説明

鋳型DNAの複製、増幅および配列決定方法

本発明は、バイオテクノロジーの分野に関する。特に、本発明は、φ29DNAポリメラーゼによるデオキシリボ核酸の複製、増幅および配列決定を実施するための方法に関する。前記方法によれば、前記ポリメラーゼは、濃度0.003〜0.01%のモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ツイーン20)と、他の成分として特に、30〜60mMの硫酸アンモニウム、60〜120mMの塩化アンモニウムまたは酢酸アンモニウムであることができるアンモニウム塩とを含む反応混合物中でインキュベートされる。本発明はまた、前記方法を実施するためのキットにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジーの分野に含まれる。特に、本発明は、φ29DNAポリメラーゼによるデオキシリボ核酸の複製、増幅および配列決定方法ならびに前記方法を実施するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
バクテリオファージφ29がそのゲノムを複製するのに必要な唯一の酵素は、複製の開始および合成鎖の伸長を触媒できる66KDaの単量体タンパク質であるそのDNAポリメラーゼである。開始のために、このポリメラーゼは“末端(terminal)”として知られるタンパク質(TP)に結合し、φ29DNAの末端を認識し、TP-dAMP共有結合複合体の形成を触媒する。10ヌクレオチドの重合後、DNAポリメラーゼ/TPヘテロ二量体は分離し、DNA由来の鎖の伸長が行われる。
【0003】
複製型DNAポリメラーゼは、酵素とDNAとの結合を安定化するアクセサリータンパク質との相互作用を必要とする(Kuriyan and O'Donnell. J Mol Biol. 1993; 234: 915-925)。他方では、前記DNAポリメラーゼは、コピーされていないDNA鎖の分離と重合とをカップリングする必要があるが、そのためにはヘリカーゼ型タンパク質へのDNA鎖の機能的会合を必要とする。この意味で、バクテリオファージφ29のDNAポリメラーゼは、種々の固有の機能的特徴を有し、そのことがこのDNAポリメラーゼを独特のものにしている:
a)高いプロセッシビティー(結合事象により組み込まれるヌクレオチド数と定義される)。
b)ヘリカーゼ型アクセサリータンパク質の非存在下で前記バクテリオファージのゲノムの複製を可能にする高い鎖分離能。これら2つの特性、プロセッシビティーおよび鎖分離によって、長さ70kbを超えるDNA鎖も合成しうることをこのφ29DNAポリメラーゼに可能ならしめている(Blanco et al. J Biol Chem. 1989; 264: 8935-8940)。
c)新しい鎖へのヌクレオチドの挿入の高い正確さ(Esteban et al. J Biol Chem. 1993; 268: 2719-2726)。
【0004】
これらすべての特性は、このポリメラーゼの使用に基づく、二本鎖DNA(dsDNA)を増幅するための多種多様の等温法(一定温度での)プロトコルの開発につながった。単純構成において、環状一本鎖DNA(ssDNA)を使用するφ29DNAポリメラーゼの能力によって、際立った長さを有し、10コピーを超える環状鋳型を含むssDNA分子を生成するローリングサークル法(またはRCA-ローリングサークル増幅)によるDNAの合成が可能となる(Blanco et al. J Biol Chem. 1989; 264: 8935-8940;米国特許第5001050号、米国特許第5198543号および米国特許第5576204号)。Amersham Biosciences社/Molecular Staging社によって開発されたdsDNA増幅法(Dean et al. Genome Res. 2001; 11: 1095-1099; Dean et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2002; 99: 5261-5266)において、φ29DNAポリメラーゼの使用とヘキサマー(ヘキサヌクレオチド)ランダム配列プライマーとの組み合わせによって、ピコグラムの環状プラスミドDNA[GE Healthcare社のTempliphi(登録商標)]または10ナノグラムのゲノムDNA[GE Healthcare社のGenomiphi(登録商標)およびQiagen社のRepli-G(登録商標)]から出発して104〜106の増幅率を得ることが可能になる。生成された生成物は高品質であり、前精製を必要とせずに、消化または直接に配列決定することができ、φ29DNAポリメラーゼが、この目的のための最もロバストな酵素であることが明らかにされている。φ29DNAポリメラーゼを用いる増幅反応を実施するための一般的な緩衝液は、トリス-HCl(pH7.5)に加えて種々の濃度の(ミリモルオーダーの)NaClまたはKClおよびMgCl2(米国特許第20030207267号)を含む。しかしながら、様々な状況におけるこれらのプロトコルの満足度にかかわらず、より少ないDNA量から出発することを可能にする他のプロトコルの開発の必要性が高まっている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、φ29DNAポリメラーゼによるデオキシリボ核酸の複製、増幅および配列決定方法ならびに前記方法を実施するためのキットに関する。
【0006】
ファージφ29DNAポリメラーゼは、DNAを増幅するための大変興味深いいくつかの特性、例えば、アクセサリータンパク質の関与の必要のない高いプロセッシビティーおよびDNAに対する単一の結合事象において前記バクテリオファージのゲノムの複製を可能にする高い鎖分離能に加えて、新しい鎖へのヌクレオチドの挿入における高い正確さを有する。これらの特性は、このポリメラーゼの使用に基づく、前精製を必要とせずに消化または直接に配列決定することができる高品質の生成物の生成を可能にする、DNAの等温増幅のための種々のプロトコルの開発につながった。しかしながら、より少ない量のDNAからのDNAの増幅を可能にするプロトコルが求められている。本発明は、この反応の特異性および収率を有意に改善するDNAの増幅方法を開発することによって、この必要性に応える。
