説明

鍵箱および車両

【課題】運転席に係る運転者空間を施錠する構造を備えていない車両に対して、許可されたユーザのみが簡易に運転できるとともに、許可されていないユーザの不正使用を防止する。
【解決手段】車両を運転するための運転鍵41を内部の収納空間(鍵保持具40)に収納して施錠管理するために車両に固定される鍵箱10は、鍵箱10の施錠解錠に関する制御のための施錠解錠データを受信する車載機本体51と、車載機本体51からの施錠解錠データに基づいて施錠される電子錠20と、ICカード30との双方向通信を実行してICカード30からの予約者データを受信する通信装置20、21と、を備える。通信装置20、21が受信した予約者データと車載機本体51にて受信した施錠解錠データとを用いて電子錠20を解錠した場合に、収納空間から運転鍵41を取り出し可能に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不特定多数の運転者が車両を運転する際に使用する運転鍵を保管する鍵箱、およびその鍵箱を搭載した車両に関する。
【背景技術】
【0002】
(カーシェアリング)
複数の車両を複数のユーザが共同で使用するカーシェアリングシステムを利用する利用者は、カーシェアリング用の自動車を確保している駐車場に出向いて、直接利用する場合のほか、利用予定の時間帯などを事前に連絡する予約制度を活用する。
その予約制度は、コールセンターに電話を入れて会話によって予約をする場合と、データ通信によって書誌的事項を送信するとともに予約した内容にてサービスが受けられるか否かを受信する場合とがある。
後者は、パーソナルコンピュータにて通信する場合のほか、携帯電話のメール機能やウェブ閲覧機能にて通信する場合がある。
【0003】
一台ではなく複数の車両を複数のユーザが共同で使用するカーシェアリングシステムを実現するため、特許文献1(特開2009−193342号)には、以下のような技術が開示されている。
すなわち、「車載ナビゲーション装置によって収集された学習情報がユーザ毎に記憶される学習情報記憶手段と、を備え、車載ナビゲーション装置は、ユーザが車両を利用する際にユーザ認証し、ユーザ認証によって特定されたユーザIDを用いて学習情報記憶手段に記憶された当該ユーザに関する学習情報を取得し、取得した学習情報に基づく情報提供する」という技術である。
【0004】
さて、カーシェアリングを運営管理するには、特許文献2(特開2007−183749号)などおいて以下のような手法が普及している。すなわち、会員登録をしたユーザには、ICチップを内蔵した会員カード(ICカード)が配布される。会員ユーザは、登録番号などを用いて、使用したい車両についての予約をし、その予約情報を車両の車載機に送信する。 それによって、そのICカードのICチップに記憶された会員識別情報にて、運転席に係る運転者空間を解錠できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−193342号公報
【特許文献2】特開2007−183749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、カーシェアリングに用いられる車両の種類は、一般の乗用車のみならず、電気自動車や自動二輪車などにも広がりを見せている。
一般の乗用車をカーシェアリングに用いる場合には、会員カードとの双方向通信を実行する非接触通信機器や、車両を運転する際に使用する車両鍵は、車両をロックすることで、不正使用や悪戯から守ることができる。
【0007】
また、カーシェアリングの場合、車両鍵の受け渡しが簡易に行える必要があるが、ICカードによる運転席に係る運転者空間を施錠する構造を採用している。しかし、自動二輪やカート式の簡易車両の場合には、運転席に係る運転者空間が開放されているため、同様の構造は採用できない。
【0008】
本発明が解決すべき課題は、上述の課題に鑑みてなされたものである。 すなわち、運転席に係る運転者空間を施錠する構造を備えていない車両に対して、許可されたユーザのみが簡易に運転できるとともに、許可されていないユーザの不正使用を防止可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(第一の発明)
第一の発明は、車両を運転するための運転鍵(41)を内部の収納空間(保持具40)に収納して施錠管理するために当該車両に固定される鍵箱(10)に係る。
その鍵箱(10)は、その鍵箱(10)の施錠解錠に関する制御のための施錠解錠データを受信する車載機本体(51)と、 その車載機本体(51)からの施錠解錠データに基づいて施錠される電子錠(20)と、 ICカード(30)との双方向通信を実行して当該ICカード(30)からの予約者データを受信する通信装置(20,21)と、を備える。
その通信装置(20,21)が受信した予約者データと前記車載機本体(51)にて受信した施錠解錠データとを用いて前記電子錠(20)を解錠した場合に、前記収納空間(40)から運転鍵(41)を取り出し可能に形成した。
【0010】
(作用)
本発明の鍵箱(10)を固定された車両を運転しようとするユーザは、所定の手続きに従って、車両の予約をする。ユーザを特定する予約者データおよび予約内容に関する予約内容データは、所定の手段によって車載機本体(51)が受信し、施錠解錠データとする。
