説明

鎮痛性結合体

本発明は、一般に、δオピオイドレセプターアンタゴニストに結合されたμオピオイドレセプターアゴニストを有する鎮痛性化合物、およびこのような化合物を使用して無痛をもたらすための方法に関する。モルヒネのようなオピオイドと比較して、これらの化合物は、より小さい耐性、身体依存、および/または便秘を引き起こし得る。これらの結合体はまた、モルヒネよりも強力であり、そしてそれらの結合体は、血液脳関門を横切り、それによって末梢(例えば、静脈内(IV))投与を可能にし得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(連邦支援の研究または開発に関する記述)
本願に関する研究は、National Institutes of Healthからの助成金(DA15091およびDA18028)によって支援された。米国政府は、本発明において一定の権利を有し得る。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
疼痛は、世界中で、主要な健康上および経済上の問題を示す。疼痛の生理的根拠の理解における進歩にもかかわらず、理想的な鎮痛薬は、依然として見出されていない。
【0003】
鎮痛性薬物の中でも特に、オピオイドクラスの化合物は、疼痛の処置に広く使用される。オピオイド薬物は、オピオイドレセプターと相互作用することによって効果をもたらす。少なくとも3種のオピオイドレセプターのタイプ(μ(ミュー)、δ(デルタ)、およびκ(カッパ))の存在が、確立されている。前3種のオピオイドレセプターのタイプは、ヒトの中枢神経系に位置し、そしてその各々は、疼痛の媒介において役割を果たす。
【0004】
現在、鎮痛薬として使用されるモルヒネおよび関連するオピオイドは、主にμオピオイドレセプターにおけるそれらのアゴニスト作用によって、それらの無痛をもたらす。これらの薬物の投与は、耐性、身体依存、嗜癖傾向(addiction liability)、便秘、呼吸抑制、筋硬直、および嘔吐の発生などの顕著な副作用によって制限される。したがって、改良された鎮痛薬に対する必要性が、存在する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の特定の実施形態の要旨)
リンカーを介してδオピオイドレセプターアンタゴニストに結合されたμオピオイドレセプターアゴニストを有する鎮痛性結合体が、本明細書中に開示される。意外にも、これらの結合体は、代表的に、モルヒネのようなオピオイドによって引き起こされるよりも小さい耐性、身体依存、および便秘を引き起こし得る。これらの結合体はまた、代表的に、モルヒネよりも強力であり、そしてそれらの結合体は、代表的に、血液脳関門を横切り、それによって末梢(例えば、静脈内(IV))投与を可能にし得る。
【0006】
したがって、本発明の特定の実施形態は、δオピオイドレセプターアンタゴニストに結合されたμオピオイドレセプターアゴニストを有する鎮痛性結合体、およびこのような結合体を使用して無痛をもたらすための方法を提供する。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態は、患者の中枢神経系の外側の場所にて投与された後に上記患者において無痛をもたらすのに有用な医薬を調製するための、リンカーを介してδオピオイドレセプターアンタゴニストに結合されたμオピオイドレセプターアゴニストを含む結合体の使用を提供する。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態は、患者に対してモルヒネの類似する有効投薬量(similar effective dosage)を投与することによって引き起こされるよりも小さい胃腸管(GI)通過阻害を引き起こすが、無痛をもたらすのに有用な医薬を調製するための、リンカーを介してδオピオイドレセプターアンタゴニストに結合されたμオピオイドレセプターアゴニストを含む結合体の使用を提供する。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態は、類似した有効投薬量のモルヒネを患者に投与することによって引き起こされるよりも小さい依存を引き起こすが、無痛をもたらすのに有用な医薬を調製するための、リンカーを介してδオピオイドレセプターアンタゴニストに結合されたμオピオイドレセプターアゴニストを含む結合体の使用を提供する。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態は、類似した有効投薬量のモルヒネを患者に投与することによって引き起こされるよりも小さい耐性を引き起こすが、無痛をもたらすのに有用な医薬を調製するための、リンカーを介してδオピオイドレセプターアンタゴニストに結合されたμオピオイドレセプターアゴニストを含む結合体の使用を提供する。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態は、患者において無痛をもたらすための方法を提供し、上記方法は、リンカーを介してδオピオイドレセプターアンタゴニストに結合されたμオピオイドレセプターアゴニストを含む結合体の有効量を該患者に投与する工程を包含し、上記投与は、上記患者の中枢神経系の外側の場所への投与である。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態は、患者においてモルヒネの類似する有効投薬量を投与することによって引き起こされるよりも小さい胃腸管(GI)通過阻害を引き起こすが、無痛をもたらすための方法を提供し、上記方法は、リンカーを介してδオピオイドレセプターアンタゴニストに結合されたμオピオイドレセプターアゴニストを含む結合体の有効量を上記患者に投与する工程を包含し、上記結合体は、類似した有効投薬量のモルヒネを患者に投与することによって引き起こされるよりも小さいGI通過阻害を引き起こすが、無痛を引き起こすのに有効である。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態は、患者においてモルヒネの類似する有効投薬量を投与することによって引き起こされるよりも小さい依存を引き起こすが、無痛をもたらすための方法を提供し、上記方法は、リンカーを介してδオピオイドレセプターアンタゴニストに結合されたμオピオイドレセプターアゴニストを含む結合体の有効量を上記患者に投与する工程を包含し、上記結合体は、類似した有効投薬量のモルヒネを患者に投与することによって引き起こされるよりも小さい依存を引き起こすが、無痛を引き起こすのに有効である。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態は、患者においてモルヒネの類似する有効投薬量を投与することによって引き起こされるよりも小さい耐性を引き起こすが、無痛をもたらすための方法を提供し、上記方法は、リンカーを介してδオピオイドレセプターアンタゴニストに結合されたμオピオイドレセプターアゴニストを含む結合体の有効量を上記患者に投与する工程を包含し、上記結合体は、類似した有効投薬量のモルヒネを患者に投与することによって引き起こされるよりも小さい耐性を引き起こすが、無痛を引き起こすのに有効である。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態は、患者においてモルヒネの類似する有効投薬量を投与することによって引き起こされるよりも小さい嗜癖傾向を引き起こすが、無痛をもたらすための方法を提供し、上記方法は、リンカーを介してδオピオイドレセプターアンタゴニストに結合されたμオピオイドレセプターアゴニストを含む結合体の有効量を上記患者に投与する工程を包含し、上記結合体は、類似した有効投薬量のモルヒネを患者に投与することによって引き起こされるよりも小さい嗜癖傾向を引き起こすが、無痛を引き起こすのに有効である。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態は、リンカーを介してδオピオイドレセプターアンタゴニストに結合されたμオピオイドレセプターアゴニストを含む結合体;および食塩水以外の薬学的に受容可能なキャリア;を含む薬学的組成物を提供し、上記組成物は、IV投与のために処方される。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態は、リンカーを介してδオピオイドレセプターアンタゴニストに結合されたμオピオイドレセプターアゴニストを含む結合体;および食塩水と少なくとも1種の他の薬学的に受容可能なキャリアとを含む薬学的に受容可能なキャリア;を含む薬学的組成物を提供し、上記組成物は、静脈内投与のために処方される。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態は、式:
−X−R
を有する結合体を提供し、
は、μオピオイドレセプターアゴニストであり;
は、δオピオイドレセプターアンタゴニストであり;そして
は、リンカーであるが;
但し上記結合体は、式:
【0019】
【化5】

の結合体ではなく、nは、2、3、4、5、6、または7である。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態は、式:
−X−R
を有する結合体を提供し、
は、α−オキシモルファミン(oxymorphamine)ではないμオピオイドレセプターアゴニストであり;
は、δオピオイドレセプターアンタゴニストであり;そして
は、リンカーである。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態は、式:
−X−R
を有する結合体を提供し、
は、μオピオイドレセプターアゴニストであり;
は、ナルトリンドールではないδオピオイドレセプターアンタゴニストであり;そして
は、リンカーである。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態は、式:
−X−R
を有する結合体を提供し、
は、μオピオイドレセプターアゴニストであり;
は、δオピオイドレセプターアンタゴニストであり;そして
は、
【0023】
【化6】

