説明

銀平板粒子及びその製造方法、該銀平板粒子を含有する銀平板粒子含有組成物、並びに、該銀平板粒子含有組成物によるフィルム

【課題】粒径が小さく、単分散性が高い銀平板粒子を、大量生産が可能であり、高濃度の水系分散液を用いて、短時間で効率よく合成できる銀平板粒子の製造方法、該製造方法により製造される銀平板粒子、該銀平板粒子を含有する銀平板粒子含有組成物、並びに、該銀平板粒子含有組成物によるフィルムの提供。
【解決手段】水中に銀塩、分散剤及び還元剤を含む混合液を作製する混合液作製工程と、
前記混合液中に、固体状態の他の銀塩を混在させる混在工程と、を含む銀平板粒子の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀平板粒子及びその製造方法、該銀平板粒子を含有する銀平板粒子含有組成物、並びに、該銀平板粒子含有組成物によるフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
銀、金等の貴金属粒子は、化学的に安定であり、また、表面プラズモン共鳴により可視域に吸収を有するため、塗料等の着色剤としての応用が期待されている。例えば2001年にC.A.Mirkinらにより、三角形状平板Ag粒子の合成に関する報告がなされている(特許文献1及び非特許文献1参照)。この報告では、三角形状平板状Ag粒子のサイズ、及び(サイズ/厚み)比により極大吸収波長が変化し、可視域〜近赤外域に吸収波長を制御できることが開示されている。このように可視域〜近赤外域に吸収域が広がったことにより、着色剤としてだけでなく、赤外線吸収剤としての応用も期待されている。
【0003】
そこで、銀平板粒子の合成方法が種々検討されており、例えば、銀塩のアンミン錯体及び還元反応の際に媒晶剤として機能するパラジウム塩のアンミン錯体を含むスラリーと、還元剤である亜硫酸カリ及び保護コロイドとしてのゼラチンを含有する溶液とを一時に混合して該銀塩のアンミン錯体を還元し、生成した銀粒子を回収する方法(特許文献2参照)が提案されている。
しかし、この提案の方法には、高濃度の銀分散液を合成すると、凝集したり、多分散したりして、銀の粒子サイズが大きくなってしまうという問題がある。
【0004】
また、ゼラチン等の高分子化合物、アスコルビン酸等の還元剤、及び銀塩を溶解してなる溶液を用いて銀平板粒子を製造する方法(特許文献3参照)や、水に銀塩及び低分子系分散剤を加えて銀塩及び低分子系分散剤の水溶液を調製し、この水溶液に所定の割合で還元剤を添加して混合液を調製し、混合液を20℃〜40℃で静置して混合液中の銀イオンを還元反応させることにより、主として形状がプレート状の銀粒子を製造する方法が提案されている(特許文献4参照)。
しかし、これらの提案の方法にも、硝酸銀濃度が低いので、反応時間が長くかかり、大量生産には不向きなものであるという問題がある。
【0005】
そこで、大量生産を可能とするために、ポリオール化合物を含む溶媒中に金属化合物及びピロリドン化合物を添加した反応液を、40℃以上該溶媒の沸点以下の温度で加熱することにより、平板状金属粒子を製造する方法が提案されている(特許文献5参照)。
しかし、この提案の方法には、反応系が水系でなく、有機溶媒系であるため、環境への影響が大きく、また、コスト高となってしまうという問題がある。
【0006】
したがって、粒径が小さく、単分散性が高い銀平板粒子を、大量生産が可能であり、高濃度の水系分散液を用いて、短時間で効率よく合成できる銀平板粒子の製造方法の速やかな提供が望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0136223号明細書
【特許文献2】特許3429985号公報
【特許文献3】特開2005−105376号公報
【特許文献4】特開2007−138249号公報
【特許文献5】特開2009−144188号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Science 294,1901−1903(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、粒径が小さく、単分散性が高い銀平板粒子を、大量生産が可能であり、高濃度の水系分散液を用いて、短時間で効率よく合成できる銀平板粒子の製造方法、該製造方法により製造される銀平板粒子、該銀平板粒子を含有する銀平板粒子含有組成物、並びに、該銀平板粒子含有組成物によるフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 水中に銀塩、分散剤及び還元剤を含む混合液を作製する混合液作製工程と、前記混合液中に、固体状態の他の銀塩を混在させる混在工程と、を含むことを特徴とする銀平板粒子の製造方法である。
<2> 混在工程において、混合液に、固体状態の他の銀塩が分散した分散液を添加することを含む前記<1>に記載の銀平板粒子の製造方法である。
<3> 固体状態の他の銀塩が分散した分散液を、銀塩を含む銀塩含有水溶液と、該銀塩含有水溶液における銀イオンと結合して前記固体状態の他の銀塩を生成するリガンドを含むリガンド含有水溶液とを混合して作製する前記<2>に記載の銀平板粒子の製造方法である。
<4> 混在工程において、混合液に、銀塩を含む銀塩含有水溶液と、該銀塩含有水溶液における銀イオンと結合して固体状態の他の銀塩を生成するリガンドを含むリガンド含有水溶液とを添加することを含む前記<1>に記載の銀平板粒子の製造方法である。
<5> 固体状態の他の銀塩の溶解度積が10−30以上10−3以下である前記<1>から<4>のいずれかに記載の銀平板粒子の製造方法である。
<6> 分散剤がゼラチンを含む前記<1>から<5>のいずれかに記載の銀平板粒子の製造方法である。
<7> 固体状態の他の銀塩を混在させた混合液における銀濃度が2mmol/Lを超える前記<1>から<6>のいずれかに記載の銀平板粒子の製造方法である。
<8> 固体状態の他の銀塩を混在させた混合液における銀濃度が10mmol/Lを超える前記<7>に記載の銀平板粒子の製造方法である。