【0007】
本特許の実施例において、φ29DNAポリメラーゼによる増幅のために一般的に用いられる緩衝液にモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ツイーン(登録商標)20)(Tween(登録商標)20)およびアンモニウム塩を同時添加することによって、一方では、非特異的DNA増幅が抑制され、他方では、鋳型としてのプラスミドDNA 0.1フェムトグラム(fg)およびゲノムDNA 10fgというわずかな量からの検出可能かつ特異的な増幅が可能になることが示されている。
【0008】
本発明の第1の側面は、鋳型DNAの複製、増幅および配列決定方法であって、前記DNAと、少なくとも:
a)φ29DNAポリメラーゼ、
b)モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、
c)アンモニウム塩、
d)緩衝液、
e)塩化マグネシウム、
f)プライマーおよび
g)ヌクレオシド三リン酸
を含む反応混合物とを接触させることを含む前記方法に関する。
【0009】
本発明のこの側面の好ましい実施形態は、鋳型DNAの複製、増幅および配列決定方法であって、前述の成分(a)〜(g)を含み、カリウム塩をさらに含む反応混合物と前記DNAとを接触させることを含む前記方法に関する。好ましくは、前記カリウム塩は塩化カリウムまたは酢酸カリウムである。
【0010】
本明細書においては、用語“DNAポリメラーゼ”は、デオキシヌクレオシド三リン酸の重合を触媒することができる酵素に関する。一般に、この酵素は、鋳型DNA配列にハイブリダイズしたプライマーの3´末端において合成を開始し、鋳型DNA鎖の5´末端の方へ進む。
【0011】
本発明においては、用語“φ29DNAポリメラーゼ”は、その重合ドメインに、プロセッシブ重合と鎖分離とをカップリングする能力をこのポリメラーゼに付与するTPR1およびTPR2サブドメインを含む任意のDNAポリメラーゼに関する。本発明に使用することができるφ29DNAポリメラーゼの例は、以下のファージ:φ29、Cp-1、PRD-1、φ15、φ21、PZE、PZA、Nf、M2Y、B103、GA-1、SF5、Cp-5、Cp-7、PR4、PR5、PR722、L17、またはアキディアヌス瓶状ウイルス(Acidianus Bottle-shaped virus)(ABV)から単離されたDNAポリメラーゼを含むリストから選択される。
【0012】
本発明の複製、増幅および配列決定方法の好ましい実施形態において、φ29DNAポリメラーゼは、以下のファージ:φ29、Cp-1、PRD-1、φ15、φ21、PZE、PZA、Nf、M2Y、B103、GA-1、SF5、Cp-5、Cp-7、PR4、PR5、PR722、L17またはアキディアヌス瓶状ウイルス(ABV)から単離されたDNAポリメラーゼから選択される。
【0013】
本発明の複製、増幅および配列決定方法の好ましい実施形態において、φ29DNAポリメラーゼは、配列番号1に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。より好ましい実施形態において、φ29DNAポリメラーゼは、配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。よりさらに好ましい実施形態において、φ29DNAポリメラーゼは配列番号1のアミノ酸配列を有する。
【0014】
φ29DNAポリメラーゼのエキソヌクレアーゼドメインは公知であり、高いプロセッシビティーおよび鎖分離能を保持したままエキソヌクレアーゼ活性が低下するように改変されることができる。これらの改変DNAポリメラーゼは、大分子を配列決定するのに特に有用である。
【0015】
本発明の複製、増幅および配列決定方法の好ましい実施形態において、φ29DNAポリメラーゼはエキソヌクレアーゼドメインに改変を有し、ここで前記改変DNAポリメラーゼは、天然に存在する対応するDNAポリメラーゼすなわち“野生型”に対して10%未満のエキソヌクレアーゼ活性を有する。より好ましい実施形態において、改変φ29DNAポリメラーゼは、天然に存在する対応するDNAポリメラーゼに対して1%未満のエキソヌクレアーゼ活性を有する。よりさらに好ましい実施形態において、改変φ29DNAポリメラーゼは、天然に存在する対応するDNAポリメラーゼに対して検出可能なエキソヌクレアーゼ活性を有さない。
【0016】
本発明の複製、増幅および配列決定方法の好ましい実施形態において、φ29DNAポリメラーゼ(エキソヌクレアーゼドメインが天然または改変の)の濃度は5nM〜75nMである。より好ましい実施形態において、φ29DNAポリメラーゼ(エキソヌクレアーゼドメインが天然または改変の)の濃度は25nM〜60nMである。よりさらに好ましい実施形態において、φ29DNAポリメラーゼ(エキソヌクレアーゼドメインが天然または改変の)の濃度はおおよそ50nMである。
【0017】
本発明の複製、増幅および配列決定方法の好ましい実施形態において、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ツイーン(登録商標)20)の濃度は反応物の全容量(total volume)の0.003%〜0.1%である。より好ましい実施形態において、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンの割合は反応物の全容量の0.006%〜0.05%である。よりさらに好ましい実施形態において、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンの割合は反応物の全容量の0.01%〜0.03%である。よりさらに好ましい実施形態において、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンの割合は、反応物の全容量のおおよそ0.025%である。“反応物の全容量”は、反応混合物への鋳型DNAの添加後に得られた容量(volulme)として理解される。
