説明

鑑識用粘着シート及びその製造方法

【課題】個々の台紙層と粘着シート層とを対応付けることで、コストをほとんど増加させずに証拠の改ざん防止機能を付与でき、しかも剥離した粘着シート層の取扱いの制限がなく、切断使用にも対応することができる鑑識用粘着シート、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】支持体1aの片面に粘着剤層1bを有する粘着シート層1と、前記粘着剤層1bに再貼付可能に貼り合わせられて裏面に記入欄3を有する台紙層2とを備える鑑識用粘着シートにおいて、粘着シート層1又は台紙層2の何れか一方には識別情報11が付され、他方には識別情報11を複写元とする複写情報12が付されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指紋や足跡、タイヤ跡等の採取に使用するための鑑識用粘着シート、及びその製造方法に関し、特に、指紋・足跡等を採取した後に、証拠となる鑑識用粘着シートの改ざんを防止するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、指紋や足跡、タイヤ跡等の採取に使用するための鑑識用粘着シートとしては、例えば透明支持フィルムの片面にウレタン系粘着剤を塗布したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この粘着シートを用いて指紋を採取するためには、まず、採取対象面に粉末を刷毛などで少しずつ塗布し、穂先で軽く払うようにして指紋隆線の部分だけに粉末を付着させて指紋を浮き上がらせる。次いで、粘着シートの一端から剥離紙を兼ねた台紙を剥離して粘着面を採取対象面に当接し、さらに台紙を剥離しながら浮き上がらせた指紋を粘着面に転写させ、その後台紙を再び粘着面に貼り合わせる。最後に、台紙に採取時、採取場所等の必要事項を、台紙の裏面の情報記入欄に記入して、指紋採取を完了する。そして、このような粘着シートは、採取する対象の大きさに応じて、3分割〜9分割に切断して使用される場合があった。
【0004】
しかしながら、台紙は粘着シートから容易に剥離、再貼付できるものであり、保管時に粘着シートあるいは台紙を意図的に貼り変えることができる。また、台紙が粘着シートから自然に剥離し、粘着シートと台紙とが入り乱れる可能性もあった。
【0005】
この際、ステープラなどで台紙と粘着シートとを固定してもよいが、この場合にもステープラ針の針穴を合わせて、粘着シート若しくは台紙をすり変えることができる。また、台紙と粘着シートを貼り合わせた状態で他の固定用テープにより両者を固定した場合には、低速で固定用シートを剥離したり、ドライヤー等の熱源を用いて粘着剤を軟化させ剥離することにより、台紙の表面を傷つけることなく、しかも剥離した粘着シートを再貼付可能な状態で剥離することができるため、台紙と粘着シートとが同一に使用されたものであることの証明が困難な場合もあった。
【0006】
このため、指紋・足跡等を採取した後に、再度台紙が剥離され貼り変えられたことを直ちに判別可能にして、鑑識用粘着シートの証拠能力を高める必要があった。そこで、下記の特許文献2には、支持体の片面に粘着剤層を備えた粘着シート層とこれに再貼付可能に貼り合わせられた台紙層とからなる鑑識用粘着シート本体と、前記粘着シート層と前記台紙層とを貼り合わせた状態で両者を貼着固定する剥離判別用粘着テープとを備えたことを特徴とする鑑識用粘着シートが提案されている。また、剥離判別用粘着テープとして、支持体の片面に形成された皮膜層及びその皮膜層を覆う粘着剤層が備えられ、剥離判別用粘着テープを鑑識用粘着シート本体から剥離した場合に、前記皮膜層及び/又は粘着剤層が剥離判別用粘着テープの支持体から剥離されるものが開示されている。
【0007】
しかしながら、上記のように剥離判別用粘着テープを鑑識用粘着シート本体に貼着固定する方法では、剥離判別用粘着テープの製造コストの増加に加え、その貼着工程の煩雑さやコスト増加の問題があった。また、指紋等を採取する際に、台紙層から粘着シート層を剥離しても、剥離判別用粘着テープを介して両者が連結されており、剥離判別用粘着テープの存在によって粘着シート層の取扱いに慎重を要するといった使用上の制約があった。更に、鑑識用粘着シート本体を分割・切断して使用する場合には、剥離判別用粘着テープの貼着された切断片のみが、改ざん防止機能を有することになり、鑑識用粘着シートの利用効率が低下するという欠点もあった。
