説明

鉱物質分散剤、およびそれを使用して鉱物質スラリーを調製するための方法

鉱物質スラリーが、スラリーの全重量の約60パーセント以上の鉱物質粒子(ここでその鉱物質粒子の85パーセントは、2マイクロメートル以下の平均粒子サイズを有する)と、可逆的付加切断連鎖移動重合によって形成されるアクリレートポリマーから誘導される高分子電解質分散剤(ここでその高分子電解質分散剤が、トリチオカーボネート連鎖移動剤から誘導されるチオ含有残基を含む末端基を含み、ここでその高分子電解質分散剤が乾燥鉱物質粒子1トンあたりの分散剤の量が約35ポンド未満であり、そしてここでその高分子電解質分散剤が、3000〜10,000ダルトンの分子量と、少なくとも1.0で1.5未満の多分散度とを有している)と、残りに相等する水と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の開示は一般的に、水、鉱物質粒子、および分散剤を含むスラリー、さらにはそれらを調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉱物質フィラーは、原料、ペイント、紙、プラスチックなどに添加して、容量および/または重量を増したり、多くの場合さらにその技術的使用性能を改良したりするために使用される比較的安価な物質である。たとえば、炭酸カルシウムは天然由来の物質からなり、パルプ・紙産業においてよく使用されている。それら天然由来の鉱物質としては、たとえば、石灰石、大理石、白亜、さらには海浜生物の殻たとえば牡蠣殻などが挙げられる。
【0003】
一般的に、各種可能な用途で有用に使用するには、鉱物質フィラーを粉砕して粒子としなければならない。たとえば、炭酸カルシウムは一般的に、露天掘りまたは地下採石によって、炭酸塩含有粗原料をまず得ることによって調製される。採鉱地域に依存する無機または有機混入物と共に採石されたその炭酸塩含有粗原料を精製し、次いで乾式および/または湿式加工にかける。予備的粉砕をミリングによって実施し、必要があればそれに続けて浮遊選別を行う。そのような出発物質を、次いでアジター・ボールミルを使用して、固形分含量30〜75重量%で湿式粉砕にかける。
【0004】
ミリングは、メディアの存在下でも、または非存在下でも実施することができる。メディアミリングにおいては、ボール、ペブル、その他のメディアたとえば砂を使用して、鉱物質粒子を所望の粒子サイズにまで粉砕する。一般的なメディアミリング方法は、ボールミリング、アトリションミリング、サンドミリング、垂直ミリングおよび水平ミリングである。それぞれに場合において、典型的には粉砕するべき所望の粒子サイズよりは大きいメディアを、チャンバーに入れ、次いでそれを振盪させるか、かき混ぜる(stir)か、または撹拌させる(agitate)。適切なメディア物質を選択することによって、1マイクロメートル未満の平均粒子サイズにまで粒子を摩砕させることができる。
【0005】
水平ミルおよび垂直ミルは、その名前通りに配置させた円状容器からなり、その内部でディスクまたはパドルが高速で回転して、強力な衝撃および剪断を与えて、鉱物質スラリー粒子を微粉砕する。垂直ミルよりも水平ミルの方が設備費が高く、より複雑であるが、水平ミルの方がエネルギー効率は高い。しかしながら、いずれのタイプのミルもエネルギーを大量に消費するので、改良された鉱物質粉砕効率が必要とされている。
【0006】
パルプおよび紙用途のための鉱物質フィラーの主たる物理的特性としては、たとえば中央粒子サイズ、粒子サイズ分布、白色度、高固形分時の水中でのレオロジーなどが挙げられる。残念ながら、固形分含量を高くしたり、粒子細度を高くしたりすることはいずれも、スラリー粘度を上昇させる。現行の分散剤では、高固形分で、低微細度で、比較的低粘度を有する安定なスラリーを得ることは不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0010249号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0054063号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0267274号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2006/0198422号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、ミリング効率を向上させる改良された粉砕助剤であって、かつ鉱物質スラリーの改良された分散剤が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示されているのは、改良された粉砕助剤、ならびに鉱物質粉砕とスラリー粘度安定性のための改良された分散剤として機能する高分子電解質である。本明細書を通じて、「分散剤」という用語は、分散性と粉砕助剤性の両方を有する高分子電解質を含むものとして使用される。
【0010】
一つの実施態様においては、鉱物質スラリーが、スラリーの全重量の約60パーセント以上の鉱物質粒子(ここでその鉱物質粒子の85パーセントは、2マイクロメートル以下の平均粒子サイズを有する)と、可逆的付加切断連鎖移動重合によって形成されるアクリレートポリマーから誘導される高分子電解質分散剤(ここでその高分子電解質分散剤が、トリチオカーボネート連鎖移動剤から誘導されるチオ含有残基を含む末端基を含み、ここでその高分子電解質分散剤が乾燥鉱物質粒子1トンあたりの分散剤の量が約35ポンド未満であり、そしてここでその高分子電解質分散剤が、3000〜10,000ダルトンの分子量と、少なくとも1.0で1.5未満の多分散度とを有している)と、残りに相当する水と、を含む。
【0011】
一つの実施態様においては、鉱物質スラリーを調製するためのプロセスが開示されているが、そのプロセスには、ミリングメディアと共に混合物をミリングして鉱物質スラリーを形成させる工程(その混合物には、その混合物の全重量を基準にして約68〜約80重量パーセントの量の炭酸塩含有粒子と、可逆的付加切断連鎖移動重合により形成されるアクリレートポリマーから誘導される高分子電解質分散剤(その高分子電解質分散剤には、トリチオカーボネート連鎖移動剤から誘導されるチオ含有残基を含む末端基を含み、その高分子電解質分散剤は、3000〜10,000ダルトンの分子量および1.5未満の多分散度を有し、乾燥炭酸塩含有粒子1トンあたりの分散剤の量が約35ポンド未満である)と、残りに相等する水とを含む);ならびに、その鉱物質スラリーからそのメディアを濾過する工程を含むが、ここでその鉱物質スラリー中の炭酸塩含有粒子の90パーセントが、2マイクロメートル未満の平均粒子サイズを有している。
【0012】
以下の本発明に開示する各種の側面の詳細な説明とその中に含まれる実施例とを参照することによって、本発明の開示がより容易に理解されるであろう。
【0013】
以下に図面の説明をするが、類似の要素には類似の番号を付与している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】垂直ミル上10分間の粉砕の後の、異なった多分散度を有する分散剤を用いて調製した粉砕炭酸カルシウム(GCC)スラリーについて、質量パーセントを、粒子直径の関数として示したグラフである。
【図2】垂直ミル上で、異なった多分散度を有する分散剤(それぞれの分散剤で、2.0マイクロメートル未満の粒子直径を有する質量が約90%に達するのに必要な時間と、それらの粒子直径分布における差異を示す)を用いて調製した粉砕炭酸カルシウムスラリーについて、質量パーセントを、粒子直径の関数として示したグラフである。
