説明

鉄道用時刻補正システム

【課題】 鉄道車両に適した鉄道用時刻補正システムを提供する。
【解決手段】 地上側に設けられた地上無線装置20によって、地上側に設けられた基準時刻受信装置21の時刻に基づく時刻情報を無線送信し、その送信された時刻情報に基づいて鉄道車両に搭載された時計の時刻を補正する。これにより、地上無線装置20による送信電波の波長を鉄道車両に適したものとすることが可能となるので、電波時計やGPSの時刻情報に基づいて直接的に車両の時計の時刻を補正する場合に比べて、確実に時刻を補正することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に搭載された時計の時刻を補正するための鉄道用時刻補正システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両には、行き先表示器等の表示装置が搭載されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−199340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、室内に設置された表示装置には、行き先に加えて、時刻も表示される場合があるが、この表示装置に表示される時刻は、鉄道車両に搭載されている時計に基づいて表示される。
【0004】
しかし、車両に搭載された時計は、通常、月差数十秒の誤差があり、その時刻合わせは、運用に任されるため、必ずしも正確な時刻となっていない場合が多い。
これを解消する手段として、電波時計やGPSによる時刻情報を受信できる装置を鉄道車両で搭載する手段が考えられるが、時刻補正が電波の受信状態に大きく左右され易いので、適切な解決手段とは言い難い。
【0005】
本発明は、上記点に鑑み、鉄道車両に適した鉄道用時刻補正システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、鉄道車両に搭載された時計の時刻を補正するための鉄道用時刻補正システムであって、地上側に設けれ、基準となる時刻を計時する基準時計手段と、地上側に設けられ、基準時計手段の時刻に基づく時刻情報を鉄道車両側に無線通信にて送信する送信手段と、鉄道車両に設けられ、送信手段により送信されてきた時刻情報を受信する受信手段とを備え、時計は、時刻情報に基づいて補正されることを特徴とする。
【0007】
これにより、請求項1に記載の発明では、地上側に設けられた送信手段によって、地上側に設けられた基準時計手段の時刻に基づく時刻情報を無線送信し、その送信された時刻情報に基づいて鉄道車両に搭載された時計の時刻が補正されるので、電波時計やGPSの時刻情報に基づいて、鉄道車両に搭載された時計の時刻を補正する場合に比べて、確実に時刻を補正することができる。
【0008】
つまり、電波時計やGPSの時刻情報に基づいて時刻を補正する場合には、予め決められた波長の電波を受信する必要があるので、電波の受信状態に大きく左右され易い。
しかし、本発明では、送信手段による送信電波の波長を鉄道車両に適したものとすることが可能となるので、電波時計やGPSの時刻情報に基づいて時刻を補正する場合に比べて、確実に時刻を補正することができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明では、時刻情報に遅延補正値を付加する補正値付加手段を備えることを特徴とする。
これにより、請求項2に記載の発明では、送信手段が送信したタイミングと実際に時計が補正されるタイミングとのずれを吸収することができるので、より正確に時刻を補正することができる。
【0010】
ところで、送信手段が送信したタイミングと実際に時計が補正されるタイミングとのずれは、鉄道車両の種類や実際の運転状況によって大きく相違する。
これに対して、請求項3に記載の発明では、補正値付加手段は、鉄道車両に設けられていることを特徴としているので、鉄道車両の種類や実際の運転状況に応じた遅延補正値を容易に付加することができ、容易に正確な時刻に補正することができる。
【0011】
なお、仮に、地上側に補正値付加手段を設けると、補正値付加手段は、送信すべき鉄道車両を認識した上で、その鉄道車両に適した遅延補正値を付加する必要があるので、補正値付加手段の構成が複雑になるとともに、コスト高を招くおそれがある。
【0012】
ところで、営業運転中に時刻が補正されると、時刻補正された車両の時刻が補正前と補正後とで不連続になってしまうおそれが高い。
また、少なくとも営業運転中は、時刻と対応付けて営業運転状態が記録(以下、この記録を運転記録という。)されているので、車両の時刻が補正前と補正後とで不連続になってしまうと、運転記録の信頼性が低下してしまう。
【0013】
これに対して、請求項4に記載の発明では、送信手段は、鉄道車両の車庫に設置されているので、請求項4に記載の発明では、営業運転中に時刻が補正されてしまうことがないので、仮に車両の時刻が補正前と補正後とで不連続になっても、運転記録の信頼性が低下することはない。
【0014】
