説明

銅及びアルカリ金属を有するゼオライト

【課題】
本発明は、イオン交換サイトに銅及びアルカリ金属を有する新規なチャバザイト型ゼオライト、及び、そのゼオライトからなる窒素酸化物還元除去触媒、並びに、その触媒を使用する窒素酸化物の還元除去方法を提供する。
【解決手段】
イオン交換サイトに銅及びアルカリ金属を有することを特徴とするチャバザイト型ゼオライトを提供する。このようなチャバザイト型ゼオライトは、チャバザイト型ゼオライトを製造し、これをプロトン型に変換した後に、銅担持を行い、続けてアルカリ金属を担持するで製造することができる。このようなチャバザイト型ゼオライトは、従来の銅のみが担持されているチャバザイト型ゼオライト触媒と比べ、優れた触媒性能を発揮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャバザイト型ゼオライト、及びそれを用いた自動車排ガス中の窒素酸化物還元除去触媒、並びに、その触媒を使用する窒素酸化物の還元除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チャバザイト型ゼオライトは、窒素酸化物(以降、NOxと表記する)還元触媒、特にアンモニアを還元剤として用いるNOx還元触媒(一般にSCR触媒といわれる選択的接触還元“Selective catalytic reduction”の略)に用いられるゼオライトである。
【0003】
従来のチャバザイト型ゼオライトには、銅のアルミニウムに対する原子割合が約0.25を超える範囲で銅が担持されている触媒がある(特許文献1参照)。
【0004】
また、従来のチャバザイト型ゼオライトは、SiO/Alモル比が15〜50であって、平均粒子径が1.5μm以上であることを特徴とする(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2010−519038号公報
【特許文献2】特開2010−168269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、イオン交換サイトに銅及びアルカリ金属を有する新規なチャバザイト型ゼオライト、及び、そのゼオライトからなる窒素酸化物還元除去触媒、並びに、その触媒を使用する窒素酸化物の還元除去方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は下記に存する。即ち、
(1)イオン交換サイトに銅及びアルカリ金属を有することを特徴とするチャバザイト型ゼオライト。
(2)イオン交換サイトに2種以上のアルカリ金属を有することを特徴とする上記(1)に記載のチャバザイト型ゼオライト
(3)アルカリ金属がナトリウム又はカリウムの少なくともいずれかを含むことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のチャバザイト型ゼオライト。
(4)アルカリ金属/アルミニウムの原子割合が0.05〜0.5であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のチャバザイト型ゼオライト。
(5)銅/アルミニウムの原子割合が0.13〜0.25であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のチャバザイト型ゼオライト。
(6)平均粒子径が1.5μm以上であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載のチャバザイト型ゼオライト。
(7)SiO/Alモル比が10〜50であることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載のチャバザイト型ゼオライト。
(8)チャバザイト型ゼオライトを製造し、これをプロトン型に変換した後に、銅担持を行い、続けてアルカリ金属を担持することを特徴とする、イオン交換サイトに銅及びアルカリ金属を有するチャバザイト型ゼオライトの製造方法。
