説明

鋼板を安定させるためのデバイス及び方法

長く引き延ばされた鋼板(1)を、予め定められた移送経路(X)に沿う移送方向(2)に連続的に移送するときに、鋼板を安定させるためのデバイス。前記デバイスは、鋼板(1)のそれぞれの側に少なくとも一つの電磁石を備えた電磁石(3a,3b,4a,4b,5a,5b)の、少なくとも第一のペア、第二のペア及び第三のペアを有し、それらは、鋼板(1)を予め定められた移送経路(X)に対して安定化させるように構成されている。第一及び第二の電磁石(3a,3b,4a,4b)は、移送方向(2)に対して実質的に垂直な方向に長く伸ばされ、第一及び第二の電磁石(3a,3b,4a,4b)は、鋼板(1)の長手方向の中心線(y)のそれぞれの側に実質的に配置され、ここにおいて、前記中心線(y)は、移送方向(2)に対して実質的に平行であり、第三の電磁石(5a,5b)は、中心線(y)に隣接して配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長く引き延ばされた鋼板を安定させるためのデバイスに係る。本発明はまた、長く引き延ばされた鋼板を安定させるための方法に係る。
【背景技術】
【0002】
金属板、例えば鋼板の連続メッキの間、鋼板は、溶融金属(通常、亜鉛)を含む槽の中を連続的に通る。槽の中で、鋼板は、通常、浸漬ローラの下側を通り、それから、安定化及び修正ローラを通って、上方へ移動する。鋼板は、槽から出て、ガス・ナイフのセットの中を通過し、それらのガス・ナイフは、鋼板から過剰な亜鉛を吹き飛ばして槽に戻し、コーティングの厚さをコントロールする。ガス・ナイフから吹き出されるガスは、通常、空気または窒素であるが、蒸気または不活性ガスを使用することも可能である。
【0003】
鋼板は、コーティングが冷却されて、凝固するまで、支持無しで運ばれる。コーティングされた鋼板は、その後、アッパー・ローラを介して導かれ、後続する鋼板の処理工程に送られる。それは、例えば、鋼板個別の板要素への切断、または、ローラ上への鋼板の巻き付けなどである。通常、鋼板は、ローラから離れて縦方向に移動し、槽の中に浸漬され、修正及び安定化ローラ及びガス・ナイフ通って、アッパー・ローラに到達する。
【0004】
鋼板がメッキされるとき、コーティングの均一で且つ薄い厚さが、求められる。一つの共通的な方法は、鋼板がアッパー・ローラを通過した後に、コーティングの量を測定することである。その読みは、ガス・ナイフをコントロールするために、従って、コーティングの厚さをコントロールするために使用される。ガス・ナイフは、通常、縦方向及び鋼板の方向に移動可能に構成された梁から吊り下げされて配置される。ガス・ナイフはまた、ガスが鋼板の上のコーティングに当たる角度を変えることができるように、角度が付けられていても良い。
【0005】
しかしながら、鋼板の形状、鋼板が支持無しで走行しなければならない長さ、その速度、及び、ガス・ナイフの吹き付けの効果のために、鋼板が、その移送方向に対して実質的に垂直な方向に移動または振動することになる。何らかの対策、例えば修正及び安定化ローラの使用、ガス・ナイフからのガスの流れの正確なコントロール、及び、鋼板の速度の調整、および/または、鋼板が支持無しで走行しなければならない距離の調整などが、これらの横断方向の動きを減少させる目的で、採用されることがある。もし、それが減少しなければ、これらの横断方向の動きは、ガス・ナイフの正確なワイピングをかなり妨げることになり、それにより、コーティングの厚さが不均一になる。
【0006】
日本特許出願公開第 JP 09-202 955号の中には、ガス・ナイフを通過した後に、鋼板を安定化させ且つ張力を与えるロールを用いて、如何にして金属板の振動を減少させるかについて示されている。平面内でその移送方向に対する鋼板の位置が、センサーを用いて測定され、そこから、情報がコンピュータへ送られ、そのコンピュータは、得られた値に基づいて振動解析を行う。そして、鋼板の速度についての情報を加えて、鋼板の振動をコントロールするための、鋼板の最適の張力を計算する。
【0007】
また、とりわけ米国特許第 US 6,471,153 号及び日本特許出願公開第 JP 8 010 847 A 号から、鋼板をメッキするためのデバイスにおいて、鋼板の幅に沿って複数の電磁石を配置することも知られている。それらの電磁石は、鋼板に対して垂直に作用する磁力を発生させて、鋼板の振動を減衰させる。センサーが、鋼板と電磁石の間の距離を測定し、そして、コントロール・デバイスが、センサーにより測定された距離から、電磁石の中の電流の流量をコントロールする。