ではないリンカーであり、nは、2、3、4、5、6、または7である。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態は、薬学的に受容可能な賦形剤と、本発明の結合体とを含む薬学的組成物を提供する。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態は、本発明の結合体と、薬学的に受容可能な賦形剤とを含む単位投薬形態を提供する。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態は、医学的治療において使用するための本発明の結合体を提供する。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態は、動物において疼痛を処置するための医薬を調製するための本発明の結合体の使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(発明の詳細な説明)
リンカーを介してδオピオイドレセプターアンタゴニストに結合されたμオピオイドレセプターアゴニストを有する結合体が、代表的に、鎮痛性であること、ならびにその結合体が、代表的に、モルヒネのようなオピオイドによって引き起こされるよりも小さい耐性、身体依存、および便秘を引き起こし得ることが、見出されている。これらの結合体はまた、代表的に、モルヒネよりも強力であり、そしてそれらの結合体は、代表的に、血液脳関門を横切り、それによってそれらの結合体の末梢(例えば、静脈内(IV))投与を可能にし得る。
【0029】
リンカーを介してδオピオイドレセプターアンタゴニストに結合されたμオピオイドレセプターアゴニストを含む一連の結合体が、設計され、合成され、そして脳室内(ICV)投与によって評価された。最も短いリンカーを有する結合体は、慢性ICV投与によって耐性および依存の両方をもたらし、その結合体は、モルヒネおよびコントロールリガンドの両方と同様であった。しかし、上記結合体の2つのファルマコフォア(すなわち、μオピオイドレセプターアゴニストおよびδオピオイドレセプターアンタゴニスト)の間の距離が22Åを超える場合、その結合体は、もはや耐性または依存をもたらさなかった。必ずしも本発明の任意の特定の実施形態の要素ではないが、より長いリンカーを有する結合体は、隣接するμオピオイドレセプターおよびδオピオイドレセプターと同時に相互作用すると考えられる。
【0030】
δアンタゴニストであるナルトリンドールによる前処置は、結合体MDAN−19のED50値を変化させ、その結果MDAN−19の急性鎮痛活性は、コントロールリガンドMA−19と同様であった。この効果は、MDAN−16については観察されなかった。これらのデータは、μオピオイドレセプターとδオピオイドレセプターとの間の物理的相互作用が、耐性および依存を調節すること、ならびに結合体MDAN−19、MDAN−20、およびMDAN−21が、一緒に二量体化したレセプターを保持し、それによって再編成を防止することを示唆する。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態は、患者において、μオピオイドレセプターアゴニストの類似する有効投薬量を投与することによって引き起こされるより小さい胃腸管(GI)通過阻害、小さい依存、小さい耐性、小さい依存傾向、および/または小さい便秘を引き起こすが、無痛をもたらすための方法を提供し、上記方法は、リンカーを介してδオピオイドレセプターアンタゴニストに結合されたμオピオイドレセプターアゴニストを含む結合体の有効量を患者に投与する工程を包含し、上記結合体は、患者に対してμオピオイドレセプターアゴニストの類似する有効投薬量を投与することによって引き起こされるよりも小さいGI通過阻害、小さい依存、小さい耐性、小さい依存傾向、および/または小さい便秘を引き起こすが、無痛を引き起こすのに有効である。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態において、上記結合体の有効量の投与は、類似した有効投薬量のモルヒネを患者に投与することによって引き起こされるよりも小さい胃腸管(GI)通過阻害を引き起こす。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態において、上記結合体の有効量の投与は、類似した有効投薬量のモルヒネを患者に投与することによって引き起こされるよりも小さい便秘を引き起こす。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態において、上記結合体の有効量の投与は、類似した有効投薬量のモルヒネを患者に投与することによって引き起こされるよりも小さい依存を引き起こす。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態において、上記結合体の有効量の投与は、類似した有効投薬量のモルヒネを患者に投与することによって引き起こされるよりも小さい耐性を引き起こす。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態において、上記結合体の有効量の投与は、類似した有効投薬量のモルヒネを患者に投与することによって引き起こされるよりも小さい嗜癖傾向を引き起こす。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態において、上記投与は、患者の中枢神経系の外側の場所に対する投与である。本発明のいくつかの実施形態において、上記投与は、静脈内である。本発明のいくつかの実施形態において、上記投与は、鞘内である。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態において、上記結合体は、式:
−X−R
を有し、
は、μオピオイドレセプターアゴニストであり;
は、δオピオイドレセプターアンタゴニストであり;そして
は、リンカーである。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態において、Xは、アミノ酸を含む。本発明のいくつかの実施形態において、Xは、ペプチドを含む。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態において、Xは、二価の、分枝鎖または非分枝鎖の、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、上記炭化水素鎖は、その鎖中に10個〜30個の炭素原子を有し、上記鎖中の炭素原子のうちの1個以上は、必要に応じて、(−O−)または(−NH−)によって置換される。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態において、Xは、二価の、分枝鎖または非分枝鎖の、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、上記炭化水素鎖は、その鎖中に10個〜30個の炭素原子を有し、上記鎖中の炭素原子のうちの1個以上は、必要に応じて、(−O−)または(−NH−)によって置換され、そして上記鎖は、必要に応じて、少なくとも1つの炭素、−O−または−NH−において、(C−C)アルコキシ、(C−C)シクロアルキル、(C−C)アルカノイル、(C−C)アルカノイルオキシ、(C−C)アルコキシカルボニル、(C−C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、およびヘテロアリールオキシからなる群より選択される1個以上の置換基によって置換される。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態において、Xは、18原子長〜24原子長の鎖である。本発明のいくつかの実施形態において、Xは、隣接するジグリコール酸分子を有する中心ジアミン部分を含む。本発明のいくつかの実施形態において、Xは、少なくとも1個のメチレンを含む。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態において、Rは、オキシモルホン、α−オキシモルファミン、ベンゾモルファン(benzomorphan)、エトニタジン、フェンタニル、もしくは式100、式101、式102、式103、式104の化合物、またはそれらの誘導体である。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態において、Rは、ナルトリンドールまたは式201、式202、もしくは式203の化合物、あるいはそれらの誘導体である。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態において、上記結合体は、以下の式:
【0046】
【化7】

を有し、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。本発明のいくつかの実施形態において、nは、5、6、または7である。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態において、上記結合体は、少なくとも1種のさらなる治療因子と組み合わせて投与される。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態において、上記結合体は、式:
【0049】
【化8】

の結合体ではなく、nは、2、3、4、5、6、または7である。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態において、Rは、α−オキシモルファミンではないμオピオイドレセプターアゴニストである。本発明のいくつかの実施形態において、Rは、ベンゾモルファン、エトニタジン、フェンタニル、もしくは式100、式101、式102、式103、式104の化合物、またはそれらの誘導体である。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態において、Rは、ナルトリンドールではないδオピオイドレセプターアンタゴニストである。本発明のいくつかの実施形態において、Rは、誘導体もしくはナルトリンドール、あるいは式201、式202、もしくは式203の化合物、またはそれらの誘導体である。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態において、Xは、
【0053】
【化9】

ではないリンカーであり、nは、2、3、4、5、6、または7である。
【0054】
上記鎮痛性結合体は、代表的には制限された副作用を有する鎮痛薬(例えば、代表的にはモルヒネの類似する有効な鎮痛用量またはμオピオイドアゴニストの類似する有効な鎮痛用量による副作用の発生と比較して相対的に小さい耐性、身体依存、および便秘を生じる鎮痛薬)として有用である。上記ファルマコフォアを離したまま保ち得る任意のリンカー(例えば、最小限の距離より大きいリンカー(例えば、約16個の原子より大きい))が使用され得ることが、理解されるべきである。この長さは、μオピオイドレセプターの認識部位とδオピオイドレセプターの認識部位とを架橋するために重要であると考えられる。さらに、上記リンカーは、例えば、経口投与または非経口投与による中枢神経系(CNS)の外側の場所への投与の際にCNSに到達するために、好ましい親水性と親油性とのバランスを提供し得るか、またはそれを維持し得る。例えば、上記リンカーは、リンカーを延長することが上記結合体のバランスを実質的に変えないように、繰り返し単位で疎水基および親水基を有し得る。
【0055】
したがって、鎮痛性結合体は、変化する長さのリンカーによってμオピオイドレセプターアゴニストのファルマコフォアに結合されたδオピオイドレセプターアンタゴニストのファルマコフォアを含む。δアンタゴニストのファルマコフォアとμアゴニストのファルマコフォアとの組み合わせが、本明細書中に提示され、そしてファルマコフォアの他の組み合わせもまた、利用され得る。
【0056】
数種のリンカーが、本明細書中に提示され、そしてまた使用され得る多くの他の考えられるリンカーが、存在する。上記リンカーは、ファルマコフォアの特定の組み合わせを有する結合体を与えるために承認され得る。上記ファルマコフォアの位置異性体および上記ファルマコフォアの立体異性体もまた、例えば、そのファルマコフォアにおけるNH置換に起因して使用され得る。
【0057】
μオピオイドレセプターアゴニスト。「μオピオイドレセプターアゴニスト」とは、μオピオイドレセプターに結合(例えば、μオピオイドレセプターに選択的に結合)し、かつそのμオピオイドレセプターを活性化する任意の化合物をいう。化合物のμオピオイドレセプターアゴニストとして作用する能力は、当該分野において周知である薬理学的方法を使用して決定され得る。
【0058】
μオピオイドレセプターアゴニストとしては、オキシモルホン、α−オキシモルファミン、ベンゾモルファン、エトニタジン、フェンタニル、
【0059】
【化10】

およびそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されず、上記のRは、δオピオイドレセプターアンタゴニストに結合されるリンカーの連結の1つの可能な点を表す。また、Foye’s Principles of Medicinal Chemistry、第5版、D.A.WilliamsおよびT.L.Lemke編、Lippencott、Williams、およびWilkins、そして特に、462〜465ページを含む第19章を参照のこと。
【0060】
δオピオイドレセプターアンタゴニスト。「δオピオイドレセプターアンタゴニスト」とは、δオピオイドレセプターアゴニストの効果を減衰させる任意の化合物をいう。化合物のδオピオイドレセプターアンタゴニストとして作用する能力は、当該分野において周知である薬理学的方法を使用して決定され得る。
【0061】
δオピオイドレセプターアンタゴニストとしては、米国特許第6,271,239号;同第5,631,263号;同第5,578,725号;同第5,464,841号;同第5,411,965号;同第5,352,680号;および同第4,816,586号に開示されるδオピオイドレセプターアンタゴニスト、ならびにDanielsら、「Delta−Selective Ligands Related to Naltrindole」に開示されるδオピオイドレセプターアンタゴニスト、「The Delta Receptor」、Changら編、Marcel Dekker、第9章、139〜158ページ(2003)に開示されるδオピオイドレセプターアンタゴニストが挙げられるが、これらに限定されない。δオピオイドレセプターアンタゴニストとしてはまた、ナルトリンドール、
【0062】
【化11】

およびそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されず、上記のRは、μオピオイドレセプターアゴニストに結合されるリンカーの連結の1つの可能な点を表す。
【0063】
リンカー。本発明の結合体は、リンカーを介してδオピオイドレセプターアンタゴニストに結合されたμオピオイドレセプターアゴニストを有する。上記ファルマコフォアに対する上記リンカーの連結(例えば、連結の点)は、μオピオイドレセプターアゴニストまたはδオピオイドレセプターアンタゴニストとしてのファルマコフォアの活性を排除すべきではない。本発明のいくつかの実施形態において、上記リンカーは、隣接するジグリコール酸分子を有する中心ジアミン部分を有する。上記リンカーの長さは、そのリンカー中の原子の数を増加させるか、または減少させること(例えば、中心ジアミン部分におけるメチレンの数を変えること)によって、本発明の特定の実施形態において変えられ得る。本発明のいくつかの実施形態において、上記リンカーは、上記結合体の好ましい親水性と疎水性とのバランスを確立および/または維持するように構築され得る。本発明のいくつかの実施形態において、上記リンカーは、16個の原子(例えば、MDAN−16)から21個の原子(例えば、MDAN−21)まで変化する。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態において、上記リンカーの長さは、約16Å、17Å、18Å、19Å、20Å、21Å、22Å、23Å、24Å、または25Åの長さである。本発明のいくつかの実施形態において、上記リンカーの長さは、約22Å〜約26Åである。本発明のいくつかの実施形態において、上記リンカーの長さは、16原子長、17原子長、18原子長、19原子長、20原子長、21原子長、22原子長、23原子長、24原子長、または25原子長である。いくつかの実施形態において、上記リンカーは、18〜24原子長である。当業者は、当業者に利用可能な分子モデリングソフトウェア(例えば、Chem3D Pro 9.0(CambridgeSoft Corporation))を使用して特定のリンカーの長さを計算し得る。
【0065】
リンカーはまた、アミノ酸、ペプチド、およびグリコール酸を含み得る。
【0066】
用語「アミノ酸」は、D形態またはL形態の天然のアミノ酸(例えば、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Glu、Gln、Gly、His、Hyl、Hyp、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、およびVal)の残基、および非自然アミノ酸(例えば、ホスホセリン、ホスホトレオニン、ホスホチロシン、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸;馬尿酸、オクタヒドロインドール−2−カルボン酸、スタチン(statine)、l,2,3,4,−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸、ペニシラミン、オルニチン、シトルリン(citruline)、α−メチル−アラニン、p−ベンゾイルフェニルアラニン、フェニルグリシン、プロパギルグリシン、サルコシン、およびtert−ブチルグリシン)の残基を含む。この用語はまた、通常のアミノ保護基(例えば、アセチルまたはベンジルオキシカルボニル)を有する天然のアミノ酸および不自然のアミノ酸、ならびに(例えば、(C−C)アルキルエステル、フェニルエステルもしくはベンジルエステルまたは(C−C)アルキルアミド、フェニルアミドもしくはベンジルアミド;あるいはα−メチルベンジルアミドのように)カルボキシ末端において保護された天然のアミノ酸および不自然のアミノ酸を含む。他の適切なアミノ保護基および他の適切なカルボキシ保護基は、当業者に公知である(例えば、Greene,T.W.;Wutz,P.G.M.「Protecting Groups In Organic Synthesis」、第2版、1991、New York、John Wiley & sons,Inc.、およびその中で引用される参考文献を参照のこと)。
【0067】
用語「ペプチド」は、2アミノ酸〜35アミノ酸の配列またはペプチジル残基を記述する。その配列は、直鎖状でも環状でもよい。例えば、環状ペプチドは、配列中の2つのシステイン残基の間のジスルフィド架橋の形成から調製され得るか、または配列中の2つのシステイン残基の間のジスルフィド架橋の形成によって生じ得る。ペプチド誘導体は、例えば、米国特許第4,612,302号;同第4,853,371号;および同第4,684,620号に開示されるように調製され得る。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態において、結合体中のリンカーの厳密な性質は、重要ではない。上記リンカーは、いくつかの実施形態において、約25ダルトン〜約400ダルトンの分子量を有する二価の有機ラジカルである。上記リンカーは、いくつかの実施形態において、約40ダルトン〜約200ダルトンの分子量を有する。
【0069】
上記リンカーは、生物学的に不活性であっても、それ自体で生物学的活性を有してもよい。上記リンカーはまた、上記結合体の特性を改変するため(例えば、分枝形成のため、架橋形成のため、他の分子(例えば、生物学的に活性な化合物)を上記結合体に付加するため、上記結合体の溶解度を変化させるため、または上記結合体の体内分布を達成するため)に使用され得る他の官能基(ヒドロキシ基、メルカプト基、アミン基、カルボン酸、およびその他を含む)を含み得る。
【0070】
ラジカル、置換基、基、および範囲に関して本明細書中に記載される特定の値は、例示のためのみの値であり;それらは、他の規定された値、またはラジカルおよび置換基について規定された範囲内の他の値を除外しない。
【0071】
特に、(C−C)アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、ペンチル、3−ペンチル、またはヘキシルであり得;(C−C)シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシルであり得;(C−C)シクロアルキル(C−C)アルキルは、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロプロピルエチル、2−シクロブチルエチル、2−シクロペンチルエチル、または2−シクロヘキシルエチルであり得;(C−C)アルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソ−ブトキシ、sec−ブトキシ、ペントキシ、3−ペントキシ、またはヘキシルオキシであり得;(C−C)アルカノイルは、アセチル、プロパノイルまたはブタノイルであり得;(C−C)アルコキシカルボニルは、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル、またはヘキシルオキシカルボニルであり得;(C−C)アルキルチオは、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、ペンチルチオ、またはヘキシルチオであり得;(C−C)アルカノイルオキシは、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ブタノイルオキシ、イソブタノイルオキシ、ペンタノイルオキシ、またはヘキサノイルオキシであり得;アリールは、フェニル、インデニル、またはナフチルであり得;そしてヘテロアリールは、フリル、イミダゾリル、トリアゾリル、トリアジニル、オキサゾイル、イソキサゾイル、チアゾリル、イソチアゾイル、ピラゾリル、ピロリル、ピラジニル、テトラゾリル、ピリジル、(またはそのN−酸化物)、チエニル、ピリミジニル(またはそのN−酸化物)、インドリル、イソキノリル(またはそのN−酸化物)またはキノリル(またはそのN−酸化物)であり得る。
【0072】
いくつかの実施形態において、上記リンカーは、二価の、分枝鎖または非分枝鎖の、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、上記炭化水素鎖は、1個〜50個(例えば、10個〜30個(例えば、20個〜30個))の炭素原子を有し、上記鎖は、必要に応じて、少なくとも1個の炭素原子において、(C−C)アルコキシ、(C−C)シクロアルキル、(C−C)アルカノイル、(C−C)アルカノイルオキシ、(C−C)アルコキシカルボニル、(C−C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、およびヘテロアリールオキシからなる群より選択される1個以上(例えば、1個、2個、3個、または4個)の置換基によって置換される。上記炭素原子のうちの1個以上は、必要に応じて、(−O−)または(−N−)のような別の原子によって置換される。上記鎖はまた、必要に応じて、少なくとも1個の炭素において、(C−C)アルコキシ、(C−C)シクロアルキル、(C−C)アルカノイル、(C−C)アルカノイルオキシ、(C−C)アルコキシカルボニル、(C−C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、およびヘテロアリールオキシからなる群より選択される1個以上(例えば、1個、2個、3個、または4個)の置換基によって置換され得る。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態において、上記リンカーは:
【0074】
【化12】

であり得、nは、1〜10の任意の整数であり、nは、1〜8の整数であり、nは、1〜20の整数であり、nは、12〜22の整数であり、そしてx2は、1〜2の整数である。
【0075】
オピオイド結合体。オピオイド結合体は、リンカーを介してδオピオイドレセプターアンタゴニストに結合されたμオピオイドレセプターアゴニストを有する化合物である。したがって、上記結合体は、一緒に結合される2つの異なるファルマコフォア(すなわち、δオピオイドレセプターアンタゴニストに結合されたμオピオイドレセプターアゴニスト)を含む。
【0076】
化合物を命名するために本明細書中で使用される命名法は、以下の通りである:M=μ(ミュー)ファルマコフォア、D=δ(デルタ)ファルマコフォア、A=アゴニスト、N=アンタゴニスト。数字は、そのリンカー中の原子の数を指す。例えば、MDAN−21は、21個の原子からなる鎖を含むリンカーを介してδオピオイドレセプターアンタゴニストに結合されたμオピオイドレセプターアゴニストを有する結合体を指す。MA−21は、21個の原子からなるリンカーを有するμオピオイドレセプターアゴニストを有する化合物を指す。DN−20は、20個の原子からなるリンカーを有するδオピオイドレセプターアンタゴニストを有する化合物を指す。
【0077】
特定のオピオイド結合体が、本明細書中に開示され、それらの結合体としては、MDAN−16、MDAN−17、MDAN−18、MDAN−19、MDAN−20およびMDAN−21(それぞれ、化合物3〜8)が挙げられる。他のオピオイド結合体は、μオピオイドレセプターアゴニストをδオピオイドレセプターアンタゴニストに結合することによって合成され得る。
【0078】
無痛。無痛は、疼痛刺激が、無痛を伴わずに誘発される痛みの感覚と比較して減少した痛みの感覚を誘発する状態を指す。ヒトにおける薬物の鎮痛効果は、テイルフリック(tail flick)試験(Hammond、1989)によって予測され、そして当業者に公知である方法(例えば、放射熱テイルフリックアッセイ(D’Amourら、1941)を使用して評価され得る。簡単にいうと、放射熱テイルフリックアッセイにおいて、光の線束が、マウスの尾上に集められ、そしてテイルフリックまでの時間が測定される。各動物は、その同一対照として機能し得、そして1回だけ使用され得る。マウスは、薬物の注射前に1回試験される(コントロール時間)。その薬物の注射後に、そのマウスは、ピークの薬物応答の時間にて試験される(薬物時間)。その光の強度は、コントロール時間が1.5秒と2.5秒との間であるように調整され得る。10秒間のカットオフ薬物時間が、組織損傷の危険性を最小限にするために設定され得る。%最大可能効果(maximum possible effect)(%MPE)は、以下の通りに計算される(Deweyら、1970):
【0079】
【数1】