【図3】垂直ミル上35分間の粉砕の後の、異なった多分散度を有する分散剤を用いて調製した粉砕炭酸カルシウムスラリーについて、質量パーセントを、粒子直径の関数として示したグラフである。
【図4】異なった多分散度の分散剤を用いて垂直ミル上で調製した粉砕炭酸カルシウムスラリーについて、2マイクロメートル未満である粒子直径を有する粉砕炭酸カルシウムの%累積質量を、時間の関数として示したグラフである。
【図5】垂直ミル上で調製した、各種の多分散度と乾燥トンあたりの乾燥ポンド(ポンド/トン)担持量の分散剤の粉砕炭酸カルシウムスラリーについて、静的粘度を、時間の関数として示したグラフである。
【図6】水平ミル上60分間および90分間の粉砕の後の、異なった多分散度を有する分散剤を用いて調製した粉砕炭酸カルシウムスラリーについて、質量パーセントを、粒子直径の関数として示したグラフである。
【図7】水平ミル上で、異なった多分散度の分散剤を用いて調製した粉砕炭酸カルシウムスラリーについて、静的粘度を、時間の関数として示したグラフである。
【図8】垂直ミル中で調製した粉砕炭酸カルシウムスラリーの初期およびエージング後に、ブルックフィールドT−バー(T−bar)スピンドルを用いて測定した静的粘度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の開示は、鉱物質分散剤、および鉱物質スラリーの調製におけるその使用を目的とする。本明細書に記載の鉱物質分散剤およびそのスラリーを製造するためのプロセスによって、高い鉱物質固形分を有し、長期間にわたって安定なスラリー粘度を有して沈降を示さないスラリーが得られることが見出された。それを粉砕炭酸カルシウムスラリーに適用すると特に有利であることが見出されたが、その場合約75%の固形分含量と水中1000センチポワズ(cP)未満の粘度とが得られた。そのような鉱物質分散剤は、たとえば粒子の90パーセントが2マイクロメートル以下となるような、目標の粒子サイズに達するのに必要とされる時間量として測定して、迅速な製造能力を与え、そのため製造コストを抑制することができる。さらに、水の置換え必要量が少なく、水の蒸発量が少なく、スラリーの加熱が少しですむので、プロセス制御が改良される。この方法では、得られるスラリーが貨車輸送に適した安定性を有しているが、貨車輸送では通常、輸送の間、貨車からの移送の間、およびその最終使用にいたるまでの数日間、スラリーが安定でなければならない。鉱物質固形分が高いことが特に有利であるが、その理由は、貨車1台でユーザーに届けられる製品の量が増えることに直接つながるからである。
【0016】
スラリーの中で使用するための鉱物質の例としては、カオリン、焼成カオリン、各種の形態の炭酸カルシウム(粉砕、沈降、大理石、石灰石、白亜)、リン酸カルシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、タルク、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、ホワイトカーボン、アタパルジャイト、バライト、ウォラステナイト、長石、セッコウ、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト、マイカ、およびその他の鉱物質顔料等のものが挙げられる(これらに限定される訳ではない)。
【0017】
鉱物質分散剤は、調節された方法で調製された、すなわち、所定の分子量、組成、鎖末端官能基、および低多分散度を有する高分子電解質である。本明細書で使用するとき、「高分子電解質」という用語は、水またはその他のイオン化溶媒の中で解離してポリイオン(ポリカチオンまたはポリアニオン)を生じる高分子物質を指している。たとえば、アニオン的に荷電された高分子電解質は、電子または電子密度が過剰で、正味の負の電荷を有する。高分子電解質は、ポリ酸、ポリ塩基、ポリ塩またはポリ両性電解質などであってよい。一つの実施態様においては、その鉱物質分散剤が、1.5未満の多分散度を有するポリアクリル酸および/または塩であり、他の実施態様においては1.3未満の多分散度であり、さらに他の実施態様においては1.1未満の多分散度である。本明細書で使用するとき、「多分散度」という用語は、重量平均分子量の数平均分子量に対する比(M/M)を指している。
【0018】
鉱物質分散剤は、可逆的付加切断連鎖移動重合(RAFT)として公知の、リビングフリーラジカル重合プロセスによって調製することができる。RAFT重合では、モノマーおよびフリーラジカル重合開始剤に加えて、チオカルボニルチオ化合物から選択される連鎖移動剤を使用するが、それらの化合物は、ジチオエステル、ジチオカルバメート、キサンテート、ジチオホスフィネート、またはトリチオカーボネートから誘導される。本明細書で使用するとき、「ポリマー」という用語は、5個以上のモノマーと呼ばれる結合単位の化学的な組合せによって形成される高分子を指している。さらに、本明細書で使用するとき、「コポリマー」という用語は、2種以上の異なるモノマーからなるポリマーを指しており、「ホモポリマー」という用語は、単一のモノマーから形成された合成または天然ポリマーを指している。鉱物質分散剤として使用されるホモポリマーまたはコポリマーは、典型的には約1,000〜約10,000の範囲の分子量を有しており、好ましくは約2,000〜約8,000の分子量である。
【0019】
高分子電解質の鉱物質分散剤を形成させるためには、それらの(1種又は複数の)モノマーは、いかなる特定のモノマーにも限定するつもりはないが、非限定的な例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチルヘキシル、アクリルアミド、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソステアリル、それらに対応するメタクリル酸エステルたとえば、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、エチレングリコールジメタクリレート、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソブチル、メタクリルアミド、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸t−ブチルなどが挙げられる。本明細書の開示を読めば、当業者にはその他のモノマーも明らかであろう。高分子電解質の鉱物質分散剤にはさらに、上述のモノマーなどを組み合わせたものからなるコポリマーも含まれる。
【0020】
フリーラジカル源は、フリーラジカルを発生させる各種適切な方法などであってよいが、そのような方法としてはたとえば、(1種または複数の)適切な化合物の加熱誘導ホモリティック開裂(熱重合開始剤たとえば、ペルオキシド、ペルオキシエステル、またはアゾ化合物)、モノマー(たとえば、スチレン)からの自発的発生、レドックス開始系、光化学的開始系、または高エネルギー照射たとえば電子ビーム、X線照射、もしくはガンマ線照射などが挙げられる。開始系を選択して、その反応条件下において、製法条件下での、重合開始剤、開始条件、または開始ラジカルと移動剤とで、実質的にマイナスの相互作用がないようにしなければならない。重合開始剤はさらに、反応媒体またはモノマー混合物中に必要なだけの溶解性を有していなければならない。
【0021】
