサー1自体が位置ずれや回転することを好適に抑制することができる。よって、鉄筋10に装着した姿勢を安定的に保つことができる。
【解決手段】手前側の鉄筋10の下部と当接可能な凹曲面5が形成された溝部4と、鉄筋10を凹曲面5に当接した状態で保持する係止爪8と、溝部4の側方に設けられたヘッド部3を備え、ヘッド部3は、奥側の鉄筋11と当接可能な当接部6を有している。奥側の鉄筋11と当接可能な当接部6を備えているので、強い衝撃を受けても、鉄筋用スペーサー1自体が位置ずれや回転することを好適に抑制することができる。よって、鉄筋10に装着した姿勢を安定的に保つことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋と型枠内面との間隔寸法(被り寸法、被り厚さ)を確保するため、または、鉄筋同士の間隔を確保するために、鉄筋に装着して用いる鉄筋用スペーサーに関する。
【背景技術】
【0002】
上記鉄筋用スペーサーとしては各種のものが提案され実用化されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の鉄筋用スペーサーは、コンクリートあるいはモルタルからなり、鉄筋を当接支持する溝部が形成されているスペーサー本体と、この溝部に支持された鉄筋に弾性係止する左右一対の爪部を備えている。
【0003】
上記構成の鉄筋用スペーサーでは、鉄筋に強く押し付けて鉄筋を溝部に押し込むと、爪部の弾性によって鉄筋を保持することができる。よって、鉄筋用スペーサーを鉄筋に容易に装着することができ、作業性に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−308984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の鉄筋用スペーサーでは、コンクリートの打設時などにおいてスペーサー本体が強い衝撃を受けると、スペーサー本体が鉄筋の回りで回動してしまうおそれがある。
【0006】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、鉄筋に装着した姿勢を安定的に保つことができる鉄筋用スペーサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、交差する鉄筋に取り付け可能な鉄筋用スペーサーであって、手前側の鉄筋の下部と当接する溝部と、手前側の鉄筋を前記溝部に当接した状態で保持する保持具と、前記溝部の側方に設けられたヘッド部と、を備え、前記ヘッド部は、手前側の鉄筋と交差する奥側の鉄筋と当接可能な当接部を有する鉄筋用スペーサーである。
【0008】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、奥側の鉄筋と当接可能な当接部を有するヘッド部を備えているので、強い衝撃を受けても、鉄筋用スペーサー自体が位置ずれや回転することを好適に抑制することができる。よって、鉄筋用スペーサーは、鉄筋に装着した姿勢を安定的に保つことができる。
【0009】
ここで、「手前側」および「奥側」とは、鉄筋用スペーサーから見たときのことであり、「手前側」は「鉄筋用スペーサーに近い方」と同義であり、「奥側」とは「鉄筋用スペーサーから遠い方」と同義である。また、手前側の鉄筋の下部が溝部と当接するので、奥側の鉄筋は手前側の鉄筋の上部側で交差する。
【0010】
また、本発明において、前記ヘッド部は、前記溝部の両側方にそれぞれ設けられていることが好ましい(請求項2)。溝部を挟んで各ヘッド部が設けられているので、各当接部は溝部の両側方で奥側の鉄筋と当接することができる。よって、鉄筋用スペーサーの装着姿勢の安定性を効果的に高めることができる。
【0011】
また、本発明において、前記当接部は、奥側の鉄筋の下部と当接することが好ましい(請求項3)。手前側の鉄筋の軸回りに鉄筋用スペーサーが回転することを好適に規制することができる。
【0012】
また、本発明において、前記当接部は、奥側の鉄筋の側部と当接することが好ましい(請求項4)。前記手前側の鉄筋に対して鉄筋用スペーサーがねじれるように回転することを規制することができる。
【0013】
また、本発明において、前記当接部は、ヘッド部を切り欠いて形成されていることが好ましい(請求項5)。切り欠きによれば、その切り欠きの奥端を、奥側の鉄筋に好適に当接させることができる。
【0014】
また、本発明において、前記ヘッド部は、前記溝部に対して手前側の鉄筋の軸方向の一方に張り出しており、前記当接部は前記溝部に対して張り出した位置に形成されていることが好ましい(請求項6)。当接部は溝部から張り出した位置で奥側の鉄筋と当接する。このため、手前側の鉄筋は、奥側の鉄筋と交差する位置から若干外れた部位で、溝部と当接する。したがって、手前側の鉄筋を溝部に当接させる際に、交差する鉄筋同士を結束する結束線材の結び目(玉)などが邪魔になることはないので、手前側の鉄筋を溝部で確実に保持することができる。
【0015】
また、本発明において、手前側の鉄筋が奥側の鉄筋と接する部位の反対側にあたる手前側の鉄筋の下部の周囲は、開放されていることが好ましい(請求項7)。手前側の鉄筋が奥側の鉄筋と交差している部位の周囲が開放されているので、鉄筋用スペーサーをスムーズに装着することができる。
【0016】
また、本発明において、前記溝部の下部に連結され、手前側の鉄筋の被り厚さに応じた長さを有するスペーサー主部を備えており、前記スペーサー主部は、手前側の鉄筋の軸方向に対して溝部と略同じ厚みを有していることが好ましい(請求項8)。手前側の鉄筋が奥側の鉄筋と交差している部位の周囲を、スペーサー主部によって覆うことがなく、好適に開放させることができる。
【0017】
また、本発明において、前記スペーサー主部は前記ヘッド部の下部にも連結されており、前記溝部と前記ヘッド部と前記スペーサー主部とは一体に形成されていることが好ましい(請求項9)。鉄筋用スペーサーの堅牢性の高めることができる。
【0018】
また、本発明において、前記保持具は、手前側の鉄筋に当接する複数の係止片を備え、各係止片は互いに独立して弾性変形可能であることが好ましい(請求項10)。鉄筋の外周面には、ズレ止め用の環状突起(以下、適宜「突条」という)が形成されていることがある。手前側の鉄筋に突条が設けられている場合であっても、保持具が有する複数の係止片は互いに独立して弾性変形可能であるので、各係止片はそれぞれ突条のある部位および突条のない部位のいずれであっても的確に弾性係止する。よって、保持具は、手前側の鉄筋を溝部に当接した状態で的確に保持することができる。さらに、突条の部位、および、突条の無い部位の双方に係止片が係止しているときには、鉄筋用スペーサーが手前側の鉄筋の軸方向にずれることが阻止され、鉄筋に装着した姿勢をより安定的に保つことができる。
【0019】
また、本発明において、前記複数の係止片は手前側の鉄筋の軸方向に並んでいることが好ましい(請求項11)。複数の係止片を鉄筋の軸方向に並ぶように配置することで、手前側の鉄筋が溝部に当接した状態を効果的に維持することができる。
【0020】
また、本発明において、前記保持具は、前記ヘッド部に埋設固定されている基部と、手前側の鉄筋の軸方向から見て、前記基部から手前側の鉄筋の上方へ延びる複数の屈曲アーム部と、を備え、前記屈曲アーム部は、前記基部に対して互いに独立して弾性変形可能であり、複数の係止片は、手前側の鉄筋の軸方向から見て、各屈曲アーム部から手前側の鉄筋の上部に向かう斜め方向にそれぞれ直線的に延びており、各係止片は鉄筋を前記溝部に案内可能であり、かつ、案内された鉄筋の下部が前記溝部と当接する際に各係止片の先端面が当該鉄筋の上部に当接することが好ましい(請求項12)。各係止片は、手前側の鉄筋の軸方向から見て、各屈曲アーム部から手前側の鉄筋の上部に向かう斜め方向にそれぞれ直線的に延びているので、鉄筋を溝部に好適に案内することができる。また、案内された鉄筋の下部が前記溝部と当接する際に各係止片の先端面が当該鉄筋の上部に当接するので、鉄筋用スペーサーは手前側の鉄筋を速やかに保持することができる。
【0021】
また、本発明において、各係止片の先端面は、手前側の鉄筋の軸方向に略平行な平坦面であることが好ましい(請求項13)。鉄筋の外周面が平坦であれば、各係止片は線接触で鉄筋と当接することができる。
【0022】
また、本発明において、前記係止片は、前記屈曲アーム部に連結されている基部側に比べて、鉄筋に当接する先端側が幅広であることが好ましい(請求項14)。各係止片はより広い範囲で鉄筋と当接することができる。
【0023】
また、本発明において、手前側の鉄筋の軸方向に対して前記複数の係止片が配置される範囲は、前記溝部が当該鉄筋を保持する範囲と略同じであることが好ましい(請求項15)。手前側の鉄筋を、溝部と略同程度の範囲にわたって係止片によって係止し、溝部に押し付けることができる。よって、手前側の鉄筋が溝部から浮き上がったり、溝部に対して傾いたりすることを確実に防止することができる。
【0024】
なお、本明細書は、次のような鉄筋用スペーサーに係る発明も開示している。
【0025】
(1)請求項8または請求項9に記載の鉄筋用スペーサーにおいて、前記ヘッド部は、前記スペーサー主部に対して手前側の鉄筋の軸方向の一方に張り出しており、前記当接部は前記スペーサー主部に対して張り出した位置に形成されている鉄筋用スペーサー。