(9)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のチャバザイト型ゼオライトを含むことを特徴とする窒素酸化物還元除去触媒。
(10)上記(9)記載の窒素酸化物還元除去触媒を使用することを特徴とする窒素酸化物の還元除去方法。
【0008】
以下、本発明のイオン交換サイトに銅及びアルカリ金属を有するチャバザイト型ゼオライトについて説明する。
【0009】
本発明のチャバザイト型ゼオライトはイオン交換サイトに銅(Cu)及びアルカリ金属を有する。イオン交換サイトに銅を有することでNOx還元効率が高くなる。特に水熱耐久処理後のNOx還元効率が高くなる。
【0010】
なお、本発明でいう「水熱耐久処理」とは、ゼオライトを水熱雰囲気下で処理することである。また、「水熱耐久処理後のNOx還元効率」とは、ゼオライトを水熱雰囲気下で処理した後の、当該ゼオライトのNOx還元効率である。したがって、「水熱耐久処理後のNOx還元効率は」、水熱耐久処理を施していないゼオライトのNOx還元効率(例えば、合成直後のゼオライトのNOx還元効率)とは異なるものである。
【0011】
さらに、本発明のチャバザイト型ゼオライトはイオン交換サイトにアルカリ金属を有する。イオン交換サイトに銅及びアルカリ金属を有することで、イオン交換サイトに銅のみを有するチャバザイト型ゼオライトと比べて、水熱耐久処理後のNOx還元効率が高くなる。さらには、本発明のチャバザイト型ゼオライトは、例えば200℃以下、さらには150℃以下の低温の条件下においても、高い水熱耐久処理後のNOx還元効率を示す。これに加え、アルカリ金属を含有することでチャバザイト型ゼオライトの銅の含有量が低減するため、環境への負荷も低減される。
【0012】
本発明のチャバザイト型ゼオライトが有するアルカリ金属は特に限定されない。アルカリ金属は1種類でもよいが、2種類以上であることが好ましい。さらに、アルカリ金属はナトリウム、カリウムの少なくともいずれかであること好ましく、ナトリウム及びカリウムであることがより好ましい。
【0013】
このように、本発明のチャバザイト型ゼオライトは、そのイオン交換サイトに銅及びアルカリ金属を有する。これにより、チャバザイト型ゼオライトと銅及びアルカリ金属との相互作用が発現する。その結果、本発明のチャバザイト型ゼオライトは高いNOx還元効率を示すと考えられる。そのため、本発明のチャバザイト型ゼオライトをSCR触媒として使用した場合、高い触媒活性を有するSCR触媒を構成することができる。特に、本発明のチャバザイト型ゼオライトをSCR触媒に使用することで、例えば200℃以下、さらには150℃以下の低温の条件下においても、高いNOx還元効率を有するSCR触媒、特に、高い水熱耐久処理後のNOx還元効率を有するSCR触媒とすることができる。
【0014】
本発明のチャバザイト型ゼオライトでは、そのイオン交換サイトに銅及びアルカリ金属以外のイオンを含んでいてもよい。この場合、銅及びアルカリ金属以外のイオンとしては、NOx還元効率に悪影響を及ぼさないものであればよい。このようなイオンとして、例えばプロトン(H)を挙げることができる。
【0015】
本発明のチャバザイト型ゼオライトは、銅のアルミニウムに対する原子割合(銅/アルミニウム)が原子比で0.13〜0.3の範囲であることが好ましく、0.13〜0.25の範囲であることがより好ましく、0.17〜0.23の範囲であることが更に好ましい。銅/アルミニウムがこの範囲であることにより、水熱耐久処理後のNOx還元効率がより高くなる。
【0016】
また、アルカリ金属のアルミニウムに対する原子割合(アルカリ金属/アルミニウム)が0.05〜0.50の範囲であることが好ましく、0.05〜0.45の範囲であることがより好ましく、0.2〜0.45の範囲であることが更に好ましく、0.2〜0.35の範囲であることが更により好ましい。
【0017】
本発明のチャバザイト型ゼオライトは、平均粒子径が1.5μm以上であることが好ましく、2.0μm以上であることがより好ましい。平均粒子径が1.5μm以上であることで耐熱性がより高くなる。平均粒子径の上限は特に限定されないが、5.0μm以下が好ましい。
【0018】
