説明

錠剤処方物の賦形剤としての微結晶セルロースおよび糖アルコールの共処理物

優れた機能性特に高い緻密化性、低い滑沢剤影響度、および特に直打に用いられる錠剤処方物として理想的な候補者となる低い射出力のプロフィルを有する賦形剤であって、共処理した微結晶セルロースおよび少なくとも1つの糖アルコール例えばマンニトールの乾燥した粒状物からなり、微結晶セルロース対少なくとも1つの糖アルコールの比が99−1:1−99であり、少なくとも1つの糖アルコールが少なくとも4つの炭素原子を有し、1重量%のステアリン酸マグネシウムを含む共処理組成物の緻密化性対共処理組成物の緻密化性の比は1.9以下である。
【選択図面】図6

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤の製造に使用される組成物、特に錠剤のような固形投与物に関する。特に、本発明は、糖アルコール例えばマンニトールを有する共処理された微結晶セルロース(MCC)、および錠剤処方物中のその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
経口投与に好適な製薬組成物を小分けした投与物は、典型的なものとして錠剤のような固形投与物として投与されるのが都合がよい。1つ以上の治療用成分(通常「活性成分」、「活性製薬成分」または「API」とよばれる)に加えて、錠剤は賦形剤として知られている製薬上許容できる材料を含み、それらは、活性でも治療上の作用もないが、錠剤処方物に加えられて、活性成分の活性に関係なく特定の性質を付与する。
【0003】
錠剤の製造には、一般的に3つの方法がある。(1)直打(直接打錠)、(2)乾式顆粒法および(3)湿式顆粒法。直打では、錠剤(活性成分および賦形剤を含む)に含まれるべき1つ以上の粉末状の材料は、ともにブレンドされそして顆粒法のような中間の処理なしに直接打錠される。乾式顆粒法は、直接打錠用の混合物の流れの悪さまたはバルク密度の低さが直接打錠を妨げる場合に使用される。この方法は、成分を混合し、得られた混合物をロールで圧縮するかまたはスラッグし、粗い乾燥顆粒物を乾燥篩い分けまたは粉砕し、滑沢剤(lubricant)を添加しそして最後に滑沢剤添加顆粒を打錠することを含む。湿式顆粒法は、投与物のいくつかの成分またはすべての成分を混合し、次に混合した粉末に結合剤の溶液を添加して顆粒を得る。次に、湿った塊をふるいにかけ、そして例えばトレイ乾燥、流動床乾燥機、スプレイ乾燥機、無線周波数乾燥機、マイクロウエーブ乾燥機、真空乾燥機または赤外線乾燥機により乾燥する。
【0004】
直打は、湿式顆粒法よりも必要な単位操作が少ないため、より安価なプロセスである。この方法は、装置が少なく、動力の消費も低く、スペースをとらず、時間も短く、そして労力も少なくてすみ、錠剤の製造コストを低減できることを意味する。しかし、直打は、打錠する混合物が、製薬上許容できる錠剤の形成に必要な要求される物理的特性を有する場合に限られる。錠剤処方物が打錠されて錠剤を製造するため、処方物は、それら自体がこのようなやり方で処理される物理的性質を有しなければならない。他の条件のなかで、錠剤処方物は、自由に流動しなければならず、滑らかでなければならず、そして重要なことには、十分に結合して錠剤が打錠後互いに付着することなく、確実にそれぞれ別々でなければならない。
【0005】
錠剤は、打錠機で錠剤処方物へ圧力をかけることにより形成される。打錠機は、底部から臼中へ適合する下方の杵(パンチ)、および対応する形状および大きさを有しそして錠剤処方物が臼のくぼみを満たした後上方から臼のくぼみに入る上方の杵を含む。錠剤は、下方の杵と上方の杵とに加えられる圧力により形成される。臼中へ自由に流れこむ錠剤処方物の能力は、臼への均質な充填およびその源からの錠剤処方物の連続する移動が確実に行われるために、重要である。錠剤は、打錠後に臼から確実に射出されねばならない。典型的な例では、滑沢剤が錠剤処方物に添加されて臼への粘着を避けそして処方物を自由に流動させる。
【0006】
その固有の圧縮特性のために、微結晶セルロース(MCC)が、錠剤処方物中の賦形剤として広く使用されている。良好な結合性および崩壊性が、直打錠剤処方物に使用されたとき、微結晶セルロースにより得られる。しかし、微結晶セルロースは滑沢剤影響度(sensitivity)を有する。滑沢剤影響度とは、滑沢剤の添加による粉末中の可塑的に変形する粒子間の結合の低下をいい、それは錠剤の強さまたは硬度を低下させる。滑沢剤影響度とは、錠剤処方物の滑沢剤添加の圧縮性を1としたときの錠剤処方物の滑沢剤無添加の圧縮性の値である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
錠剤の製造は、直打法および高速マシンの導入により変化してきた。これら2つの開発により、流動性および圧縮性の点で賦形剤の機能性に関する要求が増してきている。従って、優れた機能性特に高い緻密化性(compactability)、低い滑沢剤影響度、および特に直打に用いられる錠剤処方物として理想的な候補者となる低い射出力のプロフィルを有する賦形剤が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、糖アルコールとともに共処理されたMCCが、MCCまたは糖アルコールが単独で使用されたとき、または物理的な混合物例えば乾燥ブレンドと組み合わされて使用されたときに比べて、固形の投与物例えば錠剤の製造にとり、良好な緻密化性および他の望ましい機能的な性質を有することを、驚くべきことに見いだした。
【0009】
1つの側面では、本発明は、微結晶セルロース(MMC)および少なくとも1つの糖アルコールの共処理された組成物であり、微結晶セルロース対少なくとも1つの糖アルコールの比は、99−1:1−99である。少なくとも1つの糖アルコールは、典型的な例では、少なくとも4つの炭素原子を有する。滑沢剤添加の組成物の緻密化性対滑沢剤未添加組成物の緻密化性の比は、滑沢剤添加組成物が約1%のステアリン酸マグネシウムを含むとき、1.9以下または1.8以下または1.6以下である。好ましい糖アルコールは、マンニトールである。
【0010】
共処理された組成物は、優れた機能性を有する。それは、共処理された組成物の個々の成分に比べて、単独でもまたは乾燥ブレンドとしても、高い緻密化性、低下した滑沢剤影響度および低い射出力プロフィルを有する。共処理された組成物は、活性成分に対して低い反応性を有する。これらの性質は、共処理された組成物を、1つ以上の活性成分を含む錠剤のような固形投与物にとって理想的な賦形剤にする。共処理された組成物は、直打により処理される錠剤処方物のための結合剤として特に有用である。
【0011】
他の側面では、本発明は、共処理された組成物の製造方法であり、その方法は、(a)微結晶セルロース、糖アルコールおよび所望によりpH変性剤の水性スラリーを形成し、そのスラリーは糖アルコールの溶解を確実に行う固体含量および温度を有する工程、そして(b)スラリーを乾燥する工程からなる。好ましいpH変性剤は、水酸化アンモニウムであり、好ましい乾燥法はスプレイドライである。
【0012】
他の側面において、本発明は、1つ以上の活性成分、本発明の共処理された組成物、所望により1つ以上の賦形剤および所望により1つ以上の滑沢剤を含む圧縮可能な錠剤処方物である。他の局面では、本発明は、錠剤処方物を圧縮することにより固形処方物を形成する方法である。なお他の側面では、本発明は、錠剤処方物を圧縮することにより製造される固形投与処方物である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1−A】MCC/マンニトールの共処理物を製造するのに使用されるプロセスを示す。
【図1−B】MCC/マンニトールの共処理物を製造するのに使用されるプロセスを示す。
【図2】MCC/マンニトールの共処理物の緻密化性に対する処理条件の影響を示す。
【図3】2%のステアリン酸マグネシウムを滑沢剤として添加した75%MCC/25%マンニトールの共処理ブレンドの充填プロフィルを示す。
【図4】2%のステアリン酸マグネシウムを滑沢剤として添加した50%MCC/50%マンニトールの共処理ブレンドの充填プロフィルを示す。