<9> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の製造方法により製造されたことを特徴とする銀平板粒子である。
<10> 平均円相当径が5μm以下である前記<9>に記載の銀平板粒子である。
<11> 平均円相当径が1μm以下である前記<10>に記載の銀平板粒子である。
<12> 前記<9>から<11>のいずれかに記載の銀平板粒子を含有することを特徴とする銀平板粒子含有組成物である。
<13> 前記<12>に記載の銀平板粒子含有組成物を用いて形成されたことを特徴とするフィルムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、粒径が小さく、単分散性が高い銀平板粒子を、大量生産が可能であり、高濃度の水系分散液を用いて、短時間で効率よく合成できる銀平板粒子の製造方法、該製造方法により製造される銀平板粒子、該銀平板粒子を含有する銀平板粒子含有組成物、並びに、該銀平板粒子含有組成物によるフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】図1Aは、本発明の銀平板粒子の形状の一例を示した概略斜視図であって、略円盤形状の銀平板粒子を示す。
【図1B】図1Bは、本発明の銀平板粒子の形状の一例を示した概略斜視図であって、略六角形状の銀平板粒子を示す。
【図2A】図2Aは、本発明のフィルムにおいて、銀平板粒子を含む銀粒子含有層の存在状態を示した概略断面図であって、最も理想的な存在状態を示す。
【図2B】図2Bは、本発明のフィルムにおいて、銀平板粒子を含む銀粒子含有層の存在状態を示した概略断面図であって、基板の平面と平板粒子の平面とのなす角度(θ)を説明する図を示す。
【図2C】図2Cは、本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子を含む金属粒子含有層の存在状態を示した概略断面図であって、金属粒子含有層の熱線遮蔽材の深さ方向における存在領域を示す図である。
【図3】図3は、実施例1で得られた銀平板粒子のSEM写真であって、20,000倍で観察したものを示す。
【図4】図4は、実施例1で得られた銀平板粒子の分光スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(銀平板粒子)
前記銀平板粒子としては、2つの主平面からなる粒子(図1A及び図1B参照)である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、略六角形状、略円盤形状、略三角形状、などが挙げられる。これらの中でも、可視光透過率が高い点で、略六角形状、略円盤形状であることが特に好ましい。
前記略円盤形状としては、透過型電子顕微鏡(TEM)で金属平板粒子を主平面の上方から観察した際に、角が無く、丸い形状であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記略六角形状としては、透過型電子顕微鏡(TEM)で金属平板粒子を主平面の上方から観察した際に、略六角形状であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、六角形状の角が鋭角のものでも、鈍っているものでもよいが、可視光域の吸収を軽減し得る点で、角が鈍っているものであることが好ましい。角の鈍りの程度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0014】
−平均粒子径(平均円相当径)及び平均粒子径(平均円相当径)の粒度分布−
前記銀平板粒子の平均円相当径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10nm〜5,000nmが好ましく、30nm〜1,000nmがより好ましい。前記平均円相当径が、10nm未満であると、アスペクト比が小さくなり、形状が球状となる傾向があり、透過スペクトルのピーク波長が500nm以下になることがあり、5,000nmを超えると、透過スペクトルのピーク波長が長波になり、透過スペクトルの半値巾が大きくなることがある。一方、前記銀平板粒子の平均円相当径が前記より好ましい範囲内であると、透過スペクトルのピーク波長の点で有利である。
ここで、前記平均円相当径とは、TEMで粒子を観察して得た像から任意に選んだ200個の平板粒子の主平面直径(最大長さ)の平均値を意味する。
【0015】
本発明の銀平板粒子の粒度分布における変動係数は、30%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。前記変動係数が、30%を超えると、透過スペクトルの半値巾が大きくなることがある。一方、前記変動係数が、前記より好ましい範囲内であると、透過スペクトルの半値巾の点で有利である。
ここで、前記銀平板粒子の粒度分布における変動係数は、例えば、前記の通り得た平均値の算出に用いた200個の銀平板粒子の粒子径の分布範囲をプロットし、粒度分布の標準偏差を求め、前記の通り得た主平面直径(最大長さ)の平均値(平均粒子径)で割った値(%)である
【0016】
[アスペクト比]
前記銀平板粒子のアスペクト比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、可視光域長波長側から近赤外光領域での反射率が高くなる点から、2〜120であることが好ましく、4〜100がより好ましい。前記アスペクト比が、2未満であると、透過スペクトルのピーク波長が500nmより小さくなることがあり、120を超えると、透過スペクトルの半値巾が大きくなることがある。
前記アスペクト比は、銀平板粒子の平均粒子径を銀平板粒子の平均粒子厚みで除算した値を意味する。平均粒子厚みは、銀平板粒子の主平面間距離に相当し、例えば、図1A及び図1Bに示す通りであり、原子間力顕微鏡(AFM)により測定することができる。
前記AFMによる平均粒子厚みの測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス基板に銀平板粒子を含有する粒子分散液を滴下し、乾燥させて、粒子1個の厚みを測定する方法などが挙げられる。
