説明

鋼管杭及びこれを用いた地盤補強方法

【課題】簡単な構成で確実に軟弱地盤の支持力を向上させうる打込式の鋼管杭及びこれを用いた地盤補強方法の提供。
【解決手段】鋼管杭1は、鋼製の管体2と、その下部外周に配した三本のリブ状部材3、3、3と、上端直下の外周に配した圧密翼4とで構成する。管体2としては円筒状部材を採用し、その下端に円板状の閉塞板6を固設して閉じてあり、閉塞板6の下面には更にその中心を通過する補強片7、7が十字状に配してある。リブ状部材3、3、3としては、断面長方形の長尺金属部材を採用し、これらの長尺金属部材を管体2の下部外周に、周方向に120度の中心間角度間隔で固設してなるものである。圧密翼4は、管体2の上端直下の外周に配したドーナツ状の圧密翼本体41とその円周端から垂下したスカート板42とで構成した部材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物又は建造物用の敷地の軟弱な地盤を補強するために使用する鋼管杭及びこれを用いた地盤補強方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物又は建造物用の敷地の軟弱な地盤を補強するための打込式の鋼管杭及びこれを用いた地盤補強方法についての提案例として特許文献1を見出した。
【0003】
特許文献1の発明は、鋼管杭の外面に、瀝青質からなる粘弾性物質層及び長さ4〜100mmに切断したガラスロービングと任意の色彩に着色されたポリエステル又はウレタンエラストマーのいずれか一方で構成された保護層が積層された重防食被覆鋼管杭、
ポリエチレン被覆鋼管杭又はウレタンエラストマー被覆鋼管杭の外面に、瀝青質からなる粘弾性物質層及び長さ4〜100mmに切断したガラスロービングと任意の色彩に着色されたポリエステル又はウレタンエラストマーのいずれか一方で構成された保護層が積層された重防食被覆鋼管杭、
および
以上の重防食被覆鋼管杭の先端の無被覆部分に、鋼材に対して犠牲防食作用のある金属又は合金でできた補強バンドを装着し、かつ保護層の下端に対して犠牲防食作用のある金属又は合金でできた保護金具を装着して軟弱地盤に打ち込んだ後、該鋼管杭の内面土壌を除去し、更にその後、該鋼管杭の内部にモルタルを充填することとした重防食被覆鋼管杭の施工方法である。
【0004】
従ってこの特許文献1の発明によれば、礫の混入した軟弱地盤や腐食性の軟弱地盤に鋼管杭を打ち込む場合に、その被覆疵を防止でき、かつ防食性を確保できるものであるが、地盤の支持力を高める点に関しては、特別な工夫はされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−278176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、軟弱地盤において、簡単な構成で確実に地盤の支持力を高めることのできる打込式の鋼管杭及びこれを用いた地盤補強方法を提供することを解決の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1は、無回転加圧によって地盤に圧入埋設する鋼製の管体からなる鋼管杭であって、該管体の下部外周に該管体の長さ方向に長い摩擦面増大用の複数のリブ状部材を配してなる鋼管杭である。
【0008】
本発明の2は、本発明の1の鋼管杭において、
前記管体の上端近傍の外周に、地盤のうちのそれより下方の部位を下方に向かって圧密する圧密翼を配したものである。
【0009】
本発明の3は、本発明の1又は2の鋼管杭において、
前記管体の下端を閉じてなるものである。
【0010】
本発明の4は、本発明の2の鋼管杭において、
前記圧密翼を、前記管体を中心に位置させて配したドーナツ状の圧密翼本体及びその外周端から垂下させたスカート板で構成したものである。
【0011】
本発明の5は、本発明の4の鋼管杭において、
前記圧密翼本体に上下貫通する一以上の貫通孔を開口したものである。
【0012】
本発明の6は、本発明の1、2、3、4又は5の鋼管杭において、
前記リブ状部材として、三個の長尺板状部材を採用し、該三個の長尺板状部材を、前記管体の外周に、その長さ方向を該管体の長さ方向に一致させ、かつその側面を該管体の外周に当接させた状態で、周方向120度の角度間隔で配置固定したものである。
【0013】
本発明の7は、本発明の2、4又は5の鋼管杭を地盤上の所要の位置に直立させ、かつ該鋼管杭の上端に、打撃又は振動加圧等の無回転の加圧力を加え、該鋼管杭を地盤中に圧入させ、
該鋼管杭の圧密翼が地盤上面に到達した時点より、該鋼管杭にそれまでより大きな無回転の加圧力を加え、該鋼管杭を更にその下端が設計深度に到達するまで下降させ、該鋼管杭を埋設すると共に、地盤のうちの該圧密翼より下方に位置する部位を圧密することにより地盤を補強する地盤補強方法である。
【0014】
本発明の8は、本発明の2、4又は5の鋼管杭において、
前記管体を直列に連結する複数の管体で構成し、前記複数のリブ状部材を該各管体の下部外周にその長さ方向に長い状態に配設し、前記圧密翼を最上部の管体の上端近傍の外周にのみ配することとしたものである。
【0015】
本発明の9は、本発明の8の鋼管杭の最上部以外の管体を地盤上の所要の位置に直立させ、かつ該管体の上端に打撃又は振動加圧等の無回転の加圧力を加えて該管体を地盤中に圧入させ、該管体の上端が地盤上面近傍に到達した時点で、該管体の上端に、最上部以外の管体又は最上部の管体の下端を接続し、