熱重合開始剤は、重合温度で適切な半減期を有するように選択する。それらの重合開始剤としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シアノ−2−ブタン)、ジメチル2,2’−アゾビスジメチルイソブチレート、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2−(t−ブチルアゾ)−2−シアノプロパン、2,2−アゾビス[2−メチル−N−(1,1)−ビス(ヒドロキシエチル)]プロピオンアミド、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミン)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(イソブチルアミド)ジヒドレート、2,2’−アゾビス(2,2,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシオクトエート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシイソブチレート、t−アミルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシピバレート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、ジクミルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、カリウムペルオキシジスルフェート、アンモニウムペルオキシジスルフェート、ジt−ブチルハイポナイトライト、およびジクミルハイポナイトライトの1種または複数が挙げられる。
【0022】
光化学的重合開始剤系は、反応媒体またはモノマー混合物の中で必要なだけの溶解性を有し、重合条件下においてラジカルを生成させるに適した量子収率を有するように選択する。例としては、アゾ化合物、ベンゾイン誘導体、ベンゾフェノン、アシルホスフィンオキシド、および光レドックス系が挙げられる。
【0023】
レドックス重合開始剤系は、反応媒体またはモノマー混合物の中で必要なだけの溶解性を有し、重合条件下においてラジカルを生成させるに適した量子収率を有するように選択するが、それらの開始系としては、酸化剤たとえばカリウムペルオキシジスルフェート、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシドと、還元剤たとえば鉄(II)、チタン(III)、チオ亜硫酸カリウム、重亜硫酸カリウムとの組合せを挙げることができる。
【0024】
その他の好適な開始系が最近の文献に記載されている。たとえば、モード(Moad)およびソロモン(Solomon)『ザ・ケミストリー・オブ・フリー・ラジカル・ポリメリゼーション(The Chemistry of Free Radical Polymerization)』(ペルガモン(Pergamon)、ロンドン(London)、1995、p.53〜95)を参照されたい。
【0025】
先にも記述したように、RAFT連鎖移動剤はチオカルボニルチオ化合物であって、一般式R−X−C(S)−S−R’のものである(式中、XはC、N、O、PまたはSであり、Rは、C−Xタイプの共有結合によって官能基R−Xを安定化させるための基を表し、R’は、R’−S結合のような基を表す)。例を挙げれば、Rは置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のアルキルとすることができる。RAFT連鎖移動剤は、極性溶媒、たとえば、水、アルコールなどの中に溶解するのが好ましい。一つの実施態様においては、そのRAFT連鎖移動剤がトリチオカーボネートである。さらに別な実施態様においては、そのRAFT連鎖移動剤が、2−(2−カルボキシエチルスルファニルチオカルボニルスルファニル)プロピオン酸、または2,2’−ビス(プロピオン酸)トリチオカーボネートである。
【0026】
本発明に開示の重合は、各種適切な溶媒または溶媒混合物の中で実施することができる。好適な溶媒としては、水、アルコール(たとえば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール)、テトラヒドロフラン(THF)ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、アセトニトリル、ヘキサメチルホスホルアミド、酢酸、ギ酸、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、エーテル(たとえば、ジエチルエーテル)、クロロホルム、および酢酸エチル等が挙げられる。好適な溶媒としては、水、ならびに水と水混和性有機溶媒たとえばDMFとの混合物が挙げられる。特に好ましい溶媒は水である。
【0027】
狭い多分散度のポリマーを合成することを目的とした条件選択のための一般的なガイドラインとしては、重合開始剤(1種または複数)、モノマーの濃度、およびその他の反応条件(溶媒(1種または複数)、温度、圧力、および時間)を、連鎖移動剤の不存在下で生成させたポリマーの分子量が、その存在下で生成させたものの少なくとも2倍になるように選択するべきである。不均化のみによって反応が停止する重合においては、このことは、重合の際に形成される開始剤ラジカルの全モルが、連鎖移動剤の全モルの0.5倍未満となるように重合開始剤濃度を選択することと同じである。より好ましくは、連鎖移動剤不在下で生成させたポリマーの分子量が、その存在下で生成させたものの少なくとも5倍となるような条件を選択するべきである。
【0028】
本発明に開示の方法により合成されたポリマーおよびコポリマーの多分散度は、連鎖移動剤の重合開始剤に対する分子数の比率を変化させることによって調節することが可能である。連鎖移動剤の重合開始剤に対する比率を大きくすると、多分散度がより低くなる。逆に、連鎖移動剤の重合開始剤に対する比率を小さくすると、多分散度がより高くなる。ポリマーおよびコポリマーが、好ましくは約1.5未満、より好ましくは約1.3未満、さらにより好ましくは約1.2未満、さらにより好ましくは約1.1未満の多分散度を有するような条件を選択する。通常のフリーラジカル重合においては、生成するポリマーの多分散度は典型的には、転化率が低い(10%未満)場合には1.6〜2.0の範囲であり、転化率が高くなると、これよりも実質的に大きくなる。1.6よりも高い多分散度は好ましくない。
【0029】
これらの条件下で、通常のフリーラジカル重合に典型的な条件下で、重合プロセスを実施する。上述のジチオカーボネートおよびトリチオカーボネートを用いた重合は、20〜200℃、好ましくは20〜150℃、より好ましくは50〜120℃、さらにより好ましくは60〜90℃の範囲の温度で好適に実施される。水溶液中で実施する重合のpHもまた、変化させることが可能である。pHは、一つには、選択された連鎖移動剤が安定であり、ポリマーの生長反応が起きるように選択する。典型的には、そのpHは約1〜約8である。特にそのポリマーがコポリマーである場合には、そのコポリマーの一つのモノマーが荷電され、他のモノマーが荷電されないかまたは逆の電荷を有するように、重合に従ってpHを調節することもできる。
【0030】