1用量あたり少なくとも8匹のマウスを用いた少なくとも4用量の用量反応曲線が、%MPEから作成され得る。95%信頼区間を用いたED50値が、非線形回帰法を使用したGraphPad Prismによってコンピューターで算出され得る。
【0080】
本発明の特定の実施形態において、上記結合体は、無痛を引き起こして疼痛(例えば、急性および/または慢性の疼痛)を処置するために使用される。本発明のいくつかの実施形態において、上記結合体は、中枢神経系においてそれらの鎮痛効果をもたらす。したがって、IV投与を可能にするための血液脳関門を通過する上記結合体の能力は、有益である。
【0081】
嗜癖、依存、および耐性。嗜癖は、薬物に対する依存(例えば、身体依存)の発生を指す。薬物に対する耐性の発生が起こり得、その結果、薬物が一定期間にわたって投与されている場合に、その薬物の同じ投薬量はより低い効果をもたらし、したがって、同じ効果(例えば、同じ量の無痛)を達成するためにその薬物の投薬量の増加に対する必要性を生じる。薬物に対する身体依存はまた、薬物が一定期間にわたって投与され、そしてその薬物投与が終結される場合に起こり得、その身体依存は、薬物禁断症状の症状をもたらす。薬物に対する嗜癖は、慢性の薬物投与後に起こり得る。嗜癖傾向は、その報酬特性に起因して乱用される薬物の潜在性、例えば、特定の薬物に対する被験体の推定される好み(その結果、被験体がその薬物の使用を伴う環境にあり続けることを好む)を指す。
【0082】
化合物に関連する嗜癖、身体依存、および耐性を調査するために、慢性ICV投与研究が、マウスにおいて行われ得る。目的の化合物は、先に記載されるように、浸透圧ミニポンプを使用し、カニューレを介してICVに一定期間(例えば、3日間)にわたって投与され得る(Gomoriら、2003;Mashikoら、2003)。禁断症状は、ナロキソンを投与(1mg/kg;皮下(sc))し、そしてナロキソン誘発性の跳躍を10分間計測することによって測定され得る。耐性は、3日間の慢性注入後に化合物のチャレンジ(challenge)用量を投与し、そしてその時間における慢性ED50値を決定することによって決定され得る。(Hoら、1972;Way、1978;Kestら、1996;およびVan der Kooyら、1982を参照のこと)。
【0083】
条件付け場所嗜好性(CPP)試験は、薬物の報酬特性および嗜癖傾向を測定するために使用される技術である。簡単にいうと、CPP装置の2つの側面は、動物がそれらの側面の間を区別し得るように、視覚の違いおよび触覚の違いの両方を有し得る。試験の第1日目において、各動物が上記装置のいずれかの側面において費やす時間が、測定される。次の3日間にわたって、薬物は、一方の側面または他方の側面と、動物を注射しそして直ちにその動物をその側面に閉じ込めることによって「組み合わせられる(paired)」。最終日において、上記動物が薬物と組み合わせた側面において費やす時間の量が、決定され、そして%変化が、算出される。%変化がポジティブである場合、上記薬物は、報酬があり、そしてその薬物は、依存性であると推定される(Bardoら、2000;およびWuら、2004を参照のこと)。
【0084】
便秘。便秘は、胃腸管(GI)通過の阻害(例えば、オピオイド誘導性の阻害)によって引き起こされ得る。薬物がGI通過に対して有する効果を評価するために、その薬物は、マウスに対して、例えば、100μlの容量で尾静脈を介してIVに投与され得る。15分後、炭末(charcoal meal)(300μl、経口)が、経管栄養によって投与され得る。上記炭末の30分後、上記マウスは、ハロタンの過量投与によって屠殺され得、そして上記炭がGI管の全長に対して移動した距離が、食塩水を注射されたコントロール動物において移動した距離と比較され得る。GI通過を阻害する薬物は、上記炭が移動する距離を減少させ、そして便秘を引き起こす。
【0085】
効力。化合物の鎮痛効力は、当業者に公知の方法によって決定され得る(例えば、その効力は、テイルフリックアッセイによって決定され得る)。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態において、上記結合体は、少なくともモルヒネと同程度に強力であるか;少なくともモルヒネの約10倍強力であるか、少なくともモルヒネの約50倍強力であるか、または少なくともモルヒネの約100倍強力である。
【0087】
結合体が、安定な非毒性の酸または塩基の塩を形成するのに十分に塩基性または酸性である場合において、塩としての上記結合体の投与が、適切であり得る。薬学的に受容可能な塩の例は、生理学的に受容可能なアニオン(例えば、トシレート、メタンスルホネート、アセテート、シトレート、マロネート、タルタレート(tartarate)、スクシネート、ベンゾエート、アスコルベート、α−ケトグルタレート、およびα−グリセロホスフェート)を形成する酸によって形成される有機酸付加塩である。適切な無機塩もまた、形成され得、その無機塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩、および炭酸塩が挙げられる。
【0088】
薬学的に受容可能な塩は、当該分野において周知である標準的な手順を使用して(例えば、アミンなどの十分に塩基性の化合物と、生理学的に受容可能なアニオンを与える適切な酸とを反応させることによって)、得られ得る。カルボン酸のアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウムまたはリチウム)塩またはカルボン酸のアルカリ土類金属(例えば、カルシウム)塩もまた、作製され得る。
【0089】
上記結合体は、薬学的組成物として処方され得、そして選択した投与経路(すなわち、経口的もしくは非経口的、静脈内経路、筋肉内経路、局所経路または皮下経路による)に適合された種々の形態で哺乳動物宿主(例えば、ヒト患者)に投与され得る。
【0090】
したがって、上記結合体は、薬学的に受容可能なビヒクル(例えば、不活性の希釈剤)または同化可能な食用キャリアと組み合わせて、全身的に投与され得る(例えば、経口的)。それらは、硬いシェル(shell)のゼラチンカプセルまたは軟らかいシェルのゼラチンカプセル中に封入されても、錠剤へと圧縮されても、患者の食事の食物と一緒に直接取り込まれてもよい。経口の治療的投与のために、上記結合体は、1種以上の賦形剤と組み合わされ得、そして摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁物、シロップ、オブラートなどの形態で使用され得る。このような組成物および調製物は、少なくとも0.1%の活性化合物を含み得る。上記組成物および調製物の%は、当然ながら、変動し得、そしてその%は、便宜的に、所与の単位投薬形態の約2重量%〜約60重量%の間であり得る。このような治療的に有用な組成物中の結合体の量は、有効投薬量レベルが得られるような量である。
【0091】
上記錠剤、トローチ、丸剤、カプセルなどはまた、以下を含み得る:結合剤(例えば、トラガカントガム、アカシア、トウモロコシデンプンまたはゼラチン);賦形剤(例えば、第二リン酸カルシウム);崩壊剤(例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸など);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム);および甘味剤(例えば、スクロース、フルクトース、ラクトースまたはアスパルテーム)または香味剤(例えば、ペパーミント、ウインターグリーン油、またはサクランボの香味料が、添加され得る)。上記単位投薬形態がカプセルである場合、それは、上記の型の材料に加えて、液体キャリア(例えば、植物油またはポリエチレングリコール)を含む。種々の他の材料は、コーティング剤として存在し得るか、またはそうでなければ固体単位投薬形態の物理的形態を改変するために存在し得る。例えば、錠剤、丸剤、またはカプセルは、ゼラチン、蝋、シェラックまたは糖などによってコーティングされ得る。シロップまたはエリキシルは、上記活性化合物、甘味料としてスクロースまたはフルクトース、保存剤としてメチルパラベンおよびプロピルパラベン、色素および香料(例えば、チェリーフレーバーまたはオレンジフレーバー)を含み得る。当然ながら、任意の単位投薬形態を調製するのに使用される任意の材料は、使用される量において、薬学的に受容可能であり、かつ実質的に非毒性であるべきである。さらに、上記活性化合物は、徐放調製物および徐放デバイスに組み込まれ得る。
【0092】
上記結合体はまた、注入または注射によって静脈内、動脈内、または腹腔内に投与され得る。上記結合体の溶液またはその塩の溶液は、水中で調製され得、それらの溶液は、必要に応じて、非毒性の界面活性剤と混合され得る。分散物がまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン、およびそれらの混合物、ならびに油中で調製され得る。保存および使用の通常条件下において、これらの調製物は、微生物の増殖を防止するために保存剤を含む。
【0093】
注射または注入に適した薬学的投薬形態としては、無菌の水溶液または分散物あるいは無菌の粉末が挙げられ、それらは、無菌の注射可能かもしくは注入可能な溶液または分散物(必要に応じて、リポソーム中に封入される)の即時調製に適合される活性成分を含む。全ての場合において、最終的な投薬形態は、無菌の流体であるべきであり、そしてそれは、製造および保存の条件下において安定であるべきである。液体キャリアまたは液体ビヒクルは、溶媒または液体分散媒(例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピルレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、非毒性のグリセリルエステル、およびそれらの適切な混合物を含む)であり得る。適切な流動性は、例えば、リポソームの形成によってか、必要とされる粒径の維持(分散物の場合において)によってか、または界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなど)によってもたらされ得る。多くの場合において、等張化剤(例えば、糖類、緩衝液または塩化ナトリウム)を含むことが、好ましい。注射可能な組成物の延長した吸収は、その組成物において吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を使用することによってもたらされ得る。本発明のいくつかの実施形態において、上記薬学的投薬は、食塩水以外の薬学的に受容可能なキャリアを含み、そしてその薬学的投薬は、いくつかの実施形態において、食塩水を含まない。本発明のいくつかの実施形態において、上記薬学的投薬は、食塩水および少なくとも1種の他の薬学的に受容可能なキャリアを含む。
【0094】
無菌の注射可能な溶液は、上記結合体を必要とされる量で、上に列挙される種々の成分と一緒に適切な溶媒に組み込み、必要とされる場合、次いで濾過滅菌を行うことによって調製される。無菌の注射可能な溶液の調製のための無菌粉末の場合において、調製の好ましい方法は、真空乾燥技術および凍結乾燥技術であり、それらの技術は、予め濾過滅菌された溶液中に存在する任意のさらなる所望の成分を加えた上記活性成分の粉末を生じる。
【0095】
局所投与に関して、本発明の結合体は、純粋な形態で適用され得る。しかし、皮膚科学的に受容可能なキャリアと組み合わせて、組成物または処方物として上記結合体を皮膚に投与することが、一般的に望ましく、その組成物または処方物は、固体であっても液体であってもよい。
【0096】
有用な固体キャリアとしては、微細に分離した固体(例えば、タルク、クレイ、微結晶性セルロース、シリカ、アルミナなど)が挙げられる。有用な液体キャリアとしては、水、アルコール、もしくはグリコールまたは水−アルコール/グリコールのブレンドが挙げられ、ここで本発明の化合物は、有効レベルにて溶解または分散され得る(必要に応じて、非毒性の界面活性剤の補助を伴う)。アジュバント(例えば、香料)およびさらなる抗微生物剤が、所与の使用に対する特性を最適化するために添加され得る。得られる液体組成物は、帯具および他の包帯剤に浸透させるために使用される吸収剤のパッドから塗布され得るか、またはポンプ型噴霧器またはエアロゾル噴霧器を使用して障害を受けた領域(affected area)に噴霧され得る。
【0097】
増粘剤(例えば、合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩および脂肪酸エステル、脂肪アルコール、改変されたセルロースまたは改変された無機質材料)もまた液体キャリアと一緒に用いられて、使用者の皮膚に直接適用するための延展可能なペースト、ゲル、軟膏、石鹸などを形成し得る。
【0098】
式Iの化合物を皮膚に送達するために使用され得る有用な皮膚用組成物の例は、当該分野で公知である;例えば、Jacquetら(米国特許第4,608,392号)、Geria(米国特許第4,992,478号)、Smithら(米国特許第4,559,157号)およびWortzman(米国特許第4,820,508号)を参照のこと。
【0099】
上記結合体の有用な投薬量は、それらのインビトロ活性、および動物モデルにおけるインビボ活性を比較することによって決定され得る。マウスおよび他の動物における有効投薬量のヒトへの外挿のための方法は、当該分野で公知である;例えば、米国特許第4,938,949号を参照のこと。
【0100】
いくつかの実施形態において、液体組成物(例えば、ローション)中の上記結合体の濃度は、約0.1〜25重量%、好ましくは約0.5〜10重量%である。半固体組成物または固体組成物(例えば、ゲルまたは粉末)中の上記濃度は、約0.1〜5重量%、好ましくは約0.5〜2.5重量%であり得る。
【0101】
処置における使用に必要とされる上記結合体、またはその活性な塩もしくは誘導体の量は、選択される特定の結合体だけでなく、投与経路、処置されるべき状態の性質ならびに患者の年齢および状態によっても変化し、そしてその量は、最終的に、付き添いの医師または臨床家の裁量における量である。
【0102】
所望の用量は、便宜的に、単一用量にて与えられても、適切な間隔において投与される分割用量(例えば、1日あたり2回、3回、4回またはそれ以上の下位用量(sub−dose))として与えられてもよい。その下位用量自体は、例えば、注入器からの複数回の吸入または複数の点滴剤の眼への適用によるような、多くの大まかに間隔を空けた個別の投与へとさらに分割され得る。
【0103】
上記結合体の1種以上は、処置されるべき状態に適した任意の経路によって投与され得る。適切な経路としては、経皮経路、経口経路、直腸経路、経鼻経路、局所経路、口腔粘膜(buccal)経路、舌下経路、膣経路、非経口経路、皮下経路、筋肉内経路、静脈内経路、動脈内経路、皮内経路、鞘内経路、硬膜外経路などが挙げられる。本明細書中に提示される結合体の利点は、それらが、代表的に、中枢に対してそれらの鎮痛効果を有するように中枢神経系の外側の場所(例えば、I.V.)に投与され得る。
【0104】
本発明の化合物を作製する方法。本発明はまた、本発明の結合体および組成物を作成する方法に関する。上記組成物は、有機合成の任意の適用可能な技術によって調製される。多くのこのような技術は、当該分野において周知である。一方で、その公知の技術の多くは、Compendium of Organic Synthetic Methods(John Wiley & Sons、New York)、第1巻、Ian T. HarrisonおよびShuyen Harrison、1971;第2巻、Ian T.HarrisonおよびShuyen Harrison、1974;第3巻、Louis S.HegedusおよびLeroy Wade、1977;第4巻、Leroy G.Wade、jr.、1980;第5巻、Leroy G.Wade、Jr.、1984;および第6巻、Michael B.Smith;ならびにMarch,J.、Advanced Organic Chemistry,Third Edition、(John Wiley & Sons、New York、1985)、Comprehensive Organic Synthesis.Selectivity,Strategy & Efficiency in Modern Organic Chemistry.In 9 Volumes、Barry M.Trost、Editor−in−Chief(Pergamon Press、New York、1993 printing)において詳述される。
【0105】
本発明の結合体および組成物の調製のための多くの方法は、本明細書中に提供される。これらの方法は、このような調製の性質を例示することを意図し、適用可能な方法の範囲を意図しない。
【0106】
ここで、本発明が、以下の非限定的な実施例によって例示される。
【実施例】
【0107】
(実施例1:減少した耐性および依存を伴う無痛)
μオピオイドレセプターアゴニストとδオピオイドレセプターアンタゴニストとを含む一連の結合体を、設計し、合成し、そして慢性ICV投与によって評価した。最も短い化合物は、慢性ICV投与によって、モルヒネおよびコントロールリガンドの両方に類似する耐性ならびに依存の両方をもたらした。しかし、上記結合体の2つのファルマコフォアの間の距離が、16個の原子を超える場合、その結合体は、もはや耐性または依存をもたらさなかった。
【0108】
急性研究。上記MDAN系に関して、リンカーの長さの増大は、急性の抗侵害受容効力(ICV)の増大をもたらした。このプロフィールは、μコントロール系(MA−16、MA−17、MA−18、MA−19、MA−20、MA−21;表1を参照のこと)のメンバーについては観察されなかったので、このプロフィールが、別の因子(例えば、ダイマーのμ−δオピオイドレセプターを架橋すること)に起因し得ることを示唆する。上記結合体が、μアゴニストおよびδアンタゴニストの両方を有さないコントロール対応物よりも強力でなかったという観察は、δアンタゴニストファルマコフォアおよびδオピオイドレセプターによるネガティブな調節のいくつかの型を示唆する。しかし、この効果は、上記2つのファルマコフォアが1つに結合される場合にのみ見られる。特に、μアゴニスト化合物(MA−19)およびδアンタゴニストファルマコフォア(DN−20)を同時投与した場合、抗侵害受容効果は、MA−19を単独で与えた場合と同様であった。
【0109】
【表1】

