説明

銅箔の連続電解めっき装置

【課題】銅箔に均一なめっき厚さ・表面の良好なめっきを形成できる連続電解めっき装置を提供する。
【解決手段】電解槽内に設置されたアノード板2に対して平行にカソードとなる銅箔1を連続的に搬送し、アノード板2から銅箔1への電流を遮断する電流遮蔽板3を銅箔1の幅方向の両端部側に設けて、銅箔1に電解めっきを施す銅箔の連続電解めっき装置において、アノード板2の幅W2は、銅箔1の幅W1より広く、かつ電流遮蔽板3は、銅箔1の端部に近接した外側からアノード板2表面に垂直な方向にアノード板2の表面に近接する位置まで延出する第1の電流遮蔽面3aと、第1の電流遮蔽面3aに接続され、第1の電流遮蔽面3aのアノード板2の表面近傍から屈曲してアノード板2の表面近傍に沿ってアノード板2の端部側に張り出された第2の電流遮蔽面3bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解槽内を搬送される銅箔に電解めっきを施す銅箔の連続電解めっき装置に関し、更に詳しくは、アノード板から銅箔への電流を遮断する電流遮蔽構造を改善した銅箔の連続電解めっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アノードに沿って搬送される銅箔をカソードにして電解めっきする場合に、電流分布の改善に関して、電流遮蔽する多くの方法が報告されている。
例えば、特許文献1では、アノード及び銅箔に直交し且つアノードの幅方向の端部と銅箔の幅方向の端部との間に亘る幅を有する電流遮蔽板(絶縁性の整流板)を配置して、均一なめっき処理を図る技術が提案されている。
また、特許文献2、3では、一対のアノード板の間に鋼帯(ストリップ)を通過させて電解めっきする際に、鋼帯の両端部にコ字状断面の電流遮蔽板(エッジマスク)を配置し、鋼帯の幅に合わせて電流遮蔽板を幅方向に拡げたり、縮めたりする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3822136号公報
【特許文献2】特開平10−110291号公報
【特許文献3】特開昭60−245799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の電流遮蔽はいまだ不十分で、銅箔両端部のめっき厚さ・表面状態が不均一であったため、めっき後に銅箔の両端部を切除していた。例えば、600mm幅の銅箔をめっき後に560mm幅に切除して製品化していた。このため、製品の歩留まりが悪かった。
また、例えば、リチウムイオン二次電池の負極製造では、活物質を含む合剤を銅箔に塗布する工程のライン速度は遅く、生産性を向上するためには、できるだけ幅広の銅箔に塗布する必要がある。したがって、めっき後の銅箔両端部を切除しないこと、あるいは切除幅を少なくすることが望まれている。
【0005】
ところで、銅箔を実操業速度で搬送した場合、銅箔の搬送位置が幅方向に変動する蛇行がどうしても避けられない。特許文献1では、銅箔が搬送時に蛇行すると、銅箔と電流遮蔽板の位置関係が変動し、電流遮蔽板の効果が不十分となって、銅箔めっき量の幅方向分布が安定しない。また、蛇行の程度によっては銅箔と電流遮蔽板が接触して、銅箔が変形したり破断したりするなど、製造歩留まりを著しく低下させる場合がある。
特許文献2、3では、銅箔を広幅あるいは狭幅のものに変更する場合には予め電流遮蔽板の位置を移動させて最適化することが可能であるが、特許文献1と同様に、銅箔の連続搬送中の蛇行には対処できない。
【0006】
長尺ワークの蛇行防止には、EPC(エッジポジションコントローラー)やCPC(センターポジションコントローラー)が一般的に使用されている。これら装置では、光学センサー等でワーク位置を検知して、検知したワーク位置に応じてロールの相対位置を変化させることで、長尺ワークの搬送位置を一定に保つシステムが知られている。しかし、これら装置を薄い銅箔に適用した場合、特に厚さ10μm以下の薄い銅箔では、動作時に銅
箔にシワが入ることが避けられず、適用は難しい。
【0007】
