説明

鉛蓄電池

【課題】締付け時のトルクを十分に受け止め、電解液の染み上がりをより確実に防止できる鉛蓄電池を提供すること。
【解決手段】金属製のブッシング1の外周に周方向に延びる複数の環状溝4を形成し、樹脂製の電池蓋8にインサート成形すると共に、前記ブッシング1の内周に電極たる極柱9を挿通し、該極柱9と前記ブッシング1を結合して端子部10を形成した鉛蓄電池において、前記ブッシング1の外周に、一部又はすべてを、前記電池蓋8の天板8Aの天板厚みT内に位置させて、周り止めの複数のリブ5を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用などに用いられる鉛蓄電池に係り、特に、電池蓋に設けたブッシングの形状に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用などに用いられる鉛蓄電池は、合成樹脂製の電槽と、この電槽の上部に融着されて当該電槽を閉じる合成樹脂製の電池蓋とを備えている。これら電槽および電池蓋は、ABS樹脂あるいはポリプロピレン(PP)樹脂などの合成樹脂で製作されている。通常、電池蓋の上部には端子部が設けられ、この端子部は、電槽内から外部へと延在する鉛合金製の極柱と、この極柱が挿入された鉛合金製のブッシングとを備えている。このブッシングはインサート成形により電池蓋に形成され、極柱がブッシングに電槽の外部において溶接されている。
【0003】
インサート成形時には、ブッシングのほぼ下半部を電池蓋の樹脂材料内にインサートして成形される。しかし、ブッシングの金属材料と電池蓋の樹脂材料との間には実質的に接着力が生じることがないため、ブッシングと電池蓋とが密着せずにその境界面に微小な隙間が生じ、時間の経過と共に、その隙間を通して電槽内の電解液が這い上がり端子部に染み出すことが知られている。
【0004】
そこで一般に、図9及び図10に示すように、ブッシング501のほぼ下半部外周に環状突起503を上下複数段に形成し、これら環状突起503の形成部を電池蓋508の樹脂内にインサートし、電解液が這い上がる経路を長くしてその染み出しを防止するようにしている(例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照)。なお、図10において、符号509はブッシング501内に挿入された極柱で、この極柱509の上部がブッシング501に溶接される。
【0005】
ところで、鉛蓄電池の端子部には、ハーネス端子などの接続端子が接続される。自動車用の鉛蓄電池では、その接続端子を通して100〜数100A程度の電流が、また各種非常電源用として使用される大型のバックアップ電源用の鉛蓄電池では1000A程度の大電流が流れる。このため端子部510に接続端子を接続する際に、相当強力なトルクを加えながらその接続端子を端子部510のブッシング501に締付けて接続している。
【0006】
しかしその締付けのトルクでブッシング501が回転してしまう恐れがある。そこで、特許文献1で参照した技術では、図9及び図10に示すように、ブッシング501における環状突起503の問に回転防止用のリブ505を一体に形成し、このリブ505で接続端子締付け時のトルクを受け止めてその回転を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−317677公報
【特許文献2】特開2004−235050公報
【特許文献3】登録実用新案第3047311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のリブの構成では、接続端子締付け時のトルクを受け止めるには不十分であった。すなわち、従来のリブ構成であっても、接続端子締付け時のトルクによりブッシングと電池蓋のインサート部周辺の樹脂との境界面の隙間が広がってしまう。このため、ブッシング501に複数の環状突起503を設けて電解液の這い上がり経路を延長しても、時間の経過とともに電解液が染み出してしまい接続端子を腐食させる、という問題がある。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、締付け時のトルクに対する耐性を高め、電解液の染み出しをより確実に防止できる鉛蓄電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、金属製のブッシングの外周に周方向に延びる複数の環状溝を形成し、樹脂製の電池蓋にインサート成形すると共に、前記ブッシングの内周に電極を挿通し、該電極と前記ブッシングを結合して端子部を形成した鉛蓄電池において、前記ブッシングの外周に、一部又はすべてを、前記電池蓋の天板の天板厚み内に位置させて、周り止めの複数のリブを備えた、ことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、上記発明において、2つの前記環状溝の間に形成される鍔状の環状突起を、前記電池蓋の天板の天板厚み内に位置させ、該環状突起の一部を凹ませて残存部に前記リブを形成した、ことを特徴とする。