ここで、本発明における「平均粒子径」とは、チャバザイト型ゼオライトの一次粒子の粒子径である。本発明のチャバザイト型ゼオライトは一次粒子が大きく、凝集していない。したがって、平均粒子径は微細な一次粒子が凝集して形成された二次粒子の粒子径とは異なるものである。ゼオライトの粒子径が、一次粒子の粒子径であるか、若しくは、一次粒子が凝集して形成された二次粒子の粒子径であるかは、例えば走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」)による粒子の観測により確認することができる。
【0019】
本発明のチャバザイト型ゼオライトは、SiO/Alモル比が10〜50であることが好ましく、SiO/Alモル比が10〜30であることが更に好ましい。このようなSiO/Alモル比を有することの理由は、SiO/Alモル比がこの範囲となることでNOx還元効率が高くなるからである。水熱耐久処理後のNOx還元効率が高くなりやすく、特に、例えば、200℃以下、さらには150℃以下の低温の条件下における、水熱耐久処理後のNOx還元効率が高くなるからである。
【0020】
本発明のチャバザイト型ゼオライトは、そのイオン交換サイトに銅及びアルカリ金属を有していればその製造方法は特に限定されない。
【0021】
本発明のチャバザイト型ゼオライトの好ましい製造方法として、例えば、チャバザイト型ゼオライトを製造し、これをプロトン型に変換した後に、銅担持を行い、続けてアルカリ金属を担持する製造方法が挙げられる。さらには、チャバザイト型ゼオライトを製造し、アルカリ金属の担持に続けて銅担持を行い、これをプロトン型に変換する製造方法が挙げられる。
【0022】
チャバザイト型ゼオライトの原料はシリカ源、アルミナ源、アルカリ源、構造指向剤と水から構成される原料組成物を使用することが好ましい。また、原料混合物には、種晶などの結晶化促進作用を有する成分を添加しても良い。
【0023】
シリカ源として、コロイダルシリカ、無定型シリカ、珪酸ナトリウム、テトラエチルオルトシリケート、又はアルミノシリケートゲルなどを使用することができる。
【0024】
アルミナ源として、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミノシリケートゲル、又は金属アルミニウムなどを用いることができる。シリカ源及びアルミナ源は、アルカリ源等の他の成分と十分均一に混合できる形態のものが望ましい。
【0025】
アルカリ源としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、アルミン酸塩及び珪酸塩中のアルカリ成分、アルミノシリケートゲル中のアルカリ成分などを用いることができる。
【0026】
構造指向剤としては、N,N,N−トリアルキルアダマンタンアンモニウムをカチオンとする水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、メチルカーボネート塩及び硫酸塩;及びN,N,N−トリメチルベンジルアンモニウムイオン、N−アルキル−3−キヌクリジルアンモニアイオン、またはN,N,N−トリアルキルエキソアミノノルボルナンをカチオンとする水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、メチルカーボネート塩及び硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を用いることができる。
【0027】
特に、構造指向剤としてN,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム水酸化物、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウムハロゲン化物、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム炭酸塩、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウムメチルカーボネート塩及びN,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム硫酸塩から選ばれる少なくとも1種以上を用いることが好ましい。
