説明

鋳塊冷却水槽、鋳造機における冷却装置、及び鋳塊の冷却方法

【課題】鋳造設備の冷却に用いる水槽内における鋳塊の冷却条件を制御するための冷却水槽ならびに冷却方法を提供する。
【解決手段】鋳型11,12から引き出した鋳塊Cを冷却する三次冷却装置において冷却水の温度を調整することにより冷却条件を制御するために、冷却水をオーバーフローさせる水槽20を備え、水槽の隔壁を可変ゲート22を伸縮可能なベローズにすることにより水槽内の水量を変更することが可能となり、水槽内の冷却水の水位を調整することにより鋳塊を冷却する能力が変更できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の鋳造機における冷却装置、及び鋳造機における冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属の連続鋳造では、一般的に水冷鋳型を備えた連続鋳造機が用いられ、融点以上に加熱されて溶融した金属を鋳型へ注入して冷却し、鋳塊を連続的に鋳造する。このような金属の連続鋳造では三段階の冷却が行われる。具体的には、溶融した金属が注入された鋳型を冷却し、初期の凝固段階で鋳塊の形状を形作る一次冷却、鋳型の下部において鋳塊に直接冷却水を吹きつけて冷却し、金属の結晶粒の大きさや方向を決定する二次冷却、鋳塊を冷却水中へ通し、常温近くまで鋳塊の表面温度を下げる三次冷却が行われる。
【0003】
ところで、鋳塊の品質は外観上の欠陥の有無と内部組織の健全性で評価される。外観上の欠陥の有無や内部組織の健全性は、金属凝固時の冷却のバランスと冷却の均一性の良否により大きな影響を受ける。特に、銅合金において、配合する元素の種類及び濃度が増加するほど冷却条件の影響が顕著に現れる。凝固初期から凝固終了点までの冷却条件における冷却バランスと均一性の良否により、鋳塊の品質が決定される。
【0004】
一次冷却では鋳型を直接冷却するため、鋳型そのものが熱伝導性の高い素材を用いている場合、金属は急激に冷却され、結晶粒の成長方向を連続的に均一に保つことが難しい。また、急激な冷却は凝固時の収縮により鋳型内面と鋳塊表面との間にエアーギャップを発生させ、熱伝導性を低下させる。この熱伝導の低下は、場合によって、凝固した金属の再溶解を引き起こし、結晶粒の成長を不均一にするとともに、鋳塊表面に波打ちを発生させる。
【0005】
特許文献1の連続鋳造用水冷鋳型は、グラファイトからなるモールド(鋳型)の外周面を保持するプロテクタに設けられた水路を通る冷却水により一次冷却が行われ、モールドから引き出された鋳塊に冷却水を噴出する噴出口を有する鋳塊冷却用水路により二次冷却が行われている。特許文献1の鋳型はモールドの外周コーナー部が面取りされているとともに、モールドの外周コーナー部とプロテクタの内周コーナー部との間に隙間が形成されて、金属の凝固時におけるエアーギャップの発生を防ぎ、結晶粒の均一化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−227994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1は、鋳型の材質や構造に着目し、鋳塊の結晶粒を均一化することが行われている一方で、冷却水を調整することによる冷却条件を制御することも可能である。例えば、鋳型へ供給する冷却水の水量を変更したり、鋳型から引き出した鋳塊へ吹きつける冷却水の水量を調整したりすることにより冷却条件を制御できる。また、冷却水の温度を変更することにより、冷却条件を制御することができる。
【0008】
ところで、熱伝導性の高い金属を連続鋳造法により凝固させる場合、三次冷却の影響を加味することが重要である。従来の三次冷却では、水槽へ冷却水を注水し、オーバーフロー(排水)した状態で、水槽内の水位を一定に保つようにしている。水槽内の冷却水をオーバーフローさせることにより冷却水が入れ替わるため、水温が上昇せず、冷却条件が一定に保たれるので、一定の温度で金属を凝固させる鋳塊の冷却に適している。
【0009】