前記平均粒子厚みとしては、3nm〜50nmが好ましく、4nm〜40nm部がより好ましく、5nm〜35nmが特に好ましい。
前記平均粒子厚みが、3nm未満であると、粒子の形状安定性が低くなることがあり、50nmを超えると、ヘイズ(散乱)が高くなることがある。一方、前記平均粒子厚みが前記特に好ましい範囲内であると、形状安定性及びヘイズ(散乱)の点で有利である。
【0017】
[面配向]
後述するフィルムにおいて、銀平板粒子は、その主平面が前記フィルムの一方の表面(フィルムが形成された基板の表面)に対して所定の範囲で面配向することを一態様とする。
前記銀平板粒子は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱線反射率を高める点で基板平面に対して略水平に偏在していることが好ましい。
前記面配向としては、銀平板粒子の主平面と、フィルムの一方の表面(フィルムが形成された基板の表面)の表面とが、所定の範囲内で略平行になっている態様であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、面配向の角度は、0°〜±30°であり、0°〜±20°が好ましい。
【0018】
ここで、図2A〜図2Cは、後述するフィルムにおいて、銀平板粒子を含む銀粒子含有層の存在状態を示した概略断面図である。図2Aは、銀粒子含有層2中における銀平板粒子3の最も理想的な存在状態を示す。図2Bは、基板1の平面と銀平板粒子3の平面とのなす角度(±θ)を説明する図である。図2Cは、銀粒子含有層2のフィルムの深さ方向における存在領域を示すものである。
図2Bにおいて、基板1の表面と、銀平板粒子3の主平面又は主平面の延長線とのなす角度(±θ)は、前記の面配向における所定の範囲に対応する。即ち、面配向とは、フィルムの断面を観察した際、図2Bに示す傾角(±θ)が小さい状態をいい、特に、図2Aは、基板1の表面と銀平板粒子3の主平面とが接している状態、即ち、θが0°である状態を示す。基板1の表面に対する銀平板粒子3の主平面の面配向の角度、即ち図2Bにおけるθが±30°を超えると、フィルムの所定の波長(例えば、可視光域長波長側から近赤外光領域)の反射率が低下してしまったり、ヘイズが大きくなってしまう。
【0019】
[面配向の評価]
前記基板の表面に対して銀平板粒子の主平面が面配向しているかどうかの評価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、適当な断面切片を作製し、この切片における基板及び銀平板粒子を観察して評価する方法であってもよい。具体的には、フィルムを、ミクロトーム、集束イオンビーム(FIB)を用いてフィルムの断面サンプル又は断面切片サンプルを作製し、これを、各種顕微鏡(例えば、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)等)を用いて観察して得た画像から評価する方法などが挙げられる。
【0020】
前記フィルムにおいて、銀平板粒子を被覆するバインダーが水で膨潤する場合は、液体窒素で凍結した状態の試料を、ミクロトームに装着されたダイヤモンドカッター切断することで、前記断面サンプル又は断面切片サンプルを作製してもよい。また、フィルムにおいて銀平板粒子を被覆するバインダーが水で膨潤しない場合は、前記断面サンプル又は断面切片サンプルを作製してもよい。
【0021】
前記の通り作製した断面サンプル又は断面切片サンプルの観察としては、サンプルにおいて基板の表面に対して銀平板粒子の主平面が面配向しているかどうかを確認し得るものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、FE−SEM、TEM、光学顕微鏡などを用いた観察が挙げられる。前記断面サンプルの場合は、FE−SEMにより、前記断面切片サンプルの場合は、TEMにより観察を行ってもよい。FE−SEMで評価する場合は、銀平板粒子の形状と傾角(図2Bの±θ)が明瞭に判断できる空間分解能を有することが好ましい。
【0022】
[銀平板粒子の面積率]
前記フィルムを上から見た時の基板の面積Aに対する銀平板粒子の面積の合計値Bの割合である面積率〔(B/A)×100〕が、15%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。前記面積率が、15%未満であると、熱線の最大反射率が低下してしまい、遮熱効果が十分に得られないことがある。
ここで、前記面積率は、例えばフィルム基板を上からSEM観察で得られた画像や、AFM(原子間力顕微鏡)観察で得られた画像を画像処理することにより測定することができる。
【0023】
(銀平板粒子の製造方法)
本発明の銀平板粒子の製造方法は、少なくとも、混合液作製工程と、混在工程とを含み、さらに、必要に応じて適宜選択した、その他の工程を含む。本発明の銀平板粒子の製造方法によれば、略六角形、略円盤形の平板粒子を効率よく作製することができる。
【0024】
<混合液作製工程>
前記混合液作製工程は、水中に、銀塩、分散剤及び還元剤を含む混合液を作製する工程である。
前記混合液作製工程において、水中の銀塩に由来する銀イオンが還元剤により還元されて、核となる銀粒子が形成され、成長する。
前記混合液作製工程において、(i)水に分散剤及び還元剤を添加した水溶液を作製し、該水溶液に所定の割合で銀塩水溶液を添加する、(ii)水に分散剤及び銀塩を添加した水溶液を作製し、該水溶液に所定の割合で還元剤水溶液を添加する、又は、(iii)水に分散剤を添加した水溶液を作製し、該水溶液に所定の割合で銀塩水溶液及び還元剤水溶液を添加する、ことにより銀粒子を得ることが好ましい。
【0025】
−混合液の溶媒−
前記混合液の溶媒としては、水を70質量%以上含む溶媒であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水を90%以上含む溶媒であることが好ましい。
【0026】
−混合液作製工程で使用する銀塩−