最上部以外の管体を接続した場合は、最上部以外の該管体を接続する工程から、該管体の上端に打撃又は振動加圧等の無回転の加圧力を加えてその下方の管体と共に更に地盤中に深く圧入し、そのうち上方の管体の上端が地盤上面近傍に到達するまでの工程を、一回以上実行した上で、
上端が地盤上面近傍に到達した管体のその上端に最上部の管体の下端を接続し、
以上の最上部の管体を接続した二つのいずれの場合も、更に最上部の管体の上端に打撃又は振動加圧等の無回転の加圧力を加えて、該最上部の管体及び下方のそれ以外の管体を更に地盤中に圧入し、
該最上部の管体の圧密翼が地盤上面に到達した時点から、該管体にそれまでより強い打撃又は振動加圧等の無回転の加圧力を加えて、該管体を更に最下部の管体の下端が設計深度に到達するまで下降させ、これらの管体からなる鋼管杭を埋設すると共に、地盤のうちの該圧密翼の下方に位置する部位を圧密することにより地盤を補強する地盤補強方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の1の鋼管杭によれば、建築用等の敷地の地盤が軟弱である場合に、これをその所定の位置に直立させ、適当な打撃加圧装置又は振動加圧装置等の無回転加圧装置を用いて該鋼管杭に適切な下降加圧力を加えることによりこれを地盤中に圧入埋設し、軟弱地盤の支持力を向上させることができる。
すなわち、施工のための建設機械等に特別な装置が不要であり、例えば、油圧ショベルと大型ブレーカのような無回転加圧装置があれば容易に施工可能な利点をも有している。
【0017】
この鋼管杭を打ち込む地盤は軟弱地盤であり、それ故、云うまでもなく、該鋼管杭の周囲は軟弱地盤である。そしてこの軟弱地盤は、更に該鋼管杭を打ち込む工程で、その下部周囲に配した前記リブ状部材によりその周囲にその通過痕が生じることになるが、該リブ状部材は、管体の下部外周にその長さ方向に沿って配された複数条の直線状部材であり、かつ該管体は無回転で打ち込まれるものであるため、そのときに生じる通過痕は、その断面形状に近似する直線状の細長空間として生じるに過ぎず、地盤を構成するその部位の土砂が撹拌されるようなことはない。またその通過痕は、前記のように、細長い通過空間であり、該リブ状部材が通り過ぎると、その周囲の土砂が容易に崩れてその多く部分が埋まることになる。それ故、鋼管杭は、引き抜きに対する支持力が高くなる。
鋼管杭の打ち込みの際に、地盤の状態等により鋼管杭は回転を生じる可能性があるが、本発明の1の鋼管杭によれば、下部周囲にリブ状部材を配したものであるため、これがその回転を阻止すべく作用する。
また、本発明の1の鋼管杭によれば、以上のように、鋼管杭の下部周囲にリブ状部材を配したため、接触面積が増大し、周囲の地盤との高い摩擦力を確保することが可能になり、鉛直方向及び水平方向の支持力を増加させることができる。
【0018】
本発明の2の鋼管杭によれば、これを用いて、本発明の7の地盤補強方法を実行することにより、地盤の該鋼管杭に対する水平方向の支持力及び鉛直方向の支持力を向上させることができる。また本発明の1と同様に、施工のための建設機械等に特別な装置が不要であり、例えば、油圧ショベルと大型ブレーカのような無回転加圧装置があれば容易に施工可能な利点をも有している。
【0019】
本発明2の鋼管杭によれば、建築用等の敷地の地盤が軟弱である場合に、これをその所定の位置に直立させ、適当な打撃加圧装置又は振動加圧装置等の無回転加圧装置を用いて該鋼管杭に適切な下降加圧力を加えることによりこれを地盤中に圧入し、最終段階、すなわち、その圧密翼が地盤上面に到達した時点より、該無回転加圧装置の加圧力をそれまでより高めることで、例えば、地盤上面から少なくとも0.2m以上、より好ましくは0.5〜0.6m程度押し下げ、この工程で、地盤のうちの該圧密翼の下方に位置する部位を圧密し、圧密翼の下部から1.5m〜2.5m程度の深さまでを押し堅めることにより、軟弱地盤の支持力を向上させることができる。
【0020】
この鋼管杭を地盤に打ち込むと、周囲に配した前記リブ状部材によりその周囲にその通過痕が生じることになるが、該管体は無回転で打ち込まれるものであるため、そのときにリブ状部材によって生じる通過痕は、その断面形状に近似する直線状の細長空間となるものであり、地盤を構成するその部位の土砂が撹拌されるようなことはない。それ故、鋼管杭の周囲の地盤は、上記のような通過痕が生じていても、それがそれほど大きくない直線状の細長空間であるためそれほど問題とならず、更に通過痕は、直線状の細長空間であるため、容易に周囲から崩壊して埋設状態になり、この鋼管杭の引き抜きに対する抵抗力を向上させる。更に、地盤のうち前記圧密翼より下方に位置する部位は該圧密翼により十分に圧密され、確実に補強されることになるものでもある。
また前記リブ状部材を下部に配したことにより、鋼管杭は、打ち込みの際に回転を生じることが回避される。通常、打ち込みの際に、地盤の状態等により鋼管杭は回転を生じる可能性があるが、以上のように、リブ状部材がそれを防止すべく作用する。こうして本発
明の1の鋼管杭によれば周囲の地盤との高い摩擦力を確保することが可能になる。
【0021】
こうして地盤のうち鋼管杭の周囲に位置する部位が圧密されることによって、一つには鋼管杭の管体外周と地盤との間の摩擦力が強化され、その鉛直方向の支持力が向上する。リブ状部材を構成したことによる接触面積の増加に伴う摩擦力の向上効果も加わる。また管体の、特に上部周囲の地盤が圧縮強化されることによって鋼管杭の水平方向の支持力も強化される。下向きの支持力も、以上のように、圧密翼が存在し、かつその下方の地盤が圧密されることにより更に強化される。
【0022】
