説明

鋸刃を調整および監視するためのデバイスおよび方法

【課題】複数の電子部品を分離するための、改善されたデバイスおよび改善された方法を提供する。
【解決手段】担体上に取り付けた複数の電子部品を分離するためのデバイスは、実質的に円形な刃先(11)を持つ回転可能な鋸刃(2)、この実質的に円形な刃先(11)を検出するための少なくとも一つのセンサ(12)、そして媒質のディスペンサ(7、8、10)からなり、センサ(12)およびディスペンサ(7、8、10)が共有キャリア(6)上に組み付けられており、共有キャリア(6)がガイド(5)に沿って鋸刃(2)に対して変位可能である。また、担体上に取り付けた複数の電子部品を分離するための方法も提案している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的に円形な刃先を持つ回転可能な鋸刃、この実質的に円形な刃先を検出するための少なくとも一つのセンサ、そして媒質のディスペンサからなる、担体上に取り付けた複数の電子部品を切り離すためのデバイスに関する。本発明は、また、回転鋸刃と分離すべき電子部品を載せた担体とを相互に対して変位させることによって、担体上に取り付けた電子部品を切り離すための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品、例えば、半導体等の分離は、特に、回転鋸刃を使用して、電子部品を取り付けた担体を機械加工することによって行う。そのような担体は、リード・フレーム、ウェーハまたはボードとも呼ぶ。機械加工作業中には、他の材料、例えば、電子部品を封入した(硬化したエポキシの形態にある)型用材料を同時に分離することも可能である。通常、高価な電子部品の高度に機械化した処理では、良い加工品質を保証できるよう、分離中の加工条件を適切に調整することが重要である。このため、従来の技術では、鋸刃のサイズを検出する複数のセンサを用いていた。連続な稼働サイクルの間で、鋸刃に対してセンサを変位させることによって、鋸刃のサイズを測定することが可能である。したがって、その後の加工操業は、記録測定値に基づいて、例えば、鋸刃の高さ調整を修正する、または必要条件を満たさない鋸刃を別の鋸刃に取り替える等、管理できる。電子部品を分離するための既存の装置の欠点は、比較的複雑な、そして労働集約型の作業を必要とするということである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の目的は、複数の電子部品を分離するための、改善されたデバイスおよび改善された方法を提供することである。このことにより、改善された工程制御が単純なやり方で実現できる。
【0004】
このため、本発明は、センサおよびディスペンサを組み付けた共有キャリアが、ガイドに沿って、鋸刃に対して変位可能であることを特徴とする、序文で述べたタイプのデバイスを提供する。このデバイスのセンサは、鋸刃の径を測定する、および/あるいは円形刃先の損傷を検出するように適応させることができる。この目的で、デバイス内に二つの(または、さらに二つよりも多くの)別個のセンサを配置することも、もちろん可能である。センサは、鋸刃が最小必要仕様を満たすかどうかを監視することができる。ディスペンサは、円形刃先に向けた一つのスプレー・ヘッド、および/あるいは媒質を鋸刃の上側近くの位置へ導く一つの(通常、複数の)スプレー・ヘッドから構成してもよい。このようなディスペンサで、刃先を冷却できて掃除することもできる。また、少なくとも担体を下側から切削する場合には、切削中に解放された部分(チップ、ちり、その他)を、担体から排出することができる。本発明によるデバイスの特に有利な機能は、一つのセンサ(または複数のセンサ)を変位させるのに通常必要とされる変位を、有用な状態で、一つ以上のディスペンサを配置するためにも同時に使用できることである。このため、必要とされる別個の措置を実行することなく、センサの変位と同時に、ディスペンサの位置を調節できる。これは、センサで検出した鋸刃の寸法に基づいて、追加の作業負担を伴うことなく、ディスペンサの配置を最適化することを可能にする。例えば(摩耗が生じたため)鋸刃の径が減少すると、鋸刃のサイズを検出するセンサは、鋸刃の回転軸により近く変位する。検出器およびディスペンサが共有キャリアに組み付けられているため、この検出器の変位は、また、ディスペンサの強制的変位を生じさせる。したがって、ディスペンサの配置を、鋸刃のサイズに対して常に最適にすることを実現可能である。その結果、工程制御の、追加作業負担なしの改善が可能である。