ユーザは、予約に係る車両における鍵箱(10)に対して、ICカード(30)をかざす。 すると、通信装置(20,21)が双方向通信を実行して当該ICカード(30)からの予約者データを受信する。そして、車載機本体(51)にて受信した施錠解錠データと、を用いて前記電子錠(20)を解錠する。そこで、ユーザは、鍵箱(10)における収納空間(40)から運転鍵(41)を取り出し、当該車両の運転が可能となる。
【0011】
予約者データと無関係な者が当該車両の鍵箱(10)を開けようとしても、電子錠(20)が施錠されているので運転鍵(41)を取り出すことはできない。そのため、車両が不正に運転されることを防止することに寄与する。
なお、車両を使い終えたユーザは、運転鍵(41)を車両から外したら鍵箱(10)における収納空間(40)に戻す。
【0012】
(第一の発明のバリエーション1)
第一の発明は、以下のように構成することもできる。
すなわち、鍵箱(10)を解錠した場合の内部空間において、前記車載機本体(51)を覆う車載機カバー(50)を備えるとともに、 その車載機カバー(50)と車両とは、固定具(特殊ネジ52)にて固定することとしてもよい。
【0013】
(作用)
ICカード(30)による解錠をしなければ、固定具(52)にたどり着けない。 また、固定具(52)を取り外して車載機カバー(50)を取り外さなければ、車載機本体(51)にたどり着けない。 このため、車載機本体(51)が二重に守られている。
【0014】
(第一の発明のバリエーション2)
第一の発明は、以下のように形成することもできる。
すなわち、鍵箱(10)における収納空間(40)に対して運転鍵(41)を戻したことを検知する鍵返却センサと、 その鍵返却センサが運転鍵(41)を戻したことを検知した場合であって鍵箱(10)が開放されている場合には、鍵箱(10)を閉めるように報せる報知手段(たとえば音声案内)と、を備え、 鍵返却センサが運転鍵(41)を戻したことを検知した場合であって鍵箱(10)が閉められた場合には、電子錠(20)を施錠することとしてもよい。
【0015】
(作用)
ユーザが鍵箱(10)における収納空間(40)に対して運転鍵(41)を戻した場合、その旨を鍵返却センサが検知する。 その鍵返却センサが運転鍵(41)を戻したことを検知した場合であって鍵箱(10)が開放されている場合、すなわち、ユーザが鍵箱(10)を閉めていない場合には、報知手段が鍵箱(10)を閉めるように報せる。 ユーザが鍵箱(10)を閉めると、電子錠(20)が施錠される。
ユーザによる鍵箱(10)の閉め忘れを防ぐとともに、車両が不正に運転されることを防止することに寄与する。
【0016】
(第二の発明)
第二の発明は、第一の発明に係る鍵箱(10)を備えた車両に係る。
この場合の車両は、運転席に係る運転者空間を施錠する構造を備えていない車両、具体的には、自動二輪車(原付自転車やアシスト機能付き自転車を含む)や、カートと一般に称される簡易車両が向いている。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、利用時間を延長する手続きを、運転の妨げにならないように実行可能なカーシェアリング利用延長システムおよびそれに用いるコンピュータプログラムを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本願発明の実施形態に係る手順を示すフローチャートである。
【図2】本願発明の実施形態としての構成を示しており、(A)が側面左からの断面図、(B)が正面外観図、(C)が側面左からの外観図、(D)が後部から見た外観図である。
【図3】本願発明の実施形態に係る鍵箱を搭載した車両の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願発明を実施する形態について、図1から図3を用いて説明する。 本実施形態は、カート車両を用いたカーシェアリングである。
【0020】
(図1)
図1は、予約者となるユーザと、予約を受け付けるサーバと、予約に係るシェアカーとの間における情報伝達と、それに係る各ハードウェアをブロック図として描いたフローチャートである。
まず、予約者が携帯電話などの予約送信手段を用いて、自らの予約者IDとともに使用したい車両の利用開始時刻および利用終了時刻を予約者データとして、サーバへ送信する。 送信された予約者データは、サーバにおける予約受信手段が受信する。
【0021】
予約内容にて受け付けられることが確認できたら、予約内容送信手段を用いて、予約者に対して予約が完了した旨および予約された車両を特定する車両特定データを送信する。その旨は、ユーザに係る携帯電話を予約確認受信手段として受信される。
一方、受け付けることができた予約内容は、シェアカーの車載機に対して、予約者IDを含んだ予約者データを送信する。
【0022】
予約を完了したユーザは、予約者IDが記憶されているIDカードを持参してシェアカーのところに行き、IDカードをかざす。 すると、鍵箱開閉手段が鍵箱の鍵を解錠し、ユーザは、シェアカーの運転鍵を取り出すことができる。 鍵箱開閉手段については、図2を用いて後述する。
【0023】
(図2)