本発明の2の鋼管杭によれば、これを用いて、本発明の5の地盤補強方法を実行することにより、地盤の該鋼管杭に対する水平方向の支持力及び鉛直方向の支持力を向上させることができるものである。
【0023】
本発明の3の鋼管杭によれば、管体の下端を閉じたので、鋼管杭の打ち込みの際に、その下方を圧密することが可能になり、高い鉛直方向の支持力を確保することができる。なお、管体の下端に十字状に補強片を配しておくだけでも、鋼管杭の下端は、打ち込みの際に、土砂が詰まりやすくなり、下端を閉じた場合に近い効果を受けることができる。
【0024】
本発明の4の鋼管杭によれば、圧密翼本体をドーナツ状に構成し、更にその外周端にスカート板を垂下状態に構成したので、圧密翼が十分に強化され、比較的薄い金属板で構成したとしても地盤の確実な圧密を行うことが可能となる。
【0025】
本発明の5の鋼管杭によれば、圧密の際に、圧密翼本体に開口した貫通孔を通じて若干の土砂を上方に通過させることができるので、十分な地盤の圧密作用を行いつつ、圧密翼にこれに損傷が生じるような無理な負荷がかからないようにすることができる。
【0026】
本発明の6の鋼管杭によれば、管体の下部外周に前記所定のリブ状部材をバランスよく配置したので、地盤との間のバランスの良い摩擦力を強化することができる。
【0027】
本発明の7の地盤補強方法によれば、軟弱地盤を、本発明の2,4又は5の鋼管杭を用いて、簡単な工程で容易かつ良好に補強することができる。鋼管杭を打ち込む過程で、圧密される地盤のうちの圧密翼の下方に位置する部位が掘削翼で掘削撹拌されているわけではなく、単にリブ状部材による細長空間状の通過痕が生じているに過ぎないので、圧密翼による地盤の圧密による強化はより一層良好なものとなる。
【0028】
本発明の8の鋼管杭によれば、より設計深度の深い軟弱地盤に適用して本発明の2と同様の効果を発揮することができる。
すなわち、本発明の8の鋼管杭によれば、これを用いて前記本発明の9の地盤補強方法を実行して、より深い設計深度まで、簡単な工程で容易かつ良好に軟弱地盤を補強することができる。
【0029】
本発明の9の地盤補強方法によれば、軟弱地盤を、本発明の8の鋼管杭を用いて、より深い設計深度まで、簡単な工程で容易かつ良好に補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】(a)は実施例1の鋼管杭の一部切欠正面図、(b)はその鋼管杭の最上部の正面断面図、(c)はその鋼管杭の最下部の正面断面図、(d)はその鋼管杭の拡大底面図。
【図2】(a)は実施例1の鋼管杭を用いた地盤補強方法の工程当初を示す側面説明図、(b)は最終段階を示す側面断面説明図。
【図3】(a)は振れ止め部材の正面図、(b)は該振れ止め部材の断面図。
【図4】(a)は振れ止め部材の平面図、(b)は該振れ止め部材を開いた状態の平面図、(c)は振れ止め部材の閉じた状態を保持するためのボルト・ナットの平面図。
【図5】油圧ショベルのアームの先端に打撃手段を装着し、地盤の所要位置に直立させ、下部を振れ止め部材で支持し、上端に保護キャップを被せた鋼管杭の上端を打撃する状態を示した概略説明図。
【図6】(a)は、保護キャップを鋼管杭の上端に被覆する状態を示した正面図、(b)は、保護キャップを鋼管杭の上端に被覆する状態を示した部分断面図。
【図7】(a)は実施例2の鋼管杭の一部切欠正面図、(b)はその鋼管杭の最上部の正面断面図、(c)はその鋼管杭の最下部の正面断面図、(d)はその鋼管杭の拡大底面図。
【図8】(a)は実施例2の鋼管杭を用いた地盤補強方法の工程当初を示す側面説明図、(b)は途中の段階を示す側面断面説明図、(c)は最終段階を示す側面断面説明図。
【図9】実施例2の鋼管杭を用いた地盤補強方法の最終段階の圧密状態を説明する断面説明図。
【図10】(a)は実施例3の鋼管杭の一部切欠正面図、(b)は実施例2の最上部の管体の拡大平面図、(c)は実施例3の最上部の管体の上部の断面図。
【図11】(a)は実施例3の鋼管杭を用いた地盤補強方法の工程当初を示す側面説明図、(b)は途中の段階を示す側面断面説明図、(c)は途中の次の段階を示す側面断面説明図、(d)は最終段階の直前の段階を示す側面説明図。
【図12】(a)は実施例3の鋼管杭を用いた地盤補強方法の工程の最終段階を示す側面断面説明図、(b)は実施例23鋼管杭を用いた地盤補強方法の工程の最終段階の圧密状態を説明する側面断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、発明を実施するための形態を実施例1、2及び3に基づき、かつ添付図を参照しつつ詳細に説明する。
【0032】
<実施例1>
まず鋼管杭1を説明し、次いでこれを用いた地盤補強方法を説明する。
実施例1の鋼管杭1は、図1(a)〜(d)に示すように、基本的に、鋼製の管体2と、その下部外周に配した三本のリブ状部材3、3、3とで構成したものである。
【0033】
前記管体2は、図1(a)に示すように、円筒状の長尺部材であり、補強する地盤5の用途及びその地盤5の状態等に応じてその径及び長さを適切に設定することができる。いずれにしてもその径及び長さは限定されるものではない。この実施例1では、この管体2として直径117mmのそれを採用した。該管体2の周側壁の厚さは5mmであり、またその長さは3mである。
【0034】
該管体2は、図1(a)、(c)、(d)に示すように、下端に円板状の閉塞板6を固設して該下端を閉じてあり、該閉塞板6の下面には更にその中心を通過する補強片7、7が十字状に配してある。該閉塞板6は、この実施例1では、該管体2の下端に溶接により固定してあり、該補強片7、7は該閉塞板6の下面に同様に溶接により固定してある。
