説明

鋼管埋設装置

【課題】空頭制限のあるような施工現場において、装置の高さに関わりなく、可能な限り長い鋼管を使用できるようにし、その継ぎ足し回数を少なくして施工効率を向上させることができる鋼管埋設装置を提供する。
【解決手段】端部に鋼管を受け入れる略U字形の開放部を有するベースプレート2と、ベースプレート2にガイド部材3を介して昇降自在に設けられ、端部に鋼管を受け入れる略U字形の開放部を有する昇降プレート4と、昇降プレート4に少なくとも上昇力を与える給進部材10と、昇降プレート4上に設けられた回転装置11とを備え、回転装置11は、昇降プレート4の開放部側に開閉自在かつ回動自在に設けられ、開放部に受け入れられた鋼管の外周を把持する把持部材12と、把持部材12に締め付け力を与えるクランプ部材17と、把持部材12を所定角度ごとに回転させる駆動部材13とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鋼管埋設装置に関し、さらに詳細には、本設あるいは仮設として設置される鋼管杭や、掘削孔壁を保護するためのケーシングなどとして利用される鋼管を回転させることによって地中に埋設する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管杭の埋設装置として、従来、全回転オールケーシング掘削機が広く利用されている。このオールケーシング掘削機は、図6に符号50で示されるように、鋼管杭Pを把持するための把持機構、回転させるための回転機構、地中に圧入するための圧入機構をフレーム51の内方に組み込んだものである(例えば特許文献1,2も併せて参照)。
【0003】
この全回転オールケーシング掘削機50は鋼管杭Pの把持機構が周方向に開閉できないものであるため、鋼管杭Pを継ぎ足す際にはフレーム51の高さをかわして、その上部で接続しなければならない。このため、杭施工位置の上方に構造物52等がある場合、すなわち空頭制限のある現場においては、接続できる鋼管杭Pの長さが制限されてしまう。鋼管杭の長さは継ぎ足し回数に影響し、継ぎ足し回数が多ければ多いほど施工効率が低下する。
【特許文献1】特開2000−96564号公報
【特許文献2】特開2001−90069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は上記のような技術的背景に基づいてなされたものであって、次の目的を達成するものである。
この発明の目的は、空頭制限のあるような施工現場において、装置の高さに関わりなく、可能な限り長い鋼管を使用できるようにし、その継ぎ足し回数を少なくして施工効率を向上させることができる鋼管埋設装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は上記課題を達成するために、次のような手段を採用している。
すなわち、この発明は、鋼管に回転力を与えて地中に埋設するための装置であって、
端部に鋼管を受け入れる略U字形の開放部を有するベースプレートと、
このベースプレートにガイド部材を介して昇降自在に設けられ、端部に鋼管を受け入れる略U字形の開放部を有する昇降プレートと、
この昇降プレートに少なくとも上昇力を与える給進部材と、
この昇降プレート上に設けられた回転装置とを備え、
前記回転装置は、
前記昇降プレートの前記開放部側に開閉自在かつ回動自在に設けられ、前記開放部に受け入れられた鋼管の外周を把持する把持部材と、
この把持部材に締め付け力を与えるクランプ部材と、
前記把持部材を所定角度ごとに回転させる駆動部材とを備えていることを特徴とする鋼管埋設装置にある。
【0006】
より具体的には、前記昇降プレート及び前記把持部材に、該把持部材の回動を案内するための手段が設けられている。
【0007】
前記把持部材は、例えば、前記昇降プレート面に沿って回動自在に支持された第1把持部、及びこの第1把持部の両端部に一端部がそれぞれ枢支され、前記昇降プレート面に沿って回動することにより他端部間が開閉する1対の第2把持部からなるものとすることができる。この場合、前記駆動部材は一端部が前記昇降プレートに、他端部が前記第2把持部のそれぞれに枢支された1対の駆動シリンダからなる構成とすることができる。
【0008】
