説明

鋼製橋梁の部分防食方法及び鋼製橋梁

【課題】表面を、防食塗装を施す部位と、防食塗装を施さない部位とを明確に区分することが可能な、鋼製橋梁の部分防食方法及び鋼製橋梁を提供する。
【解決手段】共に耐候性鋼によって形成された左主桁10と右主桁20から構成され、床版30を支持する鋼製橋梁1において、右主桁20の右側ウェブ風上側面241に、非構造部材であり右側ウェブ風上側面241から突出する右側付加部材28を取り付け、右側付加部材28の取り付け位置を、右側ウェブ風上側面241を、所定腐食度合い以上の腐食が予測される右側ウェブ風上側高腐食部分241Aと、所定腐食度合い未満の腐食が予測される右側ウェブ風上側低腐食部分241Bに区分する位置に設定し、右側ウェブ風上側高腐食部分241Aに、防食塗装を施して塗装膜Mを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、海岸付近に建設される鋼製橋梁等に備えられ、飛来塩分によって腐食が生じるおそれがある鋼製主桁を部分的に防食塗装する、鋼製橋梁の部分防食方法及び鋼製橋梁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、道路や線路等の交通路を連絡するために建設される橋梁としては、例えば、初期投資コストのみならず、建設後の維持費及び管理費も含めたライフサイクルコストを低減するために、無塗装のJIS耐候性鋼(以下、「耐候性鋼」と記載する)を用いて形成された鋼製橋梁がある。
このような鋼製橋梁に用いられる耐候性鋼は、大気中に曝露された環境においては、初期には赤錆が形成されるものの、十数年後には、その表面を、銅、リン、クロム等の有効元素が富化して形成された防食性の高い保護性錆層が覆うこととなる。このため、腐食の進展を、著しく遅らせることが可能な構成となっている。
【0003】
図2は、日本海側の飛来塩分が多い地点に存在する鋼製橋梁が備える鋼製主桁に対し、建設当初から約20年に亘って累積して形成された錆の厚さを、部位別の分布例として示す図である。すなわち、図2は、部位別の腐食度合いの分布例を示している。なお、図2中では、部位別に形成された錆の厚さを、μmを単位として表している。
なお、この地点では、海風が圧倒的に卓越しているため、鋼製主桁に付着して錆が形成される要因となる飛来塩分は、風に運ばれて、鋼製橋梁が存在する地点に到達することなる。また、図2中に示す鋼製橋梁1は、左主桁10と、右主桁20から構成されており、床版30を支持する2主桁橋を構成している。
【0004】
図2中に示されているように、鋼製橋梁1の部位別に形成される錆の厚さは、左側ウェブ風上側面141及び右側ウェブ風下側面242において、床版30の張り出しによって雨がかかりにくくなっている上側の部分を除き、降雨により、概ね200μm以下となっている。
したがって、左主桁10及び右主桁20のうち、雨がかかりやすく、表面に付着した塩分が降雨によって洗い流される外側の面については、乾湿の繰り返しによる良好な錆、すなわち、防食性の高い保護性錆層の形成が期待できるため、耐候性鋼の特性を引き出し、無塗装で用いることが可能である。
【0005】
これに対し、左主桁10及び右主桁20のうち、雨がかかりにくく、表面に付着した塩分が降雨によって洗い流されることの無い面、すなわち、左側ウェブ風下側面142と、右側ウェブ風上側面241については、上記した雨がかかりやすい面と比較して、形成される錆の厚さが大きい。
また、鋼製橋梁に付着する飛来塩分は、風によって運ばれてくるため、鋼製橋梁の周囲における風の流れも、鋼製橋梁に形成される錆の厚さに関係する。
【0006】
図3は、図2中に示した鋼製橋梁1の周囲における風の流れを示す図である。
図3中に示されているように、左主桁10の下端から剥離した流れは、右主桁20の下方を通過していく流れW1と、剥離後に上方へ巻き上げられて右主桁20の風上側へ移動する流れW2に分かれる。そして、右主桁20の風上側へ移動した流れW2は、左主桁10と右主桁20との間の桁内空間40において、循環流Cを形成する。
【0007】
したがって、左主桁10の下端から剥離して上方へ巻き上げられ、右主桁20の風上側へ移動する流れW2は、まず、右側ウェブ風上側面241の下部に塩分の付着を促す。その後、塩分が含まれる循環流Cは、桁内空間40において左主桁10及び右主桁20への塩分の付着を促しながら、すなわち、空気中の塩分を減少させながら、左側ウェブ風下側面142に塩分の付着を促すこととなる。
これにより、右側ウェブ風上側面241においては、図2中に示されるように、下側に形成される錆の厚さが大きく、上側に行くに従って形成される錆の厚さが小さくなっている。なお、図2中に示される錆の厚さは、上述した風の流れに含まれる飛来塩分だけでなく、降雨や、桁内空間40で生じる結露と、その重力降下による付着塩分の洗い流しの影響も受けている。
【0008】
以上説明したように、鋼製橋梁は、全ての部位において一様に腐食が進行する訳ではなく、図2中に示したように、部位毎に腐食度合いが異なり、形成される錆の厚さが異なっている。
