説明

録音再生装置

【課題】ノイズキャンセル機能と録音機能を1つの機器に共存させようとした場合、それぞれの機能用に各1つずつマイクが必要となり、計2つのマイクが必要となる。また、スピーカー近傍に録音用マイクのある環境で再生/録音を同時に行おうとすると録音したい音に再生音がノイズとして乗ってしまう。そのため、録音時には再生音楽をOFFする必要がある。
【解決手段】ノイズキャンセル用マイクと録音用マイクを共用することにより、通常2つ必要となるマイクを1つで共用する。さらに、録音時には再生音を逆位相に変換し録音マイクからの出力と足し合わせることによって、近傍のスピーカーから録音マイクに乗ってくる再生音を相殺する。これにより、再生音楽をOFFしなくてもスピーカーからのノイズを気にせず周囲の音を録音することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生時、周囲の音を集音し逆位相の信号に変換し、スピーカからの音声と足し合わせて周囲の騒音を低減させるノイズキャンセル再生機能と、録音時、音源からの音楽を逆位相に変換し、周囲の音と合成することによって騒音を低減させるノイズキャンセル録音機能を有するオーディオ機器などの電気製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ノイズキャンセル機能を有するオーディオ機器としては、音楽再生時に外部の音を取り込み、逆位相に変換し、スピーカからの出力音源と足し合わせて周囲の騒音を低減させるものが知られている。
【0003】
図3は従来の録音再生装置を示す。従来の録音再生装置はスピーカ304からマイク303までの電気音響特性と等価な等価回路301と、スピーカ304の出力音が集音されたマイク303の出力信号から等価回路301の出力信号を減算する除去回路302と、除去回路302の出力信号と録音出力された該信号とをミキシングするミキシング回路305とを設けている。この構成によりスピーカ304からマイク303までの音響特性を備える等価回路301に信号Tを入力すると信号Tのスピーカ音によるマイク出力と等価な信号が得られ、マイク出力信号より等価回路301の出力信号を除去回路302により減算すれば、音声Vのみとなり、スピーカ音を排除したミキシングができる。
【特許文献1】特開2000−59786号公報
【特許文献2】特開平1−300472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の録音再生装置では、録音用マイクがスピーカの近傍にある場合、音楽再生と外部音録音を同時に行おうとするとスピーカからの音楽が録音用マイクの出力に含まれてしまい、録音時のノイズとなってしまう。そのため、外部音録音を行う際には音楽再生をOFFしなければならないという課題があった。また、ノイズキャンセル機能と録音機能を1つの機器で使用する場合、ノイズキャンセル用マイクと外部音録音用マイクの2つが必要であった。
【0005】
本発明は上記の課題を解決するもので、録音時におけるスピーカからのノイズを低減し、再生音源のON/OFFを行うことなく両機能を同時に使用することを可能とするものである。
【0006】
また、ノイズキャンセル機能に使用するマイクと録音に使用するマイクを共用することにより、マイクの数を増やすことなく上記機能を実現することを可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の発明は、周囲の音を低減するノイズキャンセル機能を録音時/再生時に使用することを可能とした録音再生装置であり、本構成によって、再生録音切替スイッチ回路がOFFされている場合にはマイクから集音された外部音を逆相変換回路により逆位相に変換し、再生回路により再生された音源と足し合わせ、スピーカユニットから出力し、外部音からの雑音を低減し音源を再生できるという作用を有する。さらに、前記スイッチ回路がONされている場合には再生回路により再生された音源を逆相変換回路によって逆相に変換し、マイクから集音した音と足し合わせ、マイクの近傍にあるスピーカユニットからの雑音を低減し、再生回路による音源再生状態を維持したまま外部音を録音できるという作用を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の録音再生装置によれば、スイッチ1つで録音と再生の切替を行うことができ、音楽再生状態から外部音録音状態に切り換える際、音楽再生のON/OFFを行う必要がない。また、従来技術では2個必要であるマイクを1つで共用することができ、コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明のノイズキャンセル機能を有する録音再生装置を実施するための最良の形態について、図1を用いて詳細に説明する。
【0010】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における録音再生装置を示す。外部音を集音するためのマイク101、マイク101の近傍に配置されたスピーカユニット102、マイク101から集音した外部音の位相を反転させる第1の位相反転回路103、位相反転回路103により位相が反転した外部音と音源からの音楽を合成する第1の合成回路104、音源からの音楽の位相を反転させる第2の位相反転回路105、位相反転回路105により位相が反転した音楽とマイク101により集音した外部音と合成する第2の合成回路106、合成回路106により合成された音を録音するための録音回路107、音源からの音楽を再生するための再生回路108、録音/再生機能を切り換えるためのスイッチ回路109を設ける。
