説明

長尺部材繰出装置

【課題】橋脚やベンド、大型重機を使用せず、出来る限り省スペースで迅速に長尺部材の架設を行うことができる繰出装置を提供する。
【解決手段】長尺部材を複数個連結して長尺部材連結構造物となし、片持ち状態で前記長尺部材を継足して繰出していく長尺部材繰出装置において、前記長尺部材を卸下する荷台と、該荷台に固定され前記長尺部材連結構造物が回転モーメントにより浮上がるのを押さえる前記長尺部材の支持ローラと、前記荷台に取り付けられた駆動機構とからなり、前記長尺部材はその下面の長手方向に一定間隔の穴部を有し、前記駆動機構は回転チェーンと該回転チェーンに取り付けられ前記長尺部材下面に当接する位置に設けられた爪部を有し、前記長尺部材の穴部と前記駆動機構の爪部が嵌合し、前記回転チェーンが回転することにより長尺部材を連続して繰出していく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は河川や地隙において、長尺部材を逐次その長手方向に連結して長尺部材連結構造物となし、これを近岸より遠岸に向け片持ち状態で繰出していくことにより両岸を結ぶ架設装置に関し、特にその繰出機構に特徴を有する長尺部材繰出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺部材連結構造物として、例えば応急橋を架設する際における近岸から遠岸に張り出す片持ち保持方法としては、長尺部材を全部あるいは一部ずつ順次、組立てて架設支間上へウインチで引き出していく方法、ジャッキで長尺部材を押出して架設する方法、移動台車やベンドなどで長尺部材を支持して送り出す方法、ケーブルで長尺部材を吊り上げ連結していく方法などがある。
【0003】
またこの場合のこれらの長尺部材の繰出し方法としては、前述したようにジャッキにより押出す方法やケーブルと塔を用いて吊りながら繰出す方法、特許文献1に記載のようにケーブル及び小型機械を用いて繰出していく方法などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−317327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように長尺部材を架設する方法には種々あるが、これらの架設法は河川や地隙の途中に橋脚やベンドなどが必要であったり、移動台車などの重機が必要である。支間に河川や道路、鉄道などがある場合は橋脚やベンドを使用することが困難であり、また架設場所が山間部や未整地な所である場合は重機が作業するのは困難となるため長尺部材を架設するのは困難である。このように従来の架設技術では支間の地形や作業場所の広さ、状態により架設場所に制限を受けてしまう。
【0006】
以上のことから本発明の目的は、橋脚やベンド、大型重機を使用せず、出来る限り省スペースで迅速に長尺部材の架設を行うことができる繰出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては、長尺部材を複数個連結して長尺部材連結構造物となし、片持ち状態で長尺部材を継足して繰出していく長尺部材繰出装置において、長尺部材を卸下する荷台と、荷台に固定され長尺部材連結構造物が回転モーメントにより浮上がるのを押さえる長尺部材の支持ローラと、荷台に取り付けられた駆動機構とからなり、長尺部材はその下面の長手方向に一定間隔の穴部を有し、駆動機構は回転チェーンと回転チェーンに取り付けられ長尺部材下面に当接する位置に設けられた爪部を有し、長尺部材の穴部と駆動機構の爪部が嵌合し、回転チェーンが回転することにより長尺部材を連続して繰出していく。
【0008】
また駆動機構は、長尺部材の長手方向に複数のホイールを備え、複数のホイールの縁部で長尺部材の側面への逸脱を阻止し、その台部で長尺部材の重量を受けるようにするとよい。
【0009】
また駆動機構は、回転チェーンの上方及び下方への逸脱を阻止するためのガイドプレートを備えているのがよい。
【0010】
また、連結後の長尺部材連結構造物の最後の穴部と、次に連結する最初の穴部との間の間隔を前記長尺部材の穴部間の前記一定間隔とする。
【0011】