前記銀塩としては、水に溶解するものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硝酸銀、過塩素酸銀、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記銀塩の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記混合液100質量部に対して、0.0001質量部〜10質量部が好ましく、0.0005質量部〜1質量部がより好ましく、0.001質量部〜0.1質量部が特に好ましい。
前記銀塩の含有量が、0.0001質量部未満であると、還元反応が進まないことがあり、10質量部を超えると、平板化率が下がることがある。一方、前記銀塩の含有量が前記特に好ましい範囲内であると、平板化率の点で有利である。
【0027】
前記混合液作製工程における混合液の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0℃〜100℃が好ましく、20℃〜70℃がより好ましく、30℃〜60℃が特に好ましい。
前記混合液の温度が、0℃未満であると、溶液が固まってしまうことがあり、100℃を超えると、銀粒子の粒子サイズが揃わないことがある。一方、前記混合液の温度が前記特に好ましい範囲内であると、粒子サイズの均一性の点で有利である。
【0028】
<混在工程>
前記混在工程は、前記混合液中に、固体状態の他の銀塩を混在させる工程である。即ち、前記混在工程において、少なくとも1回以上、他の銀塩が固体状態で存在する。
前記「混在させる」とは、前記混合液の外で生成された固体状態の他の銀塩が、混合液に添加されて混合液中に混在することのみならず、固体状態の他の銀塩が、混合液中で生成して、混合液中に混在することも含む。
前記「固体状態」とは、他の銀塩における銀イオンの濃度と、他の銀塩におけるリガンドの濃度との積が、前記銀イオンと前記リガンドとの溶解度積(Ksp)よりも大きく、水に溶解しないことを意味する。
前記混在工程では、混合液作製工程で作製された混合液に、水、分散剤、還元剤、銀塩、リガンド及びpH調整剤の少なくとも1種が、任意の量、タイミング、混合比で添加されて、銀粒子が成長する。
前記混在工程を経ることにより、所定の形状の銀平板粒子を簡便に製造することができる。
【0029】
前記他の銀塩を固体状態で存在させるために、銀塩を含む銀塩含有水溶液と、該銀塩含有水溶液における銀イオンと結合して固体状態の他の銀塩(銀塩固体物)を生成するリガンドを含むリガンド含有水溶液との混合により生成された他の銀塩(銀塩固体物)の分散液を混合液(反応釜)に添加してもよく、前記リガンド含有水溶液を混合液(反応釜)に添加した後、前記銀塩含有水溶液を混合液(反応釜)に添加し、混合液(反応釜)中で他の銀塩(銀塩固体物)を生成してもよく、混合液(反応釜)に他の銀塩(銀塩固体物)粉末を添加してもよく、混合液(反応釜)に他の銀塩(銀塩固体物)粉末の水分散液を添加してもよい。
これらの中でも、固体状態の他の銀塩(銀塩固体物)の分散液を添加する態様、即ち、銀塩含有水溶液とリガンド含有水溶液との混合により生成された他の銀塩(銀塩固体物)の分散液を混合液(反応釜)に添加する態様、混合液(反応釜)に他の銀塩(銀塩固体物)粉末の水分散液を添加する態様、が好ましい。
【0030】
前記混在工程において、添加された他の銀塩(銀塩固体物)から銀イオンが放出され、該銀イオンが還元剤により還元されることにより、前記混合液作製工程で生成された銀粒子が成長する。前記混在工程の最後には、添加された他の銀塩(銀塩固体物)がなくなっていることが好ましい。
【0031】
混合液中に溶解している銀イオンの濃度は、リガンドとの溶解度積で決められる。よって、混合液中に、高濃度で銀塩が含まれていても、混合液中に溶解している銀イオン濃度が低ければ、ゆっくりと還元反応が進み、銀イオン濃度分布が少ない状態で反応を行うことができる。
【0032】
前記混在工程における混合液の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0℃〜100℃が好ましく、20℃〜70℃がより好ましく、30℃〜60℃が特に好ましい。
前記混合液の温度が、0℃未満であると、溶液が固まってしまうことがあり、100℃を超えると、銀粒子の粒子サイズが揃わないことがある。一方、前記混合液の温度が前記特に好ましい範囲内であると、粒子サイズの均一性の点で有利である。
【0033】
−固体状態の他の銀塩−
前記固体状態の他の銀塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、亜硫酸銀、塩化銀、酸化銀、などが挙げられる。
前記固体状態の他の銀塩(銀塩固体物)の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1mmol/L〜10,000mmol/Lが好ましく、2mmol/L〜5,000mmol/Lがより好ましく、5mmol/L〜2,000mmol/Lが特に好ましい。
前記濃度が、1mmol/L未満であると、溶解して固体状態ではなくなってしまうことがあり、10,000mmol/Lを超えると、銀粒子の粒子サイズが揃わないことがある。一方、前記濃度が前記特に好ましい範囲内であると、粒子サイズの均一性及び生産性の点で有利である。
前記銀塩固体物は、沈殿していてもよく、分散していてもよい。
【0034】
前記固体状態の銀塩の溶解度積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10−30以上10−3以下が好ましく、10−20以上10−5以下がより好ましく、10−15以上10−6以下が特に好ましい。
前記溶解度積(Ksp)が、10−30未満であると(pKspが30を超えると)、難溶性の銀塩固体物が生成してしまい、還元反応が進行しにくくなることがあり、10−3を超えると(pKspが3未満であると)、銀塩固体物を得るために、リガンドを多く添加しなければならないことがある。
【0035】
−リガンド−
前記リガンドとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Cl、Br、I、CN、SCN、SeCN、SO2−、S2−、OH、CrO2−、CHCOO、PO3−、CO2−、シュウ酸、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、ジメチルジチオカルバミド酸などが挙げられる。