なお、この実施例1では、該管体2の下端を閉塞板6で閉じたが、この閉塞板6で閉じず、補強片7、7のみを管体2の下端に配することも可能である。該補強片7、7の両端は、この場合は、管体2の周側壁に溶接するのが適当である。このように管体2の下端に補強片7、7のみを配した場合であっても、鋼管杭1を地盤5に打ち込むと、土砂は管体2の下端から有る程度まで進入するが、いずれ該補強片7、7の間に詰まり、管体2の下端を閉塞したのと近似する状態になる。
【0035】
該管体2の上端には、図1(a)、(b)に示すように、その中心を通過する二本の補強片8、8を十字状に配してある。それらの両端は、該管体2の周側壁に溶接によって固設してある。
【0036】
前記リブ状部材3、3、3は、図1(a)、(d)に示すように、この実施例1では、断面長方形の長尺金属部材をそれとして採用し、該長尺金属部材を前記管体2の下部外周に、周方向に120度の中心間角度間隔で固設してなるものである。該管体2の外周には、断面長方形の短辺に相当する面(側面)を当接させ、その面で該管体2の外周に溶接して固設したものである。なおこの実施例1では、このリブ状部材3、3、3の長さは150mmに、断面長方形の短辺に対応する面(側面)の幅寸法は10mmに、他の面の幅寸法は15mmに構成したものである。
【0037】
このリブ状部材3、3、3は、鋼管杭1の周囲の地盤5との摩擦面を増大する趣旨で構成するものであり、その目的が達成できるものであれば、以上の構成に限定されない。その数も3本に限定されず、それより多くても少なくても良い。通常、その長さは、管体2の長さの1/12〜1/20程度、前記断面長方形の短辺に対応する面の幅寸法は該管体2の周側壁の厚さの2倍前後、他の面の幅寸法は該短辺に対応する面と同一寸法〜2倍の寸法程度が適当である。
【0038】
この実施例1の鋼管杭1は、以上のような構成であり、軟弱地盤の補強のために使用することができる。その工程は以下に述べるとおりである。なお、この実施例1の鋼管杭1は5〜6程度のN値(標準貫入試験値)の地盤5に適用可能に構成してあるが、ここで説明する補強対象となっている地盤5のN値は2〜3程度であることが調査により分かっている。
【0039】
該当する地盤5の所定の位置に、例えば、図2(a)に示すように、この鋼管杭1の管体2を直立させる。これは、適当な建設機械、例えば、油圧ショベルSを用いて、そのバケットを外したアーム先端付近のフックで吊り下げて行うことができる。
【0040】
次いで、図2(a)及び図5に示すように、該鋼管杭1の下端に振れ止め部材9を外装状態に取り付けて、該鋼管杭1の下端を容易に横振れしないように固定し、かつ該鋼管杭1の上端に保護キャップ10を被せる。
【0041】
なお、前記振れ止め部材9は、図3(a)、(b)及び図4(a)、(b)に示すように、前記鋼管杭1の管体2の下部を抱える一対の半割円筒部91a、91bからなる円筒部91とそれらの下端から放射方向に延びる、やはり一対の半割円板部92a、92bからなる円板部92を基本として構成したものである。該振れ止め部材9の円筒部91には、特に図3(b)及び図4(a)、(b)に示すように、これで前記管体2の下部を抱えた場合に、前記リブ状部材3、3、3が嵌合することができるように、対応する位置関係で、その半割円筒部91a、91bの内面側に凹部g、g、gが構成してある。
【0042】
また図4(a)、(b)に示すように、前記円板部92を構成する半割円板部92a、92bの一端側の双方間にヒンジ92cを配し、図4(b)に示すように、観音開き状態に開閉できるようにする。またヒンジ92cを設けた端部と反対側には、半割円板部92a、92bの半割ラインに沿ってその両側に連結板92d、92dを立設し、それらの両方の長さ方向中央部付近に連結溝92e、92eを形成する。他方、該連結溝92e、92eに挿入可能なボルトb及び該ボルトbに螺合する蝶ネジnを用意し、振れ止め部材9を閉じた場合に、図3(a)及び図4(a)に示すように、該連結溝92e、92eに該ボルトbを挿入し、該蝶ネジnを螺合してその状態を固定できるようにしてあるものである。
【0043】
前記保護キャップ10は、図6(a)、(b)に示すように、鋼管杭1の管体2の上部にスムーズに嵌合できる内径を有する金属円筒体であり、その下部を下広がりに開口するテーパ状開口の構成とし、鋼管杭1の管体2の上部に被せる際に、相互の芯に若干のずれがあってもそのテーパ状開口で良好に芯が一致するように案内し、該管体2にスムーズに嵌合可能になるようにしてあるものである。この保護キャップ10は打撃加圧装置や振動加圧装置等の無回転加圧装置で加圧する際に、鋼管杭1の管体2の上部に損傷を生じないようにする趣旨のものである。
【0044】
前記のように、鋼管杭1の下部を前記振れ止め部材9で固定し、更に上部に前記保護キャップ10を被せた後は、建設機械、例えば、図5に示すように、バケットを取り外した油圧ショベルSのアームの先端に打撃加圧装置を取り付け、該打撃加圧装置によって該鋼管杭1の管体2の上端を保護キャップ10を介して打撃加圧し、該鋼管杭1を地盤5中に圧入する。該打撃加圧装置に代えて振動加圧装置等を使用しても良い。
【0045】
この実施例1では、打撃加圧装置として、建築物の解体に用いられる大型ブレーカ(ジャイアントブレーカ)を用い、前記のように、油圧ショベルSのアーム先端に取り付けて使用することとしたものである。この実施例1では、該大型ブレーカのノミ先は、先端が平坦で大径の円柱状となっているハンマー部材に交換して使用するものである。鋼管杭1の管体2の上端には保護キャップ10を被せているものではあるが、これも含めて損傷を生じ難くする趣旨である。