【0008】
狭い幅の鋼板の場合において、鋼板のエッジの外側にまで伸びる電磁石は、センサーにより測定される値が不正確になるので切られる。その理由は、鋼板のエッジの外側にまで伸びたとき、磁石の間には板が無いからである。このことは、このタイプのソリューションのためのコントロール・システムが、必要以上に高価で且つ複雑になることを意味している。上述の文献に記載されているように、多くの磁石を使用することは、コストの増大、システムの複雑さの増大、及び新たな望ましくない振動を引き起こす危険性を、必然的に伴う。
【0009】
鋼板を安定させるための、コスト効率の良いデバイス及び方法が求められている。ここで、当該デバイスは、板幅が変わったとき、特定の電磁石をコントロールする必要無く、幾つかの異なる幅の鋼板に対して使用することができることが要求される。
【特許文献1】特開平09−202955号公報
【特許文献2】米国特許第6,471,153号明細書
【特許文献3】特開平08−010847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、長く引き延ばされた鋼板を、予め定められた移送経路に沿う移送の方向に連続移送する間、安定化させるためのデバイスを提供することにあり、ここで、このデバイスは、板幅が変わったとき、プラントを再調整するする必要無く異なる幅の鋼板に対して使用することが可能なものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、本発明のデバイスにより実現される。
本発明のデバイスは、導入部に記載されたデバイスにおいて、第一及び第二の電磁石が長く伸ばされて形成され、且つ移送方向に対して実質的に垂直な方向に配置され、且つ、第一及び第二の電磁石は、鋼板の長手方向の中心線のそれぞれの側に実質的に配置され、ここで、前記中心線は移送方向に対して実質的に平行であり、且つ、第三の電磁石が中心線に隣接して配置されていること、を特徴とする。
【0012】
第一及び第二の電磁石を、中心線のそれぞれの側に配置することにより、必要な場合に、振動、振動現象、および/または、鋼板の偏差を補償するために、鋼板にトルクが加えられることが可能になる。中心線を越えて配置された第三の電磁石は、第一及び第二の電磁石と協同して、静的に変形された板を平らにする可能性をもたらす、その理由は、そのとき、鋼板の水平及び縦の両方の安定化が得られるからである。このことは、振動縦方向が縦方向に伝播する危険が、本質的に減少することを意味している。
【0013】
三つの大きい長く伸ばされた磁石を使用することは、それが、三つの最も重大な振動モード(併進、回転、及び曲げ)を取り除くために必要な磁石の最小の数であると言う観点から、最適である。長く伸ばされた磁石を使用することにより、広い領域に渡って鋼板に作用する力が得られ、そのような力は、鋼板の振動を効果的に減衰させる結果をもたらす。
【0014】
長く伸ばされた磁石を使用することにより、板幅が変わる問題もまた取り除かれる。その理由は、それらの磁石が、鋼板の外エッジまで、常に、適切な磁場強度をもたらすからであり、その理由は、もし、板幅が変わった場合には、このことは、磁石が、鋼板のエッジの外側に、多かれ少なかれ配置されることになるが、一様な力が、エッジまで、依然として常に鋼板作用することを意味しているからである。
【0015】
本発明の他の利点は、外側の磁石の力の中心が、プラント内を走行する板幅に拘わらず、常に磁石の内側のエッジと鋼板の外側のエッジの中間にあることであり、このことは、鋼板への力の影響がより一様になり、それによって、鋼板が、磁石のエッジの近傍で、更に湾曲することがないことを意味している。
【0016】
本発明の更なる利点は、問題の鋼板の幅に拘わらず、電磁石が同じ位置に配置されることが可能であり、そして、更に、同じサイズ及びデザインの電磁石が、デバイスの中の、鋼板を安定させるための全ての電磁石に対して使用されることが可能であると言うことである。
【0017】
このソリューションで実現される更なる利点は、もし板幅が変わった場合にも、磁石がコントロールされる必要が無いことである。このことは、結果として、対応するセンサー(3)を備えた少数の磁石(3)が使用されることが可能になることを意味しており、このことは、プラントのコントロールが、先行技術によるソリューションと比べてよりシンプルになることを意味している。
【0018】