このような三次冷却において、貯槽に蓄えられる冷却水の温度を調整することにより冷却条件を制御することが可能である。しかしながら、三次冷却において冷却水の温度を調整することにより冷却条件を制御することは、水温を調整するための水温測定器や加熱装置または冷却装置を設ける必要があり、装置の設置や燃料費などにコストがかかる。このため、三次冷却における冷却条件を制御することは、依然として改善の余地がある。
【0010】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑み、水槽内における鋳塊の冷却条件を制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するための本発明の鋳塊冷却水槽は、鋳型から引き出した鋳塊を冷却する冷却水をオーバーフローさせる水槽を備え、前記水槽内の水量を変更可能にしたことを特徴とする。この構成によると、水槽内の水量を変更することにより鋳塊を冷却する能力が変更できる。これにより、水槽内における鋳塊の冷却条件を制御することができる。
【0012】
上記の鋳塊冷却水槽において、前記水槽のオーバーフロー時の水位を変更可能にすることができる。水位を変更することにより水槽内の水量を変更できる。連続鋳造機において水槽内の水位を変更することにより、鋳型から引き出した鋳塊が冷却水に浸かるまでの時間を調整して、鋳塊の冷却条件を制御することができる。
【0013】
上記の鋳塊冷却水槽において、前記水槽の隔壁の高さを変更可能にすることができる。また、上記の鋳塊冷却水槽において、前記水槽の隔壁を可変ゲートにすることができる。
【0014】
上記の鋳塊冷却水槽において、前記可変ゲートは、前記水槽の下方に固定された固定板と、前記固定板に沿って上下方向に移動可能な可動板とを備えた構成とすることができる。
【0015】
上記の鋳塊冷却水槽において、前記水槽の隔壁をベローズにすることができる。この構成によると、ベローズを伸縮することにより、水槽内の冷却水の水位を調整できる。これにより、鋳塊の冷却条件を制御することができる。
【0016】
上記の鋳塊冷却水槽において、前記水槽は、深さ方向の位置が異なる1以上の排水口と、前記排水口をそれぞれ開閉する開閉弁と、を備えた構成とすることができる。この構成によると、冷却水を排水する排水口を選択することにより、水槽内の冷却水の水位を調整できる。これにより、鋳塊の冷却条件を制御することができる。
【0017】
上記の鋳塊冷却水槽は、連続鋳造機において前記鋳塊を冷却することができる。また、上記の鋳塊冷却水槽は、半連続鋳造機において前記鋳塊を冷却してもよい。
【0018】
また、上記の課題を解決するための本発明の鋳造機における冷却装置は、融点以上に加熱し溶融した金属溶湯を冷却して鋳塊を形成する鋳型と、前記鋳型から引き出した前記鋳塊へ冷却水を吹きつける冷却スプレーと、を備え、冷却水を吹きつけた前記鋳塊を前記水槽へ浸ける構成であってもよい。
【0019】
また、上記の課題を解決するための本発明の鋳塊の冷却方法は、鋳型から引き出した鋳塊を冷却する冷却水をオーバーフローさせる水槽内の水量を変更可能にしたことを特徴とする。これにより、水槽内の水量を変更し、水槽内における鋳塊の冷却条件を制御することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の鋳造機における冷却装置によると、水槽内の水量を変更することにより鋳塊を冷却する能力を変更し、水槽内における鋳塊の冷却条件を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】鋳造機の平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】図3の水槽20を拡大して示した説明図である。(a)は、可変ゲートの可動板を下げた場合を示し、(b)は、可変ゲートの可動板を上げた場合を示した説明図である。
【図5】水槽の内周コーナー部の1つを示した斜視図である。
【図6】実施例2の冷却装置の断面図である。
【図7】他の実施形態における水槽の断面を示した説明図である。(a)は、水位を低く設定した場合を示し、(b)は、水位を高く設定した場合を示した説明図である。