本発明の目的は、銅箔に均一なめっき厚さ・表面状態の良好なめっきを形成できる銅箔の連続電解めっき装置を提供することにある。
また、本発明の目的は、実操業において銅箔が蛇行しても銅箔と電流遮蔽板の位置関係を一定に維持でき、銅箔の幅方向のめっき均一性を保持できる銅箔の連続電解めっき装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、電解槽内に設置されたアノード板に対して平行にカソードとなる銅箔を連続的に搬送し、前記アノード板から前記銅箔への電流を遮断する電流遮蔽板を前記銅箔の幅方向の両端部側に設けて、前記銅箔に電解めっきを施す銅箔の連続電解めっき装置において、前記アノード板の幅は、前記銅箔の幅より広く、かつ前記電流遮蔽板は、前記銅箔の端部に近接した外側から前記アノード板表面に垂直な方向に前記アノード板の表面に近接する位置まで延出する第1の電流遮蔽面と、前記第1の電流遮蔽面に接続され、前記第1の電流遮蔽面の前記アノード板の表面近傍から屈曲して前記アノード板の表面に沿って前記アノード板の端部側に張り出された第2の電流遮蔽面とを有する銅箔の連続電解めっき装置である。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様の銅箔の連続電解めっき装置において、前記電解槽に搬入される前記銅箔の幅方向の端部位置を検出する検出器を設け、前記検出器の検出信号に基づき、前記銅箔の幅方向の位置変動に追従して前記電流遮蔽板を前記銅箔の幅方向に移動させる駆動装置を設けた銅箔の連続電解めっき装置である。
【0010】
本発明の第3の態様は、第1の態様又は第2の態様の銅箔の連続電解めっき装置において、前記電流遮蔽板は、伸縮可能な緩衝機構を介して前記電解槽に連結されている銅箔の連続電解めっき装置である。
【0011】
本発明の第4の態様は、第1〜第3の態様のいずれかの銅箔の連続電解めっき装置おいて、前記緩衝機構は、前記電流遮蔽板の振動を減衰するダンパーを有する銅箔の連続電解めっき装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、銅箔に均一なめっき厚さ・表面状態を有する良好なめっきを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る銅箔の連続電解めっき装置におけるアノード板付近の構成を示す横断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る銅箔の連続電解めっき装置における主要部の概略構成を示す側面図である。
【図3】図2のアノード板付近の構成を拡大して示す横断面図である。
【図4】図3において銅箔が幅方向に蛇行したときの、銅箔に対する電流遮蔽板の追尾の状態を説明する横断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る銅箔の連続電解めっき装置における電流遮蔽板付近の構成を示す横断面図である。
【図6】図5の緩衝機構としてのダンパーを拡大して示す縦断面図である。
【図7】本発明の一実施形態で用いられる緩衝機構の他の例を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る銅箔の連続電解めっき装置の一実施形態を図面を用いて説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る連続電解めっき装置におけるアノード板付近の構成を示す横断面図である。
電解槽の電解液中に設置されたアノード板2の表面(電極面)2aに平行に、カソードとなる長尺な銅箔1が連続的に搬送される。銅箔1がアノード板2に対向しつつアノード板2の長手方向に搬送される間に銅箔1に電解めっきが施される。アノード板2の幅W2は、銅箔1の幅W1より広くなっており、幅広のアノード板2が銅箔1と対向する部分(幅W1の部分)よりも端部側に張り出したアノード板2の部分を覆うように、銅箔1の幅方向の両端部側には、電流遮蔽板3、3が設けられている。