ED50値を、以下のように算出した:%最大可能効果(%MPE)=([薬物時間(秒)−コントロール時間(秒)]/[10秒−コントロール時間(秒)])×100%。1用量あたり少なくとも8匹のマウスを用いた少なくとも4用量の用量反応曲線を、%MPEデータおよび%阻害データから作成した。95%の信頼水準を用いたED50値を、非線形回帰法を使用したGraphPad Prismによってコンピューターで算出した。
【0110】
慢性研究。MDAN−16は、慢性的に投与した場合にコントロールリガンドMA−19と同様の耐性および依存の両方をもたらした、唯一の結合体であった。次に長い2つの化合物(MDAN−17およびMDAN−18)は、依存をもたらすことなく耐性をもたらした。上記リンカーの長さが約22Åより長かった場合(例えば、6〜8;MDAN−19、MDAN−20、およびMDAN−21)、耐性も依存も、観察されなかった。
【0111】
最適なリンカーの長さを有する結合体は、μ−δヘテロダイマーに選択的に結合し得る。したがって、μ−δヘテロダイマーのδレセプターに対する上記結合体のδアンタゴニストファルマコフォアの結合は、耐性および/または依存の発生を生じる機構を減衰させ得る。したがって、μアゴニストおよびδアンタゴニストの両方を有さないコントロール化合物、ならびにより短いリンカーを有する結合体(例えば、MDAN−16およびMDAN−18)は、このような効果を誘発することができない可能性があり、そしてそれらは、実際に、異なるシグナル伝達因子を利用し得るオピオイドレセプターの異なる集団に対して優先的に結合し得る。このことについての1つの説明は、MDAN−16およびμリガンドがμ−μホモダイマーに対して優先的に結合することである。MDAN−17およびMDAN−18は、それらの、より短いリンカーに起因して、MDAN−19、MDAN−20およびMDAN−21と異なる様式でμ−δヘテロダイマーと相互作用し得る。より長い化合物は、利用可能なさらなる結合の選択肢(例えば、会合したμ−δレセプターの間のダイマー間架橋およびダイマー内架橋)を有し得る。これらのレセプターに利用可能なシグナル伝達経路は、そのレセプターの構築に依存して異なり得る。
【0112】
慢性疼痛を処置するためにモルヒネを使用することの主要な欠点の1つは、モルヒネの使用による耐性および依存の両方の発生である。本明細書中に提示される鎮痛性結合体は、臨床的に重要な結合体である。なぜならその結合体のいくつかは、予想外に、耐性または依存をもたらさないからである。さらに、そしてまた予想外に、MDAN−21およびモルヒネは、同様のICV対IVの比を有する(表2)。これは、結合体がモルヒネと同様の様式で血液脳関門を透通し得ることを示す。これらの結合体は、モルヒネおよびフェンタニルのようなμアゴニストに関して一般的に見られる耐性または依存を伴わずに無痛をもたらす新規薬物療法を示す。したがって、血液脳関門を横切る能力を維持しながら、これらの化合物は、依存を発生する危険性および耐性に起因する連続的に薬物を切り替える必要性を伴わずに慢性の疼痛症候群を処置するのに有効である。
【0113】
【表2】

(結果)
結合体の設計および化学についての論理的根拠。上記MDAN系のために選択したファルマコフォアは、可変の長さのリンカーによって一緒に結合される、μオピオイドアゴニストのα−オキシモルファミン1およびδオピオイドアンタゴニストのナルトリンドール2(NTI)を組み込む。上記ファルマコフォアを、親リガンドの相対的な親和性および選択性に起因して選択した(例えば、Abdelhamidら、1991を参照のこと)。
【0114】
上記リンカーは、隣接するジグリコール酸分子を有する中心ジアミン部分を特徴とする。リンカーの長さを、その中心ジアミン部分中のメチレンの数を増加させるか、または減少させることによって変えた。上記リンカーを、上記結合体の好ましい親水性と疎水性とのバランスを維持するために構築した。上記リンカーは、16個の原子(MDAN−16、3)から21個の原子(MDAN−21、8)まで変化した。対応したコントロール化合物を、上記結合体の活性に対する上記リンカーの効果を抽出するために、δコントロール(DN−20)と一緒にμ系(MA−9〜MA−14)について合成した。
【0115】
【化13】

α−オキシモルファミン(1)およびナルトリニドール(naltrinidole)(2)の7’−アミノ誘導体が、使用した中間体であった。NTIの7’−アミノ基は、その選択性または効力を根本的に変化させず、そして両方のファルマコフォアのアミノ基は、上記リンカーに対する連結の点として機能した。第1の工程は、Cbz保護したジアミンリンカー16〜21と1とのDCC媒介性のカップリングを行ない、次いで中間体22〜27を与えるために、触媒的移動水素化を使用した脱保護を行うことであった。ナルトリンドール中間体28を、20と7’−アミノ−NTIとをカップリングすることによって、同様の様式で調製した。7’−アミノ−NTIおよびメチルアミンを、それぞれ、化合物29および30を与えるために、無水ジグリコール酸と縮合した。
【0116】
【化14】

次いで、α−オキシモルファミン中間体22〜27を、最終的な結合体MDAN−16〜MDAN−21(化合物3〜8)を得るために、DCCを使用して28と縮合した。μアナログ9〜14およびδコントロール15を、第2のファルマコフォアの代わりにN−メチルアナログ30を使用して、同様の様式で調製した。
【0117】
【化15】

(薬理学的結果)
急性投与。リンカーの長さが上記結合体の系の効力に影響したか否かを決定するために、上記化合物を、マウスに対してICVに急性に投与した。上記結合体は、μリガンドより強力でなかった(表1を参照のこと)。MDAN結合体のμファルマコフォアとδファルマコフォアとの間の距離の増大は、抗侵害受容効力を増大させた(すなわち、上記リンカーの長さが増大すると、抗侵害受容効力が増大した(表1))。対照的に、μコントロール化合物の急性投与は、上記リンカーの長さがこれらの化合物の効力に影響しなかったことを示した。μリガンド(MA−19)とδリガンド(DN−20)との同時投与は、単独で投与したMA−19と同様の抗侵害受容効果をもたらした(表1)。
【0118】
慢性投与。これらの結合体に関連する耐性および依存を調査するために、慢性ICV投与研究を、行なった。目的の化合物を、先に記載されるように、浸透圧ミニポンプを使用し、カニューレを介してICVに3日間にわたって投与した(Gomoriら、2003;Mashikoら、2003)。禁断症状を、ナロキソンを投与(1mg/kg;皮下(sc))し、そしてナロキソン誘発性の跳躍を10分間計測することによって測定した。耐性は、3日間の慢性注入後に上記化合物のチャレンジ用量を投与し、そしてその時間における慢性ED50値を決定することによって決定した。耐性の特性および禁断症状の特性を、表3に要約する。
【0119】
【表3】