上述のことを考慮に入れて、分子量が10,000未満で多分散度が1.5未満の高分子電解質の鉱物質分散剤、特にポリアクリレート鉱物質分散剤を合成するための一般的プロセスには、アクリル酸モノマーと重合開始剤とトリチオカーボネートRAFT連鎖移動剤とを、高温で一定時間かけて水中で結合させることが含まれる。次いでその溶液を、水酸化ナトリウムのような塩基を用いて、部分的または全面的に中和する。そうして得られたアクリレートポリマー(本明細書においては、第一のポリマーと呼ぶこともある)は、アクリル酸、重合開始剤、および連鎖移動剤を適切な比率で用いたときには、ポリアクリル酸ナトリウム標準品(アメリカン・ポリマー・スタンダーズ・コーポレーション(American Polymer Standards Corporation)、カタログ番号PSS4K、PAA8K)に対して測定すると、10,000ダルトン未満の分子量と1.5未満の多分散度とを有する。次いでそのアクリレートポリマーを使用して、粉砕された鉱物質、たとえば炭酸カルシウムを分散させて、目標とする粒子サイズ分布で比較的高固形分が得られるようにすることができる。有利なことには、そのスラリーは摩砕の際にも低粘度を維持し、また約15日間にわたって安定であることも見出された。さらには、予想もしなかったことであるが、アクリル酸モノマーに典型的に含まれている重合禁止剤を除去する必要がないことも、本願発明者らによって見出された。
【0031】
そのアクリレートポリマーには、それぞれの鎖の中央にトリチオカーボネートに由来する残基が含まれている。この残基を熱的または酸化的に切断して、分断ポリマーを形成することも可能であるが、このものは、誘導ポリアクリレート(derived polyacrylate)とも呼ばれる。その誘導ポリアクリレートは、そのアクリレートポリマー(第一のポリマー)の分子量の約半分の分子量と、そのアクリレートポリマーとほぼ同じ多分散度とを有している。その誘導ポリアクリレートもまた、高分子電解質の鉱物質分散剤として有用である。アクリレートポリマーとは異なって、その誘導ポリアクリレートには、アクリレートポリマーのトリチオカーボネート残基から誘導される末端基を有する鎖を含んでいる。その末端基は、チオ含有残基である。
【0032】
酸化的切断の程度に応じて、その誘導ポリアクリレートは、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定して、モノモーダルまたはバイモーダルの分子量分布を有することができるが、いずれのモードでも多分散度は1.5未満である。モノモーダル分布であるということは、アクリレートポリマーが完全に誘導ポリアクリレートに転化したことを示しており、バイモーダル分子量分布であるということは、アクリレートポリマーの誘導ポリアクリレートへの転化が不完全であることを示している。バイモーダル分布における高分子量成分は、クロマトグラフィーのピーク面積の単純デコンボリューションによって測定して、高分子量および低分子量成分の合計した重量を基準にして、0よりは多く25重量パーセント未満、より詳しくは20重量パーセント未満の範囲で存在することができる。高分子量および低分子量成分はそれぞれ、1.0〜1.5の多分散度を有している。
【0033】
また別な実施態様においては、狭い多分散度のポリアクリレート鉱物質分散剤を製造する方法には、上述の重合プロセスによって製造された第一のポリアクリレートを熱的および/または酸化的に分断して、その第一のポリアクリレートに比較して半分の分子量とほぼ同じ多分散度とを有する誘導ポリアクリレートを形成させることが含まれる。その反応条件、重合開始剤の量、およびトリチオカーボネート連鎖移動剤を選択して、6000〜20000ダルトン、より好ましくは8000〜16000ダルトン、さらにより好ましくは10000〜12000ダルトンの分子量を有し、トリチオカーボネートの残基を含む、第一のポリアクリレートを製造する。約95〜約100℃の温度、約2〜約3のpHで、約3〜約5時間、水中1〜90パーセント固形分、他の実施態様では40〜50パーセントの固形分含量の第一のポリアクリレート濃度で第一のポリアクリレートを加熱すると、誘導ポリアクリレートが得られる。その誘導ポリアクリレートは、3000〜10000ダルトン、より好ましくは4000〜8000ダルトン、さらにより好ましくは5000〜6000ダルトンの分子量を有する。酸化剤、好ましくは過酸化水素を添加することによって、反応が促進されて、加熱時間を短縮することができる。その他の酸化剤の例としては、過酸たとえば過酢酸または過安息香酸が挙げられる。
【0034】
いくつかの用途においては、本明細書に開示された高分子電解質分散剤にさらに、可逆的付加切断連鎖移動重合により形成されたものではない、およびRAFT重合で形成されたポリマーから誘導されたものではない、ポリマーおよびコポリマーをさらに含むこともできる。
【0035】
分断されたポリアクリレート分散剤(すなわち、第二のポリアクリレート)を用いて調製した鉱物質スラリーは、思いがけないことには、長期間の保存安定性の点で有利である。3000〜8500ダルトンのMwを有する分断されたポリアクリレートを用いて調製したスラリーの28日ブルックフィールドT−バー粘度は、7000cP未満である。それとは対照的に、同程度の多分散度を有する低分子量「未分断の」ポリアクリレート(第一のポリマー)は、長期間での安定性がより低いことを示したが、これについては、以下の実施例において示すであろう。
【0036】
一例として乾燥粉砕炭酸カルシウムを使用した場合、スラリーを形成させるためのプロセスには通常、粉砕炭酸カルシウムをまず垂直粉砕プロセスにかけることが含まれる。粉砕炭酸カルシウムは、10マイクロメートルを超える平均粒子サイズを有しており、そして、粉砕されると、たとえば、平均粒子サイズが2マイクロメートル未満が90%で、微細物が最小となる。垂直ミリングプロセスには、適切なサイズのミリングビーズを用いて水と粉砕炭酸カルシウムとを混合することが含まれる。それに続けて、この混合物に対して、10,000ダルトン未満の分子量と1.5未満の多分散度とを有するポリマー分散剤、たとえばポリアクリレートを添加する。一定間隔で平均粒子サイズを測定し、所望の平均粒子サイズに達したら、ミリングを停止させ、スラリーからメディアを濾過する。
【実施例】
【0037】
以下の例は、説明だけを目的として提供されており、本発明の範囲を限定する意図はない。これらの例においては、それらの水溶液中のポリマー濃度は、約0.5gのポリマー溶液から130℃で30分間かけて揮発分を蒸発させた後の試料質量の最初の質量に対する比率を測定することによって求めたものであって、パーセント固形分として報告している。
【0038】
ポリマーの平均分子量(Mw)と多分散度(PDI=Mw/Mn)は、カラムオーブンとウォータース(Waters)2410屈折率検出器を備えた、ウォータース・アライアンス(Waters Alliance)LC2690装置でのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により測定した。この装置の運転条件は、30℃で溶出液流速が0.65mL/分で、ガードカラムの後に3本連続してウォータース・ウルトラヒドロゲル(Waters Ultrahydrogel)カラム(120/250/500オングストローム)を使用した。典型的なカラム圧力は800〜1000psiであった。溶出液は、0.85重量%のNaNO、0.05重量%のNaN、および4重量%の濃縮されたpH7緩衝液(フィッシャー(Fisher)SB109−1)であり、45マイクロメートルフィルターで濾過した脱イオン水溶液であった。すべてのポリマー試料は、溶出液を用いてポリマーまたはポリマー溶液を0.25乾燥当量重量%にまで希釈し、45マイクロメートルのフィルターを通すことにより調製した。本発明のポリマー試料はすべて、それらの合成溶液から直接、単離することなく調製した。ポリマー溶液(100マイクロリットル)をSECカラム上に注入し、約60分間にわたってクロマトグラムを記録させた。分子量の検量線は、ウォータース・ミレニアム(Waters Millennium)ソフトウェアバージョン3.2を使用してピーク保持時間から生成させ、6種のポリアクリル酸ナトリウム標準品の重量平均分子量および数平均分子量を記載した。本発明のポリマー試料のそれぞれの直前に、2種のポリマー標準品(アメリカン・ポリマー・スタンダーズ・コーポレーション(American Polymer Standards Corporation)、PSS4K、PAA8K)を分析して、検量線の確認を行った。