【図8】さらに他の実施形態における水槽の断面を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の鋳塊冷却水槽、及び鋳造機における冷却装置の一形態について図面を参照して説明する。
【0023】
図1は本実施の形態にかかる鋳造機1の平面図である。図2は図1のA−A断面図である。図3は図1のB−B断面図である。鋳造機1は連続鋳造を実現する装置である。鋳造機1は連続鋳造にかかるため、鋳造機1における冷却装置2は、鋳造機1と一体に構成されている。鋳造機1は、成形部10、鋳塊冷却水槽(以下、「水槽」という。)20、及び冷却水供給装置30を備えている。
【0024】
成形部10は向かい合うように配置された鋳型11,12を備えている。鋳型11,12のそれぞれには冷却水が流れる通路13,14が形成されている。通路13,14には、配管15を介して冷却水供給装置30から冷却水が供給される。鋳型11,12の下方には、冷却水を噴射する冷却スプレー16が設けられている。冷却スプレー16への冷却水も冷却水供給装置30から供給される。冷却スプレー16は鋳型11,12により形作られた鋳塊へ冷却水を吹きつけて冷却することができる。
【0025】
水槽20は成形部10の下方に位置している。水槽20は外周に位置する水槽本体21と、水槽本体21内に配置される可変ゲート22を備えている。水槽本体21は、矩形状の底面を有し、底面の中央には鋳塊が通過する開口部23が設けられている。鋳造機1の運転時には、開口部23を鋳塊cが通ることになるが、鋳塊cと水槽本体21の底面との間はシールされて水槽20内に冷却水を貯めることができる。
【0026】
可変ゲート22は水槽本体21の長手方向に沿った側面21aに平行に配置されている。可変ゲート22は長手方向に沿った側面21aの両面に対して設けられている。この可変ゲート22は水槽20の隔壁として機能する。より詳しくは、図4、図5を参照しながら説明する。
【0027】
図4は、図3の水槽20を拡大して示した説明図である。図4(a)は、可変ゲート22の可動板222を下げた場合を示し、図4(b)は、可変ゲート22の可動板222を上げた場合を示している。図5は、水槽20の内周コーナー部の1つを示した斜視図である。可変ゲート22は、固定板221、可動板222を備えている。固定板221、可動板222はいずれもスチール製である。固定板221は水槽本体21の底面に隙間なく接合されて、水槽20の下方に固定されている。また、固定板221は水槽本体21の側面21aとの間に所定の間隔を設けて接合されている。可動板222は、固定板221よりも内側に配置され、上下方向に移動が可能となっている。
【0028】
スクリューボルト24は、固定ナット25に支持され、スクリューボルト24のネジ軸が固定ナット25に対して移動することでスクリューボルト24自身が上下に移動する構造となっている。また、可動板222の上部の両隅部には、スクリューボルト24が貫通する貫通孔271を有する軸受部27が可動板222に溶接されている。さらに、スクリューボルト24の下端部には軸受部27の貫通孔271より大きい口径の係合部243が取り付けられており、可動板222は、係合部243によって懸垂された状態で支持され、スクリューボルト24の回転によって、スクリューボルト24自身が上下動する際、係合部243が軸受部27を支持することで、可動板222が上下動する仕組みとなっている。
また、スクリューボルト24の上端には、把持部242があり、その上端部にスクリューボルトを回転させるためのレンチ孔がある。作業員が把持部242を回転することにより、ネジ部241が回転し、可動板222を上下方向に移動することができる。なお、前記ネジ部241の回転には、駆動用のモーター(図示しない)を設置して、スクリューボルト24を回転させることも可能である。
さらに、固定部221の上には複数の案内部26が設けられている。案内部26は、可動板222が移動した際に水槽本体21の側面21aから等距離に位置するように、可動板222をガイドする。案内部26は水槽本体21の側面21aに沿って等間隔に設けられている。この案内部26が設けられていることにより、可動板222と水槽本体21の側面21aとの間には所定の間隔が設けられている。
【0029】