【0018】
本発明の複製、増幅および配列決定方法の好ましい実施形態において、アンモニウム塩は、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウムまたは酢酸アンモニウムを含むリストから選択される。
【0019】
本発明の複製、増幅および配列決定方法の好ましい実施形態において、アンモニウム塩は硫酸アンモニウムである。より好ましい実施形態において、硫酸アンモニウムの濃度は30mM〜60mMである。よりさらに好ましい実施形態において、硫酸アンモニウムの濃度は40mM〜50mMである。よりさらに好ましい実施形態において、硫酸アンモニウムの濃度はおおよそ45mMである。
【0020】
本発明の複製、増幅および配列決定方法の好ましい実施形態において、アンモニウム塩は塩化アンモニウムである。より好ましい実施形態において、塩化アンモニウムの濃度は60mM〜120mMである。よりさらに好ましい実施形態において、塩化アンモニウムの濃度は80mM〜100mMである。よりさらに好ましい実施形態において、塩化アンモニウムの濃度はおおよそ90mMである。
【0021】
本発明の複製、増幅および配列決定方法の好ましい実施形態において、アンモニウム塩は酢酸アンモニウムである。より好ましい実施形態において、酢酸アンモニウムの濃度は60mM〜120mMである。よりさらに好ましい実施形態において、酢酸アンモニウムの濃度は80mM〜100mMである。よりさらに好ましい実施形態において、酢酸アンモニウムの濃度はおおよそ90mMである。
【0022】
本発明の複製、増幅および配列決定方法の好ましい実施形態において、緩衝液のpHは7.0〜8.5である。より好ましい実施形態において、緩衝液のpHは7.2〜8である。よりさらに好ましい実施形態において、緩衝液のpHはおおよそ7.5である。
【0023】
本発明の複製、増幅および配列決定方法の好ましい実施形態において、緩衝液はトリス-塩酸、トリス-酢酸またはHEPESである。本発明の複製、増幅または配列決定方法のより好ましい実施形態において、トリス-塩酸、トリス-酢酸またはHEPES緩衝液のpHは7.0〜8.5である。よりさらに好ましい実施形態において、トリス-塩酸、トリス-酢酸またはHEPES緩衝液のpHは7.2〜8である。よりさらに好ましい実施形態において、トリス-塩酸、トリス-酢酸またはHEPES緩衝液のpHはおおよそ7.5である。
【0024】
本発明の複製、増幅または配列決定方法のこの側面の好ましい実施形態において、トリス-塩酸、トリス-酢酸またはHEPES緩衝液の濃度は25mM〜50mMである。より好ましい実施形態において、トリス-塩酸、トリス-酢酸またはHEPES緩衝液の濃度は30mM〜45mMである。よりさらに好ましい実施形態において、トリス-塩酸、トリス-酢酸またはHEPES緩衝液の濃度はおおよそ40mMである。
【0025】
本発明の複製、増幅および配列決定方法の好ましい実施形態において、塩化カリウムまたは酢酸カリウムの濃度は30mM〜70mMである。より好ましい実施形態において、塩化カリウムまたは酢酸カリウムの濃度は40mM〜60mMである。よりさらに好ましい実施形態において、塩化カリウムまたは酢酸カリウムの濃度はおおよそ50mMである。
【0026】
本発明の複製、増幅および配列決定方法の好ましい実施形態において、塩化マグネシウムの濃度は2mM〜20mMである。より好ましい実施形態において、塩化マグネシウムの濃度は5mM〜15mMである。よりさらに好ましい実施形態において、塩化マグネシウムはおおよそ10mMである。
【0027】
本発明の複製、増幅および配列決定方法の好ましい実施形態において、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンの割合は全容量の0.01%〜0.03%であり、硫酸アンモニウムの濃度は40mM〜50mMであり、トリス-塩酸、トリス-酢酸またはHEPES緩衝液の濃度は30mM〜45mMであり、そのpHは7.2〜8.0であり、塩化マグネシウムの濃度は5mM〜15mMであり、塩化カリウムまたは酢酸カリウムの濃度は40mM〜60mMである。
【0028】
本発明の複製、増幅および配列決定方法の好ましい実施形態において、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンの濃度は全容量の0.025%であり、硫酸アンモニウムの濃度は45mMであり、トリス-塩酸、トリス-酢酸またはHEPES緩衝液の濃度は40mMであり、そのpHは7.5であり、塩化マグネシウムの濃度は10mMであり、塩化カリウムまたは酢酸カリウムの濃度は50mMである。
【0029】
本発明の複製、増幅および配列決定方法の好ましい実施形態において、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンの割合は全容量の0.01%〜0.03%であり、塩化アンモニウムの濃度は80mM〜100mMであり、トリス-塩酸、トリス-酢酸またはHEPES緩衝液の濃度は30mM〜45mMでり、そのpHは7.2〜8.0であり、塩化マグネシウムの濃度は5mM〜15mMであり、塩化カリウムまたは酢酸カリウムの濃度は40mM〜60mMである。
【0030】
本発明の複製、増幅または配列決定方法のより好ましい実施形態において、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンの濃度は全容量の0.025%であり、塩化アンモニウムの濃度は90mMであり、トリス-塩酸、トリス-酢酸またはHEPES緩衝液の濃度は40mMであり、そのpHは7.5であり、塩化マグネシウムの濃度は10mMであり、塩化カリウムまたは酢酸カリウムの濃度は50mMである。
【0031】