このため、腐食度合いが激しい部位に対して集中的に防食塗装を施し、防食塗装を施した部位の腐食を抑制することにより、鋼製橋梁全体に対して腐食の進行を抑制し、腐食度合いが均一化された、健全な鋼製橋梁を建設することが可能となる。
しかしながら、鋼製橋梁に対し、形成された錆の厚さを部位別の分布として示す場合には、上述したように、建設当初から長期間に亘る現地調査が必要となるため、現実的には、作業工程上極めて困難である。
そこで、このような問題を解決するため、例えば、特許文献1に記載されている発明が提案されている。
【0009】
特許文献1に記載されている発明は、鋼製橋梁の断面周りにおける数値流体解析によって流速計算を行い、その計算結果に基づいて所定の方程式を解くことにより、塩分濃度の等高線を作成する。そして、作成した塩分濃度の等高線を用いて、鋼製橋梁の部位毎における飛来塩分の濃度を評価あるいは算定し、その結果に基づいて、鋼製橋梁の部位毎に、防食塗装を施すか否かの判定を行うものである。
【特許文献1】特開2001−152413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載されているような方法では、鋼製橋梁の部位毎における飛来塩分の濃度が、連続する等高線を用いて求められるため、各部位間の濃度の値も連続的になり、各部位間の区分が曖昧となる。そのため、防食塗装を施す部位と、防食塗装を施さない部位との区分が曖昧となる。
防食塗装を施す部位と、防食塗装を施さない部位との区分が曖昧となると、防食塗装を施す際に必要となる架設足場等の規模や設置範囲が曖昧となり、防食塗装に係るコストが増加してしまうとともに、防食塗装の作業工程が増加してしまうという問題が生じるおそれがある。
【0011】
また、防食塗装を施す範囲が曖昧となると、実際に必要な範囲よりも広い範囲に対して防食塗装を施すおそれがあるため、防食塗装に係るコストが増加してしまうとともに、防食塗装の作業工程が増加してしまうという問題が生じるおそれがある。
本発明は、上述したような問題点に着目してなされたもので、鋼製橋梁の表面に対し、防食塗装を施す部位と、防食塗装を施さない部位とを明確に区分することが可能な、鋼製橋梁の部分防食方法及び鋼製橋梁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明のうち、請求項1に記載した発明は、表面の腐食が予測される鋼製主桁を部分的に防食塗装する鋼製橋梁の部分防食方法であって、
前記鋼製主桁の表面に、当該表面を、所定腐食度合い以上の腐食が予測される高腐食部分と、前記所定腐食度合い未満の腐食が予測される低腐食部分に区分し、且つ前記鋼製主桁の表面から突出する付加部材を取り付け、
前記高腐食部分のみを防食塗装することを特徴とするものである。
【0013】
本発明によると、鋼製主桁の表面に取り付けた付加部材によって、その表面を、所定腐食度合い以上の腐食が予測される高腐食部分と、所定腐食度合い未満の腐食が予測される低腐食部分に区分することが可能となる。
このため、鋼製主桁の表面に対し、防食塗装を施す部位と、防食塗装を施さない部位とを明確に区分することが可能となり、防食塗装に係るコスト及び防食塗装の作業工程を減少させることが可能となる。
なお、上記の「所定腐食度合い」とは、例えば、防食性の高い保護性錆層に該当する厚さの錆が形成されると予測される程度の腐食度合いである。
【0014】
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した発明であって、前記付加部材の形状を、前記低腐食部分へ付着すると予測される飛来塩分の付着を抑制するような形状としたことを特徴とするものである。
本発明によると、付加部材の形状を、低腐食部分へ付着すると予測される飛来塩分の付着を抑制するような形状としているため、低腐食部分へ付着すると予測される飛来塩分の付着を抑制することが可能となり、低腐食部分に予測される腐食度合いを減少させることが可能となる。
なお、上記の「付加部材の形状」とは、例えば、付加部材自体の形状、付加部材の鋼製主桁の表面からの突出量、付加部材の鋼製主桁の表面に対する取り付け角度等である。
【0015】
次に、請求項3に記載した発明は、請求項1または2に記載した発明であって、前記付加部材を、非構造部材としたことを特徴とするものである。
本発明によると、付加部材を非構造部材としているため、鋼製橋梁の強度に影響を与えずに、付加部材を鋼製主桁に取り付けることが可能となり、付加部材の鋼製主桁への取り付け位置を自由に設定することが可能となる。
【0016】
次に、請求項4に記載した発明は、請求項1から3のうちいずれか1項に記載した発明であって、前記付加部材を、当該付加部材の取り付け対象となる表面のうち、雨水によって洗浄されない部分に取り付けることを特徴とするものである。
本発明によると、付加部材を、付加部材の取り付け対象となる鋼製主桁の表面のうち、雨水によって洗浄されない部分に取り付けることにより、所定腐食度合い以上の腐食が予測される部位及びその付近において、高腐食部分と低腐食部分とを明確に区分することが可能となる。
【0017】
次に、請求項5に記載した発明は、表面の腐食が予測される鋼製主桁を備えた鋼製橋梁であって、