水槽20への注水は、冷却水供給装置30により行われる。または、冷却スプレー16により鋳塊に吹きつけられた冷却水が水槽20内に供給される。図4(a)、図4(b)に示すように、水槽20に注水される冷却水は水槽本体21と可変ゲート22とで囲まれた領域に蓄えられる。鋳造が行われている間、水槽20への冷却水の注水が継続される。可変ゲート22の固定板221と可動板222との間にはシール機構が設けられていないが、冷却水注入時に可動板222が固定板221へ水圧で押付けられ、冷却水の漏洩が減少する。また、漏洩する以上に冷却水が注入されるのでシール機構が必要ない。冷却水の水位が可変ゲート22の高さを超えると、冷却水は可変ゲート22を超えてオーバーフローする。したがって、可変ゲート22の高さを変更することにより、水槽20内の冷却水の水位を変更し、水槽20内に蓄える冷却水量を変更できる。
【0030】
可変ゲート22を超えてオーバーフローした冷却水は、可変ゲート22と水槽本体21の側面21aとの間を流れ落ちる(図4(a),(b)中矢示)。水槽本体21の底には排水口(図示しない)が設けられており、オーバーフローした冷却水を排出する。排出された冷却水は、水槽20の下部に配置された回収槽40において集められた後、クーリングタワー(図示しない)へ送られる。その後、冷却水はクーリングタワーにおいて35〜36℃に冷却された後、再度、冷却水供給装置30により鋳型11,12や水槽20へ送られ、鋳塊の冷却に利用される。
【実施例1】
【0031】
次に、鋳造機1による連続鋳造の実施例について説明する。ここでは、銅の鋳造について説明する。銅の連続鋳造では、融点(約1083℃)以上に加熱されて溶融した銅を短時間で連続的に凝固させる。銅の連続鋳造では、融点以上に加熱し溶融した銅を成形部10の上側から鋳型11,12へ注ぎ込む。鋳型11,12へ注ぎ込まれた銅の溶湯は、鋳型11,12内において冷却水へ放熱し凝固する(一次冷却)。表面が凝固した銅金属(鋳塊c)は鋳型11,12の下部へ引き出されて、さらに冷却スプレー16から吹きつけられる冷却水によって冷却される(二次冷却)。続いて、鋳塊cは成形部10の下部に備えられた水槽20内に蓄えられた冷却水に浸かることによりさらに冷却される(三次冷却)。
【0032】
上記の冷却装置およびその方法において、鋳造される金属の冷却速度が速く、急冷によって鋳塊の表面にオシレーションマークやセンタークラック等の欠陥が発生するような場合には、冷却速度を低下させるために三次冷却部の水槽20中の水位を下げるように可変ゲートを低くし、冷却水量を減少させることで冷却速度を下げ、オシレーションマークやセンタークラック等の欠陥の発生を防止できる。
また、鋳造される金属の冷却速度が遅く、鋳造される金属の温度が高すぎる場合には、一次冷却部の鋳型11,12内で、金属溶体のメニスカスが下方に下がり、鋳型部のカーボンなどの不純物が巻き込まれ、鋳造物の純度が劣化する。さらに溶体温度が高い場合には、鋳造中の金属が途中から凝固せずに、溶体のまま流れ出し、鋳造が停止してしまう。このようなことがないように、三次冷却部の水位を調節し、水位を高くすることで冷却速度を速くし、不純物の汚染や鋳造停止を回避することができる。
さらに、金属の鋳造の冷却速度を三次冷却部の水位を調節することで最適条件に制御し、結晶粒径のそろった高品質の鋳造物を製造することも可能となる。
【0033】
また、鋳造する金属の種類や製品そのものの特性に合わせて、連続鋳造において、緩やかな冷却が要求される場合や、反対に急速な冷却が要求される場合がある。鋳造機1における冷却装置2は、水槽20の冷却水の水量、特に、水位を変えることにより、鋳塊cの冷却条件を制御することができる。すなわち、緩やかに鋳塊cを冷却したい場合には、可動板222を下方向へ移動し、可変ゲート22を低くして水槽20内の冷却水の水位を下げる(図4(a)の状態)。これにより、三次冷却の水槽深さが浅くなる分、冷却能力が低下し、また、鋳塊cが冷却水に浸かるまでの時間が延びるので、鋳塊cを徐冷することができる。反対に、鋳塊cの急速な冷却が必要な場合には、可動板222を上方向へ移動し、可変ゲート22を高くして水槽20内の冷却水の水位を上げる(図4(b)の状態)。