【0016】
電流遮蔽板3は、銅箔1の幅方向の端部(エッジ部)に近接した外側から、アノード板2の表面2aに垂直な方向にアノード板2の表面2aに近接する位置まで延出する第1の電流遮蔽板3と、第1の電流遮蔽板3のアノード板2の表面2a近傍からほぼ直角に屈曲してアノード板2の表面2aに沿ってアノード板2の端部側に張り出された第2の電流遮蔽板3とから構成されている。本実施形態のL字状断面を有する板状材からなる電流遮蔽板3では、第1の電流遮蔽板3の銅箔1側の面が第1の電流遮蔽面3aを形成し、第2の電流遮蔽板3のアノード板2側の面が第2の電流遮蔽面3bを形成している。
【0017】
銅箔1とアノード板2との垂直距離はD1、第1の電流遮蔽面3aのアノード板2に垂直な方向の距離はD2、第2の電流遮蔽面3bのアノード板2に平行な方向の幅はW3、第1の電流遮蔽面3aと銅箔1端部との隙間はg1、第2の電流遮蔽面3bとアノード板2との隙間はg2である。第1の電流遮蔽面3aと銅箔1端部との隙間g1は、5mm程度が望ましい。銅箔1に余り近く電流遮蔽板3を設置すると銅箔1が電流遮蔽板3に接触する危険が生じ、離れ過ぎると電流遮蔽の効果が低くなる。第2の電流遮蔽面3bとアノード板2との隙間g2は、電流遮蔽の効果を高めるために、接触等しない程度に出来るだけ小さくするのがよい。第2の電流遮蔽面3bの幅W3は、銅箔1より幅広いアノード板2の銅箔1と対峙しない部分を遮蔽できる長さを有する。
電流遮蔽板3の材質は、導電性のない物質ならばよく、例えば、ポリ塩化ビニルやポリプロピレン、ベークライト、ガラス・エポキシ(FR−4)などの安価なプラスチック類などが使用可能である。
【0018】
このような構造の電流遮蔽板3を設置することにより、銅箔1とアノード板2との間の電流は銅箔1に垂直な方向に且つ均一な密度で分布し、銅箔1端部には電流が回り込みにくくなり、めっきの均一性が向上する。また、銅箔1がその幅方向に多少変動しても、銅箔1端部におけるめっき均一性を維持できる。
なお、電流遮蔽板3は、本実施形態のようにL字の板状断面ではなく、第1の電流遮蔽面3a及び第2の電流遮蔽面3bを有していれば、例えば、三角形断面や矩形断面のものでもよい。
【0019】
(第2の実施形態)
この第2の実施形態の連続電解めっき装置は、銅箔の幅方向への蛇行に追従して電流遮蔽板を移動させる追尾機能を持たせたものである。
図2に、第2の実施形態に係る連続電解めっき装置における主要部の概略構成の側面図を示す。また、図3に、図2のアノード板付近の構成を拡大した横断面図を示す。
【0020】
この第2の実施形態の連続電解めっき装置は、図2に示すように、縦型のものであり、
銅箔1はガイドロール4、4間に架け渡されて電解槽内の電解液L中を垂直に上下して搬送される。電解液L中を垂直に下降する銅箔1と、電解液L中のガイドロール4で反転されて垂直に上昇する銅箔1とに対して、電解めっきを施すためのアノード板2がそれぞれ設置されている。アノード板2に面する銅箔1部分の幅方向の両端部側には、電流遮蔽板3が設けられている。電流遮蔽板3は、上記第1の実施形態の電流遮蔽板3と同様に、第1の電流遮蔽板3と第2の電流遮蔽板3とから構成されるL字状断面のものである。電流遮蔽板3の第1の電流遮蔽板3には、電流遮蔽板3を銅箔1の幅方向に移動させるロッド5が連結されている。
【0021】
ロッド5は、図3に示すように、銅箔1の幅方向の外方へ延び電解槽本体9を貫通して設けられており、ロッド5は、ロッド5を進退させて電流遮蔽板3の銅箔1幅方向の位置を制御する駆動装置6に連結されている。電解槽内の電解液L中に搬入される前の銅箔1に対し、その幅方向の端部位置を検出する検出器8が設けられている。駆動装置6には検出器8からの銅箔端部の検出信号7が入力され、駆動装置6は、検出信号7に基づいて、銅箔1の幅方向の位置変動に追従させて電流遮蔽板3の移動を制御する。
【0022】