前記鋼製主桁の表面に取り付けられ、且つ前記鋼製橋梁の表面から突出する付加部材を備え、
前記付加部材は、当該付加部材が取り付けられた表面を、所定腐食度合い以上の腐食が予測される高腐食部分と、前記所定腐食度合い未満の腐食が予測される低腐食部分に区分し、
前記高腐食部分のみが防食塗装されていることを特徴とするものである。
【0018】
本発明によると、鋼製主桁の表面に取り付けた付加部材によって、その表面を、所定腐食度合い以上の腐食が予測される高腐食部分と、所定腐食度合い未満の腐食が予測される低腐食部分に区分し、高腐食部分のみを防食塗装している。
このため、鋼製主桁の表面に対し、防食塗装を施す部位と、防食塗装を施さない部位とを明確に区分して、防食塗装を施す部位にのみ防食塗装を施すことが可能となり、防食塗装に係るコスト及び防食塗装の作業工程を減少させることが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、鋼製主桁の表面に対し、防食塗装を施す部位と、防食塗装を施さない部位とを明確に区分することが可能となるため、防食塗装に係るコスト及び防食塗装の作業工程を減少させることが可能となる。また、鋼製橋梁の製造に係る初期コスト及びライフサイクルコストを低減することが可能となる。
さらに、鋼製主桁の表面錆は、毛管現象などにより、その腐食範囲を拡大させることが多いが、付加部材を取り付けることにより、毛管現象(塩分の水分による浸透)の伸展経路を遮断することになり、結果として、高腐食部分の拡大を防ぐことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
まず、図1を参照して、本実施形態の鋼製橋梁の部分防食方法(以下、「部分防食方法」と記載する)の具体例を説明する。
図1は、本実施形態の部分防食方法を適用した、鋼製橋梁1の構成を示す図である。
図1に示すように、鋼製橋梁1は、左主桁10と、右主桁20から構成されており、床版30を支持する2主桁橋を構成している。なお、本実施形態では、鋼製橋梁1を、左主桁10と右主桁20、すなわち、二本の鋼製主桁から構成された2主桁橋として説明するが、鋼製橋梁1の構成は、これに限定されるものではなく、三本以上の鋼製主桁から構成してもよい。また、本実施形態では、左主桁10及び右主桁20を、それぞれ、海風等の、飛来塩分(図1中では符号「●」で表す)を含んだ風(図1中に「風」と示す)に対して、風上に配置されている鋼製主桁を左主桁10とし、風下に配置されている鋼製主桁を右主桁20とした場合について説明する。
【0021】
左主桁10は、JIS耐候性鋼やNi系高耐候性鋼等の、耐候性鋼によって形成されており、左側上フランジ12と、左側ウェブ14と、左側下フランジ16を有している。
左側上フランジ12及び左側下フランジ16は、軸を水平方向に向けて配置されており、左側ウェブ14は、軸を上下方向に向けて配置されている。すなわち、左側上フランジ12及び左側下フランジ16の軸は、共に、左側ウェブ14の軸に対して直角となっており、左側上フランジ12及び左側下フランジ16の断面方向と左側ウェブ14の断面方向は、互いに直角となっている。
【0022】
左側上フランジ12の左側ウェブ14との結合部位は、左側上フランジ12の中央付近となっており、左側ウェブ14の上端部からは、左側上フランジ12の両端部が、水平方向へ突出している。
左側ウェブ14の風下側の面(以下、「左側ウェブ風下側面142」と記載する)には、左側付加部材18が、軸を水平方向に向けて、左側ウェブ風下側面142から水平方向へ突出するように取り付けられている。すなわち、左側付加部材18の軸は、共に、左側ウェブ14の軸に対して直角となっており、左側付加部材18の断面方向と左側ウェブ14の断面方向は、互いに直角となっている。なお、図1中及び以下の説明では、左側ウェブ14の風上側の面を、「左側ウェブ風上側面141」と記載する。
【0023】
左側付加部材18は、左側ウェブ14の剛性に関与せず、また、左側ウェブ14の座屈を防ぐ機能を有していない、非構造部材となっている。したがって、左側付加部材18の材質は、鋼材に限らず、任意のものを用いることが可能となっている。
また、左側付加部材18は、接着剤を用いて接着されることにより、左側ウェブ風下側面142に取り付けることができる。なお、左側付加部材18を、ボルト等の締結部材を用いることにより、左側ウェブ風下側面142に取り付けてもよい。また、左側付加部材18を、溶接により、左側ウェブ風下側面142に取り付けてもよい。
【0024】
左側付加部材18の左側ウェブ風下側面142への取り付け位置は、後述する右側付加部材28と同じ高さとなる位置に設定されている。
左側ウェブ風下側面142のうち、左側付加部材18が取り付けられている位置から下方の部位には、防食塗装が施されており、塗装膜Mが形成されている。
左側下フランジ16の左側ウェブ14との結合部位は、左側下フランジ16の中央付近となっており、左側ウェブ14の下端部からは、左側下フランジ16の両端部が、水平方向へ突出している。
【0025】
