説明

鉄道車両用安全支援システム

【課題】鉄道車両を利用する利用者が乗車又は降車する際において、利用者を特定し且つ、安全性を向上することができる鉄道車両用安全支援システムを提供する。
【解決手段】鉄道車両用安全支援システム1は、ICカードCに保存され登録利用者に関する登録利用者情報を認識するカードリーダ2と、登録利用者が乗車する旨の報知を行う報知装置4と、認識した登録利用者情報に基づき報知装置4の動作を制御するコントローラ5と、を備えている。この鉄道車両用安全支援システム1によれば、カードリーダ2で登録利用者情報が認識された場合(カードタッチされると)、その登録利用者情報に応じて設定された「待機時間」の間、報知装置4による報知が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両を利用する利用者が乗車又は降車する際において当該利用者の安全を支援する鉄道車両用安全支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鉄道車両用安全支援システムとしては、例えば特許文献1に記載されているように、ホームに設けられた第1カメラと、ホームに連通する階段に設けられた第2カメラ及び利用者検知手段(体重センサ)と、鉄道車両上に設けられたモニターと、を備えたものが知られている。
【0003】
このような鉄道車両用安全支援システムでは、階段を通る利用者の存在が利用者検知手段で検知された場合、モニターに映し出されている第1カメラによるホームの映像が、第2カメラによる階段の映像に切り替えられる。これにより、かかる利用者の存在が車掌等の乗務員に対し報知されて、鉄道車両に乗車する際の安全が支援される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−244612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の鉄道車両用安全支援システムでは、利用者検知手段が不特定多数の検知対象を検知してしまうことから、次の問題がある。すなわち、いたずらや目的外利用される場合があり、乗務員に対する負荷が大きくなるおそれがある。その結果、ダイヤの乱れが生じてしまうこともある。
【0006】
また、例えば妊婦や車椅子利用者等の身体上優先されるべき優先利用者においては、ビジネスマン等の一般利用者に比べ身体負荷が大きいことから、乗車又は降車の際に高い安全性が求められている。よって、上記の鉄道車両用安全支援システムでは、乗車又は降車する際の安全性をより向上することが望まれている。
【0007】
そこで、本発明は、鉄道車両を利用する利用者が乗車又は降車する際において、利用者を特定し且つ、安全性を向上することができる鉄道車両用安全支援システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、本発明に係る鉄道車両用安全支援システムは、予め登録され鉄道車両を利用する登録利用者に関する登録利用者情報を認識するための認識手段と、登録利用者の乗車又は降車に関する支援を行う支援手段と、認識手段により登録利用者情報が認識された際、該登録利用者情報に応じた支援が行われるように支援手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
この鉄道車両用安全支援システムでは、予め登録された登録利用者として利用者を限定し特定することができる。加えて、登録利用者情報が認識された際、その登録利用者情報に応じた支援が行われるため、例えば優先登録利用者であっても、乗車又は降車の際の安全性を充分に得ることができる。従って、本発明によれば、鉄道車両を利用する利用者が乗車又は降車する際において、利用者を特定し且つ、安全性を向上することが可能となる。
【0010】
また、制御手段は、認識手段により登録利用者情報が認識された際、該登録利用者情報に応じた設定時間に基づいて支援が行われるように支援手段を制御することが好ましい。この場合、登録利用者情報が認識された際、その登録利用者に応じた設定時間(例えば、その登録利用者が情報認識後に乗車/降車完了するまでの予想時間)の間、支援手段による支援が行われることになる。従って、登録利用者は、該登録利用者に応じた時間的猶予を乗車又は降車の際に得ることができる。
【0011】