【0011】
かかる構成により、図1において、再生機能が使用される場合、スイッチ回路109はOFFされる。このとき、マイク101により集音された外部音信号Vは第1の位相反転回路103により位相が反転され、信号V’に変換される。この信号V’は第1の合成回路104によって、再生回路108により再生された音声信号Tと合成され、第1の合成回路104からは信号T+V’が出力される。合成回路104からの出力信号T+V’はスピーカユニット102から出力される際、外部音信号Vと合成され、人間の耳には外部音信号が除去された信号Tのみが伝達される。
【0012】
また、図1において録音機能が使用される場合、スイッチ回路109はONされる。このとき、再生回路108からの出力信号Tは第2の位相反転回路105により位相が反転され、信号T’に変換される。また、マイク101には外部音信号Vに加えてその近傍にあるスピーカユニット102からの出力信号Tがノイズとして加算され、音声信号T+Vがマイク101から出力される。第2の位相反転回路105からの出力信号T’とマイク101からの出力信号T+Vが第2の合成回路106において合成され、外部音信号Vのみが録音回路107により録音される。
【0013】
以上の構成により、本発明の実施の形態1は、ノイズキャンセル機能を再生時だけでなく録音時にも用いていることである。従来の方法では再生/録音を同時に行う場合、スピーカからの音楽がマイクからの出力に含まれてしまい、録音時のノイズとなってしまうといく課題があった。本発明では、録音時に位相反転回路を用いて再生音源を位相反転し、マイクからの出力音と合成するというノイズキャンセル機能を利用することによってスピーカからのノイズを低減し、また、スイッチ回路1つで再生/録音の切替を可能とし、録音時に音楽のON/OFFを行う必要がないという特徴を有する。
【0014】
本発明の第2の特徴は録音用マイクとノイズキャンセル用マイクを共用していることである。従来の方法では、ノイズキャンセル機能と録音機能を1つの機種に搭載する場合、それぞれにマイクが必要であった。本発明では、録音用マイクとノイズキャンセル用マイクを1つで共用することによりマイクの数を減らし、コストを削減することが可能となる。
【0015】
(実施の形態2)
次に、図1に示す録音再生装置の他の実施の形態について示す。図2は図1に示す録音再生装置の他の実施形態を示すブロック図である。
【0016】
図1に示す録音再生装置と図2に示す録音再生装置とで異なる点は、録音/再生を切り換えるスイッチ回路109の制御手段としてマイコン110が付加された点である。マイコン110から出力される制御信号によって録音/再生の切替を自由に行うことができる。その他の点は図1に示す録音再生装置と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明にかかる、ノイズキャンセル機能を有する録音/再生装置は従来2つ必要であったマイクを1つに減らすことができるため、機器の省スペース化、小型化を図ることができる。また、録音時には音楽の再生をOFFすることなくスイッチ1つで素早く録音ON/OFFを切り換えることが可能であるため、ポータブルオーディオ等の付加機能として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態1における録音再生装置の回路構成図
【図2】実施の形態2における録音再生装置の回路構成図
【図3】従来の録音再生装置の構成図
【符号の説明】
【0019】
101 マイク
102 スピーカユニット
103 第1の位相反転回路
104 第1の合成回路
105 第2の位相反転回路
106 第2の合成回路
107 録音回路
108 再生回路
109 スイッチ回路
110 マイコン
301 等価回路
302 除去回路
303 マイク
304 スピーカ
305 ミキシング回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の音を集音するマイクと信号を出力するスピーカを有するインナーホンを有し、前記マイクで収集した周囲の音を低減するノイズキャンセル機能と周囲の音を録音する機能を持つ再生録音装置であって、
前記マイクから出力された信号を反転する第1の反転手段と、
音データを格納するメモリと、
前記メモリに格納された音データを再生する再生手段と、
前記マイクから出力された信号を前記メモリに記録する録音手段と、
前記再生手段で音データを再生する再生状態と前記録音手段で信号を記録する録音状態を切り替える切替手段と、
前記第1の反転手段で反転された信号と前記再生手段で出力された信号を加算する第1の加算手段と、
前記再生手段で出力された信号を反転する第2の反転手段と、
前記第2の反転手段で反転された信号と前記マイクの出力を加算する第2の加算手段とを備え、
前記切替手段は、再生状態の時には前記第1の加算手段でノイズキャンセル機能を実現し、録音状態の時には再生状態をそのまま維持し、前記第2の加算手段で前記再生手段による再生音を相殺し、前記マイクの出力を前記録音手段で記録するように構成したことを特徴とする再生録音装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−253496(P2009−253496A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−96847(P2008−96847)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】