ED50値を、以下のように算出した:%最大可能効果(%MPE)=([薬物時間(秒)−コントロール時間(秒)]/[10秒−コントロール時間(秒)])×100%。1用量あたり少なくとも8匹のマウスを用いた少なくとも4用量の用量反応曲線を、%MPEデータおよび%阻害データから作成した。95%の信頼水準を用いたED50値を、非線形回帰法を使用したGraphPad Prismによってコンピューターで算出した。 食塩水を、3日間にわたってICVに慢性的に投与した。チャレンジ用量を、3日後に投与し、そしてそのED50値を、決定した。これらの値は、ナイーブのED50値(急性投与)とほぼ同一である。 上記化合物を、3日間にわたってICVに慢性的に投与した。チャレンジ用量を、3日後に投与し、そしてそのED50値を、決定した。 慢性ED50値と食塩水のED50値との間の差を、算出した。 ナロキソンの投与後の10分間における跳躍の平均回数。
【0120】
MDAN−16を用いた慢性ICV注入は、その急性ED50値における2.6倍の増加をもたらし、そしてナロキソンは、30回の垂直跳躍を誘導した(表3)。したがって、耐性および身体依存の両方が、MDAN−16(この結合体は、2つのファルマコフォアの間の最も短い距離を有する)について発生した。MDAN−17の3日間のICV注入は、そのED50値における3.6倍の増加をもたらした。これらの同じマウスにおいて、ナロキソンは、平均で0.94回だけの垂直跳躍を誘導した(表3)。MDAN−18は、その急性ED50値における3.7倍の増加、および8.9回だけのナロキソン誘発性の跳躍を伴う、MDAN−17と同様の結果をもたらした(表3)。したがって、身体依存を伴わない耐性が、MDAN−17およびMDAN−18の両方(両方の結合体は、中間のリンカーの長さを有する)について発生したようであった。
【0121】
マウスに、MDAN−19、MDAN−20、またはMDAN−21を注入した場合、急性の薬物用量反応曲線は、シフトせず、そしてナロキソン投与は、有意な数の垂直跳躍を誘導しなかった(表3)。際立って、より長いリンカーを有する化合物(MDAN−19、MDAN−20、MDAN−21)は、3日間にわたってICVに継続的に投与した場合に、耐性または身体依存をもたらさなかった。
【0122】
コントロール実験を行い、この実験において食塩水を、動物に対してICVに継続的に注入した。これらの動物は、テイルフリックアッセイにおいて、MA−19、MA−19+DN−20、およびMDAN結合体に対して、ナイーブの動物と同様に応答した(すなわち、それぞれのED50値は、有意に異ならなかった(表2))。1つのμアゴニスト(MA−19)の継続的な注入は、その急性の用量反応曲線の右方向へのシフト(ED50における5.5倍の増加)をもたらした。これらの同じマウスにおいて、非選択性オピオイドアンタゴニストであるナロキソンの投与は、禁断症状を誘発した。なぜならこれらのマウスは、ナロキソン投与後の10分間において平均で83回、垂直に跳躍したからである(表3)。跳躍のこの数は、3日間にわたってモルヒネを投与したマウスにおいて見られる数(100±15)に匹敵する。1:1の等モル比での、μアゴニスト(MA−19)とδアンタゴニスト(DN−20)との同時投与は、急性ED50値において8.9倍の増加をもたらし;ナロキソン投与は、これらのマウスにおいて29回の垂直跳躍を誘導した。したがって、MA−19は、DNリガンドの存在下または非存在下において、抗侵害受容に対する耐性および身体依存の両方をもたらした。しかし、δアンタゴニストの存在下において、発生した身体依存の程度はより小さく、そして発生した耐性はより大きいようであった(表3)。
【0123】
モルヒネ、MDAN−21およびコントロールリガンドMA−19の、テイルフリックアッセイによって決定されるような効力を、IV投与で決定した。上記化合物の全ては、ICVに投与した場合より強力であった(表2)。予想外に、MDAN−21は、モルヒネと類似するIV対ICVのプロフィールを有した(すなわち、IVに投与する場合に、両方の化合物の効力において約40倍の減少が存在した)。さらに、MDAN−21は、IVに与えた場合に、モルヒネよりも50倍強力であった。
【0124】
(実験手順)
一般。水分に対して感受性の試薬を含む全ての反応を、オーブン乾燥したガラス器において窒素雰囲気下で行なった。必要な場合、溶媒を乾燥した。全ての他の化学物質および溶媒は、明記しない限り試薬等級であり、そしてそれらを、Aldrich Chemical Company、Milwaukee、Wisconsinから入手した。H NMRスペクトルを、溶媒を参照としたVarian 300MHzスペクトロメーターにおいて記録した。化学シフトを、ppmで表し、そしてカップリング定数(J)を、ヘルツ(Hz)で表す。ピークの多重度を、以下の通りに略記する:ブロード、br;一重項、s;二重項、d;三重項、t;四重項、q;五重項、p;および多重項、m。高速原子衝撃(FAB)質量分析(MS)を、VG 7070E−HF機器において得た。フラッシュクロマトグラフィーを、Merck Scienceシリカゲル60(230−400)メッシュにおいて行なった。薄層クロマトグラフィー(TLC)を、分析用UniplateシリカゲルGFガラスプレート(2.5×20cmで250mm)において行なった。分取TLCを、1.0mmまたは0.5mmのAnaltechシリカゲルプレートにおいて行なった。プレートを、UV光、ヨウ素蒸気またはニンヒドリン溶液によって可視化した。
【0125】
7’−{2−[(6−{2−[({(5α,6α)−4,5−エポキシ−3,14−ジヒドロキシ−17−メチルモルヒナ−6−イル}−アミノカルボニル−メトキシ]−アセチルアミノ}−ヘキシルアミノカルボニル)−メトキシ]−アセチルアミノ}−ナルトリンドール(MDAN−20、6)。カルボン酸29(0.904g、1.659mmol、1.1eq)とDCC(0.342g、1.659mmol、1.1eq)とHOBt(0.224g、1.659mmol、1.1eq)とのDMF溶液(1mL)を、室温(rt)にて30分間撹拌することによって反応させた。アミン26(0.779g、1.508mmol、1.0eq)を、DMF(2mL)に溶解し、そして上記の反応混合物に1重量部で添加した。これを、N下で60℃にて24時間撹拌した。DCU沈殿物を、減圧濾過によって回収し、そして溶媒を、真空中でその濾液から除去した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、D/M/A、94.5/5/0.5、v/v/v)によるさらなる精製は、くすんだ白色の固形物として6を与えた(43.8%)。
【0126】
【化16】

(5α,6α)−6−{2−[(6−{2−[(メチルアミノカルボニル)−メトキシ]−アセチルアミノ}−ヘキシルアミノカルボニル)−メトキシ]−アセチルアミノ}−4,5−エポキシ−3,14−ジヒドロキシ−17−メチルモルヒナン(MA−20、13)。カルボン酸30(0.131g、0.894mmol、1.1eq)と、HOBt(0.165g、1.22mmol、1.5eq)と、DCC(0.184g、0.894mmol、1.1eq)とのDMF溶液(1.0mL)を、rtにて撹拌しながら10分間反応させた。アミン26(0.420g、0.813mmol、1.0eq)を、1重量部で添加した。この混合物を、N下でシールし、そしてrtにて48時間撹拌した。DCU沈殿物を、減圧濾過によって回収し、そしてその濾液を、エチルエーテル(100mL)に添加して、その粗生成物の析出を促した。その固形物を、減圧濾過によって回収し、連続して、ジエチルエーテルによって(50mL)によって洗浄した。フラッシュクロマトグラフィー(D/M/A、93.5/6.0/0.5(1.5L)を使用するシリカゲル)によるさらなる精製は、くすんだ白色の固形物として13を与えた(48.2%)。
【0127】
【化17】

7’−{2−[(6−{2−[(メチルアミノカルボニル)−メトキシ]−アセチルアミノ}−ヘキシルアミノカルボニル)−メトキシ]−アセチルアミノ}−ナルトリンドール(DN−20、15)。カルボン酸30(0.244g、1.658mmol、1.1eq)と、HOBt(0.224g、1.658mmol、1.1eq)と、DCC(0.342g、1.658mmol、1.1eq)とのDMF溶液(2mL)を、撹拌しながら60分間インキュベートした。アミン28(0.970g、1.507mmol、1.0eq)を、上記の反応混合物に添加した。これを、N下でシールし、および60℃(還流冷却器の存在による)にて48時間撹拌した。DCU沈殿物を、減圧濾過によって回収し、そして溶媒を、真空中でその濾液から除去した。フラッシュクロマトグラフィー(D/M/A、94.5/5/0.5、v/v/vを用いたシリカゲル)によるさらなる精製は、くすんだ白色の固形物として15を与えた(40.2%)。
【0128】
【化18】

動物。到着したときに25〜30gの体重であった雄ICRマウス(Harlan、Indianapolis、IN)を、これらの研究を通して使用した。その動物を、5個の群において、22〜23℃にて12時間−12時間の明/暗周期で飼育した。食物および水の両方は、自由に入手可能であった。
【0129】
急性の薬物投与。薬物を、滅菌食塩水(0.9% NaCl)に溶解した。動物を、ハロタンによって麻酔し、そして薬物を、短く(3mm)した27−gの針に接続したHamilton注射器を用いて、4μlの容量でICV注射によって側脳室に投与した(Haleyら、1957)。その注射部位は、ブレグマに対して、1.6mm側方であり、かつ0.6mm尾方であった。
【0130】
抗侵害受容試験。抗侵害受容を、放射熱テイルフリックアッセイ(D’Amourら、1941)によって評価した。簡単にいうと、光の線束を、マウスの尾上に集め、そして尾を掉うまでの時間を、測定した。各動物は、その同一対照として機能し、そしてその動物を、1回だけ使用した。マウスを、薬物の注射前に1回試験した(コントロール時間)。注射後に、そのマウスを、試験的な時間経過研究によって決定されるように、ピークの薬物応答の時間にて試験した(薬物時間)。その光の強度を、コントロール時間が1.5秒と2.5秒との間であるように調整した。10秒間のカットオフ薬物時間を、組織損傷の危険性を最小限にするために設定した。%最大可能効果(%MPE)を、以下の通りに計算した(Deweyら、1970):
【0131】
【数2】