また、支援手段は、鉄道車両の扉閉を制限する扉閉制限手段を含んで構成されていることが好ましい。この場合、登録利用者情報が認識された際、その登録利用者に応じて鉄道車両の扉閉が制限されるため、戸ばさみ等の問題を確実に回避することができる。
【0012】
また、支援手段は、登録利用者が乗車又は降車する旨の報知を行う報知手段を含んで構成されていることが好ましい。この場合、登録利用者情報が認識された際、その登録利用者に応じた報知が行われ、例えば乗務員に対し安全の注意喚起が促されることとなる。
【0013】
このとき、報知手段を起動するための起動手段をさらに備え、制御手段は、起動手段により報知手段が起動された状態において、認識手段により登録利用者情報が認識されたとき、又は当該認識後で所定時間経過前のとき、登録利用者情報に応じた報知が行われるように報知手段を制御することが好ましい。これにより、報知の実行が好適に制限されるため、過度の報知によるダイヤの乱れを抑制することができる。
【0014】
また、起動手段は、鉄道車両の発車を伝えるための発車ベル装置である場合がある。また、認識手段は、登録利用者の識別情報が格納された携帯情報端末と、該携帯情報端末を読み取る読取装置と、を含んで構成されている場合がある。
【0015】
また、支援手段による支援を停止させる停止手段をさらに備えたことが好ましい。この場合、例えば乗務員による安全確認の後に停止手段が作動され、支援手段による支援が停止され、そして、鉄道車両が安全に発車されることになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、鉄道車両を利用する利用者が乗車又は降車する際において、利用者を特定し、安全性を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態に係る鉄道車両用安全支援システムを示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る鉄道車両用安全支援システムを具備する駅構内のホーム周辺を示す概略平面図である。
【図3】第1実施形態に係る鉄道車両用安全支援システムの処理手順を示すフローチャートである。
【図4】第1実施形態に係る鉄道車両用安全支援システムの動作について説明するための図である。
【図5】第2実施形態に係る鉄道車両用安全支援システムの処理手順を示すフローチャートである。
【図6】第2実施形態に係る鉄道車両用安全支援システムの動作について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る鉄道車両用安全支援システムを示すブロック図であり、図2は図1の鉄道車両用安全支援システムを具備する駅構内のホーム周辺を示す概略平面図である。
【0020】
本実施形態の鉄道車両用安全支援システムは、鉄道車両を利用する乗客等の利用者が乗車する際、その安全を支援するためのものであり、ここでは、予め登録された登録利用者が乗車するとき、その登録利用者に応じた待機時間だけ鉄道車両をホームに待機させ、登録利用者に時間的猶予を与え得るものである。図1に示すように、この鉄道車両用安全支援システム1は、カードリーダ(読取装置)2、発車ベル装置3、報知装置4及びコントローラ5を備えている。
【0021】
カードリーダ2は、携帯情報端末としてのIC(IntegratedCircuit)カードCを読み取るためのものである。このカードリーダ2は、図2に示すように、駅構内11に適宜設置されており、ここでは、例えばプラットホーム階段12周辺に設置されたカードリーダ2aと、エレベータ13乗降口周辺に設置されたカードリーダ2bと、ホーム14に設置されたカードリーダ2cと、を含んで構成されている。
【0022】
このカードリーダ2は、図1に示すように、例えばICカードCが非接触でカードタッチされることで、ICカードCに保存(格納)され登録利用者に関する情報である登録利用者情報を認識する。登録利用者情報としては、具体的には、例えば登録利用者の年齢等の個人情報、身体状況(車椅子利用又はベビーカー使用か否か等)がICカードCに登録され保存されている。そして、カードリーダ2は、認識した登録利用者情報をコントローラ5の構内制御装置5a(後述)へ出力する。
【0023】
なお、登録利用者情報は、例えば駅の自動券売機や窓口等において登録可能とされている。登録利用者としては、例えば妊婦、お年寄り、子供、車椅子利用者、ベビーカー使用者(乳幼児同伴者)、怪我人等の身体上優先されるべき優先登録利用者と、ビジネスマンや健常者等の一般登録利用者と、が挙げられる。ちなみに、一例として、優先登録利用者に対しては無償で、一般登録利用者に対しては有償で登録利用者情報を登録させる場合がある。