左側下フランジ16の上面及び下面には、左側ウェブ風下側面142のうち、左側付加部材18が取り付けられている位置から下方の部位と同様、防食塗装が施されており、塗装膜Mが形成されている。また、左側下フランジ16の上面及び下面に形成されている塗装膜Mは、左側ウェブ風下側面142のうち、左側付加部材18が取り付けられている位置から下方の部位に形成されている塗装膜Mと連続している。
【0026】
したがって、左主桁10の各部位は、左側ウェブ風下側面142のうち、左側付加部材18が取り付けられている位置から下方の部位と、左側下フランジ16の上面及び下面を除き、無塗装となっている。
なお、左主桁10の各部位において、左側下フランジ16の上面及び下面に、防食塗装が施されており、塗装膜Mが形成されている理由については、後述する。
【0027】
右主桁20は、左主桁10と同様、JIS耐候性鋼やNi系高耐候性鋼等の、耐候性鋼によって形成されており、右側上フランジ22と、右側ウェブ24と、右側下フランジ26を有している。
右側上フランジ22及び右側下フランジ26は、軸を水平方向に向けて配置されており、右側ウェブ24は、軸を上下方向に向けて配置されている。すなわち、右側上フランジ22及び右側下フランジ26の軸は、共に、右側ウェブ24の軸に対して直角となっており、右側上フランジ22及び右側下フランジ26の断面方向と右側ウェブ24の断面方向は、互いに直角となっている。
【0028】
右側上フランジ22の右側ウェブ24との結合部位は、右側上フランジ22の中央付近となっており、右側ウェブ24の上端部からは、右側上フランジ22の両端部が、水平方向へ突出している。
右側ウェブ24の風上側の面(以下、「右側ウェブ風上側面241」と記載する)には、右側付加部材28が、軸を水平方向に向けて、右側ウェブ風上側面241から水平方向へ突出するように取り付けられている。すなわち、右側付加部材28の軸は、共に、右側ウェブ24の軸に対して直角となっており、右側付加部材28の断面方向と右側ウェブ24の断面方向は、互いに直角となっている。なお、図1中及び以下の説明では、右側ウェブ24の風下側の面を、「右側ウェブ風下側面242」と記載する。
【0029】
右側付加部材28は、右側ウェブ24の剛性に関与せず、また、右側ウェブ24の座屈を防ぐ機能を有していない、非構造部材となっている。したがって、右側付加部材28の材質は、鋼材に限らず、任意のものを用いることが可能となっている。
また、右側付加部材28は、接着剤を用いて接着されることにより、右側ウェブ風上側面241に取り付けることができる。なお、右側付加部材28を、ボルト等の締結部材を用いることにより、右側ウェブ風上側面241に取り付けてもよい。また、右側付加部材28を、溶接により、右側ウェブ風上側面241に取り付けてもよい。
【0030】
右側付加部材28の右側ウェブ風上側面241への取り付け位置は、右側ウェブ風上側面241を、所定腐食度合い以上の腐食が予測される右側ウェブ風上側高腐食部分241Aと、所定腐食度合い未満の腐食が予測される右側ウェブ風上側低腐食部分241Bに区分する位置に設定されている。ここで、「所定腐食度合い」は、左側ウェブ風下側面142と同様、右側ウェブ風上側面241に、防食性の高い保護性錆層に該当する厚さの錆が形成されると予測される程度の腐食度合いとする。
【0031】
右側ウェブ風上側高腐食部分241Aは、右側ウェブ風上側低腐食部分241Bよりも下方に配置されている。
なお、右側付加部材28の右側ウェブ風上側面241への取り付け位置を設定する方法については、後述する。
また、右側付加部材28の形状、具体的には、右側付加部材28の右側ウェブ風上側面241からの突出量は、右側ウェブ風上側低腐食部分241Bへ付着すると予測される飛来塩分の付着を抑制するような突出量となっている。例えば、突出量を、100mm程度に設定することができる。
【0032】
右側ウェブ風上側面241のうち、右側付加部材28が取り付けられている位置から下方の部位、すなわち、右側ウェブ風上側高腐食部分241Aには、防食塗装が施されており、塗装膜Mが形成されている。
右側下フランジ26の右側ウェブ24との結合部位は、右側下フランジ26の中央付近となっており、右側ウェブ24の下端部からは、右側下フランジ26の両端部が、水平方向へ突出している。
【0033】
右側下フランジ26の上面及び下面には、右側ウェブ風上側高腐食部分241Aと同様、防食塗装が施されており、塗装膜Mが形成されている。右側下フランジ26の上面及び下面に形成されている塗装膜Mは、右側ウェブ風上側高腐食部分241Aに形成されている塗装膜Mと連続している。
したがって、右主桁20の各部位は、右側ウェブ風上側高腐食部分241Aと右側下フランジ26の上面及び下面を除き、無塗装となっている。
【0034】
なお、右主桁20の各部位において、右側ウェブ風上側高腐食部分241Aと右側下フランジ26の上面及び下面に、防食塗装が施されており、塗装膜Mが形成されている理由については、後述する。
床版30は、例えば、コンクリートによって形成されており、軸を水平方向に向けた状態で、左主桁10及び右主桁20によって下方から支持されている。具体的には、床版30の下面が、左側上フランジ12の上面及び右側上フランジ22の上面に接触している。