本発明の複製、増幅および配列決定方法の好ましい実施形態において、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンの割合は全容量の0.01%〜0.03%であり、酢酸アンモニウムの濃度は80mM〜100mMであり、トリス-塩酸、トリス-酢酸またはHEPES緩衝液の濃度は30mM〜45mMであり、そのpHは7.2〜8.0であり、塩化マグネシウムの濃度は5mM〜15mMであり、塩化カリウムまたは酢酸カリウムの濃度は40mM〜60mMである。
【0032】
本発明の複製、増幅または配列決定方法のより好ましい実施形態において、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンの濃度は全容量の0.025%であり、酢酸アンモニウムの濃度は90mMであり、トリス-塩酸、トリス-酢酸またはHEPES緩衝液の濃度は40mMであり、そのpHは7.5であり、塩化マグネシウムの濃度は10mMであり、塩化カリウムまたは酢酸カリウムの濃度は50mMである。
【0033】
本明細書においては、用語“複製”は、鋳型DNAからの相補的DNAの合成に関する。
【0034】
本明細書においては、用語“増幅”は、鋳型DNAのコピー数の増加に関する。
【0035】
本明細書においては、用語“配列決定”は、鋳型DNAヌクレオチドの順序の決定に関する。
【0036】
“接触させること”は、鋳型DNAおよび反応混合物をプライマー伸長条件下でインキュベートするという事として理解される。
【0037】
本明細書において、用語“プライマー”は、それがプライマー伸長条件下にあるとき、DNA合成の開始点として作用することができるオリゴヌクレオチドに関する。好ましくは、プライマーはデオキシリボースオリゴヌクレオチドである。
【0038】
プライマーは、例えば、限定するものではないが、直接化学合成を含む任意の適切な方法で製造できる。プライマーは、鋳型DNAにおける特定のデオキシヌクレオチド配列とハイブリダイズするように設計することもできるし(特異的プライマー)、無作為に合成することもできる(任意プライマー)。
【0039】
本明細書においては、用語“特異的プライマー”は、増幅される鋳型DNAにおける特定のデオキシヌクレオチド配列に相補的な配列であるプライマーに関する。
【0040】
“相補的”とは、プライマーが鋳型DNAのある領域にハイブリダイズすることができ、それによって、それがプライマー伸長条件下にあるとき、DNA合成の開始点として機能することができることとして理解される。好ましくは、プライマーの領域は、鋳型DNAの領域に100%の相補性を示す。すなわち、プライマーに相補性を示す領域における各ヌクレオチドは、一本鎖鋳型に存在するヌクレオチドと水素結合を形成することができる。しかしながら、鋳型DNAに100%未満の相補性を示す領域を有するプライマーは、本発明の複製、増幅または配列決定方法を実施する機能を果たすことは、当業者には明らかであろう。
【0041】
用語“任意プライマー”は、無作為に合成され、鋳型DNAのランダムな位置でDNA合成を開始するために使用される配列であるプライマーに関する。一般に、本発明の複製、増幅または配列決定方法において、任意プライマーの集団が用いられる。用語“任意プライマー”は、ランダム配列を有し、鋳型DNAのランダムな位置でDNA合成を開始するために用いられる1組のプライマーに関する。
【0042】
本発明の複製、増幅および配列決定方法の好ましい実施形態において、プライマーは特異的である。
【0043】
本発明の複製、増幅または配列決定方法の他の好ましい実施形態において、プライマーは任意である。好ましくは、任意プライマーは、3´-5´エキソヌクレアーゼの作用に対して保護されている。より好ましくは、任意プライマーは、3´-5´エキソヌクレアーゼの作用に対して保護されている6ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドである“ヘキサヌクレオチド”すなわち“ヘキサマー”である。
【0044】
本明細書においては、語句“エキソヌクレアーゼの作用から保護されている”は、DNAポリメラーゼにおいて存在する任意の3´-5´エキソヌクレアーゼ活性による核酸分解に耐性を示すような改変プライマーに関する。
【0045】
本発明の複製、増幅または配列決定方法において、特異的および/または任意プライマーに使用することができる2以上のプライマーを使用することができる。
【0046】
本発明の複製、増幅および配列決定方法の好ましい実施形態において、プライマーの濃度は2μM〜100μMである。より好ましい実施形態において、プライマーの濃度は20μM〜80μMである。よりさらに好ましい実施形態において、プライマーの濃度は40μm〜60μMである。よりさらに好ましい実施形態において、プライマーの濃度はおおよそ50μMである。
【0047】
本明細書においては、用語“ヌクレオシド三リン酸”は、ペントース、窒素塩基および3つのリン酸基の共有結合によって形成される有機分子に関する。
【0048】
用語ヌクレオシド三リン酸は、デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)、例えば、限定するものではないがdATP、dCTP、dITP、dUTP、dGTP、dTTP、またはそれらの誘導体を含む。好ましくは、デオキシヌクレオシド三リン酸はdATP、dTTP、dGTPおよびdCTPである。よりさらに好ましくは、これら4つのdNTPは等モル条件下にある。本発明のこの側面の好ましい実施形態において、デオキシヌクレオシド三リン酸の濃度は100μM〜800μMである。より好ましい実施形態において、デオキシヌクレオシド三リン酸の濃度は200μM〜600μMである。よりさらに好ましい実施形態において、デオキシヌクレオシド三リン酸の濃度はおおよそ500μMである。
【0049】
用語ヌクレオシド三リン酸はまた、ジデオキシヌクレオシド三リン酸(ddNTP)、例えば、限定するものではないが、ddATP、ddCTP、ddITP、ddUTP、ddGTP、ddTTP、またはそれらの誘導体も含む。
【0050】