【図5】2%のステアリン酸マグネシウムを滑沢剤として添加した25%MCC/75%マンニトールの共処理ブレンドの充填プロフィルを示す。
【図6】マンニトール含量の関数としての2%ステアリン酸マグネシウムを滑沢剤として添加したMCC/マンニトールの共処理ブレンドの圧縮係数(緻密化性)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
文中において他のことが指示されていない限り、明細書および請求の範囲において、用語、活性成分、賦形剤、滑沢剤、糖アルコール、セルロース誘導体、pH変性剤および同様な用語は、またはこれらの材料の混合物を含む。文中において他のことが指示されていない限り、すべての%は重量%であり、そしてすべての温度は℃である。
(微結晶セルロース)
【0015】
微結晶セルロース(MCC)は、精製され部分的に解重合したセルロースであり、それは、種々のセルロース源、例えば木材、木材パルプ例えば漂白された硫酸パルプ、硫酸パルプ、木綿、フラックス、ヘンプ、靭皮繊維または葉の繊維、セルロースの再生物、大豆皮、とうもろこし皮またはナット皮の加水分解により得ることができる。それは、白色の無臭無味の比較的自由流動性の粉末であり、水、有機溶媒、希アルカリおよび希酸に不溶である。
【0016】
加水分解は、いくつかの周知の方法の任意のものにより達成される。一般に、繊維状植物からのパルプの形のセルロースの源好ましくはアルファ−セルロースの源は、鉱酸好ましくは塩酸により処理される。酸は、セルロースポリマー鎖のより無秩序な域を選択的に攻撃し、それによって、より結晶性の域が残り、それらは微結晶セルロースを構成する。MCCは、次に反応混合物から分離され洗浄されて副生成物を除く。一般に40−60重量%の水分を含む得られた含水の塊は、いろいろの名前でよばれ、加水分解されたセルロース、微結晶セルロース、微結晶セルロース含水ケーキまたは単にウエットケーキを含む。微結晶セルロースの製造は、米国特許2978446および3146168に開示されており、これらの記述は、本明細書に参考として引用される。
【0017】
微結晶セルロースは、Edward Mendell Co.Inc.からEMCOCEL(商標)の商品名で、そしてFMC Corp.からAVICEL(商標)として市販されている。粒子サイズ、密度および水分含量で変化するいくつかのグレードの微結晶セルロースが入手でき、例えばAVICEL(商標)PH−101、PH−102、PH−103、PH−105、PH−112、PH−113、PH−200、PH−301およびPH−302がある。
(糖アルコール)
【0018】
糖アルコールは、非環式または脂環式のポリオールを含むポリヒドロキシアルコールをいう。非環式アルコールは、一般式Cn+2(OH)を有する。典型的な糖アルコールは、例えばマンニトール、ソルビトール、キシリトール、ラクチトール、イソマルト、マルチトール、エリスリトールおよびスレイトールを含む。好ましい糖アルコールは、4−6炭素原子(すなわち、nが4−6である)、特に5−6炭素原子(nが5または6である)を含むものである。
【0019】
特に好ましい糖アルコールは、マンニトール[(C(OH))][(2R、3R,4R、5R)−ヘキサン−1,2,3,4,5,6−ヘキソール][CAS No.69−65−8]である。マンニトールは、非吸湿性であり、比較的低い粘度の溶液を生成し、そして比較的高い融点(約167−170℃)を有する。これらの性質は、水性の微結晶セルロース/マンニトールスラリーを容易にスプレイドライすることを可能にし、共処理微結晶セルロース/マンニトールを生成させる。
(共処理された組成物)
【0020】
共処理された組成物は、2つの成分、すなわち微結晶セルロースおよび少なくとも1つの糖アルコールを含む。2つの成分は、約99:1−1:99の微結晶セルロース:糖アルコールの比、典型的には約70:30−95:5、より典型的には約75:25−95:5の比で存在する。少量の水も存在する。水分含量は、約0.5−約15重量%、好ましくは約2.5−約6重量%、そして最も好ましくは約3.0−約5重量%である。
【0021】
共処理された組成物は、約20−約1000ミクロンの平均粒子サイズを有する粒状の組成物である。平均粒子サイズは、典型的な例では、約50−約200ミクロン、より典型的な例では約70−約120ミクロン、そしてさらに典型的な例では80−110ミクロン、例えば約90ミクロンである。
【0022】
共処理された組成物のルーズかさ(loose bulk)密度(LBD)は、典型的な例では、0.60g/cm以下である。例えば、70:30−95:5の微結晶セルロース:マンニトールの成分比を有する共処理された組成物のルーズかさ密度は、典型的な例では、約0.35−0.45g/cmである。pHは約3.0−約8.5、好ましくはほぼ中性である。
【0023】
共処理された組成物は、微結晶セルロースと糖アルコールとの対応する乾燥ブレンドには見られない望ましい性能を有する。その理由は、十分には理解されていない。どんな理論または説明に束縛されないが、共処理は、2つの必須成分が互いに緊密な結合をしている組成物を生ずるように思われる。微結晶セルロースと糖アルコールとのこの緊密な結合または混合は、これら材料の簡単な乾燥混合により達成できず、むしろそれらが、スラリーの乾燥前に水性のスラリーまたは混合物として共処理されることを要する。
【0024】
共処理された組成物の緻密化性は、市販されている微結晶セルロースのそれと好ましく比較される。緻密化性は、錠剤の硬度(ときには、引張り強さともよばれる)対圧縮力のプロットの傾斜として定義される。賦形剤の緻密化性は、高いことが望ましく、それは賦形剤が低いレベルで、錠剤の性能の特徴を損なうことなく、多量の活性成分を同時に存在させながら打錠に使用できるからである。
【0025】
錠剤に一般に要求される硬度すなわち引張り強さは約2MPaである。共処理された組成物について測定された硬度の値は、典型的な例ではこの値より大きいが、これらの値は未処方の組成物のみを含む圧縮錠剤について測定された。他の成分を含む処方された錠剤は、いくらか低いことが予想される。
【0026】
共処理された微結晶セルロース/糖アルコール組成物は、低い滑沢剤影響度を有し、そしてその圧縮プロフィルは、滑沢剤を使用したとき、比較的影響されない。逆に、微結晶セルロースに関する圧縮プロフィルは、それ自体、大きな滑沢剤影響度を示し、そしてより高い圧縮力が、同等な滑沢剤のない錠剤と同じ錠剤の硬度を生ずるのに要求される。多くの場合、単に圧縮力を上げることは、滑沢剤の添加による緻密化性の低下を補うものではない。共処理された組成物の流れ特性は良好であり、従って高速直打打錠機にとり理想的である。
【0027】
滑沢剤影響度は、組成物の滑沢剤のある場合の緻密化性を1としたときの組成物の滑沢剤のない場合の緻密化性として定義される。滑沢剤添加の組成物が典型的な例として約1%のステアリン酸マグネシウム滑沢剤を含む場合、滑沢剤無添加の共処理された微結晶セルロース/糖アルコール組成物の滑沢剤影響度は1.9以下、典型的な例では1.8以下である。
(共処理)
【0028】
共処理された組成物を製造する方法は、微結晶セルロースおよび糖アルコール例えばマンニトールの十分に分散された水性スラリーを形成することを含む。スラリーは、微結晶セルロースの製造中の加水分解工程で形成された微結晶セルロース含水ケーキを使用することによって、または乾燥した微結晶セルロースを再スラリー化することにより形成できる。2つの成分の相対的な量はスラリーで調節されて、完成した乾燥共処理組成物中で望まれる特定の比を生ずる。或る場合では、せん断の低い条件下でスラリーを形成するのが望ましい。
【0029】
次に、水性のスラリーを、それから水を除くことにより乾燥して共処理された組成物を得る。好ましくは、スラリーは、当業者に周知であるスプレイドライ技術を用いて乾燥される。しかし、他の乾燥技術例えばフラッシュ乾燥、リング乾燥、トレイ乾燥、真空乾燥、無線周波数乾燥およびマイクロウエーブ乾燥も使用できる。
【0030】
