鋼材設計支援システム、鋼材設計支援方法、及びコンピュータプログラム
【課題】 適切な鋼種を選択が可能な情報を提供する鋼材設計支援システム、鋼材設計支援方法、及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】
鋼材設計支援システム1のサーバ装置2は、クライアント装置3から与えられた要求仕様と一部が一致する要求仕様を含む過去事例を過去事例データベースから検索し、検索した過去事例において適用された鋼種と同一グループに属する鋼種を検索し、検索した鋼種が要求仕様を満足するか否かを判定する。当該判定結果はサーバ装置2からクライアント装置3へ送信され、クライアント装置3が判定結果を表示する。
【解決手段】
鋼材設計支援システム1のサーバ装置2は、クライアント装置3から与えられた要求仕様と一部が一致する要求仕様を含む過去事例を過去事例データベースから検索し、検索した過去事例において適用された鋼種と同一グループに属する鋼種を検索し、検索した鋼種が要求仕様を満足するか否かを判定する。当該判定結果はサーバ装置2からクライアント装置3へ送信され、クライアント装置3が判定結果を表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材の設計業務を支援する情報を提供する鋼材設計支援システム及び鋼材設計支援方法、並びにコンピュータに鋼材の設計業務を支援する情報を提供させるためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材の設計業務においては、顧客から与えられた仕様(品質要求)を満足する適切な鋼種を選択することが重要である。特に経験が浅い設計者にとっては、仕様に応じた適切な鋼種を選択することは容易ではなく、要求を満足するが過剰に高品質な鋼種、又は要求を満足しない鋼種を選択してしまう場合がある。このような鋼材の設計を支援するために、特許文献1には、製造条件からルールを用いて決まる設計知識を知識データベースに格納しておき、設計者が定めた製造条件等を知識データベースに与えたときに、知識データベースから関連知識が抽出し、設計者にガイダンスする鋼材の品質設計支援方法が開示されている。また、特許文献2には、鋼種の機械試験特性及び製造条件の過去の実績情報をデータベースに蓄積しておき、入力された要求特性に適合する鋼種をデータベースから検索し、完全に適合する鋼種の情報が存在しない場合に、要求特性と各鋼種との類似度を求め、最も類似した鋼種の製造条件の実績情報を、新しい鋼種に関する製造条件設計の初期情報として設定することによりシミュレーションによって材質を予測する鋼板品質設計装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−264934号公報
【特許文献2】特開平5−287342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1に記載された方法にあっては、知識データベースに与えるべき製造条件を設計者が決定する必要がある。製造条件は、鋼種の選択と共に鋼材の設計事項に含まれており、設計者は、知識データベースに入力するデータを用意するために、本方法による支援を得ることなく自ら鋼材を設計する必要がある。このことは特に経験の浅い設計者にとって負担が大きい。また、設計者が決定した製造条件が適切なものでなければ、適切な関連情報を知識データベースから抽出することはできず、その結果設計者が適切な鋼種を選択することが困難となる。特許文献2に記載された装置にあっては、入力された要求特性に完全に適合する鋼種の情報がデータベースに存在しない場合にシミュレーションによる材質の予測が行われるが、予測の精度が低ければ適切な鋼種を選択するための情報を設計者に提供することができない。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、上記課題を解決することができる鋼材設計支援システム、鋼材設計支援方法、及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様の鋼材設計支援システムは、過去に実施した鋼材の設計における顧客からの要求仕様及び当該要求仕様に対して適用された鋼種を記憶する実績情報記憶部と、各鋼種の特性を記憶する鋼種情報記憶部と、顧客からの要求仕様の入力を受け付ける入力部と、入力された要求仕様と同一及び類似の要求仕様を前記実績情報記憶部から検索し、検索された要求仕様に対して適用された鋼種に基づいて、候補となる鋼種を決定する候補決定手段と、前記鋼種情報記憶部に記憶された前記候補となる鋼種が、入力された要求仕様を満足するか否かを判定する適否判定手段と、前記適否判定手段の判定結果を出力する出力部と、を備える。
【0007】
この態様においては、前記候補決定手段が、前記検索された要求仕様に対して適用された鋼種を前記実績情報記憶部から抽出する抽出手段と、予め定められた条件に基づいて、抽出された鋼種と同一グループに属する鋼種を、候補となる鋼種として取得する取得手段と、を具備することが好ましい。
【0008】
また、上記態様においては、前記取得手段が、鋼種の用途及び主成分が少なくとも一致することを前記条件として、抽出された鋼種と同一グループに属する鋼種を、候補となる鋼種として取得するように構成されていることが好ましい。
【0009】
また、上記態様においては、前記候補決定手段が、入力された要求仕様に含まれる複数の項目のうち少なくとも一部の項目が同一又は類似の要求仕様を、前記同一及び類似の要求仕様として前記実績情報記憶部から検索するように構成されていることが好ましい。
【0010】
また、上記態様においては、前記候補決定手段が、入力された要求仕様に含まれる規格と少なくとも同一又は類似の規格を含む要求仕様を、前記同一及び類似の要求仕様として前記実績情報記憶部から検索するように構成されていることが好ましい。
【0011】
また、上記態様においては、前記出力部が、前記適否判定手段の判定結果を含み、候補となる鋼種から設計に使用する鋼種を選択するための画面を出力するように構成されており、前記入力部が、前記画面が出力されているときに、候補となる鋼種から設計に使用する鋼種の選択を受け付けるように構成されており、前記鋼材設計支援システムが、入力された要求仕様及び選択された鋼種を、実績情報記憶部に記憶させる書込手段をさらに備えることが好ましい。
【0012】
また、上記態様においては、前記出力部が、候補となる鋼種の特性に関する情報を出力可能に構成されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の一の態様の鋼材設計支援方法は、顧客からの要求仕様の入力を受け付けるステップと、過去に実施した鋼材の設計における顧客からの要求仕様及び当該要求仕様に対して適用された鋼種を記憶する実績情報記憶部から、入力された要求仕様と同一及び類似の要求仕様を検索し、検索された要求仕様に対して適用された鋼種に基づいて、候補となる鋼種を決定するステップと、各鋼種の特性を記憶する鋼種情報記憶部から前記候補となる鋼種の特性を読み出し、前記候補となる鋼種の特性が、入力された要求仕様を満足するか否かを判定するステップと、判定結果を出力するステップと、を有する。
【0014】
また、本発明の一の態様のコンピュータプログラムは、入力部と、出力部と、過去に実施した鋼材の設計における顧客からの要求仕様及び当該要求仕様に対して適用された鋼種を記憶する実績情報記憶部と、各鋼種の特性を記憶する鋼種情報記憶部とを備えるコンピュータに、鋼材の設計を支援するための情報を提供させるためのコンピュータプログラムであって、前記入力部が、顧客からの要求仕様の入力を受け付けるステップと、前記実績情報記憶部から、入力された要求仕様と同一及び類似の要求仕様を検索し、検索された要求仕様に対して適用された鋼種に基づいて、候補となる鋼種を決定するステップと、前記鋼種情報記憶部から前記候補となる鋼種の特性を読み出し、前記候補となる鋼種の特性が、入力された要求仕様を満足するか否かを判定するステップと、前記出力部が、判定結果を出力するステップと、を前記コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る鋼材設計支援システム、鋼材設計支援方法、及びコンピュータプログラムによれば、適切な鋼種を選択するための情報を設計者に提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態に係る鋼材設計支援システムの全体構成を示す模式図。
【図2】実施の形態に係る鋼材設計支援システムが備えるサーバ装置の構成を示すブロック図。
【図3】過去事例データベースの一例を示す模式図。
【図4】鋼種データベースの一例を示す模式図。
【図5】鋼種グループ定義データベースの一例を示す模式図。
【図6】試験成績データベースの一例を示す模式図。
【図7】実施の形態に係るクライアント装置の構成を示すブロック図。
【図8】要求仕様の一例を示す模式図。
【図9A】実施の形態に係る鋼材設計支援システムの鋼材設計支援処理の手順を示すフローチャート(前半)。
【図9B】実施の形態に係る鋼材設計支援システムの鋼材設計支援処理の手順を示すフローチャート(後半)。
【図10】過去事例検索処理の手順を示すフローチャート。
【図11】同一グループ鋼種検索処理の手順を示すフローチャート。
【図12】成分要求適合判定処理の手順を示すフローチャート。
【図13】成分要求適合判定処理の判定結果の一例を示す模式図。
【図14】材料特性要求適合判定処理の手順を示すフローチャート。
【図15】材料特性要求適合判定処理の判定結果の一例を示す模式図
【図16】鋼種検索結果画面の一例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0018】
[鋼材設計支援システムの構成]
図1は、本実施の形態に係る鋼材設計支援システムの全体構成を示す模式図である。本鋼材設計支援システム1は、インターネット又はイントラネット等の情報ネットワークを使用したクライアントサーバシステムであり、サーバ装置2と、クライアント装置3とを備えている。サーバ装置2と、クライアント装置3との間は、情報ネットワーク5によりデータ通信可能に接続されている。
【0019】
<サーバ装置2の構成>
図2は、サーバ装置2の構成を示すブロック図である。サーバ装置2は、コンピュータ2aによって実現される。図2に示すように、コンピュータ2aは、本体21と、画像表示部22と、入力部23とを備えている。本体21は、CPU21a、ROM21b、RAM21c、ハードディスク21d、読出装置21e、入出力インタフェース21f、通信インタフェース21g、及び画像出力インタフェース21hを備えており、CPU21a、ROM21b、RAM21c、ハードディスク21d、読出装置21e、入出力インタフェース21f、通信インタフェース21g、及び画像出力インタフェース21hは、バス21jによって接続されている。
【0020】
CPU21aは、RAM21cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、鋼材設計支援システム1のサーバ用のコンピュータプログラム24aを当該CPU21aが実行することにより、コンピュータ2aがサーバ装置2として機能する。
【0021】
ROM21bは、マスクROM、PROM、EPROM、又はEEPROM等によって構成されており、CPU21aに実行されるコンピュータプログラム及びこれに用いるデータ等が記録されている。
【0022】
RAM21cは、SRAMまたはDRAM等によって構成されている。RAM21cは、ハードディスク21dに記録されているコンピュータプログラム24aの読み出しに用いられる。また、CPU21aがコンピュータプログラムを実行するときに、CPU21aの作業領域として利用される。
【0023】
ハードディスク21dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU21aに実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータがインストールされている。サーバ用のコンピュータプログラム24aも、このハードディスク21dにインストールされている。
【0024】
読出装置21eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体24に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体24には、コンピュータをサーバ装置2として機能させるためのコンピュータプログラム24aが格納されており、コンピュータ2aが当該可搬型記録媒体24からコンピュータプログラム24aを読み出し、当該コンピュータプログラム24aをハードディスク21dにインストールすることが可能である。
【0025】
なお、前記コンピュータプログラム24aは、可搬型記録媒体24によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ2aと通信可能に接続された外部の機器から前記電気通信回線を通じて提供することも可能である。例えば、前記コンピュータプログラム24aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ2aがアクセスして、当該コンピュータプログラムをダウンロードし、これをハードディスク21dにインストールすることも可能である。
【0026】
ハードディスク21dには、例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)等のマルチタスクオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施の形態に係るコンピュータプログラム24aは当該オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0027】