【0005】
センサおよびディスペンサの共有キャリアに対するガイドは、鋸刃に平行に配置することが望ましい。標準状態の下では、センサおよびディスペンサの調整は、鋸刃径の違いに関してのみ必要である。したがって、特に、鋸刃の回転軸に対して垂直な平面(すなわち、ガイドの移動平面)に、言い換えると、鋸刃に平行な平面に、調整の自由度があることが望ましい。
【0006】
本発明によるデバイスのさらにもう一つの好適変形例では、鋸刃を垂直に配置し、ガイドを垂直線から45°の角度で配置する。リニア・ガイドがそのような角度を持つため、水平(3時または9時)に沿ってサイズが最大なる鋸刃の位置近くで、そのサイズを検出する検出器は、鋸刃の通常上側または下側(12時または6時)で鋸刃が電子部品の担体に係合する切断位置の近くにディスペンサと一体に組み付けることができる。この場合、検出器の水平変位は、ディスペンサの、垂直方向への同一距離の変位をもたらす。したがって、水平方向で検出した鋸刃の径の変化に対して、複雑なトランスミッションの関与なしで、ディスペンサを最適な様式で変位できる。
【0007】
センサを、単純な、信頼性の高い、そして安価な様式で、位置指示計と共作用する別個の光学検出器から形成することによって、光学検出器の計数値に変化があったときに位置を測定するように構成できる。そのようなセンサは、低コストで広く利用可能であり、かなり干渉の影響を受けにくい。
【0008】
さらにもう一つの実施変形例では、ディスペンサは、鋸刃の両側に配置され、鋸刃の上側近く、または下側近くの位置へ媒質を移送するように適応した、二つのマルチプル・スプレー・ヘッドからなる。したがって、媒質(通常、洗浄液)を使用して、チップ、ちりまたは他の汚染物質を、例えば、鋸刃の両側の位置から排除できる。
【0009】
さらにもう一つの実施変形例では、デバイスには、相互に平行に配置し、個別に調節可能な駆動軸上に取り付けた、少なくとも二枚の回転可能な鋸刃が設けられる。そのような鋸刃の両方には、共有キャリア上に組み付けてセンサおよびディスペンサを設けることが望ましい。独立して変位可能な鋸刃を持つマルチプル(二重)分離デバイスにおいては、まさに、必要構成要素をコンパクトな状態で組み付ける必要がある。本発明による共有キャリアは、これを可能にするため、本発明は、マルチプル分離デバイス内に、特に有利に適用できる。また逆に、本デバイスを、同じ駆動軸(すなわち単軸)上に二枚以上の鋸刃を組み付けて、適用することも可能である。同軸上に組み付けた鋸刃の場合は、すべての組み付け鋸刃のセンサおよびディスペンサに対して、共有キャリアを有利に利用できる。
【0010】
また、センサは、駆動手段を制御するように適応したデータ処理ユニットへ結合することが望ましい。この場合、センサを使用して検出した測定値に基づいて、駆動手段によって共有キャリアをガイドに沿って変位させることができる。したがって、加工条件の制御は、複雑な制御手段を必要とせずに、自動方式で実行可能である。本発明によれば、単一駆動で十分である。
【0011】
本発明は、また、回転鋸刃と分離すべき電子部品を載せた担体とを相互に対して変位させることによって、担体上に取り付けた複数の電子部品を分離するための方法を提供する。この方法は、少なくとも実質的に円形な鋸刃の刃先をセンサ手段で検出し、この検出に基づいて、鋸刃に対して配置すべきセンサ手段と媒質の計量分配手段とを、鋸刃に対して共有変位によって配置する。この方法によれば、本発明によるデバイスに関して説明した前述の利点が実現可能である。
【0012】
この方法の好適応用では、担体を二枚の回転鋸刃によって同時に加工するが、二枚の鋸刃のセンサ手段および計量分配手段は、互いに独立して変位可能である。したがって、マルチプル分離デバイスでは、異なる鋸刃の検出器およびディスペンサを、鋸刃毎に独立して変位させることができる。これは、センサ手段および計量分配手段を共有ガイドに沿って変位させるならば、単純な方式で具現化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を、以下の図面に示す非限定的で模範的な実施例に基づいて、さらに説明する。