本発明の複製、増幅または配列決定方法のいくつかの好ましい実施形態において、当業者に公知の技術によって、少なくとも1つのヌクレオシド三リン酸または1つのプライマーが標識される。標識されるヌクレオチドは、例えば、デオキシヌクレオシド三リン酸またはジデオキシヌクレオシド三リン酸であることができる。検出可能な標識は、例えば、放射性同位体、蛍光標識、化学発光標識、生物発光標識または酵素標識を含む。
【0051】
本明細書においては、用語“鋳型DNA”は、相補的DNA鎖合成のための支持体として役立つことができるDNA分子に関する。すなわち、それは、複製され、増幅され、配列決定されるDNA分子に関する。好ましい実施形態において、鋳型DNAはプラスミドDNAである。他の好ましい実施形態において、鋳型DNAはゲノムDNAである。
【0052】
鋳型DNAの複製、増幅または配列決定は、プライマー伸長条件下で行われる。語句“プライマー伸長条件”は、プライマーにおいて開始される鋳型DNA依存性合成が行われうる条件のことを言う。
【0053】
本発明の複製、増幅または配列決定方法による鋳型DNA合成は、熱サイクル法によって、または本質的に一定温度で行うことができる。
【0054】
“等温条件”は、本質的に一定温度として理解される。好ましくは、本発明の複製、増幅または配列決定方法による鋳型DNA合成は本質的に一定温度で行われる。より好ましくは、本質的に一定温度25〜40℃で行われ、よりさらに好ましくは、おおよそ30℃で行われる。
【0055】
現在の技術水準において、DNA増幅を可能にする多数の方法が公知である。熱サイクル法、例えば限定するものではないがポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を必要とする方法もある。熱サイクル法を必要としないで、本質的に一定温度で行われる方法、例えば、限定するものではないが、ローリングサークル増幅(RCA)、多重分離増幅(multiple detachment amplification)(MDA)、鎖置換増幅(SDA)またはループ媒介性増幅(LAMP)もある。本発明の方法による鋳型DNAの増幅は、熱サイクル法によって、または本質的に一定温度で行うことができる。
【0056】
好ましくは、本発明の増幅方法による鋳型DNAの増幅は、ローリングサークル増幅(RCA)、多重分離増幅(MDA)、鎖置換増幅(SDA)またはループ媒介性増幅(LAMPA)によって行われる。
【0057】
本発明の他の側面は、本発明の複製、増幅または配列決定方法を実施するのに適した成分を含むキットまたは装置に関する。
【0058】
本発明の他の側面は、
a)φ29DNAポリメラーゼ、
b)モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、
c)アンモニウム塩、
d)緩衝液および
e)塩化マグネシウム
を含む、本発明の複製、増幅または配列決定方法を実施するためのキットに関する。
【0059】
好ましくは、前記アンモニウム塩は、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウムまたは酢酸アンモニウムを含むリストから選択される。
【0060】
本発明のこの側面の好ましい実施形態において、キットはさらにカリウム塩を含む。好ましくは、前記カリウム塩は塩化カリウムまたは酢酸カリウムである。
【0061】
本発明のこの側面の好ましい実施形態において、キットはさらにプライマーを含む。より好ましい実施形態において、プライマーは、3´-5´エキソヌクレアーゼの作用に対して保護されている任意プライマーである。
【0062】
本発明のこの側面の好ましい実施形態において、キットはさらにヌクレオシド三リン酸を含む。例えば、本発明のこの側面のより好ましい実施形態において、キットはさらにデオキシヌクレオシド三リン酸および/またはジデオキシヌクレオシド三リン酸を含む。
【0063】
本発明のこの側面の好ましい実施形態において、キットは、少なくとも1つのヌクレオシド三リン酸または1つの標識されたプライマーを含む。標識されたヌクレオシドは、例えば、デオキシヌクレオシド三リン酸またはジデオキシヌクレオシド三リン酸であることができる。
【0064】
限定するものではないが、キットはさらに、緩衝液、汚染防止剤などを含むことができる。他方では、キットは、それを実用に供し、それを最適化するために必要なすべての支持物および容器を含むことができる。好ましくは、キットはさらに、本発明の方法を実施するための使用説明書を含む。
【0065】
明細書および特許請求の範囲を通じて、用語"含む"およびその異形は、他の技術的特徴、添加剤、成分または段階を排除するものではない。当業者には、本発明の他の目的、利点および特徴は、一部分において明細書から、一部分において発明の実施から考えられるであろう。以下の図面および実施例は例示として提供されるものであって、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】φ29DNAポリメラーゼの増幅能におけるツイーン(登録商標)20および(NH4)2SO4の効果を示す図である。本アッセイは、表示された量のプラスミドDNA(4.2kpb)の存在下で、本文に記載されているようにして行った。30℃で5時間インキュベートした後、反応物を本文に記載されているようにして分析した。左は、DNA長さマーカーとして用いた、φ29DNAをHindIIIで消化した後に得た直線状DNAフラグメントである。
【図2】ツイーン(登録商標)20および(NH4)2SO4の存在下での、φ29DNAポリメラーゼによる、種々の量のプラスミドDNA(フェムトグラムオーダー)の増幅を示す図である。本アッセイは、0.025%ツイーン(登録商標)20および45mM (NH4)2SO4の存在下で、本文に記載されているようにして行った。DNA長さマーカーは、図1で用いたものと同じである。
