説明

鉄道車両の状況監視装置

【課題】列車を運行する運転者は運転席に設置されたモニタにより、列車からプラットホームに降車する乗客、及び、プラットホームから列車に乗車する乗客の状況を監視できる鉄道車両内外の俯瞰パノラマ映像提示装置を提供する。
【解決手段】鉄道車両101、102の側面に複数のカメラ103a、104a、105a、106aが設置されており、車両の外側を撮像範囲とし、列車が駅に停車中にホーム上の人物107、108、109、110を撮像し、撮影したカメラの映像を俯瞰変換し、運転席のモニタ111にパノラマ表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両側方の車外及び車内に位置する乗客等を監視する鉄道車両の状況監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、列車運転支援システム及び列車運転支援用地上側装置並びに列車運転支援用車両側装置が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載された列車運転支援システム及び列車運転支援用地上側装置並びに列車運転支援用車両側装置では、ホームに設置されたカメラにより、ホームと列車との境界付近を撮像し、撮像された映像を無線通信により列車に送信し、列車は、撮像された映像を受信して、列車の運転席に設置された液晶ディスプレイにその映像を表示し、運転士は、表示された映像を監視して、安全を確認しながら列車を運行している。
【0004】
また、特許文献2には、車両周囲監視装置及び車両周囲監視方法が記載されている。特許文献2に記載された車両周囲監視装置及び車両周囲監視方法では、自車両に設置され、自車両周囲の映像を撮像する少なくとも1台のカメラと、カメラの撮像範囲における障害物を検出する障害物センサと、カメラで撮像したカメラ画像を入力し、当該カメラ画像を、自車両の上空の仮想視点から見た視点変換画像に変換する画素合成部と、画素合成部で変換した視点変換画像を表示させる表示装置とを備え、障害物センサの障害物検出範囲内に障害物が侵入した場合に警告音により警報を行うと同時に、カメラで撮影して視点変換画像に含まれる障害物画像に、障害物検出範囲の画像が接触するように画像合成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−104189号公報
【特許文献2】再表2007/015446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された列車運転支援システム及び列車運転支援用地上側装置並びに列車運転支援用車両側装置では、複数のカメラをホームに設置し、撮像された映像を無線通信により列車に送信することが必要であって、ホーム毎に複数のカメラを設置するために設備が膨大となり、また、撮像した映像を無線通信により列車に送信するための設備が必要であるという課題があった。
【0007】
また、特許文献2に記載された車両周囲監視装置及び車両周囲監視方法は、自動車の前後左右に複数のカメラを配置し、撮像したカメラ画像を上空の仮想視点から見た視点に変換表示させるものであるが、特に、自動車の後部の障害物センサの障害物検出範囲内に障害物が侵入した場合に、カメラで撮影して視点変換画像に含まれる障害物画像に、障害物検出範囲の画像が接触するように画像合成するものであって、複数の鉄道車両から編成された列車への適用は何ら考慮されていないという課題があった。
【0008】
複数の鉄道車両から編成された列車の場合には、列車が駅のプラットホームに到着した時から出発する時までの間に、列車に乗降する乗客等の安全を確保することが重要である。乗客が駆け込み乗車をする場合などは、その状況を速やかに把握して、乗客等の安全を確保することが必要である。
【0009】