微結晶セルロースは、好ましくは、従来の微結晶セルロース製造工程からのウエットケーキである。ウエットケーキは、従来の微結晶セルロースを自由流動性粉末として生成する、まだ乾燥されていない微結晶セルロースである。水性スラリー中で使用される微結晶セルロースの粒子サイズは、従来の微結晶セルロース製造で生ずるものである。ウエットケーキのpH調節は、糖アルコールの添加中またはその前後であるが、好ましくは従来のMCC製造工程の代表例として、その前である。
【0031】
これら2つの成分の水性スラリーは、いくつかの方法の任意のもので製造できる。糖アルコールは、固体としてまたは水中に予め溶解して、微結晶セルローススラリー中に導入される。典型的な例として、固体の濃度は、約5−25重量%の微結晶セルロース、好ましくは約10−20重量%の微結晶セルロースである。添加されるべき糖アルコールの精密な量は、スラリーの微結晶セルロース含量、および共処理される組成物中で望ましい2つの成分の比に依存する。もしより希釈されたスラリーが望まれるならば、水も添加される。
【0032】
水性スラリーの全固体含量は、好ましくは全スラリー重量に基づいて少なくとも10重量%であり、そしてより好ましくは少なくとも20重量%である。乾燥工程中に除かれねばならない水の量が低下するので、高い固体含量が望まれる。水性スラリー中の固体含量の上限は、典型的な例では、使用される乾燥装置の操作条件により決定される。好ましいスプレイドライでは、20−30重量%の固体含量が、容易に処理される水性スラリーの代表的なものである。約10−80℃の周囲または高いスラリー温度が使用でき、そしてより高いスラリー温度も、或るタイプの乾燥装置では望ましい。
【0033】
良く分散した水性スラリーの乾燥は、好ましくはスプレイドライにより達成される。従来のスプレイドライ装置が使用できる。当業者に周知の操作条件が、このプロセスのスプレイドライ工程に適用できる。乾燥機の出口温度が普通通りに使用されて、共処理された組成物中に得られる残存水分レベルをコントロールする。
【0034】
乾燥の量およびタイプ、スラリー中の微結晶セルロースおよび糖アルコールの濃度に応じて、共処理された組成物は、異なる粒子サイズ、密度、pHおよび水分含量を有する。この理由のため、共処理工程における乾燥工程が特に重要であり、そしてスプレイドライが乾燥工程を実施するのに好ましい方法であるということになる。
【0035】
十分に分散した水性スラリーをスプレイドライすると、0.60g/cm以下、好適には0.20−0.60g/cmのルーズかさ密度を有する共処理組成物を生成する。これは、原料の乾燥ブレンドまたは対応する湿潤顆粒の何れかに比べて、滑沢剤の存在下好ましい組成物を生成する。ルーズかさ密度は、0.55g/cmより低い、0.50g/cmより低い、0.45g/cmより低い、0.40g/cmより低い、0.35g/cmより低い、0.30g/cmより低い、そして0.25g/cmより低い。
【0036】
乾燥操作から得られる共処理組成物は、自由流動性の粒状固体である。生成物の粒子サイズは、スプレイ乾燥機の関数であり、それは、例えばスプレイドライ中の供給速度およびアトマイザーディスク速度の調節のように当業者によりコントロールできる。
(固形投与処方物)
【0037】
固形投与物は、本発明の共処理組成物、1つ以上の活性成分、所望により1つ以上の製薬上許容できる賦形剤、および所望により1つ以上の製薬上許容できる滑沢剤を含む。典型的な錠剤処方物は、1つ以上の活性成分、少なくとも1つの賦形剤(もし存在するならば)および少なくとも1つの滑沢剤(もし存在するならば)を、従来の製薬技術に従って混合することにより製造される。直打により固形の投与物すなわち錠剤を製造するには、錠剤処方物は、必要な物理学的特性を有しなければならない。とりわけ、錠剤処方物は、自由流動性でなければならず、滑らかでなければならず、そして重要なことに、固形投与物が圧縮後互いに付着しないことを確実にするに足る十分な緻密化性を有しなければならず、そして次の操作例えばハンドリング、コーティングおよび包装を行うのに十分な強さを有しなければならない。
【0038】
錠剤は、打錠機で錠剤処方物にかけられる圧力により形成される。打錠機は、底から臼中に適合する下方の杵、および錠剤処方物が臼のくぼみを満たした後に上方から臼のくぼみに入る対応する形状および大きさを有する上方の杵を含む。錠剤は、下方および上方の杵にかけられる圧力により形成される。臼に自由に流れ込む錠剤処方物の能力は、臼の均質な充填および錠剤処方物の源例えば供給ホッパーからの原料の連続する移動を確実にするために、重要である。錠剤処方物の滑らかさは、圧縮された原料が杵の表面から容易に離れなければならないために、固形投与物の製造では最も重要である。錠剤は、また圧縮後臼から確実に射出されねばならない。
【0039】
活性成分は必ずしもこれらの性質を有しないため、錠剤の処方法は、これらの望ましい特性を錠剤処方物へ付与するために開発されてきた。典型的な例では、錠剤処方物は、1つ以上の添加物すなわち賦形剤を含み、それらは望ましい自由流動性、滑らかさおよび結合性を錠剤処方物に付与する。
【0040】
賦形剤は、活性成分の化学的劣化および/または物理的劣化を加速してはならず、生物学的アベイラビリティーに干渉してはならない。賦形剤は、生理学的に不活性でなければならず、錠剤の崩壊または活性成分の溶解に決して干渉してはならない。それらは、低い滑沢剤影響度を示すべきであり、そして許容できる活性成分の均質性を確実なものにすべきである。典型的な賦形剤は、崩壊剤、流動性改善剤(glidant)、充填剤(filler)、希釈剤、着色料、香料、安定剤および滑沢剤からなる群から選ばれる。賦形剤および錠剤処方物の組成の選択は、活性成分、処方物中の活性成分の量、錠剤のタイプ、錠剤処方物および得られる錠剤の両者の望ましい特性および使用される製造方法に依存する。乾燥粒状処方物のための賦形剤は、錠剤へ顆粒を圧縮できる可能性のある良好な再緻密化性および希釈を有しなければならない。これらは、医薬が非常に短時間でそれにより溶解する急速な放出、および飲み下した経口投与錠剤の殆どを含む瞬時の放出および変性された放出を含む。
【0041】
製薬上許容できる賦形剤は、当業者に周知であり、そして例えば米国特許6936277および6936628に開示されており、その記述は本明細書において参考として引用される。MCCは、錠剤の緻密化性を改善するために添加される。賦形剤例えば希釈剤、結合剤、流動性改善剤および滑沢剤は、処理助剤として添加されて打錠の操作をさらに有効にする。なお他のタイプの賦形剤は、錠剤の崩壊速度を加速または遅延させ、錠剤の味を改善し(例えば甘味剤)、または錠剤に色彩またはフレーバーを付与する。
【0042】
滑沢剤は、典型的な例では、加えられて、錠剤製造中杵に処方物が固着することを防ぐ。通常使用される滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸カルシウムを含む。滑沢剤は、典型的な例では、処方物の約0.5−約3.0重量%を占める。抗被着剤は、杵の面および臼の壁への錠剤処方物の固着を防ぐ。それらは、固着が問題なときに、ステアリン酸マグネシウムと組み合わせて使用される。通常使用される抗被着剤は、とうもろこし澱粉およびタルクである。
【0043】
希釈剤、充填剤またはバルク(bulking)剤は、錠剤を実際的なサイズにするために、打錠される原料のかさ重量を増すことを目的としてしばしば添加される。これは、活性成分の投与量が比較的少ない場合に、しばしば必要になる。典型的な充填剤は、乳糖、リン酸2カルシウム、炭酸カルシウム、粉末状セルロース、デキストレート、マンニトール、澱粉、アルファ化(pregelatinized)澱粉およびこれらの混合物を含む。糖アルコール例えばソルビトール、マンニトールおよびキシリトールも、特にチュアブル錠剤処方物において、充填剤として使用される。ソルビトールとマンニトールとの間の最も顕著な相違は、吸湿性および溶解性である。ソルビトールは、約65%の相対湿度の吸湿性であり、マンニトールは非吸湿性である。ソルビトールの水溶解度は、マンニトールより高い。