更なる利点は、鋼板の振動及び曲げの最適な減衰が、鋼板の幅に拘わらず、実現されることであり、このことは、表面の平坦性の改善及びそれに伴うコーティングの質の改善を必然的に伴うことになる。そして、更なる利点は、鋼板の最良の可能な位置からの偏差が最小になることである。
【0019】
予め定められた移送経路と言う表現は、以下及び特許請求範囲の中において、鋼板の移送の間に、例えば鋼板の幅または形状が変わったときに、決定され且つ変更されることが可能な任意の平面を意味している。鋼板の形状は、例えば、鋼板の幅と共に変わることがある。その理由は、鋼板を圧延により製造するとき、鋼板は、通常、弓状の形態で変形されることがあるからである。
【0020】
電磁石は、コア、及びコアの周りに巻かれた少なくとも一つのコイルを有している。以下及び特許請求範囲の中において、電磁石の長さとは、電磁石の中のコアの長さを意味している。
【0021】
本発明の一つの実施形態によれば、第一及び第二の電磁石が、互いに一直線上に且つ移送方向に対して垂直に、配置される。第一及び第二の電磁石を中心線のそれぞれの側に配置することによって、必要な場合に、振動、振動現象、および/または、鋼板の偏差を補償するために、トルクが中心線の両側に加えられることが可能になる。
【0022】
本発明の一つの実施形態によれば、第三の電磁石が、長く伸ばされ且つ、移送方向を実質的に横断するその長手方向に、鋼板の中心線を越えて伸びている。中心線を越えて配置された第三の電磁石は、第一及び第二の電磁石と協同して、静的に変形された板を平らにする可能性を与える。その理由は、それにより鋼板の水平及び縦の両方の安定化が得られるからである。このことは、振動が縦方向に伝播する危険が、本質的に減少されることを意味している。
【0023】
直前の実施形態の代替的な実施形態によれば、第三の電磁石は、長く伸ばされ且つ、移送方向に実質的に沿うその長手方向に、鋼板の中心線に隣接して(好ましくは中心線の中に)伸びている。このデザインは、縦方向についての、力のより良好な分布をもたらし、このことは、縦方向での鋼板の安定化が改善されることを意味している。
【0024】
本発明の一つの実施形態によれば、第三の電磁石が、移送方向に関して第一及び第二の電磁石の上流または下流に配置される。この実施形態は、第三の電磁石の位置が、エンクロージャーの都合のために何が最適であるかと言う観点に基づいて選択されることを意味している。
【0025】
本発明の一つの実施形態によれば、第三の電磁石は、移送方向を横断する第一及び第二の電磁石の長さと、少なくとも部分的に重複する長さを有している。このようにして、現在使用されている全ての板幅が、デバイスが調整される必要無く、カバーされる。
【0026】
本発明の一つの実施形態によれば、第三の電磁石が、長く伸ばされ且つ、移送方向に実質的に沿うその長手方向に、鋼板の中心線に隣接して(好ましくは中心線の中に)伸び、そして、第一と第二の電磁石の間に配置される。このデザインは、縦方向についての、力のより良い分布をもたらし、それにより、鋼板の縦の安定化を改善する。
【0027】
本発明の一つの実施形態によれば、電磁石の内の少なくとも一つの長さは、300〜1000mmの範囲内である。好ましくは、電磁石の内の少なくとも一つの長さは、400〜700mmの範囲内である。電磁石に長く伸ばされた形状を与えることによって、同じサイズの電磁石が、大多数の幅の鋼板に対して、且つ、当該デバイスの中の全ての電磁石に対して、使用されることが可能になる。
【0028】
本発明の一つの実施形態によれば、当該デバイスが、例えば、鋼板を金属層でコーティングするためのプロセス・ラインの中に配置される。その場合に、前記層は、鋼板を溶融金属の槽の中を連続的に移送することにより付着され、この際に、ガス・ナイフが、鋼板から過剰な溶融金属を吹き飛ばすために配置され、複数のセンサーが、予め定められた移送経路に対する鋼板の位置を検知するために、電磁石に隣接して配置される。更に、複数のセンサーが全て、鋼板の最小の幅の中に配置される。この最小の幅とは、当該プラントの中を走行することになっている最小の板幅を意味している。
【0029】
電磁石は、前記板に生ずる振動を、予め定められた移送経路に対して実質的に垂直な方向の鋼板の検出された位置に応じて、減少させる目的で、鋼板に磁力を作用させるように構成されている。振動が減少するために、生産の速度を増大させることが可能になり、それと同時に、コーティング材料の過剰の程度(それは、最小のコーティング厚さに基づいており、且つ振動を補償することを狙っている)を、減少させることが可能であり、そのことは、コーティング材料の消費量の減少をもたらす。