【0014】
図1は、鋸刃2を持つ、複数の電子部品(図示せず)を分離するためのデバイス1を示す。鋸刃2は、取り付けフランジ3を持つ回転可能な駆動軸4に一体に結合されている。駆動軸4に対して固定位置にガイド5が設けられており、これに沿って、矢印P1の方向へ、往復台6が変位可能である。往復台6は、複数のスロット8を備えたパイプ7を携行し、そこから、供給管9を介して供給した液体を噴霧可能である。管8で供給した液体は、特に鋸挽くずを取り除くために使用する。このことは、次の図でさらに説明する。往復台は、また、ノズル10を携行しており、そこから、供給管9によって供給した液体を噴霧可能である。代替的に、ノズル10に対して別個のフィードをデバイス1に結合する(すなわち、管8に対するフィード9とは分離させる)ことも可能である。ノズル10は、特に、鋸刃2の円形刃先11上に、液体を吹きかけるように機能する。往復台6は、また、検出器12を携行しており、これによって、検出器が鋸刃2で覆われているか、またはそうでないかを検出することが可能である。検出器12からの検出信号は、信号線13を介して送信される。この図に示す往復台6の位置では、検出器12は鋸刃2に覆われていない。管7、ノズル10および検出器12は、相互に一体に結合されている。ガイド5上には、目盛分割13が配置されており、これによって、往復台6が変位して検出器12から信号が変化した瞬間に、往復台の位置を測定できる。この測定値を用いることで、鋸刃の径Dzを決定することができる。
【0015】
図1Bも、デバイス1を示すが、これは、分離すべき電子部品14を概略的に示している。電子部品は担体に統合されており、ここではマニピュレータ15にしっかりと保持されている。製品14は鋸刃2の上側で切削されることが、この図から明白である。しかしながら、デバイス1は、製品14が鋸刃2の下側で切削されるよう、これとは対称型にしてもよい。スロット8を持つ管7は、切削加工から生じる塵や汚染物を取り除くために、スロット8からの液体が効率的に部品14および鋸刃2へ噴き掛かるように配置する。図1Bにおける往復台6は、図1Aに示す往復台6の位置に対して、下方へ変位している。図1Bでは、往復台6が下方へ移動したため、検出器12が、鋸刃2の刃先11上を、ある程度の距離で移動している。この位置で、検出器12は、切削加工中の破損検出の形式で、鋸刃2の刃部が欠損しているかどうかを検出することが可能である。検出器12のこの位置への配置に伴って、スプレー・ヘッド10および管7は、同時に、効率的に機能する動作位置に来る。
【0016】
図2は、前述の図に示すデバイス1の斜視図である。この図から、鋸刃2の両側面で洗浄作用を実行できるよう、管7は二重の形式を採ることが明らかである。駆動軸4が、静止位置にある電動機16によって駆動されることも明らかである。センサ12は、(ガイド5に対する往復台6の位置を決定する)位置決め手段17と共に、信号線13、18を介してコンピュータ19に結合されている。(検出器12からの信号の変化が記録されるまで、ガイド5に沿って往復台6を変位させることによって、)自動位置決めを行う、そして測定を実行するために、コンピュータ19は、アクチュエータ(シリンダ、または代わりの例えばスピンドル駆動)20を制御できる。ガイドは、刃先11に対する検出器12の変位が、(少なくとも実質的に)ディスペンサ8、10(すなわち、管7のスロット8およびノズル10)の対応する変位を生じるように、水平21に対して45°の角度で配置する。
【0017】
本発明は、ここに説明した模範的な実施例に限定されないことは明らかであり、また、本分野における同業者には、添付の請求項の範囲内において、多数の変形が可能であることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】本発明によるデバイスの概略図である。
【図1B】状況が変化した後の、図1Aに示すデバイスの概略図である。
【図2】図1Aおよび図1Bに示すデバイスの斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体上に取り付けた複数の電子部品を分離するためのデバイスであって、