【0008】
【特許文献1】特開2001−40299号公報
【特許文献2】特開2003−89776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的は、個々の台紙層と粘着シート層とを対応付けることで、コストをほとんど増加させずに証拠の改ざん防止機能を付与でき、しかも剥離した粘着シート層の取扱いの制限がなく、切断使用にも対応することができる鑑識用粘着シート、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
即ち、本発明の鑑識用粘着シートは、支持体の片面に粘着剤層を有する粘着シート層と、前記粘着剤層に再貼付可能に貼り合わせられて裏面に記入欄を有する台紙層とを備えた鑑識用粘着シートにおいて、前記粘着シート層又は前記台紙層の何れか一方には識別情報が付され、他方には前記識別情報を複写元とする複写情報が付されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の鑑識用粘着シートによると、粘着シート層又は台紙層の一方に付された識別情報を複写元とする複写情報が他方に付されているため、個々の台紙層と粘着シート層とが対応付けられることにより、証拠の改ざん防止機能を付与することができ、しかも、粘着シート層を台紙層から完全に分離できるので、剥離した粘着シート層の取扱いの制限がない。そして、識別情報を複写元とする複写情報を付す方式をとるため、別途印刷等する工程やその情報を管理する工程が必要なく、コストをほとんど増加させずに証拠の改ざん防止機能を付与できる。更に、鑑識用粘着シートを分割・切断して使用する場合でも、分割領域ごとに識別情報を付すだけで、容易に対応できる。
【0012】
上記において、前記粘着シート層と前記台紙層との貼付界面の何れか一方に、前記識別情報が着色成分で形成されていると共に、その着色成分が他方の貼付界面に一部転写されて前記複写情報が形成されていることが好ましい。着色成分が他方の貼付界面に一部転写されて複写情報が形成される方式によると、貼付界面の何れか一方に識別情報を印刷等するだけで一部転写によって複写情報が形成されるため、簡易な工程でコスト的に有利に、証拠の改ざん防止機能を付与することができる。特に、着色成分が他方の貼付界面に一部転写されて複写情報が形成されているため、識別情報と着色成分が同じになるなど、複写情報と識別情報との関係がより密接になるため、証拠の改ざんがより行いにくくなる。
【0013】
あるいは、前記粘着シート層又は前記台紙層の何れか一方に前記識別情報が加熱及び/又は加圧により形成されていると共に、他方に含有される感熱成分及び/又は感圧成分によって前記識別情報が複写されて前記複写情報が付されていることが好ましい。この方式によると、粘着シート層又は台紙層の何れか一方に識別情報を加熱や加圧により形成するだけで、複写情報が付されるため、簡易な工程でコスト的に有利に、証拠の改ざん防止機能を付与することができる。
【0014】
また、前記粘着シート層又は前記台紙層の何れか一方に前記識別情報が光照射により形成されていると共に、他方に含有される感光成分及び/又は感熱成分によって前記識別情報が複写されて前記複写情報が付されていることが好ましい。この方式によると、粘着シート層又は台紙層の何れか一方に識別情報を光照射により形成するだけで、複写情報が付されるため、簡易な工程でコスト的に有利に、証拠の改ざん防止機能を付与することができる。
【0015】