【図3】φ29DNAポリメラーゼの増幅能におけるNH4+イオンの効果を示す図である。本アッセイは、0.025%ツイーン(登録商標)20および表示されたアンモニウム塩に加えて、表示された量のプラスミドDNA(4.2kpb)の存在下で、本文に記載されているようにして行った。30℃で6時間インキュベートした後、本文に記載されているようにして反応物を分析した。DNA長さマーカーは、図1で用いたものと同じである。
【図4】ツイーン(登録商標)20および(NH4)2SO4の存在下での、φ29DNAポリメラーゼによる、種々の量のバシラス・ズブチリス(Bacillus subtilis)ゲノムDNAの増幅を示す図である。本アッセイは、0.025%ツイーン(登録商標)20および45mM (NH4)2SO4の存在下で、本文に記載されているようにして行った。DNA長さマーカーは、図1で用いたものと同じである。
【図5】現行の反応緩衝液である、φ29DNAポリメラーゼに基づくDNAの増幅のための市販キット(General Electrics Healthcare社のIllustraキット)に0.025%ツイーン(登録商標)20および45mM (NH4)2SO4を添加することによって示された著明改善を示す図である。本アッセイは、本文に記載されているようにして行った。DNA長さマーカーは、図1で用いたものと同じである。
【実施例】
【0067】
φ29DNAポリメラーゼによる、多重プライマーを用いるDNA増幅のための実験条件の最適化
本特許文献に示される以下の特定の実施例は、本発明の性質を例示するのに役立つ。これらの実施例は、説明目的のためだけに含まれるものであって、特許請求される本発明を制限するものと解釈してはならない。従って、下記の実施例は、本発明を例示するものであって、その応用分野を限定するものではない。
【0068】
φ29DNAポリメラーゼは、環状DNA数ピコグラムから出発して、104〜106倍増幅することが明らかにされた。この目的のために、40mMトリス-HCl(pH7.5)、50mM KClおよび10mM MgCl2を含む反応緩衝液(以後、緩衝液A)が用いられた。φ29DNAポリメラーゼのDNA増幅能に対する種々の界面活性剤および塩の条件の影響を試験したところ、緩衝液Aに0.025%ツイーン(登録商標)20および45mM (NH4)2SO4を同時添加することによって、わずかな量の添加DNAであっても増幅が顕著に改善されることが見いだされた。
【0069】
プラスミドDNAを増幅するための反応条件。インキュベーション混合物には、緩衝液A 12.5μl、3´-5´エキソヌクレアーゼの作用に対して保護されたヘキサマー50μM、各デオキシヌクレオシド三リン酸(dCTP、dGTP、dTTPおよびdATP)500μM、表示された量のプラスミドDNA(サイズ4.2kbp)ならびに、表示されている場合、45mM (NH4)2SO4もしくは0.025%ツイーン(登録商標)20、またはそれらの組み合わせを含有させた。95℃、3分間のインキュベーションによってDNAを変性させ、続いて5分間氷冷した。50nM φ29DNAポリメラーゼを添加して反応を開始させ、30℃でインキュベーションした後、65℃で10分間加熱することによって反応を停止させた。結果を分析するために、反応物から試料1μlを採取し、増幅されたDNAをEcoRI制限エンドヌクレアーゼで消化し、0.7%アガロースゲルで電気泳動した。臭化エチジウムでゲルを染色することによってDNAを検出した。
【0070】
ゲノムDNAを増幅するための反応条件。インキュベーション混合物には、緩衝液A 12.5μl、45mM (NH4)2SO4、0.025%ツイーン(登録商標)20、3´-5´エキソヌクレアーゼの作用に対して保護されたヘキサマー50μM、各デオキシヌクレオシド三リン酸(dCTP、dGTP、dTTPおよびdATP)500μMならびに表示された量のバシラス・ズブチリス(Bacillus subtilis)ゲノムDNA(サイズ4Mpb)を含有させた。95℃、3分間のインキュベーションによってDNAを変性させ、続いて5分間氷冷した。50nM φ29DNAポリメラーゼを添加して反応を開始させ、30℃でインキュベーションした後、65℃で10分間加熱することによって反応を停止させた。結果を分析するために、反応物から試料1μlを採取し、0.7%アガロースゲルで電気泳動した。臭化エチジウムでゲルを染色することによってDNAを検出した。
【0071】
図1は、少量の添加プラスミドDNAの増幅における45mM (NH4)2SO4および0.025%ツイーン(登録商標)20の添加の効果を示す。図のように、100fgの添加DNAが用いられたとき、φ29DNAポリメラーゼは、標準緩衝液Aでは、検出可能な増幅産物を生じなかった。これらの反応条件において、DNAの非存在下、0.025%ツイーン(登録商標)20の添加によって、痕跡量のDNA生成物が出現したが、恐らく、ランダムヘキサマープライマーのハイブリダイゼーションおよび伸長によって引き起こされた非特異的DNA増幅の結果と考えられる。10fgの添加DNAでは、同じ痕跡量が観察された。しかしながら、100fgの添加DNAの存在下では、0.025%ツイーン(登録商標)20の添加は、φ29DNAポリメラーゼに、検出可能な量の増幅されたプラスミドを生じさせることを可能にした。特異的または非特異的に増幅されたDNAの全生産量は、緩衝液Aへの0.025%ツイーン(登録商標)20の添加が、φ29DNAポリメラーゼの増幅能を促進することを示している。同様な効果がNP40界面活性剤でも観察された。これに反して、トリトンX100およびトリトンX114などの分析された他の界面活性剤では、φ29DNAポリメラーゼの増幅能は促進されなかった(図示せず)。緩衝液Aへの0.025%ツイーン(登録商標)20および45mM (NH4)2SO4の同時添加によって、増幅された生成物の収率および特異性に2つの結果がもたらされた。1)添加DNAの非存在下でDNA増幅は検出されなかったこと。2)DNAの添加量が10fgと低くても、増幅によって、単位長さのプラスミドDNA数μgが得られたこと。対照として、緩衝液Aへ45mM (NH4)2SO4を添加したものは、φ29DNAポリメラーゼの増幅能に改善を生じなかった。