本発明は、列車を運行する乗務員(運転手または車掌)は乗務員室(運転席)に設置されたモニタにより、列車からプラットホームに降車する乗客、及び、プラットホームから列車に乗車する乗客の状況を監視できる鉄道車両側方の車外及び車内の状況監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の鉄道車両の状況監視装置は、列車を構成する車両の側面に取り付けられた検出装置と、前記検出装置によって検出された前記列車の前記側面の状況を示す複数の信号をそれぞれ処理する信号処理機能と、を備え、前記信号処理機能は、複数の前記信号を変換する信号変換機能と、変換された前記信号を合成して一体の映像を生成する映像合成機能と、合成された前記映像を前記車両に備えられるモニタに表示する表示機能と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の鉄道車両の状況監視装置は、更に、前記車両の前記側面の車外側の上部に備えられるとともに映像を取得する撮像装置を備え、前記撮像装置によって得られる前記映像をそれぞれ俯瞰変換する機能を備え、俯瞰変換された前記映像を整合させて連続するパノラマ映像を生成する機能を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の鉄道車両の状況監視装置は、更に、映像を前記パノラマ表示する際に、前記映像から前記車両が停車するプラットホームの幅方向の端部を基準として検出する基準検出機能と、変換された前記信号を検出された前記端部を基準として合成して一体の映像を合成する映像合成機能とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の鉄道車両の状況監視装置は、更に、前記映像内の移動体を検知するとともに、検知した前記移動体を前記モニタ上に強調表示することを特徴とする。
【0014】
本発明の鉄道車両の状況監視装置は、撮像装置の撮像範囲内の移動体の前記車両への接近を検知するセンサが前記車両の前記側面の車外側に設置されることを特徴とする。
【0015】
本発明の鉄道車両の状況監視装置は、更に、列車を構成する車両の側面に備えられる乗降口の上部の車外側に取り付けられる撮像装置と、前記撮像装置によって撮像された前記車両の側方の車外側と車内側のそれぞれの映像を俯瞰変換する俯瞰変換機能と、前記俯瞰変換機能によって変化された前記映像を整合させて連続するパノラマ映像を合成する映像合成機能と、合成された前記映像を前記車両に備えられるモニタに表示する表示機能と、を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の鉄道車両の状況監視装置は、更に、列車を構成する車両の側面の車外側に取り付けられたセンサと、前記センサによって検出された前記列車の前記側面の状況を示す複数の信号をそれぞれ処理する信号処理機能と備え、前記信号処理機能は複数の前記信号を映像に変換する映像変換機能と、前記映像変換機能によって前記信号から変換された映像を前記車両に備えられるモニタに表示する表示機能とを備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の鉄道車両の状況監視装置は、更に、前記モニタに表示される前記映像を強調表示することを特徴とする。
【0018】
本発明の鉄道車両の状況監視装置は、更に、前記列車の側方の状況を検出する前記センサの信号の変化率を算出し、前記変化率が所定の閾値より大きい場合に、前記信号から変換された前記映像を前記モニタに強調表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、列車を運行する運転手あるいは車掌である乗務員は、列車が駅に停車中に、乗務員室に設置されたモニタを監視することによって、列車から降車あるいは乗車する乗客等の状況を迅速に把握し、安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、鉄道車両に搭載された複数のカメラの映像を俯瞰変換して、乗務員室に備えられたモニタ上にパノラマ表示するシステムの概要を示す図である。
【図2】図2は、俯瞰変換を説明する図である。
【図3】図3は、鉄道車両に設置されるカメラの位置と撮像範囲を示す平面図である。
【図4】図4は、鉄道車両に設置されるカメラの位置と撮像範囲を示す側面図である。
【図5】図5は、図4に示される鉄道車両のA−A断面図であって、カメラの設置位置と撮像範囲を示す図である。