【0046】
前記鋼管杭1が以上の大型ブレーカの打撃加圧によりある程度地盤5中に圧入され、その下端が横振れする可能性が無くなった適当な段階で、前記振れ止め部材9を取り外す。該振れ止め部材9は、前記蝶ネジnを緩めてボルトbを前記連結溝92e、92eから取り外せば、図4(b)に示すように、ヒンジ92cを中心に開くことができるので、鋼管杭1の管体2の下部から容易に取り外すことができる。
【0047】
この後、更に大型ブレーカによる打撃を継続させ、図2(b)に示すように、該鋼管杭1の下端が設計深度に到達するまで該鋼管杭1を打ち込む。
【0048】
なお、地盤5の状態は、常に一定であるというわけではないので、管体2の上端に加える打撃加圧力は、常に一定の打撃加圧力で良いというわけではなく、その時点の鋼管杭1の圧入動作状態を観察して、その打撃加圧力を調整するのが適当である。
【0049】
以上のように、鋼管杭1の下端が、設計深度に到達すると、この鋼管杭1の打ち込み作業は終了である。
【0050】
この実施例の1の鋼管杭1によれば、以上のように、管体2の下部外周にリブ状部材3、3、3を配したため、周囲の地盤との接触面積が増加し、鉛直方向の支持力を増加させることができる。またリブ状部材3、3、3の上方のこれの通過痕である細長空間に土砂が入り込むことにより、この鋼管杭1は非常に高いレベルの引き抜き支持力をも得ることができるものである。
更にリブ状部材3、3、3の作用により、鋼管杭1の内込みの際の回転を回避することができる。これによって鋼管杭1の外周面と地盤5の摩擦結合が切れないようにすることができる。
【0051】
またこの実施例1の鋼管杭1の管体2はその下端が閉塞板6によって閉じられているので、地盤5のその下方の部位を圧密することになり、これによる鉛直方向の支持力向上も得られる。
【0052】
<実施例2>
まず鋼管杭1を説明し、次いでこれを用いた地盤補強方法を説明する。
実施例2の鋼管杭1は、図7(a)〜(d)に示すように、基本的に、鋼製の管体2と、その下部外周に配した三本のリブ状部材3、3、3と、上端直下の外周に配した圧密翼4とで構成したものである。実施例2の交換杭1は、実施例1の鋼管杭1に圧密翼4を追加したものである。
【0053】
前記管体2は、図7(a)に示すように、実施例1のそれと全く同様な円筒状の長尺部材であり、補強する地盤5の用途及びその地盤5の状態等に応じてその径及び長さを適切に設定することができる。この実施例2では、実施例1のそれと全く同様に、この管体2として直径117mmのそれを採用した。該管体2の周側壁の厚さは5mmであり、またその長さは3mである。
【0054】
該管体2は、図7(a)、(c)、(d)に示すように、下端に円板状の閉塞板6を固設して該下端を閉じてあり、該閉塞板6の下面には更にその中心を通過する補強片7、7が十字状に配してある。実施例1の構成と全く同様である。
また、該管体2の上端には、図7(a)、(b)に示すように、その中心を通過する二本の補強片8、8を十字状に配してある。それらの両端は、該管体2の周側壁に溶接によって固設してある。
【0055】
前記リブ状部材3、3、3は、図7(a)、(d)に示すように、この実施例2では、断面長方形の長尺金属部材をそれとして採用し、該長尺金属部材を前記管体2の下部外周に、周方向に120度の中心間角度間隔で固設してなるものである。このリブ状部材3、3、3の構成も実施例1のそれと全く同様である。
【0056】
前記圧密翼4は、図7(a)、(b)、(d)に示すように、前記管体2の上端直下の外周に配したドーナツ状の圧密翼本体41とその外周端から垂下したスカート板42とで構成した部材である。この実施例2では、この圧密翼4は、その圧密翼本体41及びスカート板42を金属板材で一体に構成したものであり、その板厚は管体2の周側壁の厚さと同一の5mmとし、その径は、この実施例2では、167mmとした。またスカート板42の垂下寸法は10mmとした。更に該圧密翼4の圧密翼本体41は、この実施例2では、鋼管杭1の管体1の上端から500mm下方の位置に固設するものとした。
【0057】
勿論、該圧密翼4の各部の寸法は一例である。該圧密翼4の径は、前記リブ状部材3、3、3の全てが、該鋼管杭1を平面方向から見た場合に、該圧密翼4の背後に隠れることになるように設定すべきであるが、それを除けば、後述するように、この鋼管杭1を使用した場合に、該鋼管杭1の周囲の土砂を、それ自体に損傷を生じさせることなく、圧密可能にできるきかぎり、該圧密翼4の各部の寸法は自由である。材質も同様である。
【0058】
なお、該圧密翼4には、その圧密翼本体41に上下貫通する一以上の貫通孔を開口させることも可能である。これによって圧密の際に、該貫通孔を通じて若干の土砂を上方に通過させることによって、十分な地盤5の圧密作用を行いつつ、該圧密翼4に損傷が生じるような無理な負荷がかからないようにすることもできる。
【0059】
この実施例2の鋼管杭1は、以上のような構成であり、軟弱地盤の補強のために使用することができる。その工程は以下に述べるとおりである。なお、この実施例2の鋼管杭1は5〜6程度以上のN値(標準貫入試験値)の地盤に適用可能に構成してあるが、ここで説明する補強対象となっている地盤5のN値は2〜3程度であることが調査により分かっている。
【0060】
該当する地盤5の所定の位置に、例えば、図8(a)に示すように、この鋼管杭1の管体2を直立させる。これは、適当な建設機械、例えば、油圧ショベルSを用いて、そのバケットを外したアーム先端付近のフックで吊り下げて行うことができる。