【0026】
前記(1)に記載の発明によれば、当接部はスペーサー主部から張り出した位置で奥側の鉄筋と当接する。このため、手前側の鉄筋が奥側の鉄筋と交差している部位の周囲を、スペーサー主部によって覆うことがなく、好適に開放させることができる。
【0027】
(2)請求項8または請求項9に記載の鉄筋用スペーサーにおいて、溝部、ヘッド部、および、スペーサー主部の各一方面は、面一の平坦面に形成されている鉄筋用スペーサー。
【0028】
前記(2)に記載の発明によれば、成形空間(キャビティ)を一方に向けて開放した成形型によって、鉄筋用スペーサーを成形することができる。すなわち、このような成形型に生コンクリートあるいは生モルタルなどの素材を流し込み、余剰分を平坦にすき切り、養生硬化した後に成形型から抜き出すことで鉄筋用スペーサーを得ることができる。このように、素材の流し込みおよびすき切が容易な片開放の成形型を用いて簡単に所望形状の鉄筋用スペーサーを製作することができる。
【発明の効果】
【0029】
この発明に係る鉄筋用スペーサーによれば、手前側の鉄筋と交差する奥側の鉄筋と当接可能な当接部を有するヘッド部を備えているので、強い衝撃を受けても、鉄筋用スペーサー自体が位置ずれや回転することを好適に抑制することができる。よって、鉄筋用スペーサーは、鉄筋に装着した姿勢を安定的に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例に係る鉄筋用スペーサーを、そのスペーサー主部側から見た外観斜視図である。
【図2】実施例に係る鉄筋用スペーサーを、そのヘッド側から見た外観斜視図である。
【図3】実施例に係る鉄筋用スペーサーの平面図である。
【図4】実施例に係る鉄筋用スペーサーの一部を縦断した側面図である。
【図5】鉄筋用スペーサーの装着状態を示す斜視図である。
【図6】鉄筋用スペーサーの装着状態を示す平面図である。
【図7】鉄筋用スペーサーの装着状態を示す一部縦断側面図である。
【図8】鉄筋用スペーサーの装着状態を示す要部の斜視図である。
【図9】鉄筋用スペーサーの他の装着状態を示す斜視図である。
【図10】鉄筋用スペーサーの他の装着状態を示す一部縦断側面図である。
【図11】鉄筋用スペーサーの他の装着状態を示す斜視図である。
【図12】成形型の平面図である。
【図13】図11におけるa−a断面図である。
【図14】図11におけるb−b断面図である。
【図15】成形型の斜視図である。
【図16】成形過程の斜視図である。
【図17】大径仕様の鉄筋用スペーサーの外観斜視図である。
【図18】大径仕様の鉄筋用スペーサーの平面図である。
【図19】大径仕様の鉄筋用スペーサーの一部を縦断した側面図である。
【図20】小径仕様の鉄筋用スペーサーの平面図である。
【図21】小径仕様の鉄筋用スペーサーの一部を縦断した側面図である。
【図22】変形実施例に係る鉄筋用スペーサーの外観斜視図である。
【図23】変形実施例に係る鉄筋用スペーサーの一部を縦断した側面図である。
【図24】変形実施例に係る鉄筋用スペーサーを、そのスペーサー主部側から見た外観斜視図である。
【図25】変形実施例に係る鉄筋用スペーサーを、そのヘッド側から見た外観斜視図である。
【図26】変形実施例に係る鉄筋用スペーサーの平面図である。
【図27】変形実施例に係る鉄筋用スペーサーの一部を縦断した断面図である。
【図28】変形実施例に係る鉄筋用スペーサーの装着状態を示す斜視図である。
【図29】変形実施例に係る鉄筋用スペーサーの装着状態を示す平面図である。
【図30】変形実施例に係る鉄筋用スペーサーの装着状態を示す一部縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0032】
図1は、実施例に係る鉄筋用スペーサー1をそのスペーサー主部2側から見た外観斜視図であり、図2は、そのヘッド3側から見た外観斜視図である。図3は、実施例に係る鉄筋用スペーサー1の平面図であり、図4は、実施例に係る鉄筋用スペーサー1の一部を縦断した側面図である。
【0033】
本実施例に係る鉄筋用スペーサー1は、鉄筋の被り厚さに応じた長さを有するスペーサー主部2と、鉄筋の下部と当接する溝部4と、鉄筋を溝部4に当接した状態で保持する係止爪8と、溝部4で保持する鉄筋と交差する奥側の鉄筋と当接可能なヘッド部3とを備えている。
【0034】
スペーサー主部2は、その幅が先端(下端)に向けて先細りした略楔形を呈し、先端は平面視で丸く湾曲している。スペーサー主部2の高さ方向hの長さは、後述するように各種の鉄筋の被り厚さ寸法に対応して選択設計されている。
【0035】
スペーサー主部2の後端部(上端部)には、溝部4と2つのヘッド部3が一体に連設されている。ヘッド部3は溝部4の左右の両側方にそれぞれ配置されており、これら各ヘッド部3と溝部4とは幅方向wに並んでいる。
【0036】
溝部4は鉄筋と当接する。溝部4とスペーサー主部2とは、奥行き方向dに略同じ長さ(厚み)を有している。溝部4には、奥行き方向dに畝状に連なる部分円弧状の湾曲面5が形成されている。この湾曲面5に鉄筋の下部が当接する。
【0037】
各ヘッド部3は、スペーサー主部2の上端部に対して幅方向wに左右に張り出しているとともに、スペーサー主部2の上端部および溝部4に比べて奥行き方向dに大きな厚みを有している。すなわち、各ヘッド部3は、溝部4に対して奥行き方向dに張り出している。また、各ヘッド部3は、溝部4で保持される鉄筋の上端よりも高くなるように、その高さ方向hの寸法が設計されている。よって、各ヘッド部3に囲まれる溝部4の上方には、略矩形の凹部空間aが形成されている。スペーサー主部2と各ヘッド部3と溝部4の裏面側は、面一の平坦面に形成されている。
【0038】
各ヘッド部3には、溝部4に対して張り出した表面側の上角部に当接部6が切り欠き形成されている。この切り欠きの奥端には、幅方向wに細長い平坦面である第1当接面6aおよび第2当接面6bが形成されており、これら第1当接面6aおよび第2当接面6bが当接部6を構成している。切り欠きは略段差状に形成されて、第1当接面6aと第2当接面6bは互いに略直交している。さらに、各ヘッド部3には、その表面と裏面との間を貫通する貫通孔7がそれぞれ形成されている。貫通孔7は、鉄筋用スペーサー1と鉄筋とを固定する結束線材を挿入するために使用される。
【0039】
凹部空間aの内壁面に相当する各ヘッド部3の側壁には、左右一対の係止爪8が左右対称に対向配備されている。図15には、係止爪8全体の外観を示している。図示するように、係止爪8は、板バネ材を打ち抜きプレスしたものを、各所で屈曲加工することによって生産される。
【0040】
図3、図6に示すように、係止爪8は、ヘッド部3に埋設固定されている基部8aを有している。この基部8aから、複数本(本実施例では3本)の屈曲アーム部8bが延びている。複数の屈曲アーム部8bは、奥行き方向dに1列に並んでいる。各屈曲アーム部8bは、溝部4の斜め上方を覆うように屈曲している。言い換えれば、図6に示すように、溝部4に当接する手前側の鉄筋10の軸AX方向(以下、適宜、「軸AX方向」という)から見て、各屈曲アーム部8bは、基部8aから手前側の鉄筋10の上方へ屈曲している。各屈曲アーム部8bは、基部8aに対して互い独立して弾性変形可能である。
【0041】
各屈曲アーム部8bには、それぞれ係止片8cが連続形成されている。各係止片8cは、溝部4の湾曲面5の略中心に向かう方向に直線的に延びている。換言すれば、図6に示すように、軸AX方向から見て、各屈曲アーム部8bから手前側の鉄筋10の上部(外周面)に向かう斜め方向に各係止片8cが直線的に延びている。複数本(本実施例では3本)の係止片8c同士は、互いに軸AX方向に並んでいる。図3に示すように、各係止片8cの先端面8c1は軸AXと略平行な平坦面であり、この先端面8c1が、手前側の鉄筋10の上部(外周面)と直接接触する。そして、屈曲アーム部8bの弾性変形により、各係止片8cは手前側の鉄筋10を溝部4に押し付けている。
【0042】
各係止片8cの先端部は、奥行き方向dに張り出した矩形形状を呈している。このため、係止片8cは、屈曲アーム部8bに連結されている側(以下、適宜「基端側」という)に比べて、鉄筋に当接する先端側が幅広な形状を有している。本実施例では、3本の係止片8cのうち、中央の係止片8cの幅は、両側の係止片8cの幅に比べて若干大きく設定されている。そして、軸AX方向に対して複数の係止片8cが配置される範囲は、溝部4が手前側の鉄筋10を保持する範囲と略同じである。
【0043】
また、係止爪8の基部8aには、位置決め用の舌片8dが略直角に切り起こされて形成されている。この舌片8dは、図3に示すように、スペーサー主部2の先端とは反対方向に切り起こされていることが好ましい。これにより、鉄筋10からスペーサー主部2の先端までの寸法を、打設されたコンクリートの被り厚さ(被り寸法)Lとすることができる。すなわち、被り厚さ(被り寸法)を、係止爪8の舌片8dによって減少させることなく、有効に確保することができる。係止爪8は、この発明における保持具に相当する。
【0044】
以上のように構成される鉄筋用スペーサー1の使用例を、図5乃至図8に例示する。
【0045】