一方、本発明の鑑識用粘着シートの製造方法は、支持体の片面に粘着剤層を有する粘着シート層と、前記粘着剤層に再貼付可能で裏面に記入欄を有する台紙層とを貼り合わせる貼付工程を含む鑑識用粘着シートの製造方法において、前記貼付工程の前又は後に、前記粘着シート層又は前記台紙層の何れか一方に識別情報を付すことによって、他方の前記粘着シート層又は前記台紙層に対して同時に又は経時変化により前記識別情報を複写元とする複写情報を付す工程を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明の鑑識用粘着シートの製造方法によると、粘着シート層又は台紙層の何れか一方に識別情報を付すことによって、他方に対しても同時に又は経時変化により複写情報を付す工程を採用するため、個々の台紙層と粘着シート層とが対応付けられることにより、証拠の改ざん防止機能を付与することができ、しかも、得られた粘着シート層を台紙層から完全に分離できるので、剥離した粘着シート層の取扱いの制限がない。特に、識別情報を複写元とする複写情報を付す方式をとるため、別途印刷等する工程やその情報を管理する工程が必要なく、コストをほとんど増加させずに証拠の改ざん防止機能を付与できる。更に、鑑識用粘着シートを分割・切断して使用する場合でも、分割領域ごとに識別情報を付すだけで、容易に対応できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1〜図3は、本発明の鑑識用粘着シートの第1実施形態〜第3実施形態を示す断面図である。
【0018】
本発明の鑑識用粘着シートは、図1〜図3に示すように、支持体1aの片面に粘着剤層1bを有する粘着シート層1と、前記粘着剤層1bに再貼付可能に貼り合わせられて裏面に記入欄3を有する台紙層2とを備えるものである。
【0019】
粘着シート層1は、例えば透明なフィルムからなる支持体1aのいずれか一方の面に、感圧性粘着剤からなる粘着剤層1bが形成されており、採取対象面から浮き上がらせた指紋などを転写させるものである。
【0020】
支持体1aは、指紋等の判別が可能な程度の透明性を有していればよいが、透明性が高いほど、指紋等の判別性が向上するため好ましい。支持体1aとしては、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルムが使用できる。粘着剤層1bについても、指紋等の判別が可能な程度の透明性を有していればよいが、透明性が高いほど、指紋等の判別性が向上するため好ましい。
【0021】
鑑識用粘着シートにおける粘着剤層1bとしては、公知の粘着剤が何れも使用できるが、タックが低くいにも係わらず指紋等の凹凸に良好に追従して正確に痕跡の採取が行える観点から、ウレタン系粘着剤を用いたものが好ましい。
【0022】
台紙層2は、その一方の面が粘着剤層1bを再貼付可能なだけの剥離性を有していればよく、また他方の面が記入欄3としての機能を有するものであればよい。このため、台紙層2は、紙を基材とするものに限定されず、単一の着色フィルムなどで構成することも可能である。
【0023】
好ましい台紙層2としては、例えば、ポリプロピレン製などの合成紙や上質紙、ケント紙等からなる基材層2cと、その裏面側に設けられて、記入欄3の印刷や表示が可能な印刷層2dと、基材層2cの表面側に設けられて黒色又は白色などに着色された印刷層2bと、その表面に設けられた剥離層2aとからなるものが挙げられる。
【0024】
印刷層2bと剥離層2aとは、1つの層で形成することも可能であり、例えば離型性の黒色又は白色のプラスチックフィルムから構成することができる。記入欄3としては、事件番号や採取日時、立会人氏名等を記入するための表示が挙げられる。
【0025】
このような鑑識用粘着シートは、特開2001−40299号公報に記載された鑑識用粘着シートや特開平3−80833号公報に記載された鑑識用粘着シートなど、多数の技術が公知であり、本発明はこれら公知の鑑識用粘着シートの何れにも適用することが可能である。
【0026】
本発明は、上記のような鑑識用粘着シートにおいて、粘着シート層1又は台紙層2の何れか一方には識別情報11が付され、他方には識別情報11を複写元とする複写情報12が付されていることを特徴とする。
【0027】
識別情報11としては、2次元コード、バーコードなどのイメージ情報、文字、記号などのテキスト情報、又はこれらを組合せた複合情報などが挙げられる。本発明では識別情報11として2次元コードを用いることが好ましく、これによって、5mm角程度のサイズで10桁の数の情報の識別が可能となる。
【0028】