図2(A)に示すように、鍵箱10は、上面に鍵付きの開閉蓋11を備えた直方体形状をなし、車両における荷物搭載スペースなどの一部に固定されている。そして、蓋11とその蓋11における蝶番と反対側の鍵箱10の本体側とをロックするための電子錠20が備えられている。
鍵箱10の内部空間の底には、車載機本体51が載置され、車載機カバー50によって覆われている。その車載機カバー51および鍵箱10の底板を貫通して車両に達する特殊ネジ52が、車両と鍵箱10とを固定している。
車載機カバー50の上には、鍵保持具40が固定されており、その鍵保持具40が、車両の運転に用いる運転鍵41を保持する。
【0024】
図2(B)に示すように、開閉蓋11の正面には、ICカードとの双方向通信が可能なICカードリーダと、電子錠20とが備えられている。 この電子錠20は、図2(C)に示すようにICカードリーダの認証機械21と接続されている。
その認証機械21は、図1に示したサーバから前述の車載機本体51を介して受信した予約者データを用いて、ユーザにかざされたICカード30から読み取ったIDとの認証を行う。そして、認証できた場合に、電子錠20を解錠するのである。
【0025】
図2(D)に示すように、鍵箱20の後部には配線通し孔12が設けられている。この配線通し孔12は、車載機本体51への電源供給や、車両の外側に位置させたアンテナとの接続などのために用いられる。
【0026】
(図3)
図3は、前述してきた鍵箱を搭載した車両を示す。
一人乗りの電気自動車たる四輪車である。 座席の左右にはドアが無く、簡単に乗り降りできる。 座席の後方に収納空間を備えているが、本願発明に係る鍵箱10は、その収納空間の一部に搭載されている。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本願発明は、カーシェアリングに用いる車両を製造する車両メーカ、カーシェアリングに用いる通信情報機器を製造する通信情報機器メーカ、カーシェアリングのサービスを提供するサービス業、カーシェアリングのサービスを運用するためのソフトウェアを開発するソフトウェア開発業などにおいて、利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を運転するための運転鍵を内部の収納空間に収納して施錠管理するために当該車両に固定される鍵箱であって、
その鍵箱の施錠解錠に関する制御のための施錠解錠データを受信する車載機本体と、
その車載機本体からの施錠解錠データに基づいて施錠される電子錠と、
ICカードとの双方向通信を実行して当該ICカードからの予約者データを受信する通信装置と、を備え、
その通信装置が受信した予約者データと前記車載機本体にて受信した施錠解錠データとを用いて前記電子錠を解錠した場合に、前記収納空間から運転鍵を取り出し可能に形成した鍵箱。
【請求項2】
前記鍵箱を解錠した場合の内部空間において、前記車載機本体を覆う車載機カバーを備えるとともに、
その車載機カバーと車両とは、固定具にて固定することとした請求項1に記載の鍵箱。
【請求項3】
鍵箱における収納空間に対して運転鍵を戻したことを検知する鍵返却センサと、
その鍵返却センサが運転鍵を戻したことを検知した場合であって鍵箱が開放されている場合には、鍵箱を閉めるように報せる報知手段と、を備え、
鍵返却センサが運転鍵を戻したことを検知した場合であって鍵箱が閉められた場合には、電子錠を施錠することとした請求項1または請求項2のいずれかに記載の鍵箱。
【請求項4】
車両を運転するための運転鍵を内部の収納空間に収納して施錠管理するために当該車両に固定される鍵箱を備えた車両であって、
前記鍵箱は、当該鍵箱の施錠解錠に関する制御のための施錠解錠データを受信する車載機本体と、
その車載機本体からの施錠解錠データに基づいて施錠される電子錠と、
ICカードとの双方向通信を実行して当該ICカードからの予約者データを受信する通信装置と、を備え、
その通信装置が受信した予約者データと前記車載機本体にて受信した施錠解錠データとを用いて前記電子錠を解錠した場合に、前記収納空間から運転鍵を取り出し可能に形成したことを特徴とする車両。
【請求項5】
前記鍵箱を解錠した場合の内部空間において、前記車載機本体を覆う車載機カバーを備えるとともに、
その車載機カバーは、固定具にて車両に対して固定したことを特徴とする請求項4に記載の車両。
【請求項6】
鍵箱における収納空間に対して運転鍵を戻したことを検知する鍵返却センサと、
その鍵返却センサが運転鍵を戻したことを検知した場合であって鍵箱が開放されている場合には、鍵箱を閉めるように報せる報知手段と、を備え、
鍵返却センサが運転鍵を戻したことを検知した場合であって鍵箱が閉められた場合には、電子錠を施錠することとした請求項4または請求項5のいずれかに記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−41712(P2012−41712A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182996(P2010−182996)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(591069086)パーク二四株式会社 (23)
【Fターム(参考)】