説明

錠前

【課題】従来のキーでは施解錠操作ができない錠前であって、これを施解錠するための新たなキーで、旧構造の錠前も支障なく施解錠することができるものを提供する。
【解決手段】錠前は、錠1とキー6とからなる。鍵孔2aを有する前面板2の後方にラッチ軸3が配置される。ラッチ軸3に、係合部4と、それの前端4aから前方へ突出するガイド棒部5とが設けられる。ラッチ軸3の係合部4は、施錠方向当接面4cと解錠方向当接面4bとを有する。キー6の軸7は、筒部38を先端側に有すると共に、それの外周に張り出し、かつ筒部8の先端よりも軸方向後方へ突出する係合突起9を有する。軸7の先端がラッチ軸3の係合部4の前面4aに当接するまで鍵孔2a内へ挿入した状態で、右または左へ回転させると、係合突起9がラッチ軸3のいずれかの当接面4b、4cに当接してラッチ軸3を回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
鉄道車両では、長年にわたり、共通の錠(忍び錠)が運転室ドア、配電盤ドア、その他に設置されており、共通の鍵により施解錠操作が行われている。本発明は、このような錠と鍵からなる錠前に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両等で用いられる忍び錠の一例を図6に示す。図6において、錠31は、鍵孔32aを有する前面板32の後方に配置されるラッチ軸33を有する。ラッチ軸33は、前端側に係合部34を有し、さらにこの係合部34の前端34aから前方へ突出するガイド棒部35を具備する。
キー36の軸37は、錠31のガイド棒部35を受け入れる筒部38と、この筒部38の外周に張り出す係合突起39とを具備し、鍵孔32aに適合する断面形状を持つ。係合突起39の先端部は、筒部38の先端よりも軸方向後方へ突出する。
ラッチ軸33の係合部34は、軸周りに相互に90°離れた位置に、施錠方向当接面34bと解錠方向当接面34cとを有する。
キー36の係合突起39は、軸37を所定の解錠深さ位置まで(筒部38の先端がラッチ軸33の係合部34の前面34aに当接するまで)鍵孔32a内へ挿入した状態で、軸周りに右または左へ回転させると、ラッチ軸33のいずれかの当接面34b,34cに当接してラッチ軸33を回転操作できるように構成される。図において、ラッチ40はロック位置にある。キー36を挿入して、これを時計方向へへ90回転させると、係合突起39が、ラッチ軸33の当接面34cに当接してこれを回転させ、ラッチ40を非ロック位置に持ち来す。キー36は、そこから90°戻して鍵孔32aから抜き取る。
なお、出願人は先行技術文献を見出せなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、各所に設置される忍び錠が、長年にわたって共通の鍵により施解錠操作されるので、鍵の盗難や複製による不法解錠に対して脆弱である。そこで、セキュリティを高めるために、錠の構造を変更することが望まれている。しかしながら、将来にわたって、新構造の錠を設置していくとしても、既に設置されている多数の旧構造の錠に共用できるキーがないと、業務の運営に支障を来すおそれがある。
したがって、この出願に係る発明は、従来のキーでは施解錠操作ができない錠前であって、これを施解錠するための新たなキーで、旧構造の錠前も支障なく施解錠することができるものを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、この出願に係る発明の錠前は、錠1と、これを施解錠操作するキー6とからなる。鍵孔2aを有する前面板2の後方にラッチ10のラッチ軸3が配置される。ラッチ軸3の前端側に、係合部4と、この係合部4の前端4aから前方へ突出するガイド棒部5とが設けられる。ラッチ軸3の係合部4は、軸周りに相互に90°離れた位置に施錠方向当接面4cと解錠方向当接面4bとを有する。キー6の軸7は、錠1のガイド棒部5を受け入れる筒部38を先端側に有すると共に、この筒部8の外周に張り出し、かつ筒部8の先端よりも軸方向後方へ突出する係合突起9を有し、鍵孔2aに適合する断面形状を持つ。キー6の係合突起9は、軸7の先端がラッチ軸3の係合部4の前面4aに当接するまで鍵孔2a内へ挿入した状態で、軸周りに右または左へ回転させると、ラッチ軸3のいずれかの当接面4b、4cに当接してラッチ軸3を回転操作できるように構成される。ラッチ軸3のガイド棒部5の外周の一部に、半径方向に突出する規制突起11が設けられる。キー6の筒部8には、切欠部8aが形成され、ラッチ軸3の規制突起11を回避して所定の解錠深さ位置まで鍵孔内への軸7の挿入を可能とし、かつ90°の範囲で軸とラッチ軸との相対回転を可能とする。キー6の軸7の先端がラッチ軸3の係合部4の前面4aに当接するまで鍵孔2a内へ挿入した状態で、これを軸周りに右または左へ回転させると、係合突起9が、ラッチ軸3のいずれかの当接面4b、4cに当接してラッチ軸3を回転操作できる。
【発明の効果】
【0005】
この出願に係る発明によれば、従来のキーでは施解錠操作ができない錠前であって、これを施解錠するための新たなキーで、旧構造の錠前も支障なく施解錠することができるものを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明に係る錠前の概略的分解斜視図である。