【0039】
粉砕炭酸カルシウム(GCC)鉱物質スラリーの平均粒子サイズおよび粒子サイズ分布は、水道水を用いて75重量%鉱物質スラリーの5グラムを希釈して100gとし、マイクロメトリックス・セディグラフ(Micrometrics Sedigraph)5100装置で分析することにより測定した。ウィン(WIN)5100V2.03ソフトウェアを使用してデータ集積し、GCCに対して2.750g/mLの試料密度を使用して解析した。
【0040】
(比較例1)
この比較例においては、ポリアクリレートポリマー(PA)を調製した。アクリル酸(340g)および0.185M過硫酸アンモニウム水溶液(79g)を、680gの2−プロパノール:水溶液(重量比で6:1)に80℃で4時間かけて添加し、さらに1時間加熱を続けた。水酸化ナトリウムを用いてそのポリアクリレート溶液を中和して、pH約8.3とした。撹拌を停止して、上側の2−プロパノール層を下側の水層から分離させた。ポリアクリレートのほぼ全部が、水層の中に分配された。蒸留によって、単離されたポリアクリレート−水層から残存している2−プロパノールを除去し、次いでさらなる水(290g)を用いてそれを希釈した。Mwは5470であり、PDIは2.3であった。
【0041】
(比較例2)
この比較例においては、比較例1に記載の方法に従って分別したポリアクリレート(PA−frac)を調製した。ただし、水酸化ナトリウム(47g)を用いてポリマーを25%だけ中和してから、2−プロパノールとポリマー−水層とを分離した。この部分中和によって、大部分の低分子量ポリアクリレートが上側の2−プロパノール層の中に残り、その層と共に廃棄され、そのためにポリアクリレートが分別されて、残るポリアクリレートの多分散度が低下した。残存している2−プロパノールを蒸留した後に、そのポリアクリレート−水層を完全に中和した。Mwは5840であり、PDIは2.01であった。
【0042】
(実施例3)
この実施例においては、フリーラジカル重合開始剤として4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)を、連鎖移動剤(CTA−1)として2−(2−カルボキシエチルスルファニルチオカルボニルスルファニル)プロピオン酸を使用して、水中で、調節重合(controlled polymerization)ポリアクリレート(PA−control 1)を調製した。コンデンサーを取り付けた0.5Lのフラスコの中で、155mLの3.5Mアクリル酸水溶液を使用して、アクリル酸、アゾ重合開始剤、およびCTA−1をそれぞれ765:1:17のモル比で組み合わせた。アクリル酸の重合禁止剤は除去しなかった。窒素を用いて30分間かけてその溶液をパージしてから、90℃に4時間加熱した。そのポリマー溶液を冷却して室温としてから、50%(重量/重量)の水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和してpHを約8.3とした。Mwは5637であり、PDIは1.29であった。
【0043】
(実施例4)
この実施例においては、実施例3に記載の手順に従って調節重合ポリアクリレート(PA−controlled−2)を合成したが、ただし、重合開始剤、アクリル酸、および半分の量の水の溶液を、90℃に加熱したバランス量の水の中に溶解させたCTA−1に、30分かけて添加した。加熱を4時間続けた時点で、溶液を冷却し、次いで水酸化ナトリウムを用いて中和してpH約8.3とした。Mwは4956であり、PDIは1.23であった。低Mwで低PDIであるということは、実施例3に記載されたバッチプロセスに加えて、セミバッチプロセスによっても、本明細書に開示の有用なポリマーを合成することが可能であることを示している。これらの結果を表1にまとめた。
【0044】
(実施例5)
この実施例においては、実施例3と同様にして調節重合ポリアクリレート(PA−control−3)を調製したが、ただし、連鎖移動剤(CTA−2)として2,2’−ビス(プロピオン酸)トリチオカーボネートを使用し、またアクリル酸:アゾ重合開始剤:CTA−2のモル比がそれぞれ1691:1:16.7であり、コンデンサーおよび機械的撹拌機を取り付けた0.25Lのフラスコの中で、80mLの6.94Mアクリル酸水溶液を使用した。アクリル酸の重合禁止剤は除去しなかった。窒素を用いて30分間かけてその溶液をパージしてから、90℃に4時間加熱した。そのポリマー溶液を冷却して室温としてから、50%(重量/重量)の水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和してpHを約8.3とした。Mwは10,208であり、PDIは1.15であった。
【0045】
(実施例6)
この実施例においては、実施例5と同様にして調節重合ポリアクリレート(PA−control−4)を調製したが、ただし、アクリル酸:アゾ重合開始剤:CTA−2のモル比がそれぞれ993:1:16.7であり、90mLの6.94Mアクリル酸水溶液を使用した。Mwは5,762であり、PDIは1.16であった。
【0046】
【表1】

【0047】
(実施例7)
この実施例においては、それぞれ比較例2および実施例3で得られたPA−fracまたはPA−control−1のポリアクリレートを使用し、垂直ミルの中で粉砕炭酸カルシウムを摩砕した。水(933g)と、PA−fracまたはPA−control−1のいずれか(2.40gの乾燥中和ポリマー、水溶液中)とを組み合わせ、垂直メディアミル(セグバリ・アトリター(Szegvari Attritor)タイプP;幅8.5インチ×高さ10インチのボウル;撹拌機=4本アーム;7/8インチ×7インチ)中で、5分間、シャフト速度約200回転/分(rpm)で混合した。2400gの中央粒子サイズ約10〜13マイクロメートルの粉砕炭酸カルシウム(GCC)をそのポリマー溶液に加え、約5分間混合してGCCを濡らした。メディア(3.6L、0.8〜1.0mm、セラミック)をそのスラリーに加え、ミルのシャフト速度を594rpmまで上げた。追加のポリマー溶液(2.40gの乾燥中和ポリマー、水溶液中)を5、10、15、20、25分のところで添加し、全部で14.4gの乾燥中和ポリマー(水溶液中)となるように、GCCスラリーに添加した(1トンのGCCに12ポンドの乾燥中性分散剤に相当)。ミリングの際に5分間隔でスラリーのアリコート(約5mL)を取り出して、それらの粒子サイズ分布を測定した。ミリングの際にスラリーに水(10分で15mL;20分で20mL;30分で30mL)を添加して、水の蒸発を相殺し、かつ35分間のミリングの間の視覚粘度(visual viscosity)を一定に保ちながらも、一方では十分な水の蒸発を行わせて、最初のGCC固形分72%が約75%にまで上がるようにした。それぞれのポリマーにおける7種のアリコートの粒子サイズ分布を表2にまとめ、図1〜3に示した。
【0048】
【表2】

【0049】