【0030】
振動の減少により実現される他の利点は、ガス・ナイフと鋼板の間距離が縮められることが可能であり、それによって、ワイピング・オフ・パワーが増大することである。このようにして、生産の速度を維持しながら、より薄い層が鋼板の上に付着されることが可能になる。
【0031】
本発明の一つの実施形態によれば、少なくとも三つのセンサーが、鋼板の移送方向に対して平行な平面内に配置され、そして更に、鋼板の移送方向に対して垂直な、それらの変換器の検知方向で、鋼板の両側に配置される。それに加えて、前記センサーは、鋼板の最小の幅の範囲内に配置される。上記少なくとも三つのセンサーは、電磁石の内側に適切に配置され、好ましくは、一つのセンサーが、各電磁石の内側に配置される。この実施形態によって、センサーは、電磁石のコアからの最小の距離に配置されることになるであろう。そのことは、結果として、コイルを通る電流のコントロールの観点から、有利である。
【0032】
本発明の一つの実施形態によれば、少なくとも三つのセンサーが、鋼板の移送方向に対して平行な平面内に配置され、そして更に、鋼板の移送方向に対して垂直な、それらの変換器の検知方向で、鋼板の両側に配置される。それに加えて、これらのセンサーは、鋼板の最小の幅の内側に適切に配置される。上記少なくとも三つのセンサーは、電磁石の近傍に適切に配置され、好ましくは、一つのセンサーが、各電磁石に隣接して配置される。この実施形態は、センサーと電磁石の間の距離のために、コイルを通る電流のコントロールが、妨げられるリスクを最小にする。
【0033】
本発明の一つの実施形態によれば、センサーの内の少なくとも一つは、移送方向に対して実質的に垂直な方向、及び鋼板の平面に対して平行な方向に、移動可能に配置され、それによって、センサーの位置が、鋼板の幅に適合されることが可能になる。そのような本発明の実施形態により、プラントを、鋼板の異なる幅に対して、最適なやり方で調整することが容易になるであろう。少なくとも一つのセンサーは、予め定められた移送経路に対して実質的に垂直な方向にもまた、移動可能であっても良く、それにより、センサーを鋼板から適切な距離に調整する。それらのセンサーは、例えば、距離測定のための誘導変換器またはレーザー変換器である。
【0034】
本発明の一つの実施形態によれば、鋼板の幅に沿う数ポイントで金属層の厚さを測定するための測定デバイスが、ガス・ナイフの下流に配置され、層の厚さの測定からの情報が、電磁石で鋼板の位置及び形状をコントロールするために使用され、それによって、鋼板の幅方向における層の所望の厚さが得られる。この実施形態は、鋼板の幅方向の亜鉛の厚さの分布を、一様な分布となるように、調整する可能性を提供する。
【0035】
本発明の一つの実施形態によれば、上記デバイスは、センサーからの信号を処理する信号処理装置を有している。この信号処理装置から、測定された偏差についての情報が、コンバータを有するコントロール装置へ送られ、そのコンバータは、電磁石の中のコイルへ流れる電流を、鋼板と予め定められた移送経路の間の偏差(センサーにより測定される)に基づいて、コントロールする。この実施形態は、あらゆる瞬間に鋼板に影響を及ぼす適切な磁力の調整を可能にするために必要となる必要なコントロール・ループを提供する。
【0036】
本発明の一つの実施形態によれば、上記コントロール装置はまた、電磁石の中のコイルへの電流を、以下のプロセスパラメータの内の少なくとも一つに基づいて、コントロールする:板厚、層の厚さ、板幅、板の速度、接合部、及び鋼板の引張り強度。また、ガス・ナイフからのデータ、例えば、ガス・ナイフからのガス圧力またはガス・ナイフと鋼板の距離なども、電磁石の中のコイルへの電流をコントロールするために、使用されることが可能である。鋼板の厚さが知られたとき、この実施形態は、コイルへの電流のコントロールを容易にする。
【0037】
本発明の目的はまた、長く引き延ばされた鋼板を安定させるための方法により、独立請求項17の特徴部分に記載された特徴に基づいて、実現される。
本発明の方法の好ましい実施形態は、従属の方法の請求項18〜26の中に規定されている。
本発明の一つの実施形態によれば、電磁石の中のコイルへの電流が、鋼板の検出された位置に応じてコントロールされる。
【0038】
本発明の一つの実施形態によれば、鋼板の振動の周波数解析が、鋼板の検出された位置に基づいて、行われる。この実施形態によって、オペレータは、将来のメインテナンスの要求についての情報を受け取る。その情報は、プロセスの中に、欠陥のあるベアリングまたは他の欠陥があるかどうかについて示すものである。