めっき処理の実操業時には、銅箔1はその幅方向に位置の変動を起こし、搬送される銅箔1には蛇行が発生する。銅箔1の幅方向の位置変動は検出器8で検出され、検出器8の検出信号7に基づき、駆動装置6はロッド5を進退させて、銅箔1が蛇行しても常に銅箔1の端部に近接した外側に電流遮蔽板3が位置するように、電流遮蔽板3を移動制御する。図4は、銅箔1が蛇行して図面の右方向に位置変動した時の状態を示すもので、この時には、図面の右側のロッド5を右方向に退出させると共に、左側のロッド5を右方向に進出させる。
【0023】
このように、本実施形態では、銅箔1の搬送で蛇行が生じても、常に銅箔1と電流遮蔽板3との位置関係を一定にし電流遮蔽の効果を保持できるので、銅箔1の幅方向および長手方向において、めっき膜厚やめっき表面状態(表面粗さなど)の均一性が良好なめっきを銅箔に形成できる。したがって、めっき後の銅箔両端部の切除を不要に、或いは切除幅を低減でき、製品の歩留まりを向上することができる。
【0024】
本実施形態では、図1に示す電流遮蔽板3の銅箔幅方向の幅W3は、(アノード板2の幅W2−銅箔1の幅W1)/2+銅箔1の蛇行振幅/2の値以上とするのが望ましい。これは、搬送中に銅箔1が蛇行しても、アノード板2の一方の端部に電流遮蔽板3によって遮蔽されない部分が生じないようにするためである。しかしながら、電流遮蔽板3の幅W3を不必要に大きくすると、電解液の攪拌を妨害する恐れがでてくるため、電流遮蔽板3の幅W3を大きくし過ぎないようにする。
【0025】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の連続電解めっき装置は、上記第2の実施形態の連続電解めっき装置において、電流遮蔽板を伸縮可能な緩衝機構を介して電解槽に連結した構造を更に追加したものである。
図5に、第3の実施形態に係る連続電解めっき装置における電流遮蔽板付近の横断面図を示す。また、図6に、図5のダンパーを拡大した縦断面図を示す。
【0026】
図5に示すように、電流遮蔽板3には、電流遮蔽板3を銅箔1の幅方向に移動するためのロッド5及び駆動装置6が接続されると共に、電流遮蔽板3と電解槽本体9との間は、電流遮蔽板3の移動に伴って伸縮可能な緩衝機構として、ダンパー10が設けられている。
ダンパー10は、例えば、図6に示すような、外筒12と内筒13とが同心配置された二重構造の複筒式のものが用いられる。ピストンロッド11先端に連結されたピストン1
2は、内筒13内を摺動する。ピストン12には、ポートを有するピストンバルブ15が設けられている。また、ピストンロッド11とは反対側の内筒13端部には、ベースバルブ16が設けられている。ピストンロッド11が内筒13内に進入してダンパー10が縮む方向にピストン12が移動する時には、内筒13内の電解液Lが外筒12と内筒13との間の隙間に流入し、逆に、ピストンロッド11が内筒13から退出してダンパー10が延びる方向にピストン12が移動する時には、外筒12と内筒13との間の隙間の電解液Lが内筒13内に流入する。ピストンバルブ15及びベースバルブ16を通過する際の電解液Lの抵抗が、ダンパー10の主な減衰力となる。
【0027】
本実施形態では、銅箔10の蛇行に追従させて電流遮蔽板3を移動させると、電流遮蔽板3の移動に応じてダンパー10が伸縮し、このときのダンパー10の減衰力により、電解槽内の電解液Lの攪拌の影響で電流遮蔽板3が不規則に振動することを防ぐことができる。
【0028】
なお、ダンパーは、複筒式のものに限らず、一つの筒からなり、筒内をピストンロッド先端に連結されたピストンが摺動する一重構造の単筒式のものを用いてもよい。また、筒内には、電解液Lに代えてオイルなどを充填してもよい。また、例えば、単筒式ダンパーの筒の両端部側の側壁などに開口(オリフィス)を形成して、ピストンの摺動により、電解槽内の電解液が、ダンパーの筒内に出入する構造としてもよい。
【0029】
また、緩衝機構としては、ダンパーの他に、スプリングコイルやパンタグラフを適用することができる。更に、ダンパーとスプリングコイルを併用したりしてもよい。パンタグラフは、コイルばね等の力によって電流遮蔽板の移動を伸縮自在に支持する関節構造を有し、具体的には、図7(a)に示すような上枠21、下枠22、バネ23等を備えた菱形構造のパンタグラフ20や、図7(b)に示すような上枠31、下枠32、バネ33等を備えたシングルアーム型のパンタグラフ30などが挙げられる。