【0035】
次に、左側付加部材18の左側ウェブ風下側面142への取り付け位置と、右側付加部材28の右側ウェブ風上側面241への取り付け位置を設定する手順の、一例について説明する。なお、以下の説明では、図1と共に、上述した背景技術の説明で用いた、図2及び図3を参照する。
まず、左主桁10が有する、左側上フランジ12、左側ウェブ14及び左側下フランジ16について、それぞれ、以下に示すような複数の部位を設定する。
【0036】
左側上フランジ12に対しては、その表面を、左側ウェブ14の上端部から、水平方向へ突出している部分の、それぞれの下面に区分する。これは、左側上フランジ12の表面においては、下面のみが錆の形成への影響を受けるとともに、この下面は、左側ウェブ14を挟んだ風上側の面と風下側の面において、それぞれ、飛来塩分による腐食への影響度合いが異なると考えられるためである。
【0037】
左側ウェブ14に対しては、その表面を、左側ウェブ14の軸方向に沿って複数の部位に分割するとともに、これら複数の部位を、それぞれ、左側ウェブ風上側面141及び左側ウェブ風下側面142毎に設定する。これは、左側ウェブ14の表面においては、左側ウェブ14の軸方向に沿って、飛来塩分や降雨による腐食への影響度合いが部位毎に異なると考えられるとともに、左側ウェブ風上側面141と左側ウェブ風下側面142において、それぞれ、飛来塩分や降雨による腐食への影響度合いが、部位毎に異なると考えられるためである。
【0038】
左側下フランジ16に対しては、その表面を、左側ウェブ14の下端部から、水平方向へ突出している部分の、それぞれの上面と、左側下フランジ16の下面に区分する。これは、左側下フランジ16の表面においては、上面及び下面が、共に、腐食が発生すると考えられるためである。また、上面は、左側ウェブ14を挟んだ風上側の面と風下側の面において、それぞれ、飛来塩分や降雨による腐食への影響度合いが異なると考えられるためである。
【0039】
また、右主桁20についても、左主桁10と同様、右側上フランジ22、右側ウェブ24及び右側下フランジ26に対し、それぞれ、複数の部位を設定する。
右側上フランジ22に対しては、左側上フランジ12と同様、その表面を、右側ウェブ24の上端部から、水平方向へ突出している部分の、それぞれの下面に区分する。右側上フランジ22の区分に関する理由は、左側上フランジ12の区分に関する理由と同様である。
【0040】
右側ウェブ24に対しては、左側ウェブ14と同様、その表面を、右側ウェブ24の側面を軸方向に沿って複数の部位に分割するとともに、これら複数の部位を、それぞれ、右側ウェブ風上側面241及び右側ウェブ風下側面242毎に設定する。右側ウェブ24の区分に関する理由は、左側ウェブ14の区分に関する理由と同様である。
右側下フランジ26に対しては、左側下フランジ16と同様、その表面を、右側ウェブ24の下端部から、水平方向へ突出している部分の、それぞれの上面と、右側下フランジ26の下面とする。右側下フランジ26の区分に関する理由は、左側下フランジ16の区分に関する理由と同様である。
【0041】
次に、左主桁10及び右主桁20の表面について、それぞれ、設定した複数の部位毎に、予測される腐食の腐食度合いを求める。
本実施形態では、予測される腐食の腐食度合いを求めるために、一例として、本実施形態の鋼製橋梁1と建設地点の環境が似ている地点に存在する鋼製橋梁に対し、この鋼製橋梁が備える鋼製主桁において、建設当初から約20年に亘って累積して形成された錆の厚さの、部位別の分布例を参照する(図2参照)。
【0042】
図2に示されているように、右主桁20の各部位において、右側ウェブ風上側面241については、その下部に形成される錆の厚さが、上部及び中部に形成される錆の厚さと比較して、大きくなっている。なお、図2中に示されているように、本実施形態では、右側ウェブ風上側面241及び右側ウェブ風下側面242を、それぞれ、右側ウェブ24の軸方向に沿って、五箇所の部位に分割しており、これらの部位は等分されている。同様に、左側ウェブ風上側面141及び左側ウェブ風下側面142を、それぞれ、左側ウェブ14の軸方向に沿って、五箇所の部位に分割しており、これらの部位は等分されている。
【0043】
これは、図3中に示されているように、左主桁10の下端から剥離した流れから分かれ、右主桁20の風上側へ移動した流れW2が、右側ウェブ風上側面241の下部に塩分の付着を促した後、空気中の塩分を減少させながら、左側ウェブ風下側面142に塩分の付着を促すためである。
これにより、右側ウェブ風上側面241は、その下部が、所定腐食度合い以上の腐食が予測される右側ウェブ風上側高腐食部分241Aに区分され、その上部及び中部が、所定腐食度合い未満の腐食が予測される右側ウェブ風上側低腐食部分241Bに区分される。
【0044】
したがって、右側付加部材28の右側ウェブ風上側面241への取り付け位置は、右側ウェブ風上側面241を、右側ウェブ風上側低腐食部分241Bと、右側ウェブ風上側低腐食部分241Bよりも下方に配置されている右側ウェブ風上側高腐食部分241Aに、明確に区分するため、右側ウェブ風上側面241における下部と中部との境界に設定する。