下記の表1に、各リガンドと銀イオンとのpKspを示す(pKsp=−log(Ksp))。
【表1】

【0036】
なお、前記混合液作製工程から混在工程まで、同じ容器で連続して製造してもよく、途中で他の容器に移し替えて製造してもよい。なお、混在工程は、複数の工程に分割されていてもよい。
【0037】
前記固体状態の他の銀塩を混在させた混合液における銀濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2mmol/L超が好ましく、10mmol/L超がより好ましい。
前記銀濃度が、2mmol/L以下であると、生産性が低い問題がある。一方、前記銀濃度が前記より好ましい範囲内であると、生産性の点で有利である。
なお、前記「銀濃度」とは、混合液中の銀イオンと、析出した銀とを両方足した銀の濃度値である。また、この銀濃度は、混在工程時において固体状態の他の銀塩を混在させた混合液における銀の濃度であって、混在工程後に実施される遠心分離、限外濾過、などによって濃厚化したときの濃度ではない。
【0038】
−混合液作製工程及び混在工程で使用する分散剤−
前記分散剤としては、水に溶解するものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ゼラチン、クエン酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリカルボン酸、ポリアクリル酸などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
中でも、凝集防止の点で、ゼラチン等の高分子分散剤を含むことが好ましい。
前記分散剤が、2種以上を含む場合、前記分散剤におけるゼラチン等の高分子分散剤の含有量が1質量%以上であることが好ましい。前記ゼラチン等の高分子分散剤の含有量が1質量%未満であると、分散性が悪くなり、凝集してしまうことがある。
前記分散剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、全銀塩100質量部に対して、0.00001質量部〜10,000質量部が好ましく、0.0001質量部〜5,000質量部がより好ましく、0.001質量部〜1,000質量部が特に好ましい。
前記分散剤の含有量が、0.00001質量部未満であると、凝集しやすいことがあり、10,000質量部を超えると、銀粒子の粒子サイズが揃わないことがある。一方、前記分散剤の含有量が前記特に好ましい範囲内であると、凝集防止の点で有利である。
【0039】
−混合液作製工程及び混在工程で使用する還元剤−
前記還元剤としては、水に溶解するものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、ハイドロ(ヒドロ)キノンスルホン酸又はその塩、アスコルビン酸又はその塩、ジメチルアミノボラン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記還元剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記混合液100質量部に対して、0.0001質量部〜100質量部が好ましく、0.0005質量部〜50質量部がより好ましく、0.001質量部〜10質量部が特に好ましい。
前記還元剤の含有量が、0.0001質量部未満であると、還元反応が進まないことがあり、100質量部を超えると、銀粒子の粒子サイズが揃わないことがある。一方、前記還元剤の含有量が前記特に好ましい範囲内であると、平板化率及び銀粒子のサイズ分布の点で有利である。
【0040】
(銀平板粒子含有組成物)
本発明の銀平板粒子含有組成物としては、前記銀平板粒子を含有する組成物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ゼラチンやセルロース等の天然高分子等の高分子、二酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機物、などをさらに含有する組成物であってもよい。
【0041】
(フィルム)
本発明のフィルムとしては、前記銀平板粒子含有組成物を用いて形成されたものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記フィルムの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、基板上に、前記銀平板粒子含有組成物を、ディップコーター、ダイコーター、スリットコーター、バーコーター、グラビアコーター等による塗布や、LB膜法、自己組織化法、スプレー塗布、などの方法で形成する方法が挙げられる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0043】
(実施例1)
−銀平板粒子の合成−
2.5mmol/L(2.5mM)のクエン酸ナトリウム水溶液50mLに0.5g/Lのポリスチレンスルホン酸水溶液を2.5mL添加し、35℃まで加熱した。この溶液に10mmol/Lの水素化ほう素ナトリウム水溶液を3mL添加し、0.5mmol/Lの硝酸銀水溶液50mLを20mL/minで攪拌しながら添加した。この溶液を30分間攪拌し、種溶液を作製した。
反応釜中の2.5mmol/Lのクエン酸ナトリウム水溶液132.7mLにイオン交換水87.1mLを添加し、35℃まで加熱した。反応釜中の上記溶液に、10mmol/Lのアスコルビン酸水溶液を2mL添加し、前記種溶液を42.4mL添加し、0.5mmol/Lの硝酸銀水溶液79.6mLを10mL/minで攪拌しながら添加した。30分間攪拌した後、0.35mol/Lのヒドロキノンスルホン酸カリウム水溶液を71.1mLを反応釜に添加し、7質量%ゼラチン水溶液200gを反応釜に添加した。反応釜中の上記溶液に、0.25mol/Lの亜硫酸ナトリウム水溶液107mLと、0.47mol/Lの硝酸銀水溶液107mLを混合してできた亜硫酸銀の白色沈殿物混合液を添加した。前記白色沈殿物混合液を添加した後すぐに0.17mol/LのNaOH水溶液72mLを反応釜に添加した。このときpHが10を超えないように添加速度を調節しながらNaOH水溶液を添加した。これを300分間攪拌し、平板状銀分散液を得た。