【図6】図6は、鉄道車両に設置されるカメラの位置と撮像範囲を示す別の平面図である。
【図7】図7は、鉄道車両に設置されるカメラの位置と撮像範囲を示す別の側面図である。
【図8】図8は、図7に示した鉄道車両のB−B断面図であって、カメラの設置位置と撮像範囲を示す図である。
【図9】図9は、鉄道車両の乗務員室に配置されるモニタの表示例である。
【図10】図10は、鉄道車両の乗務員室のモニタの別の表示例である。
【図11】図11は、鉄道車両の乗務員室のモニタのさらに別の表示例である。
【図12】図12は、カメラを用いた鉄道車両の状況監視装置のシステム構成図である。
【図13】図13は、カメラを用いた別の鉄道車両の状況監視装置のシステム構成である。
【図14】図14は、鉄道車両に搭載された複数のセンサの信号を検出して、乗務員室のモニタ上に画像表示するシステムの例である。
【図15】図15は、鉄道車両に備えられるセンサの設置位置と検出範囲を示す平面図である。
【図16】図16は、鉄道車両に備えられるセンサの設置位置と検出範囲を示す側面図である。
【図17】図17は、センサを用いた鉄道車両の状況監視装置のシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0022】
ここでは、本発明を、鉄道車両に搭載された複数のカメラの映像を俯瞰変換して、乗務員室のモニタ上にパノラマ表示するシステムに適用した場合の実施の形態を説明する。
【0023】
図1は、鉄道車両101,102から編成される列車100であり、鉄道車両101には運転手または車掌が乗務する乗務員室が備えられる。図示はしないが、各鉄道車両は、床面をなす台枠と、台枠の幅方向の両端部に立設されるとともに側面をなす側構体と、台枠の幅方向の端部に立設される妻構体と、側構体および妻構体の上端部に載置される屋根構体とからなる。カメラ103a,104a,105a,106aは、鉄道車両101,102に備えられる各乗降口202の上部の鉄道車両の一方の側面の車外側に設置される。
【0024】
カメラ103a,104a,105a,106aの撮像範囲は、鉄道車両101の長手方向に沿う鉄道車両の車外側とし、列車100が駅に停車中にプラットホーム200上の乗客等107,108,109,110を撮像する。図示はしないが、列車100をなす鉄道車両101,102の他方の車外側の側面にも、カメラが設置されている。
なお、図1において、カメラ103a,104a,105a,106aが乗降口202の上部の鉄道車両の側面に設置される例を示したが、実施例1から3に記されるカメラまたはセンサの設置位置は乗降口202の上部に限定される必要はなく、鉄道車両を構成する側構体と屋根構体との接続部近傍の車外側の面であって、要求される撮像範囲を得ることができる位置を選定すればよい。
【0025】
カメラ103a,104a,105a,106aを、横方向(鉄道車両101の長手方向)の画角が180度前後の広角カメラとすると、少ない個数のカメラで鉄道車両の車外側に漏れのない撮像範囲を設定することができる。乗務員室に設置されるモニタ111は、カメラ103a,104a,105a,106aやその他の鉄道車両に設置されたカメラの映像をレンズ歪の補正後、俯瞰変換してパノラマ合成した映像を表示する。
【0026】
カメラ103a,104aの撮像は俯瞰変換された画像112としてモニタ111上に表示される。同様に、カメラ105a,106aの撮像は俯瞰変換された後、モニタ111上に表示される。画像112、113、114は、カメラどうしの撮像範囲に漏れがないように連続的に合成され、あたかも1台のカメラの撮像が俯瞰変換されたかのような一体のパノラマ画像としてモニタ111上に表示される。
【0027】
画像112、113以外の全鉄道車両のホーム200側の全カメラの俯瞰映像も同様に連続的なパノラマ画像が表示される。モニタ111の幅方向(横方向)のサイズの制限で全カメラの俯瞰映像が表示できない場合は、モニタ111の縦方向(高さ方向)に段組みされた画像119として表示される。
【0028】