【0028】
これらの原料を混合することで、チャバザイト型ゼオライトの原料組成物を製造できる。
【0029】
水、シリカ原料、アルミナ原料、アルカリ成分、及び構造指向剤から成る原料組成物を密閉式圧力容器中で、100〜200℃の任意の温度で、十分な時間をかけて結晶化させることによりチャバザイト型ゼオライトを製造することが好ましい。
【0030】
結晶化終了後、十分放冷し、固液分離、十分量の純水で洗浄し、100〜150℃の任意の温度で乾燥してチャバザイト型ゼオライトを得ることができる。
【0031】
得られたチャバザイト型ゼオライトは細孔内に構造指向剤及びアルカリ金属の両方又はいずれか一方を含有している。これらは、必要に応じて除去してもよい。
【0032】
更に、ゼオライトのイオン交換サイトをプロトンで置換し、プロトン型チャバザイト型ゼオライトとすることが好ましい。一度、プロトン型チャバザイト型ゼオライトとしたのちに、銅及びアルカリ金属を担持することで、アルカリ金属を目的とする量担持させることが容易になるだけでなく、イオン交換サイトをプロトンで置換しなかった場合と比較すると、NOx還元効率が高くなりやすい。
【0033】
本発明のチャバザイト型ゼオライトは、この様にして得られたプロトン型チャバザイト型ゼオライトに銅及びアルカリ金属を担持させて製造することが好ましい。
【0034】
チャバザイト型ゼオライトが、そのイオン交換サイトに銅及びアルカリ金属を有するように銅及びアルカリ金属を担持すれば、その担持方法は特に限定されない。銅及びアルカリ金属の担持方法として、イオン交換法、含浸担持法、蒸発乾固法、沈殿担持法、及び、物理混合法等の方法を採用することができる。
【0035】
銅及びアルカリ金属担持に用いる原料は、チャバザイト型ゼオライトのイオン交換サイトにこれらの金属が担持されれば、適宜選択することができる。例えば、銅、アルカリ金属を含む硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、錯塩、酸化物、又は複合酸化物など可溶性、不溶性のものをいずれか一種以上使用できる。
【0036】
担持するアルカリ金属の原料としてはナトリウム又はカリウムがより好ましい。また、担持する銅の原料としては硝酸銅、酢酸銅が好ましい。
【0037】
銅及びアルカリ金属を担持する好ましい方法として、チャバザイト型ゼオライトに銅を担持させた後に、アルカリ金属を担持させることが例示できる。このような担持方法としては、チャバザイト型ゼオライトに対し、銅化合物を用いてイオン交換法で銅を担持させ、アルカリ金属化合物を用いて含浸法でアルカリ金属を担持させることが例示できる。アルカリ金属の担持を先に行うことで、銅イオン交換の際にアルカリ金属の脱離が生じなくなる。
【0038】
なお、チャバザイト型ゼオライト中のアルミニウムに対する、担持される銅の存在量は、アルミニウムに対する銅の原子割合である。その原子割合で、0.13〜0.25の範囲内であれば、水熱耐久処理後のNOx還元効率が高く好ましい。
【0039】
チャバザイト型ゼオライト中のアルミニウムに対する担持されるアルカリ金属の存在量は、アルミニウムに対するアルカリ金属の原子割合である。その原子割合で、0.05〜0.50の範囲内であれば、水熱耐久処理後のNOx還元効率が高くなる。
【0040】
本発明のチャバザイト型ゼオライトは、排気ガス処理システムに組み込まれる排気ガス処理触媒として使用することができる。更には、ガス流中に含まれるNOxを、酸素の存在下でこの触媒を使用して還元除去する触媒、いわゆるNOx還元除去触媒(SCR触媒)として使用することができる。
【0041】
本発明のチャバザイト型ゼオライトは、水熱耐久処理後におけるNOx還元効率が高い。特に、例えば200℃以下、更には150℃以下の低温の条件下における水熱耐久処理後のNOx還元効率が高く、いわゆる低温活性に優れたSCR触媒として使用することができる。
【0042】