【0044】
結合剤は、1つ以上の粉末状原料に凝集性を付与するために添加される。通常使用される結合剤は、澱粉、微結晶セルロースおよび糖例えばしょ糖、グルコース、デキストロースおよびラクトースを含む。安定剤は、活性成分がそれで分解する速度を遅くする。典型的な安定剤は、抗酸化剤例えばアスコルビン酸である。崩壊剤は、錠剤が使用される環境(例えば消化器官)における許容できる溶解速度を確実に有するためにしばしば加えられる。崩壊剤は、錠剤および顆粒を活性成分および賦形剤の粒子へ破壊する。MCCおよび部分的にアルファ化した澱粉は、処方物中にしばしば使用されて圧縮および崩壊の機能の両者を行うが、超崩壊剤例えばクロスカルメロースナトリウム、ナトリウム澱粉グリコラートまたはクロスポビドンを加えることがしばしば必要となる。
【0045】
流動性改善剤は、錠剤処方物に使用されて流動性を改善する。それらは、湿式顆粒化された処方物よりむしろ乾燥ブレンドでしばしば使用される。粒子の形状およびサイズのために、流動性改善剤は、低濃度において流動性を改善する。それらは、乾燥した形の完成された錠剤処方物に混合される。最も普通に使用される流動性改善剤は、ステアリン酸アルカリ金属塩、コロイド状二酸化珪素(CAB−O−SIL(商標)、SYLOID(商標)、AEROSIL(商標))およびタルクである。
【0046】
望ましい特徴は、着色料(すなわち染料および顔料)、天然または人工の甘味料および香料により錠剤に付与される。表面活性剤ともよばれる湿潤剤も存在できる。錠剤は、またコーティングされうる。
【0047】
円形の錠剤のサイズは、典型的な例では、約50−500mgであり、そしてカプセルの形状の錠剤は、約200−1200mgである。しかし、本発明により製造される他の処方物は、他の用途または場所、例えば歯周腔、手術創および膣のような他の身体の腔に合うように好適に成形される。或る用途例えばチュアブル錠剤、制酸錠、膣用錠剤およびインプラントでは、錠剤は大きくできる。
【0048】
組成物は、またNRobe(商標)プロセスに好適に使用されて、固形の投与物を製造する。NRobe(商標)プロセスのための固形の投与物は、錠剤処方物または顆粒化処方物を軽く圧縮して粉末状の圧縮物を形成し、そして粉末状圧縮物をフイルムによりコーティングすることにより製造される。コーティングされた固形の投与物を形成する方法および装置は、WO 03/096963、2005/030115、2005/030116、2005/030379および2006/032828に開示されており、それらの記述はすべて本明細書に参考として引用される。
(工業上の応用)
【0049】
本発明の共処理された組成物は、1つ以上の活性成分を含む固形の投与物例えば錠剤のための理想的な賦形剤である。それらは、直打により製造される処方物のための結合剤として特に有用である。製薬/獣医薬の応用で主として使用されるが、このような打錠技術は、他の領域例えば農業、食品、化粧品および他の工業上の応用に使用できる。しばしば、本発明の共処理された組成物を含む錠剤中の1つ以上の活性成分の安定性は、微結晶セルロースおよび少なくとも1つの糖アルコールの同じ重量%の共処理されていない乾燥ブレンド(少なくとも1つの糖アルコールに対する微結晶セルロースの重量比が共処理組成物と同じである)を含む錠剤における1つ以上の活性成分の安定性よりも大きい。
【0050】
本発明の有利な性質は、本発明を説明するがそれを制限しない以下の実施例を参照して理解できる。
(実施例)
(用語)
【0051】
AVICEL(商標)PH−102:微結晶セルロース(FMC、Philadelphia,PA、米国)。ラクトース1水和物NF:(Foremost Farms,Sparta、WI、米国)。ステアリン酸マグネシウム:(Mallinckrodt、St・Louis、MO,米国)。PEARLITOL(商標)100SD:顆粒状マンニトール(100ミクロン)(Roquette Freres,Lestrem、フランス)。PEARLITOL(商標)300DC:顆粒状マンニトール(250ミクロン)(Roquette Freres,Lestrem、フランス)。PEARLITOL(商標)400DC:顆粒状マンニトール(360ミクロン)(Roquette Freres,Lestrem、フランス)。PEARLITOL(商標)500DC:顆粒状マンニトール(520ミクロン)(Roquette Freres,Lestrem、フランス)。PROSOLV(商標)90:珪素化微結晶セルロース(JRS Pharma、Patterson、NY、米国)。
(一般的な方法)
【0052】
実施例は、種々の微結晶セルロース/糖アルコール組成物の製造を示す。錠剤は、それぞれの組成物を用いて製造され、そして緻密化性、滑沢剤影響度および射出プロフィルについてテストされ、そしてMCCおよびマンニトールの単純な乾燥ブレンドおよび100%のMCC、マンニトールおよび他の共処理された賦形剤製品から製造されたコントロールから作られた錠剤と比較した。
【0053】
以下の実施例において、共処理された組成物は、ブレンドが分離した粉末状の組成物の簡単な乾燥混合により製造される同じ組成の対応するブレンドと比較される。LODおよびLBDは、それぞれ乾燥時損失およびルーズかさ密度である。USP 27(616)方法2(Scott体積計 ASTM B329−90)により測定されるルーズかさ密度は、固く締める(consolidation)(例えば振動)ことなく、ゆるく注がれた粉末の最低の密度(g/cm)である。緻密化性は、硬度の圧縮プロット対圧縮力の傾斜をいう。圧縮力(kN)は、圧縮圧(MPa)の代わりに示されている。しかし、すべての測定は同じ器具で行われたので、圧縮力および圧縮圧は、すべての測定において正比例している。
【0054】
滑沢剤影響度は、滑沢剤添加の圧縮性対滑沢剤無添加の圧縮性の比により定量化される。摩損性(friability)は、Vankel摩損計中の20錠の錠剤のバッチを使用して測定された。重量は、最初と5分後から30分間測定される。摩損性は、重量損失%として示される。崩壊時間は、37℃で脱イオン水中6錠の錠剤を用いてUSP法に従ってQC−21崩壊テストシステムを使用して測定する。
【実施例1】
【0055】
本実施例は、2つの異なる方法による共処理微結晶セルロース/糖アルコールの形成を示している。図1Aは、プロセス1すなわち低温低pH法を示す。それは、周囲温度の水を用い、そして酸MCCウエットケーキをマンニトール溶液に加えてMCCとマンニトールとの混合物(「MMCC」)を形成することを含み、該混合物は所望によりアンモニアにより中和される。得られるスラリー(「低温中性MMCC」)はスプレイドライされる。図1Bは、プロセス2すなわち高温中性pH法を示す。酸性のMCCウエットケーキは、70℃の水に加えられ、もし必要ならば、アンモニアで中和される。次に、70℃のマンニトール溶液を中和したMCCスラリーに添加する。得られたスラリー(「高温中性MMCC」)をスプレイドライする。
【0056】
これらの方法により製造された90%MCC/10%マンニトール組成物の圧縮プロフィルは、図2に示される。プロセス1および2により製造されたサンプルの緻密化性において顕著な相違は存在しない。
【実施例2】
【0057】
この実施例は、実施例1のプロセス1により製造された共処理MCC/糖アルコールサンプルの評価を示す。MCC(pHグレードウエットケーキ)およびマンニトール(USP/NFグレード)は、実施例1のプロセス1に記載されたように共処理された。サンプルを各バッチにおけるマンニトールのすべてを溶解するのに必要なバッチ固体含量により製造した(水中のマンニトール溶解度、pH約5.2、25℃で固体量約18%)。6つのサンプルをつくり、そして標準のMCC操作条件を用いて、2.44M(8ft)のBowen乾燥機でスプレイドライした。入口温度198−232℃、出口温度82−118℃。サンプルは、3.7(未中和)および5.8(NHOHによりpH8へ中和)の2つのpHレベルで、25%、50%および75%のマンニトールで製造された。サンプルの物理的性質は、表1に要約される。
【0058】
【表1】