また、ハードディスク21dには、過去事例データベース101、鋼種データベース102、鋼種グループ定義データベース103、試験成績データベース104が設けられている。図3は、過去事例データベース101の一例を示す模式図である。過去事例データベース101は、過去の鋼材の設計実績情報を格納するテーブルであり、設計実績情報には、過去の顧客からの要求仕様とその要求仕様に対して適用された鋼種の情報が含まれ、1つの設計実績情報が1レコードとして過去事例データベース101に記憶される。過去事例データベース101には、過去事例番号を格納するフィールド101aと、鋼材のJIS規格を格納するフィールド101bと、鋼材のサイズ、例えば断面が円形の棒鋼の場合にはその断面円の直径を格納するフィールド101cと、需要家(顧客)を特定する情報である需要家コードを格納するフィールド101dと、焼入れ、焼きなまし、焼き戻し等の熱処理の有無、圧延等の加工区分を格納するフィールド101eと、各事例において適用された鋼種を格納するフィールド101pとを含んでいる。
【0028】
なお、上述した過去事例データベース101には、鋼材のJIS規格の格納するフィールドを設ける構成について述べたが、これに限定されるものではない。過去事例データベースに格納する規格の情報は、ASTM等の各国規格をはじめとする公的規格であってもよいし、社内で規定された独自規格であってもよい。
【0029】
図4は、鋼種データベース102の一例を示す模式図である。鋼種データベース102は、鋼種に関する情報を格納するテーブルであり、鋼種を格納するフィールド102aと、成分管理値範囲を格納するフィールド102b,102c,…と、鋼種毎に割り当てられた鋼種コードを格納するフィールド102pとを含んでいる。成分管理値範囲とは、鋼種毎に定まる含有成分の値の範囲であり、炭素、シリコーン、マグネシウム等の成分毎に定められている。例えば、鋼種Aの炭素の成分管理値範囲は、上限値が0.17%であり、下限値が0.19%である。また、本実施の形態において、鋼種コードは、用途を示すコード、主成分を示すコード、含有炭素量を示すコード等が組み合わされて構成されている。例えば、鋼種Aの鋼種コードは、用途を示すコード“AA”と、主成分を示すコード“BB”と、含有炭素量を示すコード“18”等が組み合わされた“AABB…18”とされている。
【0030】
図5は、鋼種グループ定義データベース103の一例を示す模式図である。鋼種グループ定義データベース103は、同一グループの鋼種を定義するための情報(定義フラグ)を格納するデータベースであり、鋼種コードに含まれる各コード(用途コード、主成分コード、炭素含有量コード等)に対応付けて、そのコードが同一グループの鋼種の定義に使用されるコードであるか否かを示す定義フラグを格納するための領域103a,103b,…,103pが設けられている。例えば、用途コード及び主成分コードが同一グループの鋼種の定義に使用されるコードとされ、炭素含有量コードが同一グループの鋼種の定義に使用されないコードとされる場合には、用途コード及び主成分コードに対応付けられた領域103a,103bの定義フラグが「1」にセットされ、炭素含有量コードに対応付けられた領域103pの定義フラグが「0」にセットされる。例えば、用途コード及び主成分コードの定義フラグのみが「1」セットされている場合は、用途コード及び主成分コードが一致する全ての鋼種が同一グループとされる。つまり、図4に示す例では、鋼種コードのうちの“AABB”が一致する鋼種A〜Iの全てが同一グループとなる。
【0031】
図6は、試験成績データベース104の一例を示す模式図である。試験成績データベースは、過去に実施された焼入れ硬さ等の試験の成績を格納するためのテーブルであり、試験番号を格納するためのフィールド104aと、鋼種名を格納するためのフィールド104bと、焼入れ硬さ等の試験成績を格納するためのフィールド104pとを含んでいる。図6においては、9mm焼入れ硬さの試験成績が格納されている例を示しているが、試験成績データベース104には引張強度等の他の試験成績も格納される。
【0032】
入出力インタフェース21fは、例えばUSB,IEEE1394,又はRS-232C等のシリアルインタフェース、SCSI,IDE,又は IEEE1284等のパラレルインタフェース、及びD/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェース等から構成されている。入出力インタフェース21fには、キーボード及びマウスからなる入力部23が接続されており、ユーザが当該入力部23を使用することにより、コンピュータ2aにデータを入力することが可能である。
【0033】
通信インタフェース21gは、Ethernet(登録商標)インタフェースである。通信インタフェース21gはLANを介してクライアント装置3に接続されている。コンピュータ2aは、通信インタフェース21gにより、所定の通信プロトコルを使用して当該LANに接続されたクライアント装置3との間でデータの送受信が可能である。この通信インタフェース21gは、クライアント装置3から送信された情報を受信することにより、当該情報の入力を受け付けることができ、また、クライアント装置3へ情報を送信することにより、当該情報を出力することができる。
【0034】
画像出力インタフェース21hは、LCDまたはCRT等で構成された画像表示部22に接続されており、CPU21aから与えられた画像データに応じた映像信号を画像表示部22に出力するようになっている。画像表示部22は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
【0035】
<クライアント装置3の構成>
図7は、本実施の形態に係るクライアント装置3の構成を示すブロック図である。クライアント装置3は、コンピュータ3aによって実現される。図7に示すように、コンピュータ3aは、本体31と、画像表示部32と、入力部33とを備えている。本体31は、CPU31a、ROM31b、RAM31c、ハードディスク31d、読出装置31e、入出力インタフェース31f、通信インタフェース31g、及び画像出力インタフェース31hを備えており、CPU31a、ROM31b、RAM31c、ハードディスク31d、読出装置31e、入出力インタフェース31f、通信インタフェース31g、及び画像出力インタフェース31hは、バス31jによって接続されている。
【0036】
ハードディスク31dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU31aに実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータがインストールされている。クライアント用のコンピュータプログラム34aも、このハードディスク31dにインストールされている。
【0037】
読出装置31eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体34に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体34には、コンピュータをクライアント装置3として機能させるためのコンピュータプログラム34aが格納されており、コンピュータ3aが当該可搬型記録媒体34からコンピュータプログラム34aを読み出し、当該コンピュータプログラム34aをハードディスク31dにインストールすることが可能である。
【0038】
なお、前記コンピュータプログラム34aは、可搬型記録媒体34によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ3aと通信可能に接続された外部の機器から前記電気通信回線を通じて提供することも可能である。例えば、前記コンピュータプログラム34aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ3aがアクセスして、当該コンピュータプログラムをダウンロードし、これをハードディスク31dにインストールすることも可能である。
【0039】
また、ハードディスク31dには、例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)等のマルチタスクオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施の形態に係るコンピュータプログラム34aは当該オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0040】
なお、クライアント装置3のその他の構成は、上述したサーバ装置2の構成と同様であるので、その説明を省略する。
【0041】
[鋼材設計支援システムの動作]
以下、本実施の形態に係る鋼材設計支援システム1の動作について説明する。
【0042】
鋼材の設計業務を開始するとき、需要家(顧客)からの鋼材の要求仕様が与えられる。図8は、要求仕様の一例を示す模式図である。図8に示すように、要求仕様には、規格、鋼材のサイズ、需要家に個別に割り当てられた需要家コード、加工区分、成分管理値範囲、試験値範囲等が含まれる。本例においては、要求される鋼材の規格として“X”が、要求される鋼材のサイズとして丸棒鋼の断面円の直径65mmが、需要家コードとして“T0003”が、加工区分として“P”が、成分管理値範囲として炭素量の下限値0.17%及び上限値0.23%が、試験値範囲として9mm焼入れ硬さの下限値31及び上限値36がそれぞれ指定されている。
【0043】
上記のような鋼材の要求仕様が与えられ、鋼材の設計を開始する場合に、設計者は本実施の形態に係る鋼材設計支援システム1に以下のような鋼材設計支援処理を実行させる。図9A及び図9Bは、本実施の形態に係る鋼材設計支援システム1の鋼材設計支援処理の手順を示すフローチャートである。設計者は、クライアント装置3の入力部33を操作して、与えられた要求仕様をクライアント装置3に入力する。クライアント装置3のCPU31aは、要求仕様の入力を受け付け(ステップS101)、当該要求仕様のデータをサーバ装置2へ送信する(ステップS102)。
【0044】
サーバ装置2のCPU21aは、要求仕様データを受信すると、要求仕様と同一及び類似の要求仕様を含む過去の鋼材の設計実績情報を過去事例データベース101から検索する過去事例検索処理を実行する(ステップS103)。
【0045】
図10は、過去事例検索処理の手順を示すフローチャートである。まず、CPU21aは、入力された要求仕様と同一の規格、需要家コード、加工区分を含む設計実績情報を過去事例データベース101から検索する(ステップ201)。図8に示す例を用いてこの処理を説明する。この場合、要求仕様に含まれる規格“X”、需要家コード“T0003”、及び加工区分“P”と同一の規格、需要家コード、及び加工区分を含む設計実績情報が検索される。図3の例では、過去事例番号1〜4及び6の設計実績情報が上記の条件に合致し、検索結果として得られる。
【0046】
次にCPU21aは、ステップS201において1以上の設計実績情報が検索結果として得られたか否かを判定し(ステップS202)、1以上の設計実績情報が得られた場合には(ステップS202においてYES)、メインルーチンにおける過去事例検索処理の呼び出しアドレスへ処理をリターンする。上記の例では、6つの設計実績情報が得られているので、過去事例検索処理はここで終了する。一方、検索の結果、設計実績情報が1つも得られなかった場合には(ステップS202においてNO)、CPU21aは、入力された要求仕様と同一の規格及び加工区分を含む設計実績情報を過去事例データベース101から検索する(ステップ203)。
【0047】
次に、CPU21aは、ステップS203において1以上の設計実績情報が検索結果として得られたか否かを判定し(ステップS204)、1以上の設計実績情報が得られた場合には(ステップS204においてYES)、メインルーチンにおける過去事例検索処理の呼び出しアドレスへ処理をリターンする。ステップS203の検索の結果、設計実績情報が1つも得られなかった場合には(ステップS204においてNO)、CPU21aは、入力された要求仕様と同一の規格を含む設計実績情報を過去事例データベース101から検索し(ステップ205)、メインルーチンにおける過去事例検索処理の呼び出しアドレスへ処理をリターンする。なお、ステップS205の検索によっても設計実績情報が1つも得られなかった場合は、過去事例がないことを示すエラー情報がクライアント装置3へと送信され、クライアント装置3の画像表示部32にエラー表示がされる。
【0048】
次にCPU21aは、過去事例検索処理において検索された設計実績情報のうちの1つを選択する(ステップS104)。上述した例においては、過去事例検索処理において過去事例番号1〜4及び6の設計実績情報が検索されている。したがって、ステップS104では、これらの過去事例番号1〜4及び6のうちの1つの設計実績情報が選択される。
【0049】
CPU21aは、選択した設計実績情報において適用された鋼種と同一グループの鋼種を検索する同一グループ鋼種検索処理を実行する(ステップS105)。図11は、同一グループ鋼種検索処理の手順を示すフローチャートである。当該同一グループ鋼種検索処理においては、CPU21aは、選択した設計実績情報に含まれる鋼種名を指定して鋼種データベース102から鋼種コードを取得する(ステップS301)。図3に示す例においては、過去事例番号1,2の設計実績情報に鋼種名“A”が、過去事例番号3の設計実績情報に鋼種名“C”が、過去事例番号4,6の設計実績情報に鋼種名“D”が含まれている。したがって、ステップS302の処理では、過去事例番号1,2の設計実績情報が選択されている場合には鋼種名“A”の鋼種コード“AABB…18”が取得され、過去事例番号3の設計実績情報が選択されている場合には鋼種名“C”の鋼種コード“AABB…19”が取得され、過去事例番号4,6の設計実績情報が選択されている場合には鋼種名“D”の鋼種コード“AABB…20”が取得される(図4参照)。
