説明

鋼管鉄塔の斜材用簡易足場

【課題】 鋼管鉄塔の斜材の補修作業において、安全で効率の良い作業を行なうための鋼管鉄塔の斜材用簡易足場を提供する。
【解決手段】 本発明は、鋼管鉄塔の斜材に用いられる簡易足場であって、斜材に固定する取付部と取付部に接続される梯子部とで構成されており、前記梯子部は、2本の梯子部主材と、梯子部主材の下端に取付けられていて作業者が載る主足場部と、梯子部中間の梯子部主材間に取付けられた補助足場部とで構成され、前記取付部は、中間部が曲げられた2本の取付部主材と、取付部主材の曲げ部に設けられていて斜材を締め付けて固定し得るバンド部と、取付部主材の上端部に設けられていて斜材にベルト部材を巻き付けて簡易足場の回転を規制するベルト固定部とで構成され、取付部主材の下端部は梯子部主材の上端部に接続されているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管鉄塔の斜材に用いられる補修作業用の簡易足場に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄塔は防錆のために溶融亜鉛めっき処理が施されているが、経年劣化や環境条件により錆が発生する場合があり、錆が発生した箇所は塗装などによる補修が行われる。
【0003】
従来、鉄塔の補修作業を行う場合、丸太などの木製部材を使用して鉄塔の周囲を覆うように組立てた足場を用いて補修作業を行う方法が知られている。また、ゴンドラを設営して補修作業を行う方法も知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
補修を行う範囲が狭い場合や数本の部材を補修の対象としている場合には、作業者は鉄塔に昇塔し、部材や主柱材に付設されているステップを足場として、部材に命綱を結んで落下を防止しつつ、補修作業を行っている。
【0005】
【特許文献1】特開昭53−64924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、木製足場を組立てて補修作業を行う方法やゴンドラを設営し補修作業を行う方法では、補修範囲が広範囲である場合には有効であるが、補修を行う範囲が狭い場合や数本の部材を補修の対象としている場合には、木製足場やゴンドラを構成する部材および機材の搬送や組立てなどに時間がかかり、効率が悪いという問題があった。
【0007】
また、作業者が鉄塔に昇塔し、部材や主柱材に付設されているステップを足場として補修作業を行う方法では、鉄塔を構成している部材が山形鋼の場合は、主柱材や斜材の座屈を補剛するための補助材が取付けられていることが多いため、補助材を足場として作業を行うことができるが、鉄塔を構成している部材が鋼管の場合は、補助材が取付けられることが少ないため、作業を行うための足場が無く、作業が困難であった。特に斜材については、作業面が傾斜しており、斜材に命綱を結んで直接部材に抱きついてすべりながら補修作業を行っているため、危険で効率が悪いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の問題を有利に解決するために、本発明の鋼管鉄塔の斜材用簡易足場は、鋼管鉄塔の斜材に用いられる簡易足場であって、斜材に固定する取付部と取付部に接続される梯子部とで構成されており、前記梯子部は、左右2本の梯子部主材と、梯子部主材の下端に取付けられていて作業者が載る主足場部と、梯子部中間の梯子部主材間に取付けられた補助足場部とで構成され、前記取付部は、中間部が曲げられた2本の取付部主材と、取付部主材の中間部の曲げ部に設けられていて斜材を締め付けて固定し得るバンド部と、取付部主材の上端部に設けられていて斜材にベルト部材を巻き付けて簡易足場の回転を規制するベルト固定部とで構成され、取付部主材の下端部は梯子部の梯子部主材の上端部に接続されていることを特徴とする。
【0009】
また、取付部主材の曲げ部に設けられたバンド部は、斜材の円周方向を拘束して固定するよう円弧状に加工されたバンド金具と、取付部主材間に回転自由に取付けられたボルト部材と、ボルト部材に取付けられた締付金具とで構成されており、前記ボルト部材は、中心から一方の取付部主材方向ともう一方の取付部主材方向へ相対する方向にネジ切り加工が施されていること、前記バンド金具は、両端部がフック状に形成され、締付金具に引っ掛けられてボルト部材と連結していること、前記締付金具は、ボルト部材のネジ溝に合わせてネジ切り加工が施され、ボルト部材の中心から一方の取付部主材間ともう一方の取付部主材間にそれぞれ取付けられており、ボルト部材を回転させることで、締付金具がボルト部材の中心方向に移動し、バンド金具の締付けを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の鋼管鉄塔の斜材用簡易足場によれば、取付部と梯子部の簡単な構造で形成されているため軽量であり、持ち運びが容易である。また、斜材への取付け、取外しが容易な構成であるため、効率良く作業を行うことができる。