【0012】
また本発明は、上記発明において、前記電池蓋の天板の天板厚みの30%以上に亘り前記リブを位置させたことを特徴とする。
【0013】
また本発明は、上記発明において、前記ブッシングの中心軸からリブの外周面までの距離を、前記ブッシングの端子D寸法の1/2の長さの124%〜133%にしたことを特徴とする。
【0014】
また本発明は、上記発明において、前記リブを、水平面を0度の基準にして90度〜60度の範囲で垂直方向に対して斜めに延ばしたことを特徴とする。
【0015】
また本発明は、上記発明において、前記環状溝のそれぞれの間に形成される鍔状の環状突起の周面に凹部を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ブッシングの外周に、一部又はすべてを、電池蓋の天板の天板厚み内に位置させて、周り止めの複数のリブを備えた構成としたため、締付け時のトルクがリブを通じて電池蓋の天板全体で受け止められる。これにより、締付けトルクに対する耐性が向上し、締付けに伴うブッシングと電池蓋の境界面の隙間の広がりが抑制されるため、電解液の染み出しをより確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係るブッシングの外観構成を示す斜視図である。
【図2】同実施形態に係るブッシングを用いて構成した鉛蓄電池の端子部の断面図である。
【図3】天板の厚みの全部に位置するリブを備えたブッシングの外観構成を示す斜視図である。
【図4】同ブッシングを用いて構成した鉛蓄電池の端子部の断面図である。
【図5】第2実施形態に係るブッシングの外観構成を示す斜視図である。
【図6】同実施形態に係るブッシングの正面及び断面を共に示す図である。
【図7】同実施形態に係るブッシングを用いて構成した鉛蓄電池の端子部の断面図である。
【図8】本発明の変形例に係るブッシングのリブ形状を示す図である。
【図9】従来の鉛蓄電池のブッシングの外観構成を示す斜視図である。
【図10】従来のブッシングを用いて構成した鉛蓄電池の端子部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1は、この発明の第1実施形態に係る鉛蓄電池のブッシング1を示す斜視図である。図2はこのブッシング1を用いて構成した鉛蓄電池の端子部10の断面図である。
ブッシング1は、図1に示すように、鉛合金からなる中空円筒状の主部2と、この主部2のほぼ下半部外周に一体に上下複数段に突出形成された環状突起3とを備えている。各環状突起3は、主部2の周方向に連続して延びる鍔形状の突起であり、その互いに隣り合う環状突起3間が環状溝4となっている。最上部の環状突起3Aはその外径寸法がその下側の環状突起3の外径寸法よりも大きく形成されている。
【0019】
そしてこの実施形態のブッシング1においては、上から1段目及び2段目の環状突起3A、3Bの間の環状溝4A内に、これら環状突起3A、3Bを上下に連結するように形成された周り止めとしての複数のリブ5が一体に形成されている。これら複数のリブ5は環状突起3の周方向に沿って一定の間隔をあけて並ぶように形成されている。
【0020】
また、上から2段目の環状突起3Bの外周面には矩形状の凹部6が複数形成されている。これら凹部6は、それぞれ環状突起3Bの周方向に沿って互いに離間する任意の位置に、環状突起3Bの上面に開口して形成されている。このような凹部6が環状突起3Bに形成されることで、これら凹部6の容積分だけブッシング1の全体の体積が削減される。これにより、ブッシング1の質量と鉛使用量を削減することができ、ブッシング1の軽量化及びコスト低減が図られる。なお、同じ3段目〜5段目の環状突起3C〜3Dにも凹部6を形成しても良い。
【0021】
以上のような形状のブッシング1を、本実施形態では、例えば所定形状の金型を用い、金型温度180〜240℃、鉛合金溶湯温度400〜440℃の条件で重力鋳造により作製している。なお、凹部6の形状としては、矩形状に限らず、金型での型抜きが可能であれば、三角形状、四角形状、トラック形状などとしても良い。
【0022】