【0024】
図2に戻り、発車ベル装置3は、ホーム14に設置され、そのスイッチをONとすることで発車ベル(発車メロディーを含む)を鳴らし鉄道車両10の発車を伝えるものである。加えて、この発車ベル装置3にあっては、報知装置4を起動させる起動手段としても機能する。具体的には、発車ベル装置3は、発車ベル操作に関する情報をコントローラ5の構内制御装置5a(後述)へ出力することで、報知装置4を起動させる。換言すると、発車ベル装置3のスイッチをONとすることで、報知装置4が連動されて起動状態となる。
【0025】
報知装置4は、登録利用者が乗車する旨の報知を行うことで、登録利用者の鉄道車両10への乗車に関する支援を行うものである。ここでの報知装置4は、鉄道車両10の車掌室内に設置されており、表示灯を点灯させ、安全確認させるための注意喚起を乗務員に対して実行する。なお、報知装置4としては、音を発したり画像(映像)を表示させたり等するものを用いてもよく、種々のものを用いることができる。
【0026】
コントローラ5は、駅構内11に設置された構内制御装置5a及び送信器5bと、鉄道車両10内に設置された受信器5c及び車内制御装置5dと、を有している。このコントローラ5では、カードリーダ2で認識された登録利用者情報及び発車ベル装置3の発車ベル操作に関する情報が、構内制御装置5aに入力され、無線LAN等の通信によって送信器5bから受信器5cへ伝送されると共に、車内制御装置5dへ入力される。そして、車内制御装置5dが、これら情報に基づいて報知装置4の動作を制御する(詳しくは、後述)。
【0027】
また、鉄道車両10の車掌室内には、確認ボタン6が設けられている。この確認ボタン6は、例えば車掌による安全確認後に押下されることで、報知装置4による報知を停止させ、システム全体をリセットする。
【0028】
次に、鉄道車両用安全支援システム1の動作について、図3を参照しつつ説明する。まず、カードリーダ2にてICカードCが読み取られて該ICカードC内の登録利用者情報が認識されたか否か(つまり、カードタッチされたか否か)が判定される(読取待機状態:S1)。ICカードCのカードタッチがあった場合、コントローラ5にて、認識された登録利用者情報と予め格納されている登録利用者データベース(Date Base)とが照合される(S2)。
【0029】
ここで、登録利用者データベースでは、登録利用者の個人情報及び身体状況ごとに、各カードリーダ2a〜2cからホーム14までの予想移動時間が登録されている。この予想移動時間は、カードリーダ2の設置場所や駅構内11の構造に応じて適宜設定されている。例えば、プラットホーム階段12に設けられたカードリーダ2aにてカードタッチされた場合、標準的な一般登録利用者の予想移動時間を30秒とすると、車椅子利用者の予想移動時間が60秒とされ、ベビーカー使用者が45秒とされている。
【0030】
従って、認識された登録利用者情報が登録利用者データベースと照合されることにより、登録利用者の予想移動時間が、ホーム14に到着した鉄道車両10を待機させる設定時間である「待機時間」として決定される(S3)。なお、以下においては、この「待機時間」を単に「待機時間」と称する。
【0031】
続いて、タイマーがスタートされ(S4)、タイマーのスタートから「待機時間」が経過するまでの間において発車ベル装置3のスイッチがONとされて報知装置4が起動状態にあるとき(S5のYes)、報知装置4による報知が実行(表示灯点灯)される(S6)。これにより、乗務員に対し安全の注意喚起が促され、その結果、安全確認がなされるまで鉄道車両10がホーム14に待機される(鉄道車両10の発車が見送られる)ことになる。
【0032】
一方、タイマーのスタートから「待機時間」が経過するまでの間において報知装置4が起動状態でないとき(S5のNo)、鉄道車両10の発車前までに登録利用者がホーム14に余裕をもって移動可能であると判断し、認識した登録利用者情報がクリアされる(タイムアウト)。そして、上記S1の読取待機状態に再び移行する(S7)。
【0033】
上記S6にて報知が実行された後、確認ボタン6が押下された否かが判定される(S8)。確認ボタン6が押下されていない場合で「待機時間」が経過したとき、かかる報知が停止(表示灯消灯)されると共に登録利用者情報がクリアされる(S9→S10)。そして、確認ボタン6が押下されたとき、システムがリセットされ(S11→S12)、その後、鉄道車両10が発車されることになる。一方、確認ボタン6が未だ押下されないとき、上記S1の読取待機状態に再び移行される(S11→S1)。