また、請求項5に記載の発明では、鉄道車両の電源遮断後、次回の電源起動時に時刻情報に基づいて時計を補正するので、請求項5に記載の発明でも、仮に車両の時刻が補正前と補正後とで不連続になっても、運転記録の信頼性が低下することはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
1.図面の説明
図1は本発明の実施形態に係る鉄道車両用のデータ転送システムの概要を示すブロック図であり、図2は案内表示装置10の概念図であり、図3は車両情報制御装置11の概念図である。
【0016】
また、図4は地上無線装置20から送信されてきた情報データを車載無線装置13にて受信したときに実行される制御の概要を示すフローチャートであり、図5は鉄道車両の電源が遮断された後、次回の電源起動時に実行される制御の概要を示すフローチャートである。
【0017】
なお、鉄道車両は、通常、複数台の車両が連結されて構成されているが、本実施形態では、図1に示すように、3台の車両が連結されている場合を例に説明する。
2.データ転送システムの概要(図1参照)
各車両には、図1に示すように、案内表示装置10及び車両情報制御装置11等からなる表示システムが設けられ、運転台が設けられた車両には表示設定器12が設けられ、いずれかの車両(本実施形態では、運転台が設けられた車両)には車載無線装置13が設けられている。
【0018】
そして、これらの機器10〜13が通信回線(本実施形態では、有線回線)を介して互いに通信可能に接続されることにより、車両側システムが構成されている。なお、システム時計14は、車両側システムの基準となる時刻を計時する計時手段であり、このシステム時計14は、車載バッテリ(図示せず。)から電力の供給を受けている。
【0019】
また、案内表示装置10は、車両の外板ボディに装着されて行き先等の情報を鉄道車両の外方側に向けて表示するものである。
そして、案内表示装置10は、具体的には図2に示すように、例えば多数個のLEDからなるディスプレイ10A、ディスプレイ10Aの駆動回路10B、車両情報制御装置11から送信されてくるコード信号と表示すべき画像との対応関係が記憶された記憶装置10C、及びこれらの機器10A〜10Cを制御する制御部10D等から構成されている。
【0020】
因みに、記憶装置10Cは、電力の供給が停止した場合であっても、記憶内容を保持することが可能なフラッシュメモリ等の不揮発性記憶手段にて構成されている。また、案内表示装置10は交流電源(SIV起動時=パンタグラフ上昇時)で作動し、ディスプレイ10AはDC100V(車載バッテリ)で作動する。
【0021】
また、車両情報制御装置11は、少なくとも案内表示装置10の作動を制御する制御手段であり、この車両情報制御装置11は、表示設定器12を介して運転者又は車掌により設定又は操作された内容に従って案内表示装置10の作動を制御する。
【0022】
そして、車両情報制御装置11は、具体的には図3に示すように、制御部11A、記憶装置11B、及び時刻を計時する時計11C等を有して構成されており、制御部11Aは、表示設定器12によって設定又は操作された内容に従って案内表示装置10にて表示させる表示内容を決定し、その決定した表示内容を意味するコード信号を生成して案内表示装置10に送信するものである。
【0023】
因みに、記憶装置11Bは、車両に搭載されたバッテリ(図示せず。)から電力の供給を受け記憶内容を保持するSRAM等の高速な半導体記憶装置により構成されている。
また、車載無線装置13は、図1に示すように、地上側に設置された地上無線装置20から無線通信にて送信されてきた情報データを受信する受信手段であり、この車載無線装置13には、受信した情報データを記憶する記憶装置13Aが搭載されている。
【0024】
なお、車載無線装置13の記憶装置13Aは、車両に搭載されたバッテリ(図示せず。)から電力の供給を受け記憶内容を保持するSRAM等の高速な半導体記憶装置により構成されている。
【0025】
また、地上無線装置20の記憶装置20Aは、保持されている情報データを高速出力が可能な記憶手段で構成することが望ましいので、本実施形態では、SRAMにて記憶装置20Aを構成している。
【0026】
そして、基準時刻受信装置21は、データ転送システム全体の基準となる時刻を計時する計時手段であり、この基準時刻受信装置21は、本実施形態では電波時計を有して構成されている。なお、電波時計とは、標準電波送信所から発信される標準電波を受信して、時刻を日本標準時に自動的に同期させることができる時計をいう。
【0027】
地上サーバ22は、各鉄道車両に送信(供給)すべき表示データに、基準時刻受信装置21の時刻に基づく時刻情報(タイムスタンプ)を付加した情報データを作成して地上無線装置20に送信する情報データ作成供給手段である。
【0028】
なお、地上サーバ22で保持されている表示データは、通常、ROM等の情報記憶媒体を介して地上サーバ22に供給されるが、作業員が地上サーバ22を操作することにより、地上サーバ22で表示データを新たに作成してもよい。