【0044】
この平板状銀分散液中には、平均円相当径230nmの銀の六角平板粒子(以下、Ag六角平板粒子と称する)が生成していることを確認した。また、原子間力顕微鏡(NanocuteII、セイコーインスツル社製)で、六角平板粒子の厚みを測定したところ、平均16nmであり、アスペクト比が14.3の平板粒子が生成していることが分かった。
【0045】
次に、得られた金属粒子について、以下のようにして諸特性を評価した。結果を表2に示す。
【0046】
<銀粒子の評価>
−平板粒子の割合、平均円相当径、変動係数−
銀平板粒子の形状均一性は、観察したSEM画像から任意に抽出した200個の粒子の形状を、略六角形状又は略円盤形状の粒子をA、涙型などの不定形形状の粒子をBとして画像解析を行い、Aに該当する粒子個数の割合(個数%)を求めた。
また、同様にAに該当する粒子100個の円相当径をデジタルノギスで測定し、その平均値を平均円相当径とし、円相当径分布の標準偏差を平均円相当径で割った変動係数(%)を求めた。円相当径の変動係数が小さいほど銀平板粒子の単分散性が高い。
【0047】
−平均粒子厚み−
得られた平板状銀分散液を、ガラス基板上に滴下して乾燥し、金属平板粒子1個の厚みを、原子間力顕微鏡(AFM)(NanocuteII、セイコーインスツル社製)を用いて測定した。なお、AFMを用いた測定条件としては、自己検知型センサー、DFMモード、測定範囲は5μm、走査速度は180秒/1フレーム、データ点数は256×256とした。
【0048】
−アスペクト比−
得られた銀平板粒子の平均円相当径及び平均粒子厚みから、平均円相当径を平均粒子厚みで除算して、アスペクト比を算出した。
【0049】
−透過スペクトルの最大波長−
得られた平板状銀分散液の透過スペクトルは平板状銀分散液を水で40倍に希釈し、光路長1mmの石英セルに入れ、紫外可視近赤外分光機(日本分光株式会社製、V−670)を用いて評価した。得られた透過スペクトルにより最大波長を検出した。
【0050】
―生産性―
得られた平板状銀分散液の銀濃度を作製時間で割ることにより生産性を求めた。この値が大きいほど短時間に高濃度の分散液が得られ、生産性が高い。
【0051】
(実施例2)
実施例1において、0.17mol/LのNaOH水溶液72mLを添加する代わりに、0.83mol/LのNaOH水溶液72mLを添加したこと以外は、実施例1と同様にして平板状銀分散液を作製した。
【0052】
(実施例3)
実施例1において、0.17mol/LのNaOH水溶液72mLを添加する代わりに、0.08mol/LのNaOH水溶液72mLを添加したこと以外は、実施例1と同様にして平板状銀分散液を作製した。
【0053】
(実施例4)
実施例1において、0.17mol/LのNaOH水溶液72mLを添加しないこと以外は、実施例1と同様にして平板状銀分散液を作製した。
【0054】
(実施例5)
実施例1において、イオン交換水87.1mLを添加しないこと、及び、前記種溶液の添加量を127.6mLに変えたこと以外は、実施例1と同様にして平板状銀分散液を作製した。
【0055】
(実施例6)
実施例5において、0.17mol/LのNaOH水溶液72mLを添加する代わりに、0.08mol/LのNaOH水溶液72mLを添加したこと以外は、実施例5と同様にして平板状銀分散液を作製した。
【0056】
(実施例7)
実施例5において、0.17mol/LのNaOH水溶液72mLを添加しないこと以外は、実施例5と同様にして平板状銀分散液を作製した。
【0057】
(実施例8)
実施例6において、2.5mmol/Lのクエン酸ナトリウム水溶液132.7mLを添加しないこと、及び、前記種溶液の添加量を255.2mLに変えたこと以外は、実施例6と同様にして平板状銀分散液を作製した。
【0058】
(実施例9)
実施例8において、0.08mol/LのNaOH水溶液72mLを添加しないこと以外は、実施例8と同様にして平板状銀分散液を作製した。
【0059】
(実施例10)
実施例9において、0.25mol/Lの亜硫酸ナトリウム水溶液107mLと0.47mol/Lの硝酸銀水溶液107mLを混合してできた亜硫酸銀の白色沈殿物混合液を添加せず、0.25mol/Lの亜硫酸ナトリウム水溶液107mLを反応釜に添加した後すぐに0.47mol/Lの硝酸銀水溶液107mLを反応釜に添加したこと以外は、実施例9と同様にして平板状銀分散液を作製した。なお、この場合、0.47mol/Lの硝酸銀水溶液107mLを添加すると同時に、亜硫酸銀の白色沈殿物混合液が生成した。
【0060】
(実施例11)
実施例1において、前記種溶液の添加量を21.2mLに変えたこと以外は、実施例1と同様にして平板状銀分散液を作製した。
【0061】
(実施例12)
実施例11において、0.17mol/LのNaOH水溶液72mLを添加する代わりに、0.83mol/LのNaOH水溶液72mLを添加したこと以外は、実施例11と同様にして平板状銀分散液を作製した。
【0062】
(実施例13)
実施例11において、0.17mol/LのNaOH水溶液72mLを添加しないこと以外は、実施例11と同様にして平板状銀分散液を作製した。
【0063】
(実施例14)
実施例13において、0.25mol/Lの亜硫酸ナトリウム水溶液107mLと0.47mol/Lの硝酸銀水溶液107mLを混合してできた亜硫酸銀の白色沈殿物混合液を添加する代わりに、0.25mol/Lの亜硫酸ナトリウム水溶液21mLと0.47mol/Lの硝酸銀水溶液21mLを混合してできた亜硫酸銀の白色沈殿物混合液を添加したこと以外は、実施例13と同様にして平板状銀分散液を作製した。
【0064】
(実施例15)
実施例14において、イオン交換水87.1mLを添加する代わりに、イオン交換水687.1mLを添加したこと以外は、実施例14と同様にして平板状銀分散液を作製した。
【0065】
(実施例16)