【0011】
さらに、作業者は斜材から梯子部の補助足場部に足を掛けて主足場部上に降り、主足場部に乗って補修作業を行うため、安定した姿勢で作業ができ、従来のように、斜材に抱きついて行う作業方法と比べて、安全で効率良く作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図6を参照して説明する。図6は、鋼管鉄塔の構造の一例を示している。鋼管鉄塔の構成材である斜材102は、主柱材101および水平材103とプレート104を介してボルト接合されている。鉄塔を構成している部材が山形鋼の場合は、主柱材や斜材の座屈を補剛するための補助材が取付けられていることが多いため、補助材を足場として作業を行うことができるが、鉄塔を構成している部材が鋼管の場合は、補助材が取付けられることが少ないため、作業を行うための足場が無く、作業が困難である。
【0013】
図1は鋼管鉄塔の斜材用簡易足場の正面図、図2は鋼管鉄塔の斜材用簡易足場の側面図を示している。本発明の鋼管鉄塔の斜材用簡易足場は可搬式の作業足場であり、斜材102に固定する取付部1と取付部1に接続される梯子部2とで構成されている。
【0014】
前記梯子部2は、左右2本の梯子部主材3と、梯子部主材3の下端に取付けられていて作業者が載る主足場部4と、梯子部2中間の左右の梯子部主材3間に取付けられた補助足場部5とで構成されており、前記主足場部4は、左右の梯子部主材3の外側に作業者が足を載せることができる長さの管状の部材が使用されている。
【0015】
前記取付部1は、中間部が曲げられた2本の取付部主材6a,6bと、取付部主材6a,6bの中間部の曲げ部7に設けられていて斜材102を締め付けて固定し得るバンド部8と、取付部主材6a,6bの一方の端部に設けられていて斜材102にベルト部材14を巻き付けて簡易足場の回転を規制するベルト固定部9とで構成されており、取付部主材6a,6bのもう一方の端部は梯子部主材3の上端部に接続されている。
【0016】
取付部主材6a,6bの曲げ部7は、図2に示す鋼管鉄塔の斜材用簡易足場の側面図から見て、梯子部主材3の部材軸に対して、取付部主材6a,6bの中間部で10°〜80°の角度で曲げられており、本発明の斜材用簡易足場を使用する鉄塔の斜材102の取付角度に応じて曲げ角度を使い分けることができる。
【0017】
図3はバンド部の正面図、図4は図3のA−A線におけるバンド金具の側面図を示している。取付部主材6a,6bの曲げ部7に設けられたバンド部8は、斜材の円周方向を拘束して固定するよう円弧状に加工されたバンド金具10と、取付部主材6a,6b間に回転自由に取付けられたボルト部材11と、ボルト部材11に取付けられた締付金具12とで構成されており、前記ボルト部材11は、中心から一方の取付部主材6a方向ともう一方の取付部主材6b方向へ相対する方向にネジ切り加工が施されている。前記バンド金具10は、両端部がフック状に形成され、脱落防止のための止金具体13が取付けられており、バンド金具10の端部を締付金具12に引っ掛けてボルト部材11に連結している。
【0018】
前記締付金具12は、ボルト部材11のネジ溝に合わせてネジ切り加工が施されており、ボルト部材11の中心から一方の取付部主材6a間ともう一方の取付部主材6b間にそれぞれ取付けられている。ここで、ボルト部材11を回転させると、2つの締付金具12がボルト部材11の中心方向に移動し、締付金具12を介してボルト部材11に連結されているバンド金具10の両端部もボルト部材11の中心方向に移動する。これにより、バンド金具10の締付けを行うことができる。また、ボルト部材11を前述の方向と逆方向に回転させると、締付金具12はボルト部材11の中心から取付部主材6a,6bの方向に移動し、バンド金具10を緩めることができる。また、図示していないが、ボルト部材11の端部には、ボルト部材11を回転させるための金具が取付けられており、この金具を回転させることで、ボルト部材11に回転を与えている。
【0019】
バンド金具10を斜材102に取付けた際は、バンド金具10とボルト部材11は締付金具12を介して、フックで引っ掛けられて連結しているため、ボルト部材11を支点として、斜材用簡易足場が回転自由な状態となる。この斜材用簡易足場の回転は、取付部主材6a,6bの上端部に設けられたベルト固定部9で規制する。
【0020】
前記ベルト固定部9は、ベルト部材14と、一方の取付部主材6aの端部に取付けられていてベルト部材14を固定するベルト固定金具15と、もう一方の取付部主材6bの端部に取付けられていてベルト部材14の長さを調整可能な調整固定金具16とで構成されている。ベルト部材14は、一方の端部をベルト固定金具15で固定して、斜材102に巻き付け、もう一方の端部を調整固定金具16でベルト部材14の長さを調整してベルト部材14の締付けを行って固定し、簡易足場の回転を規制する。