前記回転装置を有する前記昇降プレートが2段以上の多段に設置されている構成とすることもできる。前記ベースプレートの前記開放部側に該開放部に受け入れられた鋼管の外周を把持する把持部材が設けられている構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、空頭制限のある現場条件下でも、装置の高さに関わりなく制限内で最長の鋼管を使用することができ、このため継ぎ足し回数が少なくて施工効率を向上させることができる。また、万一、鋼管のジャーミング事故や装置の故障により通常の施工ができなくなったとしても、把持部材を開放させることで、装置と鋼管を容易にセパレートすることが可能であり、トラブル時にも対処しやすくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明の実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1は、この発明の実施形態を示す側面図である。この発明による鋼管埋設装置1は、ベースプレート2と、このベースプレート2の後端部に立設されたガイド部材3と、このガイド部材3に案内されてベースプレート2上を昇降する複数の昇降プレート4を備えている。
【0011】
ガイド部材3は、この実施形態では、鉛直方向に沿うガイド溝6を有する部材として示されている。各昇降プレート4は、その後端部がガイド溝6に嵌入されることにより案内される。ベースプレート2は、図2に示すように、前端部が略U字形をなし、これにより鋼管を受け入れる開放部7が形成されている。開放部7はU字形の基部7a、及びこの基部7aから延びる1対の延出部7b,7bによって区画され、各延出部7b,7bにはそれらの対向位置に鋼管を把持するための把持シリンダ8が設けられている。
【0012】
昇降プレート4は、図3に示すように、ベースプレート2と同様の形状をなし、前端部に鋼管を受け入れるための開放部7を有している。開放部7を区画する基部7aの周縁部には、円弧状のガイド溝5が形成されている。ただし、このガイド溝5は最上段の昇降プレート4には設けられていない。
【0013】
ベースプレート2及び昇降プレート4における各延出部7b,7bの外側部には突出部9がそれぞれ設けられている。昇降プレート4は、図1に示すように、互いに所定間隔を置いて配置され、それらの突出部9に流体圧による1対の給進シリンダ10のシリンダ部がそれぞれ固定され、またベースプレート2の突出部9に給進シリンダ10のロッド部が固定されている。
【0014】
図4に示すように、最上段の昇降プレート4を除く他の昇降プレート4上には回転装置11が同軸的に設けられている。図5(a),(b)は、この回転装置11のみを示したものである。回転装置11は、開放部7に受け入れられた鋼管を把持するための把持部材12と、流体圧による1対の駆動シリンダ13,13を備えている。把持部材12は、第1把持部12aと、この第1把持部12aの両端部にピン14を介して回動可能に枢支される1対の第2把持部12b,12bとからなる。
【0015】
第1把持部12aは昇降プレート4の開放部7を区画する基部7a上に配置される。第1把持部12aの下面には突起15が設けられている。この突起15は基部7aに設けられたガイド溝5に嵌入され、第1把持部12aはガイド溝5に案内されて昇降プレート4面に沿って回動自在である。この第1把持部12aの内周は基部7aの周縁部から幾分か前方に突出するように配置され、この内周には鋼管の外周を把持するための円弧状の凹凸面16が形成されている。
【0016】
1対の第2把持部12b,12bは、昇降プレート4の開放部7を区画する延出部7b,7b上にそれぞれ配置される。これら第2把持部12b,12bの他端部は自由端部となっていて、図5(b)に示すように第1把持部12aに対して回動することにより開閉自在である。これら第2把持部12b,12bの内周には鋼管の外周を把持するための円弧状の凹凸面16が形成されている。また、これら第2把持部12b,12bの自由端部間には流体圧によるクランプシリンダ17の両端部が枢支され、その一方の端部は取り外し自在なピン18(図1参照)によって一方の第2把持部12bに取り付けられている。なお、把持部材12は上下の昇降プレート4,4間に挟まれ、それらの面に沿って摺動する。このため、把持部材12を構成する第1、第2把持部12a,12bの上下面には、摩擦を低減するためのベアリングプレート20が設けられている。
【0017】
回転装置11を上下に挟む昇降プレート4,4には、それらの後端部間に軸21が設けられている。1対の駆動シリンダ13,13のシリンダ部は、この軸21を介して昇降プレート4に枢支されている。また、駆動シリンダ13,13のロッド部はピン22を介して第2把持部12b,12にそれぞれ枢支されている。把持部材12を閉じた状態で、駆動シリンダ13,13の一方を伸長、他方を収縮作動させることにより、把持部材12を角度回転させることが可能である。また、クランプシリンダ17の一端を取り外し、駆動シリンダ13,13を双方とも収縮させることにより把持部材12を開き、あるいは双方とも伸長作動させることにより把持部材12を閉じることが可能である(図5参照)。