緩衝機構の材質は、電解液でダメージを受けなければ良く、塩化ビニルやポリプロピレンなどの安価なプラステックが使用できる。また、絶縁されていればTiなどの金属も使用可能である。
【0030】
なお、上記実施形態において、めっきがなされる銅箔1は、圧延銅箔、電解銅箔のいずれでもよい。また、上記第2の実施形態の連続電解めっき装置は、縦型のものであったが、本発明は、銅箔を水平方向に搬送する水平型(横型)の連続電解めっき装置にも勿論適用することができる。また、本発明の連続電解めっき装置における銅箔蛇行を追尾する電流遮蔽は、電解エッチングの電流遮蔽にも適用することが出来る。
【実施例】
【0031】
次に、本発明の実施例を説明する。
【0032】
(実施例1)
上記図1に示す第1の実施形態(L字状断面の電流遮蔽板を有するもの)に対応する連続電解めっき装置(実施例1−1)、および上記図2、図3に示す第2の実施形態(L字状断面の電流遮蔽板とその銅箔追尾機能を有するもの)に対応する連続電解めっき装置(実施例1−2)を用いて、厚さ12μm、幅600mmのタフピッテ銅箔を1000m、ライン速度は10m/分で、2段階の連続めっきを銅箔の片面に行った。第一めっきは粗化粒子を形成する目的で、第二めっきは粗化粒子の脱落を防ぐ目的でそれぞれ実施した(このめっきは、リチウムイオン二次電池の負極集電銅箔におけるめっき処理の例である)。また、比較例として、電流遮蔽板を用いない連続電解めっき装置でも同様に2段階の連続めっきを銅箔の片面に行った。ここでは、アノード板にはチタン板表面に酸化イリジウムをコートした不溶性アノードを用いた。アノード板と銅箔(カソード)と間の距離(図
1のD1)は50mmとした。なお、本めっき処理の前に、電解脱脂と電解エッチングを行った。
【0033】
主な工程の電解液組成とめっき条件は以下の通りとした。
電解脱脂:水酸化ナトリウム40g/L、炭酸ナトリウム20g/L、温度40℃、電流密度10A/dm
電解エッチング:硫酸50g/L、温度40℃、電流密度10A/dm
第一めっき:硫酸銅5水和物l00g/L、硫酸l00g/L、硫酸鉄7水和物20g/L、温度30℃、電流密度30A/dm
第二めっき:硫酸銅5水和物200g/L、硫酸l00g/L、温度30℃、電流密度5A/dm
【0034】
めっき処理の結果を表1、表2に示す。表1は、めっき厚さ(単位:μm)の結果を示すもので、めっき厚さは銅箔の所定位置をパンチで2cmに20枚打ち抜き、重量を測定して平均めっき膜厚に換算して求めた。表2はめっき表面状態として表面粗さRz(日本工業規格 JIS B0601−1994表面粗さにて規定されている十点平均粗さ、単位:μm)で評価した結果である。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
表1、表2に示すように、電流遮蔽板を用いない比較例では、銅箔の両端部(左端部と右端部)のめっき厚さが厚く、表面粗さRzも銅箔の両端部が大きくなったのに対し、電流遮蔽板を用いた実施例1−1では、めっき厚さ、表面粗さRzともに比較例よりも均一化された。しかし、実施例1−1は、電流遮蔽板を用いているものの銅箔の蛇行に追従し
ていないため、前端部(先頭部)では、ほぼ幅方向に均一なめっき厚さだったが、銅箔が蛇行によって幅方向に位置ずれした後端部(末尾部)では、左端部で電流遮蔽の効果がなくなり、めっき厚さ、表面粗さともに大きくなった。一方、電流遮蔽板とその銅箔追尾機能を有する実施例1−2では、幅方向、長手方向ともほぼ一定のめっき厚さ、表面粗さが得られた。
【0038】
(実施例2)
上記図5、図6に示す第3の実施形態(ダンパーを有するもの)に対応する連続電解めっき装置を用いて、緩衝効果を確認した。ダンパーによる緩衝作用・減衰作用を働かせた場合と、図6のベースバルブを開放して、動作抵抗を大きく低減した場合とで比較した。連続めっきを行いながら、電流遮蔽板の挙動を目視観察したところ、緩衝効果を働かせた場合は電流遮蔽板に不規則な振動は生じなかったが、緩衝効果を機能させなかった場合は、電解液の攪拌に伴うゆらぎ・振動が確認された。これより、緩衝機構の有効性が明らかとなった。