【0034】
他方、上記S6にて報知が実行された後、例えば乗車員によって充分な安全が確認された場合等において「待機時間」の経過前に確認ボタン6が押下されたとき、かかる報知が停止され(S13)、登録利用者情報がクリアされてシステムがリセットされる(S12)。そしてその後、鉄道車両10が発車されることになる。一方、報知が実行された後、確認ボタン6が未だ押下されないとき、上記S9の処理に移行される。
【0035】
図4は、鉄道車両用安全支援システム1の動作について説明するための図である。図中では、左右方向に時間軸が設定され、鉄道車両10がホーム14に到着してから発車するまでが示されている。例えば図4のP1に示すように、ICカードCがカードタッチされて登録利用者情報がクリアされた後、報知装置4が起動状態とされたとき、報知装置4による報知が実行されない。
【0036】
他方、例えば図4のP2に示すように、ICカードCのカードタッチの後、登録利用者情報がクリアされるまでの間に報知装置4が起動状態とされたとき、報知装置4による報知が、「待機時間」の間だけ実行される。そして、カードタッチ後に「待機時間」が経過したとき、登録利用者情報がクリアされる。なお、この場合においては、ICカードCのカードタッチから報知装置4の起動までの時間をαとしたとき、報知装置4による報知が[「待機時間」−α]の間だけ実行されてもよい。
【0037】
同様に、図4のP3に示すように、報知装置4が起動状態とされた後、ICカードCがカードタッチされたとき、報知装置4による報知が、「待機時間」の間だけ実行される。そして、カードタッチ後に「待機時間」が経過したとき、登録利用者情報がクリアされる。
【0038】
さらにまた、例えば図4のP4に示すように、報知装置4が起動状態とされた後、ICカードCがカードタッチされたとき、報知装置4による報知が実行される。そして、例えば報知装置4例えば乗車員によって充分な安全が確認されて扉閉された後、確認ボタン6が押下されたとき、かかる報知が停止されて登録利用者情報がクリアされる。
【0039】
以上、本実施形態では、システムを使用できるものが事前登録制とされている、すなわち、利用者が予め登録された登録利用者として限定され特定されている。これにより、システムの使用目的を限定することができ、不特定多数の利用者によるいたずらを抑制することが可能となる。その結果、乗務員の安全確認が容易となると共に乗務員の負担が軽減され、ひいては、ダイヤの乱れを防止することが可能となる。
【0040】
そして、本実施形態では、上述したように、ICカードCがカードリーダ2にカードタッチされると、ICカードC内の登録利用者情報に応じて設定された「待機時間」の間、報知装置4による報知が行われている。つまり、カードリーダ2で登録利用者情報が認識されると、登録利用者情報に応じた支援が実行されている。よって、登録利用者は、当該登録利用者に応じた時間的猶予を乗車の際に得ることができ、例えば優先登録利用者であっても、乗車の際に充分な安全性を得ることが可能となると共に、負担を軽減させる(焦らせない)ことができる。
【0041】
また、本実施形態では、上述したように、発車ベル装置3がONとされて報知装置4が起動状態のときにおいて、カードタッチされたとき(図4のP3)、又はカードタッチによる利用者情報がクリアされていないとき(図4のP4)、報知装置4による報知が行われている。よって、報知の実行を発車ベル装置3によって好適に制限することができ、過度の報知によるダイヤの乱れ(むやみなシステム利用による列車遅延)を最小限にすることができる。
【0042】
なお、本実施形態では、上記のように、登録利用者の年齢や身体状況等が登録利用者情報として登録されることから、かかる登録利用者情報を利用することで、ダイヤを好適に構築することも可能となる。
【0043】
ちなみに、以上においては、カードリーダ2及びICカードCが認識手段を構成し、報知装置4が報知手段(支援手段)を構成し、コントローラ5が制御手段を構成し、発車ベル装置3が起動手段を構成し、確認ボタン6が停止手段を構成する。