プラットホーム200上にいる人物107,108,109,110は俯瞰変換された後、モニタ111の映像115,116,117,118に表示される。また、モニタ111上には各鉄道車両を俯瞰した画像とともに、各鉄道車両の号車番号、乗降口の位置が描画されるので、乗務員は、俯瞰変換された画像112、113、114に対応する各鉄道車両を速やかに特定できる。
【0029】
図2は、俯瞰変換を説明する図である。俯瞰変換とは、実際には鉄道車両101の乗降口202の車外側の上部に備えられたカメラ103aの映像を、あたかもプラットホーム200の上方(真上近く)に仮想的に配置されたカメラ201によって撮影された映像に変換することを言う。
【0030】
俯瞰変換されたカメラの映像をパノラマ的に合成して、最終的にパノラマ画像を得る方法を説明する。まず、車両101の側面に備えられる乗降口202の車外側上部に備えられたカメラによって得られた撮像を構成する全画素を、レンズ歪が記載されたデータシートを参照して、レンズ歪みが取り除かれた位置に再配置することによってレンズ歪を取り除く。
【0031】
次に、レンズ歪みが補正された画像を、鉄道車両の側面の車外側上部のカメラ視点から仮想的に撮像範囲の直上にカメラ視点を移した場合の画像に俯瞰変換する。この俯瞰変換は、撮像範囲内の全て被写体は、その高さ方向の寸法が無視できる平面体であると仮定した上で、カメラの設置角度(俯角)、カメラの設置高さ、カメラの焦点距離を基に、実際に撮影された撮像面の画素配置を、幾何学的に座標変換することによって、撮像範囲の直上にカメラ視点によって得られたとする画素位置に再配置することによりなされる。
【0032】
図3は、鉄道車両に設置されるカメラの位置と撮像範囲を示す平面図である。鉄道車両101の各側面には乗降口202が2ヶ所備えられており、カメラ103a,104a,103b,104bは各乗降口202の上部の鉄道車両101の車外側の側面に設置される。図3は、カメラ103a,104a,103b,104bの光軸方向を鉄道車両の車外方向とした場合である。撮像範囲301はカメラ103aによるものであり、他のカメラ104a,103b,104bの撮像範囲302、303、304と合わせて、鉄道車両101の両側面の車外側を撮像範囲として網羅できる画角を有すカメラを設置する。
【0033】
図4は、鉄道車両に設置されるカメラの位置と撮像範囲を示す側面図である。図4は、図3を鉄道車両101の幅方向の車外側から見た図である。車両101に乗降口202,202と窓203とが設けられ、各乗降口202の上部の鉄道車両の車外側の側面にそれぞれカメラ103a,104aが設けられる。
【0034】
カメラ103aの撮像範囲301と、カメラ104aの撮像範囲302との境界部は、両撮像範囲に属する重複部分を備えており、プラットホーム200の乗客等を漏れなく撮像することができる。
【0035】
図5は、図4に示される鉄道車両のA−A断面図であって、カメラの設置位置と撮像範囲を示す図である。車両101の一方の側面に備えられる乗降口202の車外側上部には、カメラ103aが設けられる。カメラ103aの撮像範囲301はプラットホーム200上に設定され、プラットホーム200の乗客等を撮像する。
【0036】
同様に、車両101の他方の側面に備えられる乗降口202の車外側上部には、カメラ103bが設けられており、鉄道車両101の他方の側面にプラットホーム200が位置する場合に、前述した撮像を得ることができる。
このため、列車を運行する運転手あるいは車掌である乗務員は、乗務員室に設置されたモニタを監視することにより、列車からプラットホームに降車する乗客、及び、プラットホームから列車に乗車する乗客等の状況を迅速に把握し、安全性を高めることができる。
【実施例2】
【0037】
図6は、鉄道車両に設置されるカメラの位置と撮像範囲を示す別の平面図である。図3に示されたカメラ103aの光軸方向を鉄道車両101の側面に沿う鉛直方向に向けるとともに、カメラ103aの設置俯角を大きくすることによって、鉄道車両101の車外側の撮像範囲305と、鉄道車両101の車内側の撮像範囲306との両方の撮像範囲に属する被写体を撮像することができる。
【0038】