実施例14において、0.25mol/Lの亜硫酸ナトリウム水溶液21mL添加する代わりに、0.5mol/Lの塩化ナトリウム水溶液21mLを添加したこと以外は、実施例14と同様にして平板状銀分散液を作製した。なお、0.5mol/Lの塩化ナトリウム水溶液21mLと0.47mol/Lの硝酸銀水溶液21mLを混合すると塩化銀の白色沈殿物が生成した。
【0066】
(実施例17)
実施例14において、0.25mol/Lの亜硫酸ナトリウム水溶液21mLと、0.47mol/Lの硝酸銀水溶液21mLを混合してできた亜硫酸銀の白色沈殿物混合液を添加する代わりに、0.24mol/Lの酸化銀の黒色沈殿物混合液42mLを添加したこと以外は、実施例14と同様にして平板状銀分散液を作製した。
【0067】
(実施例18)
実施例13において、前記種溶液の添加量を5.3mLに変えたこと以外は、実施例13と同様にして平板状銀分散液を作製した。
【0068】
(実施例19)
実施例13において、前記種溶液の添加量を2.6mLに変えたこと以外は、実施例13と同様にして平板状銀分散液を作製した。
【0069】
(実施例20)
実施例18において、0.25mol/Lの亜硫酸ナトリウム水溶液107mLと0.47mol/Lの硝酸銀水溶液107mLを混合してできた亜硫酸銀の白色沈殿物混合液を添加する代わりに、0.25mol/Lの亜硫酸ナトリウム水溶液5mLと0.47mol/Lの硝酸銀水溶液5mLを混合してできた亜硫酸銀の白色沈殿物混合液を添加したこと以外は、実施例18と同様にして平板状銀分散液を作製した。
【0070】
(実施例21)
実施例19において、0.25mol/Lの亜硫酸ナトリウム水溶液107mLと0.47mol/Lの硝酸銀水溶液107mLを混合してできた亜硫酸銀の白色沈殿物混合液を添加する代わりに、0.25mol/Lの亜硫酸ナトリウム水溶液2.5mLと0.47mol/Lの硝酸銀水溶液2.5mLを混合してできた亜硫酸銀の白色沈殿物混合液を添加したこと以外は、実施例19と同様にして平板状銀分散液を作製した。
【0071】
(比較例1)
実施例9において、0.25mol/Lの亜硫酸ナトリウム水溶液107mLの代わりに、水を107mL添加したこと以外は、実施例9と同様にして銀分散液を作製した。なお、この溶液は銀塩の沈殿物が生じなかった。
【0072】
(比較例2)
実施例14において、0.25mol/Lの亜硫酸ナトリウム水溶液21mLの代わりに、水を21mL添加したこと以外は、実施例14と同様にして銀分散液を作製した。なお、この溶液は銀塩の沈殿物が生じなかった。
【0073】
(比較例3)
2.5mmol/Lのクエン酸ナトリウム水溶液50mLに0.5g/Lのポリスチレンスルホン酸水溶液を2.5mL添加し、35℃まで加熱した。この溶液に10mmol/Lの水素化ほう素ナトリウム水溶液を3mL添加し、0.5mmol/Lの硝酸銀水溶液50mLを20mL/minで攪拌しながら添加した。この溶液を30分間攪拌し、種溶液を作製した。
反応釜中の2.5mmol/Lのクエン酸ナトリウム水溶液400mLにイオン交換水250mLを添加し、35℃まで加熱した。反応釜中の上記溶液に、10mmol/Lのアスコルビン酸水溶液を6mL添加し、前記種溶液を0.4mL添加し、0.5mmol/Lの硝酸銀水溶液240mLを30mL/minで攪拌しながら添加した。この溶液を60分間攪拌し平板状銀分散液を得た。なお、この溶液は銀塩の沈殿物が生じなかった。
【0074】
次に、実施例2〜21及び比較例1〜3の金属粒子について、実施例1と同様にして、諸特性を評価した。結果を表2に示す。
【0075】
【表2】

【0076】
表2から分かるように、本発明の製造方法で製造した銀平板粒子は、平板粒子の割合が高く(高濃度で)、かつ単分散であった。
【0077】
(実施例22)
−銀平板粒子含有層の作製−
実施例1記載の銀平板粒子分散液16mLに1NのNaOHを0.75mL添加し、イオン交換水24mL添加し、遠心分離器(コクサン社製H−200N、アンブルローターBN)で5,000rpm、5分間、遠心分離を行い、Ag六角平板粒子を沈殿させた。遠心分離後の上澄み液を捨て、水を5mL添加し、沈殿したAg六角平板粒子を再分散させた。この分散液に2質量%の下記W−1の水メタノール溶液(水:メタノール=1:1(質量比))を1.6mL添加し塗布液を作製した。この塗布液をワイヤー塗布バーNo.14(R.D.S Webster N.Y.社製)を用いてPETフィルム上に塗布し、乾燥させて、表面にAg六角平板粒子が固定されたフィルムを得た。
得られたPETフィルムに厚み20nmになるようにカーボン薄膜を蒸着した後、SEM観察(日立製作所製、FE−SEM、S−4300、2kV、2万倍)した。結果を図2に示す。PETフィルム上にAg六角平板粒子が凝集なく固定されており、以下のようにして測定したAg六角平板粒子の基板表面に占める面積率は45%であることが分かった。以上により、実施例22の銀平板粒子含有塗布フィルムを作製した。
【化1】

【0078】
次に、得られた銀平板粒子含有塗布フィルムについて、以下のようにして諸特性を評価した。結果を表3に示す。
【0079】
<<銀平板粒子含有塗布フィルムの評価>>
−面積率−
得られた銀平板粒子含有塗布フィルムについて、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して得たSEM画像を2値化し、銀平板粒子含有塗布フィルムを上から見た時の基板の面積A(銀平板粒子含有塗布フィルムに対して垂直方向から見たときの前記銀平板粒子含有塗布フィルムの全投影面積A)に対する金属平板粒子の面積の合計値Bの割合である面積率〔(B/A)×100〕を求めた。
【0080】
−可視光透過スペクトル及び熱線反射スペクトル(最大反射波長)−
得られた銀平板粒子含有塗布フィルムの透過スペクトル及び反射スペクトルは、自動車用ガラスの評価規格であるJISに準じて評価した。
透過及び反射スペクトルは、紫外可視近赤外分光機(日本分光株式会社製、V−670)を用いて評価した。評価には、絶対反射率測定ユニット(ARV−474、日本分光株式会社製)を用い、入射光は45°偏光板を通し、無偏光と見なせる入射光とした。
得られた熱線反射スペクトルにより最大反射波長を検出した。