【0039】
本発明の一つの実施形態によれば、電磁石の間の鋼板の位置が、電磁石のコイルに供給される固定されたベーシックな電流によってコントロールされ、それによって、運転中に、影響を受けない鋼板の位置に対するオフセット位置が、鋼板に与えられる。この実施形態によって、鋼板の振動が、鋼板の中立位置が影響を受けることなく、減少する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下において、本発明について、添付図面を参照しながらの実施形態の説明により、より詳細に説明される。
【0041】
図1及び2は、長く引き延ばされた鋼板1を、予め定められた移送経路(X)に沿う移送方向2に、連続的に移送するときの、鋼板を安定させるためのデバイスを概略的に示していて、ここで、図2は、図1の断面図である。このデバイスは、電磁石3a,3b,4a,4b,5a,5bの第一、第二、第三のペアを有していて、それらは、予め定められた移送経路(X)に対して、鋼板1を安定化させるように構成されている。電磁石3a,3b,4a,4b,5a,5bの各ペアは、鋼板1のそれぞれの側に、一つの電磁石を有している。
【0042】
図2は、図1の断面A−Aに沿う、電磁石3a,3b,5a,5bの第一のペア及び第三のペアの断面を示している。第一及び第二の電磁石3a,3b,4a,4bは、移送方向2に対して実質的に垂直な方向に長く伸ばされ、そして、鋼板1の長手方向の中心線のそれぞれの側に配置されていて、ここで、中心線は、移送方向2に対して実質的に平行である。第三の電磁石5a,5bは、長く伸ばされ、且つ移送方向を実質的に横断するその長手方向に且つ鋼板の中心線(y)を越えて配置されている。
【0043】
図1において、第三の電磁石5a,5bが、移送方向に、第一及び第二の電磁石3a,3b,4a,4bの下流に配置されている。第一及び第二の電磁石3a,3b,4a,4bは、移送方向に対して実質的に垂直に、互いに一直線状に配置されている。電磁石が板の大多数の幅に適合するように、電磁石の長さは、300〜1000mmの範囲内に、好ましくは400〜700mmの範囲内にある。
【0044】
図3は、比較的狭い幅の鋼板に対する、そして、鋼板の一方の側での、図1及び2に示された電磁石3a,4a,5aの同じ形状を示す。
【0045】
図4は、図3に示されたものよりも更に狭い幅の板に対する電磁石3a,4a,5aを示し、相違点は、第三の電磁石5aが、第一及び第二の電磁石3a,4aの上流に配置されていることである。
【0046】
図5は、どのようにして、第三の電磁石5aが、長く伸ばされ且つ、移送方向2に実質的に沿うその長手方向に且つ中心線に隣接して(好ましくは中心線(y)の中に)伸びているかについて示している。第三の電磁石5cは、移送方向に、第一及び第二の電磁石3a,4aの下流に配置されている。
【0047】
図6は、第三の電磁石5aが、第一と第二の電磁石3,4の間に、その長いサイドを鋼板の中心線に対して実質的に平行にして、どのようにして、配置されるかについて概略的に示している。第三の電磁石5aは、長く伸ばされ且つ、移送方向2に実質的に沿うその長手方向に且つ中心線に隣接して(好ましくは中心線(y)の中に)伸びている。
【0048】
図7は、鋼板1を金属層(例えば亜鉛層)でコーティングするためのプロセス・ラインにおける、電磁石3a,3b,4a,4b,5a,5bを示す。金属層は、亜鉛の槽6の中を、鋼板1を連続的に移送することにより付着される。槽6の中で、鋼板は、通常、浸漬ローラ10の下を通り、その後、安定化及び修正ローラ(図示せず)を通って、縦方向に上方に移動する。鋼板は、槽6から出て、ガス・ナイフ7のセットを通って移送され、それらのガス・ナイフは、コーティングの厚さをコントロールするために、過剰な亜鉛を鋼板から吹き飛ばして槽へ戻す。
【0049】
鋼板は、その後、コーティングが冷却され凝固されるまで、支持無しで移送される。ガス・ナイフ7の後に、電磁石3a,3b,4a,4b,5a,5bが配置され、それらの電磁石に、センサー8が、平面(x)からの偏差を検知するために配置されている。センサー8からの信号は、信号処理装置14で処理され、コンバータを有するコントロール装置15は、鋼板を安定させるため、電磁石3a,3b,4a,4b,5a,5bに送られる電流をコントロールする。
【0050】