図5乃至図7に示すように、鉄筋10は鉄筋用スペーサー1から見て手前側にあり、鉄筋11は鉄筋用スペーサー1から見て奥側にある。鉄筋10および鉄筋11は、交差する位置で互いに結束線材で結束されるか、溶接されることによって連結されている。なお、鉄筋10および鉄筋11の一方が縦筋(縦方向の鉄筋)であってもよいし、他方が横筋(横方向の鉄筋)であってもよい。
【0046】
鉄筋用スペーサー1は、鉄筋11と交差する位置より若干外れた鉄筋10の所定箇所に対して、鉄筋用スペーサー1の凹部空間aを対向させた状態で、鉄筋用スペーサー1を鉄筋10に強く押し付ける。この押し付けによって、左右の係止片8cで案内される鉄筋10は係止爪8を左右に押し広げ弾性変形させながら溝部4に導かれる。鉄筋10の下部外周面が凹曲面5に当接するまで押し込まれると、鉄筋10が係止片8cの先端面8c1を越え、弾性復元した係止片8cの先端面8c1が鉄筋10の上部外周面に強く係止され、鉄筋10が凹曲面5から離脱することを阻止する。これにより、鉄筋用スペーサー1は鉄筋10に装着される。
【0047】
なお、図8に示すように、鉄筋10の外周面にはコンクリートとのズレ止め用に環状突起10aが鉄筋長手方向に小ピッチで多数形成されることが多い。しかしながら、各係止片8cは独立して弾性変形することにより、各係止片8cはそれぞれ、鉄筋10の複雑な外周面にそれぞれ確実に係止する。たとえば、一部の係止片8cは環状突起10aと当接し、他の係止片8cは環状突起10aが形成されていない部分(凹部)と当接する。これによると、溝部4に当接する鉄筋10は、軸AX方向に対して溝部4と略同程度の範囲にわたって係止片8cによって押し圧される。この結果、鉄筋10が溝部4の凹曲面5全体と当接することができ、鉄筋10が溝部4から浮き上がったり、溝部4に対して鉄筋10が傾いたりすることがない。
【0048】
また、環状突起10aがある部位と環状突起10aがない部位(凹部)とに、異なる係止片8cがそれぞれ当接することで、鉄筋用スペーサー1が鉄筋10に対して軸AX方向に相対的にずれることが抑制される。これにより、鉄筋用スペーサー1の装着姿勢をより安定的に保つことができる。
【0049】
また、上述したように、凹曲面5は、鉄筋11と交差する位置より若干外れた鉄筋10の所定箇所と当接する。このため、鉄筋10と鉄筋11とが結束線材によって固定されていても、その結束線材、特に結束線材を結び上げたときにできる玉状の結び目が、凹曲面5と鉄筋10との接合面の間に入り込むことがない。よって、鉄筋10をがたつきなく保持することができる。また、図5に示すように、鉄筋11と接する位置の反対側にあたる鉄筋10の下部の周囲(図5では符号「b」を付して示す)は開放されている。このため、上述の結束線材が鉄筋用スペーサー1のスペーサー主部2やその他の部位とも干渉することがない。よって、鉄筋用スペーサー1によって結束線材を傷めることがない。
【0050】
鉄筋10に鉄筋用スペーサー1を装着したとき、各ヘッド部3の第2当接面6bには奥側の鉄筋11の下部外周面がそれぞれ当接する。これにより、手前側の鉄筋10の軸AXの回りに鉄筋用スペーサー1が回動することが規制される。また、各ヘッド部3の第1当接面6aには奥側の鉄筋11の側部外周面がそれぞれ当接する。これにより、鉄筋10の軸AXおよび鉄筋11の軸BXと直交する1軸回りに鉄筋用スペーサー1がねじれるように回動することが規制される。このように、鉄筋用スペーサー1は、ヘッド部3が鉄筋11と当接することで、鉄筋10に装着した姿勢を安定的に保つことができる。
【0051】
なお、鉄筋10の軸AXは、図1乃至図4に図示した奥行き方向dと略同じ方向であり、鉄筋11の軸BXは、図1乃至図4に図示した幅方向wと略同じ方向である。よって、上述した軸AX及び軸BXと直交する軸は、図1乃至図4に示した高さ方向hと略同じ方向となる。
【0052】
図6、図7に示すように、スペーサー主部2の先端は、型枠12の内面と当接する。この型枠12内にコンクリートが流し込まれて、鉄筋コンクリートの構造物が構築・建造される。コンクリートの流し込みの際、強い衝撃が鉄筋用スペーサー1に加わるが、鉄筋用スペーサー1は鉄筋11と当接して位置ずれが規制されているので、鉄筋用スペーサー1は鉄筋10に装着された姿勢のままで保たれる。
【0053】
ここで、鉄筋10から型枠12の内面までの寸法が、打設されたコンクリートの外面から鉄筋10までの被り厚さ(被り寸法)Lとなる。異なった被り厚さ(被り寸法)Lの要望に対応するため、図3,図4中の仮想線(二点鎖線)で示すように、スペーサー主部2の先端位置の異なる複数種の鉄筋用スペーサー1が製作されて供給される。
【0054】
図示した鉄筋用スペーサー1は複数種類の径(たとえば、19mmから22mmの径範囲)の鉄筋10に装着可能である。鉄筋10の径が大きくなるほど、第2当接面6bと鉄筋11との間に隙間が生じやすくなるが、その隙間はわずかであり、鉄筋用スペーサー1が軸AXの回りに回動しようとすると直ちに第2当接面6bが鉄筋11と当接して、回動が規制される。なお、第1当接面6aは、鉄筋10の径の大小に関係なく、鉄筋11と好適に当接する。
【0055】
本発明の鉄筋用スペーサー1は上記のようにして装着することを標準としているが、以下のような形態で装着使用することもできる。
【0056】
(1)図9に示すように、各ヘッド部3の貫通孔7を利用して結束線材13で奥側の鉄筋11に縛りつけることで一層強固な装着を行うこともできる。
【0057】
(2)鉄筋用スペーサー1の装着姿勢は任意であり、鉄筋11に対してヘッド部3が上下左右のいずれの方から当接してもよい。図10には、鉄筋11に対してヘッド部3が上方から当接する使用状態を模試的に示している。なお、図10に示す鉄筋用スペーサー1の姿勢は、図7に示す鉄筋用スペーサー1の姿勢を表裏反転したものである。また、図11には、鉄筋11に対してヘッド部3が右側から当接する使用状態を模試的に示している。なお、図11に示す鉄筋用スペーサー1の姿勢は、図7に示す鉄筋用スペーサー1の姿勢を90度回転したしたものである。
【0058】
次に、図12乃至図16を参照して、上記鉄筋用スペーサー1の製作手順を説明する。
【0059】
図12乃至図15に示すように、鉄筋用スペーサー1の成形型15は硬質樹脂材(例えば、ポリエチレン)からなり、スペーサー主部2に対応するキャビティCaと、各ヘッド部3および溝部4に対応するキャビティCbとが連設されて上向きに開放されている。ヘッド部3に対応するキャビティCbの底壁15eからは貫通孔7を成形するピン部15aが立設されている(図14参照)。また、図示を省略しているが、キャビティCaの底壁15fに、被り寸法表示を反転させた凸版または凹版を設けてもよい(図13参照)。ここで、被り寸法表示は、たとえば、被り寸法が100mmの場合にはこれを簡略表示する数字の「100」などであってもよい。
【0060】
前記凹部空間aを成形するために成形型15に設けられの左右の側壁15bには、係止爪8を上方から挿入するスリット16が形成されている。側壁15bの外面にはスリット16に沿う位置決め用の突条15cが設けられ、舌片8dが側壁15aの内面に沿う姿勢で係止爪8をスリット16に位置決め装着される。そして、係止爪8が取り付けられた様態で成形型15に素材(たとえば、生コンクリートまたは生モルタルなど)を流し込むことで、係止爪8は所定の姿勢で埋設固定することができる。
【0061】
なお、図15に示すように、係止爪8の基部8aの上端及び下端にはそれぞれ凹部8eが切欠き形成されており、係止爪8をスリット16に挿入した際、凹部8eがスリット16の奥端において側壁5bに係合され、舌片8dと協働して係止爪8の位置および姿勢を保持することができる。
【0062】
また、成形型15の上端には、左右辺に沿って鍔部15dが張り出し形成されている。
そして、図16に示すように、中抜き枠状に構成された支持枠17における左右の支持桟17aに亘って鍔部15dを介して載置して、係止爪8が組み込まれた複数枚(図示した例では9枚)の成形型15を縦横に配列して支持枠17に載置した後、各成形型15に生コンクリートあるいは生モルタルなどの素材を流し込み、余剰の素材をヘラなどで掻取って、充填した素材を成形型上面に沿って平坦に掻き均し、所定の温度および湿度管理のもとで養生硬化させる。
【0063】
養生硬化過程を終えると、支持枠17から各成形型15を取外し、成形型15に衝撃や振動などを与えて硬化成形された鉄筋用スペーサー1を各成形型15から抜き外す。
【0064】
なお、一つの仕様の鉄筋用スペーサー1では、装着できる鉄筋径に限りがあるので、鉄筋径に対応して複数仕様の鉄筋用スペーサー1が製作提供される。
【0065】
図17乃至図19は、大径(たとえば、25mm以上の径)の鉄筋へ好適に装着できる仕様に製作された鉄筋用スペーサー21を示す外観斜視図、平面図、および、一部縦断側面図である。図示する鉄筋用スペーサー21は、大径の鉄筋10に対応して凹部空間aの左右間隔、溝部4の湾曲面5の大きさ、係止爪8の左右間隔が大きく設定されるとともに、ヘッド部3と溝部4およびスペーサー主部2との接合強度を確保するために、補強用にリブ部3aが備えられている。また、この大径仕様においても、図中の仮想線で示すように、スペーサー主部2の先端位置の異なるものを製作して、複数種の被り寸法に対応できるようにする。
【0066】