粉砕の最初の10分間の間(図1)で、同一のポリマー量では、思いがけないことには、PA−control−1の方がPA−fracよりも、GCCをより小さな粒子サイズに摩砕した。さらに、これまた思いがけないことには、PA−control−1は、より大きいGCC粒子画分の方を、より小さい粒子サイズ画分よりも優先的に粉砕し、その結果、PA−fracの場合よりもより狭い粒子サイズ分布が得られるということが観察された。これはすなわち、10分間の粉砕の後では、PA−fracで処理したスラリーは、5マイクロメートル未満のGCCを80.4%しか含まないのに対して、PA−control−1で処理したスラリーでは、94.1%のGCCを粉砕して5マイクロメートル未満としていた。それとは対照的に、PA−fracおよびPA−control−1は、GCCをほぼ同じ程度に粉砕していたが、これは10分後の0.5マイクロメートル未満のGCC粒子のパーセント(それぞれ14.6%および17.2%)の測定値から判る。
【0050】
紙の製造において使用される湿式粉砕GCCのための一般的な粒子サイズの目標は、2.0マイクロメートル未満のGCC粒子を90%含むものである。最短の運転時間でこの粒子サイズ目標に到達して製造能力を最大限に発揮させることには、実質的なコストメリットが存在する。図2および4に示したこの実施例のデータは、現行技術を代表するポリマーたとえば、PA−frac(約30分間)よりも、本明細書に開示のポリマー、たとえばPA−control−1が、思いがけないことには、粒子サイズ目標により早く(約21分間)到達することを示しており、それによって顕著な商業的メリットが示されている。これまた思いがけないさらなる利点は、この目標に達するには、PA−frac(14.66g)よりも少量のPA−control−1(9.77g)しか必要としないということであり、これによってさらに製造コストを下げることができる。
【0051】
図3は、垂直ミリングの最後における粒子サイズ分布を示しているが、これ以降のさらなる粒子サイズ低下は無視することができる。驚くべきことには、工業的に実用性のある粉砕時間枠内では、本明細書に開示のポリマーであるPA−control−1は、現行技術のものであるPA−fracよりも小さな粒子サイズ分布を達成することが可能である。より小さな粒子サイズ分布になるということは、特にその低粘度性が維持できるならば、紙およびペイントコーティングの光学的性質にとってはプラスとなりうる。
【0052】
(実施例8)
この実施例においては、比較例1、2および実施例3においてそれぞれ調製した、PA、PA−frac、およびPA−control−1を使用して、GCCスラリーを調製し、垂直ミル中で摩砕した。使用した全ポリマー濃度の範囲は、7.63g、7.92g、8.21g、8.57g、8.86gであった。これらは、10.6、11.0、11.4、11.9、および12.3[ポンド−乾燥中和ポリマー/トン−乾燥GCC]に相当する(表3)。水(560g)と、PAまたはPA−fracまたはPA−control−1のいずれか(全乾燥中和ポリマーの1/6に相当、水溶液中)とを組み合わせ、垂直メディアミル(セグバリ・アトリター(Szegvari Attritor)タイプ1ST;幅7.5インチ×高さ8インチのボウル;撹拌機=5本アーム;5/8インチ×6.5インチ)中で、5分間、シャフト速度約200回転/分(rpm)で混合した。粉砕炭酸カルシウム(GCC、1440g、中央粒子サイズ約10〜13マイクロメートル)をそのポリマー溶液に加え、約5分間混合してGCCを濡らした。メディア(4kg、0.8〜1.0mm、セラミック)をそのスラリーに加え、ミルのシャフト速度を850rpmまで上げた。全乾燥中和ポリマーの1/6に相当する追加のポリマー溶液を、5、10、15、20、および25分のところで添加した。ミリングの際にスラリーに水を必要に応じて添加して、水の蒸発を相殺し、かつミリングの間の視覚粘度を一定に保ちながらも、一方では十分な水の蒸発を行わせて、最初のGCC固形分72%が約75%にまで上がるようにした。アリコートの採取は行わず、90%累積GCC粒子質量が2.0マイクロメートル未満となったところで、ミリングを停止した。それらのスラリーを100メッシュの分級器スクリーンに注入、通過させて、メディアからスラリーを分離してから、冷却して室温とした。そのスラリーの固形分は、CEM・ラブウェーブ(LEM Labwave)9000を使用して測定したが、その目標値は75.0重量%であり、必要があれば調節した。初期粘度(0日)は、ブルックフィールド(Brookfield)RVT粘度計で#3スピンドルを用い、25℃、20rpmで測定した。そのスラリーを3日間静置し、3日目にその「静的」粘度を、最小限の動揺や剪断で、再度測定した。7日経過後に、その静置したスラリーについて、最終「静的」粘度を測定した。結果を表3および図5に示す。
【0053】
【表3】

【0054】
すべての担持量のすべてのポリマーで、ミリング直後にメディアを除去し冷却して25℃とした時には、比較的低い粘度を有している(0日粘度)。しかしながら、主としてPAおよびPA−fracで処理したスラリーの試料の多くにおいて、静置スラリーで3日目および7日目には、望ましくない大幅な粘度増加が測定される。10.6[ポンド乾燥ポリマー/トン乾燥GCC]の担持量でPA−frac処理したスラリーは、粘度が高くなりすぎて、処理することができなかった。最も好成績なポリマーのPA−control−1は、≧11.4[ポンド乾燥ポリマー/トン乾燥GCC]でも、全7日間にわたる評価で、最も一定の粘度を示した。PA−fracでは、11.9[ポンド乾燥ポリマー/トン乾燥GCC]でその最も低いスラリー粘度を与えたが、それでもなお、PA−control−1によって得られる粘度よりは低くなかった。それより高い担持量のPA−fracは、性能が劣っていた(粘度上昇)。
【0055】
少ない量のPA−control−1を使用しても、PA−fracのより高い担持量でも達成不可能な性能を達成できることが観察されたが、このことは、ポリマーの使用量が少なくなればコスト削減が可能となり、さらには製紙プロセスおよびコーティング配合物において使用される他の化学薬品との有害な相互作用を避けることも可能となるために、さらなる利点となる。ポリマーを含む鉱物質スラリーをスプレー乾燥させるときに起きる粒子のアグロメレーションの問題も、最小限に抑えることが可能である。
【0056】
(実施例9)
この実施例においては、PA−frac−2(分別ポリアクリル酸ナトリウム、ディスペックス(Dispex)(登録商標)2695、Mw、約5900、PDI、約2.00;PA−fracに相当する市販品)および実施例6で調製したPA−control−4(PA−control−1と機能的には同等品)を使用して、GCCスラリーを調製し、水平ミル中で摩砕した。水(200g)と、PA−frac−2またはPA−control−4のいずれか(7.20gの乾燥中和ポリマー、水溶液中)とを組み合わせ、ステンレス鋼ビーカーの中で混合した。次いでそのポリマー溶液に粉砕炭酸カルシウム(300g、中央粒子サイズ約10〜13マイクロメートル)を添加し、GCCが完全に濡れるまでその内容物をスパチュラで混合した。第二の300gのGCCを添加し、GCCが完全に濡れるまでもう一度混合した。そのスラリーを、ハミルトン・ビーチ(Hamilton Beach)ミキサー(モデル950)の中速で10分間かけて混合した。二つ目の、同一のスラリーバッチを調製し、その両方のスラリーを水平ミル(アイガー・マシナリー・インコーポレーテッド(Eiger Machinery,Inc.)、「ミニ(Mini)」ミル;250mLチャンバーに0.8〜1.0mmのセラミックメディアを容積の60%まで充填)の中で合わせた。その水平ミルを4000rpmで90分間運転したが、その間、スラリーは容器に再循環させ、チャンバーの冷却ユニットを通して水道水を流すことによって冷却した。そのミル容器から、ミリングの際に15分間隔でスラリーのアリコート(約5mL)を取り出して、それらの粒子サイズ分布を測定した。それぞれのポリマーの6種のアリコートの粒子サイズ分布を、表4および図6に示す。