これにより、三次冷却の水槽深さが深くなる分、冷却能力が向上し、また、鋳型11,12から引き出した鋳塊cがすぐに冷却水に浸かることになるので、鋳塊cを急速に冷却することができる。このように、鋳造機1における冷却装置2は、水槽20内の水量、特に水位を変更することにより鋳塊cを冷却する能力を変更し、水槽20内における鋳塊cの冷却条件を制御する。このように鋳造する金属製品の特性に合わせた冷却条件を制御できるため、急冷により生じる鋳塊の表面の欠陥、オシレーションマークやセンタークラック等の問題を抑制するとともに、結晶粒径のそろった鋳物を製造することができる。また、水槽20内の水位の変更は、可変ゲート22の高さを変更することにより容易に可能なので、水槽20内における鋳塊cの冷却条件の制御をコストをかけずに実現できる。
【0034】
なお、本実施の形態では、可変ゲート22は固定板221と可動板222の二枚のスチール板により構成しているが、可動板222を二重、三重にして可変ゲート22の変更可能な高さを詳細に設定する構成としてもよい。
【実施例2】
【0035】
次に、実施例2について説明する。実施例2では、鋳造機1による半連続鋳造が行われる。図6は、本実施例の冷却装置100の断面図である。本実施例における鋳塊冷却水槽(以下、「水槽」という。)120は図3に示した上記の形態の水槽20と比較して深く、底面が開口されていない。さらに、水槽120の深さが深いため、可変ゲート22の固定板1221と可動板1222の水深方向の長さも長くしている。なお、その他の構成は上記の形態と同一であるので、図中同一の番号を付し詳細な説明を省略する。また、水位を変更する機構も上記の形態と同一である。本実施例に示す冷却装置100によると、半連続鋳造機における水槽の水位を調整することで、冷却速度の調整を可能にする。
(その他の実施形態)
【0036】
次に、上記の実施形態と異なる本発明の実施形態について説明する。本実施形態は、上記の図3に示した実施形態における固定板221と可動板222からなる可変ゲート22を、ベローズからなる可変ゲート51に変更したものである。図7はここで説明する実施の形態を示した説明図である。図7(a)は、水位を低く設定した場合を示し、図7(b)は、水位を高く設定した場合を示している。本実施形態の水槽50は、可変ゲートの構成が異なる点で、上記の実施形態における水槽20と相違する。図7(a)、図7(b)に示すように、冷却水は水槽本体21とベローズからなる可変ゲート51とに囲まれる領域内に蓄えられる。可変ゲート51は上方向からワイヤ52で吊り下げられている。ワイヤ52を巻いたホイール53を回転してワイヤ52を緩めることにより、ベローズが折り曲がり、可変ゲート51が低くなる。反対に、ホイール53を巻き上げることによりベローズが伸長して可変ゲート51が高くなる。このようにベローズを伸縮することにより、可変ゲート51の高さを連続的に変更し、水槽50内の水位を変更して水槽50における鋳塊の冷却条件を制御する。なお、その他の構成は上記で説明した鋳造機における冷却装置と同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0037】
次に、さらに、上記の実施形態と異なる本発明の実施形態について説明する。図8は他の実施形態における水槽60の断面を示した説明図である。本実施形態の水槽60は、水槽60内の冷却水の水位を変更する手段が異なる点で、上記の実施形態における水槽60と相違する。すなわち、本実施形態の水槽60は可変ゲート22を備えていない代わりに、深さ方向の位置が異なる複数(4つ)の排水口61,62,63,64と、排水口61,62,63,64をそれぞれ開閉する複数(4つ)の開閉弁65,66,67,68と、を備えている。
【0038】