1用量あたり少なくとも8匹のマウスを用いた少なくとも4用量の用量反応曲線を、%MPEデータから作成した。95%信頼区間を用いたED50値を、非線形回帰法を使用したGraphPad Prismによってコンピューターで算出した。
【0132】
慢性ICV注入。浸透圧ミニポンプ(モデル1003D、Alzet、Durect Corporation、Cupertino、CA)を、食塩水または試験される薬物で満たした。各薬物の用量は、そのED50(nmol)/時間の12倍であった。そのミニポンプを、1.6〜1.8cmの長さのPE−60チュービングによって3mmの長さのカニューレ(浸透圧ポンプコネクターカニューレ、Plastics One、Roanoke、VA)に連結し、そして滅菌食塩水中で37℃にて一晩準備(prime)した。
【0133】
翌日、マウスを、手術前にAvertin(2,2,2−トリブロモエタノール(370mg/kg、IP)/tertアミルアルコール(0.16mg/kg、IP))によって麻酔した。頭皮を剃り、そして切開を、その頭皮の正中に沿って行なった。血管鉗子を使用して、肩甲骨の間の皮膚の下に嚢を作製した。カニューレのペデスタル(pedestal)が頭蓋に対して適切に付着するように、頭蓋を擦って骨膜を除去した。マイクロドリル(Fine Science Tools Inc、Foster City、CA)を使用して、ブレグマに対して1.6mm側方かつ0.6mm尾方に穴を開けた。上記ミニポンプを、上記肩甲骨の間に配置し、上記カニューレを、ドリルで開けた穴に、側脳室まで挿入し、そして上記カニューレのペデスタルを、シアノアクリレート接着剤を用いて頭蓋に固定した。その動物を、加温パッド(Fine Science Tools、Foster City、CA)上で回復させ、そして動物施設中のそれらのケージに3日間戻した。
【0134】
依存および耐性についての試験。身体依存の発生を、誘発された禁断症状の間に観察された禁断症状の跳躍(Wayら、1969)を定量することによって、手術の4日後に評価した。マウスに、ナロキソン(1mg/kg、sc)を注射し、そしてそのマウスを、Plexiglasシリンダーに10分間おいた。その10分の間に、垂直跳躍を、禁断症状の徴候として計測した。激しい震え(wet−dog shake)を、数匹の動物において観察したが、記録しなかった。
【0135】
発生した耐性の程度を試験するために、上記浸透圧ミニポンプを、取り除き、そして上記マウスを、それらのケージに4時間戻した。次いでそのマウスに、試験薬物を対側の側脳室に注射し、そして抗侵害受容を、上に記載したようなテイルフリック試験によって測定した。
【0136】
統計分析。ED50値を、95%信頼区間が重ならなかった場合に、有意に異なると見なした。有意性を、p<0.05にて認めた。
【0137】
(実施例2;GI通過の阻害を伴わない無痛)
オピオイドによる処置の1つの望ましくない副作用は、オピオイド誘導性のGI通過の阻害によって引き起こされる便秘である。意外にも、結合体は、代表的に、モルヒネよりも小さいGI通過阻害をもたらした。
【0138】
方法。薬物を、雄ICRマウスに対して、100μlの容量で尾静脈を介してIVに投与した。15分後、抗侵害受容を、テイルフリックアッセイによって測定し、そして炭末(300μl、経口)を、経管栄養によって投与した。上記炭末の30分後、そのマウスを、ハロタンの過量投与によって屠殺し、そして上記炭がGI管の全長に対して移動した距離を、食塩水を注射したコントロール動物において移動した距離と比較した。試験した結合体(MDAN−16、MDAN−19、MDAN−20、およびMDAN−21)は、19Å、23Å、24Å、および25Åのリンカーの長さを有した。
【0139】
結果。モルヒネは、TF試験およびGIT阻害アッセイの両方において完全に有効であり、同様のED50値(それぞれ、168(146〜178)nmolおよび129(115〜142)nmol)を有した。全ての結合体は、TF試験において完全な効力を示した。しかし、観察された最大のGI通過阻害は、80%よりも大きい抗侵害受容をもたらした用量において、約25%であった。意外にも、MDAN結合体は、低い量のGI通過阻害をもたらした。
【0140】
したがって、上記結合体は、急性疼痛および慢性疼痛の両方の処置について、伝統的なオピオイドを超える治療上の利点を有する。なぜならこれらの結合体は、より小さいGI通過阻害をもたらすからであ。便秘は、オピオイド誘導性のGI通過阻害によって引き起こされ得るので、これらの結合体は、モルヒネのような他のオピオイド鎮痛薬によって引き起こされる便秘と比較して、患者においてより小さい便秘をもたらす。
【0141】
(実施例3:条件付け場所嗜好性)
条件付け場所嗜好性(CPP)は、薬物の報酬特性および嗜癖傾向を測定するために使用される技術である。CPP装置の2つの側面は、動物がそれらの側面の間を区別し得るように、視覚の違いおよび触覚の違いの両方を有し得る。試験の第1日目において、各マウスが上記装置のいずれかの側面において費やす時間を、測定する。次の3日間にわたって、薬物を、一方の側面または他方の側面と、動物を注射しそして直ちにその動物をその側面に閉じ込めることによって「組み合わせる」。最終日において、上記動物が薬物と組み合わせた側面において費やす時間の量を、決定し、そして%変化を、算出する。%変化がポジティブである場合、上記薬物は、報酬があると考えられ、そしてその薬物は、ヒトによって乱用されるようである。
【0142】
マウスを、最初に、条件付け場所嗜好性を示すマウスを生じる2×ED90の鎮痛性用量でモルヒネによって条件付けした(図1)。マウスはまた、4×ED90の鎮痛性用量によって処置した場合に、条件付け場所嗜好性を示す。意外にも、4×ED90用量の用量にてMDAN−19またはMDAN−21のいずれかによって処置したマウスは、場所嗜好性を示さなかったが、MDAN−16によって処置したマウスから得られた結果は、モルヒネに関して示されたような場所嗜好性をを示唆した。
【0143】
したがって、本明細書中に提示される結果は、モルヒネが条件付け場所嗜好性をもたらすが、結合体MDAN−21(耐性または身体依存を引き起こさない)が、条件付け場所嗜好性ももたらさないことを示す。これらの結果は、上記結合体がモルヒネと比較して低下した促進効果(reinforcing effect)を有し、それによってそれ結合体が嗜癖を引き起こすことに関して低い潜在性を有することを示す。
【0144】
方法。使用したCPP装置は、プラスチックの箱(約12インチ×6インチ×6インチ(1/w/h))であった。その箱の半分の一方は、透明であって、刻み目をつけたかまたはきめを出した床を有し、そしてその箱の半分の他方は、青い垂直な縞を有し、滑らかな床を有した。その箱を、マウスが、開口部を通して一方の側面から他方の側面に行けるか、または一方の側面に閉じ込めることができるように分けた。
【0145】
条件付けの前。1日目において、各マウスを、15分間にわたってその箱の両側面を探索させて、そのマウスを新規の環境に曝した。2日目において、各マウスを、15分間にわたってその箱におき、そしてマウスがその箱の各側面において費やした時間の量を記録した。その箱の一方において9分間より多く費やしたマウスを、除外する(32匹のマウスのうちの2匹を、除外した)。
【0146】
条件付け。3日目において、各マウスに、2セットのIV注射を与えた。最初に、そのマウスに、食塩水を注射し、そして無作為に上記箱の一方の側面に30分間にわたって閉じ込めた。次いでそのマウスに、薬物(またはコントロールマウスについては食塩水)を注射し、そしてその箱の他方の側面(「薬物と組み合わせた側面」)に30分間にわたって閉じ込めた。この条件付けのパラダイムを、3日間にわたって繰り返した。
【0147】
条件付けの後。6日目において、上記マウスが上記箱の各側面において費やした時間の量を、記録した。その結果に関して、条件付けの前の間にそのマウスが薬物と組み合わせた側面において費やした時間の量を、条件付けの後の間に薬物と組み合わせた側面において費やした時間から減算して、「スコア」を得た:スコア=薬物と組み合わせた側面における条件付け後の時間−薬物と組み合わせた側面において費やした条件付け前の時間。
【0148】
図1は、薬物と組み合わせた側面において費やした時間の%変化を示す。グラフのアスタリスクは、食塩水との有意差を示す(p<0.05)。
【0149】
上述の明細書において、本発明は、その特定の好ましい実施形態に関連して記載され、そして多くの細部は、例示を目的として示されているが、本発明は、さらなる実施形態が可能であること、および本明細書中に記載される特定の細部は、本発明の基本原理から逸脱することなく著しく改変され得ることが、当業者に明らかである。
【0150】
本明細書中に記載される全ての刊行物、特許および特許出願は、参考として本明細書中に援用される。
【0151】
(引用した文書)
【0152】
【表4】

【0153】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】図1は、条件付け場所嗜好性実験の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の中枢神経系の外側の場所にて投与された後に該患者において無痛をもたらすのに有用な医薬を調製するための、リンカーを介してδオピオイドレセプターアンタゴニストに結合されたμオピオイドレセプターアゴニストを含む結合体の使用。
【請求項2】
類似した有効投薬量のモルヒネを患者に投与することによって引き起こされるよりも小さい胃腸管(GI)通過阻害を引き起こすが、無痛をもたらすのに有用な医薬を調製するための、リンカーを介してδオピオイドレセプターアンタゴニストに結合されたμオピオイドレセプターアゴニストを含む結合体の使用。
【請求項3】
類似した有効投薬量のモルヒネを患者に投与することによって引き起こされるよりも小さい依存を引き起こすが、無痛をもたらすのに有用な医薬を調製するための、リンカーを介してδオピオイドレセプターアンタゴニストに結合されたμオピオイドレセプターアゴニストを含む結合体の使用。
【請求項4】
類似した有効投薬量のモルヒネを患者に投与することによって引き起こされるよりも小さい耐性を引き起こすが、無痛をもたらすのに有用な医薬を調製するための、リンカーを介してδオピオイドレセプターアンタゴニストに結合されたμオピオイドレセプターアゴニストを含む結合体の使用。
【請求項5】
請求項1、3、または4に記載の使用であって、前記結合体の投与は、類似した有効投薬量のモルヒネを患者に投与することによって引き起こされるよりも小さい胃腸管(GI)通過阻害を引き起こす、使用。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の使用であって、前記結合体の投与は、類似した有効投薬量のモルヒネを患者に投与することによって引き起こされるよりも小さい便秘を引き起こす、使用。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれかに記載の使用であって、前記結合体の投与は、前記患者の中枢神経系の外側の場所に行なわれる、使用。
【請求項8】
請求項1、2、または4〜7のいずれかに記載の使用であって、前記結合体の投与は、類似した有効投薬量のモルヒネを患者に投与することによって引き起こされるよりも小さい依存を引き起こす、使用。
【請求項9】
請求項1〜3または請求項5〜8のいずれかに記載の使用であって、前記結合体の投与は、類似した有効投薬量のモルヒネを患者に投与することによって引き起こされるよりも小さい耐性を引き起こす、使用。
【請求項10】
前記結合体は、式:
−X−R
を有し、
は、μオピオイドレセプターアゴニストであり;
は、δオピオイドレセプターアンタゴニストであり;そして
は、リンカーである;
請求項1〜9のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
は、アミノ酸を含む、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
は、ペプチドを含む、請求項10に記載の使用。
【請求項13】
は、二価の、分枝鎖または非分枝鎖の、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、該炭化水素鎖は、該鎖中に10個〜30個の炭素原子を有し、該鎖中の炭素原子のうちの1個以上は、必要に応じて、(−O−)または(−NH−)によって置換される、請求項10に記載の使用。
【請求項14】
は、二価の、分枝鎖または非分枝鎖の、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、該炭化水素鎖は、該鎖中に10個〜30個の炭素原子を有し、該鎖中の炭素原子のうちの1個以上は、必要に応じて、(−O−)または(−NH−)によって置換され、そして該鎖は、必要に応じて、少なくとも1つの炭素、−O−または−NH−において、(C−C)アルコキシ、(C−C)シクロアルキル、(C−C)アルカノイル、(C−C)アルカノイルオキシ、(C−C)アルコキシカルボニル、(C−C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、およびヘテロアリールオキシからなる群より選択される1個以上の置換基によって置換される、請求項10に記載の使用。
【請求項15】
は、18原子長〜24原子長の鎖である、請求項10に記載の使用。
【請求項16】
は、隣接するジグリコール酸分子を有する中心ジアミン部分を含む、請求項10〜15のいずれかに記載の使用。
【請求項17】
は、少なくとも1個のメチレンを含む、請求項10〜16のいずれかに記載の使用。
【請求項18】
は、オキシモルホン、α−オキシモルファミン、ベンゾモルファン、エトニタジン、フェンタニル、もしくは式100、式101、式102、式103、式104の化合物、またはそれらの誘導体である、請求項10〜17のいずれかに記載の使用。
【請求項19】
は、ナルトリンドールまたは式201、式202、もしくは式203の化合物、あるいはそれらの誘導体である、請求項10〜18のいずれかに記載の使用。
【請求項20】
前記結合体は、以下の式:
【化1】