【0029】
また、地上無線装置20、基準時刻受信装置21及び地上サーバ22からなる地上側システムは、通常、車両が格納される車両区(車両基地)及び本線主要駅に設置されるが、地上側システムが設置される箇所によっては、地上サーバ22に表示データが保持されていない場合又は基準時刻受信装置21が設置されていない場合がある。
【0030】
このため、地上サーバ22により作成される情報データは、原則として、前述したように時刻情報及び表示データから構成されるが、基準時刻受信装置21が設置されていない場合には、時刻情報が含まれていない情報データが作成され、地上サーバ22に表示データが保持されていない場合には、表示データが含まれていない情報データが作成される。
【0031】
3.データ転送システムの制御作動
3.1.地上システムの作動
地上サーバ22から地上無線装置20に送信されてきた情報データは、一旦、地上無線装置20の記憶装置20Aに保存され、車両側システムが搭載された鉄道車両が地上側システムに近づいて、地上無線装置20と車載無線装置13との間で無線通信が可能となったときに、記憶装置20Aに保存されている情報データが無線通信により車載無線装置13に送信される。
【0032】
3.2.情報データの受信時の制御(図4参照)
地上無線装置20を含む地上側システムは、前述したように、少なくとも車両区及び本線主要駅に設置されており、地上無線装置20に車両側システムが搭載された鉄道車両が近づいて、地上無線装置20と車載無線装置13との間で無線通信が可能となった時に、車両側システムにおいて図4に示す制御フローが起動される。
【0033】
そして、図4に示す制御フローが起動されると、先ず、地上無線装置20から送信されてきた情報データが、一旦、車載無線装置13の記憶装置13Aに記憶される(S1)。
このとき、各車両の車両情報制御装置11は、車載無線装置13の受信状態を検知し、情報データの受信が完了したことを検知すると、車載無線装置13の記憶装置13Aに記憶されている情報データを読み込んで記憶装置11Bに収容する(S10)。
【0034】
そして、車両情報制御装置11は、情報データに表示データが含まれている場合には、更新が必要な新しい情報データ(表示データ)が存在することを示すフラグ(以下、このフラグを更新データフラグという。)を記憶装置11Bに設定する(S20)。
【0035】
次に、車両側システムは、情報データに含まれている時刻情報(タイムスタンプ)に予め設定されている遅延補正時間を加算した時刻にてシステム時計14の時刻を補正する(S30)。因みに、情報データに時刻情報が含まれていないときには、システム時計14の時刻補正は実行されない。
【0036】
なお、図4に示す制御フローは、鉄道車両が走行中であるか停車中であるかを問わず、地上無線装置20と車載無線装置13との間で無線通信が可能となった時に起動される。
3.2.表示データ及び時刻の更新(図5参照)
図5に示すフローチャートは、鉄道車両の電源遮断後、次回の電源起動時に車両側システムで実行される制御を示している。このため、図5に示す制御は、通常、鉄道車両の車両区(車庫)に鉄道車両が停留している際に起動される。
【0037】
そして、図5に示す制御が起動されると、更新データフラグが設定されているか否かが判定され(S100)、更新データフラグが設定されていないと判定された場合には(S100:NO)、運転者用表示器(図示せず。)に、通常の車両運航時に表示される所定画面が表示された後(S110)、この制御が終了する。
【0038】
一方、更新データフラグが設定されていると判定された場合には(S100:YES)、パンタグラフを介して架線(送電線)から電力供給が開始され、案内表示装置10と車両情報制御装置11との間で通信が正常に実行可能であるか否かが判定される(S120)。
【0039】
そして、通信が正常に実行可能となったときに(S120:YES)、車両への交流電力供給を停止させない旨の警告メッセージが運転者用表示器に表示される(S130)。
つまり、車両情報制御装置11から案内表示装置10に表示データを伝送中にパンタグラフが降ろされて架線からの電力供給が停止すると、表示データ伝送を正常に実行することができなくなる。そこで、S130では、以下の案内表示伝送ローディングモードが実行される前に、その旨の警告が作業者(運転者)に対してされる。
【0040】
次に、車両側システムが案内表示伝送ローディングモードに移行された後(S140)、車両情報制御装置11から案内表示装置10に表示データが実際に伝送される(S150)。
【0041】
なお、案内表示伝送ローディングモードとは、車両情報制御装置11から案内表示装置10に表示データを伝送しながら、案内表示装置10の記憶装置10Cに記憶されている表示データを書き換えるモードであり、このモードが実行されている間は、通信回線が表示データの伝送に占有されるため、その他のデータ通信が不可能となる。
【0042】