【0039】
(実施例3)
実施例1と同じ構成の実施例1−1、実施例1−2及び比較例の連続電解めっき装置を用いて、Niめっきを行った。アノード板としては、Tiバスケットに入れたNiチップを用いた。銅箔は厚さ12μm、幅600mmのタフピッテ銅箔であり、ライン速度はl0m/minである。
主な工程の電解液組成とめっき条件は以下の通りとした。
電解脱脂:水酸化ナトリウム40g/L、炭酸ナトリウム20g/L、温度40℃、電流密度10A/dm
酸洗:硫酸l00g/L、温度30℃、浸漬
Niめっき:硫酸ニッケル6水和物300g/L、塩化ニッケル6水和物45g/L、ホウ酸50g/L、界面活性剤、温度40℃、電流密度5A/dm
【0040】
めっき厚分布を表3に示した。ここでは、めっき厚(単位:μm)を蛍光X線膜厚計(エスアイアイ・ナノテクノロジー製SFT9500、コリメータ径φ0.2mm)で測定
した。表3に示すように、実施例3でも、実施例1と同様の結果となった。
【0041】
【表3】

【0042】
上記実施例は、リチウムイオン二次電池の負極集電銅箔におけるめっき処理を例としたが、粗化処理を必要とする他の製品、例えばポリイミドや液晶ポリマーとの密着性を上げるために粗化処理するフレキシブルプリント配線板用銅箔や、通常のめっきでも多層積層基板を製造する際にエッチングバリアとしてNi膜が用いられめっき厚制御が厳密なNiめっき銅箔などにも有効に適用できる。
【符号の説明】
【0043】
1 銅箔
2 アノード板
3 電流遮蔽板
3a 第1の電流遮蔽面
3b 第2の電流遮蔽面
4 ガイドロール
5 ロッド
6 駆動装置
7 検出信号
8 検出器
9 電解槽本体
10 ダンパー(緩衝機構)
20、30 パンタグラフ(緩衝機構)
L 電解液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解槽内に設置されたアノード板に対して平行にカソードとなる銅箔を連続的に搬送し、前記アノード板から前記銅箔への電流を遮断する電流遮蔽板を前記銅箔の幅方向の両端部側に設けて、前記銅箔に電解めっきを施す銅箔の連続電解めっき装置において、
前記アノード板の幅は、前記銅箔の幅より広く、かつ
前記電流遮蔽板は、前記銅箔の端部に近接した外側から前記アノード板表面に垂直な方向に前記アノード板の表面に近接する位置まで延出する第1の電流遮蔽面と、前記第1の電流遮蔽面に接続され、前記第1の電流遮蔽面の前記アノード板の表面近傍から屈曲して前記アノード板の表面に沿って前記アノード板の端部側に張り出された第2の電流遮蔽面とを有することを特徴とする銅箔の連続電解めっき装置。
【請求項2】
前記電解槽に搬入される前記銅箔の幅方向の端部位置を検出する検出器を設け、前記検出器の検出信号に基づき、前記銅箔の幅方向の位置変動に追従して前記電流遮蔽板を前記銅箔の幅方向に移動させる駆動装置を設けたこと特徴とする請求項1記載の銅箔の連続電解めっき装置。
【請求項3】
前記電流遮蔽板は、伸縮可能な緩衝機構を介して前記電解槽に連結されていることを特徴とする請求項1または2記載の銅箔の連続電解めっき装置。
【請求項4】
前記緩衝機構は、前記電流遮蔽板の振動を減衰するダンパーを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の銅箔の連続電解めっき装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−74405(P2011−74405A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223589(P2009−223589)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】