【0081】
−熱線最大反射率・可視光線透過率−
熱線最大反射率は、JIS−R3106:1998「板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射取得率の試験方法」に記載の方法で測定し、算定され、300nm〜2,100nmまで測定した後、各波長毎の反射率を各波長毎の直達日射光の分光強度により補正して値を熱線最大反射率とした。
また、可視光線透過率は、380nm〜780nmまで測定した各波長毎の透過率を、各波長毎の分光視感度により補正した値を可視光線透過率とした。
【0082】
−電波透過性−
表面抵抗測定装置(ロレスタ、三菱化学アナリテック株式会社製)を用いて、前記の通りに得た銀平板粒子含有塗布フィルムの表面抵抗(Ω/□)を測定し、電波透過性とした。
前記銀平板粒子含有塗布フィルムを評価した結果、可視光線透過率は71.5%であり、最大反射率波長は1,015nmであり、熱線最大反射率は70%であった。
また、前記基板の電波透過性を評価するため、前記基板の表面抵抗を測定した結果、9.9×1012Ω/□であり、電波透過性を有することを確認した。
【0083】
−ヘイズの測定−
ヘイズメーター(NDH−5000、日本電色工業株式会社製)を用いて、前記の通り
に得た銀平板粒子含有塗布フィルムのヘイズ(%)を測定した。前記銀平板粒子含有塗布フィルムを評価した結果、ヘイズは7.6%であった。
【0084】
(実施例23)
実施例22において、実施例1に記載の銀平板粒子分散液を使用する代わりに、実施例2に記載の銀平板粒子分散液を使用したこと以外は、実施例22と同様にして銀平板粒子含有塗布フィルムを作製した。
【0085】
(実施例24)
実施例22において、実施例1に記載の銀平板粒子分散液を使用する代わりに、実施例3に記載の銀平板粒子分散液を使用したこと以外は、実施例22と同様にして銀平板粒子含有塗布フィルムを作製した。
【0086】
(実施例25)
実施例22において、実施例1に記載の銀平板粒子分散液を使用する代わりに、実施例4に記載の銀平板粒子分散液を使用したこと以外は、実施例22と同様にして銀平板粒子含有塗布フィルムを作製した。
【0087】
次に、実施例23〜25の銀平板粒子含有塗布フィルムについて、実施例22と同様にして、諸特性を評価した。結果を表3に示す。
【0088】
【表3】

【0089】
表3から分かるように本発明の製造方法で製造した銀平板粒子を用いた銀平板粒子含有塗布フィルムは高い遮熱性能を示した。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の銀平板粒子の製造方法は、例えば、光学フィルタ、配線材料、電極材料、触媒、着色剤、化粧品、赤外線吸収剤、赤外線反射剤、偽造防止インク、電磁波シールド材、表面増強蛍光センサ、生体マーカ、記録素子、薬物送達システム用薬物保持体、バイオセンサ、DNAチップ、検査薬又はラマン増強用試薬に、など好適に利用可能である銀平板粒子を効率良く製造することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 基板
2 銀粒子含有層
3 銀平板粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に銀塩、分散剤及び還元剤を含む混合液を作製する混合液作製工程と、
前記混合液中に、固体状態の他の銀塩を混在させる混在工程と、を含むことを特徴とする銀平板粒子の製造方法。
【請求項2】
混在工程において、混合液に、固体状態の他の銀塩が分散した分散液を添加することを含む請求項1に記載の銀平板粒子の製造方法。
【請求項3】
固体状態の他の銀塩が分散した分散液を、銀塩を含む銀塩含有水溶液と、該銀塩含有水溶液における銀イオンと結合して前記固体状態の他の銀塩を生成するリガンドを含むリガンド含有水溶液とを混合して作製する請求項2に記載の銀平板粒子の製造方法。
【請求項4】
混在工程において、混合液に、銀塩を含む銀塩含有水溶液と、該銀塩含有水溶液における銀イオンと結合して固体状態の他の銀塩を生成するリガンドを含むリガンド含有水溶液とを添加することを含む請求項1に記載の銀平板粒子の製造方法。
【請求項5】
固体状態の他の銀塩の溶解度積が10−30以上10−3以下である請求項1から4のいずれかに記載の銀平板粒子の製造方法。
【請求項6】
分散剤がゼラチンを含む請求項1から5のいずれかに記載の銀平板粒子の製造方法。
【請求項7】
固体状態の他の銀塩を混在させた混合液における銀濃度が2mmol/Lを超える請求項1から6のいずれかに記載の銀平板粒子の製造方法。
【請求項8】
固体状態の他の銀塩を混在させた混合液における銀濃度が10mmol/Lを超える請求項7に記載の銀平板粒子の製造方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の製造方法により製造されたことを特徴とする銀平板粒子。
【請求項10】
平均円相当径が5μm以下である請求項9に記載の銀平板粒子。
【請求項11】
平均円相当径が1μm以下である請求項10に記載の銀平板粒子。
【請求項12】
請求項9から11のいずれかに記載の銀平板粒子を含有することを特徴とする銀平板粒子含有組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の銀平板粒子含有組成物を用いて形成されたことを特徴とするフィルム。


【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図1A】
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【図1B】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−252213(P2011−252213A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127682(P2010−127682)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】