図7は、鉄道車両に設置されるカメラの位置と撮像範囲を示す別の側面図である。鉄道車両101に側面に乗降口202,202が設けられ、各乗降口202のそれぞれの上部の鉄道車両101の車外側面に、カメラ103a,104aが設けられる。
【0039】
カメラ103aの撮像範囲は、車外側の撮像範囲305と、車内側の撮像範囲306の範囲(図6参照)であり、撮像範囲305,306は、乗降口202の車外側のプラットホーム200と、乗降口202の車内側とに設定される。図示はしないが、カメラ104aの撮像範囲も、同様に鉄道車両101の車内側と車外側との両方に設けられる。
【0040】
図8は、図7に示した鉄道車両のB−B断面図であり、カメラの設置位置と撮像範囲を示す他の断面図である。鉄道車両101の一方の側面に備えられる乗降口202の上方の車外側の側面には、カメラ103aが設けられる。カメラ103aの撮像範囲は、乗降口202の車外側のプラットホーム200上面の撮像範囲305と、乗降口202の車内側の撮像範囲306であり、車外のプラットホーム200上に位置する乗客等と車内の乗客等の両方の撮像を同時に得ることができる。
【0041】
同様に、車両101の他方の側面に備えられる乗降口202の車外側上部には、カメラ103bが設けられており、鉄道車両101の他方の側面にプラットホーム200が位置する場合に、前述した同様の撮像を得ることができる。
【0042】
図9は、鉄道車両の乗務員室に配置されるモニタの表示例であって、モニタ上に検出された乗客等を強調表示する例である。プラットホーム200上の乗客等であって、鉄道車両101の乗降口202の近傍に位置する場合には、その近傍にいる乗客等を枠線901,902,903で強調表示することができる。この場合、乗降口202と乗客等との距離が所定の距離より小さい場合、つまり、乗客等が鉄道車両101に近接し乗務員等の注意喚起が必要と判断される場合にのみ、該当する乗客等を強調表示することもできる。また、乗客等の単位時間当たりの移動量と方向を検出して、当該乗客を強調表示することによって、駆け込み乗車の可能性のある乗客等を速やかに把握することができる。
【0043】
強調表示された乗客等の状況を確認するために、モニタ111の画面上の強調表示部分901,902,903に触れた場合に、その強調表示部分がさらに拡大表示される機能を組み込めば、乗務員等がより容易且つ正確に状況を把握することができる。
【0044】
図10は、鉄道車両の乗務員室のモニタの別の表示例である。図10に示すように、プラットホーム200上の乗客等が、鉄道車両101,102の乗降口202,202の近傍に位置する場合に、乗客等が近傍にいる鉄道車両101,102に対応する区画1001,1002のみを強調表示してもよい。強調表示する場合の条件は、乗客等と鉄道車両との距離が所定の値(例えば1m以下)となった場合など任意に設定してもよい。また、乗客等の単位時間当たりの移動量と方向を検出して、当該乗客に近接する鉄道車両に関係する区画1001,1002のみを強調表示すれば、駆け込み乗車の可能性のある乗客等を鉄道車両単位で速やかに把握することができる。
【0045】
図9と同様に、強調表示された鉄道車両に関係する区画の状況を確認するために、モニタ111の画面上の強調表示部分1001,1002に乗務員等が触れた場合に区画1001,1002が拡大表示される機能を組み込めば、乗務員等がより容易且つ正確に状況を把握することができる。
【0046】
図11は、鉄道車両の乗務員室のモニタのさらに別の表示例であり、鉄道車両の揺れ等に起因する振幅を補正した映像をモニタ上に表示例である。
【0047】
各鉄道車両において、カメラの映像を俯瞰変換してパノラマ的に合成する場合、列車100を編成する各車両101等に揺れや傾きあるいは、列車100の各車両101とプラットホーム200との離間等の影響によって、車両毎に撮影された画像からレンズ歪を取り除くとともに、俯瞰変換によって得られた画像を合成したパノラマ画像をモニタ上に表示する場合、滑らかなパノラマ画像が得られない場合がある。
【0048】