そして、車両情報制御装置11から案内表示装置10への表示データの伝送が完了すると、車両情報制御装置11と案内表示装置10との通信モードが、通常運転時の通信モード(案内表示伝送通常モード)に戻された後(S160)、更新データフラグが初期化される(S170)。
【0043】
次に、各車両情報制御装置11に搭載されている時計11Cの時刻がシステム時計14の時刻に同期された後(S180)、通常の車両運航時に表示される所定画面が表示されて(S110)、この制御が終了する。
【0044】
4.本実施形態に係るデータ転送システムの特徴
本実施形態では、表示データを無線通信にて鉄道車両側に送信するので、鉄道車両を留置して作業時間を確保する必要がなく、表示データを容易に変更することが可能となる。
【0045】
ところで、表示データを営業運転中に受信した場合には、受信と同時に表示データを案内表示装置10に転送することは、種々の事情から適切ではないばかりか、通常、営業運転途中に案内表示装置10の表示内容を変更させる必要性は殆ど無い。
【0046】
また、車両区等に鉄道車両が格納されている場合には、パンタグラフを介して外部から鉄道車両に電力が供給されていない。そして、電源は車載バッテリのみである。このため、通常、車載バッテリのみでは、全ての車両で案内表示伝送ローディングモードを実行するに十分な電力を得ることは困難であるので、外部から電力が供給されていないときに、案内表示伝送ローディングモードを実行すべきではない。
【0047】
そこで、本実施形態では、受信した表示データを、一旦、車両情報制御装置11の記憶装置11Bで記憶し、鉄道車両の電源遮断後、次回の電源起動時に記憶装置11Bに記憶されている表示データを案内表示装置10に伝送する構成としている。
【0048】
これにより、本実施形態では、外部から電力が鉄道車両に供給されているときに、案内表示伝送ローディングモードを実行することとなるので、営業運転に悪影響を及ぼすことなく、案内表示伝送ローディングモードを確実に実行することができる。
【0049】
以上に説明したように、本実施形態によれば、営業運転に悪影響を及ぼすことなく、表示データを、確実かつ容易に変更することが可能となる。
また、案内表示装置等の鉄道車両の外方側に向けて情報を表示する案内表示装置10は、台数が多く消費電力も大きいので、車載バッテリのみで十分な電力を供給することが難しい。したがって、鉄道車両の外方側に向けて情報を表示する案内表示装置10を有する鉄道車両に本実施形態を適用すると、特に効果的である。
【0050】
ところで、本実施形態では、前述したように、パンタグラフ等を介して外部から電力が供給されているときに、案内表示伝送ローディングモードを実行することとなるので、表示データの伝送中に、作業者がパンタグラフを下げる等して外部からの電力供給が停止すると、案内表示伝送ローディングモードを実行することができなくなる。
【0051】
そこで、本実施形態では、案内表示伝送ローディングモードが実行されている場合に、運転者等に対して警告を発することにより、運転者等がパンタグラフを下げる等して外部からの電力供給が停止してしまうことを抑止している。
【0052】
また、本実施形態では、地上側に設けられた地上無線装置20によって、地上側に設けられた基準時刻受信装置21の時刻に基づく時刻情報を無線送信し、その送信された時刻情報に基づいて鉄道車両に搭載された時計の時刻が補正されるので、鉄道車両に搭載された時計の時刻を電波時計やGPSの時刻情報に基づいて直接的に補正する場合に比べて、確実に時刻を補正することができる。
【0053】
つまり、電波時計やGPSの時刻情報に基づいて時刻を補正する場合には、予め決められた波長の電波を受信する必要があるので、電波の受信状態に大きく左右され易い。
しかし、本実施形態では、地上無線装置20による送信電波の波長を鉄道車両に適したものとすることが可能となるので、電波時計やGPSの時刻情報に基づいて直接的に車両の時計11Cの時刻を補正する場合に比べて、確実に時刻を補正することができる。
【0054】
また、本実施形態では、時刻情報に遅延補正時間を付加してシステム時計14の時刻を補正するので、地上無線装置20が送信したタイミングと実際に時計が補正されるタイミングとのずれを吸収することができ、より正確に時刻を補正することができる。
【0055】
ところで、地上無線装置20が送信したタイミングと実際に時計が補正されるタイミングとのずれは、鉄道車両の種類や実際の運転状況によって大きく相違する。
これに対して、本実施形態では、車両側システムで遅延補正時間を加算するので、鉄道車両の種類や実際の運転状況に応じた遅延補正時間を容易に付加することができ、容易に正確な時刻に補正することができる。
【0056】
なお、仮に、予め遅延補正時間を加算した時刻情報を地上側システムから車両システムに送信すると、地上側システム(地上サーバ22)は、送信すべき鉄道車両を認識した上で、その鉄道車両に適した遅延補正時間を付加する必要があるので、構成が複雑になるとともに、コスト高を招くおそれがある。
【0057】
ところで、営業運転中に時刻が補正されると、時刻補正された車両の時刻が補正前と補正後とで不連続になってしまうおそれが高い。