識別情報11は、1枚の鑑識用粘着シートに対して、少なくとも1つ付されていればよいが、鑑識用粘着シートが分割・切断して使用される場合などに対応できるように、2〜9分割した領域の各々に識別情報11を付すことが好ましい。
【0029】
本発明では、粘着シート層1又は台紙層2の何れか一方に識別情報11を付すことによって、他方に識別情報11を複写元とする複写情報12が付されるため、台紙層2に貼付された痕跡採取後の粘着シート層1を、差し替えて改ざんしようとしても、台紙層2に付された識別情報11又は複写情報12を復元することが困難であり、証拠の改ざんを効果的に防止することができる。
【0030】
本発明の鑑識用粘着シートは、本発明の製造方法によって、好適に製造することができる。即ち、本発明の製造方法は、支持体1aの片面に粘着剤層1bを有する粘着シート層1と、前記粘着剤層1bに再貼付可能で裏面に記入欄3を有する台紙層2とを貼り合わせる貼付工程を含む鑑識用粘着シートの製造方法において、前記貼付工程の前又は後に、前記粘着シート層1又は前記台紙層2の何れか一方に識別情報11を付すことによって、他方の前記粘着シート層1又は前記台紙層2に対して同時に又は経時変化により前記識別情報11を複写元とする複写情報12を付す工程を含むことを特徴とする。
【0031】
以下、識別情報11及び複写情報12を付す際の構成に関して、本発明の好ましい実施形態を順に説明する。
【0032】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係わる鑑識用粘着シートは、図1に示すように、粘着シート層1と台紙層2との貼付界面の何れか一方に、識別情報11aが着色成分で形成されていると共に、その着色成分が他方の貼付界面に一部転写されて前記複写情報12aが形成されている。図示した例では、台紙層2側の剥離層2aの貼付界面に、識別情報11aが付されている例を示す。
【0033】
第1実施形態に係わる鑑識用粘着シートは、粘着シート層1の粘着剤層1b、又は台紙層2の剥離層2aに、着色成分が経時的に移行するような、着色成分と粘着剤層1b又は剥離層2aとの組合せを選択しておき、前記の粘着シート層1と前記の台紙層2とを貼り合わせる貼付工程の前に、台紙層2の剥離層2a等に識別情報11aを着色成分で形成した後、貼付工程を実施することで製造することができる。着色成分で識別情報11aを形成する場合、着色成分単体で使用してもよいが、着色成分を含有する組成物を用いてもよい。
【0034】
一般的に、粘着剤層1bの方が剥離層2aよりも着色成分が移行し易い(溶解/分散・拡散し易い)ため、本実施形態では台紙層2側の剥離層2aの貼付界面に、識別情報11aが付されているのが好ましい。
【0035】
一般的に、粘着剤層1bには、低分子成分が含有されており、これが高分子成分に拡散して膨潤又は相溶した状態になっている。一方、着色成分は、直接に剥離層2aを着色(染色など)するか、インキ組成物として剥離層2aに付着することによって着色が可能であるが、いずれの場合でも、着色成分が粘着剤層1bの成分とある程度の親和性を有していれば、着色成分が粘着剤層1bに一部転写されて複写情報12aを形成することができる。即ち、このような親和性を有する場合、着色成分である顔料や染料などは比較的低分子であり、これらの溶解・拡散をブロックするようなバインダーがインキ組成物に含まれていない場合、あるいは粘着剤層1bに含まれる低分子成分によって当該バインダーの溶解等が生じる場合には、着色成分が粘着剤層1bに経時的に移行する現象が生じる。
【0036】
例えば、鑑識用粘着シートの粘着剤層1bとして多用されているウレタン系粘着剤に対しては、剥離層2aにインク吐出型印字装置(インクジェットプリンター)で印刷したインク、熱転写型印字装置で印刷したインク、ドットインパクトプリンターで印刷したインクを、溶解・拡散させて、粘着剤層1bに複写情報12aを形成することができる。
【0037】
逆に、粘着剤層1bの側に予め識別情報11aを付する場合、識別情報11aを構成する着色成分が、貼付界面付近に高濃度で存在する方が、剥離層2aに転写し易いため、識別情報11aの形成後に早めに貼付工程を実施することが好ましい。