を有し、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である、請求項10に記載の使用。
【請求項21】
は、5、6、または7である、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記結合体の投与は、静脈内である、請求項1〜21のいずれかに記載の使用。
【請求項23】
前記結合体は、少なくとも1種のさらなる治療因子と組み合わせて投与される、請求項1〜22のいずれかに記載の使用。
【請求項24】
リンカーを介してδオピオイドレセプターアンタゴニストに結合されたμオピオイドレセプターアゴニストを含む結合体;および
食塩水以外の薬学的に受容可能なキャリア;
を含む薬学的組成物であって、該組成物は、IV投与のために処方される、組成物。
【請求項25】
リンカーを介してδオピオイドレセプターアンタゴニストに結合されたμオピオイドレセプターアゴニストを含む結合体;および
食塩水と少なくとも1種の他の薬学的に受容可能なキャリアとを含む薬学的に受容可能なキャリア;
を含む薬学的組成物であって、該組成物は、静脈内投与のために処方される、組成物。
【請求項26】
前記結合体は、式:
−X−R
を有し、
は、μオピオイドレセプターアゴニストであり;
は、δオピオイドレセプターアンタゴニストであり;そして
は、リンカーである;
請求項24または25に記載の組成物。
【請求項27】
は、アミノ酸を含む、請求項25または26に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
は、ペプチドを含む、請求項25または26に記載の薬学的組成物。
【請求項29】
は、二価の、分枝鎖または非分枝鎖の、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、該炭化水素鎖は、10個〜30個の炭素原子を有し、該炭素原子のうちの1個以上は、必要に応じて、(−O−)または(−NH−)によって置換される、請求項25または26に記載の薬学的組成物。
【請求項30】
は、二価の、分枝鎖または非分枝鎖の、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、該炭化水素鎖は、10個〜30個の炭素原子を有し、該炭素原子のうちの1個以上は、必要に応じて、(−O−)または(−NH−)によって置換され、そして該鎖は、必要に応じて、少なくとも1つの炭素、−O−または−NH−において、(C−C)アルコキシ、(C−C)シクロアルキル、(C−C)アルカノイル、(C−C)アルカノイルオキシ、(C−C)アルコキシカルボニル、(C−C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、およびヘテロアリールオキシからなる群より選択される1個以上の置換基によって置換される、請求項25または26に記載の薬学的組成物。
【請求項31】
は、18原子長〜24原子長の鎖である、請求項25または26に記載の薬学的組成物。
【請求項32】
は、隣接するジグリコール酸分子を有する中心ジアミン部分を含む、請求項25〜31のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項33】
は、少なくとも1個のメチレンを含む、請求項25〜32のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項34】
は、オキシモルホン、オキシモルホン、α−オキシモルファミン、ベンゾモルファン、エトニタジン、フェンタニル、もしくは式100、式101、式102、式103、式104の化合物、またはそれらの誘導体である、請求項25〜33のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項35】
は、ナルトリンドールまたは式201、式202、もしくは式203の化合物、あるいはそれらの誘導体である、請求項25〜31のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項36】
前記結合体は、以下の式:
【化2】

を有し、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である、請求項24〜25のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項37】
は、5、6、または7である、請求項36に記載の薬学的組成物。
【請求項38】
式:
−X−R
を有する結合体であって、
は、μオピオイドレセプターアゴニストであり;
は、δオピオイドレセプターアンタゴニストであり;そして
は、リンカーであるが;
但し該結合体は、式:
【化3】

の結合体ではなく、nは、2、3、4、5、6、または7である、結合体。
【請求項39】
式:
−X−R
を有する結合体であって、
は、α−オキシモルファミンではないμオピオイドレセプターアゴニストであり;
は、δオピオイドレセプターアンタゴニストであり;そして
は、リンカーである;
結合体。
【請求項40】
は、ベンゾモルファン、エトニタジン、フェンタニル、もしくは式100、式101、式102、式103、式104の化合物、またはそれらの誘導体である、請求項38または39に記載の結合体。
【請求項41】
式:
−X−R
を有する結合体であって、
は、μオピオイドレセプターアゴニストであり;
は、ナルトリンドールではないδオピオイドレセプターアンタゴニストであり;そして
は、リンカーである;
結合体。
【請求項42】
は、誘導体もしくはナルトリンドール、あるいは式201、式202、もしくは式203の化合物、またはそれらの誘導体である、請求項38または41に記載の結合体。
【請求項43】
式:
−X−R
を有する結合体であって、
は、μオピオイドレセプターアゴニストであり;
は、δオピオイドレセプターアンタゴニストであり;そして
は、
【化4】

ではないリンカーであり、nは、2、3、4、5、6、または7である;
結合体。
【請求項44】
は、アミノ酸を含む、請求項38〜43のいずれかに記載の結合体。
【請求項45】
は、ペプチドを含む、請求項38〜43のいずれかに記載の結合体。
【請求項46】
は、二価の、分枝鎖または非分枝鎖の、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、該炭化水素鎖は、10個〜30個の炭素原子を有し、該炭素原子のうちの1個以上は、必要に応じて、(−O−)または(−NH−)によって置換される、請求項38〜43のいずれかに記載の結合体。
【請求項47】
は、二価の、分枝鎖または非分枝鎖の、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、該炭化水素鎖は、10個〜30個の炭素原子を有し、該炭素原子のうちの1個以上は、必要に応じて、(−O−)または(−NH−)によって置換され、そして該鎖は、必要に応じて、少なくとも1つの炭素、−O−または−NH−において、(C−C)アルコキシ、(C−C)シクロアルキル、(C−C)アルカノイル、(C−C)アルカノイルオキシ、(C−C)アルコキシカルボニル、(C−C)アルキルチオ、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、およびヘテロアリールオキシからなる群より選択される1個以上の置換基によって置換される、請求項38〜43のいずれかに記載の結合体。
【請求項48】
は、18原子長〜24原子長の鎖である、請求項38〜43のいずれかに記載の結合体。
【請求項49】
は、隣接するジグリコール酸分子を有する中心ジアミン部分を含む、請求項38〜48のいずれかに記載の結合体。
【請求項50】
は、少なくとも1個のメチレンを含む、請求項38〜49のいずれかに記載の結合体。
【請求項51】
は、オキシモルホン、α−オキシモルファミン、ベンゾモルファン、エトニタジン、フェンタニル、もしくは式100、式101、式102、式103、式104の化合物、またはそれらの誘導体である、請求項41〜50のいずれかに記載の結合体。
【請求項52】
は、ナルトリンドールまたは式201、式202、もしくは式203の化合物、あるいはそれらの誘導体である、請求項39〜40または請求項43〜51のいずれかに記載の結合体。
【請求項53】
薬学的に受容可能な賦形剤と、請求項38〜52のいずれかに記載されるとおりの結合体とを含む、薬学的組成物。
【請求項54】
請求項38〜52のいずれかに記載されるとおりの結合体と、薬学的に受容可能な賦形剤とを含む、単位投薬形態。
【請求項55】
医学的治療において使用するための、請求項38〜52のいずれかに記載の結合体。
【請求項56】
患者の中枢神経系の外側の場所にて投与された後に該患者において無痛をもたらすのに有用な医薬を調製するための、請求項38〜52のいずれかに記載の結合体の使用。
【請求項57】
類似した有効投薬量のモルヒネを患者に投与することによって引き起こされるよりも小さい胃腸管(GI)通過阻害を引き起こすが、無痛をもたらすのに有用な医薬を調製するための、請求項38〜52のいずれかに記載の結合体の使用。
【請求項58】
類似した有効投薬量のモルヒネを患者に投与することによって引き起こされるよりも小さい依存を引き起こすが、無痛をもたらすのに有用な医薬を調製するための、請求項38〜52のいずれかに記載の結合体の使用。
【請求項59】
類似した有効投薬量のモルヒネを患者に投与することによって引き起こされるよりも小さい耐性を引き起こすが、無痛をもたらすのに有用な医薬を調製するための、請求項38〜52のいずれかに記載の結合体の使用。
【請求項60】
患者において無痛をもたらすための方法であって、該方法は、リンカーを介してδオピオイドレセプターアンタゴニストに結合されたμオピオイドレセプターアゴニストを含む結合体の有効量を該患者に投与する工程を包含し、該投与は、該患者の中枢神経系の外側の場所への投与である、方法。
【請求項61】
患者においてモルヒネの類似する有効投薬量を投与することによって引き起こされるよりも小さい胃腸管(GI)通過阻害を引き起こすが、無痛をもたらすための方法であって、該方法は、リンカーを介してδオピオイドレセプターアンタゴニストに結合されたμオピオイドレセプターアゴニストを含む結合体の有効量を該患者に投与する工程を包含し、該結合体は、類似した有効投薬量のモルヒネを患者に投与することによって引き起こされるよりも小さいGI通過阻害を引き起こすが、無痛を引き起こすのに有効である、方法。
【請求項62】
患者においてモルヒネの類似する有効投薬量を投与することによって引き起こされるよりも小さい依存を引き起こすが、無痛をもたらすための方法であって、該方法は、リンカーを介してδオピオイドレセプターアンタゴニストに結合されたμオピオイドレセプターアゴニストを含む結合体の有効量を該患者に投与する工程を包含し、該結合体は、類似した有効投薬量のモルヒネを患者に投与することによって引き起こされるよりも小さい依存を引き起こすが、無痛を引き起こすのに有効である、方法。
【請求項63】
患者においてモルヒネの類似する有効投薬量を投与することによって引き起こされるよりも小さい耐性を引き起こすが、無痛をもたらすための方法であって、該方法は、リンカーを介してδオピオイドレセプターアンタゴニストに結合されたμオピオイドレセプターアゴニストを含む結合体の有効量を該患者に投与する工程を包含し、該結合体は、類似した有効投薬量のモルヒネを患者に投与することによって引き起こされるよりも小さい耐性を引き起こすが、無痛を引き起こすのに有効である、方法。
【請求項64】
動物において疼痛を処置するための医薬を調製するための、請求項38〜52のいずれかに記載されるとおりの結合体の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2008−526846(P2008−526846A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550343(P2007−550343)
【出願日】平成17年1月5日(2005.1.5)
【国際出願番号】PCT/US2005/000181
【国際公開番号】WO2006/073396
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(301078489)リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタ (24)
【出願人】(507226514)ザ ボード オブ スーパーバイザーズ オブ ザ ルイジアナ ステイト ユニバーシティー アンド アグリカルチュラル アンド メカニカル カレッジ アクティング スルー ザ ルイジアナ ステイト ユニバ (1)
【Fターム(参考)】