本発明のチャバザイト型ゼオライトの水熱耐久処理後のSCR触媒としての低温活性は、例えば、水蒸気を10容量%含む空気流通下において温度900℃、20時間、ガス流量/ゼオライト容量比100倍/分で処理した後に、150℃以下の温度でのNOx還元効率を測定することができる。
【0043】
なお、SCR触媒は、高温で高い湿度条件下で使用する。そのため、水熱耐久処理後のNOx還元の性能で評価されることが一般的である。しかしながら、その水熱耐久処理の条件は、特に規格化されたものはない。上記のような水熱耐久処理の条件は、SCR触媒の水熱耐久処理条件として一般的に用いられる条件の範疇であり、特に特殊な条件ではない。
【発明の効果】
【0044】
本発明のチャバザイト型ゼオライトは、水熱耐久処理後であっても、150℃以下の低温の条件下においても高いNOx還元効率を有する。特に、水熱耐久処理後の状態において、イオン交換サイトに銅のみを有するチャバザイト型ゼオライトからなる窒素酸化物還元除去触媒と比べ、低温におけるNOx還元効率が高い効果を有する。
【実施例】
【0045】
以下、本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
尚、各測定は以下に示した方法によって実施した。
【0047】
(平均粒子径の測定方法)
平均粒子径の測定は、二通りの方法で行った。
【0048】
(1)チャバザイト型ゼオライトに純水を加え、固形分1%のスラリーとし、超音波分散を2分間施した後にレーザー回折散乱法による粒子径分布測定を行うことにより「50%粒子径」として求めた。
【0049】
(2)5000倍の倍率で撮影したSEM写真から任意の50個の結晶粒子を選択し、その各粒子径を平均して粒子径(以降、「SEM径」と称する。)を求めた。
【0050】
(銅及びアルミニウムの定量)
銅、及びアルカリ金属の原子割合はICP組成分析により求めた。60%濃硝酸:フッ酸:純水=1:1:48として調製した溶液に測定試料を溶解したものをICP分析液とし、これを測定した。
【0051】
ICP組成分析を行って得られたAlのモル濃度に対するCuのモル濃度の割合を、銅のアルミニウムに対する原子割合として求めた。また、得られたAlのモル濃度に対するナトリウム及びカリウムの合計モル濃度の割合を、アルカリ金属のアルミニウムに対する原子割合とした。
【0052】
(水熱耐久処理)
水熱耐久処理は以下の条件で行った。すなわち、水蒸気を10容量%含む空気流通下において温度900℃、20時間、ガス流量/ゼオライト容量比100倍/分で処理した。
【0053】
(NOx還元効率の測定方法)
以下の条件のガスを、所定の温度で接触させた場合のNOx還元効率を測定した。SCR触媒は一般的に還元分解するNOxガスと還元剤のアンモニアを1:1で含有するガスを用いて評価することが一般的である。本発明で用いたNOx還元条件は、通常SCR触媒のNOx還元性を評価する一般的な条件の範疇に入るものであり、特に特殊な条件ではない。
【0054】
本発明の評価で採用したNOx還元条件:
処理ガス組成 NO 200ppm
NH 200ppm
10容量%
O 3容量%
残り Nバランス
処理ガス流量 1.5リットル/分
処理ガス/触媒容量比 1000/分
【0055】
実施例1
(チャバザイト型ゼオライトの製造)
特開2010−168269号公報に記載の方法でゼオライトを合成した。すなわち、N,N,N−トリメチルアダマンタン水酸査化物13%水溶液、純水、水酸化カリウム48%水溶液、及び、無定形のアルミノシリケートゲルを混合し、原料組成物を得た。得られた原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉し、150℃で158時間加熱した。加熱後の生成物を固液分離し、純水で洗浄した後、110℃で乾燥してゼオライトを合成した。
【0056】
得られたゼオライトを、NH交換した後に500℃で1時間加熱して、プロトン型ゼオライトを得た。得られたプロトン型ゼオライトは、SiO/Alモル比が24.6、50%粒子径が6.1μm、及びSEM径が2.28μmであった。
【0057】