図20および図21は、小径(たとえば、16mm以下の径)の鉄筋へ好適に装着できる仕様に製作された鉄筋用スペーサー31を示す平面図および一部縦断側面図である。図示する鉄筋用スペーサー31は、小径の鉄筋10に対応して凹部空間aの左右間隔、溝部4の湾曲面5の大きさ、係止爪8の左右間隔が小さく設定されている。また、この小径仕様においても、図中の仮想線で示すように、スペーサー主部2の先端位置の異なるものを製作して、複数種の被り寸法に対応できるようにする。
【0067】
なお、上記大径仕様および小径仕様の各鉄筋用スペーサー21、31が備える係止爪8は、中径仕様の鉄筋用スペーサー1に設けられる係止爪8と同形状であり、対向して組み付けられる相互間隔が異なっているのみである。
【0068】
本発明は、以下のように変形して実施することもできる。
【0069】
(1)上述した実施例では、各ヘッド部3に形成した当接部6は、第1当接面6aおよび第2当接面6bより構成されていたが、これに限られない。たとえば、鉄筋11の側部に当接する第1当接面6aのみを備えるように変更してもよいし、鉄筋11の下部に当接する第2当接面6bのみを備えるように構成してもよい。
【0070】
(2)上述した実施例では、当接部6を構成する第1当接面6aおよび第2当接面6bは、鉄筋11と略線接触するものであったが、これに限られない。たとえば、鉄筋11の外周面に点接触可能な突起部によって当接部6を構成するように変更してもよい。この場合には、突起部の幅方向wの左右スパンは、できるだけ大きく設定することが望ましい。あるいは、鉄筋11の外周面に面接触可能な湾曲面によって当接部6を構成するように変更してもよい。
【0071】
(3)上述した実施例では、当接部6を構成する第1当接面6aおよび第2当接面6bは、幅方向wに細長い平坦面であったが、これに限られない。図22と図23を参照する。図22は、変形実施例に係る鉄筋用スペーサー41の外観斜視図であり、図23は、変形実施例に係る鉄筋用スペーサー41の一部を縦断した側面図である。図示するように、当接部6を傾斜面6cによって構成すると、手前側の鉄筋10の径が多少大きくなっても、当接部6によって鉄筋11の外周を斜め下方から当接支持して、鉄筋用スペーサー1が鉄筋10の軸AX回りに回動することや、軸BX回りにねじれることを好適に阻止することができる。
【0072】
(4)上述した実施例では、溝部4の左右両側方にヘッド部3を備えていたが、これに限られない。たとえば、溝部4の一側方のみにヘッド部3を備えるように変更してもよい。
【0073】
(5)上述した実施例では、係止爪8によって鉄筋10を保持するものであったが、これに限られない。溝部4の凹曲面5に当接する鉄筋10を保持することができれば、適宜な部材を採用してもよい。
【0074】
(6)上述した実施例では、鉄筋10が鉄筋11と交差する場所に鉄筋用スペーサー1を装着する使用例を中心に説明したが、これに限られない。すなわち、鉄筋同士が交差していない箇所にも、鉄筋用スペーサー1を装着使用することができる。
【0075】
(7)上述した実施例では、係止爪8の構造についても詳細に説明したが、係止爪8の構造はこれに限られず、適宜に変更することができる。たとえば、屈曲アーム部8bは、軸AX方向から見て2つの直線状部位が連結された略「へ」の字状の形状を呈していたが、その一部または全部を湾曲状部位に変更してもよい。
【0076】
また、係止爪8を以下に説明するように変更してもよい。図24から図30を参照する。図24は変形実施例に係る鉄筋用スペーサー51を、そのスペーサー主部側から見た外観斜視図であり、図25は変形実施例に係る鉄筋用スペーサー51を、そのヘッド側から見た外観斜視図であり、図26は変形実施例に係る鉄筋用スペーサー51の平面図であり、図27は変形実施例に係る鉄筋用スペーサー51の一部を縦断した断面図であり、図28は変形実施例に係る鉄筋用スペーサー51の装着状態を示す斜視図であり、図29は変形実施例に係る鉄筋用スペーサー51の装着状態を示す平面図であり、図30は変形実施例に係る鉄筋用スペーサー51の装着状態を示す一部縦断側面図である。
【0077】
図示するように、変形実施例に係る鉄筋用スペーサー51が備える係止爪8は、基部8aの上端および下端から、門型の屈曲アーム部8fが延びている。この屈曲アーム部8fの先端部を繋ぐ先端連結部の略中央部位から、幅広い単一の係止片8gが斜め内向き前方に向けて切り起こされて形成されている。さらに、係止片8gの先端面は凹凸形状(山形形状)を呈しており、環状突起(突条)10aが形成されている部位であっても、係止片8gが好適に鉄筋10と係止することができるように構成されている。
【符号の説明】
【0078】
1、21、31、41、51 … 鉄筋用スペーサー
2 … スペーサー主部
3 … ヘッド部
4 … 溝部
5 … 凹曲面
6 … 当接部
6a … 第1当接面
6b … 第2当接面
6c … 傾斜面
7 … 貫通孔
8 … 係止爪
8a … 基部
8b、8f … 屈曲アーム部
8c、8g … 係止片
8c1 … 先端面
10、11 … 鉄筋
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋と型枠内面との間隔寸法(被り寸法、被り厚さ)を確保するため、または、鉄筋同士の間隔を確保するために、鉄筋に装着して用いる鉄筋用スペーサーに関する。
【背景技術】
【0002】
上記鉄筋用スペーサーとしては各種のものが提案され実用化されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の鉄筋用スペーサーは、コンクリートあるいはモルタルからなり、鉄筋を当接支持する溝部が形成されているスペーサー本体と、この溝部に支持された鉄筋に弾性係止する左右一対の爪部を備えている。
【0003】
上記構成の鉄筋用スペーサーでは、鉄筋に強く押し付けて鉄筋を溝部に押し込むと、爪部の弾性によって鉄筋を保持することができる。よって、鉄筋用スペーサーを鉄筋に容易に装着することができ、作業性に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−308984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の鉄筋用スペーサーでは、コンクリートの打設時などにおいてスペーサー本体が強い衝撃を受けると、スペーサー本体が鉄筋の回りで回動してしまうおそれがある。
【0006】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、鉄筋に装着した姿勢を安定的に保つことができる鉄筋用スペーサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、交差する鉄筋に取り付け可能な鉄筋用スペーサーであって、手前側の鉄筋の下部と当接する溝部と、手前側の鉄筋を前記溝部に当接した状態で保持する保持具と、前記溝部の側方に設けられたヘッド部と、を備え、前記ヘッド部は、手前側の鉄筋と交差する奥側の鉄筋と当接可能な当接部を有する鉄筋用スペーサーである。
【0008】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、奥側の鉄筋と当接可能な当接部を有するヘッド部を備えているので、強い衝撃を受けても、鉄筋用スペーサー自体が位置ずれや回転することを好適に抑制することができる。よって、鉄筋用スペーサーは、鉄筋に装着した姿勢を安定的に保つことができる。
【0009】
ここで、「手前側」および「奥側」とは、鉄筋用スペーサーから見たときのことであり、「手前側」は「鉄筋用スペーサーに近い方」と同義であり、「奥側」とは「鉄筋用スペーサーから遠い方」と同義である。また、手前側の鉄筋の下部が溝部と当接するので、奥側の鉄筋は手前側の鉄筋の上部側で交差する。
【0010】
また、本発明において、前記ヘッド部は、前記溝部の両側方にそれぞれ設けられていることが好ましい(請求項2)。溝部を挟んで各ヘッド部が設けられているので、各当接部は溝部の両側方で奥側の鉄筋と当接することができる。よって、鉄筋用スペーサーの装着姿勢の安定性を効果的に高めることができる。
【0011】
また、本発明において、前記当接部は、奥側の鉄筋の下部と当接することが好ましい(請求項3)。手前側の鉄筋の軸回りに鉄筋用スペーサーが回転することを好適に規制することができる。
【0012】
また、本発明において、前記当接部は、奥側の鉄筋の側部と当接することが好ましい(請求項4)。前記手前側の鉄筋に対して鉄筋用スペーサーがねじれるように回転することを規制することができる。
【0013】
また、本発明において、前記当接部は、ヘッド部を切り欠いて形成されていることが好ましい(請求項5)。切り欠きによれば、その切り欠きの奥端を、奥側の鉄筋に好適に当接させることができる。
【0014】
また、本発明において、前記ヘッド部は、前記溝部に対して手前側の鉄筋の軸方向の一方に張り出しており、前記当接部は前記溝部に対して張り出した位置に形成されていることが好ましい(請求項6)。当接部は溝部から張り出した位置で奥側の鉄筋と当接する。このため、手前側の鉄筋は、奥側の鉄筋と交差する位置から若干外れた部位で、溝部と当接する。したがって、手前側の鉄筋を溝部に当接させる際に、交差する鉄筋同士を結束する結束線材の結び目(玉)などが邪魔になることはないので、手前側の鉄筋を溝部で確実に保持することができる。
【0015】