【0050】
ステップS301の処理の後、CPU21aは、鋼種グループ定義データベース103を参照して、鋼種コードに含まれるコードの中で、同一グループの鋼種の定義に用いられるコードを特定する(ステップS302)。具体的には、鋼種グループ定義データベース103において定義フラグが“1”にセットされているコードが特定される。図5に示す例を用いて説明すると、定義フラグが“1”にセットされているのは用途コード及び主成分コードである。よって、鋼種コードの中の1〜2桁目に対応する用途コード及び鋼種コードの中の3〜4桁目に対応する主成分コードが同一グループの鋼種の定義に用いられる。上記の例においては、鋼種名“A”、“C”、“D”の鋼種コード“AABB…18”、“AABB…19”、“AABB…20”のそれぞれの1〜4桁目のコードは何れも“AABB”である。したがって、1〜4桁目のコードが“AABB”である鋼種コードを有する鋼種が同一グループに属することとなる。
【0051】
ステップS302の処理の後、CPU21aは、鋼種データベース102に登録されている鋼種から、選択された設計実績情報において適用された鋼種と同一グループの鋼種を検索する(ステップS303)。上記の例においては、鋼種コードの1〜4桁目が“AABB”である鋼種が検索される。この結果、“A”、“C”、“D”、“E”、“F”、“G”、“I”が検索される(図4参照)。ステップS303の処理の後、CPU21aはメインルーチンにおける同一グループ鋼種検索処理の呼び出しアドレスへ処理をリターンする。
【0052】
次に、CPU21aは、過去事例検索処理において検索された設計実績情報の全てを選択したか否かを判定し(ステップS106)、未選択の設計実績情報が残っている場合には(ステップS106においてNO)、ステップS104へ処理を移し、未選択の設計実績情報のうちから1つを選択し(ステップS104)、当該設計実績情報について同一グループ鋼種検索処理を実行する(ステップS105)。
【0053】
一方、過去事例検索処理において検索された全ての設計実績情報が既に選択されている場合には(ステップS106においてYES)、CPU21aは、同一グループ鋼種検索処理において検索された鋼種の1つを選択し(ステップS107)、選択された鋼種が要求仕様で指定される成分要求を満足するか否かを判定する成分要求適合判定処理(ステップS108)、選択された鋼種が要求仕様で指定される材料特性要求を満足するか否かを判定する材料特性要求適合判定処理(ステップS109)を順次実行する。
【0054】
図12は、成分要求適合判定処理の手順を示すフローチャートである。成分要求適合判定処理において、CPU21aは、選択されている鋼種の成分管理値範囲を鋼種データベース102から取得する(ステップS401)。例えば、鋼種Aが選択されている場合、鋼種Aの含有炭素量の上限値0.17%及び下限値0.19%が取得される。
【0055】
次にCPU21aは、入力された要求仕様に含まれる成分範囲の1つを選択する(ステップS402)。例えば、図8の例では、含有炭素量の下限値0.17%及び上限値0.23%又は他の含有成分範囲(シリコーン、マグネシウム等の含有量範囲)が選択される。
【0056】
CPU21aは、選択された成分範囲内に、ステップS401において取得された成分管理値範囲が含まれるか否かを判定する(ステップS403)。例えば、鋼種Aの炭素の成分管理値範囲は0.17〜0.19%であり、要求仕様に示される含有炭素量の範囲0.17〜0.23%に含まれる。したがって、この場合は、ステップS403において、選択された成分範囲内に、取得された成分管理値範囲が含まれると判定される。一方、鋼種Gの炭素の成分管理値範囲は0.2〜0.24%であり、要求仕様に示される含有炭素量の範囲を超えている。この場合は、ステップS403において、選択された成分範囲内に、取得された成分管理値範囲が含まれないと判定される。
【0057】
ステップS403において、選択された成分範囲内に、取得された成分管理値範囲が含まれる場合(ステップS403においてYES)、CPU21aは、選択された成分(例えば、炭素)に対応付けて、選択された鋼種が要求仕様において要求されている成分範囲に適合することを示す情報(以下、「成分適合情報」という。)を判定結果としてRAM21cに記憶し(ステップS404)、処理をステップS408へ移す。
【0058】
一方、ステップS403において、選択された成分範囲内に取得された成分管理値範囲が含まれない場合(ステップS403においてNO)、CPU21aは、選択された成分範囲と、ステップS401において取得された成分管理値範囲とが重複するか否かを判定する(ステップS405)。例えば、鋼種Gの炭素の成分管理値範囲は0.17〜0.24%であり、要求仕様に示される含有炭素量の範囲0.17〜0.23%と重複する。したがって、この場合は、ステップS405において、選択された成分範囲と、取得された成分管理値範囲とが重複すると判定される。一方、鋼種Iの炭素の成分管理値範囲は0.24〜0.27%であり、要求仕様に示される含有炭素量の範囲と重複していない。この場合は、ステップS405において、選択された成分範囲と、取得された成分管理値範囲とが重複しないと判定される。
【0059】
ステップS405において、選択された成分範囲と、取得された成分管理値範囲とが重複する場合(ステップS405においてYES)、CPU21aは、選択された成分(例えば、炭素)に対応付けて、選択された鋼種が要求仕様において要求されている成分範囲に一部適合することを示す情報(以下、「成分部分適合情報」という。)を判定結果としてRAM21cに記憶し(ステップS406)、処理をステップS408へ移す。
【0060】
一方、ステップS405において、選択された成分範囲と取得された成分管理値範囲とが重複しない場合(ステップS405においてNO)、CPU21aは、選択している鋼種を候補鋼種群から除外する(ステップS407)。この処理においては、具体的には、選択している鋼種に対応付けて、候補から除外することを示す情報がRAM21cに記憶される。ステップS407の処理の後、CPU21aは、処理をステップS408へ移す。
【0061】
ステップS408において、CPU21aは、入力された要求仕様に含まれる成分範囲の全てが既に選択されたか否かを判定する(ステップS408)。要求仕様に含まれる成分範囲のうち、まだ選択されていない成分範囲が残っている場合には(ステップS408においてNO)、CPU21aは処理をステップS402へ戻し、未選択の成分範囲のうちから1つを選択し(ステップS402)、ステップS403以降の処理を実行する。一方、要求仕様に含まれる成分範囲の全てが既に選択されている場合には(ステップS408においてYES)、CPU21aはメインルーチンにおける成分要求適合判定処理の呼び出しアドレスへ処理をリターンする。
【0062】
図13は、図3〜図6及び図8に示す例において、上記の成分要求適合判定処理を実行した場合の判定結果を示す模式図である。本例においては、図12に示すように、鋼種A,C,D,E,Fについては、成分要求に適合している(図13において“○”で示される。)と判定され、鋼種Gについては、成分要求に部分的に適合している(図13において“△”で示される。)と判定される。また、鋼種Iについては、成分要求に適合していないと判定され、候補鋼種群から除外される。
【0063】
図14は、材料特性要求適合判定処理の手順を示すフローチャートである。材料特性要求適合判定処理において、CPU21aは、選択されている鋼種の試験成績を、試験成績データベース104から取得する(ステップS501)。例えば、鋼種Aが選択されている場合、鋼種Aの試験成績データベース104に登録されている全ての9mm焼入れ硬さの試験成績“28”、“30”、“29”、“31”、“33”、“32”、“29”、“33”が取得される。また、鋼種Aについて他の試験成績が試験成績データベース104に登録されている場合には、その試験成績も取得される。
【0064】
次にCPU21aは、入力された要求仕様に含まれる試験値範囲の1つを選択する(ステップS502)。例えば、図8の例では、9mm焼入れ硬さの下限値31及び上限値36又は他の試験値範囲が選択される。
【0065】
CPU21aは、ステップS501において取得された試験成績のうちのN1%以上が、選択された試験値範囲内に入るか否かを判定する(ステップS503)。例えば、鋼種Fの9mm焼入れ硬さの9つの試験結果“33”、“34”、“32”、“33”、“34”、“37”、“35”、“33”、“32”のうちの8つが、入力された要求仕様における9mm焼入れ硬さの試験値範囲31〜36に入る。このため、例えばN1が90の場合には、鋼種Fについては試験成績のN1%以上が試験値範囲内に入る、即ち、材料特性が適合すると判定されることとなる。なお、ここで試験成績データベースから対応する試験成績が1つも取得されなかった場合には、判定不能であることを示す情報(以下、「判定不能情報」という。)がRAM21cに記憶される。
【0066】
ステップS503において、取得された試験成績のうちのN1%以上が、選択された試験値範囲内に入る場合(ステップS503においてYES)、CPU21aは、選択された試験(例えば、9mm焼入れ硬さ)に対応付けて、選択された鋼種が要求仕様において要求されている試験値範囲に適合することを示す情報(以下、「材料特性適合情報」という。)を判定結果としてRAM21cに記憶し(ステップS504)、処理をステップS508へ移す。
【0067】
一方、ステップS503において、取得された試験成績のうちのN1%以上が、選択された試験値範囲内に入らない場合(ステップS503においてNO)、CPU21aは、取得された試験成績のうちのN2%以上が、選択された試験値範囲内に入るか否かを判定する(ステップS505)。ここで、N2はN1より小さい正の整数であり、例えば70とされる。図3〜図6及び図8の例では、鋼種Gの9mm焼入れ硬さの7つの試験結果“35”、“37”、“38”、“36”、“35”、“32”、“36”のうちの5つが、入力された要求仕様における9mm焼入れ硬さの試験値範囲31〜36に入る。このため、例えばN2が70の場合には、鋼種Gについては試験成績のN2%以上が試験値範囲内に入る、即ち、材料特性が部分的に適合すると判定されることとなる。
【0068】
ステップS505において、取得された試験成績のうちのN2%以上が、選択された試験値範囲内に入る場合(ステップS505においてYES)、CPU21aは、選択された試験(例えば、9mm焼入れ硬さ)に対応付けて、選択された鋼種が要求仕様において要求されている試験値範囲に部分的に適合することを示す情報(以下、「材料特性部分適合情報」という。)を判定結果としてRAM21cに記憶し(ステップS506)、処理をステップS508へ移す。
【0069】
一方、ステップS505において、取得された試験成績のうちのN2%以上が、選択された試験値範囲内に入らない場合(ステップS505においてNO)、CPU21aは、選択された試験(例えば、9mm焼入れ硬さ)に対応付けて、選択された鋼種が要求仕様において要求されている試験値範囲に適合しないことを示す情報(以下、「材料特性不適合情報」という。)を判定結果としてRAM21cに記憶し(ステップS507)、処理をステップS508へ移す。例えば、鋼種Aの9mm焼入れ硬さの8つの試験結果“28”、“30”、“29”、“31”、“33”、“32”、“29”、“33”のうち、4つの試験成績“28”、“30”、“29”、“29”が、入力された要求仕様における9mm焼入れ硬さの試験値範囲31〜36から外れる。よって、ここでN2が70であれば、鋼種Aについては材料特性が不適合と判定されることとなる。
【0070】
ステップS508において、CPU21aは、入力された要求仕様に含まれる試験値範囲の全てが既に選択されたか否かを判定する(ステップS508)。要求仕様に含まれる試験値範囲のうち、まだ選択されていない試験値範囲が残っている場合には(ステップS508においてNO)、CPU21aは処理をステップS502へ戻し、未選択の試験値範囲のうちから1つを選択し(ステップS502)、ステップS503以降の処理を実行する。一方、要求仕様に含まれる試験値範囲の全てが既に選択されている場合には(ステップS508においてYES)、CPU21aはメインルーチンにおける材料特性要求適合判定処理の呼び出しアドレスへ処理をリターンする。
【0071】
図15は、図3〜図6及び図8に示す例において、N1が90、N2が70の場合における上記の材料特性要求適合判定処理を実行したときの判定結果を示す模式図である。本例においては、上述したように鋼種Aについては材料特性が不適合(図15において“×”で示される。)と判定される。鋼種C、D、Eについては、9mm焼入れ硬さの試験成績が試験成績データベース104に登録されていないため、判定不能(図15において“−”で示される。)とされる。また、鋼種Fについては材料特性が適合している(図15において“○”で示される。)と判定され、鋼種Gについては材料特性が部分的に適合している(図15において“△”で示される。)と判定される。
【0072】
上述のような材料特性要求適合判定処理を終了すると、CPU21aは、同一グループ鋼種検索処理において検索された鋼種の全てを選択したか否かを判定し(ステップS110)、未選択の鋼種が残っている場合には(ステップS110においてNO)、ステップS107へ処理を移し、未選択の鋼種のうちから1つを選択し(ステップS107)、当該鋼種について成分要求適合判定処理(ステップS108)及び材料特性要求適合判定処理(ステップS109)を実行する。
【0073】
一方、同一グループ鋼種検索処理において検索された全ての鋼種が既に選択されている場合には(ステップS110においてYES)、CPU21aは、鋼種の検索並びに成分要求及び材料特性要求の適合判定の結果を示す鋼種検索結果データをクライアント装置3へと送信する(ステップS111)。