−実質的に円形な刃先を持つ回転可能な鋸刃、
−前記実質的に円形な刃先を検出するための少なくとも一つのセンサ、そして
−媒質のディスペンサからなり、
前記センサおよび前記ディスペンサが共有キャリア上に組み込まれており、前記共有キャリアが、ガイドに沿って前記鋸刃に対して変位可能であることを特徴とする、デバイス。
【請求項2】
前記ガイドが前記鋸刃に平行であることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記鋸刃が垂直に配置され、前記ガイドが、前記垂直に対して45°の角度を採ることを特徴とする、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記センサが、前記鋸刃の径を測定するように適応していることを特徴とする、前述の請求項のいずれかに記載のデバイス。
【請求項5】
前記センサが、前記円形刃先の損傷を検出するように適応していることを特徴とする、前述の請求項のいずれかに記載のデバイス。
【請求項6】
前記センサが、位置指示計と共作用する別個の光学検出器によって形成されることを特徴とする、前述の請求項のいずれかに記載のデバイス。
【請求項7】
前記ディスペンサが、前記円形刃先へ向けたスプレー・ヘッドからなることを特徴とする、前述の請求項のいずれかに記載のデバイス。
【請求項8】
前記ディスペンサが、前記鋸刃の上側近くの位置へ媒質を運ぶスプレー・ヘッドからなることを特徴とする、前述の請求項のいずれかに記載のデバイス。
【請求項9】
前記ディスペンサが、前記鋸刃の両側に配置され、前記鋸刃の上側近くの位置へ媒質を運ぶように適応した、二つのマルチプル・スプレー・ヘッドからなることを特徴とする、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記デバイスは、相互に対して平行に配置され、個別に調節可能な駆動軸上に取り付けられた、少なくとも二枚の回転可能な鋸刃を備えることを特徴とする、前述の請求項のいずれかに記載のデバイス。
【請求項11】
前記センサがデータ処理ユニットに結合され、前記データ処理ユニットが、前記センサを使用して検出した測定値に基づいて、前記共有キャリアを前記ガイドに沿って変位させることが可能な駆動手段を制御するように適応していることを特徴とする、前述の請求項のいずれかに記載のデバイス。
【請求項12】
回転鋸刃と分離すべき電子部品を載せた担体とを相互に対して変位させることによって、前記担体上に取り付けた複数の電子部品を分離するための方法であって、
少なくとも実質的に円形な鋸刃の刃先をセンサ手段で検出し、この検出に基づいて、前記鋸刃に対して配置すべき前記センサ手段と媒質の計量分配手段とを、前記鋸刃に対する共有変位によって配置する、方法。
【請求項13】
前記担体が二枚の回転鋸刃によって同時に加工され、そして前記二枚の鋸刃の前記センサ手段および記計量分配手段が、互いに独立して変位可能であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記センサ手段および前記計量分配手段が、共有ガイドに沿って変位することを特徴とする、請求項12または13に記載のデバイス。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−534511(P2007−534511A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510639(P2007−510639)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【国際出願番号】PCT/NL2005/000318
【国際公開番号】WO2005/105354
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(506358786)フィーコ シングレーション ビー.ヴイ. (1)
【氏名又は名称原語表記】FICO SINGULATION B.V.
【住所又は居所原語表記】Marconilaan 2,NL−5151 DR Drunen,the Netherlands
【Fターム(参考)】