【0018】
次に、上記のような鋼管埋設装置1の使用態様について説明する。いま、全昇降プレート4(以下、昇降プレート4群という)が、図1に示す上昇位置にあるとする。この上昇位置において、クランプシリンダ17を一方の第2把持部12bから取り外し、駆動シリンダ13,13の双方を収縮作動させることにより、把持部材12が図5(b)に示すように開放する。これにより、ベースプレート2及び昇降プレート群4の各開放部7に鋼管を進入させることが可能になる。
【0019】
鋼管は縦向きの状態で横方向に移動させることにより、開放部7に受け入れられる。開放部7に受け入れられた鋼管は、継ぎ足しの場合、先に埋設された鋼管の上端に溶接等により接続される。次に、駆動シリンダ13,13を双方とも伸長作動させることにより、把持部材12を閉じる。そして、クランプシリンダ17をピン18により一方の第2把持部12bに取り付け、このクランプシリンダ17を収縮作動させることにより把持部材12に締め付け力を与え、鋼管をクランプする。
【0020】
次に、駆動シリンダ13,13の作動により鋼管を角度回転させるのであるが、仮に回転装置11を1台のみ設けたとして、以下、説明する。すなわち、駆動シリンダ13,13の一方を伸長作動、他方を収縮作動させることにより、鋼管を角度回転させる(以下、この回転を正転とする)。このとき、鋼管が自穿孔型のものであれば、給進シリンダ10をフリーポジションとして鋼管をその自重や昇降プレート4、回転装置11の自重により下降させることができる。非自穿孔型の鋼管であれば、給進シリンダ10を伸長作動させ、その押込み力により鋼管を下降させることができる。
【0021】
次に、駆動シリンダ13,13がストロークエンドに達したら、クランプシリンダ17を伸長作動させて把持部材12による鋼管のクランプを解放する。そして、駆動シリンダ13,13のうち、伸長しているものを収縮作動、また収縮しているものを伸長作動させ、鋼管を伴うことなく把持部材12のみを逆方向に角度回転させる(以下、この回転を逆転とする)。これにより、把持部材は回転開始位置に復帰し、この回転開始位置で再びクランプシリンダ17を収縮作動させて把持部材12に締め付け力を与え、鋼管をクランプする。以下、上記と同様の操作を繰り返して、鋼管を回転させる。
【0022】
上記のように、回転装置11が1台の場合には、鋼管の回転は間欠的なものとなる。図示の実施形態のように、回転装置11を2台以上の多段に設けることにより、見かけ上は連続的な回転とすることができる。すなわち、回転装置11が2台の場合は上下の回転装置11,11の正転動作が交互に行われるようにする。これをクランプ・正転・クランプ解放・逆転の各動作で示すと次のようになる。
回転装置(上段) クランプ 正転 クランプ解放 逆転
回転装置(下段) クランプ解放 逆転 クランプ 正転
【0023】
また、回転装置11を3台以上とする場合は、各回転装置の正転動作が順次に行われるようにしてもよいし、上記に示す上段の回転装置と同じ動作をするグループ、下段の回転装置と同じ動作をするグループの2つに分けるようにしてもよい。このように、回転装置を2台以上の多段に設けることにより、鋼管の回転が円滑となり、作業効率を向上させることができる。なお、各シリンダは手動により動作させるようにしてもよいし、シーケンサにより動作を制御するようにしてもよい。
【0024】
回転装置11が1台、あるいは複数台いずれの場合も、昇降プレート4が下降位置に達したら、クランプシリンダ17による全ての把持部材12のクランプを解放する。このとき、鋼管が自重により沈下しないように、ベースプレート2に設けた把持シリンダ8により鋼管を把持する。そして、給進シリンダ10の伸長作動により昇降プレート4群を上昇位置まで上昇させる。以下、同様の操作を繰り返して鋼管を地中に埋設する。
【0025】
鋼管が仮設の場合は、後にこれを引き抜くことになる。この場合も、給進シリンダ10により昇降プレート4群を上昇させながら、回転装置11により鋼管を回転させることにより、鋼管を引き抜くことができる。
【0026】
上記のような鋼管埋設装置によれば、空頭制限のある現場条件下でも、その制限内で最長の鋼管を使用した施工工事をすることができる。図6は、このことを示している。すなわち、鋼管Pの長さが同じであるとした場合、高さHの空頭制限があると、従来の全回転オールケーシング掘削機50では施工できないが、この発明による装置では施工が可能となる。