【0074】
クライアント装置3のCPU31aは、鋼種検索結果データを受信すると、鋼種の検索並びに成分要求及び材料特性要求の適合判定の結果を示す鋼種検索結果画面を画像表示部32に表示する(ステップS112)。図16は、鋼種検索結果画面の一例を示す模式図である。図に示すように、鋼種検索結果画面には、鋼種の検索並びに成分要求及び材料特性要求の適合判定の結果が表形式で表示される。表の各行は検索された鋼種に対応しており、各鋼種について、成分要求の適合判定結果、及び材料特性の適合判定結果が示される。
【0075】
鋼種検索結果画面において、適合判定結果の記号(“○”、“△”、“×”)は、鋼種の選択の参考用の画面を呼び出すためのリンクであり、マウス又はキーボードの操作により記号が選択されると、選択された記号に対応する参考用画面が表示される。さらに詳しく説明すると、成分要求適合判定結果の記号が選択された場合には、その記号に対応する鋼種における成分に関する参考情報が表示され、材料特性要求適合判定結果の記号が選択された場合には、その記号に対応する鋼種における試験成績に関する参考情報が表示される。例えば、鋼種Aの炭素の成分要求適合判定結果の“○”が選択されると、鋼種Aの炭素含有量の試験成績の度数分布グラフG11が表示される。この度数分布グラフG11は、横軸が成分値(炭素含有量)、縦軸が度数とされ、要求仕様における炭素含有量の要求範囲が示される。また、鋼種Aの9mm焼入れ硬さの材料特性要求適合判定結果の“×”が選択されると、鋼種Aの焼入れ硬さの試験成績の散布図G21が表示される。同様に、鋼種Fの9mm焼入れ硬さの材料特性要求適合判定結果の“○”が選択されると、鋼種Fの焼入れ硬さの試験成績の散布図G21が表示され、鋼種Gの9mm焼入れ硬さの材料特性要求適合判定結果の“△”が選択されると、鋼種Gの焼入れ硬さの試験成績の散布図G21が表示される。これらの散布図G21〜G23は、横軸が試験片における焼入れ試験位置(試験片の端部から焼入れ試験位置の距離)とされ、縦軸が硬度とされている。また、図16に示すように、散布図G21〜G23では、各鋼種の9mm焼入れ硬さの試験成績が、要求仕様における9mm焼入れ硬さの試験値範囲と共に表示される。つまりCPU31aは、鋼種検索結果画面が表示されている間に、適合判定結果の記号が選択され、参考情報の表示指示を受け付けると(ステップS113においてYES)、当該参考情報の表示に必要な試験成績をサーバ装置2に要求する(ステップS114)。サーバ装置2のCPU21aは、かかる要求データを受信すると、試験成績データベース104を参照し、選択された記号に対応する鋼種の試験成績を抽出する(ステップS115)。例えば、鋼種Fの9mm焼入れ硬さの材料特性要求適合判定結果の“○”が選択された場合には、試験成績データベース104から鋼種Fの9mm焼入れ硬さの試験成績が抽出される。CPU21aは、こうして試験成績データベース104から試験成績を抽出すると、当該試験成績をクライアント装置3へ送信する(ステップS116)。クライアント装置3のCPU31aは、試験成績を受信すると、上記のようなグラフを作成し、画像表示部32に表示する(ステップS117)。
【0076】
設計者は、上記のような参考情報を確認することで、より適切に鋼材の設計を行うことができる。つまり、鋼種検索結果画面においては、成分要求適合判定結果及び材料特性要求適合判定結果が表示されているので、設計者は鋼種検索結果画面を見れば各鋼種が要求されている成分値に適合しているかどうか、また要求されている材料特性に適合しているかを知ることができる。これでも設計者による鋼種の選択には有用であるが、本実施の形態に係る鋼材設計支援システム1では、上述した参考情報を提供することにより、過去の事例において当該鋼種がどのような成分値であったか、又はどのような材料特性値であったかを具体的に提示する。設計者は、グラフを参照することで、要求されている範囲に対して過去事例における成分値又は材料特性値がどのように分布しているかを知ることができ、これを鋼種の選択に使用することができ、適切且つ容易に鋼種を選択することが可能となる。
【0077】
図16に示すように、鋼種検索結果画面の表の各行には、設計に使用する鋼種として採用する場合に選択するためのチェックボックスSが設けられている。チェックボックスSは、選択用グラフィカルユーザインタフェースオブジェクト(コントロール)であり、鋼種検索結果画面に表示されている全てのチェックボックスSのうちの1つをマウス又はキーボードの操作によって選択可能である。設計者は、鋼種検索結果画面及び上記のグラフを参照して選択する鋼種を決定すると、当該鋼種に対応する選択ボックスSをマウス又はキーボード操作によって選択する。また鋼種検索結果画面には、この鋼種の選択結果を過去事例としてサーバ装置2のデータベースへ登録するための登録ボタンRが設けられている。登録ボタンRは、マウス又はキーボード操作によって選択が可能なコントロールである。CPU31aは、設計者からの選択ボックスSによる鋼種の選択及び登録ボタンRによるデータベースへの登録指示を受け付けると(ステップS118)、選択された鋼種を示すデータを含む登録指示データをサーバ装置2へ送信し(ステップS119)、処理を終了する。サーバ装置2が登録指示データを受信すると、CPU21aは登録指示データにおいて指示される鋼種と、入力された要求仕様とを過去事例データベース101に登録し(ステップS120)、処理を終了する。これにより、今回の鋼材の設計実績が、過去事例としてデータベースに蓄積され、将来の鋼材の設計支援に用いられる。
【0078】
上述の如く構成したことにより、本実施の形態に係る鋼材設計支援システム1は、入力された要求仕様と同一又は類似の要求仕様を含む設計実績情報を過去事例から検索し、この検索結果に基づいて候補となる鋼種を決定し、各候補の鋼種が要求仕様を満足するか否かを判定し、判定結果を設計支援情報として出力するので、設計者は判定結果から適切な鋼種を容易に選択することができる。
【0079】
また、本実施の形態においては、成分及び材料特性について、鋼種が要求仕様を満足するか否かを判定し、その判定結果を“○”、“△”、“×”の三段階で表示するため、設計者は候補として挙げられた各鋼種が要求仕様を満足するか、部分的に満足するか、満足しないかを容易に把握することができる。
【0080】
また、より適切な鋼種の選択を可能とするために、本実施の形態に係る鋼材設計支援システム1においては、上記の判定結果に加え、各鋼種の試験成績に関する参考情報を表示可能な構成としている。これにより、設計者は、成分要求適合判定結果及び材料特性要求適合判定結果だけでは最適な鋼種を選択することが困難な場合に、参考情報を確認し、これを鋼種の選択に使用することができる。例えば、複数の鋼種の成分要求適合判定結果及び材料特性要求適合判定結果がいずれも“○”であるような場合には、これらの判定結果だけでは最適な鋼種を選択することが困難である。このような場合に参考情報を確認することにより、各鋼種の個別の試験成績を確認することができ、より適切な鋼種を選択することが可能となる。また、参考情報を試験成績の度数分布及び散布図のようなグラフ形式で表示することで、設計者は試験成績の分布を容易に把握することができる。
【0081】
(その他の実施の形態)
なお、上述した実施の形態においては、入力された要求仕様と同一又は類似の要求仕様を含む過去事例(設計実績情報)を過去事例データベースから取得し、これらの過去事例において適用された鋼種と同一グループの鋼種を鋼種データベースから検索し、これによって得られた鋼種を選択される候補鋼種群とする構成について述べたが、これに限定されるものではない。入力された要求仕様と同一又は類似の要求仕様を含む過去事例において適用された鋼種を候補鋼種群としてもよい。しかし、適合判定の評価対象となる鋼種を増やし、鋼種の選択の自由度を高め、且つ過去事例において適用された鋼種よりも適切な鋼種を検索可能とする点で、過去事例において適用された鋼種と同一グループの鋼種を検索する構成の方が好ましい。
【0082】
また、上述した実施の形態においては、入力された要求仕様と一部が同一の要求仕様を含む過去事例(設計実績情報)を、要求仕様と同一及び類似の要求仕様を含む過去事例として過去事例データベースから検索する構成について述べたが、これに限定されるものではない。入力された要求仕様と一部が同一の要求仕様を含む過去事例だけでなく、入力された要求仕様と一部が類似の要求仕様を含む過去事例を要求仕様と類似の要求仕様を含む過去事例として過去事例データベースから検索する構成としてもよい。
【0083】
また、上述した実施の形態においては、鋼材設計支援システム1が、サーバ装置2、及びクライアント装置3、によって構成されている場合について述べたが、これに限定されるものではない。サーバ装置2、及びクライアント装置3の機能の全てを1台の装置に搭載した鋼材設計支援システムとしてもよい。
【0084】
また、上述した実施の形態においては、単一のコンピュータ2aによりコンピュータプログラム24aの全ての処理を実行する構成について述べたが、これに限定されるものではなく、上述したコンピュータプログラム24aと同様の処理を、複数の装置(コンピュータ)により分散して実行する分散システムとすることも可能である。コンピュータ3aについても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の鋼材設計支援システム、鋼材設計支援方法、及びコンピュータプログラムは、鋼材の設計業務を支援する情報を提供する鋼材設計支援システム及び鋼材設計支援方法、並びにコンピュータに鋼材の設計業務を支援する情報を提供させるためのコンピュータプログラムとして有用である。
【符号の説明】
【0086】
1 鋼材設計支援システム
2 サーバ装置
2a コンピュータ
21a CPU
21b ROM
21c RAM
21d ハードディスク
21g 通信インタフェース
24a コンピュータプログラム
3 クライアント装置
3a コンピュータ
31a CPU
31b ROM
31c RAM
31d ハードディスク
32 画像出力部
33 入力部
34a コンピュータプログラム
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材の設計業務を支援する情報を提供する鋼材設計支援システム及び鋼材設計支援方法、並びにコンピュータに鋼材の設計業務を支援する情報を提供させるためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材の設計業務においては、顧客から与えられた仕様(品質要求)を満足する適切な鋼種を選択することが重要である。特に経験が浅い設計者にとっては、仕様に応じた適切な鋼種を選択することは容易ではなく、要求を満足するが過剰に高品質な鋼種、又は要求を満足しない鋼種を選択してしまう場合がある。このような鋼材の設計を支援するために、特許文献1には、製造条件からルールを用いて決まる設計知識を知識データベースに格納しておき、設計者が定めた製造条件等を知識データベースに与えたときに、知識データベースから関連知識が抽出し、設計者にガイダンスする鋼材の品質設計支援方法が開示されている。また、特許文献2には、鋼種の機械試験特性及び製造条件の過去の実績情報をデータベースに蓄積しておき、入力された要求特性に適合する鋼種をデータベースから検索し、完全に適合する鋼種の情報が存在しない場合に、要求特性と各鋼種との類似度を求め、最も類似した鋼種の製造条件の実績情報を、新しい鋼種に関する製造条件設計の初期情報として設定することによりシミュレーションによって材質を予測する鋼板品質設計装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−264934号公報
【特許文献2】特開平5−287342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1に記載された方法にあっては、知識データベースに与えるべき製造条件を設計者が決定する必要がある。製造条件は、鋼種の選択と共に鋼材の設計事項に含まれており、設計者は、知識データベースに入力するデータを用意するために、本方法による支援を得ることなく自ら鋼材を設計する必要がある。このことは特に経験の浅い設計者にとって負担が大きい。また、設計者が決定した製造条件が適切なものでなければ、適切な関連情報を知識データベースから抽出することはできず、その結果設計者が適切な鋼種を選択することが困難となる。特許文献2に記載された装置にあっては、入力された要求特性に完全に適合する鋼種の情報がデータベースに存在しない場合にシミュレーションによる材質の予測が行われるが、予測の精度が低ければ適切な鋼種を選択するための情報を設計者に提供することができない。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、上記課題を解決することができる鋼材設計支援システム、鋼材設計支援方法、及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様の鋼材設計支援システムは、過去に実施した鋼材の設計における顧客からの要求仕様及び当該要求仕様に対して適用された鋼種を記憶する実績情報記憶部と、各鋼種の特性を記憶する鋼種情報記憶部と、顧客からの要求仕様の入力を受け付ける入力部と、入力された要求仕様と同一及び類似の要求仕様を前記実績情報記憶部から検索し、検索された要求仕様に対して適用された鋼種に基づいて、候補となる鋼種を決定する候補決定手段と、前記鋼種情報記憶部に記憶された前記候補となる鋼種が、入力された要求仕様を満足するか否かを判定する適否判定手段と、前記適否判定手段の判定結果を出力する出力部と、を備える。
【0007】
