説明

鋼板穴検出装置の穴検出精度検査方法

【課題】鋼板穴検出装置の穴検出精度検査の頻度を確保して、鋼板穴検出装置の穴検出精度を確保することが可能な鋼板穴検出装置の穴検出精度検査方法を提供する。
【解決手段】先に通板される鋼板1と後に通板される鋼板1の溶接部10に形成された、鋼板トラッキング用の穴11が検出されるか否かを判定し、当該溶接部10に形成された穴11が検出される場合に鋼板穴検出装置の穴検出精度良好と判定することとしたため、予め穴11の開設されたダミーコイル12を用いることなく穴検出精度の検査を行うことができ、鋼板穴検出装置の穴検出精度検査の頻度を確保して、鋼板穴検出装置の穴検出精度を確保することができると共に、穴検出精度のために新たに穴を開設する必要がなく、その分だけ、穴検出精度検査が容易になると共に穴検出精度検査の頻度を増加することも可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通板中の鋼板にできた穴を検出する鋼板穴検出装置の穴検出精度を検査する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧延された鋼板には、予測できないキズや形状不良が生じることがある。形状不良の一つとして、穴ができることもある。鋼板に形成された穴の有無については、連続処理ラインに発光器及び受光器を有する穴検出装置を設けておくことで、通板中に鋼板の穴があった場合には、それを検出して、穴の開いた部分を除去したり、或いは穴の開いた鋼板のコイルを不良品として払い出したりする。発光器と受光器とを有する穴検出装置は、例えば下記特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開平9−304296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記特許文献1に記載される鋼板穴検出装置も、場合によっては故障や異常によって、鋼板にできた穴を適正に検出できないことも考えられる。そこで、従来は、形状の異なる穴が予め鋼板に幾つか開設された、所謂ダミーコイルを、正規の鋼板と鋼板の間に接続し、このダミーコイルに開設された穴を適正に検出できるか否かをもって、鋼板穴検出装置の穴検出精度を検査している。しかしながら、ダミーコイルを通板している間は、操業としては停止状態であるから、実際の操業に照らすと、頻繁にダミーコイルを通板することができず、結果的に鋼板穴検出装置の穴検出精度検査の頻度が低下する。穴検出精度検査の頻度が低下すれば、それは即ち鋼板穴検出装置の穴検出精度が低下することに他ならない。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、鋼板穴検出装置の穴検出精度検査の頻度を確保して、鋼板穴検出装置の穴検出精度を確保することが可能な鋼板穴検出装置の穴検出精度検査方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の鋼板穴検出装置の穴検出精度検査方法は、通板中の鋼板にできた穴を検出する鋼板穴検出装置の穴検出精度検査方法であって、先に通板される鋼板と後に通板される鋼板の溶接部に形成された穴が検出されるか否かを判定し、当該溶接部に形成された穴が検出される場合に鋼板穴検出装置の穴検出精度良好と判定することを特徴とするものである。
また、前記先に通板される鋼板と後に通板される鋼板の溶接部に形成された穴が、鋼板トラッキング用に開設された穴であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
而して、本発明の鋼板穴検出装置の穴検出精度検査方法によれば、先に通板される鋼板と後に通板される鋼板の溶接部に形成された穴が検出されるか否かを判定し、当該溶接部に形成された穴が検出される場合に鋼板穴検出装置の穴検出精度良好と判定する構成としたため、予め穴の開設されたダミーコイルを用いることなく穴検出精度の検査を行うことができ、鋼板穴検出装置の穴検出精度検査の頻度を確保して、鋼板穴検出装置の穴検出精度を確保することができる。
また、先に通板される鋼板と後に通板される鋼板の溶接部に形成された穴が、鋼板トラッキング用に開設された穴であることとしたため、穴検出精度のために新たに穴を開設する必要がなく、その分だけ、穴検出精度検査が容易になると共に穴検出精度検査の頻度を増加することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の鋼板穴検出装置の穴検出精度検査方法の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の鋼板穴検出装置の穴検出精度検査方法が適用される連続処理設備の概略全体構成図である。連続処理設備としては、例えば連続焼鈍炉が挙げられる。ペイオフリール2から払い出される鋼板(ストリップとも言う)1は、連続処理設備3内で焼鈍などの必要な処理が行われた後、テンションリール4に巻き取られる。鋼板1は、連続処理設備3の入側に設けられた溶接機5によって、次々に溶接されて通板される。例えば、テンションリール4を駆動するモータ6の回転速度やトルクなどの制御はホストコンピュータ7によって行われる。
【0007】
図中の符号8は、前記特許文献1に記載される鋼板穴検出装置の発光器、符号9は、同じく鋼板穴検出装置の受光器であり、例えばホストコンピュータ7は、受光器9で受光された発光器8の光の形態から、通板中の鋼板に穴が開いているか否かを判定する。この発光器8、受光器9の形態は種々に考えられるが、例えば受光器9をCCD素子で構成し、このCCD素子で捉えた、穴からの漏れ光の形態をモデルマッチングなどによって比較して、穴が開いているか否かを判定する。なお、ホストコンピュータ7によりモデルマッチングなどの演算処理を行う場合、ほぼ瞬時に穴の形態を検出することが可能である。