得られたプロトン型ゼオライトのX線回折図からのX線回折パターンは、特開2010−168269号公報の表1のX線回折パターンと同一の回折パターンであった。これより、当該プロトン型ゼオライトはチャバサイト型構造を有するプロトン型チャバザイト型ゼオライトであることが確かめられた。
【0058】
(銅及びアルカリ金属の担持)
純水80gに酢酸銅一水和物0.51gを投入後、200rpmで10分攪拌して、酢酸銅水溶液を作製した。
【0059】
酢酸銅水溶液に、上記のプロトン型チャバサイト型ゼオライト8.00g(600℃で1時間乾燥した時の重量)を投入し、180rpmで30℃において2時間攪拌後固液分離した。
【0060】
固液分離した後のチャバザイト型ゼオライトを、40℃の純水800gで洗浄し、110℃で一晩乾燥した。これにより、チャバザイト型ゼオライトのイオン交換サイトに銅を導入し、銅担持チャバザイト型ゼオライトを得た。
【0061】
得られた銅担持チャバザイト型ゼオライト7.00gに酢酸カリウム0.21g及び酢酸ナトリウム0.10gを純水2.50gに溶解させた液を滴下した。滴下後、乳鉢で10分混合、110℃で一晩乾燥した後で、焼成炉にて空気雰囲気下500℃で1時間焼成して実施例1のチャバサイト型ゼオライトを製造した。
【0062】
実施例1のチャバザイト型ゼオライトの評価結果を表1に示した。
【0063】
(水熱耐久処理)
実施例1のチャバサイト型ゼオライトの乾燥粉末を加圧成形後、粉砕して12〜20メッシュに整粒した。整粒したチャバザイト型ゼオライト3mlを常圧固定床流通式反応管に充填し、水分を10体積%含有させた空気を300ml/minで流通しながら、900℃、1時間で水熱耐久処理を行った。
【0064】
(窒素酸化物還元効率の測定)
水熱耐久処理後の実施例1のチャバサイト型ゼオライトを含む定常状態の反応器に、200ppmのNO、200ppmのNH、10%O、3%HOのNでバランスした供給ガス混合物を加えることにより、NOx還元効率を測定した。NOx還元効率の測定は、温度範囲150℃〜500℃、及び空間速度60,000hr−1で行った。
【0065】
実施例2
純水80gに酢酸銅一水和物0.77gを投入後、200rpmで10分攪拌し、酢酸銅水溶液を作製した。その酢酸銅水溶液に、実施例1で製造したプロトン型チャバザイト型ゼオライト8.00g(600℃で1時間乾燥した時の重量)を投入し、200rpmで30℃において2時間攪拌した後に固液分離した。固液分離後、40℃の純水800gで洗浄、110℃で一晩乾燥して、銅担持チャバザイト型ゼオライトを得た。
【0066】
得られた銅担持チャバザイト型ゼオライト7.00gに酢酸カリウム0.18g及び酢酸ナトリウム0.06gを純水2.50gに溶解させた液を滴下した。滴下後、乳鉢で10分混合、110℃で一晩乾燥した後で、焼成炉にて空気雰囲気下500℃で1時間焼成して実施例2のチャバサイト型ゼオライトを製造した。
【0067】
実施例2のチャバサイト型ゼオライトの評価結果を表1に示す。
【0068】
次に、実施例1と同様の方法で、実施例2のチャバサイト型ゼオライトを加圧成形し、整粒し、水熱耐久処理実施の前後で、NOx還元効率の測定を行った。
【0069】
実施例3
純水80gに酢酸銅一水和物0.80gを投入後、200rpmで10分攪拌し、酢酸銅水溶液を作製した。その酢酸銅水溶液に、実施例1で製造したプロトン型のチャバザイト型ゼオライト8.00g(600℃で1時間乾燥した時の重量)を投入し、200rpmで30℃において2時間攪拌した後に固液分離した。固液分離後、温40℃程度の純水800gで洗浄、110℃で一晩乾燥して、銅担持チャバザイト型ゼオライトを得た。
【0070】
得られた銅担持チャバザイト型ゼオライト7.00gに酢酸カリウム0.28gを純水2.50gに溶解させた液を滴下した。滴下後、乳鉢で10分混合、110℃で一晩乾燥した後で、焼成炉にて空気雰囲気下500℃で1時間焼成して実施例3のチャバサイト型ゼオライトを製造した。
【0071】
実施例3のチャバサイト型ゼオライトの評価結果を表1に示す。
【0072】