この態様においては、前記候補決定手段が、前記検索された要求仕様に対して適用された鋼種を前記実績情報記憶部から抽出する抽出手段と、予め定められた条件に基づいて、抽出された鋼種と同一グループに属する鋼種を、候補となる鋼種として取得する取得手段と、を具備することが好ましい。
【0008】
また、上記態様においては、前記取得手段が、鋼種の用途及び主成分が少なくとも一致することを前記条件として、抽出された鋼種と同一グループに属する鋼種を、候補となる鋼種として取得するように構成されていることが好ましい。
【0009】
また、上記態様においては、前記候補決定手段が、入力された要求仕様に含まれる複数の項目のうち少なくとも一部の項目が同一又は類似の要求仕様を、前記同一及び類似の要求仕様として前記実績情報記憶部から検索するように構成されていることが好ましい。
【0010】
また、上記態様においては、前記候補決定手段が、入力された要求仕様に含まれる規格と少なくとも同一又は類似の規格を含む要求仕様を、前記同一及び類似の要求仕様として前記実績情報記憶部から検索するように構成されていることが好ましい。
【0011】
また、上記態様においては、前記出力部が、前記適否判定手段の判定結果を含み、候補となる鋼種から設計に使用する鋼種を選択するための画面を出力するように構成されており、前記入力部が、前記画面が出力されているときに、候補となる鋼種から設計に使用する鋼種の選択を受け付けるように構成されており、前記鋼材設計支援システムが、入力された要求仕様及び選択された鋼種を、実績情報記憶部に記憶させる書込手段をさらに備えることが好ましい。
【0012】
また、上記態様においては、前記出力部が、候補となる鋼種の特性に関する情報を出力可能に構成されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の一の態様の鋼材設計支援方法は、顧客からの要求仕様の入力を受け付けるステップと、過去に実施した鋼材の設計における顧客からの要求仕様及び当該要求仕様に対して適用された鋼種を記憶する実績情報記憶部から、入力された要求仕様と同一及び類似の要求仕様を検索し、検索された要求仕様に対して適用された鋼種に基づいて、候補となる鋼種を決定するステップと、各鋼種の特性を記憶する鋼種情報記憶部から前記候補となる鋼種の特性を読み出し、前記候補となる鋼種の特性が、入力された要求仕様を満足するか否かを判定するステップと、判定結果を出力するステップと、を有する。
【0014】
また、本発明の一の態様のコンピュータプログラムは、入力部と、出力部と、過去に実施した鋼材の設計における顧客からの要求仕様及び当該要求仕様に対して適用された鋼種を記憶する実績情報記憶部と、各鋼種の特性を記憶する鋼種情報記憶部とを備えるコンピュータに、鋼材の設計を支援するための情報を提供させるためのコンピュータプログラムであって、前記入力部が、顧客からの要求仕様の入力を受け付けるステップと、前記実績情報記憶部から、入力された要求仕様と同一及び類似の要求仕様を検索し、検索された要求仕様に対して適用された鋼種に基づいて、候補となる鋼種を決定するステップと、前記鋼種情報記憶部から前記候補となる鋼種の特性を読み出し、前記候補となる鋼種の特性が、入力された要求仕様を満足するか否かを判定するステップと、前記出力部が、判定結果を出力するステップと、を前記コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る鋼材設計支援システム、鋼材設計支援方法、及びコンピュータプログラムによれば、適切な鋼種を選択するための情報を設計者に提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態に係る鋼材設計支援システムの全体構成を示す模式図。
【図2】実施の形態に係る鋼材設計支援システムが備えるサーバ装置の構成を示すブロック図。
【図3】過去事例データベースの一例を示す模式図。
【図4】鋼種データベースの一例を示す模式図。
【図5】鋼種グループ定義データベースの一例を示す模式図。
【図6】試験成績データベースの一例を示す模式図。
【図7】実施の形態に係るクライアント装置の構成を示すブロック図。
【図8】要求仕様の一例を示す模式図。
【図9A】実施の形態に係る鋼材設計支援システムの鋼材設計支援処理の手順を示すフローチャート(前半)。
【図9B】実施の形態に係る鋼材設計支援システムの鋼材設計支援処理の手順を示すフローチャート(後半)。
【図10】過去事例検索処理の手順を示すフローチャート。
【図11】同一グループ鋼種検索処理の手順を示すフローチャート。
【図12】成分要求適合判定処理の手順を示すフローチャート。
【図13】成分要求適合判定処理の判定結果の一例を示す模式図。
【図14】材料特性要求適合判定処理の手順を示すフローチャート。
【図15】材料特性要求適合判定処理の判定結果の一例を示す模式図
【図16】鋼種検索結果画面の一例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0018】
[鋼材設計支援システムの構成]
図1は、本実施の形態に係る鋼材設計支援システムの全体構成を示す模式図である。本鋼材設計支援システム1は、インターネット又はイントラネット等の情報ネットワークを使用したクライアントサーバシステムであり、サーバ装置2と、クライアント装置3とを備えている。サーバ装置2と、クライアント装置3との間は、情報ネットワーク5によりデータ通信可能に接続されている。
【0019】
<サーバ装置2の構成>
図2は、サーバ装置2の構成を示すブロック図である。サーバ装置2は、コンピュータ2aによって実現される。図2に示すように、コンピュータ2aは、本体21と、画像表示部22と、入力部23とを備えている。本体21は、CPU21a、ROM21b、RAM21c、ハードディスク21d、読出装置21e、入出力インタフェース21f、通信インタフェース21g、及び画像出力インタフェース21hを備えており、CPU21a、ROM21b、RAM21c、ハードディスク21d、読出装置21e、入出力インタフェース21f、通信インタフェース21g、及び画像出力インタフェース21hは、バス21jによって接続されている。
【0020】
CPU21aは、RAM21cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、鋼材設計支援システム1のサーバ用のコンピュータプログラム24aを当該CPU21aが実行することにより、コンピュータ2aがサーバ装置2として機能する。
【0021】
ROM21bは、マスクROM、PROM、EPROM、又はEEPROM等によって構成されており、CPU21aに実行されるコンピュータプログラム及びこれに用いるデータ等が記録されている。
【0022】
RAM21cは、SRAMまたはDRAM等によって構成されている。RAM21cは、ハードディスク21dに記録されているコンピュータプログラム24aの読み出しに用いられる。また、CPU21aがコンピュータプログラムを実行するときに、CPU21aの作業領域として利用される。
【0023】
ハードディスク21dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU21aに実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータがインストールされている。サーバ用のコンピュータプログラム24aも、このハードディスク21dにインストールされている。
【0024】
読出装置21eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体24に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体24には、コンピュータをサーバ装置2として機能させるためのコンピュータプログラム24aが格納されており、コンピュータ2aが当該可搬型記録媒体24からコンピュータプログラム24aを読み出し、当該コンピュータプログラム24aをハードディスク21dにインストールすることが可能である。
【0025】
なお、前記コンピュータプログラム24aは、可搬型記録媒体24によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ2aと通信可能に接続された外部の機器から前記電気通信回線を通じて提供することも可能である。例えば、前記コンピュータプログラム24aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ2aがアクセスして、当該コンピュータプログラムをダウンロードし、これをハードディスク21dにインストールすることも可能である。
【0026】
ハードディスク21dには、例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)等のマルチタスクオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施の形態に係るコンピュータプログラム24aは当該オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0027】
また、ハードディスク21dには、過去事例データベース101、鋼種データベース102、鋼種グループ定義データベース103、試験成績データベース104が設けられている。図3は、過去事例データベース101の一例を示す模式図である。過去事例データベース101は、過去の鋼材の設計実績情報を格納するテーブルであり、設計実績情報には、過去の顧客からの要求仕様とその要求仕様に対して適用された鋼種の情報が含まれ、1つの設計実績情報が1レコードとして過去事例データベース101に記憶される。過去事例データベース101には、過去事例番号を格納するフィールド101aと、鋼材のJIS規格を格納するフィールド101bと、鋼材のサイズ、例えば断面が円形の棒鋼の場合にはその断面円の直径を格納するフィールド101cと、需要家(顧客)を特定する情報である需要家コードを格納するフィールド101dと、焼入れ、焼きなまし、焼き戻し等の熱処理の有無、圧延等の加工区分を格納するフィールド101eと、各事例において適用された鋼種を格納するフィールド101pとを含んでいる。
【0028】
なお、上述した過去事例データベース101には、鋼材のJIS規格の格納するフィールドを設ける構成について述べたが、これに限定されるものではない。過去事例データベースに格納する規格の情報は、ASTM等の各国規格をはじめとする公的規格であってもよいし、社内で規定された独自規格であってもよい。
【0029】
図4は、鋼種データベース102の一例を示す模式図である。鋼種データベース102は、鋼種に関する情報を格納するテーブルであり、鋼種を格納するフィールド102aと、成分管理値範囲を格納するフィールド102b,102c,…と、鋼種毎に割り当てられた鋼種コードを格納するフィールド102pとを含んでいる。成分管理値範囲とは、鋼種毎に定まる含有成分の値の範囲であり、炭素、シリコーン、マグネシウム等の成分毎に定められている。例えば、鋼種Aの炭素の成分管理値範囲は、上限値が0.17%であり、下限値が0.19%である。また、本実施の形態において、鋼種コードは、用途を示すコード、主成分を示すコード、含有炭素量を示すコード等が組み合わされて構成されている。例えば、鋼種Aの鋼種コードは、用途を示すコード“AA”と、主成分を示すコード“BB”と、含有炭素量を示すコード“18”等が組み合わされた“AABB…18”とされている。
【0030】
図5は、鋼種グループ定義データベース103の一例を示す模式図である。鋼種グループ定義データベース103は、同一グループの鋼種を定義するための情報(定義フラグ)を格納するデータベースであり、鋼種コードに含まれる各コード(用途コード、主成分コード、炭素含有量コード等)に対応付けて、そのコードが同一グループの鋼種の定義に使用されるコードであるか否かを示す定義フラグを格納するための領域103a,103b,…,103pが設けられている。例えば、用途コード及び主成分コードが同一グループの鋼種の定義に使用されるコードとされ、炭素含有量コードが同一グループの鋼種の定義に使用されないコードとされる場合には、用途コード及び主成分コードに対応付けられた領域103a,103bの定義フラグが「1」にセットされ、炭素含有量コードに対応付けられた領域103pの定義フラグが「0」にセットされる。例えば、用途コード及び主成分コードの定義フラグのみが「1」セットされている場合は、用途コード及び主成分コードが一致する全ての鋼種が同一グループとされる。つまり、図4に示す例では、鋼種コードのうちの“AABB”が一致する鋼種A〜Iの全てが同一グループとなる。
【0031】
図6は、試験成績データベース104の一例を示す模式図である。試験成績データベースは、過去に実施された焼入れ硬さ等の試験の成績を格納するためのテーブルであり、試験番号を格納するためのフィールド104aと、鋼種名を格納するためのフィールド104bと、焼入れ硬さ等の試験成績を格納するためのフィールド104pとを含んでいる。図6においては、9mm焼入れ硬さの試験成績が格納されている例を示しているが、試験成績データベース104には引張強度等の他の試験成績も格納される。
【0032】
入出力インタフェース21fは、例えばUSB,IEEE1394,又はRS-232C等のシリアルインタフェース、SCSI,IDE,又は IEEE1284等のパラレルインタフェース、及びD/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェース等から構成されている。入出力インタフェース21fには、キーボード及びマウスからなる入力部23が接続されており、ユーザが当該入力部23を使用することにより、コンピュータ2aにデータを入力することが可能である。
【0033】