また、本発明において、手前側の鉄筋が奥側の鉄筋と接する部位の反対側にあたる手前側の鉄筋の下部の周囲は、開放されていることが好ましい(請求項7)。手前側の鉄筋が奥側の鉄筋と交差している部位の周囲が開放されているので、鉄筋用スペーサーをスムーズに装着することができる。
【0016】
また、本発明において、前記溝部の下部に連結され、手前側の鉄筋の被り厚さに応じた長さを有するスペーサー主部を備えており、前記スペーサー主部は、手前側の鉄筋の軸方向に対して溝部と略同じ厚みを有していることが好ましい(請求項8)。手前側の鉄筋が奥側の鉄筋と交差している部位の周囲を、スペーサー主部によって覆うことがなく、好適に開放させることができる。
【0017】
また、本発明において、前記スペーサー主部は前記ヘッド部の下部にも連結されており、前記溝部と前記ヘッド部と前記スペーサー主部とは一体に形成されていることが好ましい(請求項9)。鉄筋用スペーサーの堅牢性の高めることができる。
【0018】
また、本発明において、前記保持具は、手前側の鉄筋に当接する複数の係止片を備え、各係止片は互いに独立して弾性変形可能であることが好ましい(請求項10)。鉄筋の外周面には、ズレ止め用の環状突起(以下、適宜「突条」という)が形成されていることがある。手前側の鉄筋に突条が設けられている場合であっても、保持具が有する複数の係止片は互いに独立して弾性変形可能であるので、各係止片はそれぞれ突条のある部位および突条のない部位のいずれであっても的確に弾性係止する。よって、保持具は、手前側の鉄筋を溝部に当接した状態で的確に保持することができる。さらに、突条の部位、および、突条の無い部位の双方に係止片が係止しているときには、鉄筋用スペーサーが手前側の鉄筋の軸方向にずれることが阻止され、鉄筋に装着した姿勢をより安定的に保つことができる。
【0019】
また、本発明において、前記複数の係止片は手前側の鉄筋の軸方向に並んでいることが好ましい(請求項11)。複数の係止片を鉄筋の軸方向に並ぶように配置することで、手前側の鉄筋が溝部に当接した状態を効果的に維持することができる。
【0020】
また、本発明において、前記保持具は、前記ヘッド部に埋設固定されている基部と、手前側の鉄筋の軸方向から見て、前記基部から手前側の鉄筋の上方へ延びる複数の屈曲アーム部と、を備え、前記屈曲アーム部は、前記基部に対して互いに独立して弾性変形可能であり、複数の係止片は、手前側の鉄筋の軸方向から見て、各屈曲アーム部から手前側の鉄筋の上部に向かう斜め方向にそれぞれ直線的に延びており、各係止片は鉄筋を前記溝部に案内可能であり、かつ、案内された鉄筋の下部が前記溝部と当接する際に各係止片の先端面が当該鉄筋の上部に当接することが好ましい(請求項12)。各係止片は、手前側の鉄筋の軸方向から見て、各屈曲アーム部から手前側の鉄筋の上部に向かう斜め方向にそれぞれ直線的に延びているので、鉄筋を溝部に好適に案内することができる。また、案内された鉄筋の下部が前記溝部と当接する際に各係止片の先端面が当該鉄筋の上部に当接するので、鉄筋用スペーサーは手前側の鉄筋を速やかに保持することができる。
【0021】
また、本発明において、各係止片の先端面は、手前側の鉄筋の軸方向に略平行な平坦面であることが好ましい(請求項13)。鉄筋の外周面が平坦であれば、各係止片は線接触で鉄筋と当接することができる。
【0022】
また、本発明において、前記係止片は、前記屈曲アーム部に連結されている基部側に比べて、鉄筋に当接する先端側が幅広であることが好ましい(請求項14)。各係止片はより広い範囲で鉄筋と当接することができる。
【0023】
また、本発明において、手前側の鉄筋の軸方向に対して前記複数の係止片が配置される範囲は、前記溝部が当該鉄筋を保持する範囲と略同じであることが好ましい(請求項15)。手前側の鉄筋を、溝部と略同程度の範囲にわたって係止片によって係止し、溝部に押し付けることができる。よって、手前側の鉄筋が溝部から浮き上がったり、溝部に対して傾いたりすることを確実に防止することができる。
【0024】
なお、本明細書は、次のような鉄筋用スペーサーに係る発明も開示している。
【0025】
(1)請求項8または請求項9に記載の鉄筋用スペーサーにおいて、前記ヘッド部は、前記スペーサー主部に対して手前側の鉄筋の軸方向の一方に張り出しており、前記当接部は前記スペーサー主部に対して張り出した位置に形成されている鉄筋用スペーサー。
【0026】
前記(1)に記載の発明によれば、当接部はスペーサー主部から張り出した位置で奥側の鉄筋と当接する。このため、手前側の鉄筋が奥側の鉄筋と交差している部位の周囲を、スペーサー主部によって覆うことがなく、好適に開放させることができる。
【0027】
(2)請求項8または請求項9に記載の鉄筋用スペーサーにおいて、溝部、ヘッド部、および、スペーサー主部の各一方面は、面一の平坦面に形成されている鉄筋用スペーサー。
【0028】
前記(2)に記載の発明によれば、成形空間(キャビティ)を一方に向けて開放した成形型によって、鉄筋用スペーサーを成形することができる。すなわち、このような成形型に生コンクリートあるいは生モルタルなどの素材を流し込み、余剰分を平坦にすき切り、養生硬化した後に成形型から抜き出すことで鉄筋用スペーサーを得ることができる。このように、素材の流し込みおよびすき切が容易な片開放の成形型を用いて簡単に所望形状の鉄筋用スペーサーを製作することができる。
【発明の効果】
【0029】
この発明に係る鉄筋用スペーサーによれば、手前側の鉄筋と交差する奥側の鉄筋と当接可能な当接部を有するヘッド部を備えているので、強い衝撃を受けても、鉄筋用スペーサー自体が位置ずれや回転することを好適に抑制することができる。よって、鉄筋用スペーサーは、鉄筋に装着した姿勢を安定的に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例に係る鉄筋用スペーサーを、そのスペーサー主部側から見た外観斜視図である。
【図2】実施例に係る鉄筋用スペーサーを、そのヘッド側から見た外観斜視図である。
【図3】実施例に係る鉄筋用スペーサーの平面図である。
【図4】実施例に係る鉄筋用スペーサーの一部を縦断した側面図である。
【図5】鉄筋用スペーサーの装着状態を示す斜視図である。
【図6】鉄筋用スペーサーの装着状態を示す平面図である。
【図7】鉄筋用スペーサーの装着状態を示す一部縦断側面図である。
【図8】鉄筋用スペーサーの装着状態を示す要部の斜視図である。
【図9】鉄筋用スペーサーの他の装着状態を示す斜視図である。
【図10】鉄筋用スペーサーの他の装着状態を示す一部縦断側面図である。
【図11】鉄筋用スペーサーの他の装着状態を示す斜視図である。
【図12】成形型の平面図である。
【図13】図11におけるa−a断面図である。
【図14】図11におけるb−b断面図である。
【図15】成形型の斜視図である。
【図16】成形過程の斜視図である。
【図17】大径仕様の鉄筋用スペーサーの外観斜視図である。
【図18】大径仕様の鉄筋用スペーサーの平面図である。
【図19】大径仕様の鉄筋用スペーサーの一部を縦断した側面図である。
【図20】小径仕様の鉄筋用スペーサーの平面図である。
【図21】小径仕様の鉄筋用スペーサーの一部を縦断した側面図である。
【図22】変形実施例に係る鉄筋用スペーサーの外観斜視図である。
【図23】変形実施例に係る鉄筋用スペーサーの一部を縦断した側面図である。
【図24】変形実施例に係る鉄筋用スペーサーを、そのスペーサー主部側から見た外観斜視図である。
【図25】変形実施例に係る鉄筋用スペーサーを、そのヘッド側から見た外観斜視図である。
【図26】変形実施例に係る鉄筋用スペーサーの平面図である。
【図27】変形実施例に係る鉄筋用スペーサーの一部を縦断した断面図である。
【図28】変形実施例に係る鉄筋用スペーサーの装着状態を示す斜視図である。
【図29】変形実施例に係る鉄筋用スペーサーの装着状態を示す平面図である。
【図30】変形実施例に係る鉄筋用スペーサーの装着状態を示す一部縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0032】
図1は、実施例に係る鉄筋用スペーサー1をそのスペーサー主部2側から見た外観斜視図であり、図2は、そのヘッド3側から見た外観斜視図である。図3は、実施例に係る鉄筋用スペーサー1の平面図であり、図4は、実施例に係る鉄筋用スペーサー1の一部を縦断した側面図である。
【0033】
本実施例に係る鉄筋用スペーサー1は、鉄筋の被り厚さに応じた長さを有するスペーサー主部2と、鉄筋の下部と当接する溝部4と、鉄筋を溝部4に当接した状態で保持する係止爪8と、溝部4で保持する鉄筋と交差する奥側の鉄筋と当接可能なヘッド部3とを備えている。
【0034】
スペーサー主部2は、その幅が先端(下端)に向けて先細りした略楔形を呈し、先端は平面視で丸く湾曲している。スペーサー主部2の高さ方向hの長さは、後述するように各種の鉄筋の被り厚さ寸法に対応して選択設計されている。
【0035】
スペーサー主部2の後端部(上端部)には、溝部4と2つのヘッド部3が一体に連設されている。ヘッド部3は溝部4の左右の両側方にそれぞれ配置されており、これら各ヘッド部3と溝部4とは幅方向wに並んでいる。
【0036】
溝部4は鉄筋と当接する。溝部4とスペーサー主部2とは、奥行き方向dに略同じ長さ(厚み)を有している。溝部4には、奥行き方向dに畝状に連なる部分円弧状の湾曲面5が形成されている。この湾曲面5に鉄筋の下部が当接する。