【0038】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係わる鑑識用粘着シートは、図2に示すように、粘着シート層1又は台紙層2の何れか一方に識別情報11bが加熱及び/又は加圧により形成されていると共に、他方に含有される感熱成分及び/又は感圧成分によって識別情報11bが複写されて複写情報12bが付されている。図示した例では、台紙層2側の裏面(上側面)に、識別情報11bが付されている例を示すが、台紙層2側の印刷層2bに識別情報11bを付したり、粘着シート層1の側に識別情報11bを付すことも可能である。但し、熱伝導性などを考慮すると、識別情報11bと複写情報12bとは、接近した位置に設けられるのが好ましい。
【0039】
加熱により識別情報11bを形成する方法としては、熱転写型印字装置で印刷する方法や、台紙層2側にも感熱成分を含有させておきサールマルヘッドを用いて直接印刷する方法が挙げられる。
【0040】
加圧により識別情報11bを形成する方法としては、ドットプリンターなどでインクを転写印刷する方法や、台紙層2側にも感圧成分を含有させておきドットプリンタヘッドを用いて直接印刷する方法が挙げられる。加熱及び加圧により識別情報11bを形成する方法としては、ドットプリンタヘッドと同様の機構に加熱手段が付設された加熱刻印装置を用いる方法が挙げられる。
【0041】
粘着シート層1又は台紙層2に含有される感熱成分としては、感熱発色剤(感熱インク)、感熱発泡剤などが挙げられる。このような感熱成分は、支持体1aや粘着剤層1bなどに直接含有させてもよいが、例えば感熱成分を含有する感熱記録紙や感熱フィルムを、所定の大きさ(例えば識別情報のサイズ)にカットして粘着剤層1bに貼付する方法によっても、粘着シート層1に含有させることができる。
【0042】
粘着シート層1又は台紙層2に含有される感圧成分としては、感圧複写紙用マイクロカプセル、感圧インク、感圧塗料、感圧カーボンなどの感圧発色剤などが挙げられる。このような感圧成分は、支持体1aや粘着剤層1bに直接含有させてもよいが、例えば感圧成分を含有する感圧記録紙(ノーカーボン紙)や感圧フィルムを、所定の大きさ(例えば識別情報のサイズ)にカットして粘着剤層1bに貼付する方法によっても、粘着シート層1に含有させることができる。
【0043】
粘着シート層1又は台紙層2の何れか一方に識別情報11bを加熱及び/又は加圧により形成すると、他方に含有される感熱成分及び/又は感圧成分が、発色、変色、又は変形等することによって、識別情報11bが複写されて、複写情報12bが形成される。
【0044】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係わる鑑識用粘着シートは、図3に示すように、粘着シート層1又は台紙層2の何れか一方に識別情報11cが光照射により形成されていると共に、他方に含有される感光成分及び/又は感熱成分によって識別情報11cが複写されて複写情報12cが付されている。図示した例では、粘着シート層1側の粘着剤層1bに識別情報11cが付され、台紙層2側の印刷層2bに複写情報12cが付されている例を示すが、粘着シート層1側の支持体1aに識別情報11cを付したり、台紙層2の側に識別情報11cを付すことも可能である。但し、本実施形態では、光の透過性を高める観点から、粘着シート層1の側に識別情報11cを付すことが好ましい。
【0045】
感光成分によって複写情報12cが形成される場合、識別情報11cと複写情報12cとは隣接させるようにしたり、両者の間に存在する部材に対して、光透過性の開口部を設けておくことが好ましい。
【0046】
光照射により識別情報11cを形成する方法としては、レーザ光、紫外線、赤外線などの光線を用いて、粘着シート層1の構成材料を発色、変色、又は変形等させる方法や、粘着シート層1側にも感光成分及び/又は感熱成分を含有させておき、光線によってこれらの成分を発色、変色、又は変形等させる方法が挙げられる。
【0047】
なお、本発明において、識別情報11および複写情報12は、顕在化せずに潜在化した記録情報であってもよく、例えば、感光成分を含む層を現像処理して初めて顕在化するような記録であってもよい。その場合、識別情報11および複写情報12を非破壊で読み取ることが困難であるため、証拠の改ざんが更に困難となる。