この場合、各鉄道車両毎に得られた画像から画像認識によって特徴点、例えば、プラットホーム200の幅方向の端部を抽出し、この特徴点が滑らかに接続するように各画像を合成してパノラマ画像1101を得る。この手法を採用すれば、プラットホーム200上の乗客等と鉄道車両との距離を算出する精度を高めることができるので、乗務員が鉄道車両101,102の乗降口202への接近の程度をより正確に把握することができる。
【0049】
なお、図示はしないが、複数のカメラによる画像撮影に替えて、あるいは、加えて、車両の乗降口近傍に赤外線センサあるいは超音波センサなどのセンサを設けて、当該センサにより乗客等の接近を検出し、当該センサからの信号を検出した鉄道車両のみを特定して、モニタ111に表示すれば乗客の車両101の乗降口202への接近の程度を更に正確に把握することもできる。
【0050】
図12は、カメラを用いた鉄道車両の状況監視装置のシステム構成図である。列車100を構成する鉄道車両101に設けられたカメラ103a,104a,103b,104bで撮像された画像は、それぞれ、画像処理LSI1201により、レンズ歪み除去処理、俯瞰変換処理等が行われ、これらの画像がCPU(中央演算装置)1202でパノラマ画像に合成され、列車100に備えられる伝送線を通じて運転席モニタ111に表示される。
【0051】
図13は、カメラを用いた別の鉄道車両の状況監視装置のシステム構成である。列車100を構成する各鉄道車両101に設けられたカメラ103a,104a,103b,104bで撮像された画像は、鉄道車両毎に備えられる画像処理LSI1301に接続され、レンズ歪み除去処理、俯瞰変換処理等が行われる。
【0052】
これらの画像がCPU1302でパノラマ画像に合成され、運転席モニタ111に表示される。図13に示されるシステムによれば、鉄道車両の一方の側面に備えられるカメラからの画像も、鉄道車両の他方の側面に備えられるカメラからの画像も一つの画像処理LSI1301で画像変換がなされるので、必要とされる画像処理LSIの個数が小さく、画像処理システムを安価に構成できる。
以上の構成により、列車を運行する運転手あるいは車掌である乗務員は、乗務員室に設置されたモニタを監視することにより、列車からプラットホームに降車する乗客、及び、プラットホームから列車に乗車する乗客等の状況を迅速に把握し、安全性を高めることができる。
【実施例3】
【0053】
図14は、鉄道車両に搭載された複数のセンサの信号を検出して、乗務員室のモニタ上に画像表示するシステムの例である。
【0054】
鉄道車両101,102から編成される列車100であり、鉄道車両101には運転手あるいは車掌が乗務する乗務員室が備えられる。センサ403a,404a,405a,406aは、カメラと異なり広範囲の映像を取得する必要がないため、鉄道車両101の側面の車外側であれば設置される高さに制約はない。例えば、車両の側面のプラットホーム200の上面から500mmの高さに対応する位置などに設置してもよい。センサ403a,404a,405a,406aは、その検出範囲を鉄道車両の車外側とし、列車100が駅に停車中にホーム200上の乗客等107、108、109、110を検出する。また、図14に示される列車100をなす鉄道車両101、102の反対側の側面(図示なし)の同様に位置にセンサが設置される。
なお、図14ではセンサ403a,404a,405a,406aのみを車両101,102の側面の車外側に備えた例を示したが、実施例1および2で示したカメラを備える車両に、上述したセンサを追設してもよい。
【0055】
センサ403a,404a,405a,406aの検出範囲を鉄道車両101の長手方向に沿う方向の180度前後の広角とするセンサを選択すると、少ないセンサの個数で鉄道車両の車外側を漏れなく検出範囲とすることができる。モニタ111は、鉄道車両101に備えられる乗務員室に設置されており、センサ403a,404a,405a,406aが検出した信号を処理して作成した画像を表示する。
【0056】
モニタ111上に示される楕円状破線の画像412はセンサ403aが検出した信号から作成された画像であり、同様に、画像413,414はセンサ404aから、画像415はセンサ406aからの検出信号を処理して表示された画像である。
【0057】