電磁石の下流には、冷却要素9が配置されている。コーティングされた鋼板は、その後、例えば、鋼板の個別の板要素への切断または鋼板をローラ13上への巻き付けなど、鋼板の後続の処理のために、アッパー・ローラ12を介して、送られる。通常のケースにおいて、鋼板は、縦方向に、槽の中に親戚されたローラ10から、修正及び安定化ローラ、及びガス・ナイフを通って、アッパー・ローラ13へ、移動する。
【0051】
一つの実施形態によれば、コントロール装置15が、鋼板の検出された位置に基づいて、鋼板1の振動の周波数解析を実行する。以下の内の少なくとも一つのステイタス及び条件が、コントロール・パネル16上に表示される:鋼板の振動の周波数解析、鋼板に発生する振動の異なるモード、プロセスからの統計データ、プロセスのヒストリー、及びプロセス・パラメータの変更のためのプロポーザル。
【0052】
他の実施形態によれば、電磁石3a,3b,4a,4b,5a,5bの間の鋼板の位置が、平均で、同じ量の電流が、電磁石の複数のペアの内の少なくとも一つのペアの中の電磁石のコイルに送られることを実現するため、調整される。この調整は、両方のコイルが、同時に、同じ方向に及び同じ距離だけ動かされ、鋼板1が、電磁石の間で中心に合わされるように、実施される。
【0053】
予め定められた移送経路(X)に対するセンサーの位置は、実施形態によれば、静止鋼板1の場合に、較正される。
【0054】
更に他の実施形態によれば、センサー8が、予め定められた移送経路1への距離を測定して、必要な場合に、予め定められた移送経路(X)に対して実質的に垂直な方向の且つ鋼板(1)に対する電磁石3a,3b,4a,4b,5a,5bの位置が調整され、それにより、電磁石と鋼板の間の所望の距離が得られる。
【0055】
図8は、図1のロケイションにより、電磁石からの安定させる力が有る場合と無い場合についての、鋼板の形状の例を、断面で示す。断面は、予め定められた移送経路に対して垂直な平面の中を通る。磁石の間の中程の基準ラインに対する、鋼板の偏差は、鋼板の幅に沿う、三つの位置17で測定される。
【0056】
この図は、いかにして、安定させる力が作用していない板に対する曲線状の静的変形(曲線a)が、電磁石3a,4a,5bからの安定させる磁力から形成され、それによって、位置17での鋼板の偏差がゼロになる(曲線b)かについて示している。この図はまた、どの形状で、電磁石が鋼板の幅に沿って配置されるかについて示している。電磁石の各ペアからのたった一つの磁石3a,4a,5b、即ち、現在アクティブな磁石が、図の中に描かれている。
【0057】
本発明は、ここに示された実施形態のみに限定されず、当業者は、当然に、複数のやり方で、請求項により規定された本発明の範囲内で、それを変形することが可能である。例えば、本発明は、溶融金属でコーティングされた鋼板にみに限定されず、コーティングされていない鋼板に対して使用されることも可能である。本発明に基づくデバイスは、例えば、振動が生ずる場合または鋼板の形を作る必要がない場合に、板の加工ラインの中の全ての位置に配置されることが可能である。鋼板はまた、鋼板が水平方向に移送されるときに、本発明により安定化されることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、鋼板を安定させるためのデバイスの中の電磁石を概略的に示している。
【図2】図2は、図1のデバイスの断面A−Aを示している。
【図3】図3は、比較的狭い鋼板を安定させるときの、図1に基づくデバイスを概略的に示している。
【図4】図4は、比較的狭い鋼板を安定させるときの、図3に基づくデバイス、及び第一及び第二の電磁石の上流に配置された第三の電磁石を、図3の鋼板と比較して、概略的に示している。
【図5】図5は、第三の長く伸ばされた電磁石が、実質的に鋼板の移送方向に、どのようにして配置されるかについて、概略的に示している。
【図6】図6は、第三の電磁石が、どのようにして、第一と第二の電磁石の間に配置されるかについて、概略的に示している。
【図7】図7は、金属の層を有する鋼板を冷却するためのプロセス・ラインにおける鋼板の安定化を概略的に示している。
【図8】図8は、図1のロケイションに基づいた、電磁石からの安定させる力が有る場合と無い場合の、鋼板の断面を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長く引き延ばされた鋼板(1)を、予め定められた移送経路(X)に沿う移送方向(2)に連続的に移送するときに、鋼板を安定させるためのデバイスであって、