【0061】
次いで、図8(a)及び図5(この図に示されている交換杭1は実施例1のそれであるが振れ止め部材9の用法は同様である)に示すように、該鋼管杭1の下端に振れ止め部材9を外装状態に取り付けて、該鋼管杭1の下端を容易に横振れしないように固定し、かつ該鋼管杭1の上端に保護キャップ10を被せる。
なお、この実施例2で用いる振れ止め部材9及び保護キャップ10は実施例1のそれと同様であり、実施例3でもそれは同様である。
【0062】
前記のように、鋼管杭1の下部を前記振れ止め部材9で固定し、更に上部に前記保護キャップ10を被せた後は、建設機械、例えば、図5(この図に示されている鋼管杭1は実施例1のそれであるが打撃加圧装置の用法は実施例2でも同様である。実施例3でも同様である)に示すように、バケットを取り外した油圧ショベルSのアームの先端に打撃加圧装置を取り付け、該打撃加圧装置によって該鋼管杭1の管体2の上端を保護キャップ10を介して打撃加圧し、該鋼管杭1を地盤5中に圧入する。該打撃加圧装置に代えて振動加圧装置等を使用しても良い。
【0063】
この実施例2では、打撃加圧装置として、実施例1のそれと同様に、建築物の解体に用いられる大型ブレーカ(ジャイアントブレーカ)を用い、前記のように、油圧ショベルSのアーム先端に取り付けて使用する。該大型ブレーカのノミ先も、同様に、先端が平坦で大径の円柱状となっているハンマー部材に交換して使用する。
【0064】
前記鋼管杭1が以上の大型ブレーカの打撃加圧によりある程度地盤5中に圧入され、その下端が横振れする可能性が無くなった適当な段階で、前記振れ止め部材9を取り外す。
【0065】
この後、更に大型ブレーカによる打撃を継続させ、図8(b)に示すように、該鋼管杭1の上端直下の圧密翼4の下部、すなわち、そのスカート板42の下端付近が地盤5の上面GLに接し、更にその圧密翼本体41の下面が地盤5の上面GLに接した段階から必要なだけ打撃加圧力を高める。以上のように、該圧密翼4の圧密翼本体41の下面が地盤5の上面GLに接した後は、地盤5のうちの該圧密翼4より下方に位置する部位、すなわち、該鋼管杭1の周囲の圧密翼4より下方に位置する部位を圧密しつつ下降することとなるため、より高い加圧力を必要とすることになる。こうしてこの後は、これまでよりより高い加圧力で打撃加圧して、鋼管杭1の下端が設計深度に到達するまで下降させる。
【0066】
なお、以上のように、圧密翼4が地盤5の上面GLに接した後は、それ以前より、より高い打撃加圧力で加圧すべきであるが、地盤5の状態は、常に一定であるというわけではないので、圧密翼4が地盤5の上面GLに接して以降の打撃加圧及び以前の打撃加圧のいずれに於いても、それぞれ一定の打撃加圧力で良いというわけではなく、その時点の鋼管杭1の圧入動作状態を観察して、その打撃加圧力を調整する必要があるのは云うまでもない。
【0067】
前記のように、鋼管杭1の管体2の下端が設計深度に到達した後は、大型ブレーカの打撃加圧動作を止め、前記保護キャップ10を取り外し、図9に示すように、前記圧密翼4の上方に生じた鋼管杭1の管体2の周囲の空間に、必要に応じて、土砂を充填する。こうして鋼管杭1の打ち込み工程は終了する。敷地内に鋼管杭1を打ち込む必要な箇所があれば、同様の工程で全ての打ち込みを行うことができる。
【0068】
こうして鋼管杭1の周囲の地盤5は、圧密翼4が下降した地盤5の上面GLから深さD1まで、すなわち、500mmだけ圧密され、これによって該地盤5は、該圧密翼4から一定の深さD2までの範囲、すなわち、圧密翼4からその下方1.5m〜2.5m程度の範囲に密度を向上させる圧密の影響が与えられ、鋼管杭1は、水平方向の高い支持力を確保することができることになる。
【0069】
また以上のように、鋼管杭1の周囲の密度が高くなり、摩擦力も高くなることにより、鉛直方向の支持力も向上するものである。更に鉛直方向の支持力は、鋼管杭1の管体2の下部周囲にリブ状部材3、3、3を配して地盤5との接触面積を向上させたので、これによっても摩擦力を向上させ得、鉛直方向の支持力を向上させたものでもある。また鋼管杭1の管体2はその下端が閉塞板6によって閉じられているので、地盤5のその下方の部位も圧密していることになり、これによる鉛直方向の支持力向上も得られる。
【0070】
<実施例3>
まず鋼管杭11について説明し、次いでこれを用いた地盤補強方法を説明する。
実施例3の鋼管杭11は、図10(a)、(b)、(c)に示すように、基本的に、直列に接続する複数の管体22、22…と、そのうちの最上部の管体22の上端直下の外周に配した圧密翼24と、最上部及びそれ以外の管体22、22…の下端外周に配した三個のリブ状部材23、23、23とで構成したものである。
【0071】
前記管体22は、図10(a)に示すように、円筒状の長尺部材であり、基本的には、実施例1及び2の管体2と同様のものである。いずれにしてもその径及び長さは限定されるものではない。この実施例3では、この管体22として、実施例1及び2の管体2と同様に、直径117mmのそれを採用した。該管体22の周側壁の厚さも5mmであり、その長さも3mで同様である。
【0072】
全ての管体22、22…は、実施例1及び2と同様に、図10(a)に示すように、下端に円板状の閉塞板26を固設して該下端を閉じてあり、該閉塞板26の下面には更にその中心を通過する補強片27、27が十字状に配してある。該閉塞板26は、この実施例2でも、該管体22の下端に溶接により固定してあり、該補強片27、27も該閉塞板26に同様に溶接により固定してある。