【実施例3】
【0059】
MCC/マンニトールの共処理物の5つの追加のサンプルが、実施例2に記載されたように製造された。サンプルは、pH6.0で、0,5,10,15および20%のマンニトールを用い製造された。サンプルの物理的な性質は、表2に要約される。
【0060】
【表2】

【実施例4】
【0061】
滑沢剤影響度の低下に必要なマンニトールの最低のレベルを知るために、MCC/マンニトールの共処理物の3つの追加のサンプルを実施例2に記載したように製造した。サンプルは、pH6で、0.5、1.0および2.5%のマンニトールを用い製造された。サンプルの物理的性質を表3に要約する。
【0062】
【表3】

【実施例5】
【0063】
この実施例は、滑沢剤添加または滑沢剤無添加のMCC/マンニトールの共処理物の性質を対応するMCC/マンニトールブレンドのそれらと比較する。
【0064】
実施例1により製造されたMCC/マンニトールの共処理物の緻密化性および滑沢剤影響度を、対応するブレンドのそれと比較した。滑沢剤のない1.5kgのブレンドは、MCCおよびマンニトールをV形ブレンダーで4分間混合することにより製造された。ブレンドおよび共処理組成物を、2%のステアリン酸マグネシウムとともにV形ブレンダーで2分間混合することにより滑沢剤添加とした。各バッチを、Instrumented Stokes 512打錠機を用いて、1.1cm(7/16インチ)(直径)の標準臼(直角取付け)により100mgの錠剤として打錠した。硬度は、Schleuniger 6D硬度計により測定した。実施例5の打錠の結果は表4に要約される。マンニトール50%および75%の共処理組成物は、滑沢剤の添加により、はじめて打錠できた。マンニトール25%の共処理された組成物は、滑沢剤の添加の有無に関係なく打錠できた。
【0065】
表4Aおよび図3は、2%のステアリン酸マグネシウムを添加されないかまたは添加された、共処理された75%MCC/25%マンニトールの圧縮プロフィルおよびブレンドされた75%
MCC/25%マンニトールの圧縮プロフィルを示す。図3から分かるように、滑沢剤のない共処理75%MCC/25%マンニトールは、ブレンドされた75% MCC/25%マンニトールより僅かに大きい硬度を有し、そして滑沢剤を添加されたMCC/マンニトールの共処理物は、対応する滑沢剤添加のブレンドより常に優れた硬度を示した。
【0066】
【表4A】