ブッシング1を用いて電池蓋8に端子部10を形成する場合、図2に示すように、電池蓋8の天板8Aに設けられる筒状部8B内に、ブッシング1の上から1段目の環状突起3Aより下側をインサートして形成される。そして、ブッシング1の中空内に電極たる極柱9が挿入され、この極柱9の上部9Aがブッシング1に溶接される。
【0023】
ここで、インサート成形時には、本実施形態では、周り止めのリブ5の上下方向(極柱9の長手方向)の高さH(すなわち、上から1段目及び2段目の環状突起3A、3Bの間隔)が天板8Aの厚みTの範囲内に位置するように電池蓋8にインサートされる。
【0024】
これにより、端子部10においては、ハーネス端子などの接続端子が接続される際の締付けトルクが周り止めのリブ5を通じて電池蓋8の天板8A全体で受け止められる。これにより、締付けトルクに対する耐性が向上し、この締付けに伴うブッシング1と電池蓋8の境界面の隙間の広がりが抑制されるため、電解液の染み出しをより確実に防止できる。
また、複数のリブ5をブッシング1の外周面の周方向に沿って一定間隔で設けているため、締付けトルクが各リブ5を通じて電池蓋8の天板8Aに均等に分散されることとなる。これにより、各リブ5への締付けトルクの偏りにより特定のリブ5と電池蓋8の境界面の隙間が他のリブ5の境界面よりも広くなる、ということがなく、ブッシング1の全周に亘って電解液の染み出しを均等に抑制することができる。
【0025】
このようなブッシング1の構成においては、リブ5による耐締付けトルクの向上は、天板8Aの厚みTの範囲内にリブ5を位置させることで得られ、この天板8Aの厚みTの範囲においてリブ5が位置する割合が大きくするほど、その向上の幅も大きくなる。
【0026】
さらに詳述すると、発明者らは、リブ5の高さHを変えてリブ5が天板8Aの厚みTの範囲に位置する割合を0%、30%、50%、100%と変化させた場合の端子部10の端子強度試験を、JIS−D5301による方法で各トルクにおいて実施して該端子部10の周辺の外観を観察し、また、1週間経過後に端子部10及び電池蓋8を解体してブッシング1の腐食の有無を検査するという方法で行った。この端子強度試験においては、ブッシング1に腐食が見られない最大のトルク値が耐締付けトルク値として得られる。
なお、図3は、リブ5が天板8Aの厚みTの範囲の100%(厚みTの全部)に位置するようにリブ5の高さHを形成した場合のブッシング1を示し、図4は、このブッシング1を用いて構成した鉛蓄電池の端子部10の断面図である。なお、これらの図に示すブッシング1では、天板8Aの厚みTの範囲にリブ5の全部を位置させるために、上から2段目及び3段目の環状突起3B、3Cの間にリブ5を形成している。
【0027】
上記端子強度試験の結果、天板8Aの厚みTの0%にリブ5が位置する場合、すなわち天板8Aの厚みT内にリブ5が位置しない場合には、耐締付けトルク値は約12N・mであることが判明した。
これに対して、天板8Aの厚みTの範囲内に位置するリブ5の割合を順次増加させるほど耐締付けトルク値が向上し、天板8Aの厚みTの30%に亘りリブ5が位置した場合には、約16.5N・mに達する耐締付けトルク値が得られるとの知見を得た。
【0028】
一般に、締付けトルクを耐締付けトルク値以下に抑えて接続端子をブッシング1に締付けている場合でも、時間の経過に伴ってブッシング1と電池蓋8の境界面を通じて電解液の這い上がりが発生する。電解液の這い上がりは、締付けトルクが耐締付けトルク値に近づくほどブッシング1の上方まで達して染み出しが発生し易くなり、接続端子が腐食される可能性が高くなる。
これに対して、耐締付けトルク値が約16.5N・mに達している場合には、時間が経過してもブッシング1と電池蓋8の境界面に電解液の這い上がりが生じることがなく、これにより、電解液の染み出しを防止し接続端子の腐食を確実に防止できる鉛蓄電池が得られることとなる。
【0029】
耐締付けトルク値は、リブ5の高さHを大きくする等して天板8Aの厚みTの範囲内に位置するリブ5の割合を増加させる他にも、リブ5の側面5A(図1)の面積(本実施形態では環状溝4の断面積)を増加させて締付け時のトルクを受ける面積を増加させることでも、その値の向上が得られる。
ただし、リブ5の高さHや側面5Aの面積を増大させるほどリブ5の体積も増えるため、ブッシング1の質量や鉛使用量も増加する。これに加え、リブ5の高さHが大きいほど、該リブ5と電池蓋8の境界面の直線距離が長くなるため、その部分で電解液が這い上がり易くなってしまう。
そこで、本実施形態では、上記16.5N・mの耐締付けトルク値が得られる範囲で、リブ5の体積の増加量とリブ5の高さHによる電解液の這い上がり易さを考慮して上記リブ5の高さHと側面5Aの面積とを調整することとしている。