【0057】
【表4】

【0058】
90分間のミリングが終了したときに、そのスラリーの固形分を測定したが、その目標値は75.0重量%であり、必要に応じて調節した。初期粘度(0日)は、ブルックフィールド(Brookfield)RVT粘度計で#3スピンドルを用い、25℃、20rpmで測定した。そのスラリーを3日間静置し、3日目にその粘度を、最小限の動揺や剪断で、再度測定した。7日経過後に、その静置したスラリーについて、最終粘度を測定した。結果を表5および図7に示す。
【0059】
【表5】

【0060】
水平ミリングを60分間実施したところでは、その2種のポリマー、PA−frac−2およびPA−control−4のミリング性能は同等であって、同じような粒子サイズ分布が得られたが、ただし、いずれの場合も、2マイクロメートル未満のGCCが90%という目標には到達しなかった(図6)。ミリングを90分間した後になってはじめて、両方のGCCスラリーで粒子サイズの目標が達成されたが、この時点では、驚くべきことには、PA−frac−2の方が、PDIがより低いポリマーのPA−control−4よりも、さらに強力にGCCを摩砕することができていた。
【0061】
さらに思いがけないことには、水平ミリングからの2種のスラリーの粘度が、垂直ミリングからのスラリーの粘度の場合とは逆転したということが観察された。すなわち、現行技術の分別ポリマーが、本明細書に開示のPDIがより低いポリマーよりも、好ましい、より低くより安定した粘度を与えた(図7)。
【0062】
まとめると、したがって、低PDIポリマーは水平ミル加工においては何のメリットも有さないということが実証されたが、粉砕または分散を促進させるために添加された異なったポリマーによって得られる異なったミリング効果はすべて、他のメディアミリング構成(たとえば、垂直ミリング)にもあてはまる筈であるというのが、当業者の予想するところであった。驚くべきことには、低PDIポリマーが、それらのポリマーを水平メディアミルではなく、垂直メディアミルで使用したときには、粗い粒子画分のミリングがより早くなる、目標の中央粒子サイズにより早くミリングできる、最終的な粒子サイズ分布が細かい、低い用量レベルでもエージング後のスラリー粘度が低い等の顕著なメリットを与えた。水平ミルで鉱物質をミリングするために、本明細書に開示の低PDIポリマーを使用した先の結果からは、本発明者らによる垂直ミルの結果を予測することができないであろう。
【0063】
(実施例10)
この実施例においては、セミバッチプロセスにおいて、フリーラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリドを使用して、調節重合ポリアクリレート(PA−control−5)を調製した。アクリル酸(77g)、CTA−2(104g、0.70M水溶液)、水(246g)、および重合開始剤(1.21g)を、コンデンサー、機械的撹拌機、およびセプタムキャップを取り付けた1Lの3口フラスコの中で組み合わせた。窒素を用いて30分間かけてその溶液をパージしてから、約90℃に加熱した。追加のアクリル酸(232g)および重合開始剤(1.21g)を、約1時間かけて添加した。さらに3時間加熱してから、そのポリマー溶液を冷却して室温とし、次いで水酸化ナトリウム(50重量%)を用いて中和してpH約8.2とした。Mwは5707であり、PDIは1.41であった。
【0064】
(実施例11:分断ポリアクリレート、PA−control−6)
この実施例においては、実施例10に記載の手順に従って調節重合ポリアクリレート(PA−control−6)を調製したが、ただし、より高い分子量のポリマーをまず製造してから、さらなる処理を行って、元の分子量の半分の分子量のポリアクリレートを得た。アクリル酸(48g)、CTA−2(55g、0.70M水溶液)、水(266g)、および重合開始剤(0.146g)を、コンデンサー、機械的撹拌機、およびセプタムキャップを取り付けた1Lの3口フラスコの中で組み合わせた。窒素を用いて30分間かけてその溶液をパージしてから、約90℃に加熱した。追加のアクリル酸(274g)および重合開始剤(0.830g)を約1時間かけて添加した。さらに3時間加熱してから、そのポリマー溶液を冷却して室温とし、次いで水酸化ナトリウム(50重量%)を用いて中和してpH約8.2とした。次いでそのポリマー溶液を加熱して60℃とし、過酸化水素(75g、30重量%水溶液)を約1時間かけて添加した。Mwは8032であり、PDIは1.47であった。
【0065】
【表6】

【0066】
(実施例12)
この実施例においては、実施例8に記載の手順に従って、GCCスラリーを調製し、垂直ミル中で摩砕したが、実施例8とは以下の点で異なっている。ポリマー溶液の、PA−frac−2(市販の分別ポリアクリレート)、実施例10のPA−control−5、または実施例11のPA−control−6をそれぞれ、12.0(ポンド乾燥中和ポリマー/トン乾燥GCC)の全ポリマー濃度で使用した。水(604g)と、上述のポリマー溶液の一つの48重量%とを組み合わせ、垂直ミル中で5分間、低シャフト速度で混合した。GCC(1553g、中央粒子サイズ、約10〜13マイクロメートル)をそのポリマー溶液に添加し、5分間混合してから、3861gのセラミックメディア(球直径0.8〜1.0mm)を添加し、ミルのシャフト速度を850rpmにまで上げた。残りのポリマー溶液を3等分し、10分ずつの間隔をおいて添加した。ミリングの間の水の蒸発を部分的に相殺するために、必要なだけの水をスラリーに添加した。90%累積GCC粒子質量が、粒子直径2マイクロメートル未満に達したときに、ミリングを停止した。そのスラリーをメディアから分離し、冷却して室温とし、必要に応じて固形分75%に調節した(表7)。ヘリオパス・スタンド(Heliopath stand)およびT−B t−バースピンドルを取り付けたブルックフィールド(Brookfield)DV−II+粘度計を用い、25℃で、スラリー試料の中央で初期粘度の読み(0日)を測定した。静置スラリーについての粘度の読みをその後、3、7、14、および28日目に、最小限の剪断をかけて測定した。それらの読みを、表8および図8に示す。
【0067】
【表7】

【0068】
【表8】

【0069】
これらの粘度測定においては、ブルックフィールドT−バースピンドルを使用したが、その理由は、T−バー粘度が、ブルックフィールド(Brookfield)のディスク形状のスピンドルを使用して集積したものとは顕著に異なる可能性があるからである。T−バースピンドルを使用して測定すると、すべてのスラリー粘度が最初は低い。これらの粘度は、最も低く、最も有利な粘度を有するPA−control−5で調製したスラリーでは、約14日にわたってコンスタントに上昇したが、それに対して、PA−frac−2ポリマーを用いて調製したスラリーは、最も高く、安定性が乏しい粘度を示した。驚くべきことには、しかしながら、その最も低い粘度のスラリーの粘度が、約14日を超えると急に上昇し、約20日より後では最も高粘度を有するようになった。さらに思いがけないことには、PA−control−6を用いて調製したスラリーが約15日を超えてから示した粘度挙動であって、全部で三つのスラリーの中では最も低く、最も望ましいT−バー粘度を有するようになった。このPA−control−6ポリマーは、CTA−2連鎖移動剤を使用しPA−control−5と同様に合成した。ただし化学的に半分に分断されたものである。PA−control−6で調製したスラリーのこのような長期間にわたる低粘度性能は、さらに予想もされなかったことであるが、その理由は、その分子量が、当業者がGCC粉砕および分散に最適であると考えている範囲から外れていたからである。他の二つのポリマーの、PA−frac−2およびPA−control−5は、この、そうでなければ最適な範囲のMw約6,000の中に入っており、PA−control−6よりも優れたスラリー粘度を与える筈であると考えられた。