長尺部材を複数個連結して長尺部材連結構造物となし、片持ち状態で前記長尺部材を継足して繰出していく長尺部材繰出装置で使用される長尺部材は、下面の長手方向に一定間隔の穴部を有するとともに、連結後の長尺部材連結構造物の最後の穴部と、次に連結する最初の穴部との間の間隔も前記長尺部材の穴部間の前記一定間隔とされる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、長尺部材の穴と繰出し装置の爪との嵌合により長尺部材の繰出しを行うので、大型の重機は必要とせず、作業スペースもごく狭い範囲で済む。また、複数の爪をチェーンと一体型にして回転させることで長尺部材を連続的に繰出すことができるため、迅速に架設作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の繰出装置11の働きを模式的に示した図
【図2】近岸に設置される架設装置の全体構成を示す図
【図3】長尺部材と繰出装置と支持部を上方から見た時の斜視図
【図4】図3の下方のAの方向から長尺部材4を見た図
【図5】繰出装置11の内部機構を示した図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態の一例を図を用いて説明する。
【実施例】
【0015】
図2は、近岸に設置される架設装置の全体構成を示す図である。近岸1には、架設車2が到着し車輪5に代えてアウトリガ6にて重量を支持する。架設車2は荷台8の上に架設用クレーン3を備えており、図示せぬ運搬車が運んできた単位長の長尺部材4を吊り上げて、架設車2の荷台8に卸下する。
【0016】
荷台8に卸された点線で示す長尺部材4は、荷台8の上で長尺部材連結構造物10の一端にピンやボルトなどで結合されて、支持ローラ9に導かれる。支持ローラ9は、両端が荷台8に結合されており、長尺部材連結構造物10が回転モーメントにより浮き上がろうとするのを荷台8の側に押さえつけることにより、長尺部材連結構造物10の片持支持を実現する。なお、7は支持台であり、長尺部材連結構造物10を支持することにより、架設車2のアウトリガ6とともに全体重量を支持している。この図で、11が本発明に係る繰出装置であり、荷台8の一部に固定的に取り付けられる。
【0017】
図3は、長尺部材4と繰出装置11と支持ローラ9を上方から見た時の斜視図である。図で支持ローラ9は、ローラ91と梁93から構成され、梁93の他端92は繰出装置11あるいは荷台8に固定されて長尺部材4、しいては長尺部材連結構造物10の片持支持を実現する。繰出装置11の長尺部材4を卸下する面113上には、複数の爪22が突出しており、複数の爪22は長手方向に連続的に移動する。
【0018】
図4は図3の下方のAの方向から長尺部材4を見た図であり、長尺部材4は繰出装置11の複数の爪22と同じ設置間隔で設けられた受部12をあらかじめ備えている。つまり、長尺部材4は最初から複数の爪22と同じ設置間隔で設けられた受部12を備えた構造物として製作されている。またこの設置間隔の関係は、長尺部材連結構造物10を構成する複数の長尺部材4を跨ぐときについても維持されている。このため、最初の長尺部材4を荷台8の上に置いて、長手方向に移動させるときに爪22と受部12が噛み合うようにすれば、以降の連結、繰出作業においては位置あわせを必要としない。
【0019】
図1は、本発明の繰出装置11の働きを模式的に示した図である。この図から明らかなように、長尺部材4の下面には複数の受部12が設けてあり、また繰出装置11にはその受部12に嵌合する爪22が複数ついている。さらに爪22はチェーン23と一体型となっている。ここで爪22は長尺部材の複数の受部12のピッチと同じピッチでチェーンに取り付けられている。チェーン23はスプロケット24とモータなどの動力源により回転し、回転することにより爪22が順次長尺部材の受部12に嵌合し回転方向に長尺部材4を繰出していく。
【0020】
本発明の繰出装置は図のように長尺部材4の下に配置することが出来ることから作業スペースは最小限に抑えることが出来る。また、1つの長尺部材4を吊り上げられる架設用クレーン3さえあれば大型の重機は必要ない。長尺部材自身は軽量の材料(例えばアルミニウム)で作成されており、架設用クレーン3は運搬車から1つづつ長尺部材を持ち上げて、架設車の上に置き換えることができる程度の小型のものでよい。
【0021】
またチェーン式の繰出装置の利点としては、連続して繰出し作業を行なうことが出来ることである。例えば、従来技術のジャッキ式はジャッキの直線運動を利用しているため長尺部材を押し出した後、シリンダのアームを元の位置に戻し、長尺部材を設置し再び押出す。このようにジャッキ式では繰出し作業がシリンダの反復運動に依存し作業時間が長くなる。また、ウインチ式では対岸に器材を準備しなくてはならないため、段取りなどに長時間要する。
【0022】