【0044】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態の鉄道車両用安全支援システム1が上記第1実施形態と異なる点は、車内制御装置5dが、登録利用者情報及び発車ベル装置3の発車ベル操作に関する情報に基づき閉扉装置(ドアエンジン)の動作をさらに制御し、鉄道車両10の閉扉を制限(閉扉ロック状態)する点である。
【0045】
すなわち、タイマーのスタートから「待機時間」が経過するまでの間において、発車ベル装置3のスイッチがONとされて報知装置4が起動状態であるとき(S5のYes)、報知装置4による報知が実行(表示灯点灯)されると共に、閉扉ロック状態とされる(S21)。これにより、乗務員に安全の通知・注意喚起が促されると共に、閉扉スイッチが押下されても閉扉されないよう制限されることになる。
【0046】
続いて、確認ボタン6が押下された否かが判定される(S22)。確認ボタン6が押下されていない場合で「待機時間」が経過したとき、かかる報知が停止されると共に閉扉ロック状態が解除される(S23→S24)。続いて、確認ボタン6が押下されたとき、登録利用者情報がクリアされる(S25→S12)。そしてその後、閉扉スイッチが押下されて閉扉され、鉄道車両10が発車されることになる。一方、確認ボタン6が未だ押下されないとき、上記S1の読取待機状態に再び移行される(S25→S1)。
【0047】
他方、上記S21にて報知が実行され且つ閉扉ロック状態となった後、例えば乗車員によって充分な安全が確認された場合等において、「待機時間」の経過前に確認ボタン6が押下されたとき、かかる報知が停止されると共に閉扉ロック状態が解除され(S26)、登録利用者情報がクリアされる(S12)。そしてその後、閉扉スイッチが押下されて閉扉され、鉄道車両10が発車されることになる。一方、報知が実行された後、確認ボタン6が未だ押下されないとき、上記S23の処理に移行される。
【0048】
図6は、鉄道車両用安全支援システム1の動作について説明するための図である。図中では、左右方向に時間軸が設定され、鉄道車両10がホーム14に到着してから発車するまでが示されている。例えば図6のP24に示すように、報知装置4が起動状態とされた後、ICカードCがカードタッチされたとき、報知装置4による報知が実行されると共に、閉扉ロック状態とされて閉扉できないよう制限される。そして、確認ボタン6が押下されたとき、かかる報知が停止されて登録利用者情報がクリアされると共に、閉扉ロック状態が解除される。その結果、その後に閉扉スイッチが押下されて閉扉され、鉄道車両10が発車されることになる。
【0049】
以上、本実施形態においても、上記効果と同様の効果、すなわち、鉄道車両10に乗車する利用者を登録利用者として特定し且つ、乗車の際の安全性を向上させるという効果を奏する。
【0050】
ところで、従来、鉄道車両10の発車時の最終的な安全確認は、車掌の目視や目視を補助するモニター及びカメラによって行われている。そして、かかる安全確認に応じて扉閉装置が操作されることで、戸ばさみ等の問題が回避されている。しかし、車掌の目視による安全確認には限界があり、車掌の見落としや突然の乗降があった場合には、戸ばさみが発生するおそれがある。また、通常、利用者又は該利用者の荷物が扉に挟まった場合、戸ばさみ検知装置によって再び扉開されるが、この戸ばさみ検知装置による検知では、挟まれたものの位置や大きさ次第で完全に検知できない場合がある(例えば、ベビーカーの車輪の場合等)。
【0051】
この点、本実施形態では、上述したように、登録利用者に応じて鉄道車両10の扉閉が制限されるため、扉閉最中の突入等を防ぐことができ、戸ばさみ等の問題を確実に回避することができ、登録利用者の乗車の際における安全性を一層向上することが可能となる。すなわち、駆け込み乗車や扉閉最中の突入等を、サービスレベルを落とさずに抑制することができる。
【0052】
ちなみに、以上においては、鉄道車両10の閉扉装置を制御して鉄道車両10の扉閉を制限する車内制御装置5dが、扉閉制限手段(支援手段)を構成する。
【0053】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態は、登録利用者の乗車の際におけるシステムであるが、降車の際におけるシステムであってもよい。この場合、カードリーダ2が鉄道車両10内に設置され、降車の際、登録利用者情報がカードリーダ2で認識されることになる。
【0054】