【0070】
さらに、CTA−2のような連鎖移動剤を用いて調節された分子量のポリマーを製造し、次いでそのポリマーを半分に分断して最適な分子量とするアプローチ方法は、高価な連鎖移動剤の量を半分しか必要としないために、コスト的なメリットもある。
【0071】
ここに記載された説明は、ベストモードも含めて、本発明を開示するための例を使用しており、また、いかなる当業者であっても本発明を実施し、使用することを可能とするものである。本発明の特許性のある範囲は、特許請求項によって定義され、当業者が思いつくような他の例が含まれていてもよい。そのようなその他の例は、それらが、本願の特許請求項の文言から異ならない構成要素を有するか、またはそれらが、本願の特許請求項の文言から非現実的な違いしかない等価な構成要素を含んでいる場合には、本願の特許請求項の範囲の中に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱物質スラリーであって、
前記スラリーの全重量の約60パーセント以上の鉱物質粒子(ここで、前記鉱物質粒子の85パーセントが、2マイクロメートル以下の平均粒子サイズを有する)と、
可逆的付加切断連鎖移動重合によって形成されるアクリレートポリマーから誘導される高分子電解質分散剤(ここで、前記高分子電解質分散剤が、トリチオカーボネート連鎖移動剤から誘導されるチオ含有残基を含む末端基を含み、前記高分子電解質分散剤が、乾燥鉱物質粒子1トンあたり約35ポンド未満の量であり、そして前記高分子電解質分散剤が、3000〜10,000ダルトンの分子量および少なくとも1.0で1.5未満の多分散度を有する)と、
残りに相当する水と、を含む鉱物質スラリー。
【請求項2】
前記高分子電解質分散剤が、前記アクリレートポリマーの分子量の約半分の分子量を有する、請求項1に記載の鉱物質スラリー。
【請求項3】
前記鉱物質粒子が、炭酸カルシウムである、請求項1に記載の鉱物質スラリー。
【請求項4】
前記アクリレートポリマーが、トリチオカーボネート連鎖移動剤と、フリーラジカル重合開始剤と、アクリレートモノマーとの反応からの反応生成物である、請求項1に記載の鉱物質スラリー。
【請求項5】
前記アクリレートモノマーが、アクリル酸を含む、請求項4に記載の鉱物質スラリー。
【請求項6】
前記アクリレートポリマーが、コポリマーである、請求項4に記載の鉱物質スラリー。
【請求項7】
前記高分子電解質分散剤が、可逆的付加切断連鎖移動により調製された各種のアクリレートポリマーから誘導される高分子電解質のブレンド物をさらに含み、前記アクリレートポリマーのそれぞれが1.5未満の多分散度を有する、請求項1に記載の鉱物質スラリー。
【請求項8】
前記高分子電解質分散剤が、可逆的付加切断連鎖移動により調製された各種のアクリレートポリマーから誘導される高分子電解質のブレンド物をさらに含み、前記アクリレートポリマーのそれぞれが1.3未満の多分散度を有する、請求項1に記載の鉱物質スラリー。
【請求項9】
前記鉱物質スラリーが、標準温度および圧力で、3,000センチポワズ未満の粘度を有する、請求項1に記載の鉱物質スラリー。
【請求項10】
前記鉱物質スラリーが、7000cP未満の、28日静的ブルックフィールドT−バー粘度を有する、請求項1に記載の鉱物質スラリー。
【請求項11】
前記高分子電解質分散剤が、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定して、バイモーダルな分子量分布を有する、請求項1に記載の鉱物質スラリー。
【請求項12】
前記バイモーダルな分子量分布が、高分子量成分および低分子量成分を含み、前記高分子量成分が、前記高分子量および低分子量成分の全重量を基準にして、0を超え、25重量パーセント未満の量で存在し、前記高分子量および低分子量成分のそれぞれが、1.0〜1.5の多分散度を有する、請求項11に記載の鉱物質スラリー。
【請求項13】
鉱物質スラリーを調製するためのプロセスであって、前記プロセスが、
ミリングメディアと共に混合物を摩砕して前記鉱物質スラリーを形成させる工程であって、前記混合物が、前記混合物の全重量を基準にして約68〜約80重量パーセントの量の炭酸塩含有粒子と、可逆的付加切断連鎖移動重合により形成されたアクリレートポリマーから誘導される高分子電解質分散剤(前記高分子電解質分散剤がトリチオカーボネート連鎖移動剤から誘導されるチオ含有残基を含む末端基を含み、前記高分子電解質分散剤が3000〜10,000ダルトンの分子量および1.5未満の多分散度を有し、乾燥炭酸塩含有粒子1トンあたりの分散剤の量が約35ポンド未満である)と、残りに相等する水と、を含む、工程と
前記鉱物質スラリーからメディアを濾過する工程と、を含み、
前記鉱物質スラリー中の炭酸塩含有粒子の90パーセントが、2マイクロメートル未満の平均粒子サイズを有する、プロセス。
【請求項14】
前記高分子電解質分散剤が、前記アクリレートポリマーの分子量の約半分の分子量を有する、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記アクリレートポリマーが、トリチオカーボネート連鎖移動剤と、フリーラジカル重合開始剤と、アクリレートモノマーとを反応させることにより形成される、請求項13に記載のプロセス。
【請求項16】
前記アクリレートモノマーが、アクリル酸である、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記炭酸塩含有粒子が、炭酸カルシウムである、請求項13に記載のプロセス。
【請求項18】
前記高分子電解質分散剤が、可逆的付加切断連鎖移動により調製された各種のアクリレートポリマーから誘導される高分子電解質のブレンド物をさらに含み、前記アクリレートポリマーのそれぞれが1.5未満の多分散度を有する、請求項13に記載のプロセス。
【請求項19】
前記高分子電解質分散剤が、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定して、バイモーダルな分子量分布を有する、請求項13に記載のプロセス。
【請求項20】
前記鉱物質スラリーが、7000cP未満の、28日静的ブルックフィールドT−バー粘度を有する、請求項13に記載のプロセス。
【請求項21】
前記高分子電解質分散剤が、高分子量成分および低分子量成分を含み、前記高分子量成分が、前記高分子量および低分子量成分の全重量を基準にして、0を超え、25重量パーセント未満の量で存在し、前記高分子量および低分子量成分のそれぞれが、1.0〜1.5の多分散度を有する、請求項13に記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−533586(P2010−533586A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517093(P2010−517093)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/069937
【国際公開番号】WO2009/012202
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(504186286)ケミラ オイ (18)
【Fターム(参考)】