【0045】
次に、左主桁10及び右主桁20の各部位において、防食塗装を施し、塗装膜Mを形成した理由について説明する。なお、以下の説明では、図1と共に、上述した背景技術の説明で用いた、図2及び図3を参照する。
また、図2に示されているように、左主桁10の各部位においては、左側下フランジ16の風下側へ突出している部分の上面と、左側下フランジ16の下面が、その他の部位と比較して、形成される錆の厚さが大きくなっている。
【0046】
これは、左主桁10の各部位において、左側下フランジ16の風下側へ突出している部分の上面と、左側下フランジ16の下面は、その他の部位と比較して、雨がかかりにくく、表面に付着した塩分が降雨によって洗い流されることの無い部位となっているためである。
また、図2に示されているように、右主桁20の各部位においては、右側下フランジ26の風上側へ突出している部分の上面と、右側下フランジ26の下面が、その他の部位と比較して、形成される錆の厚さが大きくなっている。
【0047】
これは、右主桁20の各部位において、右側下フランジ26の風上側へ突出している部分の上面と、右側下フランジ26の下面は、その他の部位と比較して、雨がかかりにくく、表面に付着した塩分が降雨によって洗い流されることの無い部位となっているためである。
また、上述したように、右側ウェブ風上側面241については、その下部に形成される錆の厚さが、上部及び中部に形成される錆の厚さと比較して、大きくなっている。
したがって、鋼製橋梁1全体に対して、腐食状況を均一化するために、左主桁10及び右主桁20の各部位において、その他の部位と比較して、形成される錆の厚さが大きくなっている部位、すなわち、腐食が激しいと予測される部位に防食塗装を施し、塗装膜Mを形成する。
【0048】
次に、図1を参照しつつ、本実施形態の部分防食方法を用いて、部分的に防食塗装を施した鋼製橋梁1の、作用・効果等を説明する。
鋼製橋梁1が建設されている地点において、海風等の、飛来塩分を含んだ風が風上から吹くと、この風は、鋼製橋梁1の上方へ移動する流れと、鋼製橋梁1の下方へ移動する流れに分かれる。
両者のうち、鋼製橋梁1の下方へ移動した流れは、左主桁10の下端に衝突して左主桁10の下端から剥離し、右主桁20の下方を通過していく流れと、剥離後に上方へ巻き上げられて右主桁20の風上側へ移動する流れに分かれる。
【0049】
そして、右主桁20の風上側へ移動した流れは、左主桁10の下端から剥離して上方へ巻き上げられ、右側ウェブ風上側面241に衝突して、右側ウェブ風上側面241に飛来塩分の付着を促す。
このとき、右側ウェブ風上側面241には、右側ウェブ風上側面241から突出する右側付加部材28が取り付けられている。また、右側付加部材28の右側ウェブ風上側面241への取り付け位置は、右側ウェブ風上側面241を、右側ウェブ風上側高腐食部分241Aと、右側ウェブ風上側低腐食部分241Bに区分する位置に設定されている。
【0050】
このため、右側ウェブ風上側面241に当たる流れに含まれる飛来塩分は、まず、右側ウェブ風上側高腐食部分241Aに付着する。また、右側ウェブ風上側高腐食部分241Aに飛来塩分を付着させた流れは、右側付加部材28に下方から衝突し、左主桁10と右主桁20との間の桁内空間40内における移動を規制されるため、右側ウェブ風上側低腐食部分241B及び左側ウェブ風下側面142への飛来塩分の付着が抑制される。
【0051】
また、右側ウェブ風上側高腐食部分241Aには、防食塗装が施されており、塗装膜Mが形成されているため、建設当初からの経年変化によって発生する腐食が抑制され、形成される錆の厚さが、塗装膜Mが形成されていない場合と比較して小さくなる。
したがって、本実施形態の鋼製橋梁の部分防食方法であれば、右側ウェブ風上側面241に、右側ウェブ風上側面241を、右側ウェブ風上側高腐食部分241Aと、右側ウェブ風上側低腐食部分241Bに区分する右側付加部材28が取り付けられている。また、右側ウェブ風上側面241において、右側ウェブ風上側高腐食部分241Aのみに、防食塗装が施されて、塗装膜Mが形成されている。
【0052】
このため、右側ウェブ風上側面241に対し、防食塗装を施す部位と、防食塗装を施さない部位とを明確に区分することが可能となり、初期、すなわち、建設時に右側ウェブ風上側面241を部分的に防食塗装することによって、右側ウェブ風上側面241における部分的な腐食の進行を抑制することが可能となる。また、右側ウェブ風上側面241全面に対し、防食塗装を施す場合と比較して、防食塗装に用いる塗料を減少させることが可能となるとともに、防食塗装を施す面積を減少させることが可能となる。
その結果、防食塗装に係るコスト及び防食塗装の作業工程を減少させることが可能となる。
また、数十年毎に行う防食塗料の塗り替え作業時において、架設足場等を部分的に省略することが可能となるとともに、塗装面積を減少させることが可能となるため、鋼製橋梁1の製造に係る初期コスト及びライフサイクルコストを低減することが可能となる。
【0053】