【0021】
図5は鋼管鉄塔の斜材用簡易足場の取付状態を示している。鋼管鉄塔の斜材用簡易足場の取付けは、斜材102の上方側にベルト固定部9、斜材102の下方側にバンド部8が位置するように取付け、作業者はベルト固定部9からバンド部8の方向に向いた状態で、簡易足場に降りるようにする。
【0022】
本発明の鋼管鉄塔の斜材用簡易足場は、取付部1と梯子部2の簡単な構造で形成されているため、軽量であり、持ち運びが容易である。また、取付部主材6a,6b、梯子部主材3、主足場部4、補助足場部5はアルミニウム又はアルミニウム合金から製造された管状の部材を使用することで、より軽量なものとすることができる。
【0023】
補修作業時には、鋼管鉄塔の斜材用簡易足場を背負って補修箇所まで昇塔し、補修対象の斜材102にバンド金具10を取付け、バンド金具10端部のフックを締付金具12に引っ掛けてボルト部材11と連結し、ボルト部材11を回転させてバンド金具10を締付ける。次に、ベルト部材14を斜材102に巻き付けて固定し、簡易足場の回転を規制する。簡易足場を斜材102上で移動させる場合には、バンド金具10を緩めることで斜材102上を移動させることができる。このように、斜材用簡易足場の取付け、取外しが容易な構成であるので、効率良く作業を行うことができる。
【0024】
作業者は、斜材102から梯子部2の補助足場部5に足を掛けて主足場部4上に降り、主足場部4に乗って補修作業を行うため、足場を確保することができ安定した姿勢で作業できるので、作業がし易くなり、作業効率が向上する。また、安全に作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】 鋼管鉄塔の斜材用簡易足場の正面図
【図2】 鋼管鉄塔の斜材用簡易足場の側面図
【図3】 バンド部の正面図
【図4】 図3のA−A線におけるバンド金具の側面図
【図5】 鋼管鉄塔の斜材用簡易足場の取付状態図
【図6】 鋼管鉄塔の構造の一例
【符号の説明】
【0026】
1 取付部
2 梯子部
3 梯子部主材
4 主足場部
5 補助足場部
6a,6b 取付部主材
7 曲げ部
8 バンド部
9 ベルト固定部
10 バンド金具
11 ボルト部材
12 締付金具
13 止金具体
14 ベルト部材
15 ベルト固定金具
16 調整固定金具
101 主柱材
102 斜材
103 水平材
104 プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管鉄塔の斜材102に用いられる簡易足場であって、
斜材102に固定する取付部1と取付部1に接続される梯子部2とで構成されており、
前記梯子部2は、2本の梯子部主材3と、
梯子部主材3の下端に取付けられていて作業者が載る主足場部4と、
梯子部2中間の梯子部主材3間に取付けられた補助足場部5とで構成され、
前記取付部1は、中間部が曲げられた2本の取付部主材6a,6bと、
取付部主材6a,6bの中間部の曲げ部7に設けられていて斜材102を締め付けて固定し得るバンド部8と、
取付部主材6a,6bの上端部に設けられていて斜材102にベルト部材14を巻き付けて簡易足場の回転を規制するベルト固定部9とで構成され、
取付部主材6a,6bの下端部は梯子部主材3の上端部に接続されていること、
を特徴とする鋼管鉄塔の斜材用簡易足場。
【請求項2】
取付部主材6a,6bの曲げ部7に設けられたバンド部8は、
斜材102の円周方向を拘束して固定するよう円弧状に加工されたバンド金具10と、
取付部主材6a,6b間に回転自由に取付けられたボルト部材11と、
ボルト部材11に取付けられた締付金具12とで構成されており、
前記ボルト部材11は、中心から一方の取付部主材6a方向ともう一方の取付部主材6b方向へ相対する方向にネジ切り加工が施されていること、
前記バンド金具10は、両端部がフック状に形成され、締付金具12に引っ掛けられてボルト部材11と連結していること、
前記締付金具12は、ボルト部材11のネジ溝に合わせてネジ切り加工が施され、ボルト部材11の中心から一方の取付部主材6a間ともう一方の取付部主材6b間にそれぞれ取付けられており、ボルト部材11を回転させることで、締付金具12がボルト部材11の中心方向に移動し、バンド金具10の締付けを行うこと、
を特徴とする請求項1記載の鋼管鉄塔の斜材用簡易足場。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−88793(P2008−88793A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−298275(P2006−298275)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(592233174)株式会社デンロコーポレーション (22)
【出願人】(000180357)株式会社四電工 (11)
【Fターム(参考)】