説明

鍛造機における成形用金型

【課題】前記型部材を補強リングなど他の部材から容易に分離できるようにした、交換し易い金型を得る。
【解決手段】鍛造ユニットに軸孔を設けた円筒状のホルダー10を支持し、そのホルダーの軸孔に突端側から挿入される保持筒18の内面に成形面を設けた型部材16を取り付けるとともに、外面に緩衝リング20を圧入させ、前記保持筒の外面に前記ホルダーと緩衝リングとの間に位置して緩衝リングより外方へ拡がる係止座金22を介在させたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、据込み式鍛造機に利用するのに好適な、成形用金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、据込み式の鍛造機は、図4で示すように、基台70の上に、受け型用の金型72を設けた固定ユニット74と、押し型用の金型76を設けた可動ユニット78とを対向して支持している。前記可動ユニット78にはトグル機構80によって押し型用の金型76を、受け型用の金型72へ向けて進退させ、それらの間へ送り装置82によって金属材料Wを供給し挟圧して成形するようになっている。
【0003】
鍛造加工における装置の損耗は主として、製品の外面を形成する金型の成形面に生じるが、加工の現場では、その成形面を設けた部材の修正、あるいは交換が、容易であるか否かが生産の能率を著しく左右する。そのため、従来から、金型、あるいは金型と協働するパンチを迅速に交換することが求められ、多くの解決方法が考えられている。例えば、
【特許文献1】。
【0004】
しかし、パンチのように、構造の単純なものはとも角として、金型は鍛造圧力をまともに受ける部材であるため、成形圧力によって損傷しないよう、成形面を持つ型部材の外面に補強リングを圧入して補強する構造が多用されている。そのため、一旦、金型の成形面が損耗すると、前記型部材だけでなく、補強リングも含めて金型全体を交換することとなり、経済的な負担が大きくなった。
【特許文献1】特開2000−627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決せんとする課題は、鍛造用金型のうち、製品の外面と対応する成形面を内面に設けた型部材が、使用によって損耗したとき、金型全体を交換することとなる不経済を解消するため、前記型部材を補強リングなど他の部材から容易に分離できるようにした、交換し易い金型を得ることが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、対向させて配置した一対の鍛造ユニットの一方に受け型と他方に押し型とを支持した鍛造機において、前記鍛造ユニットに軸孔を設けた円筒状のホルダーを支持し、そのホルダーの軸孔に突端側から挿入される保持筒の内面に、成形面を設けた型部材を取り付けるとともに、外面に緩衝リングを圧入させ、前記保持筒の外面に前記ホルダーと緩衝リングとの間に位置して緩衝リングより外方へ拡がる係止座金を介在させることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、鍛造機から取外すことのできるホルダーの軸孔に、型部材を嵌装した保持筒を支持し、その外周に緩衝リングを嵌合させ固定したものであるから、それらをプレス機械などを使って軸方向へ相対移動させることにより、互いに抜き挿しできる。
【0008】
また、前記保持筒の外面に前記ホルダーと緩衝リングとの間に位置して緩衝リングより外方へ拡がる係止座金を介在させたから、油圧式のプレス機械を用いて抜き挿しする際に係止座金を押したり、支えたりすることができるから、作業を迅速かつ容易にすることができる。
【0009】
その結果、金型の成形面が損耗したときに、前記成形面を設けた型部材のみを交換することができるから、金型の保守に要する時間が短縮できるほか、材料費や、修理に要する金型の材料費、加工に要する費用などのコストを大幅に削減することができる効果を生じる。
【実施例1】
【0010】
以下、添付の図面によって本願発明の一実施例を説明する。図1は受け型用の金型72の要部を抽出して示すものである。図中、10は金型72の外面を形成するホルダーであり、受け型を支持する固定ユニット74のハウジングに設けた支持孔12aへ挿脱可能に挿入され固定されている。
【0011】
前記ホルダー10の外面へ突出する側の端部、すなわち突端側には、内面に成形面14を設け、あるいは成形面を設けた部材15を取り付けるための型部材16が取付られる。
【0012】
型部材16は前記成形面14に通じる透孔17を設けて筒状としてあり、その外面は硬質の鋼材によって作られた保持筒18によって緊縛され、収縮方向に予圧されている。なお、透孔17は押出しロッド(図示してない)の進入する通路となっている。なお、型部材16の外面は端部側が細い先細のテーパ軸部16aとなっており、前記保持筒18の内面には、これと同勾配の開口側の細いテーパ孔部18aが設けられていて、それらによって抜け止めされている。
【0013】
保持筒16は、一端が前記ホルダー10の突端側に圧入され、あるいは図2で示すように、ねじ止めなどの固定手段によって固定され、他端の外面が緩衝リング20によって緊縛されると同時に、成形する際の衝撃を緩和するようになっている。
【0014】
緩衝リング20は、同芯に配置された内輪20aと外輪20cとの間に、薄い帯状の板バネ20bを数十回巻回したものである。これによって成形圧力によって型部材16あるいは、保持筒18が外方へ拡大して損傷を受けることが無いよう、緊縛し予圧を付与すると同時に緩衝している。
【0015】
22は環状に形成した厚肉の係止座金であり、前記ホルダー10と緩衝リング20との間に位置して前記保持筒18の外面に嵌合させてある。係止座金22の外面は前記ホルダー10や緩衝リング20の外径よりやや大きく作られている。
【0016】
以上のように構成された金型は、使用の結果、型部材16の内面14に損耗を生じたときは、まず、ハウジングからホルダー10を外し、ついで、図3(a)で示すように、係止座金22を下にして別途に用意した台24に載せ、油圧プレス機に取り付けたパンチ25によって保持筒18を押し下げることによって、ホルダー10から下方へ抜き取る。
【0017】
次いで、緩衝リング20の下面を係止座金22によって支え、パンチ25を降下させ円板形の座金26を介して押圧し保持筒18を下方へ抜き取る。同様にして、同図(c)で示すように、保持筒18から型部材16を取り出した上で修理し、あるいは新しいものに交換する。そして、大略以上と逆の過程を経て組立し金型を復元させる。
【0018】
よって、これらの実施例によれば、受け型用の金型72のうち、一番損耗し易い型部材16のみを、他の部材から分離して取り出すことができるから、金型の成形面が損耗したとき全体を交換する形式の従来の金型に比して、廉価かつ短時間に再生できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施方法を示す金型装置の断面図である。
【図2】変形例を示す図1相当の断面図である。
【図3】金型の分解方法を示す断面図である。
【図4】従来の据込み式鍛造機の縦断側面図である。
【符号の説明】
【0020】
10 ホルダー
12a 支持孔
14 内面
15 部材
16 型部材
16a テーパ軸部
17 透孔
18 保持筒
18a テーパ孔部
20 緩衝リング
20a 内輪
20b 板ばね
20c 外輪
22 係止座金
24 台
25 パンチ
26 円板形の座金
70 基台
72、76 金型
74 固定ユニット
78 可動ユニット
80 トグル機構
82 送り装置
W 金属材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向させて配置した一対の鍛造ユニットの一方に受け型と他方に押し型とを支持した鍛造機において、前記鍛造ユニットに軸孔を設けた円筒状のホルダーを支持し、そのホルダーの軸孔に突端側から挿入される保持筒の内面に、成形面を設けた型部材を取り付けるとともに、外面に緩衝リングを圧入させ、前記保持筒の外面に前記ホルダーと緩衝リングとの間に位置して緩衝リングより外方へ拡がる係止座金を介在させてなる成形用金型。
【請求項2】
請求項1において、前記保持筒はホルダーの軸孔に圧入し固定されている成形用金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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