図示はしないが、列車100をなす車両101,102以外の全ての車両の同様の部位にもセンサが備えられており、列車100のプラットホーム200に沿う側の画像も同様に連続的にモニタ111に表示される。モニタ111の幅方向(横方向)のサイズの制限で列車100に備えられたセンサからの映像を列車100の長手方向に連続的に表示できない場合には、画像119に示されるように段組み表示してもよい。
【0058】
プラットホーム200上にいる乗客等107,108,109,110は、モニタ111上に、画像412,413,414,415として表示されるとともに、当該鉄道車両の号車番号、乗降口の位置も合わせて表示されるので、乗務員等は画像412,413,414,415が対応する鉄道車両を容易に特定できる。
【0059】
図15は、鉄道車両に備えられるセンサの設置位置と検出範囲を示す平面図である。センサ403a,404a,403b,404bを各乗降口202の上部に1台設置し、センサの検出方向を鉄道車両101の車外側とした場合である。この場合、検出範囲は図14の枠線501の部分となり、他のセンサの検出範囲502、503、504と合わせて、車両の外側を検出範囲として網羅する。
【0060】
図16は、鉄道車両に備えられるセンサの設置位置と検出範囲を示す側面図である。車両101に乗降口202,202が設けられており、各乗降口202の上部にセンサ403a,404aが設けられる。
【0061】
センサ403aは検出範囲501を、センサ404aは検出範囲502を検出対象範囲としている。検出範囲501と検出範囲502とは重複部分を備えており、プラットホーム200に居る乗客等を漏れなく検出する。
【0062】
図17は、センサを用いた鉄道車両の状況監視装置のシステム構成図である。列車100の各車両101に設けられたセンサ403,404,404,405で検出された信号は、それぞれ、センサ信号の信号処理LSI1601により信号処理が行われ、信号処理により形成された画像がCPU1602で合成され、乗務員室のモニタ111に表示される。このため、列車を運行する運転手あるいは車掌である乗務員は、乗務員室に設置されたモニタを監視することにより、列車からプラットホームに降車する乗客、及び、プラットホームから列車に乗車する乗客等の状況を迅速に把握し、安全性を高めることができる。
【0063】
信号処理LSI1601により、センサ信号を処理する際に、信号の大きさの変化率等を算出し、変化率が正方向に大きい箇所を検出して、乗客等の駆け込み乗車の可能性がある異常接近を監視し、異常接近と認められた画像を強調表示することができる。
【0064】
列車を構成する各鉄道車両へのセンサの設置位置と検出範囲の設定は、図面に示したものに限定されず、カメラの設置位置と撮像範囲の設定と同様に、種々の態様が可能である。また、これを実現するシステム構成も、図示したものに限定されず、種々の態様が可能である。
【符号の説明】
【0065】
100…列車
101…乗務員室を備える鉄道車両
102…鉄道車両
103a,104a,105a,106a…カメラ
103b,104b,105b,106b…カメラ
107、108、109、110…プラットホーム上の乗客等
111…運転席に設置されたモニタ
112…カメラ103a,104aの画像を俯瞰変換した後パノラマ合成した映像
113…カメラ105a,106aの画像を俯瞰変換した後パノラマ合成した映像
114…カメラの画像を俯瞰変換した後パノラマ合成した映像
119…パノラマ画像を段組み表示した時の表示例
200…プラットホーム
201…プラットホームの上方(真上付近)に仮想的に配置されるカメラ
202…乗降口
203…窓
301,302,303,304,305,306…カメラの撮像範囲
403a,404a,405a,406a…センサ
411…センサ403の検出信号を表示した映像
412…センサ404の検出信号を表示した映像
413…センサ406の検出信号を表示した映像
501、502、503、504…センサの検出範囲
901、902、903…乗客等の強調表示
1001、1002…区画
1201,1301…画像処理LSI
1601…センサ信号処理LSI