通信インタフェース21gは、Ethernet(登録商標)インタフェースである。通信インタフェース21gはLANを介してクライアント装置3に接続されている。コンピュータ2aは、通信インタフェース21gにより、所定の通信プロトコルを使用して当該LANに接続されたクライアント装置3との間でデータの送受信が可能である。この通信インタフェース21gは、クライアント装置3から送信された情報を受信することにより、当該情報の入力を受け付けることができ、また、クライアント装置3へ情報を送信することにより、当該情報を出力することができる。
【0034】
画像出力インタフェース21hは、LCDまたはCRT等で構成された画像表示部22に接続されており、CPU21aから与えられた画像データに応じた映像信号を画像表示部22に出力するようになっている。画像表示部22は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
【0035】
<クライアント装置3の構成>
図7は、本実施の形態に係るクライアント装置3の構成を示すブロック図である。クライアント装置3は、コンピュータ3aによって実現される。図7に示すように、コンピュータ3aは、本体31と、画像表示部32と、入力部33とを備えている。本体31は、CPU31a、ROM31b、RAM31c、ハードディスク31d、読出装置31e、入出力インタフェース31f、通信インタフェース31g、及び画像出力インタフェース31hを備えており、CPU31a、ROM31b、RAM31c、ハードディスク31d、読出装置31e、入出力インタフェース31f、通信インタフェース31g、及び画像出力インタフェース31hは、バス31jによって接続されている。
【0036】
ハードディスク31dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU31aに実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータがインストールされている。クライアント用のコンピュータプログラム34aも、このハードディスク31dにインストールされている。
【0037】
読出装置31eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体34に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体34には、コンピュータをクライアント装置3として機能させるためのコンピュータプログラム34aが格納されており、コンピュータ3aが当該可搬型記録媒体34からコンピュータプログラム34aを読み出し、当該コンピュータプログラム34aをハードディスク31dにインストールすることが可能である。
【0038】
なお、前記コンピュータプログラム34aは、可搬型記録媒体34によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ3aと通信可能に接続された外部の機器から前記電気通信回線を通じて提供することも可能である。例えば、前記コンピュータプログラム34aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ3aがアクセスして、当該コンピュータプログラムをダウンロードし、これをハードディスク31dにインストールすることも可能である。
【0039】
また、ハードディスク31dには、例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)等のマルチタスクオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施の形態に係るコンピュータプログラム34aは当該オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0040】
なお、クライアント装置3のその他の構成は、上述したサーバ装置2の構成と同様であるので、その説明を省略する。
【0041】
[鋼材設計支援システムの動作]
以下、本実施の形態に係る鋼材設計支援システム1の動作について説明する。
【0042】
鋼材の設計業務を開始するとき、需要家(顧客)からの鋼材の要求仕様が与えられる。図8は、要求仕様の一例を示す模式図である。図8に示すように、要求仕様には、規格、鋼材のサイズ、需要家に個別に割り当てられた需要家コード、加工区分、成分管理値範囲、試験値範囲等が含まれる。本例においては、要求される鋼材の規格として“X”が、要求される鋼材のサイズとして丸棒鋼の断面円の直径65mmが、需要家コードとして“T0003”が、加工区分として“P”が、成分管理値範囲として炭素量の下限値0.17%及び上限値0.23%が、試験値範囲として9mm焼入れ硬さの下限値31及び上限値36がそれぞれ指定されている。
【0043】
上記のような鋼材の要求仕様が与えられ、鋼材の設計を開始する場合に、設計者は本実施の形態に係る鋼材設計支援システム1に以下のような鋼材設計支援処理を実行させる。図9A及び図9Bは、本実施の形態に係る鋼材設計支援システム1の鋼材設計支援処理の手順を示すフローチャートである。設計者は、クライアント装置3の入力部33を操作して、与えられた要求仕様をクライアント装置3に入力する。クライアント装置3のCPU31aは、要求仕様の入力を受け付け(ステップS101)、当該要求仕様のデータをサーバ装置2へ送信する(ステップS102)。
【0044】
サーバ装置2のCPU21aは、要求仕様データを受信すると、要求仕様と同一及び類似の要求仕様を含む過去の鋼材の設計実績情報を過去事例データベース101から検索する過去事例検索処理を実行する(ステップS103)。
【0045】
図10は、過去事例検索処理の手順を示すフローチャートである。まず、CPU21aは、入力された要求仕様と同一の規格、需要家コード、加工区分を含む設計実績情報を過去事例データベース101から検索する(ステップ201)。図8に示す例を用いてこの処理を説明する。この場合、要求仕様に含まれる規格“X”、需要家コード“T0003”、及び加工区分“P”と同一の規格、需要家コード、及び加工区分を含む設計実績情報が検索される。図3の例では、過去事例番号1〜4及び6の設計実績情報が上記の条件に合致し、検索結果として得られる。
【0046】
次にCPU21aは、ステップS201において1以上の設計実績情報が検索結果として得られたか否かを判定し(ステップS202)、1以上の設計実績情報が得られた場合には(ステップS202においてYES)、メインルーチンにおける過去事例検索処理の呼び出しアドレスへ処理をリターンする。上記の例では、6つの設計実績情報が得られているので、過去事例検索処理はここで終了する。一方、検索の結果、設計実績情報が1つも得られなかった場合には(ステップS202においてNO)、CPU21aは、入力された要求仕様と同一の規格及び加工区分を含む設計実績情報を過去事例データベース101から検索する(ステップ203)。
【0047】
次に、CPU21aは、ステップS203において1以上の設計実績情報が検索結果として得られたか否かを判定し(ステップS204)、1以上の設計実績情報が得られた場合には(ステップS204においてYES)、メインルーチンにおける過去事例検索処理の呼び出しアドレスへ処理をリターンする。ステップS203の検索の結果、設計実績情報が1つも得られなかった場合には(ステップS204においてNO)、CPU21aは、入力された要求仕様と同一の規格を含む設計実績情報を過去事例データベース101から検索し(ステップ205)、メインルーチンにおける過去事例検索処理の呼び出しアドレスへ処理をリターンする。なお、ステップS205の検索によっても設計実績情報が1つも得られなかった場合は、過去事例がないことを示すエラー情報がクライアント装置3へと送信され、クライアント装置3の画像表示部32にエラー表示がされる。
【0048】
次にCPU21aは、過去事例検索処理において検索された設計実績情報のうちの1つを選択する(ステップS104)。上述した例においては、過去事例検索処理において過去事例番号1〜4及び6の設計実績情報が検索されている。したがって、ステップS104では、これらの過去事例番号1〜4及び6のうちの1つの設計実績情報が選択される。
【0049】
CPU21aは、選択した設計実績情報において適用された鋼種と同一グループの鋼種を検索する同一グループ鋼種検索処理を実行する(ステップS105)。図11は、同一グループ鋼種検索処理の手順を示すフローチャートである。当該同一グループ鋼種検索処理においては、CPU21aは、選択した設計実績情報に含まれる鋼種名を指定して鋼種データベース102から鋼種コードを取得する(ステップS301)。図3に示す例においては、過去事例番号1,2の設計実績情報に鋼種名“A”が、過去事例番号3の設計実績情報に鋼種名“C”が、過去事例番号4,6の設計実績情報に鋼種名“D”が含まれている。したがって、ステップS302の処理では、過去事例番号1,2の設計実績情報が選択されている場合には鋼種名“A”の鋼種コード“AABB…18”が取得され、過去事例番号3の設計実績情報が選択されている場合には鋼種名“C”の鋼種コード“AABB…19”が取得され、過去事例番号4,6の設計実績情報が選択されている場合には鋼種名“D”の鋼種コード“AABB…20”が取得される(図4参照)。
【0050】
ステップS301の処理の後、CPU21aは、鋼種グループ定義データベース103を参照して、鋼種コードに含まれるコードの中で、同一グループの鋼種の定義に用いられるコードを特定する(ステップS302)。具体的には、鋼種グループ定義データベース103において定義フラグが“1”にセットされているコードが特定される。図5に示す例を用いて説明すると、定義フラグが“1”にセットされているのは用途コード及び主成分コードである。よって、鋼種コードの中の1〜2桁目に対応する用途コード及び鋼種コードの中の3〜4桁目に対応する主成分コードが同一グループの鋼種の定義に用いられる。上記の例においては、鋼種名“A”、“C”、“D”の鋼種コード“AABB…18”、“AABB…19”、“AABB…20”のそれぞれの1〜4桁目のコードは何れも“AABB”である。したがって、1〜4桁目のコードが“AABB”である鋼種コードを有する鋼種が同一グループに属することとなる。
【0051】
ステップS302の処理の後、CPU21aは、鋼種データベース102に登録されている鋼種から、選択された設計実績情報において適用された鋼種と同一グループの鋼種を検索する(ステップS303)。上記の例においては、鋼種コードの1〜4桁目が“AABB”である鋼種が検索される。この結果、“A”、“C”、“D”、“E”、“F”、“G”、“I”が検索される(図4参照)。ステップS303の処理の後、CPU21aはメインルーチンにおける同一グループ鋼種検索処理の呼び出しアドレスへ処理をリターンする。
【0052】
次に、CPU21aは、過去事例検索処理において検索された設計実績情報の全てを選択したか否かを判定し(ステップS106)、未選択の設計実績情報が残っている場合には(ステップS106においてNO)、ステップS104へ処理を移し、未選択の設計実績情報のうちから1つを選択し(ステップS104)、当該設計実績情報について同一グループ鋼種検索処理を実行する(ステップS105)。
【0053】
一方、過去事例検索処理において検索された全ての設計実績情報が既に選択されている場合には(ステップS106においてYES)、CPU21aは、同一グループ鋼種検索処理において検索された鋼種の1つを選択し(ステップS107)、選択された鋼種が要求仕様で指定される成分要求を満足するか否かを判定する成分要求適合判定処理(ステップS108)、選択された鋼種が要求仕様で指定される材料特性要求を満足するか否かを判定する材料特性要求適合判定処理(ステップS109)を順次実行する。
【0054】
図12は、成分要求適合判定処理の手順を示すフローチャートである。成分要求適合判定処理において、CPU21aは、選択されている鋼種の成分管理値範囲を鋼種データベース102から取得する(ステップS401)。例えば、鋼種Aが選択されている場合、鋼種Aの含有炭素量の上限値0.17%及び下限値0.19%が取得される。
【0055】
次にCPU21aは、入力された要求仕様に含まれる成分範囲の1つを選択する(ステップS402)。例えば、図8の例では、含有炭素量の下限値0.17%及び上限値0.23%又は他の含有成分範囲(シリコーン、マグネシウム等の含有量範囲)が選択される。
【0056】
CPU21aは、選択された成分範囲内に、ステップS401において取得された成分管理値範囲が含まれるか否かを判定する(ステップS403)。例えば、鋼種Aの炭素の成分管理値範囲は0.17〜0.19%であり、要求仕様に示される含有炭素量の範囲0.17〜0.23%に含まれる。したがって、この場合は、ステップS403において、選択された成分範囲内に、取得された成分管理値範囲が含まれると判定される。一方、鋼種Gの炭素の成分管理値範囲は0.2〜0.24%であり、要求仕様に示される含有炭素量の範囲を超えている。この場合は、ステップS403において、選択された成分範囲内に、取得された成分管理値範囲が含まれないと判定される。
【0057】
ステップS403において、選択された成分範囲内に、取得された成分管理値範囲が含まれる場合(ステップS403においてYES)、CPU21aは、選択された成分(例えば、炭素)に対応付けて、選択された鋼種が要求仕様において要求されている成分範囲に適合することを示す情報(以下、「成分適合情報」という。)を判定結果としてRAM21cに記憶し(ステップS404)、処理をステップS408へ移す。
【0058】