当該デバイスは、鋼板(1)のそれぞれの側に少なくとも一つの電磁石を備えた電磁石(3a,3b,4a,4b,5a,5b)の、少なくとも第一のペア、第二のペア及び第三のペアを有し、それらが鋼板(1)を予め定められた移送経路(X)に対して安定化させるように構成された、
デバイスにおいて、
第一及び第二の電磁石(3a,3b,4a,4b)が、長く伸ばされて形成され、且つ移送方向(2)に対して実質的に垂直な方向に配置されていること、及び、
第一及び第二の電磁石(3a,3b,4a,4b)が、鋼板(1)の長手方向の中心線(y)のそれぞれの側に実質的に配置され、ここで、前記中心線(y)は移送方向(2)に対して実質的に平行であり、且つ第三の電磁石(5a,5b)が中心線(y)に隣接して配置されていること、
を特徴とするデバイス。
【請求項2】
下記特徴を有する請求項1に記載のデバイス:
第一及び第二の電磁石(3a,3b,4a,4b)は、移送方向(2)に対して実質的に垂直方向に、互いに一直線上に配置されている。
【請求項3】
下記特徴を有する請求項1または2に記載のデバイス:
第三の電磁石(5a,5b)は、長く伸ばされ、且つ移送方向(2)を実質的に横断するその長手方向に、鋼板(1)の中心線(y)を超えて伸びている。
【請求項4】
下記特徴を有する請求項1または2に記載のデバイス:
第三の電磁石(5a,5b)は、長く伸ばされ、且つ移送方向(2)に実質的に沿うその長手方向に、鋼板(1)の中心線(y)に隣接して伸びている。
【請求項5】
下記特徴を有する請求項1から4のいずれか1項に記載のデバイス:
第三の電磁石(5a,5b)は、移送方向(2)に関して、第一及び第二の電磁石(3a,3b,4a,4b)の上流または下流に配置されている。
【請求項6】
下記特徴を有する請求項1から5のいずれか1項に記載のデバイス:
第三の電磁石(5a,5b)は、移送方向(2)を横断する第一及び第二の電磁石(3a,3b,4a,4b)の長さに少なくとも部分的に重複する長さを有している。
【請求項7】
下記特徴を有する請求項4に記載のデバイス:
第三の電磁石(5a,5b)は、第一及び第二の電磁石(3a,3b,4a,4b)の間に配置されている。
【請求項8】
下記特徴を有する請求項1から7のいずれか1項に記載のデバイス:
前記電磁石(3a,3b,4a,4b,5a,5b)の内の少なくとも一つの長さは、300mmから1000mmの範囲内にある。
【請求項9】
下記特徴を有する請求項1から8のいずれか1項に記載のデバイス:
電磁石(3a,3b,4a,4b,5a,5b)の内の少なくとも一つの長さは、400mmから700mmの範囲内にある。
【請求項10】
下記特徴を有する請求項1から9のいずれか1項に記載のデバイス:
前記デバイスは、鋼板(1)を金属層でコーティングするためプロセス・ラインの中に配置され、
前記層は、鋼板(1)を溶融金属の槽(6)の中を連続的に移送するにより、付着され、
ガス・ナイフ(7)が、過剰な溶融金属を鋼板(1)から吹き飛ばすように構成されている。
【請求項11】
下記特徴を有する請求項1から10のいずれか1項に記載のデバイス:
複数のセンサー(8)が、予め定められた移送経路(X)に対する鋼板(1)の位置を検出するために前記電磁石に隣接して配置され、これらの電磁石は、予め定められた移送経路(X)に対して実質的に垂直な方向の鋼板の検出された位置(x)に応じて、磁力を鋼板に作用させるように構成されている。
【請求項12】
下記特徴を有する請求項1から11のいずれか1項に記載のデバイス:
複数のセンサー(8)が、前記電磁石の内側または前記電磁石の近傍に、前記予め定められた移送経路(X)に対する鋼板(1)の位置を検出するために配置され、
前記電磁石は、予め定められた移送経路(X)に対して実質的に垂直な方向の、鋼板の検出された位置(x)に応じて、鋼板に磁力を作用させるように構成されている。
【請求項13】
下記特徴を有する請求項11に記載のデバイス:
前記センサー(8)の内の少なくとも一つは、移動可能であるように配置されている。
【請求項14】
下記特徴を有する請求項10から13のいずれか1項に記載のデバイス:
鋼板(1)の幅に沿う数ポイントで金属層の厚さを測定するための測定デバイス(9)が、前記ガス・ナイフ(7)の下流に配置され、前記層の厚さの測定からの情報が、前記電磁石(3a,3b,4a,4b,5a,5b)を用いて、鋼板(1)の形状または位置をコントロールするために使用され、それによって、鋼板の幅方向の層の所望の厚さが得られる。
【請求項15】
下記特徴を有する請求項1から14のいずれか1項に記載のデバイス:
前記デバイスは、鋼板(1)と予め定められた移送経路(X)の間の測定された偏差に応じて、前記電磁石への電流をコントロールするためのコントロール装置(15)を有している。
【請求項16】
下記特徴を有する請求項15に記載のデバイス:
前記コントロール装置(15)はまた、以下のプロセスパラメータの内の少なくとも一つに基づいて、前記電磁石への電流をコントロールする:
板厚、層の厚さ、板幅、板の速度、接合部、及び鋼板(1)の引張り強度。
【請求項17】
長く引き延ばされた鋼板(1)を安定させるための方法であって、
前記方法は、
− 鋼板(1)を予め定められた移送経路(X)に沿う移送方向(2)に移送し、
− 予め定められた移送経路(X)に対して、鋼板(1)の位置を安定化させること、
を含み、
鋼板(1)のそれぞれの側に少なくとも一つの電磁石を備えた電磁石の、少なくとも第一の、第二の、及び第三のペアが、必要な場合に、磁力を鋼板(1)に作用させ、
第一及び第二の電磁石(3a,3b,4a,4b)は、長く伸ばされ、且つ移送方向(2)に対して実質的に垂直な方向に伸びていて、鋼板(1)の長手方向の中心線(y)のそれぞれの側に、実質的に配置され、
前記中心線は、移送方向(2)に対して実質的に平行であり、
第三の電磁石(5a,5b)は、中心線(y)に隣接して配置されている。
【請求項18】
下記特徴を有する請求項17に記載の方法:
第三の電磁石(5a,5b)は、長く伸ばされ、且つ移送方向(2)を実質的に横断するその長手方向に、鋼板の中心線(y)を超えて伸びている。
【請求項19】
下記特徴を有する請求項18に記載の方法:
第三の電磁石(5a,5b)は、長く伸ばされ、且つ移送方向(2)に実質的に沿うその長手方向に、鋼板の中心線(y)を超えて伸びている。
【請求項20】
下記特徴を有する請求項17から19のいずれか1項に記載の方法:
前記鋼板(1)は、金属層で被覆され、
前記鋼板(1)は、溶融金属の槽(6)の中を通って連続的に移送され、
ガス・ナイフ(7)が、過剰な溶融金属を鋼板(1)から吹き飛ばす。
【請求項21】
下記特徴を有する請求項17から20のいずれか1項に記載の方法:
前記電磁石(3a,3b,4a,4b,5a,5b)に隣接して配置された複数のセンサー(8)が、予め定められた移送経路(X)に対する鋼板(1)の位置を検出し、
前記電磁石(3a,3b,4a,4b,5a,5b)は、予め定められた移送経路(X)に対して実質的に垂直な方向の鋼板の検出された位置(1)に応じて、鋼板に磁力を作用させる
【請求項22】
下記特徴を有する請求項21に記載の方法:
前記電磁石への電流(3a,3b,4a,4b,5a,5b)は、鋼板の検出された位置(1)に応じてコントロールされる。
【請求項23】
下記特徴を有する請求項17から20のいずれか1項に記載の方法:
前記電磁石への電流(3a,3b,4a,4b,5a,5b)は、以下のプロセスパラメータの内の一つまたはそれ以上に応じてコントロールされる:
板厚、層の厚さ、板幅、板の速度、接合部、及び鋼板(1)の引張り強度。
【請求項24】
下記特徴を有する請求項21から23のいずれか1項に記載の方法:
鋼板(1)の振動の周波数解析が、鋼板の検出された位置に基づいて、行われる。
【請求項25】
下記特徴を有する請求項21から24のいずれか1項に記載の方法:
平均値で、同じ量の電流が、電磁石のペアの内の少なくとも一つペアの中の前記電磁石(3a,3b,4a,4b,5a,5b)に供給されることを確保し、それによって、鋼板(1)が前記電磁石の間の中心に合わされるように、鋼板(1)への前記電磁石(3a,3b,4a,4b,5a,5b)の距離が調整される。
【請求項26】
長く引き延ばされた鋼板をメッキするときの、鋼板を安定させるための、請求項1から16の何れか1項に記載のデバイスの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−534776(P2008−534776A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502949(P2008−502949)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際出願番号】PCT/SE2006/000368
【国際公開番号】WO2006/101446
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(594075499)アーベーベー・リサーチ・リミテッド (89)
【氏名又は名称原語表記】ABB RESEARCH LTD.
【Fターム(参考)】