【0067】
表4Bおよび図4は、2%のステアリン酸マグネシウムを添加した、共処理50%MCC/50%マンニトールの圧縮プロフィルおよびブレンドされた50%MCC/50%マンニトールの圧縮プロフィルを示す。図4から分かるように、滑沢剤添加のMCC/マンニトールの共処理物は、対応する滑沢剤添加ブレンドよりも常に優れた硬度を示した。
【0068】
【表4B】

【0069】
表4Cおよび図5は、2%のステアリン酸マグネシウムを添加した、共処理25%MCC/75%マンニトールの圧縮プロフィルおよびブレンドされた25%MCC/75%マンニトール(PEARLITOL(商標)400DC)の圧縮プロフィルを示す。図5から分かるように、滑沢剤添加MCC/マンニトールの共処理物は、対応する滑沢剤添加ブレンドよりも常に優れた硬度を示した。
【0070】
【表4C】

【0071】
ステアリン酸マグネシウムを滑沢剤として用いた3つの異なる粒子サイズのマンニトールの圧縮プロフィルを表4Dに示す。ステアリン酸マグネシウムを滑沢剤として用いたMCCの圧縮プロフィルは表4Eに示される。
【0072】
【表4D】

【0073】
【表4E】

【0074】
表5Aは、MCC/マンニトールの共処理物および対応するブレンドの緻密化性の比を示す。圧縮係数または緻密化性は、錠剤の硬度対圧縮力の曲線の傾斜である。
【0075】
【表5A】

【0076】
滑沢剤添加MCC/マンニトールの共処理物の緻密化性は、25%/75%、50%/50%および75%/25%のマンニトール/MCCの重量比についてマンニトール/MCCの対応する滑沢剤添加ブレンドのそれよりも遙かに大きい。MCC/マンニトールの共処理物は、従って、ブレンドされたMCC/マンニトールより良好な滑沢剤抵抗性を有するようにみえる。1%のステアリン酸マグネシウムおよび2%のステアリン酸マグネシウムを添加されたとき、MCC/マンニトールの共処理物とMCC/マンニトールのブレンドとの間には、緻密化性で殆ど2倍の差がみられる。
【0077】
25%のマンニトールにおいて、MCC/マンニトールの共処理物の緻密化性は、2%の滑沢剤の添加により顕著には影響されないが、対応するブレンドの緻密化性は、2%の滑沢剤の添加により顕著に低下した。これは表5Bに示される。
【0078】
【表5B】

【0079】
2%のステアリン酸マグネシウムを滑沢剤として添加した25%マンニトール/75%MCC共処理原料では、滑沢剤添加の緻密化性を1としたとき滑沢剤無添加の緻密化性(滑沢剤影響度)は1.03であった。25%マンニトール/75%MCCのブレンドでは、滑沢剤影響度は2.02であった。
【0080】
参考原料(100%マンニトールおよび100%MCC)の圧縮係数を表6に要約する。PEARLITOL(商標)DCの緻密化性に対する粒子サイズの影響は、顕著でない。
【0081】
【表6】