【図2】本発明に係る錠前の一部を拡大した概略的斜視図である。
【図3】本発明に係る錠前のキーと従来の錠前のキーとを対比して示す一部の概略的斜視図である。
【図4】本発明に係る錠前に対するキーの適用可能性を説明する図である。
【図5】本発明に係る錠前と従来の錠前とを対比して示し、キーの適用可能性を説明する図である。
【図6】従来の錠前の概略的分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。
錠前は、錠1と、これを施解錠操作するキー6とからなる。鍵孔2aを有する前面板2の後方に、ラッチ10のラッチ軸3が配置される。ラッチ10、ラッチ軸3及びこれらを支持する図示しない支持枠は、同じく図示しない扉の内部や内側面等に固着される。
【0008】
ラッチ軸3の前端側に、これと同心の係合部4と、この係合部4の前端4aから前方へ突出する同心のガイド棒部5とが設けられる。
【0009】
ラッチ軸3の係合部4は、円柱の一部を切り欠いた形状で、軸周りに相互に90°離れた位置に、施錠方向当接面4cと解錠方向当接面4bとを有する。
【0010】
ラッチ軸3のガイド棒部5の外周の一部に、半径方向に突出する規制突起11が設けられる。図示の実施形態においては、ガイド棒部5の基部外周で、係合部4の前面4a上に規制突起11が設けられる。
【0011】
キー6の軸7は、錠1のガイド棒部5を受け入れる筒部38を先端側に有する。この筒部8の外周には、鍵孔2aに適合する断面形状を持つ係合突起9が張り出す。係合突起9は、筒部8の先端よりも軸方向後方へ突出する。
【0012】
キー6の筒部8には、切欠部8aが形成される。切欠部8aは、鍵孔2aにキー6を挿入したときに、ラッチ軸3の規制突起11との当接を回避するためのもので、これにより、所定の解錠深さ位置まで(筒部8の先端がラッチ軸3の係合部4の前面4aに当接するまで)軸7を鍵孔2a内へ挿入することを可能とし、かつ90°の範囲で軸7とラッチ軸3との相対回転を可能とする。
【0013】
図1において、ラッチ10はロック位置にある。キー6の軸7を、筒部38の先端がラッチ軸3の係合部4の前面4aに当接するまで鍵孔32a内へ挿入した状態で、これを時計方向へ90回転させると、係合突起9が、ラッチ軸3の当接面4cに当接してこれを回転させ、ラッチ10を非ロック位置に持ち来す。キー6は、そこから90°戻して鍵孔32aから抜き取る。ラッチ10は、図示しない保持機構によりロック位置又は非ロック位置に保持される。ラッチ10をロック位置に持ち来すには、その逆の操作を行う。
【0014】
図4において、ラッチ軸3に対して従来のキー36を用いて回転操作を試みると、軸37の先端が規制突起11に当接するので、それが係合部4の前面4aに当接するに至らない。このため、係合突起39の先端部が係合部4の当接面に掛からず、したがって、ラッチ軸3を回転させることができない。図5は、実線矢印で錠1,31へのキー6,36の適用可能性を示す。点線矢印は、適用不可能であることを示す。
【0015】
これに対して、キー6は、図5に実線矢印で示すように、規制突起11を持たない従来の錠31にも適用可能である。このため、本発明に係る錠前1を新たに設置した場合においても、既に各所に多数設置されている従来の錠前31に対してキー6を適用できるので、業務の遂行に支障を来すことがない。
【符号の説明】
【0016】
1 錠
2 前面板
2a 鍵孔
3 ラッチ軸
4 係合部
4a 前端
4b 解錠方向当接面
4c 施錠方向当接面
5 ガイド棒部
6 キー
7 軸
8 筒部
8a 切欠部
9 係合突起
10 ラッチ
11 規制突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵孔を有する前面板の後方にラッチ軸が配置され、ラッチ軸の前端側に係合部と、この係合部の前端から前方へ突出するガイド棒部とを具備する錠と、
この錠の前記ガイド棒部を受け入れる筒部を先端側に有し、この筒部の外周に張り出しかつ筒部の先端よりも軸方向へ突出する係合突起を有し、前記鍵孔に適合する断面形状を持つ軸を有するキーとからなり、
前記ラッチ軸の係合部は、軸周りに相互に90°離れた位置に施錠方向当接面と解錠方向当接面とを有し、
前記キーの係合突起は、前記軸を所定の解錠深さ位置まで前記鍵孔内へ挿入した状態で、軸周りに右または左へ回転させると、前記ラッチ軸のいずれかの当接面に当接してラッチ軸を回転操作できるように構成される錠前において、
前記ラッチ軸のガイド棒部の外周の一部に、半径方向に突出する規制突起が設けられ、
前記キーの筒部には、前記ラッチ軸の規制突起を回避して所定の解錠深さ位置まで前記鍵孔内への前記軸の挿入を可能とし、かつ90°の範囲で軸とラッチ軸との相対回転を可能とする切欠部が形成されることを特徴とする錠前。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−229591(P2012−229591A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100189(P2011−100189)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000108708)タキゲン製造株式会社 (256)
【Fターム(参考)】