本発明のチェーン式は、回転運動を利用している為、爪を逐次回転させることにより長尺部材を連続して繰出していくことが出来る。このことから、段取り時間や作業時間が短く出来、迅速に長尺部材を架設することが可能となる。また、一つ目の爪さえ嵌合してしまえば、二つ目以降の爪は順次嵌合していくので何度も長尺部材の位置決めをしなくても良いという利点もある。
【0023】
図5は繰出装置11の内部機構を示した図である。110は油圧モータであり、繰出チェーン111を回転させる。ホイール112は、その側面の縁部131で、長尺部材4が側面にそれてしまうのを阻止する。またホイール112の台部132の上に長尺部材4を乗せることで、チェーン機構が直接長尺部材4の重量を受けることを阻止し、長尺部材4が繰出装置11の移動面113上を移動しやすくするために回転する。
【0024】
114は繰出チェーン111の上に所定の間隔をもって配置された爪台車であり、この上に長尺部材4の受部12と嵌合する爪22が設けられる。先ほども述べたように、長尺部材の重量はホイール112の台部132で受けているので、長尺部材4の受部12と爪22は、緩やかに嵌合していればよい。このことは装置製作過程において、厳密な寸法あわせを必要としないことを意味する。
【0025】
爪台車114は繰出チェーン111にボルト締めされてチェーンと一体とされる。ガイドプレート115は、爪台車114が上下動しないように、爪台車114の上方及び下方を押さえることで、受部12と爪22の嵌合をより確固たるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によれば、簡便な装置構成で短時間に河川や地隙における橋の架設工事を行うに好適である。
【符号の説明】
【0027】
1:近岸
2:架設車
3:架設用クレーン
4:長尺部材
5:車輪
6:アウトリガ
7:支持台
8:荷台
9:支持ローラ
10:長尺部材連結構造物
11:繰出装置
12:受部
22:爪
23:チェーン
24:スプロケット
91:押圧ローラ
92:他端
93:梁
110:油圧モータ
111:繰出チェーン
112:ホイール
113:移動面
114:爪台車
115:ガイドプレート
131:ホイールの縁部
132:ホイールの台部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺部材を複数個連結して長尺部材連結構造物となし、片持ち状態で前記長尺部材を継足して繰出していく長尺部材繰出装置において、前記長尺部材を卸下する荷台と、該荷台に固定され前記長尺部材連結構造物が回転モーメントにより浮上がるのを押さえる前記長尺部材の支持ローラと、前記荷台に取り付けられた駆動機構とからなり、前記長尺部材はその下面の長手方向に一定間隔の穴部を有し、前記駆動機構は回転チェーンと該回転チェーンに取り付けられ前記長尺部材下面に当接する位置に設けられた爪部を有し、前記長尺部材の穴部と前記駆動機構の爪部が嵌合し、前記回転チェーンが回転することにより長尺部材を連続して繰出していくことを特徴とした長尺部材繰出装置。
【請求項2】
請求項1の長尺部材繰出装置において、
前記駆動機構は、前記長尺部材の長手方向に複数のホイールを備え、該複数のホイールの縁部で長尺部材の側面への逸脱を阻止し、その台部で長尺部材の重量を受けることを特徴とする長尺部材繰出装置。
【請求項3】
請求項1の長尺部材繰出装置において、
前記駆動機構は、前記回転チェーンの上方及び下方への逸脱を阻止するためのガイドプレートを備えていることを特徴とする長尺部材繰出装置。
【請求項4】
請求項1の長尺部材繰出装置において、
連結後の長尺部材連結構造物の最後の穴部と、次に連結する最初の穴部との間の間隔を前記長尺部材の穴部間の前記一定間隔とすることを特徴とする長尺部材繰出装置。
【請求項5】
長尺部材を複数個連結して長尺部材連結構造物となし、片持ち状態で前記長尺部材を継足して繰出していく長尺部材繰出装置で使用される長尺部材であって、下面の長手方向に一定間隔の穴部を有するとともに、連結後の長尺部材連結構造物の最後の穴部と、次に連結する最初の穴部との間の間隔も前記長尺部材の穴部間の前記一定間隔とすることを特徴とする長尺部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−219558(P2012−219558A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88349(P2011−88349)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】