【実施例6】
【0082】
この実施例は、MCC/マンニトールの共処理物が、ブレンドされたMCC/マンニトールおよびAVICEL(商標)PHより遙かに優れた滑沢剤抵抗性を示すこと、そしてMCC/マンニトールの共処理物が、滑沢剤添加の下でテストされたとき、対応するブレンドよりも少なくとも100%高い緻密化性を示すことを示す。
【0083】
MCC/マンニトールの共処理物およびブレンドされたMCC/マンニトールは比較されて(両者とも滑沢剤添加および滑沢剤無添加)、低いマンニトール含量の影響を評価した。サンプルは、実施例5に記述したように製造された。以下の原料を用いた。0%マンニトール/100%MCC、5%マンニトール/95%MCC、10%マンニトール/90%MCC、15%マンニトール/85%MCC、20%マンニトール/80%MCC、およびPEARLITOL(商標)100 SD(100%マンニトール)。ブレンドおよび共処理の組成物の圧縮係数は、表7Aおよび7Bに要約される。
【実施例7】
【0084】
この実施例は、マンニトールが5%より少ないとき、MCC滑沢剤影響度に対する共処理マンニトールの保護作用がマンニトール含量の低下とともに低下することを示す。
【0085】
MCC/マンニトールの共処理物およびブレンドされたMCC/マンニトールを比較して(両者とも滑沢剤添加および滑沢剤無添加)、実施例5のブレンド、滑沢剤添加および打錠の方法を用いて、非常に低いマンニトール含量(5%より少ない)の影響を評価した。以下の原料を使用した。0.5%マンニトール/99.5%MCC、1%マンニトール/99%MCC、2.5%マンニトール/97.5%MCC。実施例5−7で得られた共処理およびブレンドされたマンニトール/MCCの圧縮係数を表7Aおよび7Bに要約する。0%マンニトール(100%MCC)および100%マンニトール(0%MCC)について、「共処理」および「ブレンド」の値は、これらの組成物のそれぞれが他の成分を含まないため、同じである。
【0086】
【表7A】

【0087】
【表7B】

【0088】
図6は、マンニトール含量の関数として、2%ステアリン酸マグネシウムを滑沢剤として添加したMCC/マンニトールの共処理物およびブレンドされたMCC/マンニトールの圧縮係数(緻密化性)を示す。表7A、7Bおよび図6から分かるように、滑沢剤添加のMCC/マンニトールブレンドの緻密化性はマンニトール含量では顕著に影響されない。0%マンニトール/100%MCCは、滑沢剤添加の下でテストされたとき、ACICEL(商標)PH 102よりも充填されない。MCC/マンニトールの共処理物の緻密化性は、対応するブレンドおよび滑沢剤添加MCCサンプルのそれより遙かに大きかった。MCC/マンニトールの共処理物の緻密化性は、マンニトールの5−25%(w/w)の範囲内でマンニトール含量により影響されなかった。
【0089】
MCC/マンニトールの共処理物およびブレンドされたMCC/マンニトールに関するマンニトール含量の関数としての滑沢剤影響度を表8に示す。50%マンニトール/50%MCCおよび75%マンニトール/25%MCCの滑沢剤無添加ブレンドは打錠出来ず、そのためこれらの材料についての滑沢剤影響度は測定できなかった。
【0090】
【表8】

【0091】
表8から分かるように、マンニトールは、それが共処理混合物に存在するとき、微結晶セルロースの滑沢剤影響度を低下させるのに遙かに有効である。
【実施例8】
【0092】
MCC/マンニトールの共処理物の滑沢剤の量を減らす性質に対する滑沢剤含量の影響を評価するために、さらなるテストが行われた。0%マンニトール/100%MCC、5%マンニトール/95%MCC(約50ミクロンの粒子サイズ)、10%マンニトール/90%MCC(約90ミクロンの粒子サイズ)、25%マンニトール/75%MCC(約50ミクロンの粒子サイズ)、PROSOLV(商標)90、AVICEL(商標)PH−102の緻密化性を、実施例5のブレンド、滑沢剤添加および打錠の方法を用いて、使用される滑沢剤の量を変えることにより測定した。結果を表9に示す。
【0093】
【表9】

【0094】
2%ステアリン酸マグネシウム添加によるPROSOLV(商標)90の滑沢剤影響度は1.67である。
【実施例9】
【0095】
射出力は、計器付き打錠機で打錠することにより測定された。種々のマンニトール含量を有するサンプルに関する射出力データは、10kNの圧縮力で比較され、そして表10に要約された。
【0096】
【表10】

【0097】
マンニトール含量が15−25%であるとき、MCC/マンニトールの共処理物の射出力は、滑沢剤添加の下でテストされたとき、PROSOLV(商標)およびAVICEL(商標)PH 102のそれよりも低かった。低い射出力は、打錠で望ましい。
【実施例10】
【0098】
実施例5のブレンド、滑沢剤添加および打錠の方法を用いて、AVICEL(商標)PH 102およびPROSOLV(商標)90に対する30%MCC/マンニトールの共処理物(マンニトール/MCC:5%/95%および20%/80%)を含む標準の乳糖からつくられた錠剤の緻密化性について、比較テストを行った。これは、本発明の組成物の希釈可能性を示す。実施例10の打錠の結果を表11に要約する。
【0099】
【表11】

【0100】
MCC/マンニトールの共処理物により製造された処方物の緻密化性は、AVICEL(商標)PH 102およびPROSOLV(商標)90によりつくられた処方物のそれよりも良好である。2%ステアリン酸マグネシウムを滑沢剤として添加した標準の乳糖における30%の使用レベルで、MCC/マンニトールの共処理物は、AVICEL(商標)PH 102およびPROSOLV(商標)90より遙かに圧縮可能であった。20%マンニトール共処理組成物は、2%ステアリン酸マグネシウムを滑沢剤として添加した標準の乳糖の30%使用レベルで、5%マンニトール製品よりも圧縮可能であった。
【実施例11】
【0101】
AVICEL(商標)PH 102、およびMCC90対マンニトール10の共処理物の緻密化性に対する圧縮速度の影響を評価するために、これらの材料を1%のステアリン酸マグネシウムの滑沢剤として添加して、100,150、200、250、300mm/sの速度で圧縮シミュレーターにより圧縮した。圧縮速度は、粉末を圧縮する上方の杵の垂直速度に相当する。100mm/sの速度は、Bタイプの器具を備えた開発用打錠機の打錠速度(または滞留時間)に類似している。最高の速度すなわち300mm/sは、現在の高速製造打錠機に等しい。
【0102】
【表12】

【0103】
表12から分かるように、MCC/マンニトールの共処理物は、高速における緻密化性の低下にもかかわらず、圧縮速度に関係なくAVICEL(商標)PH 102微結晶セルロースよりも圧縮可能である。
【実施例12】
【0104】
比較テストが、実施例5のブレンド、滑沢剤添加および打錠の方法を用いて、50ミクロンおよび90ミクロンの粒子サイズを有するMCC/マンニトールの共処理物(マンニトール/MCC、10%/90%)、AVICEL(商標)PH 101,AVICEL(商標)PH 102およびAVICEL(商標)PH 105と顆粒状アセトアミノフェンとから製造された錠剤の緻密化性について行われた。
【0105】
錠剤処方物は、50重量%の顆粒状のアセトアミノフェンおよび0.5重量%のステアリン酸マグネシウムを含んだ。表13および14は、0.5%のステアリン酸マグネシウムを滑沢剤として添加した顆粒状アセトアミノフェンおよび結合剤/充填剤から製造された錠剤の圧縮プロフィルを示す。
【0106】
【表13】