【0037】
各ヘッド部3は、スペーサー主部2の上端部に対して幅方向wに左右に張り出しているとともに、スペーサー主部2の上端部および溝部4に比べて奥行き方向dに大きな厚みを有している。すなわち、各ヘッド部3は、溝部4に対して奥行き方向dに張り出している。また、各ヘッド部3は、溝部4で保持される鉄筋の上端よりも高くなるように、その高さ方向hの寸法が設計されている。よって、各ヘッド部3に囲まれる溝部4の上方には、略矩形の凹部空間aが形成されている。スペーサー主部2と各ヘッド部3と溝部4の裏面側は、面一の平坦面に形成されている。
【0038】
各ヘッド部3には、溝部4に対して張り出した表面側の上角部に当接部6が切り欠き形成されている。この切り欠きの奥端には、幅方向wに細長い平坦面である第1当接面6aおよび第2当接面6bが形成されており、これら第1当接面6aおよび第2当接面6bが当接部6を構成している。切り欠きは略段差状に形成されて、第1当接面6aと第2当接面6bは互いに略直交している。さらに、各ヘッド部3には、その表面と裏面との間を貫通する貫通孔7がそれぞれ形成されている。貫通孔7は、鉄筋用スペーサー1と鉄筋とを固定する結束線材を挿入するために使用される。
【0039】
凹部空間aの内壁面に相当する各ヘッド部3の側壁には、左右一対の係止爪8が左右対称に対向配備されている。図15には、係止爪8全体の外観を示している。図示するように、係止爪8は、板バネ材を打ち抜きプレスしたものを、各所で屈曲加工することによって生産される。
【0040】
図3、図6に示すように、係止爪8は、ヘッド部3に埋設固定されている基部8aを有している。この基部8aから、複数本(本実施例では3本)の屈曲アーム部8bが延びている。複数の屈曲アーム部8bは、奥行き方向dに1列に並んでいる。各屈曲アーム部8bは、溝部4の斜め上方を覆うように屈曲している。言い換えれば、図6に示すように、溝部4に当接する手前側の鉄筋10の軸AX方向(以下、適宜、「軸AX方向」という)から見て、各屈曲アーム部8bは、基部8aから手前側の鉄筋10の上方へ屈曲している。各屈曲アーム部8bは、基部8aに対して互い独立して弾性変形可能である。
【0041】
各屈曲アーム部8bには、それぞれ係止片8cが連続形成されている。各係止片8cは、溝部4の湾曲面5の略中心に向かう方向に直線的に延びている。換言すれば、図6に示すように、軸AX方向から見て、各屈曲アーム部8bから手前側の鉄筋10の上部(外周面)に向かう斜め方向に各係止片8cが直線的に延びている。複数本(本実施例では3本)の係止片8c同士は、互いに軸AX方向に並んでいる。図3に示すように、各係止片8cの先端面8c1は軸AXと略平行な平坦面であり、この先端面8c1が、手前側の鉄筋10の上部(外周面)と直接接触する。そして、屈曲アーム部8bの弾性変形により、各係止片8cは手前側の鉄筋10を溝部4に押し付けている。
【0042】
各係止片8cの先端部は、奥行き方向dに張り出した矩形形状を呈している。このため、係止片8cは、屈曲アーム部8bに連結されている側(以下、適宜「基端側」という)に比べて、鉄筋に当接する先端側が幅広な形状を有している。本実施例では、3本の係止片8cのうち、中央の係止片8cの幅は、両側の係止片8cの幅に比べて若干大きく設定されている。そして、軸AX方向に対して複数の係止片8cが配置される範囲は、溝部4が手前側の鉄筋10を保持する範囲と略同じである。
【0043】
また、係止爪8の基部8aには、位置決め用の舌片8dが略直角に切り起こされて形成されている。この舌片8dは、図3に示すように、スペーサー主部2の先端とは反対方向に切り起こされていることが好ましい。これにより、鉄筋10からスペーサー主部2の先端までの寸法を、打設されたコンクリートの被り厚さ(被り寸法)Lとすることができる。すなわち、被り厚さ(被り寸法)を、係止爪8の舌片8dによって減少させることなく、有効に確保することができる。係止爪8は、この発明における保持具に相当する。
【0044】
以上のように構成される鉄筋用スペーサー1の使用例を、図5乃至図8に例示する。
【0045】
図5乃至図7に示すように、鉄筋10は鉄筋用スペーサー1から見て手前側にあり、鉄筋11は鉄筋用スペーサー1から見て奥側にある。鉄筋10および鉄筋11は、交差する位置で互いに結束線材で結束されるか、溶接されることによって連結されている。なお、鉄筋10および鉄筋11の一方が縦筋(縦方向の鉄筋)であってもよいし、他方が横筋(横方向の鉄筋)であってもよい。
【0046】
鉄筋用スペーサー1は、鉄筋11と交差する位置より若干外れた鉄筋10の所定箇所に対して、鉄筋用スペーサー1の凹部空間aを対向させた状態で、鉄筋用スペーサー1を鉄筋10に強く押し付ける。この押し付けによって、左右の係止片8cで案内される鉄筋10は係止爪8を左右に押し広げ弾性変形させながら溝部4に導かれる。鉄筋10の下部外周面が凹曲面5に当接するまで押し込まれると、鉄筋10が係止片8cの先端面8c1を越え、弾性復元した係止片8cの先端面8c1が鉄筋10の上部外周面に強く係止され、鉄筋10が凹曲面5から離脱することを阻止する。これにより、鉄筋用スペーサー1は鉄筋10に装着される。
【0047】
なお、図8に示すように、鉄筋10の外周面にはコンクリートとのズレ止め用に環状突起10aが鉄筋長手方向に小ピッチで多数形成されることが多い。しかしながら、各係止片8cは独立して弾性変形することにより、各係止片8cはそれぞれ、鉄筋10の複雑な外周面にそれぞれ確実に係止する。たとえば、一部の係止片8cは環状突起10aと当接し、他の係止片8cは環状突起10aが形成されていない部分(凹部)と当接する。これによると、溝部4に当接する鉄筋10は、軸AX方向に対して溝部4と略同程度の範囲にわたって係止片8cによって押し圧される。この結果、鉄筋10が溝部4の凹曲面5全体と当接することができ、鉄筋10が溝部4から浮き上がったり、溝部4に対して鉄筋10が傾いたりすることがない。
【0048】
また、環状突起10aがある部位と環状突起10aがない部位(凹部)とに、異なる係止片8cがそれぞれ当接することで、鉄筋用スペーサー1が鉄筋10に対して軸AX方向に相対的にずれることが抑制される。これにより、鉄筋用スペーサー1の装着姿勢をより安定的に保つことができる。
【0049】
また、上述したように、凹曲面5は、鉄筋11と交差する位置より若干外れた鉄筋10の所定箇所と当接する。このため、鉄筋10と鉄筋11とが結束線材によって固定されていても、その結束線材、特に結束線材を結び上げたときにできる玉状の結び目が、凹曲面5と鉄筋10との接合面の間に入り込むことがない。よって、鉄筋10をがたつきなく保持することができる。また、図5に示すように、鉄筋11と接する位置の反対側にあたる鉄筋10の下部の周囲(図5では符号「b」を付して示す)は開放されている。このため、上述の結束線材が鉄筋用スペーサー1のスペーサー主部2やその他の部位とも干渉することがない。よって、鉄筋用スペーサー1によって結束線材を傷めることがない。
【0050】
鉄筋10に鉄筋用スペーサー1を装着したとき、各ヘッド部3の第2当接面6bには奥側の鉄筋11の下部外周面がそれぞれ当接する。これにより、手前側の鉄筋10の軸AXの回りに鉄筋用スペーサー1が回動することが規制される。また、各ヘッド部3の第1当接面6aには奥側の鉄筋11の側部外周面がそれぞれ当接する。これにより、鉄筋10の軸AXおよび鉄筋11の軸BXと直交する1軸回りに鉄筋用スペーサー1がねじれるように回動することが規制される。このように、鉄筋用スペーサー1は、ヘッド部3が鉄筋11と当接することで、鉄筋10に装着した姿勢を安定的に保つことができる。
【0051】
なお、鉄筋10の軸AXは、図1乃至図4に図示した奥行き方向dと略同じ方向であり、鉄筋11の軸BXは、図1乃至図4に図示した幅方向wと略同じ方向である。よって、上述した軸AX及び軸BXと直交する軸は、図1乃至図4に示した高さ方向hと略同じ方向となる。
【0052】
図6、図7に示すように、スペーサー主部2の先端は、型枠12の内面と当接する。この型枠12内にコンクリートが流し込まれて、鉄筋コンクリートの構造物が構築・建造される。コンクリートの流し込みの際、強い衝撃が鉄筋用スペーサー1に加わるが、鉄筋用スペーサー1は鉄筋11と当接して位置ずれが規制されているので、鉄筋用スペーサー1は鉄筋10に装着された姿勢のままで保たれる。
【0053】
ここで、鉄筋10から型枠12の内面までの寸法が、打設されたコンクリートの外面から鉄筋10までの被り厚さ(被り寸法)Lとなる。異なった被り厚さ(被り寸法)Lの要望に対応するため、図3,図4中の仮想線(二点鎖線)で示すように、スペーサー主部2の先端位置の異なる複数種の鉄筋用スペーサー1が製作されて供給される。
【0054】
図示した鉄筋用スペーサー1は複数種類の径(たとえば、19mmから22mmの径範囲)の鉄筋10に装着可能である。鉄筋10の径が大きくなるほど、第2当接面6bと鉄筋11との間に隙間が生じやすくなるが、その隙間はわずかであり、鉄筋用スペーサー1が軸AXの回りに回動しようとすると直ちに第2当接面6bが鉄筋11と当接して、回動が規制される。なお、第1当接面6aは、鉄筋10の径の大小に関係なく、鉄筋11と好適に当接する。
【0055】