なおこの実施例3では、全ての管体22、22…の下端に閉塞板26を配することとしたが、最下部の管体22の下端にのみ閉塞板26を配することとし、最下部の管体22以外の管体22、22…の下端には補強片27、27のみを配することとしても良い。
【0073】
また、以上の管体22、22…の上端には、図10(a)、(b)、(c)に示すように、その中心を通過する二本の補強片28、28を十字状に配してある。両端は、該管体22の周側壁に溶接によって固設してある。
【0074】
前記リブ状部材23、23、23は、図10(a)、(b)に示すように、この実施例3でも、実施例1及び2と同様に、断面長方形の長尺金属部材をそれとして採用し、該長尺金属部材を前記管体22、22…の下部外周に、周方向に120度の中心間角度間隔で固設してなるもので、実施例1及び2のそれと全く同様の趣旨で全く同様に取り付けてある。
【0075】
前記圧密翼24は、図10(a)、(b)、(c)に示すように、前記管体22の上端直下の外周に配したドーナツ状の圧密翼本体241とその円周端から垂下したスカート板242とで構成した部材である。この実施例2の圧密翼24は、以上の構成に加えて他の全ての面でも実施例1及び2のそれと同様である。
【0076】
この実施例3の鋼管杭11は、以上のような構成であり、軟弱地盤の補強のために使用することができる。その工程は以下に述べるとおりである。なお、この地盤5のN値は3〜4程度であることが、地盤調査により分かっている。
【0077】
地盤5の所定の位置に、建設機械、例えば、油圧ショベルSを用いて、図11(a)に示すように、この鋼管杭11の最上部以外の管体22を直立させる。その後、すぐに、同図に示すように、実施例1及び2で用いた振れ止め部材9で該管体22の最下部を抱えて容易に動かないように保持する。また該管体22の最上部には、同様に実施例1及び2で用いた保護キャップ10を被せる。
【0078】
このように準備した後、実施例1及び2の場合と同様に、油圧ショベルSを用い、そのアームの先端に打撃加圧装置として、大型ブレーカを取り付け、これによって前記所定の位置に直立させた該管体22の上端に前記保護キャップ10を介して打撃加圧を加え、該管体22を地盤5中に圧入する。該管体22の下部が有る程度圧入状態となり、該管体22の下部が横振れするような虞がなくなった段階以降の適当な時点で、該大型ブレーカの動作を止めて前記振れ止め部材9を取り外す。その後、また大型ブレーカを打撃加圧動作させ、該管体22を、図11(b)に示すように、前記保護キャップ10の下部が地盤5の上面GLに近づくか接するまで地盤5中に圧入し、その時点で、また該大型ブレーカの打撃加圧動作を停止させる。
【0079】
引き続いて、該大型ブレーカを該管体22の該保護キャップ10上から退避させ、更に該保護キャップ10を取り除いて、この実施例3では、図11(c)に示すように、該管体22の上端に最上部の管体22の下端を接続する。設計深度がより深い場合には、該管体22の上端に最上部以外の管体22を接続するが、この実施例3の場合は、そうではなく、もう一本の管体22を接続し、これを圧入すると設計深度に到達しうるので、以上のように、最上部の管体22の下端を先に打ち込んだ管体22の上端に接続する。
【0080】
この上下の管体22、22の接続は、溶接によって確実な連結固定とする。その後、今度は該最上部の管体22の上端に保護キャップ10を被せ、前記大型ブレーカを該最上部の管体22の上端上に該保護キャップ10を介して配置し、引き続いて該大型ブレーカを打撃加圧動作させ、該最上部の管体22をその下方の管体22と共に地盤5中に更に圧入する。この打撃圧入動作は、図11(d)に示すように、最上部の管体22の上端直下に配した圧密翼24の下部が地盤5の上面GLに接するまで行う。
【0081】
上下の管体22、22の接続は、この実施例3では、溶接によって行ったが、これに限定されるわけではない。ボルト・ナット及び連結パイプ等を用いた連結手段も採用可能であり、それ以外の連結手段も十分な強度が確保できれば、自由に採用できる。
【0082】
この後は、大型ブレーカの打撃加圧動作の出力を必要なだけアップして打撃加圧動作を継続させる。こうして圧密翼24による最上部の管体22の周囲の地盤5に対する圧密動作を行わせながら、最上部の管体22及びそれ以外の管体22である下方の管体22の圧入動作を行わせ、下方の管体22の下端が設計深度に到達したところで、該大型ブレーカの打撃加圧動作を停止させる。図12(a)に示すように、このとき、この実施例3では、最上部の管体22の上端に被せた保護キャップ10の下端がほぼ地盤5の上面GLと一致した状態になる。
【0083】
この後、該大型ブレーカを最上部の管体22の上方から退避させ、かつ該管体22の上端から保護キャップ10を取り除き、図12(b)に示すように、圧密翼24の上方の空間に必要に応じて土砂を充填する。こうしてこの実施例3の鋼管杭11の打ち込み工程は終了する。更に必要に応じて同様の工程を繰り返し、必要な数の鋼管杭11の打ち込み作業を行うことができる。
【0084】
こうして鋼管杭11の周囲の地盤5、この実施例3では、圧密翼24が該地盤5の上面GLから深さD3の範囲、すなわち、上面GLから500mmの範囲で圧密下降動作し、これによって該圧密翼24から一定の深さD4の範囲、すなわち、該圧密翼24から1.5m〜2.5m程度の範囲の地盤5に密度を向上させる圧密の効果が与えられ、鋼管杭11は、水平方向及び鉛直方向の高い支持力を確保することができることになる。
【0085】