一方、ステップS403において、選択された成分範囲内に取得された成分管理値範囲が含まれない場合(ステップS403においてNO)、CPU21aは、選択された成分範囲と、ステップS401において取得された成分管理値範囲とが重複するか否かを判定する(ステップS405)。例えば、鋼種Gの炭素の成分管理値範囲は0.17〜0.24%であり、要求仕様に示される含有炭素量の範囲0.17〜0.23%と重複する。したがって、この場合は、ステップS405において、選択された成分範囲と、取得された成分管理値範囲とが重複すると判定される。一方、鋼種Iの炭素の成分管理値範囲は0.24〜0.27%であり、要求仕様に示される含有炭素量の範囲と重複していない。この場合は、ステップS405において、選択された成分範囲と、取得された成分管理値範囲とが重複しないと判定される。
【0059】
ステップS405において、選択された成分範囲と、取得された成分管理値範囲とが重複する場合(ステップS405においてYES)、CPU21aは、選択された成分(例えば、炭素)に対応付けて、選択された鋼種が要求仕様において要求されている成分範囲に一部適合することを示す情報(以下、「成分部分適合情報」という。)を判定結果としてRAM21cに記憶し(ステップS406)、処理をステップS408へ移す。
【0060】
一方、ステップS405において、選択された成分範囲と取得された成分管理値範囲とが重複しない場合(ステップS405においてNO)、CPU21aは、選択している鋼種を候補鋼種群から除外する(ステップS407)。この処理においては、具体的には、選択している鋼種に対応付けて、候補から除外することを示す情報がRAM21cに記憶される。ステップS407の処理の後、CPU21aは、処理をステップS408へ移す。
【0061】
ステップS408において、CPU21aは、入力された要求仕様に含まれる成分範囲の全てが既に選択されたか否かを判定する(ステップS408)。要求仕様に含まれる成分範囲のうち、まだ選択されていない成分範囲が残っている場合には(ステップS408においてNO)、CPU21aは処理をステップS402へ戻し、未選択の成分範囲のうちから1つを選択し(ステップS402)、ステップS403以降の処理を実行する。一方、要求仕様に含まれる成分範囲の全てが既に選択されている場合には(ステップS408においてYES)、CPU21aはメインルーチンにおける成分要求適合判定処理の呼び出しアドレスへ処理をリターンする。
【0062】
図13は、図3〜図6及び図8に示す例において、上記の成分要求適合判定処理を実行した場合の判定結果を示す模式図である。本例においては、図12に示すように、鋼種A,C,D,E,Fについては、成分要求に適合している(図13において“○”で示される。)と判定され、鋼種Gについては、成分要求に部分的に適合している(図13において“△”で示される。)と判定される。また、鋼種Iについては、成分要求に適合していないと判定され、候補鋼種群から除外される。
【0063】
図14は、材料特性要求適合判定処理の手順を示すフローチャートである。材料特性要求適合判定処理において、CPU21aは、選択されている鋼種の試験成績を、試験成績データベース104から取得する(ステップS501)。例えば、鋼種Aが選択されている場合、鋼種Aの試験成績データベース104に登録されている全ての9mm焼入れ硬さの試験成績“28”、“30”、“29”、“31”、“33”、“32”、“29”、“33”が取得される。また、鋼種Aについて他の試験成績が試験成績データベース104に登録されている場合には、その試験成績も取得される。
【0064】
次にCPU21aは、入力された要求仕様に含まれる試験値範囲の1つを選択する(ステップS502)。例えば、図8の例では、9mm焼入れ硬さの下限値31及び上限値36又は他の試験値範囲が選択される。
【0065】
CPU21aは、ステップS501において取得された試験成績のうちのN1%以上が、選択された試験値範囲内に入るか否かを判定する(ステップS503)。例えば、鋼種Fの9mm焼入れ硬さの9つの試験結果“33”、“34”、“32”、“33”、“34”、“37”、“35”、“33”、“32”のうちの8つが、入力された要求仕様における9mm焼入れ硬さの試験値範囲31〜36に入る。このため、例えばN1が90の場合には、鋼種Fについては試験成績のN1%以上が試験値範囲内に入る、即ち、材料特性が適合すると判定されることとなる。なお、ここで試験成績データベースから対応する試験成績が1つも取得されなかった場合には、判定不能であることを示す情報(以下、「判定不能情報」という。)がRAM21cに記憶される。
【0066】
ステップS503において、取得された試験成績のうちのN1%以上が、選択された試験値範囲内に入る場合(ステップS503においてYES)、CPU21aは、選択された試験(例えば、9mm焼入れ硬さ)に対応付けて、選択された鋼種が要求仕様において要求されている試験値範囲に適合することを示す情報(以下、「材料特性適合情報」という。)を判定結果としてRAM21cに記憶し(ステップS504)、処理をステップS508へ移す。
【0067】
一方、ステップS503において、取得された試験成績のうちのN1%以上が、選択された試験値範囲内に入らない場合(ステップS503においてNO)、CPU21aは、取得された試験成績のうちのN2%以上が、選択された試験値範囲内に入るか否かを判定する(ステップS505)。ここで、N2はN1より小さい正の整数であり、例えば70とされる。図3〜図6及び図8の例では、鋼種Gの9mm焼入れ硬さの7つの試験結果“35”、“37”、“38”、“36”、“35”、“32”、“36”のうちの5つが、入力された要求仕様における9mm焼入れ硬さの試験値範囲31〜36に入る。このため、例えばN2が70の場合には、鋼種Gについては試験成績のN2%以上が試験値範囲内に入る、即ち、材料特性が部分的に適合すると判定されることとなる。
【0068】
ステップS505において、取得された試験成績のうちのN2%以上が、選択された試験値範囲内に入る場合(ステップS505においてYES)、CPU21aは、選択された試験(例えば、9mm焼入れ硬さ)に対応付けて、選択された鋼種が要求仕様において要求されている試験値範囲に部分的に適合することを示す情報(以下、「材料特性部分適合情報」という。)を判定結果としてRAM21cに記憶し(ステップS506)、処理をステップS508へ移す。
【0069】
一方、ステップS505において、取得された試験成績のうちのN2%以上が、選択された試験値範囲内に入らない場合(ステップS505においてNO)、CPU21aは、選択された試験(例えば、9mm焼入れ硬さ)に対応付けて、選択された鋼種が要求仕様において要求されている試験値範囲に適合しないことを示す情報(以下、「材料特性不適合情報」という。)を判定結果としてRAM21cに記憶し(ステップS507)、処理をステップS508へ移す。例えば、鋼種Aの9mm焼入れ硬さの8つの試験結果“28”、“30”、“29”、“31”、“33”、“32”、“29”、“33”のうち、4つの試験成績“28”、“30”、“29”、“29”が、入力された要求仕様における9mm焼入れ硬さの試験値範囲31〜36から外れる。よって、ここでN2が70であれば、鋼種Aについては材料特性が不適合と判定されることとなる。
【0070】
ステップS508において、CPU21aは、入力された要求仕様に含まれる試験値範囲の全てが既に選択されたか否かを判定する(ステップS508)。要求仕様に含まれる試験値範囲のうち、まだ選択されていない試験値範囲が残っている場合には(ステップS508においてNO)、CPU21aは処理をステップS502へ戻し、未選択の試験値範囲のうちから1つを選択し(ステップS502)、ステップS503以降の処理を実行する。一方、要求仕様に含まれる試験値範囲の全てが既に選択されている場合には(ステップS508においてYES)、CPU21aはメインルーチンにおける材料特性要求適合判定処理の呼び出しアドレスへ処理をリターンする。
【0071】
図15は、図3〜図6及び図8に示す例において、N1が90、N2が70の場合における上記の材料特性要求適合判定処理を実行したときの判定結果を示す模式図である。本例においては、上述したように鋼種Aについては材料特性が不適合(図15において“×”で示される。)と判定される。鋼種C、D、Eについては、9mm焼入れ硬さの試験成績が試験成績データベース104に登録されていないため、判定不能(図15において“−”で示される。)とされる。また、鋼種Fについては材料特性が適合している(図15において“○”で示される。)と判定され、鋼種Gについては材料特性が部分的に適合している(図15において“△”で示される。)と判定される。
【0072】
上述のような材料特性要求適合判定処理を終了すると、CPU21aは、同一グループ鋼種検索処理において検索された鋼種の全てを選択したか否かを判定し(ステップS110)、未選択の鋼種が残っている場合には(ステップS110においてNO)、ステップS107へ処理を移し、未選択の鋼種のうちから1つを選択し(ステップS107)、当該鋼種について成分要求適合判定処理(ステップS108)及び材料特性要求適合判定処理(ステップS109)を実行する。
【0073】
一方、同一グループ鋼種検索処理において検索された全ての鋼種が既に選択されている場合には(ステップS110においてYES)、CPU21aは、鋼種の検索並びに成分要求及び材料特性要求の適合判定の結果を示す鋼種検索結果データをクライアント装置3へと送信する(ステップS111)。
【0074】
クライアント装置3のCPU31aは、鋼種検索結果データを受信すると、鋼種の検索並びに成分要求及び材料特性要求の適合判定の結果を示す鋼種検索結果画面を画像表示部32に表示する(ステップS112)。図16は、鋼種検索結果画面の一例を示す模式図である。図に示すように、鋼種検索結果画面には、鋼種の検索並びに成分要求及び材料特性要求の適合判定の結果が表形式で表示される。表の各行は検索された鋼種に対応しており、各鋼種について、成分要求の適合判定結果、及び材料特性の適合判定結果が示される。
【0075】
鋼種検索結果画面において、適合判定結果の記号(“○”、“△”、“×”)は、鋼種の選択の参考用の画面を呼び出すためのリンクであり、マウス又はキーボードの操作により記号が選択されると、選択された記号に対応する参考用画面が表示される。さらに詳しく説明すると、成分要求適合判定結果の記号が選択された場合には、その記号に対応する鋼種における成分に関する参考情報が表示され、材料特性要求適合判定結果の記号が選択された場合には、その記号に対応する鋼種における試験成績に関する参考情報が表示される。例えば、鋼種Aの炭素の成分要求適合判定結果の“○”が選択されると、鋼種Aの炭素含有量の試験成績の度数分布グラフG11が表示される。この度数分布グラフG11は、横軸が成分値(炭素含有量)、縦軸が度数とされ、要求仕様における炭素含有量の要求範囲が示される。また、鋼種Aの9mm焼入れ硬さの材料特性要求適合判定結果の“×”が選択されると、鋼種Aの焼入れ硬さの試験成績の散布図G21が表示される。同様に、鋼種Fの9mm焼入れ硬さの材料特性要求適合判定結果の“○”が選択されると、鋼種Fの焼入れ硬さの試験成績の散布図G21が表示され、鋼種Gの9mm焼入れ硬さの材料特性要求適合判定結果の“△”が選択されると、鋼種Gの焼入れ硬さの試験成績の散布図G21が表示される。これらの散布図G21〜G23は、横軸が試験片における焼入れ試験位置(試験片の端部から焼入れ試験位置の距離)とされ、縦軸が硬度とされている。また、図16に示すように、散布図G21〜G23では、各鋼種の9mm焼入れ硬さの試験成績が、要求仕様における9mm焼入れ硬さの試験値範囲と共に表示される。つまりCPU31aは、鋼種検索結果画面が表示されている間に、適合判定結果の記号が選択され、参考情報の表示指示を受け付けると(ステップS113においてYES)、当該参考情報の表示に必要な試験成績をサーバ装置2に要求する(ステップS114)。サーバ装置2のCPU21aは、かかる要求データを受信すると、試験成績データベース104を参照し、選択された記号に対応する鋼種の試験成績を抽出する(ステップS115)。例えば、鋼種Fの9mm焼入れ硬さの材料特性要求適合判定結果の“○”が選択された場合には、試験成績データベース104から鋼種Fの9mm焼入れ硬さの試験成績が抽出される。CPU21aは、こうして試験成績データベース104から試験成績を抽出すると、当該試験成績をクライアント装置3へ送信する(ステップS116)。クライアント装置3のCPU31aは、試験成績を受信すると、上記のようなグラフを作成し、画像表示部32に表示する(ステップS117)。
【0076】
設計者は、上記のような参考情報を確認することで、より適切に鋼材の設計を行うことができる。つまり、鋼種検索結果画面においては、成分要求適合判定結果及び材料特性要求適合判定結果が表示されているので、設計者は鋼種検索結果画面を見れば各鋼種が要求されている成分値に適合しているかどうか、また要求されている材料特性に適合しているかを知ることができる。これでも設計者による鋼種の選択には有用であるが、本実施の形態に係る鋼材設計支援システム1では、上述した参考情報を提供することにより、過去の事例において当該鋼種がどのような成分値であったか、又はどのような材料特性値であったかを具体的に提示する。設計者は、グラフを参照することで、要求されている範囲に対して過去事例における成分値又は材料特性値がどのように分布しているかを知ることができ、これを鋼種の選択に使用することができ、適切且つ容易に鋼種を選択することが可能となる。
【0077】