本発明の鉄筋用スペーサー1は上記のようにして装着することを標準としているが、以下のような形態で装着使用することもできる。
【0056】
(1)図9に示すように、各ヘッド部3の貫通孔7を利用して結束線材13で奥側の鉄筋11に縛りつけることで一層強固な装着を行うこともできる。
【0057】
(2)鉄筋用スペーサー1の装着姿勢は任意であり、鉄筋11に対してヘッド部3が上下左右のいずれの方から当接してもよい。図10には、鉄筋11に対してヘッド部3が上方から当接する使用状態を模試的に示している。なお、図10に示す鉄筋用スペーサー1の姿勢は、図7に示す鉄筋用スペーサー1の姿勢を表裏反転したものである。また、図11には、鉄筋11に対してヘッド部3が右側から当接する使用状態を模試的に示している。なお、図11に示す鉄筋用スペーサー1の姿勢は、図7に示す鉄筋用スペーサー1の姿勢を90度回転したしたものである。
【0058】
次に、図12乃至図16を参照して、上記鉄筋用スペーサー1の製作手順を説明する。
【0059】
図12乃至図15に示すように、鉄筋用スペーサー1の成形型15は硬質樹脂材(例えば、ポリエチレン)からなり、スペーサー主部2に対応するキャビティCaと、各ヘッド部3および溝部4に対応するキャビティCbとが連設されて上向きに開放されている。ヘッド部3に対応するキャビティCbの底壁15eからは貫通孔7を成形するピン部15aが立設されている(図14参照)。また、図示を省略しているが、キャビティCaの底壁15fに、被り寸法表示を反転させた凸版または凹版を設けてもよい(図13参照)。ここで、被り寸法表示は、たとえば、被り寸法が100mmの場合にはこれを簡略表示する数字の「100」などであってもよい。
【0060】
前記凹部空間aを成形するために成形型15に設けられの左右の側壁15bには、係止爪8を上方から挿入するスリット16が形成されている。側壁15bの外面にはスリット16に沿う位置決め用の突条15cが設けられ、舌片8dが側壁15aの内面に沿う姿勢で係止爪8をスリット16に位置決め装着される。そして、係止爪8が取り付けられた様態で成形型15に素材(たとえば、生コンクリートまたは生モルタルなど)を流し込むことで、係止爪8は所定の姿勢で埋設固定することができる。
【0061】
なお、図15に示すように、係止爪8の基部8aの上端及び下端にはそれぞれ凹部8eが切欠き形成されており、係止爪8をスリット16に挿入した際、凹部8eがスリット16の奥端において側壁5bに係合され、舌片8dと協働して係止爪8の位置および姿勢を保持することができる。
【0062】
また、成形型15の上端には、左右辺に沿って鍔部15dが張り出し形成されている。
そして、図16に示すように、中抜き枠状に構成された支持枠17における左右の支持桟17aに亘って鍔部15dを介して載置して、係止爪8が組み込まれた複数枚(図示した例では9枚)の成形型15を縦横に配列して支持枠17に載置した後、各成形型15に生コンクリートあるいは生モルタルなどの素材を流し込み、余剰の素材をヘラなどで掻取って、充填した素材を成形型上面に沿って平坦に掻き均し、所定の温度および湿度管理のもとで養生硬化させる。
【0063】
養生硬化過程を終えると、支持枠17から各成形型15を取外し、成形型15に衝撃や振動などを与えて硬化成形された鉄筋用スペーサー1を各成形型15から抜き外す。
【0064】
なお、一つの仕様の鉄筋用スペーサー1では、装着できる鉄筋径に限りがあるので、鉄筋径に対応して複数仕様の鉄筋用スペーサー1が製作提供される。
【0065】
図17乃至図19は、大径(たとえば、25mm以上の径)の鉄筋へ好適に装着できる仕様に製作された鉄筋用スペーサー21を示す外観斜視図、平面図、および、一部縦断側面図である。図示する鉄筋用スペーサー21は、大径の鉄筋10に対応して凹部空間aの左右間隔、溝部4の湾曲面5の大きさ、係止爪8の左右間隔が大きく設定されるとともに、ヘッド部3と溝部4およびスペーサー主部2との接合強度を確保するために、補強用にリブ部3aが備えられている。また、この大径仕様においても、図中の仮想線で示すように、スペーサー主部2の先端位置の異なるものを製作して、複数種の被り寸法に対応できるようにする。
【0066】
図20および図21は、小径(たとえば、16mm以下の径)の鉄筋へ好適に装着できる仕様に製作された鉄筋用スペーサー31を示す平面図および一部縦断側面図である。図示する鉄筋用スペーサー31は、小径の鉄筋10に対応して凹部空間aの左右間隔、溝部4の湾曲面5の大きさ、係止爪8の左右間隔が小さく設定されている。また、この小径仕様においても、図中の仮想線で示すように、スペーサー主部2の先端位置の異なるものを製作して、複数種の被り寸法に対応できるようにする。
【0067】
なお、上記大径仕様および小径仕様の各鉄筋用スペーサー21、31が備える係止爪8は、中径仕様の鉄筋用スペーサー1に設けられる係止爪8と同形状であり、対向して組み付けられる相互間隔が異なっているのみである。
【0068】
本発明は、以下のように変形して実施することもできる。
【0069】
(1)上述した実施例では、各ヘッド部3に形成した当接部6は、第1当接面6aおよび第2当接面6bより構成されていたが、これに限られない。たとえば、鉄筋11の側部に当接する第1当接面6aのみを備えるように変更してもよいし、鉄筋11の下部に当接する第2当接面6bのみを備えるように構成してもよい。
【0070】
(2)上述した実施例では、当接部6を構成する第1当接面6aおよび第2当接面6bは、鉄筋11と略線接触するものであったが、これに限られない。たとえば、鉄筋11の外周面に点接触可能な突起部によって当接部6を構成するように変更してもよい。この場合には、突起部の幅方向wの左右スパンは、できるだけ大きく設定することが望ましい。あるいは、鉄筋11の外周面に面接触可能な湾曲面によって当接部6を構成するように変更してもよい。
【0071】
(3)上述した実施例では、当接部6を構成する第1当接面6aおよび第2当接面6bは、幅方向wに細長い平坦面であったが、これに限られない。図22と図23を参照する。図22は、変形実施例に係る鉄筋用スペーサー41の外観斜視図であり、図23は、変形実施例に係る鉄筋用スペーサー41の一部を縦断した側面図である。図示するように、当接部6を傾斜面6cによって構成すると、手前側の鉄筋10の径が多少大きくなっても、当接部6によって鉄筋11の外周を斜め下方から当接支持して、鉄筋用スペーサー1が鉄筋10の軸AX回りに回動することや、軸BX回りにねじれることを好適に阻止することができる。
【0072】
(4)上述した実施例では、溝部4の左右両側方にヘッド部3を備えていたが、これに限られない。たとえば、溝部4の一側方のみにヘッド部3を備えるように変更してもよい。
【0073】
(5)上述した実施例では、係止爪8によって鉄筋10を保持するものであったが、これに限られない。溝部4の凹曲面5に当接する鉄筋10を保持することができれば、適宜な部材を採用してもよい。
【0074】
(6)上述した実施例では、鉄筋10が鉄筋11と交差する場所に鉄筋用スペーサー1を装着する使用例を中心に説明したが、これに限られない。すなわち、鉄筋同士が交差していない箇所にも、鉄筋用スペーサー1を装着使用することができる。
【0075】
(7)上述した実施例では、係止爪8の構造についても詳細に説明したが、係止爪8の構造はこれに限られず、適宜に変更することができる。たとえば、屈曲アーム部8bは、軸AX方向から見て2つの直線状部位が連結された略「へ」の字状の形状を呈していたが、その一部または全部を湾曲状部位に変更してもよい。
【0076】
また、係止爪8を以下に説明するように変更してもよい。図24から図30を参照する。図24は変形実施例に係る鉄筋用スペーサー51を、そのスペーサー主部側から見た外観斜視図であり、図25は変形実施例に係る鉄筋用スペーサー51を、そのヘッド側から見た外観斜視図であり、図26は変形実施例に係る鉄筋用スペーサー51の平面図であり、図27は変形実施例に係る鉄筋用スペーサー51の一部を縦断した断面図であり、図28は変形実施例に係る鉄筋用スペーサー51の装着状態を示す斜視図であり、図29は変形実施例に係る鉄筋用スペーサー51の装着状態を示す平面図であり、図30は変形実施例に係る鉄筋用スペーサー51の装着状態を示す一部縦断側面図である。
【0077】
図示するように、変形実施例に係る鉄筋用スペーサー51が備える係止爪8は、基部8aの上端および下端から、門型の屈曲アーム部8fが延びている。この屈曲アーム部8fの先端部を繋ぐ先端連結部の略中央部位から、幅広い単一の係止片8gが斜め内向き前方に向けて切り起こされて形成されている。さらに、係止片8gの先端面は凹凸形状(山形形状)を呈しており、環状突起(突条)10aが形成されている部位であっても、係止片8gが好適に鉄筋10と係止することができるように構成されている。
【符号の説明】
【0078】
1、21、31、41、51 … 鉄筋用スペーサー
2 … スペーサー主部
3 … ヘッド部
4 … 溝部
5 … 凹曲面
6 … 当接部
6a … 第1当接面
6b … 第2当接面
6c … 傾斜面
7 … 貫通孔
8 … 係止爪
8a … 基部
8b、8f … 屈曲アーム部
8c、8g … 係止片
8c1 … 先端面
10、11 … 鉄筋