【0048】
粘着シート層1又は台紙層2に含有される感光成分としては、感光性樹脂、感光性インク、感光性塗料、感光発色剤などが挙げられる。このような感光成分は、支持体1aや粘着剤層1bに直接含有させてもよいが、例えば感光成分を含有する感光記録紙や感光フィルムを、所定の大きさ(例えば識別情報のサイズ)にカットして粘着剤層1bに貼付する方法によっても、粘着シート層1に含有させることができる。
【0049】
また、粘着シート層1を構成する支持体1aや台紙層2の基材層2cを、感光性樹脂シート又は感光発色剤等を含有するシートで構成して、両者の間に開口部を設けておき、潜在化又は顕在化した識別情報11および複写情報12を付すようにしてもよい。
【0050】
粘着シート層1又は台紙層2に含有される感熱成分としては、感熱発色剤(感熱インク)、感熱発泡剤などが挙げられる。
【0051】
粘着シート層1又は台紙層2の何れか一方に識別情報11cを光照射により形成すると、他方に含有される感光成分が、発色、変色、又は変形等することによって、識別情報11cが複写されて、複写情報12cが形成される。また、光照射により発熱が生じる場合には、感熱成分が、発色、変色、又は変形等することによって、識別情報11cが複写されて、複写情報12cが形成される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の鑑識用粘着シートの第1実施形態を示す断面図
【図2】本発明の鑑識用粘着シートの第2実施形態を示す断面図
【図3】本発明の鑑識用粘着シートの第3実施形態を示す断面図
【符号の説明】
【0053】
1 粘着シート層
1a 支持体
1b 粘着剤層
2 台紙層
2a 剥離層
2b 印刷層
2c 基材層
2d 印刷層
3 記入欄
11 識別情報
12 複写情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の片面に粘着剤層を有する粘着シート層と、前記粘着剤層に再貼付可能に貼り合わせられて裏面に記入欄を有する台紙層とを備えた鑑識用粘着シートにおいて、
前記粘着シート層又は前記台紙層の何れか一方には識別情報が付され、他方には前記識別情報を複写元とする複写情報が付されていることを特徴とする鑑識用粘着シート。
【請求項2】
前記粘着シート層と前記台紙層との貼付界面の何れか一方に、前記識別情報が着色成分で形成されていると共に、その着色成分が他方の貼付界面に一部転写されて前記複写情報が形成されている請求項1に記載の鑑識用粘着シート。
【請求項3】
前記粘着シート層又は前記台紙層の何れか一方に前記識別情報が加熱及び/又は加圧により形成されていると共に、他方に含有される感熱成分及び/又は感圧成分によって前記識別情報が複写されて前記複写情報が付されている請求項1に記載の鑑識用粘着シート。
【請求項4】
前記粘着シート層又は前記台紙層の何れか一方に前記識別情報が光照射により形成されていると共に、他方に含有される感光成分及び/又は感熱成分によって前記識別情報が複写されて前記複写情報が付されている請求項1に記載の鑑識用粘着シート。
【請求項5】
支持体の片面に粘着剤層を有する粘着シート層と、前記粘着剤層に再貼付可能で裏面に記入欄を有する台紙層とを貼り合わせる貼付工程を含む鑑識用粘着シートの製造方法において、
前記貼付工程の前又は後に、前記粘着シート層又は前記台紙層の何れか一方に識別情報を付すことによって、他方の前記粘着シート層又は前記台紙層に対して同時に又は経時変化により前記識別情報を複写元とする複写情報を付す工程を含むことを特徴とする鑑識用粘着シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−181525(P2007−181525A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548(P2006−548)
【出願日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】