次に、実施例1と同様の方法で、実施例3のチャバサイト型ゼオライトを加圧成形し、整粒し、水熱耐久処理実施の前後で、NOx還元効率の測定を行った。
【0073】
実施例4
純水80gに酢酸銅一水和物0.32gを投入後、200rpmで10分攪拌し、酢酸銅水溶液を作製した。その酢酸銅水溶液に、実施例1で製造したプロトン型チャバザイト型ゼオライト8.00g(600℃で1時間乾燥した時の重量)を投入し、200rpmで30℃において2時間攪拌した後に固液分離した。固液分離後、40℃程度の純水800gで洗浄、110℃で一晩乾燥して、銅担持チャバザイト型ゼオライトを得た。
【0074】
得られた銅担持チャバザイト型ゼオライト7.00gに酢酸カリウム0.18g及び酢酸ナトリウム0.13gを純水2.50gに溶解させた液を滴下した。滴下後、乳鉢で10分混合、110℃で一晩乾燥した後で、焼成炉にて空気雰囲気下500℃で1時間焼成して実施例4のチャバサイト型ゼオライトを製造した。
【0075】
実施例4のチャバサイト型ゼオライトの評価結果を表1に示す。
【0076】
次に、実施例1と同様の方法で、実施例4のチャバサイト型ゼオライトを加圧成形し、整粒し、水熱耐久処理を実施した後で、NOx還元効率の測定を行った。
【0077】
実施例5
純水80gに酢酸銅一水和物0.89gを投入後、200rpmで10分攪拌し、酢酸銅水溶液を作製した。その酢酸銅水溶液に、実施例1で製造したプロトン型チャバザイト型ゼオライト8.00g(600℃で1時間乾燥した時の重量)を投入し、200rpmで30℃において2時間攪拌した後に固液分離した。固液分離後、40℃程度の純水800gで洗浄、110℃で一晩乾燥して、銅担持チャバザイト型ゼオライトを得た。
【0078】
得られた銅担持チャバザイト型ゼオライト7.00gに酢酸カリウム0.18g及び酢酸ナトリウム0.13gを純水2.50gに溶解させた液を滴下した。滴下後、乳鉢で10分混合、110℃で一晩乾燥した後で、焼成炉にて空気雰囲気下500℃で1時間焼成して実施例5のチャバサイト型ゼオライトを製造した。
【0079】
実施例5のチャバサイト型ゼオライトの評価結果を表1に示す。
【0080】
次に、実施例1と同様の方法で、実施例5のチャバサイト型ゼオライトを加圧成形し、整粒し、水熱耐久処理を実施した後で、NOx還元効率の測定を行った。
【0081】
実施例6
純水80gに酢酸銅一水和物0.93gを投入後、200rpmで10分攪拌し、酢酸銅水溶液を作製した。その酢酸銅水溶液に、実施例1で製造したプロトン型チャバザイト型ゼオライト8.00g(600℃で1時間乾燥した時の重量)を投入し、200rpmで30℃において2時間攪拌した後に固液分離した。固液分離後、40℃の純水800gで洗浄、110℃で一晩乾燥して、銅担持チャバザイト型ゼオライトを得た。
【0082】
得られた、銅担持チャバサイト型ゼオライト7.00gに酢酸カリウム0.18g及び酢酸ナトリウム0.13gを純水2.50gに溶解させた液を滴下した。滴下後、乳鉢で10分混合、110℃で一晩乾燥した後で、焼成炉にて空気雰囲気下500℃で1時間焼成して実施例6のチャバサイト型ゼオライトを製造した。
【0083】
実施例6のチャバサイト型ゼオライトは評価結果を表1に示す。
【0084】
次に、実施例1と同様の方法で、実施例6のチャバサイト型ゼオライトを加圧成形し、整粒し、水熱耐久処理を実施した後で、NOx還元効率の測定を行った。
【0085】
比較例1
純水80gに酢酸銅一水和物0.77gを投入後、200rpmで10分攪拌し、酢酸銅水溶液を作製した。その酢酸銅水溶液に、実施例1で製造したプロトン型チャバザイト型ゼオライト8.00g(600℃で1時間乾燥した時の重量)を投入し、200rpmで30℃において2時間攪拌した後に固液分離した。固液分離後、温純水800gで洗浄、110℃で一晩乾燥して比較例1の銅担持チャバサイト型ゼオライトを製造した。
【0086】
得られた銅担持チャバサイト型ゼオライトの結果を表1に示す。
【0087】
次に、実施例1と同様の方法で、比較例2の銅担持チャバサイト型ゼオライトを加圧成形し、整粒し、水熱耐久処理実施の前後で、NOx還元効率の測定を行った。