【0072】
従って、緩衝液Aへの0.025%ツイーン(登録商標)20および45mM (NH4)2SO4の同時添加(以下緩衝液B)によって、φ29DNAポリメラーゼによる、環状DNAの多重プライミングを用いる増幅を実施するための実験条件の明確な最適化が行われるため、共に、わずかな量(10fg)の添加DNAを増幅するために絶対的に必要な反応剤であると結論できる。実際、図2に示すように、緩衝液Bの使用によって、0.1fg(〜24分子)という低いプラスミド添加量を用いて、反応6時間後に、φ29DNAポリメラーゼによってマイクログラム量のDNAを合成することが可能になった。品質管理として、EcoRIでの増幅産物の消化によって、4.2kbの線状dsDNAフラグメントが生じたが、そのことは、増幅産物が、実際は、元のプラスミドの縦列反復配列であることを示した。再び、緩衝液Bは非特異的DNA増幅も抑制した(図2において、添加DNAなしで行った反応に対応するレーンを参照のこと)。
【0073】
図3は、少量のプラスミドDNAの増幅の改善における、アンモニウムイオンおよび0.025%ツイーン(登録商標)20の効果を示す。0.025%ツイーン(登録商標)20および表示されたアンモニウム塩の存在下、前述の条件でアッセイを行った。図3において見られるように、NH4ClおよびNH4CH3COOは、共に、増幅された生成物の収率および特異性の両方において、(NH4)2SO4と同様な効果を示した。わずかな量のプラスミドDNAの増幅における前述の(NH4)2SO4の効果はNH4+イオンによるものであることをこの結果は示している。
【0074】
前述の最適化された条件が、ゲノムDNAの増幅にも適用できるかどうかを測定するために、わずかな濃度のバシラス・ズブチリス(B. subtilis)ゲノムDNA(長さ4Mpb)の存在下で同じタイプのアッセイを行った。図4に示すように、緩衝液Bにおける0.025%ツイーン(登録商標)20および45mM (NH4)2SO4の存在は、一方では、非特異的DNA増幅(添加DNAなしのレーン)を抑制し、他方では、10fgの添加DNAが用いられた場合、すなわち、現行の市販のゲノム増幅キットで推奨されている量よりも106倍少ない量の場合であっても、φ29DNAポリメラーゼが検出可能かつ特異的なゲノムDNA増幅を行うことを可能にした。
【0075】
0.025%ツイーン(登録商標)20および45mM (NH4)2SO4の同時添加によって、φ29DNAポリメラーゼに基づくDNAを増幅するための現行の市販キットの増幅効率が上がるかどうかを測定するために、図1、2および3に記載の同じタイプのプラスミドDNA増幅アッセイを行った。図5は、現行の反応緩衝液であるIllustraキット(GE Healthcare社)への0.025%ツイーン(登録商標)20および45mM (NH4)2SO4の添加によって示された著明改善を示す。見てわかるように、供給業者の推奨に従ってIllustraキットを用いれば、わずか10pg以上のプラスミド添加量は、アガロースゲルで検出可能な形で増幅させることができる。これに反して、Illustraキットの反応緩衝液への0.025%ツイーン(登録商標)20および45mM (NH4)2SO4の同時添加は、増幅されることができるDNAの必要量を有意に低下させ、プラスミドDNA 1fgの添加によって増幅産物が観察され、増幅における4桁の改善を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳型DNAの複製、増幅および配列決定方法であって、前記DNAと、少なくとも:
a)φ29DNAポリメラーゼ、
b)モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、
c)アンモニウム塩、
d)緩衝液、
e)塩化マグネシウム、
f)プライマーおよび
g)ヌクレオシド三リン酸
を含む反応混合物とを接触させることを含む前記方法。
【請求項2】
反応混合物が、さらにカリウム塩を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
カリウム塩が塩化カリウムまたは酢酸カリウムである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンの割合が、反応物の全容量の0.003%〜0.1%である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンの割合が、反応物の全容量の0.006%〜0.05%である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンの割合が、反応物の全容量の0.01%〜0.03%である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
アンモニウム塩が、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウムまたは酢酸アンモニウムを含むリストから選択される、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
アンモニウム塩が硫酸アンモニウムである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
硫酸アンモニウムの濃度が30mM〜60mMである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
硫酸アンモニウムの濃度が40mM〜50mMである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
アンモニウム塩が、塩化アンモニウムまたは酢酸アンモニウムである、請求項7記載の方法。
【請求項12】
塩化アンモニウムまたは酢酸アンモニウムの濃度が60mM〜120mMである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