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差する鉄筋に取り付け可能な鉄筋用スペーサーであって、
手前側の鉄筋の下部と当接する溝部と、
手前側の鉄筋を前記溝部に当接した状態で保持する保持具と、
前記溝部の側方に設けられたヘッド部と、
を備え、
前記ヘッド部は、手前側の鉄筋と交差する奥側の鉄筋と当接可能な当接部を有する鉄筋用スペーサー。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄筋用スペーサーにおいて、
前記ヘッド部は、前記溝部の両側方にそれぞれ設けられている鉄筋用スペーサー。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の鉄筋用スペーサーにおいて、
前記当接部は、奥側の鉄筋の下部と当接する鉄筋用スペーサー。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の鉄筋用スペーサーにおいて、
前記当接部は、奥側の鉄筋の側部と当接する鉄筋用スペーサー。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の鉄筋用スペーサーにおいて、
前記当接部は、ヘッド部を切り欠いて形成されている鉄筋用スペーサー。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の鉄筋用スペーサーにおいて、
前記ヘッド部は、前記溝部に対して手前側の鉄筋の軸方向の一方に張り出しており、
前記当接部は前記溝部に対して張り出した位置に形成されている鉄筋用スペーサー。
【請求項7】
請求項6に記載の鉄筋用スペーサーにおいて、
手前側の鉄筋が奥側の鉄筋と接する部位の反対側にあたる手前側の鉄筋の下部の周囲は、開放されている鉄筋用スペーサー。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の鉄筋用スペーサーにおいて、
前記溝部の下部に連結され、手前側の鉄筋の被り厚さに応じた長さを有するスペーサー主部を備えており、
前記スペーサー主部は、手前側の鉄筋の軸方向に対して溝部と略同じ厚みを有している鉄筋用スペーサー。
【請求項9】
請求項8に記載の鉄筋用スペーサーにおいて、
前記スペーサー主部は前記ヘッド部の下部にも連結されており、
前記溝部と前記ヘッド部と前記スペーサー主部とは一体に形成されている鉄筋用スペーサー。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の鉄筋用スペーサーにおいて、
前記保持具は、手前側の鉄筋に当接する複数の係止片を備え、
各係止片は互いに独立して弾性変形可能である鉄筋用スペーサー。
【請求項11】
請求項10に記載の鉄筋用スペーサーにおいて、
前記複数の係止片は手前側の鉄筋の軸方向に並んでいる鉄筋用スペーサー。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載の鉄筋用スペーサーにおいて、
前記保持具は、前記ヘッド部に埋設固定されている基部と、
手前側の鉄筋の軸方向から見て、前記基部から手前側の鉄筋の上方へ延びる複数の屈曲アーム部と、
を備え、前記屈曲アーム部は、前記基部に対して互いに独立して弾性変形可能であり、
複数の係止片は、手前側の鉄筋の軸方向から見て、各屈曲アーム部から手前側の鉄筋の上部に向かう斜め方向にそれぞれ直線的に延びており、
各係止片は鉄筋を前記溝部に案内可能であり、かつ、案内された鉄筋の下部が前記溝部と当接する際に各係止片の先端面が当該鉄筋の上部に当接する鉄筋用スペーサー。
【請求項13】
請求項12に記載の鉄筋用スペーサーにおいて、
各係止片の先端面は、手前側の鉄筋の軸方向に略平行な平坦面である鉄筋用スペーサー。
【請求項14】
請求項12または請求項13に記載の鉄筋用スペーサーにおいて、
前記係止片は、前記屈曲アーム部に連結されている基部側に比べて、鉄筋に当接する先端側が幅広である鉄筋用スペーサー。
【請求項15】
請求項10から請求項14のいずれかに記載の鉄筋用スペーサーにおいて、
手前側の鉄筋の軸方向に対して前記複数の係止片が配置される範囲は、前記溝部が当該鉄筋を保持する範囲と略同じである鉄筋用スペーサー。
【請求項1】
交差する鉄筋に取り付け可能な鉄筋用スペーサーであって、
手前側の鉄筋の下部と当接する溝部と、
手前側の鉄筋を前記溝部に当接した状態で保持する保持具と、
前記溝部の側方に設けられたヘッド部と、
を備え、
前記ヘッド部は、手前側の鉄筋と交差する奥側の鉄筋と当接可能な当接部を有する鉄筋用スペーサー。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄筋用スペーサーにおいて、
前記ヘッド部は、前記溝部の両側方にそれぞれ設けられている鉄筋用スペーサー。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の鉄筋用スペーサーにおいて、
前記当接部は、奥側の鉄筋の下部と当接する鉄筋用スペーサー。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の鉄筋用スペーサーにおいて、
前記当接部は、奥側の鉄筋の側部と当接する鉄筋用スペーサー。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の鉄筋用スペーサーにおいて、
前記当接部は、ヘッド部を切り欠いて形成されている鉄筋用スペーサー。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の鉄筋用スペーサーにおいて、
前記ヘッド部は、前記溝部に対して手前側の鉄筋の軸方向の一方に張り出しており、
前記当接部は前記溝部に対して張り出した位置に形成されている鉄筋用スペーサー。
【請求項7】
請求項6に記載の鉄筋用スペーサーにおいて、
手前側の鉄筋が奥側の鉄筋と接する部位の反対側にあたる手前側の鉄筋の下部の周囲は、開放されている鉄筋用スペーサー。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の鉄筋用スペーサーにおいて、
前記溝部の下部に連結され、手前側の鉄筋の被り厚さに応じた長さを有するスペーサー主部を備えており、
前記スペーサー主部は、手前側の鉄筋の軸方向に対して溝部と略同じ厚みを有している鉄筋用スペーサー。
【請求項9】
請求項8に記載の鉄筋用スペーサーにおいて、
前記スペーサー主部は前記ヘッド部の下部にも連結されており、
前記溝部と前記ヘッド部と前記スペーサー主部とは一体に形成されている鉄筋用スペーサー。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の鉄筋用スペーサーにおいて、
前記保持具は、手前側の鉄筋に当接する複数の係止片を備え、
各係止片は互いに独立して弾性変形可能である鉄筋用スペーサー。
【請求項11】
請求項10に記載の鉄筋用スペーサーにおいて、
前記複数の係止片は手前側の鉄筋の軸方向に並んでいる鉄筋用スペーサー。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載の鉄筋用スペーサーにおいて、
前記保持具は、前記ヘッド部に埋設固定されている基部と、
手前側の鉄筋の軸方向から見て、前記基部から手前側の鉄筋の上方へ延びる複数の屈曲アーム部と、
を備え、前記屈曲アーム部は、前記基部に対して互いに独立して弾性変形可能であり、
複数の係止片は、手前側の鉄筋の軸方向から見て、各屈曲アーム部から手前側の鉄筋の上部に向かう斜め方向にそれぞれ直線的に延びており、
各係止片は鉄筋を前記溝部に案内可能であり、かつ、案内された鉄筋の下部が前記溝部と当接する際に各係止片の先端面が当該鉄筋の上部に当接する鉄筋用スペーサー。
【請求項13】
請求項12に記載の鉄筋用スペーサーにおいて、
各係止片の先端面は、手前側の鉄筋の軸方向に略平行な平坦面である鉄筋用スペーサー。
【請求項14】
請求項12または請求項13に記載の鉄筋用スペーサーにおいて、
前記係止片は、前記屈曲アーム部に連結されている基部側に比べて、鉄筋に当接する先端側が幅広である鉄筋用スペーサー。
【請求項15】
請求項10から請求項14のいずれかに記載の鉄筋用スペーサーにおいて、
手前側の鉄筋の軸方向に対して前記複数の係止片が配置される範囲は、前記溝部が当該鉄筋を保持する範囲と略同じである鉄筋用スペーサー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2010−189863(P2010−189863A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32905(P2009−32905)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(500003040)アートスペース株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(500003040)アートスペース株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
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