【0030】
このように本実施形態によれば、電池蓋8の天板8Aの厚みT内に位置させて、周り止めの複数のリブ5を備えた構成としたため、締付け時のトルクがリブ5を通じて電池蓋の天板全体で受け止められる。これにより、締付けトルクに対する耐性が向上し、締付けに伴うブッシング1と電池蓋8の境界面の隙間の広がりが抑制されるため、電解液の染み出しをより確実に防止できる。
【0031】
これに加え、本実施形態によれば、電池蓋8の天板8Aの厚みTの30%以上に亘りリブ5を位置させる構成としたため、ブッシング1と電池蓋8の境界面での電解液の這い上がりを生じさせないようにできる。
【0032】
また、本実施形態によれば、環状溝4のそれぞれの間に形成される鍔状の環状突起3の周面に凹部6を形成したため、これら凹部6の容積分だけブッシング1の全体の体積が削減される。これによりブッシング1の質量と鉛使用量を削減することができ、ブッシング1の軽量化及びコスト低減が図られる。
【0033】
<第2実施形態>
図5は、この発明の第2実施形態に係る鉛蓄電池のブッシング101を示す斜視図であり、図6は、このブッシング101の正面及び断面を共に示す図である。また、図7は、このブッシング101を用いて構成した鉛蓄電池の端子部110の断面図である。
これらの図に示すように、本実施形態のブッシング101においては、周面に形成された複数の環状突起103のうち、上から2段目の環状突起103Bが上下方向に他の環状突起103よりも幅を持たせて形成されている。具体的には、図7に示すように、2段目の環状突起103Bは、その下縁部が少なくとも天板8Aの下面(電槽に臨む面)と同位置、或いは、下方位置まで延びた幅を有する。そして、図5に示すように、この下縁部は、周方向に沿って複数の凹部106が設けられており、凹部106同士の間の残存部が周り止めのリブ105として形成されている。
このように凹部106同士の間の残存部をリブ105として形成することで、ブッシング101の質量及び鉛使用量を大きく削減できる。
【0034】
また、リブ105は、図7に示すように、第1実施形態と同様に電池蓋8の天板8Aの厚みT内に位置するようにブッシング101を電池蓋8にインサートして端子部110が成形されている。これにより、第1実施形態と同様に、耐締付けトルク値の向上が得られている。
【0035】
ここで、ブッシング1では、「JIS−D5301の7.2端子」において、テーパ状の主部102の最大径がD寸法と定義されており、本実施形態では、このD寸法を基準にしてリブ105の径方向への突出量を規定している。
具体的には、図6に示すように、ブッシング1の中心軸Oからリブ105の外周面105Bまでの距離をRとした場合、この距離RをD寸法の1/2に対して、124%〜133%としている。
すなわち、距離Rを大きくするほど、リブ105の側面105Aの面積が増大し耐締付けトルク値の向上が得られるが、特にこの距離RをD寸法の1/2の長さの124%以上とすることで、天板8Aの厚みTの範囲内に位置するリブ105の割合が0を超えて30%に満たない範囲でも上記16.5N・m以上の耐締付けトルク値が得られ、電解液の這い上がりを防止できる。
ただし、距離Rがある程度大きくなると耐締付けトルク値の向上幅に飽和傾向がみられる、との知見が得られている。また、距離Rが大きくなるほどリブ105の体積が増加し、ブッシング1の質量及び鉛使用量が増加することになる。そこで、リブ5の距離RをD寸法の1/2の長さの133%に制限することで、ブッシング1の質量及び鉛使用量の増加を妥当な範囲に抑えつつ、良好な耐締付けトルク値が実現できる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態によれば、環状突起103Bの下縁部を電池蓋8の天板8Aの厚みT内に位置させ、該環状突起103Bの周面の一部を凹ませて残存部を周り止めのリブ105として形成したため、耐締付けトルク値の向上を得つつ、ブッシング101の質量及び鉛使用量を大きく削減できる。
【0037】
これに加え、本実施形態によれば、ブッシング101の中心軸Oからリブ105の外周面105Bまでの距離Rを、ブッシング101の端子D寸法の1/2の長さの124%以上とする構成とした。この構成により、リブ105の側面105Aの面積が増大することで締付け時のトルクを受ける面積を増加させることができ耐締付けトルク値の向上が得られる。
【0038】