1202,1301,1602…CPU(中央演算装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車を構成する車両の側面に取り付けられた検出装置と、
前記検出装置によって検出された前記列車の前記側面の状況を示す複数の信号をそれぞれ処理する信号処理機能と、
を備える鉄道車両の状況監視装置において、
前記信号処理機能は、
複数の前記信号を変換する信号変換機能と、
変換された前記信号を合成して一体の映像を生成する映像合成機能と、
合成された前記映像を前記車両に備えられるモニタに表示する表示機能と、
を備えることを特徴とする鉄道車両の状況監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載された鉄道車両の状況監視装置において、
前記検出装置は、前記車両の前記側面の車外側の上部に備えられるとともに映像を取得する撮像装置であり、
前記信号変換機能は、前記撮像装置によって得られる前記映像をそれぞれ俯瞰変換する機能であり、
前記映像合成機能は、俯瞰変換された前記映像を整合させて連続するパノラマ映像を生成する機能である、
ことを特徴とする鉄道車両の状況監視装置。
【請求項3】
請求項2に記載された鉄道車両の状況監視装置において、
前記信号処理機能は、
前記映像を前記パノラマ表示する際に、前記映像から前記車両が停車するプラットホームの幅方向の端部を基準として検出する基準検出機能と、
変換された前記信号を検出された前記端部を基準として合成して一体の映像を合成する映像合成機能と、
を備えることを特徴とする鉄道車両の状況監視装置。
【請求項4】
請求項1から3に記載された鉄道車両の状況監視装置において、
前記映像内の移動体を検知するとともに、検知した前記移動体を前記モニタ上に強調表示すること、
を特徴とする鉄道車両の状況監視装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれかの請求項に記載された鉄道車両の状況監視装置において、
前記撮像装置の撮像範囲内の移動体の前記車両への接近を検知するセンサが前記車両の前記側面の車外側に設置されること、
を特徴とする鉄道車両の状況監視装置。
【請求項6】
列車を構成する車両の側面に備えられる乗降口の上部の車外側に取り付けられる撮像装置を有す鉄道車両の状況監視装置において、
前記撮像装置によって撮像された前記車両の側方の車外側と車内側のそれぞれの映像を俯瞰変換する俯瞰変換機能と、
前記俯瞰変換機能によって変化された前記映像を整合させて連続するパノラマ映像を合成する映像合成機能と、
合成された前記映像を前記車両に備えられるモニタに表示する表示機能と、
が備えられること、
を特徴とする鉄道車両の状況監視装置。
【請求項7】
列車を構成する車両の側面の車外側に取り付けられたセンサと、
前記センサによって検出された前記列車の前記側面の状況を示す複数の信号をそれぞれ処理する信号処理機能と、
を備える鉄道車両の状況監視装置において、
前記信号処理機能は、
複数の前記信号を映像に変換する映像変換機能と、
前記映像変換機能によって前記信号から変換された映像を前記車両に備えられるモニタに表示する表示機能と、
を備えることを特徴とする鉄道車両の状況監視装置。
【請求項8】
請求項7に記載された鉄道車両の状況監視装置において、
前記モニタに表示される前記映像を強調表示すること、
を特徴とする鉄道車両の状況監視装置。
【請求項9】
請求項8に記載された鉄道車両の状況監視装置において、
前記列車の側方の状況を検出する前記センサの信号の変化率を算出し、
前記変化率が所定の閾値より大きい場合に、前記信号から変換された前記映像を前記モニタに強調表示すること、
を特徴とする鉄道車両の状況監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−1191(P2012−1191A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140926(P2010−140926)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】