冷却水は水槽60内に蓄えられ、水槽60内の冷却水の水位は開閉弁65,66,67,68の開閉状態によって制御される。開閉弁65,66,67,68はいずれか1つが開弁され、残りを閉弁した状態で使用される。開閉弁の開弁した排水口から冷却水が回収槽69に排出される。例えば、図8は開閉弁67が開弁した状態で、排水口63から冷却水がオーバーフローする様子が示されている。4箇所に設けられたそれぞれの排水口は水槽60内の深さ方向の位置が異なるため、冷却水が排出される排水口の位置により、水槽60内の冷却水の水位が変化する。したがって、要求される冷却条件に併せて、開弁する開閉弁を設定することにより、水槽60内の冷却水の水位を変更し、鋳塊の冷却条件を制御することができる。なお、その他の構成は上記で説明した鋳造機における冷却装置と同一であるので、詳細な説明は省略する。また、水槽内の水位を変更するという目的に鑑みれば、排水口の数は1箇所以上あればよい。
【0039】
上記実施例は本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、これらの実施例を種々変形することは本発明の範囲内であり、さらに本発明の範囲内において、他の様々な実施例が可能であることは上記記載から自明である。
【符号の説明】
【0040】
1 鋳造機
2,100 冷却装置
10 成形部
11,12 鋳型
20,50,60,120 水槽
21 水槽本体
22 可変ゲート
221,1221 固定板
222,1222 可動板
24 スクリューボルト
25 固定ナット
26 案内部
30 冷却水供給装置
40 回収槽
51 可変ゲート(ベローズ)
61,62,63,64 排水口
65,66,67,68 開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳型から引き出した鋳塊を冷却する冷却水をオーバーフローさせる水槽内の水量を変更可能にしたことを特徴とする鋳塊冷却水槽。
【請求項2】
前記水槽のオーバーフロー時の水位を変更可能にしたことを特徴とする請求項1記載の鋳塊冷却水槽。
【請求項3】
前記水槽の隔壁の高さを変更可能にしたことを特徴とする請求項2記載の鋳塊冷却水槽。
【請求項4】
前記水槽の隔壁を可変ゲートにしたことを特徴とする請求項2記載の鋳塊冷却水槽。
【請求項5】
前記可変ゲートは、前記水槽の下方に固定された固定板と、前記固定板に沿って上下方向に移動可能な可動板とを備えていることを特徴とする請求項4記載の鋳塊冷却水槽。
【請求項6】
前記水槽の隔壁をベローズにしたことを特徴とする請求項2記載の鋳塊冷却水槽。
【請求項7】
前記水槽は、深さ方向の位置が異なる1以上の排水口と、前記排水口をそれぞれ開閉する開閉弁と、を備えたことを特徴とする請求項2記載の鋳塊冷却水槽。
【請求項8】
連続鋳造機において前記鋳塊を冷却する請求項1乃至7のいずれか一項記載の鋳塊冷却水槽。
【請求項9】
半連続鋳造機において前記鋳塊を冷却する請求項1乃至7のいずれか一項記載の鋳塊冷却水槽。
【請求項10】
融点以上に加熱し溶融した金属溶湯を冷却して鋳塊を形成する鋳型と、
前記鋳型から引き出した前記鋳塊へ冷却水を吹きつける冷却スプレーと、
冷却水を吹きつけた前記鋳塊を前記水槽へ浸ける請求項1乃至9のいずれか一項記載の鋳塊冷却水槽を備えた鋳造機における冷却装置。
【請求項11】
鋳型から引き出した鋳塊を冷却する冷却水をオーバーフローさせる水槽内の水量を変更可能にしたことを特徴とする鋳塊の冷却方法。
【請求項12】
前記水槽のオーバーフロー時の水位を変更可能にしたことを特徴とする請求項10記載の鋳塊の冷却方法。
【請求項13】
前記水槽の隔壁の高さを変更可能にしたことを特徴とする請求項11の鋳塊の冷却方法。
【請求項14】
前記水槽は、水深方向の異なる位置から排水可能にしたことを特徴とする請求項11記載の鋳塊の冷却方法。
【請求項15】
連続鋳造機において前記鋳塊を冷却する請求項10乃至13のいずれか一項記載の鋳塊の冷却方法。
【請求項16】
半連続鋳造機において前記鋳塊を冷却する請求項10乃至13のいずれか一項記載の鋳塊の冷却方法。
【請求項17】
融点以上に加熱し溶融した金属溶湯を注入した鋳型を冷却して鋳塊を形成し、
前記鋳型から引き出した前記鋳塊へ冷却水を吹きつけた後、前記鋳塊を前記水槽へ浸ける請求項11乃至16のいずれか一項記載の鋳塊の冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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