塩化アンモニウムまたは酢酸アンモニウムの濃度が80mM〜100mMである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
φ29DNAポリメラーゼが、以下のファージ:φ29、Cp-1、PRD-1、φ15、φ21、PZE、PZA、Nf、M2Y、B103、GA-1、SF5、Cp-5、Cp-7、PR4、PR5、PR722、L17またはABVから単離されたDNAポリメラーゼから選択される、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
φ29DNAポリメラーゼが、配列番号1に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
φ29DNAポリメラーゼが、配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
φ29DNAポリメラーゼが配列番号1のアミノ酸配列を有する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
φ29DNAポリメラーゼがエキソヌクレアーゼドメインに改変を有し、前記改変DNAポリメラーゼが、天然に存在する対応するDNAポリメラーゼに対して10%未満のエキソヌクレアーゼ活性を有する、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
改変φ29DNAポリメラーゼが、天然に存在する対応するDNAポリメラーゼに対して1%未満のエキソヌクレアーゼ活性を有する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
改変φ29DNAポリメラーゼが、天然に存在する対応するDNAポリメラーゼに対して検出可能なエキソヌクレアーゼ活性を有さない、請求項19記載の方法。
【請求項21】
緩衝液がトリス-塩酸、トリス-酢酸またはHEPESである、請求項1〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
緩衝液のpHが7〜8.5である、請求項1〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
塩化マグネシウムの濃度が2mM〜20mMである、請求項1〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
塩化マグネシウムの濃度が5mM〜15mMである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
塩化カリウムまたは酢酸カリウムの濃度が30mM〜70mMである、請求項2〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
塩化カリウムまたは酢酸カリウムの濃度が40mM〜60mMである、請求項25記載の方法。
【請求項27】
ヌクレオシド三リン酸がdCTP、dGTP、dTTPおよびdATPである、請求項1〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
ヌクレオシド三リン酸dCTP、dGTP、dTTPおよびdATPが等モル量である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
プライマーが任意であり、エキソヌクレアーゼの作用から保護されている、請求項1〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
鋳型DNAがプラスミドDNAである、請求項1〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
鋳型DNAがゲノムDNAである、請求項1〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
増幅が、本質的に一定温度25〜40℃で行われる、請求項1〜31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
ローリングサークル増幅(RCA)、多重置換増幅(MDA)、鎖置換増幅(SDA)またはループ媒介性増幅(LAMPA)によって増幅が行われる、請求項1〜32のいずれかに記載の鋳型DNAの増幅方法。
【請求項34】
少なくとも1つのヌクレオシド三リン酸または1つのプライマーが標識される、請求項1〜33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
a)φ29DNAポリメラーゼ、
b)モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、
c)アンモニウム塩、
d)緩衝液および
e)塩化マグネシウム
を含む、請求項1〜34記載の方法を実施するためのキット。
【請求項36】
カリウム塩をさらに含む、請求項35記載のキット。
【請求項37】
プライマーをさらに含む、請求項35または36のいずれかに記載のキット。
【請求項38】
請求項29記載のプライマーをさらに含む、請求項35〜37のいずれかに記載のキット。
【請求項39】
ヌクレオシド三リン酸をさらに含む、請求項35〜38のいずれかに記載のキット。
【請求項40】
少なくとも1つのヌクレオシド三リン酸または1つのプライマーが標識される、請求項37〜39記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−531221(P2012−531221A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519026(P2012−519026)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【国際出願番号】PCT/ES2010/070456
【国際公開番号】WO2011/000998
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(512004305)
【Fターム(参考)】