【0088】
比較例2
純水80gに酢酸銅一水和物0.64gを投入後、200rpmで10分攪拌し、酢酸銅水溶液を作製した。その酢酸銅水溶液に、実施例1で製造したプロトン型チャバザイト型ゼオライト8.00g(600℃で1時間乾燥した時の重量)を投入し、200rpmで30℃において2時間攪拌した後に固液分離した。固液分離後、温純水800gで洗浄、110℃で一晩乾燥して比較例2の銅担持チャバサイト型ゼオライトを製造した。
【0089】
得られた銅担持チャバサイト型ゼオライトの結果を表1に示す。
【0090】
次に、実施例1と同様の方法で比較例2の銅担持チャバサイト型ゼオライトを加圧成形し、整粒し、水熱耐久処理実施の前後で、NOx還元効率の測定を行った。
【0091】
以下の表1には、実施例1〜6及び比較例1〜2で得られたチャバザイト型ゼオライトの各種物性値及び150℃での水熱耐久処理前後のNOx還元効率(%)を示す。
【0092】
【表1】

【0093】
表1より、そのイオン交換サイトが銅、アルカリ金属及びプロトンで占有されているチャバサイト型ゼオライトの実施例1〜6の方が、この範囲外である比較例1〜2よりも水熱耐久処理後のNOx還元効率(%)が高い事が示されている。
【0094】
特に、銅/アルミニウムの原子割合が0.13〜0.25である実施例1〜4が水熱耐久処理後のNOx還元効率(%)が50%以上と高い事が示されている。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の銅及びアルカリ金属を有するチャバザイト型ゼオライトは、排気ガス処理システムに組み込まれる触媒として使用でき、特に、SCR触媒として、還元剤の存在下で自動車排ガス中のNOxの還元除去に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換サイトに銅及びアルカリ金属を有することを特徴とするチャバザイト型ゼオライト。
【請求項2】
イオン交換サイトに2種以上のアルカリ金属を有することを特徴とする請求項1に記載のチャバザイト型ゼオライト
【請求項3】
アルカリ金属がナトリウム又はカリウムの少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のチャバザイト型ゼオライト。
【請求項4】
アルカリ金属/アルミニウムの原子割合が0.05〜0.5であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のチャバザイト型ゼオライト。
【請求項5】
銅/アルミニウムの原子割合が0.13〜0.25であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のチャバザイト型ゼオライト。
【請求項6】
平均粒子径が1.5μm以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のチャバザイト型ゼオライト。
【請求項7】
SiO/Alモル比が10〜50であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のチャバザイト型ゼオライト。
【請求項8】
チャバザイト型ゼオライトを製造し、これをプロトン型に変換した後に、銅担持を行い、続けてアルカリ金属を担持することを特徴とする、イオン交換サイトに銅及びアルカリ金属を有するチャバザイト型ゼオライトの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載のチャバザイト型ゼオライトを含むことを特徴とする窒素酸化物還元除去触媒。
【請求項10】
請求項9記載の窒素酸化物還元除去触媒を使用することを特徴とする窒素酸化物の還元除去方法。

【公開番号】特開2013−95653(P2013−95653A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242740(P2011−242740)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】