【0027】
また、万一、鋼管のジャーミング事故や装置の故障により通常の施工ができなくなった場合、従来の全回転オールケーシング掘削機では鋼管を完全に抱きかかえているため、現位置からの機械の離脱は困難となる。これに対し、この発明による装置では、把持部材を開放させることで、装置と鋼管を容易にセパレートすることが可能であり、トラブル時にも対処しやすくなる。
【0028】
上記実施形態は例示にすぎず、この発明は種々の態様を採ることができる。例えば、上記実施形態では、把持部材を第1把持部及び1対の把持部の3つの把持部で構成したが
、把持部は2つあるいは4つ以上で構成することもできる。また、ガイド部材もロッド等を用いることもできる。さらに、駆動部材についても、モータとラック・ピニオン機構との組合せによるもの等、他の種々の形式のアクチュエータを選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の実施形態を示す側面図である。
【図2】ベースプレートを示す平面図である。
【図3】昇降プレートを示す平面図である。
【図4】昇降プレートに設けられた回転装置を示す平面図である。
【図5】回転装置のみを示す平面図である。
【図6】従来の全回転オールケーシング掘削機と比較しての本発明装置の効果を説明する図である。
【符号の説明】
【0030】
1 鋼管埋設装置
2 ベースプレート
3 ガイド部材
4 昇降プレート
5 ガイド溝
6 ガイド溝
7 開放部
7a 基部
7b 延出部
8 把持シリンダ
10 給進シリンダ
11 回転装置
12 把持部材
12a 第1把持部
12b 第2把持部
13 駆動シリンダ
15 突起
16 凹凸面
17 クランプシリンダ
20 ベアリングプレート
21 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管に回転力を与えて地中に埋設するための装置であって、
端部に鋼管を受け入れる略U字形の開放部を有するベースプレートと、
このベースプレートにガイド部材を介して昇降自在に設けられ、端部に鋼管を受け入れる略U字形の開放部を有する昇降プレートと、
この昇降プレートに少なくとも上昇力を与える給進部材と、
この昇降プレート上に設けられた回転装置とを備え、
前記回転装置は、
前記昇降プレートの前記開放部側に開閉自在かつ回動自在に設けられ、前記開放部に受け入れられた鋼管の外周を把持する把持部材と、
この把持部材に締め付け力を与えるクランプ部材と、
前記把持部材を所定角度ごとに回転させる駆動部材とを備えていることを特徴とする鋼管埋設装置。
【請求項2】
前記昇降プレート及び前記把持部材に、該把持部材の回動を案内するための手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載の鋼管埋設装置。
【請求項3】
前記把持部材は、前記昇降プレート面に沿って回動自在に支持された第1把持部、及びこの第1把持部の両端部に一端部がそれぞれ枢支され、前記昇降プレート面に沿って回動することにより他端部間が開閉する1対の第2把持部からなることを特徴とする請求項1又は2記載の鋼管埋設装置。
【請求項4】
前記駆動部材は一端部が前記昇降プレートに、他端部が前記第2把持部のそれぞれに枢支された1対の駆動シリンダからなることを特徴とする請求項3記載の鋼管埋設装置。
【請求項5】
前記回転装置を有する前記昇降プレートが2段以上の多段に設置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1記載の鋼管埋設装置。
【請求項6】
前記ベースプレートの前記開放部側に該開放部に受け入れられた鋼管の外周を把持する把持部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1記載の鋼管埋設装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−182746(P2007−182746A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321172(P2006−321172)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(303056368)東急建設株式会社 (225)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(000168506)鉱研工業株式会社 (43)
【Fターム(参考)】