図16に示すように、鋼種検索結果画面の表の各行には、設計に使用する鋼種として採用する場合に選択するためのチェックボックスSが設けられている。チェックボックスSは、選択用グラフィカルユーザインタフェースオブジェクト(コントロール)であり、鋼種検索結果画面に表示されている全てのチェックボックスSのうちの1つをマウス又はキーボードの操作によって選択可能である。設計者は、鋼種検索結果画面及び上記のグラフを参照して選択する鋼種を決定すると、当該鋼種に対応する選択ボックスSをマウス又はキーボード操作によって選択する。また鋼種検索結果画面には、この鋼種の選択結果を過去事例としてサーバ装置2のデータベースへ登録するための登録ボタンRが設けられている。登録ボタンRは、マウス又はキーボード操作によって選択が可能なコントロールである。CPU31aは、設計者からの選択ボックスSによる鋼種の選択及び登録ボタンRによるデータベースへの登録指示を受け付けると(ステップS118)、選択された鋼種を示すデータを含む登録指示データをサーバ装置2へ送信し(ステップS119)、処理を終了する。サーバ装置2が登録指示データを受信すると、CPU21aは登録指示データにおいて指示される鋼種と、入力された要求仕様とを過去事例データベース101に登録し(ステップS120)、処理を終了する。これにより、今回の鋼材の設計実績が、過去事例としてデータベースに蓄積され、将来の鋼材の設計支援に用いられる。
【0078】
上述の如く構成したことにより、本実施の形態に係る鋼材設計支援システム1は、入力された要求仕様と同一又は類似の要求仕様を含む設計実績情報を過去事例から検索し、この検索結果に基づいて候補となる鋼種を決定し、各候補の鋼種が要求仕様を満足するか否かを判定し、判定結果を設計支援情報として出力するので、設計者は判定結果から適切な鋼種を容易に選択することができる。
【0079】
また、本実施の形態においては、成分及び材料特性について、鋼種が要求仕様を満足するか否かを判定し、その判定結果を“○”、“△”、“×”の三段階で表示するため、設計者は候補として挙げられた各鋼種が要求仕様を満足するか、部分的に満足するか、満足しないかを容易に把握することができる。
【0080】
また、より適切な鋼種の選択を可能とするために、本実施の形態に係る鋼材設計支援システム1においては、上記の判定結果に加え、各鋼種の試験成績に関する参考情報を表示可能な構成としている。これにより、設計者は、成分要求適合判定結果及び材料特性要求適合判定結果だけでは最適な鋼種を選択することが困難な場合に、参考情報を確認し、これを鋼種の選択に使用することができる。例えば、複数の鋼種の成分要求適合判定結果及び材料特性要求適合判定結果がいずれも“○”であるような場合には、これらの判定結果だけでは最適な鋼種を選択することが困難である。このような場合に参考情報を確認することにより、各鋼種の個別の試験成績を確認することができ、より適切な鋼種を選択することが可能となる。また、参考情報を試験成績の度数分布及び散布図のようなグラフ形式で表示することで、設計者は試験成績の分布を容易に把握することができる。
【0081】
(その他の実施の形態)
なお、上述した実施の形態においては、入力された要求仕様と同一又は類似の要求仕様を含む過去事例(設計実績情報)を過去事例データベースから取得し、これらの過去事例において適用された鋼種と同一グループの鋼種を鋼種データベースから検索し、これによって得られた鋼種を選択される候補鋼種群とする構成について述べたが、これに限定されるものではない。入力された要求仕様と同一又は類似の要求仕様を含む過去事例において適用された鋼種を候補鋼種群としてもよい。しかし、適合判定の評価対象となる鋼種を増やし、鋼種の選択の自由度を高め、且つ過去事例において適用された鋼種よりも適切な鋼種を検索可能とする点で、過去事例において適用された鋼種と同一グループの鋼種を検索する構成の方が好ましい。
【0082】
また、上述した実施の形態においては、入力された要求仕様と一部が同一の要求仕様を含む過去事例(設計実績情報)を、要求仕様と同一及び類似の要求仕様を含む過去事例として過去事例データベースから検索する構成について述べたが、これに限定されるものではない。入力された要求仕様と一部が同一の要求仕様を含む過去事例だけでなく、入力された要求仕様と一部が類似の要求仕様を含む過去事例を要求仕様と類似の要求仕様を含む過去事例として過去事例データベースから検索する構成としてもよい。
【0083】
また、上述した実施の形態においては、鋼材設計支援システム1が、サーバ装置2、及びクライアント装置3、によって構成されている場合について述べたが、これに限定されるものではない。サーバ装置2、及びクライアント装置3の機能の全てを1台の装置に搭載した鋼材設計支援システムとしてもよい。
【0084】
また、上述した実施の形態においては、単一のコンピュータ2aによりコンピュータプログラム24aの全ての処理を実行する構成について述べたが、これに限定されるものではなく、上述したコンピュータプログラム24aと同様の処理を、複数の装置(コンピュータ)により分散して実行する分散システムとすることも可能である。コンピュータ3aについても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の鋼材設計支援システム、鋼材設計支援方法、及びコンピュータプログラムは、鋼材の設計業務を支援する情報を提供する鋼材設計支援システム及び鋼材設計支援方法、並びにコンピュータに鋼材の設計業務を支援する情報を提供させるためのコンピュータプログラムとして有用である。
【符号の説明】
【0086】
1 鋼材設計支援システム
2 サーバ装置
2a コンピュータ
21a CPU
21b ROM
21c RAM
21d ハードディスク
21g 通信インタフェース
24a コンピュータプログラム
3 クライアント装置
3a コンピュータ
31a CPU
31b ROM
31c RAM
31d ハードディスク
32 画像出力部
33 入力部
34a コンピュータプログラム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過去に実施した鋼材の設計における顧客からの要求仕様及び当該要求仕様に対して適用された鋼種を記憶する実績情報記憶部と、
各鋼種の特性を記憶する鋼種情報記憶部と、
顧客からの要求仕様の入力を受け付ける入力部と、
入力された要求仕様と同一及び類似の要求仕様を前記実績情報記憶部から検索し、検索された要求仕様に対して適用された鋼種に基づいて、候補となる鋼種を決定する候補決定手段と、
前記鋼種情報記憶部に記憶された前記候補となる鋼種が、入力された要求仕様を満足するか否かを判定する適否判定手段と、
前記適否判定手段の判定結果を出力する出力部と、
を備える、鋼材設計支援システム。
【請求項2】
前記候補決定手段は、
前記検索された要求仕様に対して適用された鋼種を前記実績情報記憶部から抽出する抽出手段と、
予め定められた条件に基づいて、抽出された鋼種と同一グループに属する鋼種を、候補となる鋼種として取得する取得手段と、
を具備する、
請求項1に記載の鋼材設計支援システム。
【請求項3】
前記取得手段は、鋼種の用途及び主成分が少なくとも一致することを前記条件として、抽出された鋼種と同一グループに属する鋼種を、候補となる鋼種として取得するように構成されている、
請求項2に記載の鋼材設計支援システム。
【請求項4】
前記候補決定手段は、入力された要求仕様に含まれる複数の項目のうち少なくとも一部の項目が同一又は類似の要求仕様を、前記同一及び類似の要求仕様として前記実績情報記憶部から検索するように構成されている、
請求項1乃至3の何れかに記載の鋼材設計支援システム。
【請求項5】
前記候補決定手段は、入力された要求仕様に含まれる規格と少なくとも同一又は類似の規格を含む要求仕様を、前記同一及び類似の要求仕様として前記実績情報記憶部から検索するように構成されている、
請求項4に記載の鋼材設計支援システム。
【請求項6】
前記出力部は、前記適否判定手段の判定結果を含み、候補となる鋼種から設計に使用する鋼種を選択するための画面を出力するように構成されており、
前記入力部は、前記画面が出力されているときに、候補となる鋼種から設計に使用する鋼種の選択を受け付けるように構成されており、
入力された要求仕様及び選択された鋼種を、実績情報記憶部に記憶させる書込手段をさらに備える、
請求項1乃至5の何れかに記載の鋼材設計支援システム。
【請求項7】
前記出力部は、候補となる鋼種の特性に関する情報を出力可能に構成されている、
請求項1乃至6の何れかに記載の鋼材設計支援システム。
【請求項8】
顧客からの要求仕様の入力を受け付けるステップと、
過去に実施した鋼材の設計における顧客からの要求仕様及び当該要求仕様に対して適用された鋼種を記憶する実績情報記憶部から、入力された要求仕様と同一及び類似の要求仕様を検索し、検索された要求仕様に対して適用された鋼種に基づいて、候補となる鋼種を決定するステップと、
各鋼種の特性を記憶する鋼種情報記憶部から前記候補となる鋼種の特性を読み出し、前記候補となる鋼種の特性が、入力された要求仕様を満足するか否かを判定するステップと、
判定結果を出力するステップと、
を有する、鋼材設計支援方法。
【請求項9】
入力部と、出力部と、過去に実施した鋼材の設計における顧客からの要求仕様及び当該要求仕様に対して適用された鋼種を記憶する実績情報記憶部と、各鋼種の特性を記憶する鋼種情報記憶部とを備えるコンピュータに、鋼材の設計を支援するための情報を提供させるためのコンピュータプログラムであって、
前記入力部が、顧客からの要求仕様の入力を受け付けるステップと、
前記実績情報記憶部から、入力された要求仕様と同一及び類似の要求仕様を検索し、検索された要求仕様に対して適用された鋼種に基づいて、候補となる鋼種を決定するステップと、
前記鋼種情報記憶部から前記候補となる鋼種の特性を読み出し、前記候補となる鋼種の特性が、入力された要求仕様を満足するか否かを判定するステップと、
前記出力部が、判定結果を出力するステップと、
を前記コンピュータに実行させる、コンピュータプログラム。
【請求項1】
過去に実施した鋼材の設計における顧客からの要求仕様及び当該要求仕様に対して適用された鋼種を記憶する実績情報記憶部と、
各鋼種の特性を記憶する鋼種情報記憶部と、
顧客からの要求仕様の入力を受け付ける入力部と、
入力された要求仕様と同一及び類似の要求仕様を前記実績情報記憶部から検索し、検索された要求仕様に対して適用された鋼種に基づいて、候補となる鋼種を決定する候補決定手段と、
前記鋼種情報記憶部に記憶された前記候補となる鋼種が、入力された要求仕様を満足するか否かを判定する適否判定手段と、
前記適否判定手段の判定結果を出力する出力部と、
を備える、鋼材設計支援システム。
【請求項2】
前記候補決定手段は、
前記検索された要求仕様に対して適用された鋼種を前記実績情報記憶部から抽出する抽出手段と、
予め定められた条件に基づいて、抽出された鋼種と同一グループに属する鋼種を、候補となる鋼種として取得する取得手段と、
を具備する、
請求項1に記載の鋼材設計支援システム。
【請求項3】
前記取得手段は、鋼種の用途及び主成分が少なくとも一致することを前記条件として、抽出された鋼種と同一グループに属する鋼種を、候補となる鋼種として取得するように構成されている、
請求項2に記載の鋼材設計支援システム。
【請求項4】
前記候補決定手段は、入力された要求仕様に含まれる複数の項目のうち少なくとも一部の項目が同一又は類似の要求仕様を、前記同一及び類似の要求仕様として前記実績情報記憶部から検索するように構成されている、
請求項1乃至3の何れかに記載の鋼材設計支援システム。
【請求項5】
前記候補決定手段は、入力された要求仕様に含まれる規格と少なくとも同一又は類似の規格を含む要求仕様を、前記同一及び類似の要求仕様として前記実績情報記憶部から検索するように構成されている、
請求項4に記載の鋼材設計支援システム。
【請求項6】
前記出力部は、前記適否判定手段の判定結果を含み、候補となる鋼種から設計に使用する鋼種を選択するための画面を出力するように構成されており、
前記入力部は、前記画面が出力されているときに、候補となる鋼種から設計に使用する鋼種の選択を受け付けるように構成されており、
入力された要求仕様及び選択された鋼種を、実績情報記憶部に記憶させる書込手段をさらに備える、
請求項1乃至5の何れかに記載の鋼材設計支援システム。
【請求項7】
前記出力部は、候補となる鋼種の特性に関する情報を出力可能に構成されている、
請求項1乃至6の何れかに記載の鋼材設計支援システム。
【請求項8】
顧客からの要求仕様の入力を受け付けるステップと、
過去に実施した鋼材の設計における顧客からの要求仕様及び当該要求仕様に対して適用された鋼種を記憶する実績情報記憶部から、入力された要求仕様と同一及び類似の要求仕様を検索し、検索された要求仕様に対して適用された鋼種に基づいて、候補となる鋼種を決定するステップと、
各鋼種の特性を記憶する鋼種情報記憶部から前記候補となる鋼種の特性を読み出し、前記候補となる鋼種の特性が、入力された要求仕様を満足するか否かを判定するステップと、
判定結果を出力するステップと、
を有する、鋼材設計支援方法。
【請求項9】
入力部と、出力部と、過去に実施した鋼材の設計における顧客からの要求仕様及び当該要求仕様に対して適用された鋼種を記憶する実績情報記憶部と、各鋼種の特性を記憶する鋼種情報記憶部とを備えるコンピュータに、鋼材の設計を支援するための情報を提供させるためのコンピュータプログラムであって、
前記入力部が、顧客からの要求仕様の入力を受け付けるステップと、
前記実績情報記憶部から、入力された要求仕様と同一及び類似の要求仕様を検索し、検索された要求仕様に対して適用された鋼種に基づいて、候補となる鋼種を決定するステップと、
前記鋼種情報記憶部から前記候補となる鋼種の特性を読み出し、前記候補となる鋼種の特性が、入力された要求仕様を満足するか否かを判定するステップと、
前記出力部が、判定結果を出力するステップと、
を前記コンピュータに実行させる、コンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−3524(P2012−3524A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137984(P2010−137984)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
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