【0107】
表13から分かるように、50ミクロンのMCC/マンニトールの共処理物により製造された処方物の緻密化性は、AVICEL(商標)PH 101により製造された処方物のそれよりも36%良好である。AVICEL(商標)PH 105の処方物は、AVICEL(商標)PH 105が、テストされた全結合剤のなかで、最小の粒子サイズおよび最大の表面積を有するため、最良の緻密化性を有する。
【0108】
【表14】

【0109】
表14から分かるように、90ミクロンのMCC/マンニトールの共処理物により製造された処方物の緻密化性は、AVICEL(商標)PH 102により製造された処方物のそれよりも55%優れている。AVICEL(商標)PH 102およびMCC/マンニトールの共処理物の両者にとり、小さい粒子サイズは、APAP処方物の緻密化性を増大する。
0.5%のステアリン酸マグネシウムを滑沢剤として添加した50%顆粒状のAPAP(アセトアミノフェン)中の結合剤の錠剤の5分間摩損性(40rpm)は、表15に要約される。
【0110】
【表15】

【0111】
表15から分かるように、90ミクロンの共処理10%マンニトール/90%MCCの錠剤の摩損性は、AVICEL(商標)PH 102錠剤のそれより低い。
【実施例13】
【0112】
錠剤の崩壊時間は、脱イオン水中37℃で評価された崩壊浴でテストされた。表16は、AVICEL(商標)PH 102から製造された錠剤、および90ミクロンの共処理10%マンニトール/90%MCCから製造された錠剤の崩壊データを示す。各錠剤は、0.5%のステアリン酸マグネシウムを滑沢剤として添加された。
【0113】
【表16】

【0114】
表17は、AVICEL(商標)PH 102から製造されたリン酸2カルシウム(DCP)錠剤と粒子サイズ90ミクロンの共処理10%マンニトール/90%MCCから製造されたリン酸2カルシウム(DCP)錠剤との崩壊データを示す。各錠剤は、2%のステアリン酸マグネシウムを滑沢剤として添加された。
【0115】
【表17】

【0116】
表16および17から分かるように、共処理10%マンニトール/90%MCCは、AVICEL(商標)PH 102よりも早く崩壊した。
【0117】
MCC/マンニトールの共処理物は、優れた滑沢剤減少効果を示し、そしてMCCよりも固い、摩損することなくそして崩壊の早い錠剤を生成する。MCC/マンニトールは、またMCCに比べて、より薄い錠剤を生成できる。
【0118】
本発明を記述したが、本発明者は、以下のことおよびそれらの均等物を請求の範囲とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共処理した微結晶セルロースおよび少なくとも1つの糖アルコールの乾燥した粒状物からなり、微結晶セルロース対少なくとも1つの糖アルコールの比が1−99:99−1であり、少なくとも1つの糖アルコールが少なくとも4つの炭素原子を有し、そして1重量%のステアリン酸マグネシウムを含む共処理組成物の緻密化性対共処理組成物の緻密化性の比が1.9以下であることを特徴とする共処理組成物。
【請求項2】
1重量%のステアリン酸マグネシウムを含む共処理組成物の緻密化性を1としたときの共処理組成物の緻密化性が1.8以下である請求項1の共処理組成物。
【請求項3】
粒状物の平均粒子サイズが約50−約200ミクロンである請求項1または2の共処理組成物。
【請求項4】
少なくとも1つの糖アルコールが5または6炭素原子を有する請求項1−3の何れか1つの項の共処理組成物。
【請求項5】
少なくとも1つの糖アルコールがマンニトールである請求項4の共処理組成物。
【請求項6】
微結晶セルロース対少なくとも1つの糖アルコールの比が約70:30−95:5である請求項1−5の何れか1つの項の共処理組成物。
【請求項7】
微結晶セルロース対少なくとも1つの糖アルコールの比が約75:25−約90:10である請求項6の共処理組成物。
【請求項8】
組成物のルーズかさ密度が約20−0.60g/cmである請求項1−7の何れか1つの項の共処理組成物。
【請求項9】
少なくとも1つの活性成分、少なくとも1つの製薬上許容できる賦形剤および請求項1−8の何れか1つの項の共処理組成物を含むことを特徴とする打錠可能な錠剤処方物。
【請求項10】
約0.5−約3.0重量%の滑沢剤をさらに含む請求項9の打錠可能な錠剤処方物。
【請求項11】
滑沢剤がステアリン酸マグネシウムである請求項10の打錠可能な錠剤処方物。
【請求項12】
請求項9−11の何れか1つの項の打錠可能な錠剤処方物を形成する工程、および打錠可能な錠剤処方物を打錠して錠剤を形成する工程からなることを特徴とする錠剤を製造する方法。
【請求項13】
請求項12の方法により製造されたことを特徴とする錠剤。
【請求項14】
少なくとも1つの活性成分の安定性が、微結晶セルロースおよび少なくとも1つの糖アルコールの同じ重量%の共処理されない乾燥ブレンドからなる錠剤中の少なくとも1つの活性成分の安定性より大きく、該乾燥ブレンドは、共処理組成物と同じ微結晶セルロース対少なくとも1つの糖アルコールの重量比を有する請求項13の錠剤。
【請求項15】
(a)微結晶セルロースと少なくとも1つの糖アルコールとの水性スラリーを形成する工程、ここで該スラリーは少なくとも1つの糖アルコールの溶解を確実に行う固体含量および温度を有する、
(b)スラリーを乾燥する工程
からなる請求項1−8の何れか1つの項の共処理組成物を製造する方法。
【請求項16】
水性スラリーが水酸化アンモニウムをさらに含む請求項15の方法。
【請求項17】
工程(b)がスプレイドライにより実施される請求項15または16の方法。

【図1−A】
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【図1−B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−507677(P2010−507677A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534667(P2009−534667)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/022685
【国際公開番号】WO2008/057267
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(391022452)エフ エム シー コーポレーション (74)
【氏名又は名称原語表記】FMC CORPORATION
【Fターム(参考)】