また、以上のように、鋼管杭11の周囲の一定範囲の地盤5の密度が高くなり、摩擦力も高くなることにより、その面でも、鉛直方向の支持力が向上することとなる。更に鉛直方向の支持力は、鋼管杭11の管体22、22の下部周囲にそれぞれリブ状部材23、23、23を配して地盤5との接触面積を向上させたので、これによっても摩擦力が向上し、鉛直方向の支持力を更に向上させたものでもある。加えて、管体22の下端に閉塞板26を配して閉じているので、その下方の地盤5を圧密していることになり、これによっても鉛直方向の支持力を向上させることができる。
【0086】
リブ状部材23、23…による鋼管杭1の打ち込みの際の回転止めの作用もあり、これによって鋼管杭1の管体22の周囲の地盤5との結合が維持され、より摩擦力を高め、鉛直方向の支持力を維持することができるものでもある。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の鋼管杭及びこれを用いた地盤補強方法は、鋼管杭を製造する土木工事用部材の製造業の分野及び土木工事の分野で有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 鋼管杭
2 管体
3 リブ状部材
4 圧密翼
41 圧密翼本体
42 スカート板
5 地盤
6 閉塞板
7 補強片
8 補強片
9 振れ止め部材
91 円筒部
91a、91b 半割円筒部
92 円板部
92a、92b 半割円板部
92c ヒンジ
92d 連結板
92e 連結溝
10 保護キャップ
11 鋼管杭
22 管体
23 リブ状部材
24 圧密翼
241 圧密翼本体
242 スカート板
26 閉塞板
27 補強片
28 補強片
D1 地盤の上面からの深さ
D2 圧密翼から一定の深さ
D3 地盤の上面からの深さ
D4 圧密翼から一定の深さ
b ボルト
g 凹部
n 蝶ネジ
GL 地盤の上面
S 油圧ショベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無回転加圧によって地盤に圧入埋設する鋼製の管体からなる鋼管杭であって、該管体の下部外周に該管体の長さ方向に長い摩擦面増大用の複数のリブ状部材を配してなる鋼管杭。
【請求項2】
前記管体の上端近傍の外周に、地盤のうちのそれより下方の部位を下方に向かって圧密する圧密翼を配した請求項1の鋼管杭。
【請求項3】
前記管体の下端を閉じてなる請求項1又は2の鋼管杭。
【請求項4】
前記圧密翼を、前記管体を中心に位置させて配したドーナツ状の圧密翼本体及びその外周端から垂下させたスカート板で構成した請求項2の鋼管杭。
【請求項5】
前記圧密翼本体に上下貫通する一以上の貫通孔を開口した請求項4の鋼管杭。
【請求項6】
前記リブ状部材として、三個の長尺板状部材を採用し、該三個の長尺板状部材を、前記管体の外周に、その長さ方向を該管体の長さ方向に一致させ、かつその側面を該管体の外周に当接させた状態で、周方向120度の角度間隔で配置固定した請求項1、2、3、4又は5の鋼管杭。
【請求項7】
請求項2、4又は5の鋼管杭を地盤上の所要の位置に直立させ、かつ該鋼管杭の上端に、打撃又は振動加圧等の無回転の加圧力を加え、該鋼管杭を地盤中に圧入させ、
該鋼管杭の圧密翼が地盤上面に到達した時点より、該鋼管杭にそれまでより大きな無回転の加圧力を加え、該鋼管杭を更にその下端が設計深度に到達するまで下降させ、該鋼管杭を埋設すると共に、地盤のうちの該圧密翼より下方に位置する部位を圧密することにより地盤を補強する地盤補強方法。
【請求項8】
前記管体を直列に連結する複数の管体で構成し、前記複数のリブ状部材を該各管体の下部外周にその長さ方向に長い状態に配設し、前記圧密翼を最上部の管体の上端近傍の外周にのみ配することとした請求項2、4又は5の鋼管杭。
【請求項9】
請求項8の鋼管杭の最上部以外の管体を地盤上の所要の位置に直立させ、かつ該管体の上端に打撃又は振動加圧等の無回転の加圧力を加えて該管体を地盤中に圧入させ、該管体の上端が地盤上面近傍に到達した時点で、該管体の上端に、最上部以外の管体又は最上部の管体の下端を接続し、
最上部以外の管体を接続した場合は、最上部以外の該管体を接続する工程から、該管体の上端に打撃又は振動加圧等の無回転の加圧力を加えてその下方の管体と共に更に地盤中に深く圧入し、そのうち上方の管体の上端が地盤上面近傍に到達するまでの工程を、一回以上実行した上で、
上端が地盤上面近傍に到達した管体のその上端に最上部の管体の下端を接続し、
以上の最上部の管体を接続した二つのいずれの場合も、更に最上部の管体の上端に打撃又は振動加圧等の無回転の加圧力を加えて、該最上部の管体及び下方のそれ以外の管体を更に地盤中に圧入し、
該最上部の管体の圧密翼が地盤上面に到達した時点から、該管体にそれまでより強い打撃又は振動加圧等の無回転の加圧力を加えて、該管体を更に最下部の管体の下端が設計深度に到達するまで下降させ、これらの管体からなる鋼管杭を埋設すると共に、地盤のうちの該圧密翼の下方に位置する部位を圧密することにより地盤を補強する地盤補強方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−91986(P2013−91986A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235034(P2011−235034)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【特許番号】特許第5039229号(P5039229)
【特許公報発行日】平成24年10月3日(2012.10.3)
【出願人】(511000142)
【Fターム(参考)】