【0008】
図2は、先に通板される鋼板1と後に通板される鋼板2の溶接部10に開設された穴11の状態を示す平面図である。この穴11は、本来は、鋼板1のトラッキング用に開設されたものである。本実施形態では、前記鋼板穴検出装置である発光器8、受光器9、ホストコンピュータ7で、この溶接部10に開設された穴11を検出し、所定の溶接部10に穴11が検出されたら鋼板穴検出装置が良好であると判定する。先に通板される鋼板1と後に通板される鋼板1の溶接部10は、新たに鋼板1が払い出されるたびに形成されるので、最大で、新たな鋼板1が通板するたびに鋼板穴検出装置の穴検出精度を検査することができる。また、ホストコンピュータ7による穴形態の検出はほぼ瞬時に完了するので、鋼板1の通板速度を低下させる必要もない。ちなみに、溶接部10は、シャー13によって切り落とされ、製品後の鋼板1からは除去される。
【0009】
図3は、ホストコンピュータ7が行う、穴形態の検出から穴検出装置の検出精度判定を行うまでのフローを示す図である。ホストコンピュータ7には、図示しないトラッキング手段から、溶接部10の位置情報が入力されており、ステップS100では溶接部10が穴検出器付近にあるか否かの判定を行っている。穴検出器付近に来ると判定された場合には、ステップS110にて、受光器9からの検出信号の有無を判定する。検出信号有りの場合には、正常と判定し(ステップS120)、検出信号無しの場合には、異常と判定される(ステップS130)。ここで、検出信号の有無の判定には、上述のように穴からの漏れ光の形態をモデルマッチングなどによって比較して、穴が開いているか否かを判定し、穴有りと判定した場合に検出信号が入力されるようにしてもよい。
【0010】
図4は、穴検出器の穴検出精度判定のために従来から用いられているダミーコイル12の平面図である。このダミーコイル12には、予め種々の形態の穴11が開設されている。前記鋼板1と鋼板1の溶接部10に開設された穴11は、鋼板穴検出装置が穴11を検出できるかどうかの検査に用いられる。これに対し、ダミーコイル12の穴11は、鋼板穴検出装置が穴11の形態を正確に検出できるかどうかの検査に用いられる。そのため、今後も、ダミーコイル12の穴11による鋼板穴検出装置の穴検出精度検査は必要である。
【0011】
しかしながら、ダミーコイル12を通板している間は、操業は実質的に停止しているのであり、実際の操業に照らしてみると、頻繁にダミーコイル12を通板することはできない。実質的には、1ヶ月に1回程度である。これに対し、鋼板1と鋼板1の溶接部10に開設した穴11による鋼板穴検出装置の穴検出精度検査は、最大で、鋼板ごとに行うことが可能であるから、鋼板穴検出装置の穴検出精度を確保することが可能となる。
【0012】
このように、本実施形態の鋼板穴検出装置の穴検出精度検査方法によれば、先に通板される鋼板1と後に通板される鋼板1の溶接部10に形成された穴11が検出されるか否かを判定し、当該溶接部10に形成された穴11が検出される場合に鋼板穴検出装置の穴検出精度良好と判定することとしたため、予め穴11の開設されたダミーロール12を用いることなく穴検出精度の検査を行うことができ、鋼板穴検出装置の穴検出精度検査の頻度を確保して、鋼板穴検出装置の穴検出精度を確保することができる。
【0013】
また、先に通板される鋼板11と後に通板される鋼板11の溶接部10に形成された穴11が、鋼板トラッキング用に開設された穴であることとしたため、穴検出精度のために新たに穴を開設する必要がなく、その分だけ、穴検出精度検査が容易になると共に穴検出精度検査の頻度を増加することも可能となる。
なお、鋼板穴検出装置の穴検出精度検査に用いる穴の数や形態は、前記実施形態に限定されるものではなく、操業条件や鋼板穴検出装置の仕様に応じて、適宜に設定されるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の鋼板穴検出装置の穴検出精度検査方法の一実施形態を示す連続処理設備の概略全体構成図である。
【図2】図1の穴検出精度検査方法で用いられる鋼板と鋼板の溶接部の穴の説明図である。
【図3】穴形態の検出から穴検出装置の検出精度判定を行うまでのフローを示す図である。
【図4】ダミーコイルの説明図である。
【符号の説明】
【0015】
1は鋼板、2はペイオフリール、3は連続処理設備、4はテンションリール、5は溶接機、6はモータ、7はホストコンピュータ、8は発光器、9は受光器、10は溶接部、11は穴、12はダミーコイル、13はシャー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通板中の鋼板にできた穴を検出する鋼板穴検出装置の穴検出精度検査方法であって、先に通板される鋼板と後に通板される鋼板の溶接部に形成された穴が検出されるか否かを判定し、当該溶接部に形成された穴が検出される場合に鋼板穴検出装置の穴検出精度良好と判定することを特徴とする鋼板穴検出装置の穴検出精度検査方法。
【請求項2】
前記先に通板される鋼板と後に通板される鋼板の溶接部に形成された穴が、鋼板トラッキング用に開設された穴であることを特徴とする請求項1に記載の鋼板穴検出装置の穴検出精度検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−85213(P2010−85213A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253811(P2008−253811)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】