また、少なくとも営業運転中は、時刻と対応付けて営業運転状態が記録(運転記録)されているので、車両の時刻が補正前と補正後とで不連続になってしまうと、運転記録の信頼性が低下してしまう。
【0058】
これに対して、本実施形態では、鉄道車両の電源遮断後、次回の電源起動時に時刻情報に基づいて時計を補正するので、仮に車両の時刻が補正前と補正後とで不連続になっても、運転記録の信頼性が低下することはない。
【0059】
5.発明特定事項と実施形態との対応関係
本実施形態では、基準時刻受信装置21が特許請求の範囲に記載された基準時計手段に相当し、地上無線装置20が特許請求の範囲に記載された送信手段に相当し、車載無線装置13が特許請求の範囲に記載された受信手段に相当し、S30が特許請求の範囲に記載された補正付加手段に相当する。
【0060】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、地上無線装置20が鉄道車両の車両区に設置されていたので、車両区に設置された地上側システムから送信される情報データのみに時刻情報を含むようにすれば、営業運転中に時刻が補正されてしまうことがないので、仮に車両の時刻が補正前と補正後とで不連続になっても、運転記録の信頼性が低下することはなく、上述の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0061】
また、上述の実施形態では、地上無線装置20から送信された時刻情報に基づいてシステム時計14の時刻を補正する場合のみ遅延補正時間を加算したが、システム時計14と各車両の時計11Cとを同期させる場合に、遅延補正時間を考慮してもよい。
【0062】
また、上述の実施形態では、基準時刻受信装置21は電波時計にて構成されていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばGPS時計にて構成してもよい。
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施形態に係る鉄道車両用のデータ転送システムの概要を示すブロック図である。
【図2】案内表示装置10の概念図である。
【図3】車両情報制御装置11の概念図である。
【図4】地上無線装置20から送信されてきた情報データを車載無線装置13にて受信したときに実行される制御の概要を示すフローチャートである。
【図5】鉄道車両の電源が遮断された後、次回の電源起動時に実行される制御の概要を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0064】
10…案内表示装置、11…車両情報制御装置、12…表示設定器、
13…車載無線装置、14…システム時計、20…地上無線装置、
21…基準時刻受信装置、22…地上サーバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両に搭載された時計の時刻を補正するための鉄道用時刻補正システムであって、
地上側に設けれ、基準となる時刻を計時する基準時計手段と、
地上側に設けられ、前記基準時計手段の時刻に基づく時刻情報を前記鉄道車両側に無線通信にて送信する送信手段と、
前記鉄道車両に設けられ、前記送信手段により送信されてきた時刻情報を受信する受信手段とを備え、
前記時計は、前記時刻情報に基づいて補正されることを特徴とする鉄道用時刻補正システム。
【請求項2】
前記時刻情報に遅延補正値を付加する補正値付加手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の鉄道用時刻補正システム。
【請求項3】
前記補正値付加手段は、前記鉄道車両に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の鉄道用時刻補正システム。
【請求項4】
前記送信手段は、前記鉄道車両の車庫に設置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の鉄道用時刻補正システム。
【請求項5】
前記鉄道車両の電源遮断後、次回の電源起動時に前記時刻情報に基づいて前記時計を補正する補正手段を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の鉄道用時刻補正システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−302777(P2008−302777A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150733(P2007−150733)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年12月13日 社団法人 日本機械学会発行の「No.06−52 第13回鉄道技術連合シンポジウム講演論文集」に発表
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】