また、電池蓋8の天板8Aの厚みT内にリブ105が位置することで良好な耐締付けトルク値が確保されているため、リブ105の距離Rを延ばして側面105Aの面積を増大させた分、リブ105の高さHを減らすこともでき、さらには、リブ105の距離Rが延ばすことで電解液の這い上がり経路が延びた分、環状突起103の段数を減らすことができる。このように、リブ105の高さHや環状突起103の段数を減らすことができるため、電池蓋8の厚みを薄くすることができる。以って、鉛蓄電池のサイズを高さ方向においてコンパクトにすることができ、鉛蓄電池の体積エネルギー密度を向上させることができる。
また、上記距離Rを端子D寸法の1/2の長さの133%以下に制限したため、ブッシング1の質量及び鉛使用量の増加を抑えつつ、電解液の染み出しを防止可能な耐締付けトルク値が実現できる。
【0039】
上述した各実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
【0040】
例えば、各実施形態において、図8のブッシング201に示すように、リブ205の上下に延びる方向Kを、水平面を0度の基準にして角度α=90度〜60度(又は90度〜120度)の範囲で垂直方向に対して傾斜させても良い。なお、図8では、図3に示す部材と同じ部材については同一の符号を付し、その説明を省略している。
【0041】
図8に示すようにリブ205を傾斜させることで、電解液の這い上がり経路を長くすることができるため、該電解液の染み上がりを抑制することができる。
なお、発明者らは、リブ205の傾斜の角度αが90度からずれるほど、耐締付けトルク値が低下するものの、該角度αが60度以上あれば、耐締付けトルク値の向上効果と、電解液這い上がり経路の延長効果とにより、電解液の染み上がりを防止することができる、との知見が得られている。
【0042】
また例えば、各実施形態では、環状突起3、103の段数を、自動車用の鉛蓄電池に一般に用いられる5段又は4段としたが、自動二輪車用の鉛蓄電池とする場合には、これを4段又は3段としても良い。
【符号の説明】
【0043】
1、101、201、501 ブッシング
2 主部
3、103、503 環状突起
4 環状溝
5、105、205、505 リブ
5A、105A 側面
105B、205B 外周面
6、106 凹部
8、508 電池蓋
8A 天板
9、509 極柱(電極)
10、110、510 端子部
O 中心軸
R 距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のブッシングの外周に周方向に延びる複数の環状溝を形成し、樹脂製の電池蓋にインサート成形すると共に、前記ブッシングの内周に電極を挿通し、該電極と前記ブッシングを結合して端子部を形成した鉛蓄電池において、
前記ブッシングの外周に、一部又はすべてを、前記電池蓋の天板の天板厚み内に位置させて、周り止めの複数のリブを備えた、
ことを特徴とする鉛蓄電池。
【請求項2】
2つの前記環状溝の間に形成される鍔状の環状突起を、前記電池蓋の天板の天板厚み内に位置させ、該環状突起の一部を凹ませて残存部に前記リブを形成した、
ことを特徴とする請求項1に記載の鉛蓄電池。
【請求項3】
前記電池蓋の天板の天板厚みの30%以上に亘り前記リブを位置させたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鉛蓄電池。
【請求項4】
前記ブッシングの中心軸からリブの外周面までの距離を、前記ブッシングの端子D寸法の1/2の長さの124%〜133%にしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の鉛蓄電池。
【請求項5】
前記リブを、水平面を0度の基準にして90度〜60度の範囲で垂直方向に対して斜めに延ばしたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の鉛蓄電池。
【請求項6】
前記環状溝のそれぞれの間に形成される鍔状の環状突起の周面に凹部を形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の鉛蓄電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−238552(P2010−238552A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85654(P2009−85654)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000005382)古河電池株式会社 (314)
【Fターム(参考)】