また、本実施形態の鋼製橋梁の部分防食方法であれば、左主桁10及び右主桁20の各部位において、その他の部位と比較して、形成される錆の厚さが大きくなっている部位、すなわち、腐食が激しいと予測される部位に防食塗装を施し、塗装膜Mを形成している。
このため、右側ウェブ風上側高腐食部分241Aに形成される錆の厚さが、塗装膜Mが形成されていない場合と比較して小さくなる。
その結果、鋼製橋梁1全体の腐食状況が均一化され、鋼製橋梁1において、局部的な腐食の進行を抑制することが可能となるため、健全な鋼製橋梁1を提供することが可能となる。
【0054】
さらに、本実施形態の鋼製橋梁の部分防食方法であれば、右側付加部材28の右側ウェブ風上側面241からの突出量が、右側ウェブ風上側低腐食部分241Bへ付着すると予測される飛来塩分の付着を抑制するような突出量となっている。
その結果、右側ウェブ風上側低腐食部分241Bに予測される腐食度合いを減少させることが可能となり、右側ウェブ風上側低腐食部分241Bに形成される錆の厚さを減少させることが可能となる。
また、本実施形態の鋼製橋梁の部分防食方法であれば、右側付加部材28を非構造部材としているため、鋼製橋梁1の強度に影響を与えずに、右側付加部材28を右側ウェブ風上側面241に取り付けることが可能となる。
【0055】
その結果、右側ウェブ風上側面241に対する左側付加部材18の取り付け位置を、自由に設定することが可能となり、左側付加部材18の取り付け位置を、右側ウェブ風上側低腐食部分241Bへ付着する飛来塩分の付着を、抑制する位置とすることが容易となる。
また、特に図示しないが、飛来塩分を含んだ風の状態に応じて左側付加部材18の取り付け位置を上下させることにより、右側ウェブ風上側高腐食部分241Aへ付着する飛来塩分を増加させるとともに、右側ウェブ風上側低腐食部分241Bへ付着する飛来塩分を減少させてもよい。
【0056】
また、本実施形態の鋼製橋梁の部分防食方法であれば、左側ウェブ風下側面142において、右側付加部材28と同じ高さとなる位置に、左側付加部材18が取り付けられている。また、左側ウェブ風下側面142において、左側付加部材18が取り付けられている位置から下方の部位のみに、防食塗装が施されており、塗装膜Mが形成されている。
このため、飛来塩分を含んだ風の風向きが変化し、右主桁20が風上に配置され、左主桁10が風下に配置されている状況となった場合であっても、左側ウェブ風下側面142が、右側ウェブ風上側面241と同様、所定腐食度合い以上の腐食が予測される左側ウェブ風下側高腐食部分と、所定腐食度合い未満の腐食が予測される左側ウェブ風下側低腐食部分に、明確に区分されることとなる。また、左側ウェブ風上側高腐食部分に形成される錆の厚さが、塗装膜Mが形成されていない場合と比較して小さくなる。
【0057】
その結果、防食塗装に係るコスト及び防食塗装の作業工程を減少させることが可能となり、鋼製橋梁1の製造に係る初期コスト及びライフサイクルコストを低減することが可能となる。
また、本実施形態の鋼製橋梁の部分防食方法は、飛来塩分を含んだ風の風向きが、左主桁10及び右主桁20の配列方向に沿った向きである場合に用いることが好適である。
【0058】
これは、飛来塩分を含んだ風の風向きが、左主桁10及び右主桁20の軸方向に沿った向きである場合には、複数の部位毎における腐食度合いの差異が明確に表れないと予想されるためである。
また、本実施形態の鋼製橋梁の部分防食方法は、風に含まれる飛来塩分が、耐候性鋼が有する飛来塩分に対する適用の限界値を超えてない場合に用いることが好適である。
【0059】
また、本実施形態の鋼製橋梁の部分防食方法は、冬季等に、凍結防止用の塩が路面上に配置される条件下以外の鋼製橋梁に用いることが好適である。
なお、本実施形態の鋼製橋梁の部分防食方法では、右側ウェブ風上側面241に右側付加部材28を取り付けるとともに、左側ウェブ風下側面142に左側付加部材18を取り付けているが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、鋼製橋梁1が建設される地点において、飛来塩分を含んだ風の風向きが、例えば、図1中に示すように、左から右のみであると断定可能な場合であれば、左側ウェブ風下側面142に左側付加部材18を取り付けなくともよい。右側付加部材28についても同様である。
【0060】
また、本実施形態の鋼製橋梁の部分防食方法では、左側ウェブ風下側面142に左側付加部材18を取り付けるとともに、右側ウェブ風上側面241に右側付加部材28を取り付けているが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、左側ウェブ風上側面141に左側付加部材18を取り付けてもよく、右側ウェブ風下側面242に右側付加部材28を取り付けてもよい。この場合、例えば、左側ウェブ風上側面141及び右側ウェブ風下側面242において、床版30の張り出しによって雨がかかりにくくなっている上側の部分に、それぞれ、左側付加部材18及び右側付加部材28を取り付けることより、所定腐食度合い以上の腐食が予測される部位及びその付近において、高腐食部分と低腐食部分とを明確に区分することが可能となる。
【0061】