また、上記実施形態では、報知装置4によって報知が行われる間の時間を「待機時間」に基づいて設定したが、その他の条件に基づいて設定してもよい。また、上記実施形態では、起動手段として発車ベル装置3を利用したが、報知手段を起動可能な他の手段(装置)を別途用いてもよい。さらにまた、上記実施形態では、報知装置4を鉄道車両10内に設置したが、駅構内11に設置してもよい。
【0055】
なお、カードリーダ2は、例えば広い駅構内の場合には、上記実施形態のように複数箇所に設置してもよいし、例えば狭い駅構内の場合には、改札機と一体化するように設置してもよい。つまり、カードリーダ2の設置位置は、登録利用者の希望やシステム構成に応じて設置すればよい。
【0056】
ちなみに、上記実施形態では、報知装置4が設置されず、コントローラ5の車内制御装置5dによって閉扉装置の動作のみが制御される場合もある。具体的には、カードリーダ2により登録利用者情報が認識された際、登録利用者情報に応じた設定時間に基づき鉄道車両10の扉閉が制限される場合もある。
【符号の説明】
【0057】
1…鉄道車両用安全支援システム、2…カードリーダ(読取装置,認識手段)、3…発車ベル(起動手段)、4…報知装置(支援手段、報知手段)、5…コントローラ(制御手段)、5a…車内制御装置(支援手段、扉閉制限手段)、6…確認ボタン(停止手段)、10…鉄道車両、C…ICカード(携帯情報端末,認識手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め登録され鉄道車両を利用する登録利用者に関する登録利用者情報を認識するための認識手段と、
前記登録利用者の乗車又は降車に関する支援を行う支援手段と、
前記認識手段により前記登録利用者情報が認識された際、該登録利用者情報に応じた前記支援が行われるように前記支援手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする鉄道車両用安全支援システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記認識手段により前記登録利用者情報が認識された際、該登録利用者情報に応じた設定時間に基づいて前記支援が行われるように前記支援手段を制御することを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用安全支援システム。
【請求項3】
前記支援手段は、前記鉄道車両の扉閉を制限する扉閉制限手段を含んで構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の鉄道車両用安全支援システム。
【請求項4】
前記支援手段は、前記登録利用者が乗車又は降車する旨の報知を行う報知手段を含んで構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の鉄道車両用安全支援システム。
【請求項5】
前記報知手段を起動するための起動手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記起動手段により前記報知手段が起動された状態において、前記認識手段により前記登録利用者情報が認識されたとき、又は当該認識後で所定時間経過前のとき、前記登録利用者情報に応じた前記報知が行われるように前記報知手段を制御することを特徴とする請求項4記載の鉄道車両用安全支援システム。
【請求項6】
前記起動手段は、前記鉄道車両の発車を伝えるための発車ベル装置であることを特徴とする請求項5記載の鉄道車両用安全支援システム。
【請求項7】
前記認識手段は、前記登録利用者の識別情報が格納された携帯情報端末と、該携帯情報端末を読み取る読取装置と、を含んで構成されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項記載の鉄道車両用安全支援システム。
【請求項8】
前記支援手段による前記支援を停止させる停止手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜7の何れか一項記載の鉄道車両用安全支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−179881(P2010−179881A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27345(P2009−27345)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)
【Fターム(参考)】