さらに、本実施形態の鋼製橋梁の部分防食方法では、右側ウェブ24及び左側ウェブ14に付加部材を取り付けているが、これに限定されるものではない。すなわち、その表面を高腐食部分と低腐食部分に区分する必要がある場合には、例えば、左側下フランジ16や右側上フランジ22に、付加部材を取り付けてもよい。
また、本実施形態の鋼製橋梁の部分防食方法では、左側付加部材18及び右側付加部材28を非構造部材としているが、これに限定されるものではない。もっとも、本実施形態の鋼製橋梁の部分防食方法のように、左側付加部材18及び右側付加部材28を非構造部材とすることが、付加部材の鋼製主桁への取り付け位置を自由に設定することが可能となるため、好適である。
【0062】
また、本実施形態の鋼製橋梁の部分防食方法では、右側付加部材28の右側ウェブ風上側面241からの突出量を、右側ウェブ風上側低腐食部分241Bへ付着すると予測される飛来塩分の付着を抑制するような突出量としたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、右側付加部材28自体の形状を、右側付加部材28の先端側が下方へ折り曲げられている断面L字形等とし、右側ウェブ風上側低腐食部分241Bへ付着すると予測される飛来塩分の付着を抑制するような形状としてもよい。また、右側付加部材28の右側ウェブ風上側面241に対する取り付け角度を、水平よりも下方に傾斜した角度等、右側ウェブ風上側低腐食部分241Bへ付着すると予測される飛来塩分の付着を抑制するような角度としてもよい。
【0063】
また、本実施形態の鋼製橋梁の部分防食方法では、右側付加部材28の右側ウェブ風上側面241への取り付け位置を、右側ウェブ風上側面241における下部と中部との境界に設定したが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、左主桁10及び右主桁20の形状寸法や、鋼製橋梁1の周辺に存在する樹木等の物体により、鋼製橋梁1が建設されている地点における風の流れが本実施形態と異なる場合には、右側付加部材28の取り付け位置を、所定腐食度合いに応じて、適切な位置に適宜変更することが好適である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の部分防食方法を適用した、鋼製橋梁の構成を示す図である。
【図2】日本海側の飛来塩分が多い地点に存在する鋼製橋梁が備える鋼製主桁に対し、建設当初から約20年に亘って累積して形成された錆の厚さを、部位別の分布例として示す図である。
【図3】図2中に示した鋼製橋梁の周囲における風の流れを示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1 鋼製橋梁
10 左主桁
12 左側上フランジ
14 左側ウェブ
142 左側ウェブ風下側面
16 左側下フランジ
18 左側付加部材
20 右主桁
22 右側上フランジ
24 右側ウェブ
241 右側ウェブ風上側面
241A 右側ウェブ風上側高腐食部分
241B 右側ウェブ風上側低腐食部分
26 右側下フランジ
28 右側付加部材
30 床版
40 桁内空間
M 塗装膜
C 循環流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の腐食が予測される鋼製主桁を部分的に防食塗装する鋼製橋梁の部分防食方法であって、
前記鋼製主桁の表面に、当該表面を、所定腐食度合い以上の腐食が予測される高腐食部分と、前記所定腐食度合い未満の腐食が予測される低腐食部分に区分し、且つ前記鋼製主桁の表面から突出する付加部材を取り付け、
前記高腐食部分のみを防食塗装することを特徴とする鋼製橋梁の部分防食方法。
【請求項2】
前記付加部材の形状を、前記低腐食部分へ付着すると予測される飛来塩分の付着を抑制するような形状としたことを特徴とする請求項1に記載した鋼製橋梁の部分防食方法。
【請求項3】
前記付加部材を、非構造部材としたことを特徴とする請求項1または2に記載した鋼製橋梁の部分防食方法。
【請求項4】
前記付加部材を、当該付加部材の取り付け対象となる表面のうち、雨水によって洗浄されない部分に取り付けることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項に記載した鋼製橋梁の部分防食方法。
【請求項5】
表面の腐食が予測される鋼製主桁を備えた鋼製橋梁であって、
前記鋼製主桁の表面に取り付けられ、且つ前記鋼製橋梁の表面から突出する付加部材を備え、
前記付加部材は、当該付加部材が取り付けられた表面を、所定腐食度合い以上の腐食が予測される高腐食部分と、前記所定腐食度合い未満の腐食が予測される低腐食部分に区分し、
前記高腐食部分のみが防食塗装されていることを特徴とする鋼製橋梁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−308846(P2008−308846A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156349(P2007−156349)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】